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京楽さんちの執事浮竹さん。

浮竹は、京楽の執事だった。

京楽は、上流貴族の家の出で、執事である浮竹以外にもたくさんのメイドや家臣たちがいたが、浮竹にばかりに全てを任せていた。

いつもちゃらんぽらんな京楽だが、浮竹が傍にいる時は純粋で、外に一緒に外出する時はちゃんと紳士として振る舞っていた。

「旦那様、数日後のボーエン子爵の茶会は参加しますか?」

「浮竹、今はボクしか傍にいないんだから、口調はいつも通りでいいよ」

「分かった。京楽、ボーエン子爵の茶会はどうする。どうせ、独身のお前に娘を娶らせるための茶会だろうが」

「一応、顔だけは見せるかな。ボーエン子爵には長年お世話になってるしね。婚約とかの話が出てきたら、逃げよう」

それでいいのか、京楽。

浮竹はそう思った。

「京楽は、そろそろ身を固めないのか」

「恋人であるボクに、妻を娶れというのかい、浮竹」

二人は、ただの主人と執事ではなく、肉体関係のある恋人同士だった。

それを知る者は数人いるが、特に止められるわけでもなく、京楽の父と母も、一時期の遊びだと浮竹と我が子のことを放置していた。

京楽には兄がいるので、爵位は兄が受け継ぐ。

京楽は単独で国王を救ったことがあり、領地はないものの、男爵の地位を得ていた。

京楽は伯爵家の出身だが、次男であるために跡を継ぐ必要はない。

なので、ちゃらんぽらんでも許された。

最低限のマナーを守り、貴族社会に溶け込んで生きていた。

浮竹は、平民ではない。

京楽家の分家に値する家の妾の子で、体は弱いが見た目がいいため、分家は財政があまりよくなかったので、浮竹を奴隷として売った。

翡翠の瞳に白い髪をした浮竹は、女性のように美しく、高級奴隷として売られた。

それを買ったのが、京楽だった。

「では、ボーエン子爵には参加するという手紙を書いてくれ」

「分かったよ」

「紅茶、入れるが飲むか?」

「うん。いつものダージリンでお願い」

浮竹はどっちかというとアッサムのほうが好きだが、京楽にそれを教えていない。

「んー。フローラちゃん18歳かぁ。かわいいなぁ」

お茶を運んできた浮竹は、ボーエン子爵の次女の写真を見てかわいいと評する京楽に、嫌味とばかりに薄いダージリンの茶を出した。

「あ、聞こえてたの?冗談だよ、かわいいけど、一番かわいいのは浮竹だから。厳しいところもあるけれど、ベッドの上ではかわいくて素直だしね」

京楽の言葉に、浮竹は顔を赤くしてダージリンの茶を淹れなおして、切り分けておいた、自作のアップルパイと一緒に出した。

浮竹は、貴族の血を引いている。

読み書き暗算はもちろん、剣の腕もたつし、執事として教育を受けたので、立派な執事として京楽家の春水専用の執事だった。

「フローラ嬢はかわいいからな」

浮竹が、ボーエン子爵の次女の写真を見る。

ボーエン子爵の領地でとれる金を、京楽が買い付け、職人を雇って装飾品にして国内で貴族の令嬢や奥方を中心に販売していた。

浮竹の髪飾りは上等の翡翠でできており、京楽自らが作ったものであった。

他にもカフスボタンなんかは希少なグリーンダイヤでできていて、プラチナ細工のこれまた京楽の手で生まれた装飾品であった。

京楽は、自分が次男であることを理解して、いつか家を追い出されてもいいようにと、主に金細工の職人の腕を磨いた。

今では京楽の作品は貴族の令嬢方に人気の品で、予約がいっぱいあるくらいだ。

「フローラ嬢には、金細工のイヤリングをあげようかな。それで、婚約のことはうやむやにしてもらおう」

「京楽は、男爵の地位をもらっているのに、金にうるさくないな」

「そう?けっこううるさいよ。職人の手抜きは許さないし、横領なんかは重罪だ。死罪だからね」
そんな京楽の作る金、銀、プラチナ細工の品物は、大半が京楽が作り上げた貴金属を扱う商店に流れていき、それを貴族の令嬢や奥方は金に物を言わせて買うのだ。

早い者勝ちの時もある。

浮竹は、京楽からたくさんの装飾品をもらっていて、給金も高いし、それをねたむ侍女も多かった。

幼い頃に男爵である父に見捨てられて、妾だった病気がちな母がなくなると、浮竹は孤独になるはずだった。

それが男爵家の実の父親に捕まり、一流の教育をうけさせられて、高級奴隷として売りに出された。

それを知った京楽が、金に任せて浮竹を買った。

浮竹は執事としてだけでなく、メイドの仕事もこなせて、剣士の才能もあり、貴族が欲しがるような見た目をしていたためめ、とても高かった。

それを、京楽は親から借金までして、浮竹を購入した。

「京楽は、一応恩人だからな」

「恋人でしょ、それ言うなら」

ぐいっと引きよせられて、浮竹は京楽と唇を重ねた。

「アッサムの味がする。ダージリンよりアッサムか‥‥」

京楽は、浮竹の好みを記憶に入れた。

数日がすぎ、ボーエン子爵の開催するお茶会の日が来た。主人公は次女のフローラ嬢。

京楽は、楽しそうにフローラ嬢とおしゃべりをして、金細工のイヤリングをあげて、結婚する気も婚約する気もないとはっきりと言った。

「ボクには、もう心に決めてる愛しい人がいるからね。ごめんね、フローラ嬢」

「ああ、いつ見ても美しいですわね、あなたの執事は。プラチナに輝く髪、エメラルドの瞳、真珠のような肌。私もあんな執事が欲しいですわ。売ってはくださりませんこと?」

京楽は、フローラ嬢のドレスにお茶をぶっかけた。

「浮竹はボクのものだ。誰にも渡さない」

「春水様‥‥‥‥申し訳ございません、我が娘がぶしつけなことを言って」

「いやいや。誰にでも間違いはあるからね」

「旦那様、袖がお茶で汚れています。今すぐにお着替えを」

万能執事である浮竹が、さっと新しいシャツをもってきて京楽に着せて、汚れた衣服は次女に言って洗濯にまわしてもらった。

「浮竹特製のシナモンのロールケーキがあるんだ。みんな、食べてごらん」

「あら、おいしいですわ」

「本当に。執事が作ったとは思えない味ですわ」

「これなら、三ツ星レストランのコックもつとまりましょうな」

浮竹を褒められて、京楽も気分がいいらしくて、ボーエン子爵の長女のマリアンヌ嬢の結婚につけるネックレスの受注をOKにした。

「これからも、末永くお願いします、京楽卿」

「そちらも、ボーエン卿。金細工はボクの作った分を商会を通して販売するので、転売にどうぞ」

「はははは。全く、京楽卿は男爵であると言うのに、細工ものを自分で作るのがお好きですなあ。まぁ、お陰でこちらも甘い汁がとれるというもの」

「旦那様、そろそろお時間です」

浮竹が、京楽に時計を見せる。

時計は、浮竹の母の形見の品で、壊れていたものを京楽が直して、金細工をくわえたものだった。

「おっと、そろそろお暇するよ。またねぇ」

「では、また国王の式典などで」



「浮竹、機嫌直してよ」

「別に、怒ってなんていない」

「嘘だ。怒ってる」

「フローラ嬢と、いちゃいちゃしてた」

「あれがいちゃいちゃに見えるなら、ボクはもう何人も恋人をもつプレイボーイだね」

京楽は、帰りの馬車の中で浮竹の隣に座ると、その顎をもちあげてキスをする。

「君の瞳は翡翠だと思うんだけど、エメラルドも悪くないね。今度、何か作ろうかな」

「ブレスレットがいい。できれば、おそろいで」

「お、おそろいはいいね。じゃあ、屋敷に帰ったらまずはいい石を取り寄せないとね」

京楽は、男爵の地位をもっているが領地がないため、伯爵である京楽家に居候中である。

京楽の愛人になろうと、今まで何人ものメイドが色仕掛けをしてきた。実際、何度か京楽はメイドに手を出して、子ははらませなかったが、今もお気に入りになりたいと、侍女や家臣たちが点数をとりたがる。

「ああ、疲れた。早く帰ってお風呂に入ってベッドで眠ろう。もちろん、浮竹も一緒に」

「抱くのか?」

「うん。だめ?」

「俺はお前のものだ。好きにすればいい」

「浮竹はいつもストイックに見せかけて、寝所では乱れるんだから」

「う、うるさい」

京楽家についたので、浮竹は馬車から降りて、京楽が安全に地面に降りれるように見守る。

「ああ、もう決めた。ボク、君と結婚する」

「は?」

浮竹が、目を点にしていた。

「法律では同性婚は認められているし、跡継ぎは兄さんの子を養子にもらえばいい。京楽十四郎って名前になるけど、いいよね」

京楽は、浮竹を抱き寄せてハグをしてキスをした。

「今日は、楽しもうね?」

「京楽‥‥‥」

浮竹は顔を真っ赤にして、京楽から距離をとって、心を落ち着かせる。

どのみち、京楽の毒牙に一度かかったら、そこから抜け出せないのだ。あがくだけ無駄。執事の仕事をこなしながら、浮竹は京楽の恋人として愛される。

「ほんと、ボクに買われてよかったね。あの猿みたいな爺さんに買われなくてよかったね?」

浮竹を購入した時、ライバルがいた。侯爵家の人間で、65近いじじいだが、色を好んで、浮竹を抱きたがっていた。

京楽は、浮竹を買うために、父親に借金をした。今はもう、貴金属の収入で借金は返済したが。

その日の夜、浮竹と京楽は肌を重ねた。

一夜が明けて、執事の服を身に着けた浮竹は、京楽を叩き起こす。

「春水、もう少し寝かせてよ」

「だめだ。今日も仕事のスケジュールがある。レイオフ商店に、京楽の自慢の細工士たちの品を納品するんだろう?」

「うーん、それはそうだけど‥‥‥ねぇ、昨日はあんなに乱れてたのに、なんで君は朝になると執事としてびしっとしているんだい?」

「お前は、国王が認めた男爵だろう。商会の発展と、ミスリル鉱山の発見で、子爵になるのももうすぐだ。だらだらばっかりさせていられない」

「はぁ。君を買った、ボクの運のつきはいいのか悪いのか」

「着替えをもってくる。たらいの水で顔を洗っておけ」

浮竹は、京楽にしつこく抱かれたというのに、疲れたそぶりを一つも見せない。

京楽は、あくびを噛み殺して、顔を洗うとタオルで顔をふいた。

「今日はゆっくりしたいけど、また今度にするかぁ」

浮竹の昨日の姿を思い出して、京楽は唇を舐める。

「京楽、着替えだ」

「うん。着せて」

浮竹はてきぱきと京楽に服を着せていく。

京楽は、騎士団をもっている。発見したミスリル鉱山は、ちょうど京楽家の領地にあって、騎士の野外訓練に訪れた時にたまたま見つけたのだ。

「はぁ。ボクの愛しい浮竹は、有能すぎてちょっとこわい」

「そうか。なら、朝食だ。今日は‥‥‥」


執事である浮竹と、主である京楽の一日が、また始まろうとしていた。







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47話補完小説。

そこは静かなる世界。

床は水でできており、時折波紋が揺れる。


「どうした。何を呆けているんだ」

京楽の意識は水の底に沈んでいた。

それをひきあげたのは、聞き覚えるのある、けれど懐かしい幼い少年の声だった。

「十四郎?」

「それ以外、誰に見えるっていうんだ?」

浮竹は、12,13くらいの少年の姿をしていた。

京楽は目を瞬かせる。

これは夢か。幻か。

いや、浮竹の魂魄を感じるから、浮竹自身だろう。

「そっか、そうだよねぇ」

京楽が、一歩進むと、浮竹は明るい笑い声をあげた。

「あはははは」

浮竹は、じっと京楽を見ていた。

京楽は、とても優しい穏やかな目で浮竹を見つめる。

「ボクに会いにきてくれたのかい?」

浮竹は、首をかすかに振った。

「ユーハバッハは、3界を完全に消滅させるだろう。かろうじで俺が霊王の右腕の力で崩壊を静止しているが、それも俺の命が尽きるのと同時に終わる」

幼い浮竹は、水面に波紋を広げながら歩く。

「そうなっちゃうねぇ」

京楽が、浮竹をじっと見つめる。

「だから俺は、最後の命をお前にかけようと思う。この世界のために」

「買ってくれるのは嬉しいけど、勝算はあるのかい」

京楽は、少し困った顔で浮竹を見た。

また、水に波紋が揺れる。

「お前が卯ノ花隊長と堂々と逢引するくらいの可能性だな」

京楽は、笑った。

「全然ありうるっとてことじゃないか」

「あっはっはっは。そうだな、この世界を守ろう。俺の命は、お前に預ける」

「まーったく、ボクのがらじゃあないんだけどな」

京楽はぽりぽりと顔を左手でかいた。

「でもやるしかないだろう?今のお前は、御艇13隊隊長なんだから」

浮竹が、京楽に近寄る。

「まいったねぇ」

「今必要なのはみんなの想いをくんだ上で采配を振る知略と、それを背負う覚悟だ」

浮竹は、京楽のほうに歩いていき、京楽のバカ高い背を見上げて、拳を少し背伸びして京楽の胸に当てる。

「俺は知っている。もっとも大切なものをお前は誰よりももっている」

浮竹の翡翠の瞳が綺麗に瞬いた。

「いってくるよ、浮竹」

京楽は、浮竹の頭を撫でて、別れを告げるように浮竹と京楽は違う方向へと歩き出す。

「はっはっは、頼むぞ、総隊長」

浮竹が大切だった。

世界のためとはいえ、贄にしたくなかった。

それでも、浮竹は神掛けを行い、自分の命と引き換えに、己に宿る霊王の右手を解放する。

昔の京楽なら、止めていたであろう。

ああ、浮竹。

君の声を聞くのは、これが最後かな。

愛しい浮竹。ボクの愛する人。

さようなら。



京楽はゆっくりと目を覚ます。

副官である七緒に膝枕をしてもらっていた。

浮竹はもういない。

京楽の心の中に霊子としてまざえりこみ、溶けてしまった。

「行こうか、七緒ちゃん」

京楽は、浮竹を失うことに大きな痛みを感じながらも、まだ絶望していない。

居楽は、七緒の手をかりて起き上がった。

さぁ、戦いの続きだ。

まだ、決着はついていない。

浮竹。

君の守ろうとした世界は、こんなにも美しいが儚い。

さぁ、いこう。

死のまつ果てに。

先に辿り着いたら、迎えにきておくれ。

ボクはいつまでもまっているからね。

京楽は、くいっと笠をかぶり直して、動き出す。

世界の滅亡か、ユーハバッハの死か。

道は、2つに1つであった。










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寝言が告白だった。

一護はいつものように、ルキアを抱きかかえるようにして眠っていた。

ルキアも慣れたもので、一護に背中を向けて寝ていた。

ユーハバッハとの戦いが終わり、一護の我儘で、高校卒業までの間、ルキアを現世に留めてくれという無理難題は、尸魂界の英雄である一護のたっての望みでもあり、許された。

ルキアと一緒に過ごせる時間は、あと半年もない。

「んー‥‥‥‥」

一護は、浅い夢を見ているらしくむにゃむにゃ言っていた。

ルキアもうとうとと眠っていたのだが、腰に回された腕がきつくなったので、意識が浮上した。

「んー‥‥‥‥ルキア、好き、だ」

「え?」

ルキアは、一護の言葉にびっくりして、一護の方を向く。

一護はむにゃむにゃ言っている。

「寝言か‥‥‥‥私を好きななどと、冗談もほどほどにせよ」

ルキアは分かっていなかった。

なぜ、一護がルキアの現世行きを伸ばしたのか。

一護は、ルキアが好きだった。井上のことは嫌いではないが、ルキアのほうが好きだ。

「全く、学校でからかってやろう」

ルキアは、そうほくそえんで目を閉じてまた一護の腕の中で眠りについていった。



朝は、寝坊してしまった。

急いで制服に着替え、顔を洗って歯を磨いて、朝ごはんはぬきで学校に自転車で向かう。

1限目の半ばくらいで登校できた。

「一護が悪いのだぞ。変なことを言うから、眠りが浅くて長くなった」

「なんだよそれ。ルキアだって悪いんだぞ。抱き心地がいいから」

はたから見れば痴話げんかにしか見えない二人。

二人そろって遅刻で登校すると、担任から怒られた。

大学試験の控えた大切な時期である。もうすぐクリスマスだ。

ルキアは尸魂界に戻るので、進路先は自営業の手伝いということになっていた。

一護は、ドイツ語の翻訳家になりたいので、語学に力を入れている大学の推薦が決まっていた。

二人して、受験とは程遠いところにいる、

昼休みになって、皆で屋上で弁当やらパンを食べているとき、ルキアは笑ってこう言った。

「一護のやつな、寝ぼけて私を好きだなどとぬかしおった。そうとう悪夢を見ていたに違いない」

「え。俺、そんなことお前に言っちまったのか?」

「そうだぞ」

「あちゃー」

「黒崎君、ファイト!」

井上の声援を受けて、一護はルキアの右手をとって立ち上がらせると、皆の前で堂々と宣言した。

「ルキア、お前のことが大好きで愛している。俺と付き合ってくれ」

「へ?」

ルキアは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。

それから、ボンと赤くなって、一護と距離をとる。

そして、その場から逃げ出した。

「おい、ルキア!」

「し、知らぬ!」

一護は、ルキアを追いかけた。

クリスマスムードの町を、ルキアはさ迷い歩く。

やがて夜になって、イルミネーションが綺麗に瞬きだした。

ルキアは、気配を探って一護を避けている。

だが、虚が現れた。

ルキアは義骸だし、一護がやってきて、倒してしまった。

「ルキア‥‥‥」

「い、一護、私は死神で貴様は人間だ。その差は埋まらない。貴様が老いても私は若いままだ。それでも、私を好きだと言うのか?」

「ああ、好きだ。種族なんてくそくらえだ。寿命終えたらどうせ本当の死神になるんだろうし、一緒の時間を過ごしてくれ、ルキア。恋人同士になろう」

ルキアは真っ赤になって、湯焼け空を見あげていた。

「だめか?」

「少し、考えさせてくれ」

「ああ。尸魂界に戻る前に、返事をくれ」



それから、ルキアは一護と一緒のベッドで眠るのをやめた。

床に布団をしいて、そこで寝るようにした。

本当は押し入れがよかったのだが、却下された。


恋人同士でもない男女が抱き合って眠るほうが、おかしかったのだ。

クリスマスがやってきた。

サンタの恰好をした店員が、ケーキを売っている。

ケーキを買いに、ルキアと一護は繁華街を訪れる。

無事ケーキを買って家に戻り、クリスマスパーティーをした後で、一護はルキアにプレゼントがあると、ルキアと一緒に自室にまで戻った。

「なんだ。マフラーか?耳当てか?セーターか?」

「ちげーよ。これ‥‥‥」

一護が取り出したのは、チェーンにぶら下げられた、アメジストの指輪だった。

「こんな高そうなもの‥‥‥‥」

「バイト頑張って貯めたんだ。もらってくれ。俺の彼女になってください」

「う‥‥‥‥卑怯だぞ。こんなものまで渡してくるとは‥‥‥‥‥幸せにしなきゃ、別れるからな!」

一護が顔をあげる。

「じゃあ」

「一護、私も貴様を好きで愛しているんだろうな。このプレゼントが心から嬉しい。また同じベッドで寝たい」

「よしゃあああああ」

告白の返事はOKということで。


その日、ルキアと一護はまた前のように、ルキアを後ろから抱く姿勢で一護はルキアと一緒に同じベッドで寝た。

クリスマス当日、仲間たちと集まって、ささやかなパーティーを開いた。

「黒崎君、進展は?」

井上が早速聞いてきた。

「OKもらった。ルキアが俺の彼女」

その言葉に、ルキアが顔を赤くする。

「おめでとう、黒崎」

雨竜が、一護に声をかける。

茶虎もおめでとうと言ってくれた。

もう学校は冬休みだ。

来年には試験が控えているので、皆で集まってわちゃわちゃするのも年内はこれが最後だろう。

「わたし、黒崎君のことがずっと好きだったの。でも、朽木さんのことが好きだって、ふられちゃった」

井上は、炭酸ジュースのキャップをあけるとごくごくと飲み干していく。

「ぷはーーー。二人とも、幸せでいてね!」

「分かっている、井上。貴様の分まで、一護を愛する」

ルキアの首には、チェーンがあり、指にはアメジストの指輪がはめられていた。

「ルキア」

一護は、ルキアをずっと見つめていた。

「な、そんなに見るな。恥ずかしくなるであろうが」

「ルキア、好きだ。俺の彼女になってくれて、ありがとな」

「ふ、ふん。仕方なくだ」

「またまた、朽木さんも素直になれないね」

雨竜がそう言うと、みんな笑った。


帰り道、一護はルキアと手を繋いで歩いて帰っていく。

ふと、コンビニの前で一護が立ち止まった。

「一護?」

一護は、オレンジ色の夕焼けに包まれて、こんな少年が本当にユーハバッハを倒したのかと思うほどに、どこか不思議なかんじがあった。

「ちょい背伸びしてくれ、ルキア」

「?」

一護はかがんで、ルキアに唇に唇を重ねる。

「んう」

舌を甘噛みされた。

ルキアはプチパニックになっている。

「い、一護、貴様こんな場所で!」

「家ならいいのか?」

「たわけ、そういう問題ではない!」

「いずれ、全部いただくんだから、別にいいだろ?」

つまりは処女をよこせということだ。

真赤にまたなったルキアを、夕焼けが照らす。

「ああもう、私はなんでこんな男を好きになってしまったのだ。兄さまや恋次もいるのに!」

「いや、恋次なら分かるけど白哉は無理だろ。義兄だし」

「ふ、ふん」

ルキアはそっぽを向いて家に向かって歩き始める。

一護も、静かにその後を追いかける。

追いついて、また自然と手をつなぐ。一護の手は暖かかった。ルキアの手は冷たい。斬魄刀が氷系統なせいか、体温が若干低めなルキア。

クリスマスが終わり、正月を迎え、卒業式の日がやってきた。

一護は、大学に通いながら、週に一度は尸魂界を訪れた。、

ルキアも週に一度は現世の一護の家にやってくる。

ずっと一緒にはいられないが、メールやラインでやりとりできるので、寂しさは不思議とない。

「さて、ルキアの大事な兄さまに、結婚の許可もらわねぇとな」

大学1年生夏。

ルキアと一護は、結婚した。

付き合いだしてからスピード結婚になるが、二人は幸せだった。

ルキアは13番隊の隊長になり、一護はドイツ語の翻訳家として働いている。

やがて、一護は年老いて老衰した。最後までルキアが傍にいた。

魂魄として抜け出た一護は、小年時代の姿をしていた。死神代行をしていた、高校生くらいの外見だった。

「迎えにきたぞ」

ルキアが、魂葬のために一護にぺたんとはんこを押す。

一護は、過去の記憶をもったまま、尸魂界にたどりつく。

「さぁ。第二の人生のはじまりだ、一護」

「おう。とりあえず、また結婚しなおすか?」

「ふふ、どちらでもよい」

ルキアは穏やかに微笑んだ。

愛する人だけが年老いて弱っていく姿しか見れなかったが、今は一護も本当の死神で、立場は対等である。

護廷十三隊で、一護の行き先で喧嘩になるだろう。

「とりあえず、白哉にまたよろしくとでも挨拶にいくか」

「子供は多い方がいいな」

「ぶばっ」

ルキアの言葉に、竹でできた水稲から水を飲んでいた一護は吹き出した。

「汚いな」

「子供か。そうだな。死神同士ならできるだろうし‥‥‥まぁ、はじめ一人作って世話できそうなら二人目作ればいいんじゃないか」

ルキアと一護は、尸魂界で二度目の結婚式を挙げた。

そして苺花という娘をもうけ、その次に一勇という息子をもうけた。

一護は、結局ルキアの元で仕事を覚えるまで席官ということで落ち着いた。

大きな戦争やら諍いやら、虚退治の遠征やらには、一護は遊軍的な扱いで参加させられるが、それなりに刺激のある楽しい毎日を送っている。

ルキアも13番隊隊長として、日々の責務を全うして、たまに席官をしている一護をからかう。

好きだと告白して、100年以上経過したが、関係は良好で、二人は子育てに追われながらも尸魂界で幸せに暮らすのだった。



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にゃんとわんだふる

恋次は、白哉が残していった隊長羽織に顔を埋めて、匂いをかいでいた。

白哉は、緊急の要件ができたと執務を切り上げて朽木邸に帰ってしまった。

追いかけたかったが、仕事が残っているし、どうやら貴族関連の揉め事に巻き込まれているらしくて、恋次は白哉が早く自分の元に戻ってこないかとか嘆きながら、隊長羽織を残していった白哉を悲し気に思った。


次の日、白哉は執務室にこなかった。

欠席だった。

理由は見合い。


恋次は頭の中が真っ白になった。

まさか、白哉が恋次と恋人同士であるのに、見合いなど受けないと思っていたからだ。

2日、白哉は欠席した。

恋次の不安といら立ちは募りばかりだ。

3日目に白哉が執務室にやってきた時、後ろからきつく抱きしめた。

「恋次?」

「俺は強い死神じゃない。あんたが嫁をとるなら、その嫁を酷い目に合わせてあんたとの婚礼を取り消しにしてやる」

「待て、恋次」

「隊長、愛してます。見合いなんてしないでください」

やや乱暴に口づけられて、白哉は恋次を優しく抱きとめた。

「私と同じ、4大貴族の姫君との見合いだったのだ。断ったが、無理やりおしかけてこられた。だが、結婚はしない。見合いももうしない」

「本当ですか」

「ああ、本当だ」

「じゃあ、俺に黙って見合いした罰、受けてくださいね」

「恋次?」

「これ飲んでください」

恋次が出してきたのは、淡い紫に輝く小瓶だった。

「何かの薬か‥‥‥‥嫌だが、見合いをした罰だと思って飲んでやろう」

白哉が小瓶の中身を飲み干すと、白哉に黒い猫の耳と尻尾が生えた上に、発情期らしくとても今すぐ恋次にめちゃくちゃにされたいという衝動にかられた。

「れ、恋次、これは?」

「涅隊長に作らせたちょっとした薬です。1日で効果なくなるから、安心してください」

「恋次、あああ、欲しい。早く、こい」

白哉は理性を捨てて、自分から死覇装を脱いでしまう。

「あ、全部脱がないでください。中途半端なほうが刺激が強くてあんたを蹂躙してるのは俺だって分かっていい」

「恋次、恋次」

「たっぷり、愛してあげますからね?」

恋次は死覇装を自分も脱ぎ捨てて、白哉を隊首室のベッドにやや乱暴に寝かせると、まずは黒い猫耳を触った。

「ん‥‥‥」

ゆらりと、黒い猫の尻尾が揺れる。

それを手で掴むと、びくんと白哉の体が強張った。

「感度いいっすね」

「あ、つらい」

恋次は、白哉の舌を絡めとりながらディープキスをして、死覇装から僅かに見えた胸の先端をかりかりとひっかいてやる。

「あ、あ」

「こっち、もうこんなに濡れてる」

恋次は、白哉のすでにたちあがって蜜を垂らしているものを手でしごきあげる。

「ああああ!!!」

白哉は、あっけなく精を吐き出してしまった。

恋次は黒い猫耳と尻尾が性感帯であるのを確認したうえで、蕾をローションでぬらして、指をうめていく。

「うあっ」

右のほうの猫耳をかじりながら、前立腺のところでぐっと指を折り曲げる。

何度か指でこすりあげると、白哉はまた透明な蜜をだらだらと零す。

「いきますよ?」

「あ、恋次、私は兄だけを愛している。たとえこの先何があろうとも、兄だけを‥‥‥」

くちゅりと音をたてて、恋次の肉の塊が白哉の蕾を引き裂いていく。

「ひああああ」

いつまでたっても、最初はなれない。

しばらく大きさに慣らせるために、あえて動かない。

「あ、動いてくれ」

白哉が、我慢できなさそうに、足を自分から広げる。

淫靡な姿に、くらくらする。

ずちゅりずちゅりと音をたてて、挿入を繰り返す。

「いあああ!!!」

ちゅどんと奥を貫かれて、白哉は中いきをしながら、精液を吐き出していた。

恋次も、白哉の胎の奥で子種を弾けさせる。

ゆらりと猫の尻尾が揺れて、恋次の足にからみつく。

「もっと、もっと欲しい」

発情期なだけあって、白哉はまだまだものたりないのだと、恋次のものを締め付ける。

「あーもう、あんた綺麗なのに淫乱でかわいい」

「恋次、兄だけを愛している」

「俺も、隊長だけを愛してます」

くちゃ、くちゃっと音をたてて、結合部から精液が逆流してきて、白哉の太ももを伝い落ちる。

恋次は、死覇装が体液まみれになるのもおかまいなしに、白哉を上にして騎乗位で抱いた。

「あ、あ、あ」

とんとんと、リズムをつけて突き上げられる。

白哉の猫の耳がぴくりと動き、白哉は一度大きくのけぞって中いきすると、自分から腰を動かし、深くつながり、浅くしてまた深く繋がる行動をゆっくりする。

「きもちいい‥‥‥恋次、もっと」

「あー、薬飲ませて正解かも。隊長、こんなに求めてくれるのってあんまないっすからね」

「恋次」

「隊長、愛してます。俺だけのものだ」

「私は、兄だけのものだ‥‥‥」

ぐちゅぐちゅと結合部は卑猥な音をたてて、泡立っていた。

そのままぐりっと抉る位置をかえて、白哉を正常位で犯す。

「もっとめちゃめちゃにしていい」

「隊長‥‥‥‥最高っす」

恋次は、白哉の胎の奥に子種を弾けさせて、また何度も求めあった。

変な薬を飲まされたせいで、普段が性欲に淡泊である白哉が何度もと求めてくる。

4回ほど白哉の胎の奥に子種を注ぎ込んで、白哉もその後3回は精液を放って、お互い力尽きた。

「ふふ‥‥‥‥」

白哉は、ゆらりと猫の尻尾を恋次の腕にまきつける。

「まだ足りないんすか?」

「いや、私とてこれ以上は無理だ」

「俺もっす」

「それにしても、耳が2つあると言うのは変な気分だ。尻尾だけでも変な気分になるのに」

「え、エッチな気分になるってことっすか?」

「たわけ」

白哉は猫の尻尾で恋次の体を何度かはたく。

「四楓院夜一の気分が少しだけわかった気がしないでもない。中途半端な猫の姿だが、またたびとかつおぶしとチュールが欲しい」

「今度同じ薬用意した時、買ってきます」

「たわけ。もう薬など飲まぬ」

「ええー」

「兄と体を重ねると、こっちの身がもたぬのだ。理解せよ」

「性欲ありまくりですんません」

「うむ」



薬の効果が切れるまであと数時間はあるので、白哉を置いて恋次は買い物にでかけて、チュールはさすがに無理だったが、かつおぶしとまたたびを買ってきた。

「にゃあ」

ちゃんと身を清めて衣服をきた白哉が、猫の耳と尻尾をはやしたまま、またたびによってごろんごろんと布団の上を転がる。

とどめにかつおぶしを食べた。

「にゃーん」

白哉の体が縮んでいく。

本当に黒い猫になってしまった。

恋次は驚き、次に慌てて涅マユリに連絡をとり、薬の効果は3日続いて2~3日は猫の姿のままになるが、自然と元に姿に戻ると聞いて、安心した。そして、もふりまくった。

「にゃあ、涅マユリから解毒剤をもらってこい」

「あ、はい、すんません、行ってきます。っていうか、一緒にいきましょう‥‥‥ああ、でも涅隊長が隊長に興味もって解剖とか実験とかいいかねないな。ちょい時間かかりますが、待っててくださいね」

結局、解毒剤はないとのことだった。

猫の姿にまで進行したら、3日ほどで治るといわれていた。白哉は仕方なく3日猫の姿のままいることにした。

恋次だけでなく、ルキアにまでもふられまくったのは、いたしかたないことだろう。

「にゃああ」

猫の鳴き声しかできなくなって、ほんとに治るのか心配したが、3日後にはちゃんと元の白哉の、死神の姿に戻っていた。

「恋次」

「はい」

白哉は、恋次に淡い透明な緑色の液体を口移しで飲ませた。

「えええええええ!?」

恋次の頭には、犬の耳、腰には犬の尻尾があった。

「仕返しだ。1日たてば完全な犬になり、3日経てば元に戻る」

「隊長、簡便してくださいよ」

「ふん、私に猫になる薬を飲ませた復讐だ」

「反省してます」

「全然そんな風に見えないが。お座り」

「わん」

「お手」

「わん」

「ふ、犬だな。まだ人の姿を保っているが、中身はほぼ犬か」

「隊長ーーーーーーーー。うおおおおおんん」

獣人の姿で恋次が白哉を押し倒してきたので、白哉は投げ飛ばした。

「あああ、愛が遠いワン」

恋次は言葉がしゃべれる間、語尾にワンをつける謎の生物となり、2日3日は完全な犬の、柴犬の姿になって、事件は幕を下ろすのであった。




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駄犬

その日は、白哉は意識をなくすまで酒におぼれた。

高級居酒屋で、個室をとって、白哉は恋次と酒を飲み料理を食べていた。

恋次は酒に強く飲むのも早くて、白哉が一口飲む間に3口は飲んでいた。

白哉は果実酒ばかりを飲んでいると、恋次においしいからと、恋次が飲んでいた酒をすすめられた。

「ここの料理うまいっすね。この酒もおいしいんで、飲んでみてください」

「うむ」

白哉は、盃に恋次が飲んでいた酒をついでもらった。

かっと、喉が焼ける感覚がした。

少し辛くて、白哉はその酒を気に入った。

「もっともらえぬか」

「あ、じゃあ追加注文しますね」

追加でもってこられた酒を、恋次と飲みかわす。

白哉は下戸ではないし、酒に弱いわけでもない。

ただ、恋次のように強い酒精の酒を飲んでいくと、酔いがまわってきた。

「恋次、もっと傍にこい」

「隊長?酔ってるんすか?」

「酔ってなどいない」

白哉の目は酒を飲みすぎたせいかとろんとしていて、明らかに酔っていた、

恋次は、白哉の酒を奪って、白哉の傍にきた。

「んっ」

酒のかわりに水を口移しで飲まされて、白哉が恋次の頭をはたく。

「盛るな」

「隊長、かわいい。このままお持ち帰りしたいっす」

「私はものではないのだぞ」

「分かってます」

白哉は、長い黒髪をかきあげる。

さらさらと音をたてて、髪が舞う。

昔と違って、服装をかえた白哉は鎖骨が見える。

恋次は、そこにキスマークを残したくなった。

「隊長、ちょっとだけいいっすか」

「なんだ」

「目を閉じててください」

白哉は目を閉じる。

もそもそと恋次が動く気配がして、鎖骨にぴりりと感触が走り、キスマークを残されたのだと理解して、白哉は潤んだ瞳で恋次の頭をはたいた。

「いきなり何をする」

「いや、隊長は俺のものだなって」

「私は誰のものでもない」

「はは、まぁそうっすね。でも、褥では俺だけのものっすよ」

「恥ずかしいことを‥‥‥‥」

白哉は、恋次に奪われた盃を取り返して、また酒精の強い酒を飲む。

「隊長、ほどほどにしないと酔いつぶれますよ」

「たまにはよいであろう。介護はしてくれるのであろう?」

「送り狼状態になってもいいなら」

「‥‥‥‥‥」

白哉は何も言わず、酒を飲んだ。

そして、バタンと倒れた。

「隊長!?」

恋次が慌てて、白哉を抱き起す。

白哉は酒の飲みすぎで酔いつぶれて、静かに眠っていた。

「あーもう、言わんこっちゃない」

料理の金と酒代を、白哉の財布から勝手に出して清算して、眠ってしまった白哉をお姫様抱っこして外に出る。

「朽木邸は遠いし、深夜だし‥‥‥‥宿でも取るか」

恋次は、居酒屋が並ぶ場所から少し離れた、中級の宿屋で部屋を1つ借りた。

白哉の隊長羽織を脱がせて、布団に横にさせて薄い毛布をかけた。

暑い残暑も、名残おしくなってきた季節だ。

もう蝉の鳴く声はせず、草むらからは鈴虫やらのいい音色が聞こえる季節。

暑いか寒いかでいうと、ちょうどいい気温の季節だ。

雨が続いていたので、仕事以外にあまり外に出なかった白哉は、久しぶりに恋次と酒を飲んだのだが、酔いつぶれるまで白哉が飲むとは思わなかった。

「ん‥‥‥恋次」

「隊長、起きたんすか?」

「からだが熱い。抱け」

まさかの白哉からの誘いに、恋次が息をのむ。

潤んだ瞳と、ほんりの上気した頬がなまめかしい。

「じゃあ、遠慮なく」

恋次は服を脱ぎ捨てて、白哉に覆いかぶさる。

「んっ」

白哉は恋次の口づけを受けて、そして目を瞬かせて、目を閉じた。

「え、隊長?」

すーっと、静かな息だけが聞こえる。

「隊長、こりゃないっすよ。据え膳ですか!」

「すー‥‥‥‥‥」

深い眠りに入ってしまった白哉に無理強いはできない。

恋次は、白哉の鎖骨から首にかけてキスマークを残して、鎖骨には歯形もつけた。

それでも白哉は起きない。

「寝るか‥‥‥…」

白哉の布団の横に布団をしいて、眠くなるまで白哉の顔を見ていた。

30分ほど経つと、眠気が押し寄せてきて、恋次も眠ってしまった。



「恋次、兄は私に何をした!」

朝起きると、白哉が乱れた衣服で鏡の前に立ち、鏡うにうつっているキスマークに怒っていた。

「隊長が抱けっていったのに、寝ちまうから仕返しです。鎖骨までキスマークありますからね」

「く、この駄犬が。目に見えるところにキスマークをつけるなど‥‥」

白哉は思い切り恋次の頭をはたいた。

「あいた!」

「この駄犬が!」

「きゃいん!」

白哉に頭をはたかれつつも、恋次はどこか嬉し気であった。

体は重ねていないが、同じ部屋で寝るのは久しぶりだった。白哉の穏やかな眠り顔をたっぷり堪能できた。

白哉は回道でキスマークと歯形を消す。

「ああ、隊長は俺のものだって証が!」

「このような痕を残して、執務できるものか」

「けちー」

「燃やすぞ」

「嘘です、ごめんなさい」

恋次の足を踏んで、白哉は恋次を連れて自分の屋敷までいくと、湯あみをして衣服を整えた。恋次も、白哉の館によく泊まりにくるので、かえの服などがおいてあり、違う湯殿に入り、着替えた。

今日は、二人とも非番ではなく、仕事がある。

朝餉を白哉と恋次と、ルキアとでとった。

「なぜ貴様がここにいるのだ、恋次。兄様をまさか毒牙にかけたわけではあるまいな?」

ルキアがなぜか朽木家の食卓にいる恋次を睨む。

「かけてねぇよ」

「信じられん」

性欲がおおい恋次に付き合わされる白哉は、月に数度しか恋次の相手をしない。

恋次はもっと白哉を抱きたいのだが、性欲をぶつけすぎて気絶させてしまうのがおちなので、いつもセーブしていた。

ああ、今度の非番は二人一緒なので、その日を逢瀬にしようと恋次は考える。

風呂上がりである白哉は、めっちゃいい匂いがして、朝食を食べながら、別の意味で白哉を食べたいと思った。

「執務時間前だ。隊舎に行くぞ、恋次」

「あ、はい」

「兄様、この駄犬に気をつけてください!」

「分かっている。駄犬だからな」

「ひでぇ」

とか言いつつ、駄犬呼ばわりされるのも慣れた。

恋次は見えない尻尾をばっさばっさと振って、白哉の後をついていく。

ああ、きっとこいつは前世は犬だったんだろうと思う白哉とルキアであった。





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愛されないと消えてしまう世界。

その世界では、緑の瞳をもって生まれた者は、誰かに深く愛されないと、体が溶けていって消えてしまうという世界だった。

浮竹十四郎は、はじめは瞳の色は青だった。

年つきがいくごとに緑に変わっていき、思春期を迎える頃には見事な翡翠色の瞳になっていた。

美貌も整っていたし、浮竹を愛そうとする者はいたが、浮竹がそれを拒否した。

男性からばかり愛されそうになって、女性に普通に愛されたい浮竹は、少しずつ消えていく輪郭をやっとのことで保ちながら、自分の嫁になってくれる相手を探していた。

「いやぁ、ボクに選ばれるなんて君はついてるねぇ」

京楽という、浮名を流す同い年くらいの青年に、浮竹は口説かれていた。

「いやいやいや。もじゃひげの男に愛されたいなんて思わないぞ。俺は綺麗じゃなくてもいいから女性に愛されたいんだ」

「無理だよ。その美貌でしょ。比べられる女性がかわいそうだしねぇ」

「いやいやいや。どこかにきっと、俺を愛してくれる女性がいる」

もう、何人目かになるか分からない女性に求婚し、浮竹はことごとくふられていた。

自分より美人な男の恋人にはなりたくないというのが、女性たちの共通点だった。

翡翠の瞳になって、けっこう経つので輪郭が大分危うくなり、浮竹はどうしたものかと思う。

「まぁ、このまま消えるのも仕方ないか」

「仕方ないかじゃないよ。ボクが君を愛するから、生きて?」

「いやいやいや。男に愛されたくないし」

「そう言わずに」

押しに弱い浮竹は、京楽に言いくるめられて、京楽と付き合うということになってしまった。

「俺は男だぞ?」

「知ってるよ。君が青い瞳の頃から知ってた。ボクを覚えてない?春水だよ」

「え」

春水と聞いて、浮竹は目を見開く。

幼い頃、少女のようにかわいい春水という名の少年とよく遊んだものだ。

浮竹は病弱で、よく春水が家に遊びにきた。

「お前、春水なのか?」

「そうだよ。君は浮竹十四郎。ボクの初恋の相手」

「いやいやいや。初恋って‥‥‥」

「初恋は初恋だよ。誰かに愛されなきゃ、君はこのまま溶けて世界から消えてしまうよ?」

「それも嫌だが、でもなぁ」

「まぁまぁ。とりあえず、付き合ってみようよ」

こうして、幼い頃の友人だった相手と浮竹は交際を開始して、すぐに春水にベろべろに愛された。

プラトニックな愛を半年。

浮竹の輪郭は少しはっきりしていて、溶けるのには時間がかかりそうにはなっていた。

「そろそろいいかな」

「何がだ」

「君に手を出しても」

「いやいやいや」

「まぁまぁ、そう言わず。ボクの伴侶なんだから」

「いつからそうなった!?」

浮竹はつっこみたいことがたくさんあった。

付き合って半年の間に、京楽は浮竹との婚姻届けを提出してしまっていた。

それを浮竹は知らなかった。

京楽に怒っても、相手はにこにこしてどこ吹く風。

「はぁ。疲れた」

浮竹はソファーに腰かけて、翡翠の瞳をもつ自分を鏡で見る。

男に口説かれそうな容姿は相変わらずだった。

京楽は浮竹を抱くことで、骨の髄まで愛して世界から溶けて消えることはなくそうとしていた。

「今夜、君を抱くよ」

「うーむ」

世界から消えてもいいと思っていたが、家族もいて本当は消えてしまいたくない。

長く悩んだ末に、浮竹は京楽を受け入れることにした。

「俺を一生愛せるか?」

「愚問だね。死ぬまで愛せるよ」

「あっ」

キスをされたが、嫌ではなかった。

そのまま抱擁されて、いつものようにスキンシップをとるのだと思ったのだが、服を脱がされる。

「待て待て」

「これ飲んで?」

口移しで、何かを飲まされて、浮竹はかっと体の熱さを感じた。

「何を、飲ませた?」

「媚薬」

「お前というやつは」

「でも、痛いより気持ちいいほういがいいでしょ?」

そう言われて、浮竹はどろどろと思考が溶けていくのを感じながら、京楽の腕の中にいた。

「優しくするから」

抱擁とキスを繰り返されて、ぐちゃぐちゃに愛された。

「最後までするよ?」

「あう」

軽い愛撫を何度も受けて、浮竹は意識がすでにとろけている。

「大好きだよ、十四郎」

「しゅん、すい‥‥‥‥」

浮竹を、実家の屋敷の寝室に連れていき、ベッドに横たえて、その衣服をはいでいく。

雪のように真っ白な肌だった。

髪の色も同じ白で、まるで雪だと思った。

「愛してるよ」

「あ、春水」

裸身にされて、ひざを割られて、浮竹は京楽に己のものを口に含まれて、経験したこともない快楽の上にいた。

「やあああ」

「気持ちいい?」

「あ、いいから、出させてぇ」

根本を手で戒められて、出したくても出せない。

「もっとおねだりして?」

「あ、俺を愛して」

「よくできました」

「んああああ」

びゅるびゅると、濃い精液がシーツに零れ落ちる。

「大分たまってたね?一人でしたことない?」

「そんな、恥ずかしい行為、できるわけがない」

「じゃあ、もうボクなしではダメな体にしてあげる」

京楽は、何度も浮竹のものを舐めたりしごいたりして、精液を吐き出させた。

「あ、体の奥が熱い」

「抱くよ?」

「春水‥‥‥‥」

ローションに濡れた指を、浮竹は受入れさせられるが、媚薬の効果で頭はぐずぐずの快感に溶けている。

「あ!」

こりっと、前立腺を刺激されて、浮竹が反応する。

本当なら射精したいところだが、もう出るものはなくて、透明な蜜をだらだらと零した。

「いれるからね」

「ひあああああ!」

指とは比べ物にならないものを、そんな場所に使う器官でない場所に侵入されて、痛みと熱と快感がごちゃ混ぜになった。

「あう」

ずちゅずちゅと、前立腺を刺激されると、ドライでいくことを覚えた。

「十四郎、好きだよ」

「あ‥‥‥‥」

浮竹は、京楽のものを受け入れて、京楽の背中に爪をたてる。

「かんでもいいよ」

そう言われて、浮竹は京楽の肩に噛みついた。

「ん、いきそう。中でだすよ?」

「んあああ、あ、だめぇ」

浮竹は嫌がるが、京楽は浮竹の最奥に子種を弾けさせた。

「あ‥‥‥」

じんわりと体内の奥で熱を感じて、浮竹はぼーっとした思考で京楽に懇願する。

「もっと、きもちよくなりたい」

「うん」

浮竹を騎乗位で、下から突き上げると、浮竹は長い白髪を宙に舞わせて、京楽の視界が白に染まる。

「愛してるよ、十四郎」

「あ、春水‥‥‥もっと」

騎乗位から、ごりっと音をたてて押し倒す。

中のものが、最奥を抉りぬいて、浮竹はオーガズムでいっていた。

「やああああ、変になるう。気持ちいいの、止まらない」

「もっと気持ちよくさせてあげる」

京楽は、浮竹の意識が飛ぶまで浮竹を抱いた。



「ん‥‥‥‥」

「気がついた?」

「腰が痛い」

「まぁ、そうなるよねぇ」

浮竹の輪郭はしっかりしており、愛されたせいで世界に安全に存在できた。

「君を愛してるよ。もう、世界から溶けて消えたりしないから」

「俺は‥‥‥‥その、俺を選んでくれてありがとう」

戸惑いがちにそう言うと、京楽に思い切り抱きつかれた。

「幸せになろうね?」

「う、うん‥‥‥‥」

浮竹は、とまどいがちにはにかむ。

子供の頃の友人と恋人同士になるのは、不思議な感覚であったが、悪くはなかった。

京楽は本気で浮竹を愛してくれるし、浮竹も京楽を受け入れていた。

翡翠の瞳は、輝きを増して、宝石のようだった。

愛された緑の瞳を持つ者の瞳からは、涙が宝石になるらしい。

ためしに捨てられたことを想像して泣いてみると、数滴の涙がサファイアとエメラルドをうんだ。

「これ、俺は働かなくて生きていけそうだ」

「何も、涙を流す必要ないよ。ボクは上流貴族だから、君くらい養うなんて簡単さ」

「勝手に籍をいれてるしな」

「あはは、事後承諾でごめんね?君を手放したくなかったから」

浮竹は、京楽に愛されてもうこの世界では溶けることはないだろう。

京楽は、浮竹を伴侶として、妻を迎えずにいた。

この世界の住人は、寿命が長い。

数百年に渡り、浮竹と京楽は、愛しあいながら、特別な世界の中で生きていくのだった。

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恋白

ミーンミーン。

遠くで蝉のなく声が聞こえる。

「暑いっすね」

恋次は、扇風機にあたりながら、夏の暑さを感じていた。

「隊長は暑くないっすか?」

「暑いと思わなければ、暑くなどない」

「なんじゃそりゃああ」

恋次はうちわも手にして、天井を仰ぐ。

ここは白哉の別邸だ。白哉と恋次は、ヒート期間を過ごしていたのだが、ようやくおさまりかけていた。

白哉はオメガだ。そして恋次はアルファ。

二人は正式に次となり婚姻し、二人の間には恋夜(れんや)という幼い子供の男児がいた。

二人の愛の結晶だった。

「隊長‥‥‥」

恋次が、白哉の長い黒髪を手に取る。

「寝室いきませんか。ヒート期間も終わりだけど、まだあんたが欲しい」

「‥‥‥」

白哉はどうしたものかと思ったが、まだヒートの熱は完全に抜けきっていないし、恋次に求められるのは嫌いでないので、今はちょうど暑気休暇をとってあるので、恋次の誘いに乗った。



「クーラー最高」

白哉のもつ別邸の寝室には、現世の最新型のエアコンがあった。

「シャワー浴びましょう」

恋次に手を握られて、二人は広い浴室で水のシャワーを浴びる。

同じシャンプーとボディソープで髪と体を洗った。

「あー、あんたと一緒だと、どうにも我慢できない」

恋次は、白哉に口づける。

「ここでするのか?」

「だめっすか?どうせベッドにいってもシーツがぐちゃぐちゃになって汚れるだけっすよ」

「恋夜は‥‥」

「乳母に任せてます。大丈夫ですよ」

愛しい恋夜は、優秀な乳母をつけている。

「あ」

恋次が、背後から白哉に抱きついてきて、その細い体を抱擁した。

「んっ」

背中を舐められて、白哉が恋次の手に噛みつく。

「あんたが欲しい」

「れ、恋次」

ぐちゃぐちゃと音をたてて、白哉のものに手を伸ばしてしごく。

白哉のものはあっという間に精を弾けさせてしまった。

「ああ!」

「隊長、俺のも‥‥‥」

「んっ」

白哉は、戸惑い気味に恋次のものに手を伸ばして、拙ないが愛撫する。

「ああ、最高っす」

「ひあああ!」

いきなり蕾に指をいれられて、白哉がびくんと反応する。

オメガなので、すでに濡れていたそこは、貪欲に恋次の指をもっとと求めてくる。

「いれますよ。いいっすか」

「嫌だといっても、どうせ抱くのであろうが」

「すんません、隊長がエロすぎてちょっとがっついてます」

ぐちゅっと音をたてて、恋次のものが白哉の体の内側に入ってくる。

「んっ」

立ちながら、白哉の細い足を片方担ぎあげて、侵入する。

「んあ、あ、あ」

「ああ、あんたの中最高に気持ちいい」

「ひあ、ん、あ」

ぱんぱんと音を立てて、恋次は肉と肉をぶつけあう。

「あっ」

ごりごりと奥をえぐられて、白哉は快感のための涙を流す。

「もっと?」

「あ、もっとだ、恋次」

「あんたが俺の傍で淫らになってくれるのが、未だにたまに信じられねぇ。本当に番になって結婚して、子供までいるのが夢か何かだと思ってしまいます」

「恋次、愛している」

「俺も愛してますよ、隊長」

「ひああああ!」

ぐりぐりと最奥を抉られて、白哉は白い精液を浴室のタイルに零す。

「まだ終わりじゃないっすよ」

「んう」

口づけをされながら、また恋次のものが入ってくる。

「んん」

「隊長の中、すっげぇうねってる」

「あ、あ‥‥‥」

恋次は、白哉の奥に子種を何度か弾けさせて、引き抜くと、ドロリと白い液体が逆流して白哉の太ももを伝う。

「あ‥‥‥‥」

「まだいけますよね?続きは寝室で」

「れ、恋次」

「エアコンきいてるんだし、寝室で」

浴室では、柔らかい褥がないため、白哉の体に負担がかかる。

恋次はバスタオルで白哉の水分をさっと取りのぞいて、腰にバスタオルを巻いて同じくバスタオルを巻いただけの白哉をお姫様抱っこして、寝室にいく。

クーラーはほどよい気温で、外ではみーんみーんと蝉の声がうるさい。

「隊長、愛してます。いつくもの夜を共にして、ますますあんたが愛しい」

「恋次‥‥‥‥」

今恋次と白哉のいる場所は、白哉の別邸で、洋室になっていた。

ベッドにゆっくりと白哉を横にして、ギシリを音をたてて、恋次が覆いかぶさる。

「ん」

深く口づけられる。

「あ」

胸の先端をかりかりとひっかかれて、白哉はびくんと反応する。

「ここ、好きっスよね」

「やあ」

胸ばかりをいじられて、白哉が濡れた声を出す。

「あ、私を抱け」

恋次は、白哉のものを口にふくんで愛撫した後、精液を飲み込みながら濡れた白哉の蕾に指をいれていく。

1本2本と、指をたしていき、前立腺を刺激すると、白哉は涙を零していた。

「んあああ」

「いれますよ?」

「早く、こい」

白哉は、自分から足を開いて恋次を受け入れる。

恋次はごくりと、淫靡な白哉に唾を飲み込みながら、ゆっくりと挿入する。

「んあああ」

ずちゅずちゅと音をたてて、すでに浴室で3回ほど交わったのだが、それでも物足りなくて今に至る。

浅い挿入を繰り返して、奥にぐちゅりと侵入する。

「あ、奥はだめぇ」

「奥、ゴリゴリされるの好きでしょう?」

「あうっ」

「愛してますよ、隊長」

「あ、恋次‥‥‥‥」

白哉の弱い奥を攻めながら、恋次は今年の夏も暑そうだと思う。

白哉の中のほうが暑いかもしれないとか考えながら、白哉の体をひらかせていく。

「もっと足広げてください。もっとあげるから」

「んあ、もっと‥‥‥」

恋次は、優しく白哉を抱く。

白哉は、涙を浮かべて恋次を締め上げる。

「あ、そんなにしたらもたねぇ」

「早く、中に注げ。恋次の子種が欲しい」

「また、子供出来ても知りませんよ」

「アフターピルを飲む。子はまだ恋夜だけでいい。んっ」

白哉は、恋次の熱に翻弄されながら、瞼を閉じる。

「愛してます、隊長」

「愛している、恋次」

ベッドで睦言を繰り返しながら、二人はお互いくたくたになるまで体を重ね合うのであった。

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誕生日

12月21日。

クリスマスイブの3日前。それは浮竹十四郎の誕生日であった。

海燕や清音、小椿が浮竹の知らない間にバースディ計画を進めていた。もちろん京楽もかんでいる。

「やっぱ、プレゼントはボクだよね」

「隊長やり殺す気ですか。あんたなんかいつもいてプレゼントになりません。むしろ存在が卑猥です。消えてください」

「酷い!そこまで言う!?」

「どうせ、媚薬とかでももってしっぽりする気なんでしょうが」

「ぐ、ばれてた‥‥‥‥」

海燕は、京楽が用意していた媚薬を没収すると池に投げ捨てた。

「あ、高かったのに」

「知りません。普通のプレゼントをあげてやってください」

「んー。浮竹甘いもの好きだし、現世の有名な店でケーキでも買ってくるかな」

京楽は、そう言って現世にいってしまった。

浮竹は、休暇をもらっているので、寝ていた。

病弱で寝込むことの多い浮竹の睡眠時間は長い。昨日9時には寝たはずなのに、朝の10時になっても目覚めない。

仕方なく、海燕は浮竹の布団と毛布をひっぺがした。

「寒い!」

浮竹が目覚めるが、毛布と布団を取り返してまた寝ようとする。

「あんた、主役の日くらいちゃんと起きてください」

「ん?主役?」

「忘れたんですか。隊長、今日が誕生日でしょう」

「えー今日20日じゃないっけ」

「21日です。寝すぎて時差ボケでも起こしてるんですか」

浮竹は、起き出して大きく伸びをすると、用意されてあったお湯のはられたたらいで顔を洗った。

「そうか。今日は俺の誕生日か。まぁ毎年京楽が迫ってくるだけのいやな日だしな」



「浮竹隊長、お誕生日おめでとうございます!」

「おめでとうございます!」

清音と小椿が入ってきて、クラッカーを鳴らす。

海燕も、クラッカーを鳴らした。

「おお。祝ってくれるのか」

「毎年毎年、誕生日の日はいつも病気で臥せって祝ってあげれませんでしたからね。今年こそはって、皆で用意したんです」

朝から、いつもより豪勢な食事が用意された。

「プレゼントです」

浮竹がよく行く甘味屋の無料引き換えクーポンだった。

清音も小椿も同じものだった。

「マフラーとか手袋とか‥‥‥‥‥みんなでいろいろ悩んだんですけど、隊長はすでに京楽隊長からもらったの持ってるだろうしってことで、無料引き換えクーポンにしました。あとおまけでおはぎ5個あります。午後のおやつにでも」

「今食う」

「朝食食べたばかりなのによく入りますね」

「甘味は別腹なんだ」

浮竹は、隊士たちから花をもらったりして、その日の機嫌はよかった。

午後になって、京楽が帰ってくる。

「ああ、きたのか。こなくていいのに」

「酷い!せっかくケーキ買ってきたのに」

「え、ケーキだと?」

浮竹の顔色が変わる。

京楽はいつも盛ってくる誕生日が当たり前だったので、浮竹は京楽が買ってきてくれたケーキを素直に喜んだ。

「いろんな味のやつ買ってきたよ。ホールケーキもあるし、みんなで食べよう」

「京楽、お前にしてはまともな祝いかただな。何か裏がありそうで怖い」

「酷い!ボクは純粋の浮竹の誕生日を祝ってるだけなのに」

海燕が、打ち明ける。

「京楽隊長、媚薬の準備してましたよ。池に投げ捨てましたが」

「グッジョブだ、海燕」

「高かったのに」

「そんなのいるか」

ホールケーキを取り分けて、海燕、浮竹、京楽、清音と小椿も食べた。

浮竹は3人前はあるだろうかというケーキをペロリと平らげてしまった。

「せっかく無料引き換えクーポンもらったんだ。おはぎに変えてくる」

「あ、ボクも行くから」

甘味屋にいく浮竹に、京楽がついていく。

ついていったら、甘味屋で食事をされて、その代金は京楽が受け持つことになった。

おはぎを大量に引き換えして、浮竹は雨乾堂に持ち帰る。

「これで2日はもつかな」

「また大量に一気に使い込みましたね」

海燕が呆れたため息をつく。

「もらってすぐに使わないと忘れそうだ。甘味屋には京楽の金でいつでも無料だからな」

「くすん。ボクのお金‥‥‥」

「京楽隊長は、浮竹隊長の傍で笑顔が見れるだけで幸せでしょうが」

「うん、まぁそうなんだけど」

海燕は、夫婦のように寄り添いあう浮竹と京楽を二人きりにして、清音と小椿も雨乾堂から去らせた。

「あとは、お好きなようにしてください。しばらくの間近づきませんので」




「浮竹えええええええええ」

「ぎゃああああああああ、盛ってくるなあああああああ」


雨乾堂からかすかに聞こえる悲鳴を、またかと海燕はため息を零す。

まぁ、誕生日だし好きなだけいちゃつかせてやろうと思うのだった。

ちなみに、次の日は浮竹は不機嫌オーラで京楽を蹴っているのだった。




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サンタさん

「メリークリスマス!」

「まだそんな季節じゃないんだが」

「のんのん、細かいこと気にしちゃだめ。ボクからのクリスマスプレゼントはボクだよ!」

フルチンになって襲い掛かってくる京楽を、浮竹はその顔面を蹴ってやった。

「酷い!ボクとのことは遊びだったのね!」

「ああ、そうだ、遊びだ」

「酷い!」

わんわん泣いて、近所迷惑になるからと、京楽にせめてパンツだけはかせて、浮竹は火鉢に近寄って、暖をとる。

「今年も寒いな」

「そうだね。でもボクはパンツいっちょでも元気だよ?風邪ひかないよ?」

「バカは風邪ひかないと言うしな」

「ボクはバカじゃないよ!ただの変態だよ!」

自分で変態と認めても直そうとしないあたり重症だ。

「今年のクリスマスプレゼントか‥‥‥‥お前にはこれで十分だな」

浮竹は、洗濯した今まで盗まずにいられたパンツをちらつかせる。

京楽は、パンツに興味津々で、パンツを目で追う。

「ほら、とってこい」

「わおん!」

パンツ一丁の京楽は、浮竹の投げたパンツを頭にかぶり戻ってきた。

「それが今年のクリスマスプレゼントだ」

「わぁ、浮竹からパンツもらえるなんてボクは幸せ者だなぁ。お礼にボクを」

「いらん」

また顔を蹴られる京楽。

頑丈にできているので、ちょっとやそっとのことじゃ動じない。

「じゃあ、接吻を」

「それもいらん」

でも京楽は諦めない。

「んっ」

逃げ場を失った浮竹を抱きしめて、京楽は舌が絡み合うキスをしてくる。

「何おったててるんだ。潰すぞ」

京楽のものはパンツごしからも分かるようにビンビンだった。

京楽の硬いものを踏みつぶして、浮竹は水を桶で組むと京楽をベランダに立たせて水をぶっかけた。

「うーん、いい温度。火照った体には最高だね!」

パンツをいそいそと脱ぎだすので、浮竹はベランダに鍵をかけた。

「ノンノン、寒いよ浮竹」

やっと本心を出した京楽を、罰だと30分くらい放置してから部屋に入れてやる。

ちなみに、濡れた体を頭にかぶっていた浮竹からもらったパンツでふいて、ベランダという狭い空間でスクワットしていたので、体は寒いというよりあったかくなっている。

「ふう。やっぱ室内が落ち着くね」

「パンツはいて服を着ろ」

「うん」

「やけに素直だな?」

パンツをはいて院生の服を着る京楽に、浮竹が不信がる。

「クリスマスにはサンタさんがくるんだよ!ボク、すごくエッチな浮竹が欲しいって頼んでおいた」

ゴン。

浮竹は、京楽の頭を殴る。

「浮竹も、サンタさんにお願いしなよ」

「サンタなんていない」

「ええ!いるよ?毎年ボクのお願い聞いてくれるもの」

「だとしても今年は無理だな」

「サンタはいるんだから!」

「あー、はいはい」

京楽の願いがありふれた‥‥‥‥たとえば新しいマフラーが欲しいとか、そんなものだったら叶えてやろうと思っていた自分の甘さを痛感する浮竹。

変態には、何もなしでいい。

ふと、思い出して浮竹はごそごそと押し入れを漁る。

「あった」

それは、浮竹の両親が、夢見が悪い時に使えばいい夢が見れるともらった謎のきのこだった。

妖しい色をしていたし、干からびているが、その日の夕食に京楽の分にだけ混ぜて食べさせた。

「ああん、激しいよお、浮竹。アハン。イヤン」

その日の夜、すごい声を出す京楽が嫌で、浮竹は京楽を簀巻きにしてベランダに放りだした。

「いい夢見てるんだろうな」

次の日、京楽は生き生きとしていた。

ただし、頭にきのこが生えていた。

浮竹は、つくづく両親からもらったきのこを食べなくて正解だと思った。

「いやぁ、昨日の浮竹派激しかったねぇ。抜かずの5回だよ。いきまくりで」

「それ、夢だからな」

「いい夢だったなぁ。サンタさんはやっぱりいたんだ」

「はぁ。もう好きにしろ」

浮竹は、ため息をついて悦に浸っている京楽を放置して、朝食を食べに学院の方に行く。京楽がそれに気づいて、慌てて追いかけてくるのであった。



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黒猫と白猫の亜人66

「京楽、苦しい」

「がんばって。あんまり傍にはいられないけど、早く治すためにもよく寝て、薬のんでね?」

浮竹は、インフルエンザにかかっていた。

もともと恋次がひいていたのが白哉にうつり、白哉から浮竹にうつった。

京楽はインフルエンザがうつるといけないので、浮竹は白哉の屋敷で面倒を見られていた。

浮竹は高熱を出し、医者に診てもらい、解熱剤をもらった。

朝のお粥のあとに白湯と一緒に飲んだが、まだ熱が高い。

昼も少しだけお粥を口にして、解熱剤を飲んでやっと40度近くあった熱が38度くらいになったが、まだ体温が高い。

白哉はもう回復していて、同じインフルエンザにはもうかからないので、浮竹の傍にいてくれた。

「白哉、俺は死ぬのかな?」

「兄は、この程度では死なん。ただのインフルエンザだ。栄養をとって薬を飲んで安静にしていれば、1週間もあれば完治する」

「京楽に会いたい」

「京楽はインフルエンザにかかっていないので、うつる可能性があるから、治るまでは少しだけの面会しか無理だ」

「白哉、遺書を書きたい」

「何を弱気な。案ずることはない。眠れ」

白哉が浮竹に眠剤を飲ませて、眠らせると浮竹は静かに眠り始めた。

「猫の亜人故か、人の病気にかかると大変だな」

白哉はすぐ治ったが、恋次もだが浮竹も治るのが遅い。

猫の亜人を診れる医者にも診てもらって、シロップの薬をもらった。

「白哉、面倒をかけてすまん」

「気にすることではない。私からうつってしまったのだ。私が詫びるべきだ」

「白哉も好きでなったわけじゃないだろう」

「あのアホ恋次が悪い」

浮竹は、熱が微熱まで下がり少し元気が出てきたのか笑った。

食事も粥ではなく、普通の食事がとれるまで回復した。

ただ、まだ喉の痛みと咳と微熱があるので、あと3日は休養をとる必要がある。

それを京楽に伝えると、京楽はずっと会えなくて心配していたので、安堵した。

「ああ、よかった」

猫の亜人は猫風邪もひく。

猫風邪はすぐに治るが、インフルエンザとか人の病気はなかなか治らない。

やがて予定より3日遅く、10日経って浮竹は完全に回復し、京楽と一緒に住んでいる一軒家に戻る。

「ただいま、京楽」

「おかえり、浮竹」

まだ病み上がりなので無理はさせれなくて、京楽はしっぽりを我慢する。

「そうそう、3日くらい前に魔王の君が遊びにきてたよ。君がインフルエンザだって聞くと、寂しそうに去っていってしまったけど」

「もう治ったし、魔王城まで行こうかな」

「そうだね。元気になたって知らせないとね」

浮竹と京楽は魔王城に来ていた。

「魔王の俺!元気になったぞ!」

『お、白猫の俺!インフルエンザはもう大丈夫なのか?』

「ああ。すっかりよくなった」

『浮竹ってば、君と会えないからすねちゃってね』

幽鬼の京楽の言葉に、魔王の浮竹は赤面しながらも浮竹を抱きしめる。

『猫の亜人にとって、人の病気は重症になりやすい。健康でいろよ?』

「ふふ、くすぐったい」

浮竹は猫の姿になって、魔王の浮竹に抱かれる。

京楽も猫の姿になった。

『新作のチュールがあるんだよ。食べる?』

幽鬼の京楽がチュールを差し出すと、浮竹と京楽は交互にチュールを食べた。

「いい味がする。うまい」

「今までにない味だね。おいしいよ」

チュールを二人で3つ食べたあとは、水分の多いウェットフードをもらい、浮竹と京楽は魔王の浮竹でおもちゃで遊んでもらった。

猫らしく機敏に動く姿は愛らしい。

「にゃ!」

「にゃにゃ!」

ボールを追いかけて、走りまわる。

浮竹は見た目がまだ生後4か月くらいの子猫なので、余計に愛らしい。

京楽はやや大きめの黒猫だ。

いっぱい遊んでもらった後は、昼寝をする。

魔王の浮竹と幽鬼の京楽も昼寝をした。その膝の上で丸くなって、浮竹も京楽も眠る。

猫生は食べて寝て遊んで、愛されてはじめて幸せになる。

猫の亜人は人の姿になれるので、猫にはない娯楽を楽しめるが、猫でいる時間も多いので、猫人生を謳歌中であった。

1日15時間は寝るので、たくさん昼寝をする。

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、二人を起こさないように気をつけて、仕事やら花の世話やらに出かける。

「ワハハハハ!我は悪魔王猫サタンなり!」

いきなり魔王城に降臨した猫のサタンが、魔王の浮竹と幽鬼の京楽を困らせた。

「おいしい味のチュールやらキャットフードを開発していると聞いた。苦しゅうない、我もその味を吟味してやろう」

『偉そうだね』

『帰れ』

「な、なに!?我にご飯を食べさせない気か!」

『このまま放置したらうるさそうだし、仕方ないね』

『食べたら帰れよ』

そう言われて、新作のキャットフードとチュールを食べて、お土産によこせと言い出すサタンを、浮竹と京楽がなだめる。

「ボクらがお土産に持って帰ってあげるから」

「あまり騒ぎをおこすなよ?」

「むううう。我にお土産をよこさぬのは許しがたいが、何せ我は猫の体。人の体をもつお前たちに新作のキャットフードとチュールを頼むぞ」

サタンはワハハハハと笑って白哉の家に戻っていく。

どうやって来たのかと思うと、魔王城にこれる札を1枚勝手に使ってしまったようであった。

浮竹と京楽は、今ではお札なしで魔王城にこれる。

お札を安易に使わせぬように、厳重に管理しようと思う浮竹と京楽だった。



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黒猫と白猫の亜人65

ぴよぴよ。

木が切られて、その木に巣を作っていた鳥のヒナが保護された。

アニマルレスキューの血が騒ぐ浮竹は、鳥のヒナを襲いたくなるのを理性で制して、小鳥のヒナ5羽を保護した。

「エサは‥‥ミールワームパウダーと、泡玉、その他栄養剤の入った粉を水で溶かしたものでいいか?」

「浮竹、本当に兄が育てるのか?ヒナの食事は大変だぞ?」

「大丈夫だ。いざとなったら京楽がいる!」

その京楽は、ヒナを食べたそうにじっと見ている。

「京楽、よだれ」

「はっ。ボ、ボクは別に食べようなんて思ってないよ?」

「当り前だ。食べたら1か月禁欲だ」

白哉の許可ももらい、浮竹は小鳥のヒナを5羽を自分たちの一軒家で保護して飼うことにした。

ヒナたちは2時間おきにエサをねだってピヨピヨ鳴く。

はじめは元気だった浮竹も、2時間おきというサイクルに疲れてきて、京楽が午後の2時から日没まで面倒を見てくれた。

「野生の小鳥だからな。野生に帰すのがベストだろうが、人の手で育てられたら野生に戻れないかもしれないな」

「そこらへんは、白哉君がなんとかしてくれるんじゃないかな。野生動物の保護もしてるみたいだし。野生に戻す訓練とかしてくれると思うよ」

「そうか!」

浮竹は顔をぱぁぁと輝かせて、日が暮れて眠ってしまったヒナたちの体温が下がらないように、魔道ヒーターでヒナたちの寝床を温めた。

「元気になれよ、ピヨ太、ピヨ助、ピヨ一郎、ピヨ次郎、ピヨ座衛門」

「多分、メスも混じってると思うけど」

「小鳥の性別の見分け方はプロでも難しいんだぞ」

「まぁ、そうだね」

浮竹と京楽は、その日早めに就寝した。

小鳥のヒナたちは、朝の6時にはピヨピヨと元気よくエサをねだりだす。

浮竹は寝ぼけながら、5羽のヒナたちにエサをあげていく。

浮竹と京楽は猫の亜人で、睡眠時間が15時間と人より長い。

昼寝もしたいが、ヒナの世話があるので深く眠らず、2時間ごとに起きて浮竹はヒナにエサをあげた。

京楽は浮竹が疲れたら交代して、ヒナにエサをあげる。

はじめは羽毛も生えていなかったヒナたちは、1週間もする頃には羽毛がはえてきて目もあくようになっていた。

だんだんかわいくなっていくヒナに、浮竹はメロメロだ。

2週間が経つ頃には、巣立ちを迎えていた。

一軒家の中を自由に飛び回るが、浮竹を親と思っているので、浮竹の肩に止まってヒナたちはエサをくれとピヨピヨなく。

浮竹は食欲おおせいなヒナにたくさんのエサをあげて、肩にふんをされるが、ティッシュでちって、頭にふんをされても怒らない。

完全に親モードに入っていた。

「浮竹、ボクと全然シッポリしてくれない‥‥‥‥」

「ヒナたちがいるんだぞ!シッポリなんてできるか!シッポリしようとしたら1か月禁欲だからな」

そう言って、生後3週間になってエサ箱から自分でエサをとれるようになった小鳥の5羽を連れて、魔王城に遊びに行った。

「ぴいぴぃ」

『なんだ、小鳥か?どうしたんだ』

「ヒナから育てたんだ。巣があった木が切り倒されて、ヒナたちが放り出されて、親鳥がいなくなってしまってな。保護して育てた」

『へぇ。ああ、でもボクが近くにいくと逃げてしまうね』

幽鬼の京楽を警戒して、小鳥は浮竹の肩の上で警戒音を出す。

「少しずつ慣らせば平気だと思うぞ?」

『この小鳥は、ルリスズメだな。色が綺麗だ』

「だろう。俺の愛情いっぱいに育った、かわいい子たち」

『放鳥はするのかい?』

「今のままだと、野生に戻せないから魔王城から帰ったら、白哉に預けて、野生に戻す訓練を受けさせて、放鳥するつもりだ」

「ちょっと寂しくなるね」

京楽も、愛情を注いだので小鳥たちがいなくなるのは寂しい。

しかし、小鳥たちに巣立って放鳥しない限り浮竹としっぽりできないので、心の中では早く出て行けとか思っていた。

『黒猫のボク、心の声が顔に出てるよ』

『まさに欲求不満ですって顔だな』

くすくすと、魔王の浮竹と幽鬼の京楽にからかわれて、京楽はそんなに顔に出てるだろうかと鏡を見るが、どうにも分からない。

「京楽の色欲がよくもったと思っている。まぁ、小鳥がいる間にしっぽりしようとしたら1か月禁欲って言ってるしな」

『ふふ、大変だね?』

『1か月か。性欲のある黒猫の京楽にはきついだろうな』

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、小鳥たちのために浅い水を入れた容器と、エサになる果物をいれた皿をもってきてくれた。

「ぴいぴい」

みんな、思い思いに水浴びしたり、水を飲んだり、果物をつついたりする。

ルリスズメは雑食だが、果物を好んで食べる。

「ぴいぴい」

慣れてきたのか、幽鬼の京楽の肩に小鳥が止まった。

『わぁ、かわいいね』

「それはピヨ太だ。額に青い羽のラインがあるのがピヨ座衛門。そっちがピヨ助、尻尾が少し赤い子がピヨ一郎、一番大きく鳴くのがピヨ次郎だ」

浮竹は、ちゃんとヒナの時から小鳥の見分けができていた。

みんな一緒に見えるが、何気に個性があって、羽根の色も微妙に違うくて、それが幽鬼の京楽には面白かった。

しばらくじーっと眺めていた。

『ふふ、小鳥と触れ合えるのって初めてかも』

「俺たちの魔力に慣れていたからな。幽鬼の京楽の魔力にも慣れてきてるんだろう」

『かわいいね』

ぴいぴいと鳴く小鳥たちは、幽鬼の京楽が差し出した指に止まる。

ご褒美に、フルーツを与えると、ピイピイと声をだしてもっとよこせと催促する。

そんな様子もかわいかった。

エサを食べ終えて満足した小鳥たちは、浮竹と京楽の肩に止まる。

『ボクたちも、お茶にでもしようか』

『フルーツタルトだから、小鳥たちも食べるかもな』

幽鬼の京楽がもってきたフルーツタルトを、ピヨ太がちょっとだけ食べて、あとは普通の皿にもられたフルーツをついばむ。

みんなぴいぴいと鳴いていた。

『ふふ、賑やかな茶会だね?』

『そうだな。小鳥が集まることなんてないからな』

「魔王城から帰ったら、お別れだからな。今のうちにかわいがっておく」

浮竹は、名前もつけた小鳥たちとのお別れを少し悲しむ。

でも、新しい旅たちを祝福してやらないといけない。

独り立ちして、番を見つけて家族になって子孫を残していくのだ。

魔王城から白哉の家に戻ると、小鳥たちは篭に入れられて、野生に返すためのリハビリ施設に連れていかれることになった。

「ピヨ太、ピヨ助、ピヨ一郎、ピヨ次郎、ピヨ座衛門元気でな!」

浮竹は涙をだーーーっと流しながら、3週間面倒を見てきた小鳥たちとの別れをすます。

京楽も少し悲しかったが、やっとシッポリできると、浮竹を押し倒してあまりにも急すぎるので、殴られるのであった。


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稀人と皇太子8

苺花が10歳になった。

一護は29歳に、ルキアは28歳になっていた。

だが、ルキアの見た目は未だに16歳くらいの少女だった。

有翼人の寿命は200年と人より長く、また若い時間が多い。一護が確実に年齢をとっていくのを、ルキアはどこか悲しみの心で見ていた。

「そんな顔すんなよ。今日は、苺花の誕生日パーティーだろ?」

国をあげての祝い事になっていた。

時期女帝である苺花は、幼い頃から帝王学を学ばされており、剣術や魔法も教えられていた。

ルキアは、歌声を媒介に魔法のようなものを使う。

一護は、回復魔法が得意だ。

苺花は、その二人のどれとも似ていない、水の魔法が得意であった。

ちなみに、剣術は京楽に、魔法は浮竹から学んでいた。

浮竹と京楽は、ルキアと共に、このソウル帝国の行く末を見守るであろう。

「父上、母上、ご機嫌麗しゅう」

レディーとしてのマナーがついた優雅なお辞儀をされて、一護もルキアも親ばか全開で、にまにまする。

「苺花、プレゼントだ」

一護が、大きな布で隠されていたものの布を取り去る。

「わぁ、小鳥さんだ。綺麗」

赤、青、黄、緑の虹色の羽根をもつ、小鳥だった。

希少種で、手に入れるのに苦労した。

「大切にするね、父上」

「苺花、私からはこれだ」

ルキアが渡したのは、お揃いのマフラー、手袋、上着、耳当てというもうすぐくる冬のための装いだった。

「母上、ありがとう!今年の冬は寒くなりそうだから、大切に使うね?」

ソウル帝国の冬はけっこう厳しい。マイナス10度まで下がる。

ストーブは欠かせなくて、魔道ストーブが人気だった。魔導士たちがこめた魔力で動く、自動式のストーブだった。

魔道ストーブが流通しはじめて、火事がぐんと減った。

暖炉もまだ生活に欠かせなかったが、魔法でない火を使ったストーブのせいで火事が昔はよく起こった。


「ルキア、愛している」

「一護、私もだ」

ルキアと一護は、今日も幸せだった。

一護は、皇帝という立場上、他に4人の夫人がいたが、一護に愛されなくても平気で、子を成してそれぞれ故郷に報告などに戻っている。

皇宮で、一護とルキアが二人きりになるのは久しぶりであった。

「抱いていいか?」

「いちいち聞くな」

ルキアと一護は、キスをして互いの服を脱がせあい、一護はルキアの秘所に舌をはわす。

「んあ!」

くちゅくちゅと音がして、一護はルキアの陰核をきゅっとつまみあげると、ルキアはびくんとオーガズムでいく。

「んああ、そこはだめぇ」

「ルキア、挿入れるぞ」

「あああん!」

久し振りにルキアの中を堪能する。

もちろん避妊用にコンドームをつけている。

「ひあああ!」

ルキアのGスポットをごりごりと抉って、一護はコンドームの中に精液を出す。

「あ、もっとお」

ルキアの求めに、一護も応じる。

「ルキア、愛してる」

「あああ、一護、ひああ!」

秘所はびしょびしょに濡れて、一護のものを締め付ける。

「く、またいく‥‥‥‥」

一護は、コンドームの中に2回目の精子を出していた。

本当なら、生で交わりたいが、もしもルキアが子を妊娠したら、ルキアは出産の時命を落とす。なので、堕胎するしかない。

堕胎自体も危険なので、一護は終わった後に念のためアフターピルをルキアに飲ませた。

「ふふ、一護は私のことが相変わらず好きだな?」

「ああ、そうだよ。俺はいつでもルキアが一番だ。他の夫人を愛してないわけじゃないが、一番はルキアだ」

ルキアは安堵したかのように、眠りにつく。

一護には、今子供が5人いる。

苺花の他の4人は、4人の夫人との間にできた子だった。4夫人は、それぞれの国で我が子を皇帝にしろと言われているだろうが、ルキアと一護の絆のように、一護との間に見えぬ絆ができていて、自分の子を次期皇帝にしろという夫人はいなかった。

ルキアは、元々前の第2夫人、第3夫人がいたので、今の4夫人がいる暮らしに慣れていた。

何より、今の4夫人はルキアと苺花に危害を加えない。

4人の夫人とルキアも仲良くやっていた。

ルキアの金色の羽根を身に着けると、金運があがるとかいうデマが一時期流れ、ルキアは羽根を欲しいといってくる人間が多すぎて、一時隔離されていた。

匿われたのは元後宮で、4夫人たちが世話をしてくれた。

そんなこともあって、ルキアと4夫人たちは仲がいい。

一護は、そんな正妃であるルキアと4夫人と5人の子に囲まれて、幸せだった。

5人の子のうち3人が女児で、苺花は婿を迎えるとして、他の二人の女児の嫁入り先を今から考える羽目になる。すでに10件ほどの縁談の申しこみがあった。

一護はうなりながら、とりあえず婚約者を決めるのだが、婚姻は我が子の自由を尊重する。

一護は帝国でも、代々の皇帝でも一番平民の家臣を有し、小学校中学校高校までの学校を建てた。希望する者には、大学までの道を用意した。

奴隷制度を撤廃して、北に大きな金の鉱山を発見し、西にはサファイアとダイヤモンドの鉱山も発見して、ソウル帝国は富に満ち溢れ、黄金期を迎えるのであった。




                 fin



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稀人と皇太子7

苺花が3歳の誕生日を迎えた。

一護は、国を戦争に巻き込まないために、ルキア以外にもまた妻を娶っていた。

4人の妻を新たに娶り、エイリッヒ帝国第3皇女エルレイン、ユバッハ王国第1王女メルリーナ、アステア王国第2王女ヒス、リアト公国第2公女ユーリ。

一護は、従順な姫だけを娶った。

かつての第2夫人と第3夫人は、ルキアを殺そうとしていた。

そんなことが起きないように、ルキアが正妃であり、その身に何かが起こった時、もう正妃はいらないと決意した。4人の新しい妻たちは、一護と関係をもち、子が産まれも従順で、自分の子たちが皇帝の座につけないことを少し嘆いたが、苺花を害するような様子を見せず、苺花には3人の妹と弟ができた。

「ルキア様、おはようございます」

「ああ、おはようエルレイン」

第2夫人のエルレインは、ルキアのことを姉のように慕っていた。

「浮竹様と京楽様は?」

エルレインは、一護の妻であるが、浮竹と京楽のことが大好きで、よく一日中一緒にいた。

第3夫人のメルリーナは読書が大好きで、時間があれば図書館に入り浸っている。

第4夫人のヒスは、剣が得意でルキアの身の回りを守り、騎士団の正式な騎士団長になっていた。

第5夫人のユーリは、料理が得意でよく厨房を乗っ取って、故郷の料理を一護やルキア、他の夫人たちにふるまった。

第1夫人であり、正妃であるルキアとは皆仲がよく、苺花も実の娘のようにかわいがってくれて、ルキアも一護も安心だった。

ルキアは、その年21歳になろうとしていた。一護は22歳だ。

まだまだ若く、子を望む民の声も大きいが、有翼人の稀人であるルキアにとって出産は命を削る行為であり、次に子を産めば確実に命を落とす。

なので、一護はルキアを抱く時必ず避妊して、念のためにアフターピルを飲ませた。

その年、ルキアは有翼人の里に一時戻ることが決まっていた。一護もついていく。

ルキアの義兄である白哉に会いにいくためだった。

白哉から動くには、騎士団を派遣して身を守りながら来てもらう必要がある。有翼人は美しいので奴隷商人が奴隷にとやってくるので、有翼人たちは人では登れぬ崖の上に家を作り住んでいた。

ルキアは、奴隷にされてこの国では亜人の奴隷売買は禁止されているため、困った奴隷商人がまだ皇太子であった一護に献上した奴隷の一人であった。他にも、浮竹と京楽もルキアと一緒に保護された。

「さて、行くか」

「久しぶりに兄様に会える。苺花を連れていけないのは残念だが」

ルキアと一護は、厳重は警備の元馬車を走らせて、1週間ばかりで有翼人の里についた。

「兄様!!!」

ルキアが馬車を飛び降りて、崖の上にある義兄の白哉の住む大きな館に翼で飛んでいく。

「ルキア?そなた、どうしたのだ」

「一護も一緒です。一時ですが、里帰りが許されたのです。兄様に報告があるのです」

「なんだ、ルキア」

白哉は、ソウル帝国に来た時から外見が変わっていなかった。それはルキアも同じで、有翼人の寿命は大体200年。

若い姿の時間が長く、いずれ一護と死別するとは分かっていても、ルキアは一護との間に愛の結晶を残したし、一護の傍で生きていこうと思っていた。

「一護との間に子が生まれました。苺花といって‥‥‥」

「ルキア、稀人のそなたは出産は命を落とすに等しい行為なのだぞ」

「分かっています。それでも、一護の子を生みたかったのです」

「そうか」

「よお、白哉」

一護が、他の有翼人に崖下から引き上げてもらい、義兄となった白哉に挨拶する。

「兄は、ルキアを幸せにしていてくれているようだ。私からも、礼を言う」

「あー、そういう堅苦しいことは抜きで。1週間くらい世話になるけど、いいか?」

「兄の衣食住は保証しよう。兄の護衛は里に入れることはできぬが、食料と水は渡そう」

「あ、まじ?助かる。キャンプとかちゃんと予定たててたし、食料ももってきてたけど、保存食だから味気ないからな」

里に入れぬ近衛騎士たちは一護とルキアの身を案じていたが、有翼人が思っていたよりも親密に接してくれるので、二人とも大丈夫だろうと、キャンプ地を決めて、肉や野菜など新鮮な食料をもらって喜んでいた。

「俺は、ルキアを愛している。だけど、俺は人間だ。ルキアとずっと一緒にはいられねぇ。俺の死後は、白哉、お前に任せていいか?」

「よかろう」

ルキア、一護と白哉のために猟に出かけていた。

「ルキアとの間にできた子の名前は苺花」

「ルキアから聞いた」

「ああ。でも、有翼人の翼はなくって、人間らしい」

「有翼人は、他の亜人や人間との間に子を作れるが、生まれてくる子は相手の種族の子になる」

「そうなのか。ルキアには辛いかもしれないけど、自然に任せれば苺花のほうが先に死ぬってことか」

「そうなるな」

白哉は静かに言う。

「そうなった時、ルキアは里に戻そうと思う。苺花はソウル帝国の女帝になるから、里には行けないし人間だ」

「うむ」

「兄様、一護、ただいま。立派ないのししをとってきたぞ?」

「今日は、ルキアの里帰りでもあるし、宴にしよう」

「兄様」

その日、有翼人たちは里から出て、一護の近衛騎士たちとも交流して食べて酒を飲んだ。

酒を飲みすぎて、一護は記憶が吹っ飛んでいた。

起きると、ルキアと裸で寝ていた。

「うわ‥‥‥やべぇ、避妊してねぇ!ルキア、ルキア!」

「ん?」

「俺たちやっちまったのか?」

「そうみたいだな」

「やっべぇ、避妊してない。もし子ができたら、辛いだろうがおろす」

「そう簡単に子はほいほいできぬ。有翼人と他種族との間には、子ができにくい」

「え、そうなのか。でも、苺花生まれたじゃないか」

ルキアは頬を染める。

「その間に、何度貴様に抱かれたと思っているのだ」

「ああ、それもそうか」

一護も冷静になって、衣服を着てルキアにも衣服を着せる。

結局、その一夜限りでは子はできず、一護は安心した。

子を生めば必ずしも幸せになるとは限らない女性を、一護はルキアから学んだ。

やがて里帰りが終わり、ルキアは白哉と涙を流しながら別れを告げて、一護とルキアはソウル帝国に帰還するのであった。


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稀人と皇太子6

ルキアが、一護の正妃になって半年が経とうとしていた。

付き人は相変わらず浮竹と京楽だった。

「ルキアちゃん、最近あんまり食べてないね?気分悪いんじゃないの」

「そうなのだ、京楽殿。何かの病気であろうか」

「朽木は、前回の妊娠の時にはつわりなかったからな。子ができたんじゃないか?」

「それは真か、浮竹殿!」

ルキアは目を輝かせる。

「多分おめでただ」

「一護のところに行ってくる!」

ルキアは、与えられた正妃の寝室を飛び出して、一護の元に駆け付けた。

一護は忙しかった。

前に抱かれたのは3カ月前だ。

父の皇帝である一心が、病気のため退位することが決まり、一護が皇帝になったのだ。

それまで政治を父に任せていたが、いざ統治する側になるといろいろと大変だということを、骨身に染みて感じた。

父は、妹たちに甘くアホだったが、よい皇帝であった。

一護もそれを見習い、大臣や家臣たちと会議を開いていた。

「一護」

「どうしたんだ、ルキア。今は会議中で手が離せねぇ。なんか緊急の要件でもあるのか?」

「その‥‥また、子を懐妊したのかもしれぬのだ」

ざわり。大臣や家臣たちの顔に喜びの感情が浮かぶ。

「皇帝陛下、今日はもうお休みを。ルキア様を一刻も早く、医師に診せるべきです」

「え、ああ、わりぃな。後のことはお前たちに任せる。大事な決定事項は俺に知らせてくれ」

一護はルキアをお姫様抱っこすると、医師の元に連れていった。

「おめでとうございます。ご懐妊です。3カ月ですね」

「3カ月前、最後に抱いたのがその時か‥‥‥」

一護は、ルキアの頭を撫でまくって髪をくしゃくしゃにする。

「でかしたぞ、ルキア!未来の皇帝だ!今度こそ、無事に生まれるように祈ろう」

「ああ、一護。もう、暗殺者や毒はごめんだ」

一護は、妻として娶れといってくる他の国との縁談を断って、ルキアだけを愛していた。

ルキアも、そんな一護を愛していた。

二人の絆は強固なものになっており、そこに有翼人の稀人である亜人との差などないようであった。

ルキアのお腹は、時間と共にゆっくりであるが膨らんでいった。

心なしか、あまりない胸も大きくなっていた。

やがて、9カ月が経った頃、ルキアは陣痛を訴えた。

生まれるには10月10日かかる。

またもや未熟児でのお産となるが、最新の医療を取り揃えて、一護はルキアの出産に立ち会った。

「うーーん」

「ルキア、俺の手を握ってろ。爪立てていいから、あと呼吸を忘れずに」

女医の手で、出産が促される。

逆子で、出産には6時間かかった。

初め、へその尾が首に巻きついていたため、また死産かと思われた。

担当の女医が、何度も人工呼吸と心臓マッサージを繰り返して、赤子はこの世に誕生した。

「おぎゃあ、おぎゃああ」

元気に泣く赤子を見届けて、ルキアは意識を失った。

意識を取り戻したルキアは、赤子にお乳を与えた。

「名前は女の子なので、苺花にしようと思う。一護、貴様の名の響きを入れてみた」

「苺花か。かわいいなぁ」

一護は、苺花を見て抱き上げる。

「そっとだぞ?持ち方はもっとこうだ」

「こうか?」

「そうそう、その調子だ」

ルキアは、正妃として母として、子に愛情を注ぐ。

それから、ルキアは体調を崩しがちになり、赤子の世話は乳母に任された。

粉ミルクで育っており、熟練していた乳母だったので安心して任せられた。

「ルキア、今日は何か食えそうか?」

一護は、毎日どんなに忙しい時でも必ずルキアの元を訪れる。

「ああ、一護。今日は気分がいいんだ。散歩をしたい」

長いこと臥せっていたので、足の筋力がおぼつかないので、一護はルキアを車椅子に乗せて、中庭の薔薇園までやってくる。

「やあ、一護君にルキアちゃんじゃない」

「お、二人で散歩のデートか?」

京楽と浮竹が、暇だというので庭師の仕事を任されていた。

「そうそう、最近やっと青い薔薇が咲いたんだ。朽木にあげよう」

浮竹が、青薔薇の一本をはさみで切って、ルキアの髪に飾る。

「ありがとうございます、浮竹殿。京楽殿も元気そうで何よりです」

「ルキアちゃんも、早く元気になりなよ?」

「はい」

一護は、ルキアを中庭のテーブルのある場所の椅子に座らせて、午後の茶の時間をもうけた。

「菓子はいろいろあるから、好きなのえらべ」

「すまん、一護。有翼人の稀人にとって、出産はとても危ういものなのだ。こうして今回は助かったが、次回はもう産めぬ」

「まじか。でも問題ねーよ。今の俺たちの子の苺花は無事に育ってくれている。ルキア、今後もお前と抱くけど、ちゃんと避妊する」

「すまぬ」

「お前の命が第一だ。失いたくない」

「一護、苺花は女児だ。この帝国では、女児は女帝になれない」

「そんな心配する必要ねぇよ。俺はこの国の皇帝だぜ?法律なんて変えちまえばいいんだよ」

一護の言葉に、ルキアは安心する。

苺花は、将来女帝として生きていくことになるのだった。

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稀人と皇太子5

シリア第3夫人が懐妊した。

国中が、祝いのムードだった。

一護は激怒したかった。シリア第3夫人を何度か抱いたことはあるが、ちゃんと避妊していた。

つまりは、シリア第3夫人は不義を働いたのだ。

一護は、それをシリア第3夫人がに伝えると、シリア第3夫人は一護の避妊が完璧ではなかったと言い出し、その背後にある大国のパール王国を武器に、子は一護との間の子だと言い張った。

現在、一番正妃に近いのはシリア第3夫人となった。

そんな中、ルキアは気にもせず一護の寵愛を一身に受けていた。

ルキアを守るため、毒見役を置いた。暗殺されないように、近衛騎士に守らせた。

それでもルキアに毒を盛る者はいて、暗殺者を仕向けてくる者がいた。

シリア第3夫人と、リアネット第2夫人が犯人だと分かっているが、証拠がないので断罪することはできなかった。

ある日、ルキアが気持ち悪いと言い出して、一護が心配のあまり医者に診せると、ルキアの懐妊が分かった。

一護は、喜びまくった。

ますます一護はルキアを寵愛し、リアネット第2夫人とシリア第3夫人は歯ぎしりをして、ルキアを流産させようとあの手この手を使ったが、一護も愛しい妻を守ることのできない皇太子ではない。

アサシンを雇い、ルキアを暗殺しようとするアサシンを捕らえ、拷問の後シリア第3夫人の命令であると白状させてから、処刑した。

シリア第3夫人は、言い逃れができると思っていた。

今までもアサシンをさしむけても、何も言われなかった。怒られもしなかった。

それがシリア第3夫人を増長させて、シリア第3夫人は一護に言った。

「正妃にふさわしいのはわたくしです。あのような汚い亜人の娘など、正妃になれません。何度暗殺者をさしむけても死なないけれど、あの娘はこの国では不要です」

しっかりと、シリア第3夫人の言葉を魔法で記録して、シリア第3夫人は、ルキア暗殺未遂容疑で後宮の隣にある塔に幽閉された。

リアネット第2夫人は、ライバルが減ったと喜んでいた。

リアネット第2夫人は、ルキアと仲良くしていた。けれど、影で彼女の飲む紅茶などに毒を入れていた。

致死量ではなく、蓄積していくと死に至る毒であった。

毒のせいで、ルキアは体を壊しがちになり、リアネット第2夫人は高笑いを自分の部屋でしていた。

きっと、もう助からない。それだけの毒を飲ませた。腹の子もおしまいだ。

だが、ルキアは有翼人の稀人で毒に耐性があり、一命をとりとめてお腹の子も無事であった。

リアネット第2夫人は焦った。

そして、ルキアが回復した次の日、リアネット第2夫人の部屋から毒が発見され、それはルキアが摂取していた毒と同じことが判明し、リアネット第2夫人も塔に幽閉された。

「ルキア、よく頑張ったな。もう、お前を狙うやつはいなくなったからな」

「一護‥‥‥‥お腹の子は、無事であろうか」

やや膨らみ始めたお腹をさすりながら、ルキアは一護に抱きつく。

「ああ、医者に診てもらったけど、お腹の子は元気だそうだ。男児だってさ。無事、産んでくれよ?もう、正妃になれるのはお前しかいないんだから」

その頃、幽閉された塔でシリア第3夫人が一護の子という男児を産んだ。

家臣たちは、シリア第3夫人の幽閉を解けとうるさかった。大国のパール王国が王女であったシリア第3夫人の幽閉に激怒して、大軍をさしむけてきたのだ。

一護は、仕方なくシリア第3夫人を自由にした。

シリア第3夫人は、男児を抱いて、一護にあなたの子だと詰め寄った。

シリア第3夫人は知らなかった。ソウル帝国の医療は最先端をいっており、一護の子であるかどうかをDNA鑑定で調べた。

結果、一護の子ではないことが分かり、シリア第3夫人は、婚姻を破棄されてパール王国に帰された。

パール王国も、王女がまさか不義密通をしたなど思わなかった。本来なら極刑ものであるが、パール王国の王女だということで国に帰されるだけで済んだ。

「いろいろごたごたあったけど、ルキア、元気な子を産んでくれよ?」

悲劇は、その数日後に起こった。

国に帰されたシリア王女が、アサシンを雇って近衛騎士に守られていたのに、ルキアの腹を刺したのだ。

捕まったアサシンは、シリア王女の差し金であることを白状してから、極刑となった。

ルキアは1週間死の淵を彷徨う。

「ルキア、しっかりしてくれ。生きろ!生き延びてくれ!」

一護は、ルキアにつきっきりで看病した。

回復魔法をできるだけかけたが、傷が深すぎで縫うことになり、早すぎる陣痛がルキアを襲う。

生まれた男児は、死産であった。

未熟児すぎて、助けられなかった。

一護は涙を流して、本来愛に包まれて生まれてくるべきだった赤子の遺体を抱いて、火葬した。

「一護‥‥‥」

「ルキア!やった、峠をこえた!ルキア、生き残れ!愛している」

「一護、腹の子は‥‥」

「残念ながら、死産だった。未熟児すぎたんだ」

「そうか」

ルキアは、涙を流した。一護も泣いた。

やがてルキアの傷が回復の兆しに向かっている頃、一護はルキアを車椅子に乗せて城下町まで連れてきた。

「皇太子殿下、妃殿下、バンザイ!」

「妃殿下、今回の子は残念でしたが、次こそこのソウル帝国の未来の皇帝を産んでください!」

民たちの、亜人であるルキアを受け入れる声に、ルキアが驚いていた。

「時間をかけていけば、亜人でも正妃になれそうだろ?」

「一護‥‥‥貴様は、民に私を妃のすることに理解を促してくれていたのだな」

「簡単なことだ。ルキアの名前で、福祉活動をして民に金を配ったんだ」

ルキアは少し複雑だったが、一護の夫人はもうルキアしかいない。

この後に何人夫人を娶っても、一護はルキアだけを愛してくれるだろうと思った。

ソウル帝国ちょうど300年の夏。

朽木ルキアは、黒崎一護の正妃となった。






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