ブーケ
部下が、結婚することになった。
13番隊の6席の男性死神が、5番隊の一般隊士の女性と結婚することになった。
「おめでとう!」
「ありがとうございます」
雨乾堂で報告をしてきた6席に、祝いの言葉をかけた。
「式は、いつあげるんだ?」
「それが迷っていて・・・・籍を入れるだけで十分だと妻になる人はいうんです」
「それはだめだ。一生の思い出が残るんだから、ちゃんと式を挙げないと。金銭面で困っているなら相談にのるぞ」
そういう浮竹も、金銭面では余裕がなくて京楽に頼り切りだが。
少しくらいなら、部下のために使える額くらいはなんとかあった。
「緊張しちゃうじゃないですか!俺、極度の緊張屋で・・・・・その」
「大丈夫だ。笑顔でにこにこしていればいい。それで大抵なんとかなる」
「そういうもんですか?」
上官である浮竹とは何度も会話し、緊張はしないが、他の席官や妻となる人の5番隊の隊長は反旗を翻した藍染なため、今は隊長は空席となっているが、副官の雛森が出席することになるだろう。そう考えただけで緊張で汗が流れて、動悸がしてくると訴えてきた。
「まぁ、俺に任せろ」
「はい、隊長に相談してよかったです。じゃあ式の日取りとかも決めてもらっていいですかね?」
「まぁ任せろ」
その時はそう言ってしまったのだ。なんとかなると思って。
後日、結婚式の資料を集めていると、京楽がこう言ってきた。
「浮竹、僕と式をあげる気になったんだね」
「アホか。隊長同士、しかも男性同性で結婚なんてできるか」
「最近は、同性でも結婚式を挙げることが多いみたいだよ。主に現世で」
「現世と尸魂界は違う」
洋風にするか和風にするかに悩む。
結局、和風を基本に洋風も取り入れた、最近の現世でするような結婚式にしようと思った。
「俺のとこの6席が、5番隊の子と結婚するんだ。その役目を引き受けてな」
「あちゃー5番隊かー。桃ちゃん、ちゃんと出れるかな」
未だに藍染を慕っている雛森は、まだ万全でなくよく通院していた。
「最悪欠席でもいい。祝いの言葉を記録しておけばいいから」
「そういう君も、発作や熱だしたりして、式に出れないってことは避けなきゃいけないよ」
「あ、忘れてた・・・・・・」
結婚式だと舞い上がって、自分の体調のことをすっかり失念していた。
「なんとかなる・・・・・多分」
式は、6月に決まった。
新郎には和風のスタイルで、新婦にはウェディングドレスを手配する。採寸をしてもらった5番隊の女性隊士は、わざわざ浮竹が式の進行を執り行ってくれることに、大変恐縮していた。
「こここここ、このたびは、わわわわわたしなんかの式にぃっ」
金銭面の問題で、レンタル式のウェディングドレスを着ることになった。
「おふっ」
躓きかけて、浮竹の隊長羽織を掴んだが、びりっと破けてしまった。
女性隊士は、愛らしかったが、かなり緊張していた。この子は、あの6席と同じくらい緊張屋さんかもしれない。
「ぎゃあああああ、うううう浮竹隊長の隊長羽織がああああああああ」
「ああ、気にするな。替えはあるから」
「ああああああああ、私はもうだめだわあああああ!」
「まぁ、落ち着いて」
「あああああ、やってしまったのかお前!」
6席が、ウェディングドレスを着た妻に、顔色を変えていた。
「我が隊の隊長の隊長羽織を破くとは・・・・・・どうしよう!?」
二人で、あわあわしていた。
6席は妻のウェディングドレス姿に感動するより先に、破れてしまった隊長羽織を気にしすぎて、二人してパニックを起こしていた。
「二人とも、落ち着け!」
「は、はい」
「すみません」
式の流れを説明して、雛森にも来てもらえることを了承してもらった旨を伝える。
「ひひひひいいいい!ひーーーーーー」
雛森の名をあげたいのだろうが、悲鳴になっていた。
「おい」
「ひひひ雛森副隊長がきてくださるなんて!」
ぼろぼろと泣き出す5番隊の子に、浮竹が焦る。
「その程度で泣いてどうする!」
「うわーーーーん結婚式あげることになったよかったかもーーー」
5番隊の子は、夫となるべき6席ではなく、浮竹に抱き着いた。
冷たい霊圧を感じて振り返ると、京楽が様子を見に来てにこにこしていた。
「違う、これはっ」
「まぁ、全部まとめて後でね」
ぞくりを肌が粟立つ。
なんやかんやあって、6月の1日に式を挙げることが決まった。
13番隊の席官全員と、一般隊士から名乗りを上げた者、5番隊は雛森副隊長をはじめとして、あとは席官と今回の主人公である女性となかのいい一般隊士が参列した。
「あなたは、この者を夫とし、病める時も健やかなる時も、共にいると誓いますか?」
「ちちちちっちちちっちちちちちかかかかあかいいいいいま、あべし!」
ウェンディングドレスのまま派手にこけた5番隊の子は、起き上がると夫となる6席の手をとった。
「あなた、愛しています」
「俺も愛しているよ」
誓いの言葉をお互いに交わして、指輪の交換をした。
そして、キスをする。
すると、京楽が用意していたのか、建物の上から花びらが降ってきた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
新郎新婦は、なんとか式を終えて、皆に祝福されていた。
「七緒ちゃん、もう花弁はいいから・・・・・・ごふっ」
花びらの残りが入った籠を京楽に投げつけて、七緒は二人に花弁を巻いた。
「お幸せに」
七緒は、新婦と顔見知りしらしく、いくつか言葉を交わしてから、参列者に交じった。
花嫁は、ブーケを手にしていた。
そのブーケを投げる。
受け止めようと女性隊士たちが押し寄せよてくる。
「うわ」
参列者の中に混じっていた浮竹の手の中に、ブーケは落ちた。
「わー、これって僕らも結婚しろってことかな?」
今回、助っ人をしてくれた京楽も、式に参加していた。
「ばかいうな」
女性隊士たちは、二人を取り囲んでキャーキャー言っていた。
「ほら、受け取れ」
もう一度ブーケを投げた。
それは、七緒の手の中に落ちた。
「あはは、七緒ちゃんには相手になるような猛者がいないもんね」
一言多い京楽を殴って、七緒は少し赤面してブーケを受け取った。
こうして、部下の式は終わった。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ、京楽」
「僕たちも、いつか式をあげよう。二人きりでいいから」
「いつか、機会があればな」
浮竹は、別に結婚式とかにこだわるタイプではない。それも京楽も同じだろうが、やはり式を挙げるのは愛の証になるのだろう。
「お前がウェディングドレスを着ろ」
「うわー想像しだだけで寒気がする。自分の屈強な身体が入るウェディングドレスとか・・・特注しなきゃ無理だね」
「冗談に決まっているだろう」
くすりと、浮竹が笑った。
「君もウェディングドレスなんて着ないでしょ?」
「当たり前だ。式をあげるとしたら、二人揃って、一族の家紋いりの和風の礼服を着てだな・・・・・・・」
それからと、夢物語をする。
新婚旅行は現世の外国がいいだの、あの国に住んでみたいだの・・・・・。
全ては夢。
でも、だから語って想いを馳せることができる。
「そうそう、式はできないけど、これなんてどうかな」
京楽が、小さな箱を取り出した。
中身は、翡翠をあしらった指輪だった。2つ入っていた。
「そっちの大きいのが僕ので、そっちの小さいのが君の」
「指輪交換か・・・・・」
「そう」
二人で、指輪をはめあう。
「愛しているよ、十四郎」
「俺も愛している、春水」
式を挙げるわけでも、立会人も、祝う人も誰もいないけれど。
それでも、二人は愛を誓いあう。
世界は廻る。
どちらかの命が尽き果てるか、世界が終わるまで。
二人は、愛を誓い合うのだった。
13番隊の6席の男性死神が、5番隊の一般隊士の女性と結婚することになった。
「おめでとう!」
「ありがとうございます」
雨乾堂で報告をしてきた6席に、祝いの言葉をかけた。
「式は、いつあげるんだ?」
「それが迷っていて・・・・籍を入れるだけで十分だと妻になる人はいうんです」
「それはだめだ。一生の思い出が残るんだから、ちゃんと式を挙げないと。金銭面で困っているなら相談にのるぞ」
そういう浮竹も、金銭面では余裕がなくて京楽に頼り切りだが。
少しくらいなら、部下のために使える額くらいはなんとかあった。
「緊張しちゃうじゃないですか!俺、極度の緊張屋で・・・・・その」
「大丈夫だ。笑顔でにこにこしていればいい。それで大抵なんとかなる」
「そういうもんですか?」
上官である浮竹とは何度も会話し、緊張はしないが、他の席官や妻となる人の5番隊の隊長は反旗を翻した藍染なため、今は隊長は空席となっているが、副官の雛森が出席することになるだろう。そう考えただけで緊張で汗が流れて、動悸がしてくると訴えてきた。
「まぁ、俺に任せろ」
「はい、隊長に相談してよかったです。じゃあ式の日取りとかも決めてもらっていいですかね?」
「まぁ任せろ」
その時はそう言ってしまったのだ。なんとかなると思って。
後日、結婚式の資料を集めていると、京楽がこう言ってきた。
「浮竹、僕と式をあげる気になったんだね」
「アホか。隊長同士、しかも男性同性で結婚なんてできるか」
「最近は、同性でも結婚式を挙げることが多いみたいだよ。主に現世で」
「現世と尸魂界は違う」
洋風にするか和風にするかに悩む。
結局、和風を基本に洋風も取り入れた、最近の現世でするような結婚式にしようと思った。
「俺のとこの6席が、5番隊の子と結婚するんだ。その役目を引き受けてな」
「あちゃー5番隊かー。桃ちゃん、ちゃんと出れるかな」
未だに藍染を慕っている雛森は、まだ万全でなくよく通院していた。
「最悪欠席でもいい。祝いの言葉を記録しておけばいいから」
「そういう君も、発作や熱だしたりして、式に出れないってことは避けなきゃいけないよ」
「あ、忘れてた・・・・・・」
結婚式だと舞い上がって、自分の体調のことをすっかり失念していた。
「なんとかなる・・・・・多分」
式は、6月に決まった。
新郎には和風のスタイルで、新婦にはウェディングドレスを手配する。採寸をしてもらった5番隊の女性隊士は、わざわざ浮竹が式の進行を執り行ってくれることに、大変恐縮していた。
「こここここ、このたびは、わわわわわたしなんかの式にぃっ」
金銭面の問題で、レンタル式のウェディングドレスを着ることになった。
「おふっ」
躓きかけて、浮竹の隊長羽織を掴んだが、びりっと破けてしまった。
女性隊士は、愛らしかったが、かなり緊張していた。この子は、あの6席と同じくらい緊張屋さんかもしれない。
「ぎゃあああああ、うううう浮竹隊長の隊長羽織がああああああああ」
「ああ、気にするな。替えはあるから」
「ああああああああ、私はもうだめだわあああああ!」
「まぁ、落ち着いて」
「あああああ、やってしまったのかお前!」
6席が、ウェディングドレスを着た妻に、顔色を変えていた。
「我が隊の隊長の隊長羽織を破くとは・・・・・・どうしよう!?」
二人で、あわあわしていた。
6席は妻のウェディングドレス姿に感動するより先に、破れてしまった隊長羽織を気にしすぎて、二人してパニックを起こしていた。
「二人とも、落ち着け!」
「は、はい」
「すみません」
式の流れを説明して、雛森にも来てもらえることを了承してもらった旨を伝える。
「ひひひひいいいい!ひーーーーーー」
雛森の名をあげたいのだろうが、悲鳴になっていた。
「おい」
「ひひひ雛森副隊長がきてくださるなんて!」
ぼろぼろと泣き出す5番隊の子に、浮竹が焦る。
「その程度で泣いてどうする!」
「うわーーーーん結婚式あげることになったよかったかもーーー」
5番隊の子は、夫となるべき6席ではなく、浮竹に抱き着いた。
冷たい霊圧を感じて振り返ると、京楽が様子を見に来てにこにこしていた。
「違う、これはっ」
「まぁ、全部まとめて後でね」
ぞくりを肌が粟立つ。
なんやかんやあって、6月の1日に式を挙げることが決まった。
13番隊の席官全員と、一般隊士から名乗りを上げた者、5番隊は雛森副隊長をはじめとして、あとは席官と今回の主人公である女性となかのいい一般隊士が参列した。
「あなたは、この者を夫とし、病める時も健やかなる時も、共にいると誓いますか?」
「ちちちちっちちちっちちちちちかかかかあかいいいいいま、あべし!」
ウェンディングドレスのまま派手にこけた5番隊の子は、起き上がると夫となる6席の手をとった。
「あなた、愛しています」
「俺も愛しているよ」
誓いの言葉をお互いに交わして、指輪の交換をした。
そして、キスをする。
すると、京楽が用意していたのか、建物の上から花びらが降ってきた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
新郎新婦は、なんとか式を終えて、皆に祝福されていた。
「七緒ちゃん、もう花弁はいいから・・・・・・ごふっ」
花びらの残りが入った籠を京楽に投げつけて、七緒は二人に花弁を巻いた。
「お幸せに」
七緒は、新婦と顔見知りしらしく、いくつか言葉を交わしてから、参列者に交じった。
花嫁は、ブーケを手にしていた。
そのブーケを投げる。
受け止めようと女性隊士たちが押し寄せよてくる。
「うわ」
参列者の中に混じっていた浮竹の手の中に、ブーケは落ちた。
「わー、これって僕らも結婚しろってことかな?」
今回、助っ人をしてくれた京楽も、式に参加していた。
「ばかいうな」
女性隊士たちは、二人を取り囲んでキャーキャー言っていた。
「ほら、受け取れ」
もう一度ブーケを投げた。
それは、七緒の手の中に落ちた。
「あはは、七緒ちゃんには相手になるような猛者がいないもんね」
一言多い京楽を殴って、七緒は少し赤面してブーケを受け取った。
こうして、部下の式は終わった。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ、京楽」
「僕たちも、いつか式をあげよう。二人きりでいいから」
「いつか、機会があればな」
浮竹は、別に結婚式とかにこだわるタイプではない。それも京楽も同じだろうが、やはり式を挙げるのは愛の証になるのだろう。
「お前がウェディングドレスを着ろ」
「うわー想像しだだけで寒気がする。自分の屈強な身体が入るウェディングドレスとか・・・特注しなきゃ無理だね」
「冗談に決まっているだろう」
くすりと、浮竹が笑った。
「君もウェディングドレスなんて着ないでしょ?」
「当たり前だ。式をあげるとしたら、二人揃って、一族の家紋いりの和風の礼服を着てだな・・・・・・・」
それからと、夢物語をする。
新婚旅行は現世の外国がいいだの、あの国に住んでみたいだの・・・・・。
全ては夢。
でも、だから語って想いを馳せることができる。
「そうそう、式はできないけど、これなんてどうかな」
京楽が、小さな箱を取り出した。
中身は、翡翠をあしらった指輪だった。2つ入っていた。
「そっちの大きいのが僕ので、そっちの小さいのが君の」
「指輪交換か・・・・・」
「そう」
二人で、指輪をはめあう。
「愛しているよ、十四郎」
「俺も愛している、春水」
式を挙げるわけでも、立会人も、祝う人も誰もいないけれど。
それでも、二人は愛を誓いあう。
世界は廻る。
どちらかの命が尽き果てるか、世界が終わるまで。
二人は、愛を誓い合うのだった。
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