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始祖なる者、ヴァンパイアマスター45-2
浮竹と京楽はテントの中に布団と毛布を敷いて寝て、もう1つのテントには恋次が白哉の抱き枕を手に寝ていた。
白哉は、天蓋つきのべッドを取り出した。
流石にそんなもの入れいると知らなかった浮竹と京楽はびびった。
恋次は、やっぱりかと、うなっていた。
枕どころか、ベッドが変わると眠れないらしい。
すーすー眠る白哉に、忍び寄る影があった。
「私は女神オリガ。さぁ、朽木白哉、あの忌まわしい魔神を倒しなさい。これは宿命です。今倒さなければ、いずれあの魔神はあなたの大切な妹、ルキアを殺し、その魂を食うことでしょう」
「ん・・・・」
目覚めた白哉は、完全に洗脳されていた。
女神オリガは、女神アルテナの末の妹であった。
念のため、女神オリガは白哉の体に憑依した。
次の日の朝、白哉の様子がおかしいと、恋次が浮竹と京楽に訴えた。
「大丈夫か、白哉」
「問題ない」
「大丈夫だろう」
60階層にいき、エンシェントドラゴンを退治した時、白哉が京楽に刀を向けた。
「白哉クン!?」
「兄は、このまま生きると私の妹ルキアの魂を喰らう。ここで、死んでもらう。散れ、千本桜」
千本桜は、億の刃となって京楽に襲い掛かった。
いきなりのことだったので、シールドを張ることもできず、腹をやられた。
「何を言ってるんだい、白哉クン!」
「白哉さん、しっかりしてください!」
「白哉に・・・何かついているな。姿を現せ!」
「うふふふ」
白哉の体からじわりと現れてきたのは、女神だった。
「女神か!女神アルテナの手下か!」
「私は女神オリガ。アルテナ姉さまの末の妹。さぁ白哉、憎きこの魔神を殺すのよ!」
「散れ、千本桜・・・・」
「白哉さん!」
白哉はまず、恋次の心臓を貫いていた。
「ぐふっ」
恋次は倒れ、血の海に沈む。
「やめろ、白哉!」
浮竹が京楽を庇う。
桜の血の花びらは、器用に浮竹を避けて、京楽のみを攻撃した。
「ぐっ」
「京楽!」
「こうなったら、少し荒っぽい方法になるけど、いいかな、浮竹」
「仕方ない。白哉には後で俺から謝っておく」
「ただの魔王だの勇者だの女神なんかより、君の方が厄介だよ、白哉クン」
「死ね!」
血の花びらを、同じように血の花びらで返した。
「ルキアを死なせるわけには、いかぬ」
「そんな未来は、起こりえないから!」
白哉の体を、サンダースピアで貫く。
体をわずかに焦げさせただけで、白哉はまだ意識をもって、京楽を殺そうとしていた。
(殺シテシマエ。オマエノ敵ダ)
「うるさいよ!」
魔神としての京楽の本能が、目の前の白哉を殺せと訴えてくる。
「僕は、心まで魔神になったつもりはない!」
魔剣ラグナロクを手に、白哉と向き合う。
「散れ、千本桜・・・・」
「白哉クン、ごめんね!サンダーボルテックス!!!」
「あああああ!!!」
大量の雷を浴びせられて、白哉は気絶していた。それでも主を守ろうと、千本桜は刃を京楽に向ける。
それを、魔剣ラグナロクで叩き折った。
「ち、使えない皇族王だ」
「僕に僕の友達を傷つけさせたこと、後悔させてあげる・・・・」
京楽は、魔神の咢(あぎと)で、女神オリガに食いついた。
「いやああ、私の体が!」
魂の一部を食われて、女神オリガは逃げていった。
「白哉クンは大丈夫!?」
「ああ、幸い命に別状はない。それより恋次君が・・・・」
恋次は心臓を貫かれて、息絶えていた。
けれど、時間が逆流するかのように血の海は心臓に戻っていき、元のままの、タトゥーを1つ増やした恋次がいた。
「あっぶね。不老不死じゃなかったら、死んでた」
「いや、君一度死んでたんだけどね?」
「まぁ、始祖だから不老不死の呪いがある」
「俺より白哉さんは!」
全身を焦げさせた白哉は、けれどすでに浮竹が血を与えたので、再生を始めていた。
「ん・・・私は?」
「目覚めたか、白哉」
「白哉さん!」
恋次に泣きながら抱きつかれて、白哉は戸惑っていた。
「恋次。私はお前を手にかけて・・・・」
「そんなことどうってことないっす!白哉さんが無事でよかった」
「京楽、すまぬ。私は兄を殺そうとした。女神であろうが、体を乗っ取られて操られたのも、私の鍛錬が足らぬからだ。すまぬ、京楽」
「いいよ、もう。白哉クンが無事なら、それでいいんだよ」
「そうだぞ、白哉。次の70階層まで降りよう。そこがラスボスがいる場所だ」
60階層の財宝の間の財宝を全てアイテムポケットに入れて、70階層の深層にまで降りてきた。
そこにいたのは、雷の精霊王だった。
金の髪に金色の瞳の、10歳くらいの少年だった。
「これは・・・僕と浮竹の出番だね」
「気をつけろ。相手は精霊王だ。神に匹敵する」
白哉は、恋次に支えられながら歩いていた。
浮竹の血をもらったが、京楽の雷は絶大で、ダメージが残っていた。
もっと血を与えようとする浮竹を拒み、後は自然治癒に任せた。白哉とて皇族王。濃いヴァンパイアロードの血をもっている。少しずつではあるが、自力で走れるくらいには回復していた。
「やんのかコラ。上等じゃねぇかコラ。いてまうぞーー」
雷の精霊王は、ビリビリと雷を発生させて、浮竹と京楽を睨んだ。
「サンダージャベリン!」
「「ゴッドフェニックス!!」」
「なんやコラ。そんな炎の魔法なんてか効くわけねーだろーコラ!あちゃちゃ!!何すんねん!」
「「カイザーフェニックス」」
「ぴぎゃーーー」
「「エターナルフェニックス」」
「ぎゃああああ。うわああああああああん」
「あ、浮竹さんと京楽さんが、雷の精霊王泣かせた!」
「え」
「わ、泣かないでよ!」
「うわああああああん!俺と契約してくれなきゃ、お前らの頭上にいつも雷落としてやるーー」
「契約すればいいんだろう」
「契約するよ」
浮竹と京楽は、仕方なく雷の精霊王と契約し、サンダータイガー、ライデン、ボルト、ステラといった、雷系の精霊とも契約させられた。
雷の精霊王は、精霊界に帰ってしまった。
「これ、絶対雷の精霊王が仕組んだことと思うんだけど」
「そうなるだろうな。精霊王は、戦闘に勝った相手に契約をすすめるからな」
財宝の間が開く。
財宝は、1つの赤く輝く大きなルビーだった。
「魂のルビー。聖帝国にいる、神族の皇族の心臓をくり抜いてできる、世界三大秘宝の一つか」
「世界三大秘宝!?うえっ、値段高そう」
「大金貨500万枚はいくだろうな」
「ひえー。流石に値段が値段すぎて、俺いらないっす」
恋次は、あまりの値段にぶんぶんと顔を横に振った。
「大金貨500万枚程度、屋敷の家財を売ればすぐにできる。いらん」
「じゃあ、これは俺がもらっておこう。血の帝国でオークションにかける」
「うわー。きっと、ブラッディ・ネイあたりが高額で競り落としそうだね」
「かもな。それにしても女神オリガか。今度から気をつけよう。白哉も気をつけてくれ」
「気をつけたところで、焼け石に水かもしれぬが、ルキアに他者に憑依されぬよう護符でも作ってもらおう」
「そうしてくれ。恋次君の分も頼む」
「分かった」
こうして一行は、70階層の未踏破Sダンジョンをクリアした。
後日、オークションに例の魂のルビーが出された。
出品者は浮竹ということで、ブラッディ・ネイが大金貨600万枚で競り落としていった。
「やっぱりな。ブラッディ・ネイが競り落とすと思ったんだ」
翌日には、魂のルビーを加工した髪飾りをつけて、ブラッディ・ネイは古城を訪れた。
「見て見て兄様。ボクにぴったりでしょう!」
「はいはい、似合ってる」
「嬉しい兄様、ボクとバカンスの旅に出ない?」
「出ない」
「なんでさー。こんなひげもじゃなんて放置して、ボクの後宮で寵姫たちと遊ぼうよ」
「100万年後にな」
「兄様のけち!でもそこがまたいい・・・ツンデレな兄様、ボクは大好きだよ」
ちゅっと、ほっぺにキスされて、浮竹はハリセンで実の妹の頭をはたいた。
「酷い、兄様!」
「ブラッディ・ネイ?僕の浮竹に手を出すなら、その魂、食っても・・・・」
「ボク、用事を思い出したので帰るね!」
魔神の京楽が本気を出す前に、ブラッディ・ネイは逃げていった。
「京楽、ほっぺにキスくらいで」
「嫌なものは嫌なの。僕の浮竹には誰も触れて欲しくない」
「お前の俺への執着心も、相当なものだな」
「そうだよ。だから、僕は魂を喰らいまくって邪神にならない。君への執着だけで、魔神であり続けれる」
魔神の上位存在は邪神だ。数十万という魂を喰らった魔神が、辿り着く先の道。それが邪神。
邪神は、神々の敵である。
滅ぼされたり、封印された邪神の数は意外と多い。
「女神オリガか・・・・」
女神アルテナの末妹。はたして、またくるのだろうか。
浮竹と京楽の悩みはつきないが、少なくとも暇を持て余して休眠することはないだろう。
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「姉さま」
「なあに、オリガ」
「あの魔神に、無理やり数十万の魂を食わせて、いっそ邪神にしてしまえば?そうすれば、あの魔神は他の神々に滅ぼされる」
「そんなことが簡単にできるのなら、すでにやっているわ」
女神アルテナは、新しく藍染の寵姫の中から選んだ美女の魂を抜き去って、器として使ってる美女の胸を抑えた。
「あの魔神は、魂を喰らうでしょう。しかも、あろうことか神々の魂を!普通の魔神は、神の魂など喰えないというのに!」
忌々しそうに、女神アルテナは美しい美貌を歪めて、頭を掻きむしった。
「あの魔神のせいで、あの始祖に手を出せない。ええい、口惜しい」
「あの魔神は怖いわ」
ぶるぶると、女神オリガが震えた。
「大丈夫よ、オリガ。あなたには上位神である創造神イクシードがいるじゃない」
「イクシードは、この世界に手を出すなら、私を愛することを止めると言っていたわ」
「そんなの、ただの口約束よ。ようは、ばれなければいいのよ。あなた・・・・」
「なんだい、女神アルテナ」
藍染は、ゆっくりと視線をアルテナに向けた。
「このオリガとの間に子をもうけて」
「何を言うの、姉さま!私にはイクシードがいるのよ!嫌よ、嫌よ!始祖魔族如きに汚されるなんて!いやあああああああああ!!!!!!」
オリガの悲鳴は、魔国アルカンシェルにある、藍染の城中に響き渡るのだった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター45
東洋の浮竹と京楽が去って、1か月が経とうとしていた。
「東洋の俺たち、元気でやってるかな」
「大丈夫じゃない?」
「帰りにマンドレイクもたせておきたかった」
浮竹は、マンドレイクが大好きだ。
中庭で栽培して、猫の魔女乱菊に売るくらいに。この前は、その収穫を東洋の浮竹と京楽にも手伝ってもらった。
「さて、今日は何をしよう?」
毎日が暇で暇で仕方ない。
悠久を生きる長命種族にとって、何もない毎日はとてもつまらないものだ。
「血の帝国に行ってみない?」
「そうだな。たまには愚妹の顔でも見に行くか」
こうして、浮竹と京楽は血の帝国に向かった。
「あ、兄様いいところに!」
ブラッディ・ネイが浮竹に近寄る。
「ひげもじゃは魔神になったんだっけ」
式で京楽の存在は魔神となったと前々から知らせていたお陰で、ブラッディ・ネイを初めとして、白夜、恋次、ルキア、一護、冬獅郎も、京楽に普通に接してくれた。
「兄様、ところで何しにきたの」
「お前の顔を見に来たとでもいえば、喜ぶか?」
「兄様がボクに会いに!愛を感じるね!」
ブラッディ・ネイはその場で浮竹を押し倒していた。
「ブラッディ・ネイ。それ以上するなら、僕が黙っていないよ?」
にーっこり笑う魔神に、ブラッディ・ネイは薄ら寒いものを感じて、浮竹から離れた。
「ちぇっ、ひげもじゃめ。ちょっと力が強くなったからっていい気になって。そのうち、兄様を奪い返してやるんだから!」
「噂で、血の帝国にもS級ダンジョンができたと聞いたんだが」
「ああ、確かにできたね。人間に開放していないから、まだほとんど踏破されてないよ」
それに浮竹が喜んだ。
「つまりは、宝は手付かずか」
「そうなるね」
京楽の言葉に、浮竹は顔を輝かせた。
「京楽、今すぐいこう。今すぐ!」
「ちょっと待ってよ、浮竹」
手を引っ張って、今すぐ出発しそうな浮竹に、京楽が待てと言う。
「白哉クン、恋次クン。良ければ、一緒にいかない?」
「何故だ。兄は、S級ダンジョンが好きなのであろう。わざわざ私を呼ぶ必要があるのか?」
「白哉さんが行くなら俺も行くっすよ!」
恋次はのりのりだった。
「いやぁ、僕と浮竹だけじゃあっという間にS級ダンジョン攻略しちゃうからね。たまには知人も誘って、賑やかにいこうと」
「つまり、足手まといが必要ということか」
「いや、全然そうじゃないんだよ。本当に、賑やかにいきたくてだね」
「よかろう。私とて皇族王のヴァンパイアロード。力ならそれなりにある」
白哉は、腰に下げた千本桜を撫でる。
「そうですよ!白哉さんは、始祖の竜帝である俺を倒すくらい強いんすから!」
「それ、誇れるところなのか、恋次君」
「あはははは・・・・・」
「そういえば恋次クン、南の帝国の皇帝はどうしたの?」
「ああ、ずっと毒殺とか暗殺ばっかされるんでやめました。今の俺は、白哉さんの守護騎士とダンジョンでたまにバイトしてるくらいっすかね」
恋次の爆弾発言に、浮竹も京楽も驚いていた。
「皇帝って、そんな簡単にやめれるものなの?」
「いや、俺の場合皇帝とは名ばかりで、実質政治を行ってるのは大臣たちだし、皇帝の座を狙っても毒殺や暗殺が後を絶たないし、やめちゃいました」
「まぁ、恋次君がそれでいいなら、いいんじゃないか。京楽、あまりつっこむな。恋次君がまいってしまうだろう」
「うーん。まぁ、好きな相手の傍にいたいのは分かるけど」
恋次は、白哉が好きだった。
何度好きといっても振り向いてもらえないが、守護騎士の座をゲットして、常に白哉の傍にいた。
「まぁ、4人分の食料と水を用意していこうか」
京楽の言葉に、白哉がアイテムポケットの中に枕を入れた。
「白哉さん、枕が変わると眠れないタイプなんすよ」
「そうなのか。始めて知ったぞ」
影でこそこそと、浮竹と恋次はやりとりをする。
「あ、俺もこれ入れとこう」
いつの日だったか、確か薔薇祭りで景品であたったブラッディ・ネイの抱き枕が嫌なので、隣の白哉のものに変えてくれと言って変えてもらい、それを浮竹が恋次に与えたのだ。
「その抱き枕、まだ愛用してるのか」
「これがないと、俺なかなか寝れないすよ」
「恋次・・・・」
白哉の声が冷たい。
「わああああ、白哉さん、昔許可もらったでしょう!それがこれっす」
「仕方ない。持っていくなら持っていけ」
白哉は知ったことじゃないとばかりに、恋次に背を向けた。
「わあ、白哉さんまってください!」
「なんか、初々しいね」
「そうだな。とりあえず準備はできたし、S級ダンジョンに出発するか」
竜化した恋次の背に乗って、1日かけてそのまだ踏破されていないS級ダンジョンにやってきた。
「これまたでかいな」
ぽっかりとあいた地下迷宮の入り口に、浮竹がこんなダンジョンを見るのは久しぶりだと、笑っていた。
大抵人の手が入り、ダンジョンの入り口は簡単に入れるようになっていた。
「恋次君、このままドラゴンの体で奥までいってくれないか」
「分かりました」
恋次はドラゴンの体でダンジョン第一階層に辿り着いた。
「人の手が入ってないってだけあって、自然のままっすね」
「恋次、後ろだ。数はおよそ20。前の敵は、私が迎え撃つ!」
ケルベロスの群れがでてきた。恋次は竜化を解いて人型になると、ドラゴンブレスを吐いた。ケルベロスは炎属性なので、氷のブレスを吐いた。
「散れ、千本桜・・・」
白哉は、もっていた刀を地面に突き刺した。
千本桜という名のその刀は、桜色の血の花びらを数億と生み出して、ケルベロスを屠っていった。
「白哉の技は、いつ見ても美しいな」
「ブラッディ・ネイの薔薇魔法には及ばぬが、血の帝国の中で3本の指に入るほど美しい技だと思っている」
何気に自信満々だった。
「じゃあ、この調子で最下層目指して進もう」
10階層にいくと、ボスとしてゴーレムがいた。ミスリル製で、魔法や武器が効きにくい。
「散れ、千本桜」
「白哉、ミスリル製だぞ!」
そんなことはどうでもよいのだとばかりに、白哉は千本桜の刃でゴーレムを切り刻んでいく。ミスリル製のはずなのに、千本桜の刃は効いていた。
「俺も負けないっす」
炎のドラゴンブレスを吐いて、恋次はミスリルの足を溶かして、地面と張り付かせた。
「なんか、今回は俺らの出番がなさそうだな」
「うーん。僕もちょっと攻撃してくる」
「あ、京楽!」
京楽は、ミスリル製のゴーレムを、魔剣ラグナロクで一刀両断していた。
「さすがは魔神。その力には恐れ入る」
白哉は素直に褒め称えた。
「いやぁ、それほどでもないよ」
「ドラゴンブレス!」
恋次は、わざと京楽に炎のブレスを浴びせた。無論、京楽はケロリとしていたが。
「もっと、白哉さんのかっこいいシーン見たかったのに!」
恋次は、怒るポイントがずれていた。
「分かったよ。今回は僕らはあくまでサポートに回るから。二人で敵をどんどんやっつけちゃって」
「いや、下層では私と恋次だけの力では足りぬ。その時は助力を頼む」
「分かったぞ、白哉。任せておけ」
ちなみに倒したゴーレムは、ミスリル製であるのでアイテムポケットに入れて持ち帰ることにした。
財宝の間が開く。
手つかずのせいか、金銀財宝の量がおおかった。
「たったこれだけか」
大金貨3万枚はくだらないであろう財宝に、白哉は不満気であった。
皇族王として、皇族の中でもブラッディ・ネイに次ぐ力を持っている白哉は、大金持ちだった。
「お、宝箱!」
「ああ、浮竹、白哉クンと恋次クンの前だよ!」
「それでも俺はいく!暗いよ~怖いよ~狭いよ~息苦しいよ~~~」
「京楽、あれは何をしているのだ」
上半身をミミック食われて、下半身でジタバタしている浮竹を、白哉は冷めた瞳で見ていた。
「ああ、白哉クンは見るの初めてだったね。浮竹はミミックに噛まれるのが好きでね。ああやって、毎度ミミックに食われるんだ」
「そうか。人の趣味にどうこう言えたものでもないが、バカだな」
「ばかいうな~白哉のあほーーー」
ミミックに食われたまま、声は届いていたので、浮竹が悪態をつく。
「散れ、千本桜・・・・」
ミミックから助けられることなく、ミミックごと浮竹は数億の血の花びらに包まれた。
「ちょっと、白哉クン!」
「心配ない。あれは始祖だ。この程度の攻撃、かすり傷にもならぬだろう」
浮竹は、血をだらだら流していた。
「どこが、かすり傷にもならんだ。本気で攻撃したな!?」
傷をすぐに再生していきながら、浮竹はぷんぷん怒りだした。
「もう、今日は白哉と口きいてやんない!」
「そんな子供みたいな拗ね方するんじゃないの、浮竹」
「ふーんだ」
「浮竹、ほら、魔法書が2冊もドロップされてるよ」
「ほんとか!」
怒っていた浮竹はどこにいったのか、2冊も魔法書がドロップされて、浮竹は素直に喜んだ。
「兄が欲しいならば、今度我が屋敷で収納されている魔法書を、やらんでもない」
「本当か、白哉!」
キラキラ目を輝かせる浮竹に、恋次も京楽も、始祖ってちょろいなって思っていた。
「やった、白哉のコレクションがもらえるなんて、俺はついている!」
「白哉クンって、魔法書に興味あったの?」
「祖父が集めていたものだ。私も一度は目を通して覚えた魔法だ。もう魔法書は必要ないからな」
こそこそと、京楽が白哉に耳打ちした。
「ちなみに攻撃魔法?民間魔法?」
「どれも民間魔法だ。洗い物が自動的に綺麗になる魔法やら、髪を整えてくれる魔法やら、そこそこ使えるものばかりだ」
「そうか。ならよかった」
「何がだ?」
「いや、浮竹が攻撃魔法覚えたら、実験台に僕を使うからね」
「なるほど」
「おおい、次の階層にいくぞ?」
「白哉さんも京楽さんも早く!」
11階層から20階層までは海だった。20階層のボスはクラーケンで、巨大なイカのモンスターだった。
「散れ、千本桜、雷」
「サンダーブレス!」
白哉と恋次攻撃で、クラーケンが水面に顔を出す。
「サンダージャベリン」
京楽が、魔神の力を解いて雷の槍を放つ。
その一撃でクラーケンはこんがりと焼けて、いい匂いがしてきた。
「そういえば、昼食まだだったな。このクラーケンという魔物は食えるそうだぞ」
適当な大きさに斬り分けて、炎であぶったものを皆口にした。
「うん、ちゃんとイカ焼きの味がする」
「うまいね、これ」
「意外と美味だな」
「うまいっすよこれ」
4人はそれぞれの感想を口ににして、クラーケンを食べていく。特に元が竜なだけあって、恋次の食いっぷりは半端なく、一人でクラーケンの3分の1を平らげてしまった。
「こんなに食べたの、久しぶりっす。いつも人間の食事の作法に合わせてたから」
「じゃあ、この残りのクラーケンを持って帰って、食べるといいよ」
「え、いいんすか?もらえるならもらいますよ」
「浮竹も白哉クンもいいよね?」
「いいんじゃないか」
「好きなようにするといい」
そうやって、クラーケンを倒したことで海の波が引いていき、財宝の間が現れる。
「お、魔法書がいっぱいだ!」
キラキラした目で、魔法書や魔道具、古代の遺物なんかを浮竹はアイテムポケットに入れていった。
金銀財宝は無視である。
「この金銀財宝、いただいでもいいっすかね?」
恋次はドラゴンであるだけに、金銀財宝に弱かった。
「好きなだけもっていくといい」
「私はいらぬ。恋次の好きなようにせよ」
「ひゃほーーーーい!!」
恋次は、金銀財宝にダイブして、アイテムポケットに金銀財宝を直していった。
次の階層も海だった。
「ららら~~~ららら~~~~~~」
「セイレーンと人魚だ!気をつけろ、歌声を聞いた男を惑わせて食うんだ!」
セイレーンと人魚の歌声に反応してしまったのは、白哉だけであった。
「そういえば、最近魔物研究学会で発表されてたけど、同性愛者の男には魅了の歌声は通じないそうだよ」
「なるほど、だから・・・・・って、嬉しくないぞ」
「俺は白哉さんなんだから好きなんだ。他の同性はどうでもいい」
ふらふらとセイレーンと人魚の元に歩いて行った白哉に、浮竹がその耳元で爆竹を鳴らす音という民間魔法を使い、白哉を正気に戻した。
「白哉!」
「問題ない。散れ、千本桜」
「ぎゅいいいいいい」
「いやあああああああ」
セイレーンと人魚の群れは、白哉の手で駆逐された。
21階層~30階層も海だった。
30階層のボスがリヴァイアサン。海のドラゴンだった。
竜族であるが、正気ではないようで、恋次の呼びかけにも答えない。
浮竹は炎の精霊王を呼び出し、海水ごとリヴァイアサンを干からびさせた。
「ぎいいいいい」
「リヴァイアサンか。海の気高きドラゴンがダンジョンのボスなど。哀れな」
魔神である京楽に魂を食われる前に、炎の精霊王はリヴァイアサンの魂を手に、精霊界に戻っていった。
「ああ、おいしそうだったのに、あの魂」
「京楽、ゲテモノ食いになるからやめとけ」
「でも、クラーケンの魂は食べちゃったよ」
「もう手遅れだったか・・・・・」
「京楽さんて、魔神なんすよね?人間とかの魂食うんですね?」
「うん、そうだよ」
「俺と白哉さんは食わないでくださいね!」
「いやだなぁ、仲間を食うほど飢えていないよ。別に、魂なんて食わなくても、普通の食事でも生きていけるしね」
恋次はほっとして、水のなくなった海の砂の上に座りこんだ。
「俺、疲れました」
財宝の間が開き、ドラゴン素材の武器防具とアダマンタイト、ミスリル、ミスリル銀のインゴットがあった。
「皆、必要なものはもらっていけ」
「じゃあ、俺はこのミスリル銀のインゴットを。知り合いの古代ドワーフに、剣を作ってもらおう」
「他に欲しい者はいないか?いないなら、換金目的で俺がもらっていくが、いいな」
「兄の好きなようにするといい」
始祖なる者、ヴァンパイアマスター44
(ん、ちょっと用事があってね)
(うん、そうなんだ)
「詳しくは話せないのか?」
(キミたちを巻き込みたくないからね)
古城のダイニングルームで、東洋の浮竹と京楽は、西洋の京楽が入れてくれた紅茶を飲んでいた。
ちなみに、存在が魔神になってしまった西洋の京楽に、東洋の浮竹は本能的に怯えて、東洋の京楽の服の裾をずっと握っていた。
「そっちの浮竹を、随分怖がらせてしまっているようだね。でも僕は魔神。この存在はもう変えれないんだ、ごめんね」
(いや、ただ本能的に怖いだけだから・・・・)
話しかけられて、びくっとするものの、嫌われてはいないようなので、西洋の京楽は安堵する。
「京楽、その禍々しい魔力を少し抑えたらどうだ」
どうやら、西洋の京楽は、魔神としての力をダダ漏らしにしていたようで、西洋の浮竹の言葉を受けて、魔力を小さくした。
「うん、いい感じだ。どうだ、東洋の俺?」
(ああ、うん。大分ましになった)
東洋の京楽の服の袖を離して、東洋の浮竹はまだ西洋の京楽が怖いようだが、笑顔を見せるようになってくれた。
「お茶会をしようか」
(そんな気分じゃないんだけどね)
「何事にもリラックスは必要だ」
(うん、春水、こっちの俺の言葉に甘えよう)
「京楽、紅茶のお替わりを。ついでに焼いたクッキーが残っていただろう。あれを茶菓子にもってきてくれ」
「ああ、わかったよ」
東洋の浮竹は、魔神となっても、あの禍々しさを持っていても、あくまで西洋の京楽を、血族でありただ一人の伴侶して扱う西洋の浮竹に、ある意味驚いていた。
紅茶のお替わりを飲んで、クッキーを口にして、東洋の浮竹と京楽はすっかりその場の空気に馴染んでいた。
「それで、お前たちの敵は・・・まぁいい。せっかくきたんだ。魔物討伐の依頼が舞い込んでいてな。古代種のヒドラなんだそうだ。一緒に、討伐してみないか?」
(いいのか、東洋の俺)
「ああ、構わない。ストレスの発散くらいには、なるだろう」
(十四郎、いいの?)
(敵はそうそう逃げたりしない。別にいいだろう)
「じゃあ、話は決まったから、出発だね」
西洋の京楽は、何か巨大な絨毯を床に広げた。
「これには、永続的な魔法がかかっていてね。魔力がない人間でも、空を飛べるんだよ」
(うわぁ、本当だ。見ろ春水、絨毯が宙を浮かんでいる)
(変わった魔道具だね。いくらしたの)
「大金貨100枚」
(よくわからないけど、すごい大金なんだろうね)
「はした金だ」
西洋の浮竹のいう、はした金の相場が分からいので、東洋の二人はつっこみは入れなかった。
空飛ぶ絨毯に乗って、一向は依頼のあったモンスターを退治しに、山奥の寂れた廃村にやってきた。
廃村の奥には、ダンジョンがあって、そのダンジョンの入り口に、依頼書のモンスターはいた。
「古代種のヒドラ。弱手は光か炎だ」
(闇や影は効くのかい?)
「ああ、効くと思うぞ。弱点ではないが。ゴッドフェニックス!」
西洋の浮竹は、炎の最高位精霊フェニックスを呼び出すと、ヒドラに向かって放った。
「ぎゃおおおおお!」
ヒドラの首の一つが消滅する。
((燐光晦冥蛇毒!!))
東洋の二人は、それぞれ白蛇と黒蛇を出すと、毒で攻撃した。
「あ、だめだ、毒は!」
((へ?))
「あーあ。回復しちゃったよ」
西洋の京楽が、やらかしたとばかりに言う。
(毒を吸収するのか!)
(毒が効かないんだね!)
ヒドラのもげていた首が、再生していた。
「エターナルフェニックス!!!」
西洋の浮竹は、永遠の業火を纏う不死鳥を呼び出し、それをヒドラに向かって放つ。
「ぎゃおおおおお!!」
ヒドラの8つあった首のうち、3つが消しとんだ・
(西洋の俺、かっこいい・・・・)
東洋の浮竹は、声高々に高威力の魔法を連発する西洋の自分を見ていた。
「カイザーフェニックス!!」
またしても不死鳥が現れる。
(こ、これだ!!俺が見たかった始祖って言うのは!!)
目をキラキラさせる東洋の浮竹に、西洋の浮竹はもっとかっこいい姿を見せつけてやろうと、炎の精霊王を召還した。
「我が友。何用だ」
「あのヒドラを退治してくれ」
「あのような下等な魔物に我が手を下すまでもない」
そう言い残して、炎の精霊王は精霊界に帰ってしまった。
「ああああ!炎の精霊王め!」
西洋と東洋の京楽は、かっこつけようとした西洋の浮竹に呆れていた。
(ああ、もっとかっこいい姿が見れると思ったのに・・・・・)
東洋の浮竹は、しょんぼりしていた。
「東洋の俺と京楽も、攻撃していいぞ!」
(分かったよ)
(分かった)
(影流転蛇飛)
(光流転蛇飛)
それぞれ、影と水を模った巨大な蛇が現れて、ヒドラに巻き付いた。
((とどめを))
「「エターナルアイシクルワールド!!」」
西洋の浮竹と京楽は、それぞれ抑えていた魔力を解放して、力を合わせて氷の禁呪を使った。
パキパキと、ヒドラの体が凍てついて粉々に崩れていく。
(やった、倒せた!)
「クエスト達成だな。冒険者ギルドに報告して・・・・」
「なんだい!?まだ何かいるよ!」
(新しい敵かい?)
できたのは、真っ赤に燃え盛る鱗をもつ、巨大な竜族であった。
(わあ、ドラゴンだ!)
「なーにしてるのかな、恋次クン」
「その声は・・・・京楽さん?」
「恋次君、こんな廃村のダンジョンの入り口を守ったりして、何をしているんだ」
「浮竹さんもいるのか・・・・って、浮竹さんと京楽さんが二人!?」
「それはまぁ置いといて。この二人は俺たちの分身体みたいなものだ。それより、また、バイトか!」
浮竹がつっこみを入れた。
「あ、そうっす。この前のダンジョンで、浮竹さんと京楽さんを行かせてしまったから、ダンジョンマスターの古代エルフに、報酬の前借り大金貨3万枚のうち1万枚を返せっていわれて返して、足りない分をここの守護のバイトで賄ってたんす」
(こっちの世界の恋次くんはドラゴンなんだね?)
(俺たちの世界だと烏天狗だからな!)
「え、あ、そうっすか?なんかよくわからないけどどうも」
「いっそ、南の帝国に帰ったらどうだ?」
「それだけは嫌です。白哉さんの傍を離れたくない」
「愛しい者の傍を離れたくない・・・・その気持ち、分かるよ、恋次クン」
「京楽さん!」
感動している二人を放置して、西洋の浮竹と、東洋の浮竹と京楽は、開いてしまったダンジョンの入り口をみた。
「まだ作りかけのダンジョンか」
(すごい、なんか空間がうねってる)
「ダンジョンマスターの力だな。古代エルフか」
(うわ、風がすごい)
ダンジョンの入り口は、ぽっかり穴をあけた状態だった。
「まだ、そのダンジョンは完成してないんすよ。中に入ったら最後、どの空間に迷いこむのか分かないっすよ」
恋次の言葉に、東洋の浮竹と京楽はダンジョンの入り口から引き返してきた。
「面白い・・・・」
そう言って、なんと浮竹はダンジョンの入り口の穴に入ってしまった。
「浮竹!!!」
西洋の京楽の真上から、西洋の浮竹は降ってきた。
「重いんだけど」
「ここのダンジョンマスター、いい性格してるな。神に近い者はいらないって、俺を掴んで放り投げた」
「だから、重いって・・・・・・」
「京楽、このダンジョンが完成したら、一番乗りで攻略するぞ!」
「はぁ。分かったよ」
西洋の京楽は、東洋の浮竹を怖がらせないようにと、禍々しい魔力を潜めた。
(とりあえず、依頼は達成したでいいのか?)
(そうだね。恋次くんが敵じゃないとしたら、依頼は達成なんじゃない?)
「恋次君。俺たちと戦う意思はあるか?」
「神格を持った浮竹さんに、魔神の京楽さん相手じゃ、さすがの俺も負けると思うから、降参っす。ああ、またバイト料引かれる・・・・・」
(え?ドラゴンってバイトするのか?)
東洋の浮竹が、興味深々というようにドラゴン姿の恋次を見た。
「ドラゴンでも、バイトできますよ、この世界。ダンジョンのボスとか、けっこう時給がよくて俺はよくバイトして、白哉さんに貢いで、でも振り向いてもらえない・・・」
「恋次君、当たって砕けろだ!」
「いや、浮竹、砕けちゃだめでしょ!」
「とりあず、依頼はヒドラの駆除だったから、今度こそ冒険者ギルドに報告に行こう。東洋の俺たちは、目立つとまずいので、その空飛ぶ絨毯で先に古城に戻ってくれ」
(分かった)
(分かったよ)
東洋の浮竹と京楽は、一足先に古城に戻り、戦闘人形のメイドたちの許可を得て、夕食を作り始めた。
西洋の浮竹と京楽は、冒険者ギルドに行き、報告と報酬をもらって帰ってきた。
時間は夕方になっており、いい匂いがしてきて、西洋の浮竹と京楽はダイニングルームに来ていた。
(今日の夕食は、ボクらが作ったよ。ナポリタンだ)
(俺も手伝った。みんなで食べよう)
「うまいな。戦闘メイドが作るよりうまい」
(そりゃ、俺の春水の腕にかかれば、たとえマンドレイクでもうまい料理に早替わりだ)
「そういえば、またマンドレイクを収穫しなきゃいけないんだ。明日の朝、手伝ってくれるか?」
(いいけど、別に)
(俺は大丈夫だぞ)
「マンドレイクを抜くのって、腰が痛くなるよ?」
「この前は、腰痛を治す民間魔法をかけてやっただろう。あれで我慢しろ」
「はいはい」
ナポリタンをみんなで食べて、風呂に入り、それぞれ寝室とゲストルームに別れて寝た。
--------------------------------------------
「いい天気だな。絶賛のマンドレイク収穫日和だ!」
(ふあ~)
「東洋の俺、眠れなかったのか?」
(ううん。ちょっと、朝に弱いだけ)
「あ、それ分かるぞ。もっと寝たいのに、京楽のやつが起こしてくるんだ」
(そっちのボクも、十四郎の寝起きには苦労してるんだね)
「うん。僕の浮竹は、放置すると昼まで寝るから」
(昼まで!いくらなんでも寝すぎだよ!ボクなら、布団と毛布を引っぺがすね)
「浮竹は寝るの大好きだから。たまに昼まで寝かせることはあるけど、基本は9時起きだよ」
(9時。それならいいんだけど)
西洋の京楽は、ため息を漏らした。
「じゃあ、収穫するぞーー!」
(はーい)
(分かったよ)
「東洋の俺は右列から。東洋の京楽は左列から。俺と京楽は、中央からだ」
「ぎゃあああああ」
「ひいいいいい」
「人でなしいい」
「人殺しいいい」
叫びわめくマンドレイクを無視して、ひたすら収穫した。
「これが最後の一本だ」
「ふぎゃあああああ」
泣き叫ぶマンドレイクをひっこぬいて、その日の午前は終わった。
「ああ、これ報酬の金貨だ。4当分にしておいたから、受け取ってくれ。しばらくこっちにいるんだろう?」
(ああ、うん。ありがたくもらっておく。この世界の通貨もってきてなかったから)
(ボクも、もらっておくよ)
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ネヴァンはロッキングチェアに腰かけながら、血の帝国のことを思った。
クスクスと、ネヴァンは笑う。
京楽と浮竹。
その特異な性質をもつ二人のことを考えながら。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター43
ただ、身にまとう膨大な魔力と、魔神であるせいで、最初は浮竹を驚かせてしまったが、京楽が以前と変わらいと知って、浮竹の態度も依然と同じで変わっていなかった。
「それにしても、勇者の称号をもらったと思ったら、次に魔神になるなんてな」
「魔神だからといって、特別何かをしなければいけないわけじゃないからね」
「お前は忙しいやつだな」
「だって、魔神になったのも、君を守りたい一心でなったものだから」
「普通、伴侶を守りたいといって、魔神になるなど、聞いたことがない」
「僕は後悔してないよ。君を守る力を手に入れた。魔神となったことで、更に魔力もあがった。だから、後悔はしていない」
京楽は、まるで自ら望んで魔神になった気がした。
「昔は俺がお前を守っていたのにな。お前は再覚醒するわ、魔神になるわでややこしい。今じゃ、俺がお前に守られている」
「元々、血族は主を守るために存在する。僕は、君を守れるなら魔神だろうと邪神だろうと、なんにでもなってやる」
浮竹は、京楽に抱きしめられていた。
「新しいS級ダンジョンが見つかったんだ。魔神であるお前の力を確認するついで、踏破するのはどうだ?」
「いいね。さっそく行こうか」
京楽は乗り気だった。
浮竹と京楽は、二人分の水と食料を用意して、その新しいS級ダンジョンに向かった。
一番近い町まで空間転移で移動し、そこから馬車で3日もかかる僻地にあった。
新発見されたばかりなので、他のSランク冒険者がちらほら見えた。
ざわざわと、他のSランク冒険者に騒がれた。未踏破のS級ダンジョンを何度も攻略した、ダンジョン荒らしのSランク冒険者だと言われた。
何度同じダンジョンを踏破するのも勝手だし、そもそもダンジョンは攻略するためにあるのだ。
冒険者が寄り付かなくなったダンジョンでは、間引きする者が現れず、モンスターの異常繁殖があってスタンピードという、ダンジョンからモンスターが溢れかえり、近くの村や町を襲うことがある。
なので、ダンジョンには定期的に冒険者が入るように、異常繁殖したモンスターの討伐依頼が出て、報酬金をはずんでもらえたりするので、冒険者が全く立ち入らないダンジョンはなかった。
「あれ、Sランク冒険者の浮竹と京楽じゃないか」
「ああ、ガイア王国一のSランク冒険者で、ドラゴンダンジョンも突破したという噂のやつらか」
他の冒険者から見ると、浮竹はエルフ魔法使い、京楽はハーフエルフの魔剣士に見えた。
元は剣士の見た目だったのだが、再覚醒してから魔法を使えるようになったので、魔剣士に変えておいたのだ。
「まるで、僕たち見せ物だね」
「気にするな。行くぞ」
浮竹は、S級ダンジョンに入ろうとする。
それを、他の5人のSランク冒険者が阻んだ。
「おっと、先に俺らが踏破する。お前らは、大人しく帰りな」
「ダンジョンは自由に攻略できる。お前たちにその権限はない」
先に行こうとする浮竹の肩を、人間の弓戦士が掴んだ。
「おや、動いてもいいのかい?エルフの魔法使いといっても、しょせん魔法使い。こちらの風のヒューイにかかれば・・・・・」
京楽は、瞳を真紅にして、ちゃきっと魔剣を抜いて、すぐに元に戻した。
「ぎゃああああ、服がああああ!!」
「うわああ、なんだ!?」
「一体どうなってるんだ!」
5人のSランク冒険者は、武器防具を破壊されて、パンツ一丁になっていた。一人、女性が混じっていたので、女性の衣服には手を出さなかったが、武器と防具は破壊した。
「お前たちのしわざか!」
5人パーティーのリーダーが、パンツ一丁のまま、浮竹に殴りにかかる。
「ファイア」
「あちーーー!!あちあち、俺の自慢の赤い髪が!」
「毛根が死滅するまで焼いておいたから」
京楽ににーっこりと微笑まれて、Sランク冒険者のパーティーはへなへなと力尽きた。
「なんだよ・・・あいつ、魔神じゃねーか!」
分かる者は分かるようで、聖職者の青年は、パンツ一丁だが、神に祈った。
「ああ、神よ、あの忌まわき魔神に罰を!」
「へぇ、僕に罰を。じゃあ、僕が君に罰を与えても平気だね?」
「へ?」
「ファアイサークル」
「あちちちち、あちゃーーーー!!」
聖職者の青年は、頭を燃やされて毛根が死滅していた。
「毛根まで死なせておいたから、今度からはハゲのままでいるか、かつらでもかぶりなよ」
Sランク冒険者の5人は、「ギルドに訴えてやる」と言って逃げていった。
それを、他のSランク冒険者が見ていたが、浮竹と京楽は気にせずダンジョンに入っていった。
1階層。
見るからに怪しい宝箱があった。
「宝箱だ!」
「はいはい、ミミックだね」
「暗いよ怖いよ狭いよ息苦しいよ~~~」
上半身をばたばたさせて、浮竹はもがいていた。
「よいしょっと」
京楽は浮竹を助け出すと、ミミックにとどめをさす。
「ぎゅいいいい」
魔神の魔力吸って、銀色から刀身を真紅に染め上げた、元ミスリル銀の魔剣は、完全なる魔剣になっていた。
「お、魔法書。らっきー」
浮竹は魔法書をアイテムポケットに入れた。
「それにしても、その魔剣随分禍々しくなったな」
「そうだね。僕が使っているせいだろうね」
「魔剣ラグナロク。元々その魔剣は、そう呼ばれていたが、力をなくしていた。魔剣ラグナロクが名前だ。京楽、その魔剣の名を呼べば、離れていても召還できるだろう」
「へえ、そんな魔剣なんだ。魔剣ラグナロクだね。覚えておくよ」
二人は、敵を倒しながら宝箱を見つけては、浮竹がかじられていた。
2階層にくると、ミミックに齧られている他のSランク冒険者と鉢合わせた。
「助けてくれ!ミミックに仲間が!このままじゃあ、ミミックごと破壊するしかない!仲間も危険だ!」
助けを求めてくる冒険者に、浮竹はそのミミックにかまれていた冒険者のけつを蹴った。
「うわああああ!?」
驚いた冒険者は顔を更にミミックに近づけさせて、ミミックはおえっとなって冒険者を吐き出した。
「ミミックにかじられた時は、体をミミックの奥までくいこませると、ミミックはおえっとなって吐き出すから、吐き出した後のミミックを退治して、ドロップしたアイテムを回収するといい」
そう言って、浮竹はミミックを倒してしまった。
後に出てきた宝者は、ミスリルのインゴットだった。
「これは、俺たちのものだぞ!」
「そうだそうだ!後からやってきたくせに、俺たちの宝をとろうとするな!」
ミスリルのインゴットを前にした醜い人間の争いに、浮竹も京楽も辟易しながら何も言わずに去って行った。
「なぁ、京楽」
「なんだい?」
「人間って醜いな。特に金が絡むと」
「まぁ、さっきの奴らも命がけで冒険者やってるんだろうし、仕方ないよ。僕らみたいに踏破はできないだろうし」
10階層にいくと、ボスは倒れたばかりで、財宝の間が開いていた。
ボスの近くに死体が二つ。
相打ちしたのだろう。
財宝の間にも、死体が二つ転がっていた。
財宝に埋もれるように死んでいた男女の遺体を見て、浮竹はせめて安らかに眠れるようにと、苦手な聖属性の魔法を使って、死体を弔うと、その魂は京楽に吸い込まれていった。
「お前が魔神なの、忘れてた。魔神は死者の魂を食う」
「僕はそんなの食べたくないよ」
すると、吸い込まれていった魂がぽぅっと浮き出て、天に昇っていった。
「どうやら、お前の意思でどうにかできるようだな」
「ならありがたいね」
10階層の宝は放置して、20階層までやってきた。
出てきたのは、炎の精霊サラマンダー。
精霊がボスなのは珍しく、浮竹と京楽は協力しあい、氷の魔法を使って仕留めた。
「我、汝の精霊とならん」
倒したことで、強制契約が成立し、浮竹と京楽がサラマンダーを使役できるようになっていた。
浮竹はともかく、京楽は精霊を使役するのは初めてのようで、用もないのに何度もサラマンダーを呼び出して、怒られていた。
財宝の間にいくと、金銀財宝の他に古代の魔導書が10冊、後ミミックの宝箱があった。
「宝箱!」
キラキラ目を輝かせて、浮竹は宝箱をあける。
やっぱりミミックで、浮竹はかじられていた。
「怖いよ暗いよ狭いよ息苦しいよ~~~」
「はいはい」
京楽が助け出すと、浮竹は京楽の魔剣を手に、ミミックを倒してしまった。
「ふむ。切れ味がすごいことになってるな」
浮竹は、魔剣ラグナロクを京楽に返した。
ミミックを倒した後には、古代の魔道具が出現した。
「何々・・・・ドラゴン化する魔道具。ふむ、いらないな」
そうは言いつつも、魔道具屋で高く売れるので、アイテムポケットにしまいこむ。
30階層、40階層と進み、1日で50階層にまできていた。
ボスがレッドドラゴンの群れだった。
「京楽、お前ひとりで倒してみろ」
「お安いごようだよ」
京楽は、魔剣ラグナロクを手に、ドラゴンの炎のブレスを弾き、首を一刀両断してしまった。
「ぎゃおおおおおお!!」
「ぐるるるるる!」
襲いかかってくるレッドドラゴンを、すぱすぱと切っていく。
魔神になっただけあって、強すぎた。
もはや、ドラゴンさえも雑魚だ。
それは浮竹にも同じことだったが、京楽の実力がちょっと知れて、浮竹は嬉しそうだった。
「お前を血族にした頃は、こんな対等の力関係になれるとは思っていなかった」
「僕も、君を守れるくらいの存在になれるとは思ってなかったよ」
「強くなったな、京楽」
「うん」
「魔神であるが、今後も俺の血族として縛られてくれ。俺の血族である限り、お前が魔神から邪神になることはない。邪神になったら、神々に滅ぼされるからな」
「魔神のままでいいよ。邪神になんてなりたくない」
「ああ、お前はそのままでいい」
その日は、50階層の財宝の間で眠った。テントを出して、布団をしいて毛布をかぶって寝た。
ちなみに夕飯は、ドラゴンステーキだった。
ポチには、ドラゴンステーキを、劣化防止の魔法をかけて、1週間分出しておいたので安心だった。
次の日は、最後の90階層までやってきた。
ボスは真竜の、竜族であった。というか、恋次だった。
「またお前か!またバイトか!」
浮竹がつっこんでいた。
「いやあ、すみません。またドラゴンブレス吐いて、白哉さんの服ぼろぼろにしちまって・・・
金が緊急で必要になって、ダンジョンマスターの古代エルフから、前借りで大金貨3万枚かりちまって」
カイザードラゴンであり、竜族の始祖である恋次は強い。
でも、仲間うちに争うのは嫌なので、浮竹は恋次に声をかける。
「降参か、京楽と一対一の対決か。どっちかを選べ」
「降参っす。なんなんですか、京楽さん、魔神になっちゃってるじゃないっすか」
「まぁ、深い事情があってねぇ」
「ただ、俺を守りたいと病んでいって、残酷になっていったら、魔神になっていただけだ」
「魔神ってそんな簡単になれるものでしたっけ」
「カルマを相当積んでいるらしいぞ、京楽は。そのせいで魔神になった」
「なるほど。まぁ、降参っすけど、流石に戦ってもいない相手に財宝はあげれないので、今回は諦めちゃくれないすかね」
「まぁ、京楽の力をためすためのダンジョン攻略だから、財宝は諦めよう」
「じゃあ、お礼にダンジョンマスターからもらった古代の魔導書10冊あげます」
「何、古代の魔法書だと!?」
浮竹は目を輝かせて、恋次から魔法書を10冊受け取ると、大事そうにアイテムポケットの中にしまいこんだ。
「じゃあ、一応踏破ということで」
「すんませんね、俺がラスボスで」
「まぁ、このダンジョンのお陰で、僕は自分の力がどれくらいか分かって満足だけどね」
「こいつ、レッドドラゴンをスパスパ包丁で切るかのように、魔剣で殺してた」
「ええ、あのレッドドラゴンの群れを・・・って、その魔剣めちゃくちゃ呪われてるじゃないっすか!」
恋次が、竜化を解いて人になると、京楽の腰にあった剣を見て驚いていた。
「ええ、これ呪われてるの?」
今度は、京楽が驚いた。
「禍々しいの、半端じゃいっすよ。多分、普通の人間が扱ったら、魂を徐々に食われていきますね」
浮竹は、朗らかに笑った。
「俺も使ってみたが、どうってことなかった。他の人間が使うはずもないし、京楽のための魔剣なんだから、それくらいの曰くつじゃないとな。借りにも魔神なんだし」
「はぁ・・・」
恋次は納得したのか分からないが、帰還用の空間転移の魔法陣を起動してくれた。
「じゃ、俺はまだバイトの期間が残ってるんでこれで」
「ああ。白哉にもう、ドラゴンブレス吐くんじゃないぞ」
「肝に命じておきます」
そのまま、浮竹と京楽は、S級ダンジョンから戻ると、3日かけて馬車で移動して最寄りの空間転移の魔法陣のある町までやってきた。
空間転移して、古城に近いアラルの町までくると、早速冒険者ギルドにいって、ドラゴンの素材やら、財宝の間で手に入れたミスリル銀の武器防具、魔道具、古代の遺物などを売り払う。
財宝だけで、大金貨9万枚になった。
素材の方は、レッドドラゴンの群れがあったので、大金貨3万5千枚だった。
最後の財宝を手に入れていれば、大金貨13万枚は固かっただろうが、残念ながら恋次を倒すわけにもいかないので、最後の財宝の間には行っていない。
それでも大金貨9万枚は、Sランク冒険者でもなかなか手に入れられない額だった。
浮竹は錬金術と古代の魔法書などに湯水の如く金を使うので、金はいくらあってもいい状態になっていた。
増える一方のように見えて、時折S級ダンジョンで金を稼がなけばやっていけないくらい、浮竹の金の使い方は荒かった。
--------------------------------------
古城に戻ると、14歳くらいの少女がいた。
「あは、やっと帰ってきた」
「誰だ?」
「あたし、魔王グレス!ほんとに魔神なんだーーー嬉しい!」
魔王グレスは、銀色の瞳で食い入るように京楽を見ていた。
「浮竹、気をつけて。藍染の匂いがする」
「つまりは、敵か!」
ざっと身構える浮竹と京楽に、魔王グレスは笑って二人の間を通り抜けた。
「な!」
「く!」
ぶしゅわああと、二人は胸から血を噴き出していた。
それを再生させると、今度は背中を切られていた。
「京楽、目を閉じろ!目の前の魔王グレスは幻影だ。本体は別にある!」
京楽は目を閉じた。
禍々しい気配を察知して、そちらに向かって炎の魔法を放つ。
「ゴッドフェニックス!」
「きゃああ!くそ、魔神が!仲間にしようと思っていたけど、止めだ!」
炎で体の一部を燃やされて、魔王グレスは分身体を何体も作り出した。
「ワールドエンド」
世界の終末の魔法は、真っ暗な闇となって、浮竹と京楽以外の存在を無にしていく。
「なにさ!あたしの分身体じゃあ、相手にならないっていうの!」
「その通りだよ。おまけに君は浮竹を傷つけた。ねぇ、死んで?」
魔神である京楽は、その禍々しい魔力を一気に解き放つ。
「な、この魔力・・・女神の魂を食ったな!?」
「ええ、そうなの?ああ、そういえば前回の敵は女神リンデルとか言っていたね。知らずに、その魂を食べちゃったのかもね。だって僕、魔神だし」
「なんて悪食な魔神だ・・・うわああああ」
炎の魔法でいたぶられて、魔王グレスは姿を消した。
「浮竹、後ろだ!」
「分かっている!エターナルフェニックス!」
炎の不死鳥が姿を現して、魔王グレスを包み込む。
魔王グレスは体を焼かれながらも、逃げ出していた。
その場に分身体をいくつも作り出して。
「数が多いが、雑魚だ。任せていいか、京楽」
「うん、任せて!」
「エターナルアイシクルワールド!」
氷の禁呪で、魔王グレスの分身体全滅した。
「もう近くにはいないようだよ」
「打ちもらしたか。まぁいい。あの程度の魔王なら、次に攻めてきても大丈夫だろう」
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(邪毒蟒蛇!)
(廻流蟒蛇!)
二人の東洋の浮竹と京楽は、いきなり襲い掛かてきた、怪我をした少女に向かって技を放っていた。
「ばかな・・・もう一組の、浮竹と京楽だと。ふざげるな、あたしは魔王グレスだ!」
魔王グレスは、二人の技を受けて体にたくさんの罅をいれる。
((燐光晦冥蛇毒!!))
二人の東洋の浮竹と京楽の技を喰らい、魔王グレスは体を粉々にして滅びていく。
(どうやら、西洋のボクらの敵のようだね)
(勝手に倒してしまったけれど、大丈夫だっただろうか)
「ああ、君たちか」
念のために、魔王グレスを追いかけ来た西洋の京楽と出会った。
(君・・・また、力があがってるね?禍々しい気配がする)
「うん。僕、魔神になっちゃたんだ」
一方、東洋の浮竹は、東洋の京楽の背中に隠れてしまった。
(魔神・・・いきつくとこまで、いってしまったみたいだね)
「それより、魔王グレスがここにいたはずなんだけど」
(ああ、あの魔王とか名乗ってた少女は、俺たちが倒してしまった。まずかっただろうか?)
「ううん、そんなことないよ?」
「京楽、どうなって・・・・東洋の俺と京楽じゃないか!」
(ごめん、キミたちの敵、ボクらで倒しちゃた)
「いや、手間が省けて助かった。古城に来い。もてなしてやろう」
こうして、東洋の浮竹と京楽は、西洋の浮竹と京楽の敵を倒して、古城を訪れるのであった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター42
女神アルテナは叫んでいた。
分身体を血の帝国に向けた。
だが、結界が張られているように、女神アルテナの体は血の帝国に入ることができず、その存在を弾かれた。
「まさか、この前ブラッディ・ネイと会った時に、始祖浮竹かその血族の京楽が何かをしたというの?」
まさに、その通りであった。
浮竹が、二度と女神アルテナを血の帝国に入れないように、大金貨2万枚という大金を払って、猫の魔女乱菊に女神アルテナの存在が血の帝国に入れないようにする、小さな水晶玉の魔道具を作ってもらったのだ。
「く、こうなれば、私が直接、浮竹と京楽を叩いてやる!」
女神アルテナは、学習能力がなかった。
一度オリジナルに極めて近い分身体で、浮竹と京楽に敗れていた。
ただ自分には絶対の自信があるので、あの時はまぐれなのだと思い込んでいた。
---------------------------------------------
「浮竹、起きて。朝だよ?」
「んー。あと4時間・・・・」
「もう昼の12時だよ?あと4時間だと、夕方の4時になっちゃう」
京楽の揺り起こされて、浮竹は大きな欠伸をしてやっと起きた。
「朝食が昼食になっちゃたけど、食べるよね?」
「朝食と昼食、両方食う」
その細い体のどこに入るのか、浮竹は本当に朝食と昼食をペロリと平らげてしまった。
デザートの苺を口にしながら、京楽を見る。
「なぁ。お前、自分が魔神になりかけてるの、知っているか」
「は?」
京楽は頭にはてなマークを浮かべた。
浮竹は炎の精霊王を呼び出した。
「なん用だ、我が友よ」
「お前は、この京楽という存在を見て、どう思う?」
「ふむ。魔神だな。カルマを積みすぎて、存在が歪み魔神と化している」
炎の精霊王は、ごく当たり前のように出されてあった紅茶を飲んだ。
「魔人は人間がなるもの。それに比べて、魔神は上位存在がなるもの。魔神となって、我を忘れて暴走する前に、これを授けよう」
炎の精霊王は、金色の首飾りを出してきた。
「これを身に着けている限り、魔神となっても、我を忘れて暴走し、周囲を傷つけることはないだろう」
浮竹はその金色の首飾りを受け取って、京楽に付けさせた。
「では、我は帰る」
紅茶を飲みほして、炎の精霊王は精霊界に戻ってしまった。
「最近のお前は敵に残酷だ。おまけに神に匹敵する魔力を有している。俺の血族であるには変わりないが、その存在がヴァンパイアロードから魔神になりかけている。俺は、お前が魔神になってしまった後、どうなるのかが不安だ」
魔神。
それは神の中でも邪悪な存在がなるもの。もしくはカオスな存在か、カルマを背負いすぎた存在がなるもの。
今の京楽はカルマを背負いすぎて、魔神になりかけていた。
「僕が魔神に・・・でも、僕は今までの僕と基本は変わってないよ?」
「俺は魂に神格があって神になれるらしいが、お前は魔神になれる。二人して、怪物だな」
「僕は、浮竹を守れるなら、魔神にだってなんだってなってやる」
京楽は、金の首飾りを引きちぎった。
「京楽!」
「浮竹、本気で僕が魔神になったとして、君を傷つけると思ってるの!?」
京楽は怒っていた。
浮竹に怒りを抱くのは、数十年ぶりだった。
「違う、俺は!」
「こんな首飾りをつけさせて、僕が暴走するのが前提になってるじゃない!」
「京楽、話を聞け!」
「僕は間違ってない。浮竹、君を傷つけないし、暴走もしない!」
そう言って、京楽は古城から走り去ってしまった。
「京楽・・・・・・」
一人残された浮竹は、じわりと涙を浮かべながら、魔神になっていく京楽のいきつく先を心配していた。
京楽はすぐに戻ってくるものだと思っていた浮竹は、翌日になっても戻ってこない京楽を心配していた。
血の帝国にいき、京楽が来ていないか聞いてみたが、答えはNOだった。
それから3日経っても、京楽は戻ってこなかった。
----------------------------------------------------
「そう。あなたは、魔神なのね。でも大丈夫。あなたの存在は、間違っていない」
女神アルテナの分身体に抱かれながら、怒りに支配されていた京楽は、目を閉じる。
「僕を取り込もうとしても無駄だよ、女神アルテナ。僕は浮竹のものだし、浮竹を傷つけるようなことはしない」
「あら、それは分からないじゃない。ほら、段々浮竹が憎くなってきたでしょう?」
憎悪を抱かせるお香を焚いていたが、京楽にはきいていなかった。
「さぁ、あなたは浮竹が憎くてたまらない」
「浮竹が憎い・・・・」
京楽は、そう装った。
そのほうが、この女神アルテナを絶望させられる。
「僕は、行くよ。浮竹を滅ぼしに」
「流石、魔神ね。さぁ、いってらっしゃい!あなたの雄姿を、私が見守っていてあげる」
女神アルテナの空間から解放された京楽は、古城にきていた。
古城に顔を出すと、浮竹が顔を輝かせて出てきた。
「どうしたんだ、京楽!3日も連絡をよこさず、勝手に消えたりして・・・」
京楽は、完全に魔神になっていた。
「お前、本当に京楽か?俺の血族の、京楽か?」
「ほほほほほ!その子は、もう私の言いなりよ。さぁ、京楽、憎き主である浮竹を屠るのよ!」
京楽は、血の鎌を作り出して、浮竹の胸を貫いた。
「ほほほほ!!」
貫いたふりをして、女神アルテナの胸を貫いていた。
「ほほほほ・・・・な、なぜ・・・・」
「僕が、浮竹を裏切るわけがないでしょ?魔神になっても、僕は僕だ。浮竹のことが大好きで、浮竹を愛している。僕は永遠に浮竹のもので、同時に永遠に浮竹は僕のものだ」
「おのれえええ」
女神アルテナは、貫かれた胸を再生させながら、血反吐を吐きながら、京楽を亡き者にしようと女神だけに許された聖剣エクスカリバーを手に、京楽を貫く。
「ぐふっ・・・・それだけかい?」
「何故!魔神なら、聖剣の力で滅ぶはず!」
「だから、僕は魔神であると同時に、浮竹の血族だって言ってるでしょ。君、バカなの?」
「ふざけるなあああ!!!魔神となった存在が、邪悪でないだと!聖剣で滅ぼせないだと!ふざけるなあああ!」
「ふざけてるのは、君の存在でしょ」
そう言って、京楽は血の剣を作り出して、女神アルテナの胸からへそにかけて、斬り裂いた。
「ああああああ!私の体が!」
女神アルテナは、血しぶきあげながら、京楽を呪う。
「女神の怒りを、思い知れ!」
けれど、自分より上位存在であった京楽には、通じなかった。
「何故!」
「それは、純粋に僕が君よりも強いから」
京楽は、血の刃で女神アルテナを袈裟懸に斬り裂いた。
女神アルテナは、分身体を保っていられなくなり、アストラル体になって逃げようとした。
「動くな」
その魔神の言葉だけで、女神アルテナのアストラル体は、動けなくなった。
「バカな!魔神如きの言葉で、拘束されるはずが!」
上位神なら分かるが、魔神になったばかりの京楽如きの言葉に束縛されるはずはないと、女神アルテナは叫んだ。
「やれ、お前たち!」
女神アルテナは、自分が流した血から使徒を召還すると、京楽ではなく浮竹を狙った。
浮竹はすぐに血のシールドを作りだして、それを防いだ。
「おのれえええ!どいつもこいつも、女神である私をこけにしやがって!!」
「もういいよ。滅んで?」
「いやあああああああああ」
京楽は、いつもの魔剣を手にしていた。
ミスリル銀でできたそれは、京楽の魔神としての血を吸収して、真っ赤な刃になっていた。
最初は右手の指を。次に左手の指を。
指の次は手を。
手の次は腕を。
細切れにされながら、女神アルテナは泣きわめいた。
「私が、私が悪かったわ!許してええええ」
「まだ、足が残っているよ?」
「京楽、魔神になったのはいいが、俺の言葉はちゃんと届いているか?」
「うん、大丈夫だよ、浮竹。僕は魔神になっちゃったけど、基本は以前の僕と、同じだよ」
「そうか。ならいいんだ」
浮竹は、安堵した。
「女神アルテナ。分身体であるとはいえ、そこまでダメージを受ければ、本体までダメージはいくだろう。京楽」
「うん、分かってる」
京楽は、浮竹の傍に寄り添って、お互いの手を握り合わせながら、魔力を練っていく。
「「エターナルフェニックス」」
神の寵児と、魔神はの魔力は、一体となって一つの不死鳥を呼び出す。
「シャオオオオオオ」
それは唸り声をあげて、女神アルテナのアストラル体を焼き尽くしいく。
「この私が、この私が、魔神と始祖ヴァンパイア如きにぃぃ!!」
それだけ言い残して、女神アルテナの分身体は、灰となって崩れ落ちた。
「僕は魔神だけど君の血族(モノ)だよ?」
その言葉に頷いて、浮竹に抱きしめられていた。
京楽も、浮竹を抱きしめ返す。
「僕、魔神になっちゃった」
「でも、以前の京楽のままだ」
「うん」
京楽は、浮竹に口づけていた。
「んっ」
「魔神となった僕の血、飲んでみる?」
「そうだな」
京楽の首に噛みついて血を啜る。魔神になった証のように、その血液は魔力を帯びていた。
「前より、甘くなった」
「僕の血を飲めるのは、世界で君一人だけだからね」
「お前の血は、いつでもうまい。お前が魔神になることに恐れを抱いていたが、杞憂だったようだ。それよりこの3日間何をしていた。まさか、女神アルテナを油断させるために、ずっと傍にいたとかいうんじゃないだろうな?」
「ぎくっ」
強張る京楽に、浮竹はにーっこりと笑った。
「この浮気者ーーー!!」
「違うから!確かに傍にはいたけど、手を出したわけじゃないし、出されていないから!」
浮竹の手からハリセンを奪い取り、抱きしめる。
じっと鳶色の瞳で見つめられて、浮竹は赤くなった。
「まぁ、お前がそう言うなら信じる」
3日の間にたまった洗濯ものや浮竹の食事の世話は、いつも通り戦闘人形のメイドがしていてくれたようで、京楽は安心する。
「3日間も君を放置していたけど、気が気でなかったよ。君が悲しんでいるんじゃないかと、思っていた。実質、喧嘩別れみたいなものだったしね」
「俺は、あのくらいじゃ・・・・」
「泣かせて、ごめんね?」
京楽が、浮竹を抱きしめる腕に力をこめる。
「何故、俺が泣いたと分かる」
「ん、予知夢かな。夢の中で、君が波を滲ませているシーンを見た」
「だったら、なんでさっさと戻ってこなかった。ああ、女神アルテナのせいか」
「ごめんね?」
「いや、いい。女神アルテナにも相当ダメージがいったはずだ。今頃、苦しみまくっているだろう」
京楽は、苦しんでいる女神アルテナを想像して、邪悪そうな笑みを浮かべる。
「こら、京楽、何を考えている」
「ん。ちょっと、女神アルテナのことをね?」
それに、浮竹が頬を膨らませる。
「今は俺がいるんだ。俺だけのことを考えろ」
「はいはい。僕のお姫様は、本当にツンデレなんだから」
「誰がツンデレだ!」
ぽかりと殴ってくる浮竹を再度抱きしめて、耳元で囁く。
「君が欲しい」
浮竹は真っ赤になったが、頷いた。
「先に風呂に入り、夕食をとってからだ」
「うん」
---------------------------------------------------------
「あ・・・・」
京楽に胸の先端を甘噛みされて、浮竹は声を漏らしていた。
「んんっ」
京楽が、今度は指でつまみあげながら、浮竹にディープキスをしてくる。
「んっ」
舌と舌を絡ませあいながら、浮竹はもぞもぞしていた。
すでに勃ちあがったものは、触れたくてうずうずしていた。
「あ!」
京楽に勃ちあがったものを舐められて、その快感と恥ずかしさに唇を噛んだ。
「んっ」
京楽の指が、口内に侵入してきた。
「噛むなら、僕の指を噛んで?」
その指に舌を這わせると、京楽はくすぐったそうにしていた。
「愛しているよ、十四郎」
「俺も愛している、春水」
お互い、体液でぐちゃぐちゃになるほど交じりあった。
「あああああ!!」
京楽の熱に引き裂かれて、浮竹は精液を自分の腹にぶちまけていた。
「ひあう!」
ごりっと、京楽のものが最奥を抉って、浮竹は射精しながら、オーガズムでいっていた。
「君の中にいっぱいあげるからね?ちゃんと、受け取ってね?」
「ああああ!!」
熱い飛沫を体の奥で感じて、浮竹は快感と満足感を味わっていた。
「もっとだ、もっと、春水、お前をくれ」
「淫乱な子だね?もっと僕が欲しいの?」
コクコクと、浮竹は頷いた。
「じゃあ、いっぱいあげる。君が嫌がっても、止めてあげない」
「ひああああ!!」
またゴリゴリと奥を侵入してきた熱が弾ける。
「んあっ」
浮竹は、京楽に吸血されていた。
「あああ・・・・・・」
オーガズムの海に巻き込まれて、浮竹は意識を飛ばしそうになるが、京楽の律動で我に返った。
「僕が満足するまでだよ。もっと注いであげるから、頑張って」
「いやあああ」
「嫌がっても、止めてあげないって言ったでしょ?」
「やあああ」
何度も京楽の子種を注がれて、浮竹は意識を失った。
「ごめんね、浮竹。今の僕は、愛しい相手に手加減できないみたいだよ」
すーすーと眠る浮竹の白い前髪をかきあげて、額に口づける。
ずっと音をたてて引き抜くと、京楽が浮竹の中に放った大量の精液が逆流してきた。
それをタオルで受け止めて、濡れたタオルで浮竹の体を拭ってあげて、京楽は浮竹の体内に出したものをかき出す。
「愛してるよ、十四郎。魔神になった僕を変わらず愛してくれて、ありがとう」
京楽の精液にも、魔力が宿っていた。
それを受け止めた浮竹も、また魔力の最大値があがるだろう。
交じりあうのは、愛を確かめあうだけではなく、お互いの力を均等にする役割も果たしていた。
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「あああああああ!!」
魔国アルカンシェルで、女神アルテナは 見えない消えることのない業火を身に浴びて、転げまわっていた。
「熱い、熱い、熱い!!」
「女神アルテナ!この薬を!」
藍染は、女神アルテナにエクリサーを与えた。
「ありがとう、愛しい人。あの京楽、魔神になったわ」
「魔神だと?」
「そう。カルマを積みすぎて、魔神になったの。利用しようとしたけど、返り討ちにあったわ」
「そうか。魔神か・・・・」
藍染は思案する。
「少し様子を見る必要があるな。誰か、魔王グレスを呼んで来い!」
呼ばれてやってきた魔王グレスは、藍染に不満そうな顔をした。
「もーなんなの。あたし、忙しいんですけどーー」
「魔神と、戦ってみたくはないかい?」
「魔神!?戦ってみたい!」
「そうか。じゃあ、今から教えるから、その場所に魔神がいる・・・・・・」
「魔神かー。楽しみだなぁ。魔王であるあたしより、強いのかしら」
目をキラキラさせて、魔王グレスは、魔神京楽の姿を水鏡に映されて、さらに興味をもつのであった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝
古城に遊びにきた東洋の二人を迎え入れて早々、西洋の浮竹がそんなことを言った。
(え、そうか?)
「ああ。魔力ではないが・・・・妖力というのか?人外の力が強くなっている」
(ああ、川姫の一件があったからかな)
水神の白蛇として覚醒した東洋の浮竹は、その一件以来、確実に力を増していた。
(ああ、これ俺が作ったチーズケーキ。よかったら、食べてくれ)
「東洋の浮竹って、どんどん料理が上手になるね」
(そりゃ、ボクの愛の指導によるものだからね)
「僕のところの浮竹も少しはましになたったけど、砂糖とタバスコを間違えるわで、まだ一人で調理させれないよ」
(砂糖とタバスコ・・・どうやったら、そんなの間違えるの?)
「僕に言われても分からないよ。まぁ、マンドレイクを生で料理にぶちこまなくなっただけ、ましかな」
「おい京楽たち、何をぶつぶつ言ってるんだ。お茶にするぞ」
「はいはい」
(君のところの十四郎も、ちゃんと君が指導すればまともなものが作れるようになるさ)
お茶は、ダージリンとアールグレイだった。
皇室御用達の茶葉で、最高級の一品だった。
(やっぱり、西洋の俺のところの紅茶はうまいな。本格的だし、茶葉をいいの使ってるからか、俺たちの世界の紅茶より美味い)
「よかったら、茶葉を持って帰るか?」
(え、いいのか!?)
「紅茶の茶葉くらい、いくらでもくれてやる」
(やったぁ。春水、これで向こうの世界に戻っても、美味しい紅茶が飲めるぞ)
(そうだね。良かったね、十四郎)
東洋の京楽に頭を撫でられて、東洋の浮竹は嬉しそうにしていた。
「ん、このチーズケーキというのうまいな」
(そうだろ!レシピをやるから、西洋の俺も作ってみたらいい)
チーズケーキを頬張りながら、二人の浮竹はそれぞれダージリンとアールグレイの紅茶を飲んで、和んでいた。
(それより、西洋の俺、心配があって相談事をしたいじゃないのか?)
「なんで分かるんだ?」
(そりゃ、西洋の俺は大親友だし、兄弟みたいなものだから)
言いながら、東洋の浮竹はかーっと赤くなった。
釣られて、西洋の浮竹も赤くななる。
「京楽には聞かれたくない。どうしうよう」
(お使いとか頼むのはどうだ?」
「お、それいいな。おい、そこの京楽たち、実が折り入って相談が・・・・」
こうして、西洋と東洋の京楽は、古城からほど近いアラルの町に住んでいる、猫の魔女乱菊に大量のマンドレイクを納めにいくことになった。
(なんでボクまで・・・・・)
東洋の京楽は不満そうだが、西洋と東洋の浮竹だけを残していくのは心配なので、大量の黒い蛇をその陰にしこんだ。
「じゃあいこうか」
(分かったよ)
こうして、西洋と東洋の京楽は、古城を出た。
「俺のところの京楽が、再覚醒して魔力が俺と同じくらいになるまで強くなったんだが、敵に対して今までに見たこともないくらい、残酷になって、それが心配なんだ」
(あー。そういえば、西洋の春水って、俺の春水と同じくらいに力をあげてたからなぁ)
「俺に対しては優しいだ。でも敵には残酷で。その二面性が少し、怖い」
自分の体を抱きしめるようにした西洋の浮竹は、けれど東洋の浮竹に抱きしめられていた。
「東洋の俺?」
(きっと、お前の京楽は今まで力が足りなかった分、お前を守りたいと躍起になっているんだ。残酷なの面も出てしまうかもしれないが、壊れたりはしない。大丈夫だ)
「お前にそう言われると、そうなりそうで安心する」
西洋の浮竹は、東洋の浮竹に抱きしめてもらいながら、安堵の声を出した。
(そうだ、京楽たちがお使いにいっている間に、チーズケーキを二人で作ろう)
「え、俺でも作れるのか?」
(大丈夫、レシピはあるし、俺が作り方を教えてやる)
「そうか。悩みごとを聞いてもらってすっきりしたし、一緒にチーズケーキ作るか」
その頃、西洋と東洋の京楽は、猫の魔女乱菊に大量のマンドレイクを届けるついでに、二人の京楽をじろじろ見ていた。
「ふーん。世界が違うところからきた京楽さん・・・・面白いわねぇ。解剖してみたいわ」
二人の京楽は、マッハで逃げ出した。
古城への帰り際に、Aランクのヴァンパイアハンターと名乗る男に出会った。
「始祖の浮竹を葬るつもりだったが、先に血族の京楽、お前から仕留めてやる!」
「へぇ。僕の浮竹に、危害を加えるつもりだったんだ。たかが、Aランクのヴァンパイアハンターのくせに」
西洋の京楽は、ニタリと笑って、そのヴァンパイアハンターの体に猛毒である自分の血を注ぎ込んだ。
「うぐっ・・・・うわあああ」
「そう簡単に死なないでよ。ほら、ほら」
西洋の京楽は、血の刃を作り出して、息も絶え絶えなヴァンパイアハンターの体を切り刻んだ。
「あれ、もう死んじゃったの?つまんないな」
その姿に、東洋の京楽がやや引いていた。
(おい、西洋のボク。やりすぎだよ)
「だって、僕の浮竹に手を出そうとしていたんだよ。これくらいのバチは当たっても、別にいでしょ?」
(はぁ…ボク、言ったでしょ?“やりすぎ”だって)
「だって、僕の浮竹を傷つけようとしてるんだよ?だから、死んでもらわないと…」
西洋の京楽は東洋の京楽ににっこりと微笑む。
笑みは狂ったような狂気を含んでいる。
対して、東洋の京楽は金色にした目を冷たく澱ませて、西洋の京楽を見て呆れている。
(…勝手にすればいい。それで、キミの身が滅んでもボクは嘲笑うことしかできないね)
「僕は、そんなことしないよ?だって、僕には浮竹がいるしね」
そう言う西洋の京楽に興味をなくしたように、東洋の京楽は何も言わずに二人の浮竹が待つ古城へ先に向かう。
それを首を傾げて、西洋の京楽は東洋の京楽の後を追う。
「帰ってきたか、二人とも」
(割と早かったね)
「うん、ただいま」
’(ただいま)
「ん?なんかいい匂いするね」
(そういえばそうだね)
いい匂いがしてきて、それに二人の京楽は興味をもったようだった。
「実は、俺と東洋の俺で、チーズケーキを作ったんだ」
(そうそう。もう一回、お茶にしよう)
「えええ。浮竹がチーズケーキ!やばいよ、東洋の浮竹。ちゃんと作ってるシーン目撃した?」
(いいや、レシピを渡して作り方を教えて、それぞれで作った)
「あああああ」
(どうしたんだい、西洋のボクって、ああ・・・・やっぱりね)
東洋の浮竹がもってきたチーズケーキは白っぽかった、西洋の浮竹がもってきたチーズケーキは赤かった。
「浮竹、味見した?」
「するわけないだろう」
さも当然のように、西洋の浮竹は答える。
「いいから、食え!」
問答無用だとばかりに、西洋の浮竹は西洋の京楽の口の中に、一口分のチーズケーキを入れた。
「ぎゃああああ!!チーズケーキなのに辛い!君、また砂糖とタバスコ間違えたね!?」
「あれ、また間違えてしまったのか。まぁいいだろう。全部食え」
次々に口の中にチーズケーキ(激辛)を放り込まれるが、西洋の京楽は結局全部食べてしまった。
(うわお。君の西洋の十四郎への愛は本物だって、少なくとも分かったよ)
「見てないで止めてくれ、東洋の僕・・・・・」
東洋の浮竹は、赤いチーズケーキを自分で食べていく。
「辛いが、これはこれでうまいと俺は思う」
(いいね。ボクにも食べさせてよ)
東洋の京楽の分はなかったので、西洋の浮竹は、自分が食べていたチーズケーキを東洋の京楽の口に放り込んだ。
(んー。辛いけど、それがいいね。タバスコだけじゃなく、他にも香辛料いれた?)
「少しだけ」
(東洋の俺、砂糖とタバスコを間違えたのか。今度から、気をつけろよ?)
東洋の浮竹は、あわあわしていた。
「ああ、そうする」
西洋の京楽は、胃薬を飲んでいた。
「京楽。胃薬なんてなくても、俺の料理を食えるだろうが」
「簡便してよ。君ってば、料理できるようになったと見せかけて、すごい代物作ってくるんだから!この乱菊ちゃん印の胃薬がないと、僕の胃に穴があいちゃう」
「ほう。じゃあ、今晩の夕食は、俺が作ってやろうか」
額に血管マークを浮かべた西洋の浮竹の笑みに、西洋の京楽が飛び上がった。
「今夜の夕食は僕が作るから!いいね!?」
「仕方ないな・・・・」
しぶしぶ納得する西洋の浮竹に、東洋の浮竹と京楽は苦笑いするのであった。
その日の晩は、西洋の京楽と戦闘人形が作った夕食を口にして、4人は就寝した。
次の日の朝、首筋にキスマークのいっぱいついた西洋の浮竹を見て、東洋の浮竹は全てを察知して、真っ赤になった。
(その、西洋の俺。キスマークが・・・・)
それに自分がキスマークをいっぱいつけられたのだと思い出して、西洋の浮竹も赤くなる。
「あの駄犬が!」
「わああああああ」
西洋の京楽は、西洋の浮竹にハリセンを手に追いかけられていた。
(じゃあ、俺たちはこのへんで・・・・・)
(二人ととも、ほどほどにね)
「ああ、またな。待て、京楽」
「またねええええ。ぎいやあああ」
東洋の浮竹と京楽は、西洋のこんな二人の姿に、心配しすぎるのも杞憂かと思うのだった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター41
「しつこいな、俺を信じろ!」
「だって君、不器用そうだから」
京楽は浮竹に小突かれて、そのまま口を閉ざした。
京楽の髪が大分伸びてきたので、浮竹がカットすることになったのだ。
浮竹は、いつも京楽に髪を切ってもらっていた。その京楽はというと、いつも近くの町の美容院で切ってもらっていた。
それが気に食わなくて、浮竹が自分で切ると言い出したのだ。
あえて、鏡のない部屋に通されて、ブラシでやや癖のある長い黒髪をすいていく。
「お前の髪、硬そうにみえて柔らかいんだとな」
京楽の髪を一房手に取り、ひっぱった。
「あいたた、ひっぱらないでよ」
「す、すまん。じゃあ、切るぞ?」
「もうさっぱり、短くしちゃって」
人間の頃の京楽は、髪が短かった。
あの頃の髪型を思い出して、はさみでばっさりといった。
「あ”」
「え、何?何か起こったの!?」
「な、なんでもない!」
どうしよう。
浮竹はいきなり京楽の頭に10円ハゲをこさえてしまった。
「ええい、なるようになれ!」
そのまま、勢いで髪を短くしていると、10円ハゲが4つできた。
「ああああ~~~~~~」
「ちょっと、鏡見せて!」
京楽は、浮竹の手から手鏡を奪うと、自分の顔を見た。
「なんじゃこりゃああああああ!!」
京楽の悲鳴が、古城中に響き渡るのだった。
結局、浮竹の血を口にして、元の長さと同じくらいまで京楽は髪を伸ばした。
「美容院いってくる」
「俺もいく」
「どうして。君の髪は、この間僕が切ったでしょう?それ以上短くしたいの?」
明らかに髪を短くするのに不満気な京楽に、浮竹は小声で。
「お前と、離れていたくない」
そう口にして、カーッと真っ赤になった。
「浮竹、かわいい!」
抱きしめてついでに口づけてくる京楽に、浮竹は脅し入れる。
「また、10円はげこさえたいのか?」
「いえ、ごめんなさい。調子に乗りすぎました」
「分かればいい」
そうして、古城から一番近くの町、アラルの町にやってきた。
冒険者ギルドにもついでに顔を出した。
今急ぎの依頼はないようで、これといったクエストもなかったので、浮竹も京楽も、冒険者ギルドを後にする。
風の噂で、アリス・マキナというSランク冒険者が、4人パーティーで40階層あるS級ダンジョンを踏破したと聞いて、頑張っているのだなと思った。
「ここが、僕の行きつけの美容院」
「あ~らいらっしゃ~い。春水ちゃん、今日は髪のカットだけ?髪も洗いましょうか?ひげもそる?」
店長はオカマだった。
時折ひげのない京楽がいるのは、この美容院のせいだと分かって、浮竹は面白くなさそうに、そソファーに腰かけた。
「あら~。こっちのかわいい子は、春水ちゃんのいい子?」
じろじろと見られて、浮竹はたじたじになった。
「もう、店長、そういうのはやめてって言ってるでしょ!」
「あら、この前の金髪のかわいい子と違うのね。どっちが本命?」
店長の言葉に、浮竹がゴゴゴゴと怒る。
「やん、怒っちゃや!」
「京楽、金髪の子とは・・・・・・」
「わあああ!乱菊ちゃんだよ!いい美容院教えてって言われて、一度だけ一緒にきたんだ」
浮竹はほっとした。
まさか、京楽が浮気なんて、そんなことするわけはないとは分かっていたが、それでも肝が冷えた。
「ファッション雑誌か・・・・」
今を時めくモデルやらが、表紙を飾っていた。
「あら、そっちの白い髪のかわいこちゃん・・・・」
「浮竹だ。浮竹でいい」
「浮竹ちゃん、良ければこの美容院の専属モデルにならない?あなたくらいの綺麗な子を探していたのよね~~~」
「悪いが、断る。顔をあまり知られたくない」
「あら残念だわぁ」
店長はくねくねと動いた。
見た目がいいオカマならいいが、けつ顎で、マッチョな姿に圧化粧をして、ふりふりのゴシックロリータの服を着たオカマを見続けては、気分も悪くなるというもので、浮竹は一生懸命雑誌を見るふりをした。
「あら、それ、逆さまよ?」
「ああ、気が動転していた」
見ていた雑誌を反対にもって、浮竹は心を無にした。
オカマの店長の存在を、なかったことにした。
「いや~~ん。京楽ちゃん、魔力がすごーい!どうしたの、この魔力!
「ああ、ちょっとわけがあってね」
店長は京楽の髪を洗い、魔法で熱風をだして乾かすと、ブラシで癖のある京楽の髪をまっすぐにして、髪を切っていった。
リズミカルに、チョキチョキと切っていく。
その技が欲しくて、気づけば浮竹はオカマの店長の傍にきて、その手をじっと見ていた。
「いやん、浮竹ちゃん。求愛なら、後でね?うふん」
浮竹は精神に1000のダメージを受けた。
「求愛・・・」
ズーンと沈みこんで、ソファーにまた腰をかけて、ファッション雑誌に適当に目を通した。
いつも、京楽が買ってくる適当な服を着ているつもりだったが、それがファッション世界ではやっている衣服だと知って、浮竹は京楽に後で礼を言おうと思った。
「あっは~~~ん。じゃあ、ひげ剃るわね?」
「ああ、頼むよ」
髭をそられてしまい、髪を切られた京楽は、いつもと違った風に見えて、浮竹はドキドキしていた。
「どうだい、浮竹。似合うかい?」
「け、け、け」
「け?毛?」
「けしからん!!!」
京楽を抱きしめて、つるつるしたほっぺに頬ずりをして、口づけていた。
「ちょっと、浮竹、店長が見てる!」
じーっと穴があくほど、店長の熱い視線を感じた。
「春水ちゃん、あたし、ずっと春水ちゃんのことが好きだったの」
「京楽は渡さないぞ!」
「浮竹ちゃんも素敵だし、よかったら3Pで、あたしと(以下放送禁止用語)とか、しない?」
浮竹と京楽は、金を払ってその場から逃げ出した。
「ま、まさか店長はオカマなだけでなく、そっちの趣味もあったとは・・・・・」
「僕、好きだとか告白されちゃった。今度から、あの美容院いけないね。代わりの美容院探さないと」
二人して、手を繋いで歩きだした。
このアビスの世界は同性愛者が多いので、不思議がる者はいなかった。
人類の3分の2が男性で、残りの3分の1が女性である。当然、あぶれた者の中には、浮竹と京楽のような関係になる者も多かった。
「猫の魔女乱菊のところに行こう。この前依頼していた魔道具が、そろそろ出来上がっているはずだ」
アラルの町の外れにある、屋敷を訪れた。
チャイムを鳴らすと、神々の谷間も露わな乱菊が出てきた。
「乱菊、ちゃんと衣服を着ろ!」
「あら、シャワー浴びてたのよ。気配であなたたちだって分かったから、出てきただけよ。ちゃんと自己防衛はできるし、心配しなくてもいいわよ?」
「と、とにかく乱菊ちゃん、服を着て!」
浮竹も京楽も真っ赤になっていた。
「そうそう、頼まれていた魔道具、できたわよ?」
それは、小さな水晶玉だった。
「こんなに小さいのか?」
「女神アルテナとやらの、侵入を防ぐ効果があるわ。血の帝国全てを覆いつくすほどに範囲を広げておいたから」
「約束の大金貨2万枚だ。小切手で払う」
「毎度あり~~~♪」
乱菊は、らんらんと鼻歌を歌いながら、その神々の谷間に小切手を入れた。
乱菊への用も終わり、二人は古城に帰還した。
それから、急いで血の帝国にいき、ブラッディ・ネイに水晶玉を渡して、それはブラッディ・ネイが首飾りにして自分に身に着けた。
「ボクが血の帝国の中心だからね。これでいいでしょ、兄様?」
「古城に遊びに来るときは、それを寵姫にでも身に付けさせておけ」
「分かってるよ、兄様」
そのまま、浮竹と京楽はブラッディ・ネイの宮殿に一晩泊まり、翌日古城に戻っていった。
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「あー。とえあえず女神アルテナについては、血の帝国に関しては一安心だ」
「そうだね。でも、気をつけないといけないよ。また、女神アルテナと藍染の子供がくるかもしれない。あのレキとサニアって子も、二人の子供だったようだし。よくもまぁ、こんな短期間で4人も子供を作って、ある程度の年齢まで仕上げたものだよ」
「禁呪だな。人体に使用してはいけない、成長促進の秘術を使っているんだろう」
そんなことを言っていると、来客の知らせがきた。
リンリンリン。
誰かと思い、姿を見ると、オカマの店長がフードを深く被った子供を連れてきていた。
「なぜ、オカマの店長がこの古城を知っている」
「前に、つけられたことがあったんだ。その時に知ったんじゃないかな?迷惑きわまりないことだけど」
とりあえず、浮竹と京楽は、客人として迎え入れるつもりで扉を開いた。
「死ね!」
いきなりの攻撃に、浮竹は対処しきれずに、胸を血の刃で貫かれていた。
「子供!?浮竹にそっくりだ!」
「いやあああああ!!浮竹ちゃんになにするの!」
オカマの店長は、迷子になった浮竹の弟を連れてきたのだと説明しながら、浮竹の傷を見てくれた。
「幸い、致命傷じゃないわ」
浮竹が傷を癒していく姿を見ても、驚かない。
何故かと思っていると、店長は人間とヴァッパイアの間に生まれたハーフのヴァンピールだった。
「この子、敵なのね!?」
「ああ、そうだ。わざわざ連れてきて、ありがた迷惑だ」
「どのみち、あなたたちを襲っていたわ。私は力になれそうにないから、奥に引っ込んでいるわね?」
「そうしてくれ」
京楽は、魔力をどす黒く染め上げていた。
「よくも僕の浮竹を・・・・・」
「何故、俺と同じ姿をしている!」
「そうなるように、あんたの血から作られたからだよ、始祖の浮竹。僕はイザベル。お前たちを殺せないまでも、痛めつけて僕は自由になるんだ!」
ニタリと、京楽が笑った。
「僕の愛しい浮竹と同じ姿をしていたら、攻撃を加減されるとでも思ったのかい?」
猛毒の京楽の血を注がれて、イザベルは苦しんだ。
「なぜ、血族の血に毒が・・・!」
「東洋のお札を吸収したからね。僕の血は、浮竹以外には猛毒だよ」
「化け物が!」
「嬉しいね。最高の褒め言葉だよ」
ニターっと、京楽は不気味に笑った。
それを、浮竹が不安そうに、心配そうに見ていた。
「死ね!!」
血の刃を作り出して、攻撃してくるも、魔力は浮竹の半分以下で、京楽は獲物を弄ぶようにじわりじわりとイザベルを追い詰めた。
「さぁ、君の番だよ」
イザベルは血の鎌を作り出すと、京楽を無視して、浮竹に向かっていた。
「フレイムウィンド!」
炎をまとった風に追いやられて、血の鎌は浮竹には届かず、イザベルは舌打ちした。
「僕と同じはずの存在なのに!」
「全然違うよ。僕の浮竹は、君みたいに醜くない」
京楽は血の刃をいくつも作ってイザベルを更に追い詰める。
イザベルは、再生が追い付かない体を捨てた。
「な、アストラル体!神だというのか!」
「正確には、神の魂をもっているだけさ。僕は、イザベル。でも、女神リンデルでもある!」
アストラル体となったイザベルは、浮竹を魔力で締め上げようとして、愕然とする。
「始祖浮竹、何故お前の魂に神格がある!お前も、神だというのか!」
「なんのことだかわらかんな!ゴットフェニックス!」
アストラル体には通常攻撃は効きにくい。
不死鳥をまとった炎が、イザベルのアストラル体を襲った。
「熱い、熱い、熱い!」
転げまわるが、神であるために易々と死ねない。
「あははは。神の魂を宿したことに後悔するんだね。君が死ぬまで、業火で燃やしてやろう」
「京楽?」
浮竹が、また不安そうに京楽を見た。
「僕は大丈夫。さぁ、続きといこうか、イザベルとやら?」
「もう、いっそ一思いに殺してくれ」
「そんなわけにはいかないねぇ。浮竹を傷つけた代償は高いよ?」
「ああああああああ」
自我が崩壊しそうになるまで、炎でじっくりいたぶり、京楽は満足した。
「もう、死んでもいいよ」
「僕は神なのに、なんで・・・・・ああああ、父さま母さま」
そう言い残して、イザベルは完全な灰となって滅んでいった。
「京楽?」
「どうしたの、浮竹?」
そこには、いつも通りの京楽がいた。
「戦闘だと、お前が別人のように感じる」
「そう。でも、僕は僕だよ?」
「ああ、分かっている。俺が心配すぎなだけなんだろう」
「ごめん。君を不安にさせてしまったね?ごめんね?」
頭を撫でらて、キスをされた。
それを、オカマの店長は全部見ていた。
「いや~~ん、愛しい姫の為に魔王になる京楽ちゃん!萌えだわ~~」
「お前はさっさと出ていけ!」
浮竹はヴァンピールであるために、記憶は奪わず、古城に続く森へのゲートをあけて、そこに店長を放り込んだ。
「また、私の美容院、利用してね?」
うっふんとウィンクされて、浮竹と京楽は顔を青くした。
「もう、二度と利用しない」
「そうしろ。あいつは、別な意味でやばい」
------------------------------------------------------------
「あれが、始祖浮竹。創造神ルシエードのただ一人の神の寵児か・・・・・・」
オカマの店長・・・・いや、創造神イクシードは、始祖の浮竹を見て、納得した。
「ルシエードの子らしい。血族に甘すぎるところとか、昔のルシエードにそっくりだ」
創造神イクシードは、魂に神格のある浮竹を神にするかしないかの調査にやってきたのだ。
「少なくとも、神にするには未熟すぎる。血族の暴走も止められないのでは、話にならない」
「あら、きていたの」
古城の外の森で、妖艶な美女と創造神イクシードは巡り合った。
「女神アルテナ。お前は極刑になったはず!」
「うふふふ。魂だけの存在になって、このサーラに逃げてきたの」
「お前の存在は、神々の怒りを買っている!滅べ!」
その絶対の力は、働かなかった。
「やはり、ヴァンピールの依代には限界があるか。女神アルテナ、この世界から去れ。さもなくば、神々の怒りでお前の魂は永遠の氷獄へ閉じ込められるであろう」
「ふん、創造神イクシード。神になるのは、私の夫藍染よ」
「あれは神になれぬ。魂に神格がないし、その資格もない」
「いずれ、彼は神になるわ。その側には、私がいるの」
ゆらりと、女神アルテナは消えてしまった。
「女神アルテナを敵に回しているのか・・・一応、ルシエードの耳にいれておくか」
創造神イクシードは、依代であったヴァンピールの体から離れて、サーラの世界へ帰還する。
「あらやだ私、どうしちゃたっのかしら。浮竹ちゃんの弟を古城にまで連れていったのは覚えているけど・・・・・・」
店長には、創造神イクシードに憑依されていた間の記憶はなかった。
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「まただめだったか・・・・・」
「あなた・・・・・・」
「魂が神でもだめだと?ふざけるな!」
藍染は、ものに当たり散らしていた。
「今度は、私の分身体がいくわ。血の帝国であいつらの大切やつらの命を奪って、あの始祖浮竹と血族京楽を、あっと言わせてみせるわ」
「女神アルテナ・・・・それは面白い策だ」
女神アルテナは知らなかった。
自分の存在が、分身体であろうとも、血の帝国に入れないようにされていることを。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター40
女帝ブラッディ・ネイが懐妊したというのだ。しかも、実の兄である浮竹の子を。
「兄様、ボクはついに兄様の子ができたよ」
愛おしそうに、平らな腹を撫でる実の妹に、浮竹はため息をはきながらも、神の涙といわれるエリクサーを飲ませた。
エリクサーはどんな状態異常や呪いも回復してくれる、奇跡の薬だ。
最高ランクのミスリルランクの錬金術士だけが調合できて、それでも成功率は5%くらいだった。
この前、錬金術用の館を何度も爆破させて、破壊してやっとできた1つだった。
「あれ・・・ボクはどうしていたの?」
「俺の子供を妊娠していたとか言い出してた」
「え、ボクが兄様の子を!?産みたい!」
ブラッディ・ネイは、浮竹にハリセンで頭を殴られていた。
「酷い、兄様」
「ばかな騒ぎを起こすからだ。そう思いこんだ元凶はなんだ?」
「誰かに洗脳されていたみたいだね。ブラッディ・ネイを洗脳するなんて・・・どんなやつだろうね?」
京楽の問いに、ブラッディ・ネイが答える。
「確か、女神アルテナとか言っていたかな。すごい美人だったけど、年をとっていたのでボクの好みには入らなかったけど、少しだけ会話をしたよ」
「女神アルテナだと!?他に何もされていないな、ブラッディ・ネイ!」
「兄様痛い、痛いってば」
「ああ、すまない」
まさか。女神アルテナがこの血の帝国にまで来るとは思っていなかった浮竹は、実の妹の体を隅から隅まで見渡した。
「どこも異常はないようだな」
「ボクをまるで珍獣のように見ないでくれないかな、ひげもじゃ」
「せっかく人が心配してあげてるのに・・・・」
「女神アルテナって、やばい存在なの?」
「目下、俺たちの敵だ」
「ええ!そんな存在なら、ボクもただじゃ返さなかったのに!」
ブラッディ・ネイが悔しそうな声をあげた。
「女神アルテナは、このアビスの世界を去ったはすだ。なのにまだこの世界にいるということは、サーラの世界で死んだか追放されて、このアビスの世界にやってきたってところか?」
「そういえば、真剣に女神アルテナについて、話し合ってなかったね」
「相手は女神。仮にも神だ。もしも魂を滅ぼさないと倒せないなら、今のところ封印するしか策はないな」
神という存在は、不確かな存在であるように見えるが、この世界には存在した。
ちゃんと肉体をもった生物として生きていた。
ただ、その持つ力は次元を超えており、生きる時間も不老不死に近い。
「そうだね。僕が女神アルテナを倒したのは、オリジナルに極めて近い、分身体だったからね」
「ああ。何処までダメージが本体にいったか分からないが、サーラの世界からこのアビスの世界にきたということは、深いダメージを負ったんだろう」
事実その通り、女神アルテナは創造神ルシエードの「滅びよ」というその言葉だけで肉体を灰にされて、この世界に魂だけとなってやってきた。
「ブラッディ・ネイ。今度から、女神アルテナという存在には気をつけろ」
「分かったよ、兄様。匂いを覚えたから、大丈夫。魂に神格があるから、独特の匂いがする。魂に神格があると言えば、兄様もなんだけどね」
「え、俺か?」
「そう。兄様、いつの頃からか魂に神格をもってる。その気になれば、神になれるよ」
「神なんかにはならない。そんな存在になりなくもないし、なりたいとも思わない。今の始祖というだけでも俺には重い」
神の愛の呪いの不老不死。
死ねない時を、浮竹は生きている。もう、8千年も生きている。
うち5千年を休眠して過ごした。孤独に耐えきれずに。
今は血族の京楽もいるし、幸せだった。
藍染がいなければ、もっと幸せな人生を送れていただろうが。
「じゃあ、俺たちは古城に戻る。何かあったら、式を飛ばしてくれ」
「分かったよ、兄様」
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古城に戻ると、浮竹は錬金術をやりはじめた。
大量に金をつぎ込んで買ってきた、エリクサーの材料を手に、錬金術で使っている館で調合をして失敗し、館を爆発させていた。
同じ館で、4回爆発を起こし、焦げ気味になって、浮竹は京楽の傍にやってきた。
「どうしたの、浮竹!ボロボロじゃない!まさか敵襲!?」
「落ち着け。錬金術でエリクサーを作っていただけだ」
「エリクサーの調合って、そういうえば難しいって言ってたね。成功したの?」
覗き込んでくる京楽を押しのけて、ソファーに静かに座る。
「25回分チャレンジして、2本やっとできた。赤字だな」
「まぁ、念のために使う分でしょ?ストックはないの?」
「ストックの最後の一個を、ブラッディ・ネイに使ったからな。だから新しく調合していたんだ」
「浮竹、君の綺麗な白い髪が焦げちゃってるよ」
「京楽、血をよこせ」
京楽は、手を差し出した。
それに噛みついて、京楽の血を啜ると、焦げた髪は元に戻った。
「着替えてくる。今着ている服は処分しておいてくれ」
「この服、高かったのに」
一着で金貨200枚もする、高級な絹をつかった金糸の刺繍が至る所にされている、衣服だった。
上下セットで金貨250枚だ。
金は腐るほどあるので、浮竹は気にしなかったが、京楽は処分が決まった服が好きで、その服を着ている浮竹は、本物の皇族のように気品があって、かっこよいと思っていた。
もっとも、今では浮竹だけでなく京楽も、勇者王として皇族に叙されているが。
浮竹は、着替えてきた。
今度は黒いラフな格好だったが、灰色のマントを背中から左肩、それに胸にかけて、垂らせていた。
マントを背中から左肩、それに胸にかけて垂らすのは、血の帝国の皇族の証である姿だった。
「少し、猫の魔女乱菊のところに行ってくる」
「ああ、僕もいくよ」
「じゃあ、お前も正装しろ。俺のようにマントを羽織れ」
「どうして?」
京楽が首を傾げる。
「猫の魔女乱菊に、血の帝国の皇族として、正式に依頼がある」
「分かった。じゃあ、僕も着替えてくるよ」
京楽が、皇族の姿をするのはこれで二度目であった。一度目は、勇者王として、ブラッディ・ネイに皇族に叙された時、正装をしていた。
「やっぱり、お前には似合っているな、そのかっこ」
「浮竹ほどじゃないよ。浮竹ってば、僕と違ってラフな格好してるのに、マントを羽織るだけで気品が溢れてるよ」
「まぁ、生まれつき皇族で、昔は白哉の地位の皇族王もしていたからな」
やがて乱菊のところまでくると、乱菊は快く迎えてくれた。
「乱菊、今回は血の帝国の皇族として依頼しにきた」
「あら、どうしたの、改まって」
「今戦っている相手が、俺の妹に接触してきた。今後、その存在が血の帝国に立ち入れられない魔道具が欲しい。錬金術で作ってくれ」
「いいけど、相手の何かが必要よ?」
乱菊は、やや険しい顔をした。
「ここに、このアビスの世界にいた、女神アルテナの分身体の血がある。これで足りるか?」
「女神!また厄介な相手と戦っているのね。分かったわ、その依頼引き受けるわ。女神アルテナが、血の帝国にこなけばいいのね?」
「ああ」
「頼むよ、乱菊ちゃん。血の帝国には、浮竹の妹のブラッディ・ネイを始めとして、白哉クン、恋次クン、ルキアちゃん、一護クン、冬獅郎クンといった友達がいっぱいいるんだ。利用されでもしたら、大変なんだよ」
京楽の言葉に、乱菊は頷いた。
「あたしの力の限りを注いで、成功してみせるわ」
「頼む。俺は薬系統の錬金術は得意なんだが、魔道具に関してはいまいちなんだ」
「あら、浮竹さんはミスリルランクなのに、魔道具の錬金が苦手なのね?うふふ、意外な弱点みつけちゃって、ちょっと嬉しいわ」
「報酬は、大金貨2万枚」
「わお。さっそく、とりかからなくちゃ」
忙しく動き出す乱菊の邪魔をしないように、二人は古城に戻っていった。
マントを外して、浮竹はソファーにごりとだらしなく横になる。
「皇族として振る舞うのは嫌いだ。肩がこる」
「僕も、嫌だねえ。慣れないよ」
京楽もマントを外して、浮竹の白い髪を撫でた。
その日は早めに夕食をとり、浮竹は前回京楽とアリスと一緒に踏破したS級ダンジョンで手に入れた、賢者メイエドの遺産の本を読んでいた。
「賢者メイエドはすごいな。67歳までしか生きなかったのに、精霊王を3人も若い頃から従ええいたそうだ」
「浮竹だって、炎と氷の精霊王を従えているでしょ?それに、きっとその気になれば、今の魔力なら、8人の精霊王を従えられると思う」
「賢者メイエドの凄いところは、人間であったところだ。俺は始祖ヴァンパイアでここまで魔力が高くなるのに8千年もかかった。だが、賢者メイエドは、僅か13歳にして王都の賢者となり、3人の精霊王を従えていた」
浮竹は、賢者メイエドの手記を読んでいた。
「それに、知らない魔法をお陰でいくつか習得できた」
「良かったね」
「ああ。ミミックに齧られなかったのは寂しいが」
「問題はそこなの!?」
京楽が、ベッドの上で寝転がりながら賢者メイエドの手記を読んでいる浮竹に、つっこんでいた。
「ああ、そういえば今日はポチにドラゴンステーキをやるのを忘れていた。あげてくる」
「僕も行くよ、浮竹。魔王の元から帰ってきた時のポチの怒りはすごかったからね。半月も古城を留守にしていたから」
「ポチーーー」
「るるるる!るるるるーーー!!」
ポチは浮竹のところにやってくると、浮竹にかみついた。
「狭いよ暗いよ怖いよ息苦しよーー」
「もー、何やってんの、浮竹」
京楽に救出してもらいながら、浮竹はアイテムポケットからドラゴンステーキをだした。
「るるる♪」
ポチはそれを丸かじりすると、ねぐらとして決めている暖炉に中に戻ってしまった。
その日は、そのまま就寝した。
次の日の朝、ピリリリリと警戒音がなった。
「侵入者だ。庭にいこう」
庭は、何度か侵入者を迎え入れたので、クレーターができたりして荒れていた。ただ、古城に面したプランターには、東洋の浮竹と京楽からもらった桔梗の花が綺麗に咲いていた。
「おとうさまのために、きました。僕はレキ」
「私はサニア」
「「死んで?」」
二人は、はもりながら、浮竹を攻撃してきた。
それは、銃というにはあまりにも巨大で、あまりにも弾が早かった。
ガトリングガン。
サーラの世界で、戦争に使われる兵器だった。
「浮竹!!」
いきなり攻撃に、もろに弾丸を浴びた浮竹は、浅い呼吸を繰り返しながら傷を癒していく。
「こっちだよ!」
京楽は、わざと的になるために、レキとサニアの前に立った。
「死んで?」
レキがガトリングガンを放つ。そのガトリングガンは、レキの右腕についていた。
ドガガガガ。
鋭い弾丸を血の炎で燃やし、京楽は伸ばすた血の刃でレキの右腕を切り離した。
「無駄無駄無駄!」
レキの手には、またガトリングガンが生えてくる。
「こいつ!」
京楽は瞳を真紅に変えて、レキの首をはねた。
「あれ、ぼくの首が・・・・・」
「まだ死なないのかい!」
「京楽、気をつけろ。そいつら、俺の血を持っている。ヴァンパイアロード並みの再生力があるぞ!」
浮竹の言葉に、京楽は本気モードになった。
「「死んで?」」
「君たちが、死ぬといいよ。浮竹を傷つけた報いを、受けてもらうよ!」
京楽は、ニタァと笑った。
京楽は、見よう見まねで、血でガトリングガンを作り出すと、一気に射撃した。
「うわああああ!!」
「きゃあああああ!!」
着弾した弾は、血の炎となって、二人を燃やしていく。
「浮竹、お札を!」
浄化のお札を使うと、二人が身にまとっていた再生能力の元である、浮竹の血が浄化されて、レキとサニアは火だるまなって転げまわった。
「最後の手よ!」
「危ない、浮竹!」
サニアは、火だるまのまま素早く動いて、浮竹の元で自爆した。
「浮竹ーーーー!!」
「げほっ、げほっ。俺は大丈夫だ」
煙の中から、浮竹が現れた。
大丈夫だと言いながら、血を吐いていた。
上半身の一部が吹き飛ばされていた。
「まさか、自爆してくるなんて」
ただの肉塊になったサニアを見る。
「今、僕の血で癒すから!」
京楽は、自分の血の刃で手首を切ると、あふれ出す血を浮竹に注いだ。
「今回は、苦戦したな」
「まさか、あんか火器や自爆するとは思わなかったよ」
浮竹は吹き飛んだ上半身の再生を完了した。
「お前の血が、勿体ない」
まだ流れ続けている京楽の血を、浮竹は口にした。
「甘い・・・・・」
京楽は、切った手首の傷を癒した。
「京楽、もっと血をくれ」
「人工血液飲んでからね」
浮竹と京楽は、人工血液を口にして、それを己の血に変換した。前までは浮竹しかできなかったが、再覚醒後の京楽もできるようになっていた。
京楽の血液を、浮竹は飲んでいく。
やがて満足したのか、瞳を真紅にした浮竹が、京楽に白い喉を差し出してきた。
「お前も吸え。おまえは人工血液だけではだめだろう。俺の血を吸え」
京楽は、ごくりと唾を飲んだ。
浮竹の日に焼けていない肌が、日に照らされて白く輝いてみてた。
「じゃあ、もらうよ」
プツリと音をたてて、浮竹の白い喉に噛みついて、吸血した。
「んっ・・・・・」
浮竹は、さっき口にした京楽の血の色をした唇をぺろりと舐めた。
その仕草は妖艶で、京楽はそれが好きだった。
「京楽・・・」
浮竹は、濡れた瞳で京楽を見下ろした。
首に噛みついていたので、京楽のほうが今は頭が低かった。
「お前が欲しい・・・・・・」
耳元でそう囁かれ、京楽は浮竹を抱きあげて、寝室にまで運んでいく。
「んっ」
移動中の間に、京楽が浮竹の耳元を甘噛みした。
「あ、意地悪しないでくれ」
クスクスと、浮竹は笑う。
つられて、クスクスを京楽も笑った。
戦闘の後で血を見たというのに、浮竹は京楽を誘う。それに乗って、京楽も浮竹を自分のものにしようとしていた。
ベッドに降ろされると、浮竹の長い白髪がシーツの上に乱れた。
衣服を脱がされ、全裸にされると京楽も服を抜いだ。
良く鍛え抜かれた筋肉が見える。浮竹も薄いが筋肉はついていたが、どちらかというと華奢だった。
「あ、や・・・・・」
京楽が浮竹のものを口に含んで、奉仕してくる。
「やああああ」
浮竹は、京楽のテクニックの前で、吐精していた。
「お前は、こんなことばかりうまくなって・・・・」
「君に感じてもらいたいからね?」
ローションを手に取り、肌に馴染ませて浮竹の蕾に丹念に塗り込んでいく。
「あっ」
侵入してきた指を、気づけば締め付けていた。
「浮竹、もっと力を抜いて。リラックスして」
言われるままに、浮竹は力を抜く。
ずるりと指を引き抜いて、京楽は自分のもので浮竹を引き裂いていた。
「ああああ!!」
生理的な涙を滲ませる浮竹の涙を吸いあげて、京楽は動いた。
「ひああああ!!」
最奥と前立腺を的確にすりあげてくる京楽の熱に、浮竹はオーガズムでいきながら、自分の腹に欲望をぶちまけていた。
「あう!」
ごりっと最奥まで入ってきた京楽の熱を締め付けると、京楽は我慢できずに浮竹の胎の奥で熱を弾けさせていた。
何度も最奥を抉られて、浮竹はもう出すものがなくて、オーガズムでいきまくるばかりだった。
「あ、あああ・・・・・・・」
何度目のものかも分からぬ京楽の子種を体の奥で受け入れて、浮竹は意識を手放した。
----------------------------------------------
「浮竹・・・・・・僕は、君しかいらない。君さえいれば、他の全てを捨ててもいい」
まるで病んでいる京楽の言葉を、浮竹は微睡みの中で聞いていた。
「君が必要だというなら、この世界さえも手に入れよう」
まるで、藍染みたいなことを言う。
そのまま、浮竹の意識は闇に落ちていった。
ふと起きると、隣に京楽の姿がなかった。
ガウンを羽織り、逢瀬の名残を綺麗に拭われた体で、毛布を手に京楽の姿を探す。
京楽はベランダにいた。
珍しいことに、煙草を吸っていた。
「京楽」
「わ、びっくりした、浮竹。どうしたの」
「お前は、俺のためなら世界を手に入れてもいいと言っていたな」
「聞いてたの?」
京楽が困った顔をする。
「お前は、ああはなるな。藍染のようには」
「大丈夫。君が傍に居る限り、あんなふうに堕ちたりないよ」
「本当だな?」
持っていた毛布を、京楽の被らせた。
「浮竹!」
京楽が、浮竹を抱きしめていた。
「どうしたんだ、京楽」
「僕がどんなに醜くなっても、捨てないで」
「ばかか。血族のお前を捨てたりするものか!」
浮竹は、抱きついてくるく京楽の背中をなでて、頭を撫でた。
「お前が嫌だといっても、血族は解いてやらない」
「浮竹・・・・愛してるよ」
「ん、俺もだ」
京楽は煙草をもみ消して、被せられた毛布を浮竹に被せて、手を握りあって寝室に戻り、静かに眠りにつくのだった。
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「さぁ、出ておいで、イザベル」
イザベルは、体を震わせていた。
12歳くらいの浮竹の姿をした少年が、試験官の中で震えていた。
「どうしたんだい、イザベル?」
「始祖が・・・その血族が、僕を殺そうとしている」
それは、未来を見る力だった。
「大丈夫だ。君は始祖とほぼ同じだ。年齢差はあるが、始祖と同じようになるように作った」
藍染の言葉は、矛盾していた。
始祖と同じように。
イザベルには神のような魔力もないし、神の愛の呪いの不老不死もなかった。
「僕は、行きたくない」
藍染は顔を歪めて、イザベルを折檻した。
「やめて、あなた!せっかくの最高傑作が、壊れてしまうわ」
女神アルテナに止められて、真っ赤な鮮血にまみれても、傷を再生していくイザベルに、藍染はこう囁く。
「始祖の浮竹か、血族の京楽か。どちらかを苦しめたら、君を自由にしてあげよう」
「本当に?本当に、父様」
イザベルは顔を輝かせた。
自由になれる。この仮初の命から、自由に羽ばたける。
「死した女神リンデルの魂を入れたのが間違いだったかしら」
女神アルテナは、ため息を零す。
「リンデルは、僕だよ」
「いいえ、あなたはイザベル。リンデルの魂を、神格を魂に宿させた、ヴァンパイア」
「神格?よくわからない」
「いいこと。自由になるには、その魂が神であることを利用なさい。いざとなればアストラル体になれるはず」
女神アルテナがアストラル体、神の肉体になったように。
イザベルは、劣化版の浮竹のコピーだった。
けれど、その魂は神のもの。
神を滅ぼせる存在など、一握りだ。
その一握りの中に、始祖浮竹と血族京楽が入っているこを知らずに、女神アルテナは笑い続けた。
「神の怒りを買って、苦しむといいわ、浮竹、京楽。ほほほほほ!!」
女神アルテナの声が耳障りなので、イザベルは血の鎌を作って、女神アルテナの首をはねた。
「イザベル・・・ふふふ、それでいいのよ。さぁ、始祖浮竹とその血族京楽に、目に物をみせてやりなさい」
「自由になるために・・・・・・・僕は、始祖浮竹と血族京楽を、苦しめる」
血の波となって、魔国アルカンシェルを後にする。その血の波に飲み込また者は、血液を全て吸い取られて、ミイラのようなるのだった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター39
やっとのことでガイア王国の、浮竹のいる古城までやってきた。
古城から出てきた二人の後をつけた。
やってきたのはS級ダンジョンであった。
何をしているのかと見ていれば、宝箱を漁り、ミミックに噛まれている構図だった。
ミミックに上半身を食われ、じたばたしていた。
それを、偽勇者であるはずの京楽が、助けていた。
「本当にもう、君はミミックに噛まれるのが好きだねえ」
ミミックを魔法で退治した魔王であるはずの浮竹は、古代の魔法書がドロップされてご機嫌だった。
「あれが偽勇者?あれが魔王?」
勇者グレイセルの中の、偽勇者と魔王の図がガラガラと崩れ落ちていく。
とりあえず、勇者グレイセルは同じSランク冒険者のソロのふりをして、二人の後をついていった。
「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよ~~~」
宝箱が現れる度に、浮竹はミミックに食われていた。
もう間違いない。
あれは、魔王でもなんでもない、ただの始祖ヴァンパイアで、偽勇者はただのその血族だ。
そう答えに辿り着いた勇者グレイセルは、浮竹と京楽の前にくると、名乗り出た。
「私は勇者グレイセル。魔王浮竹と偽勇者京楽を倒しにきたんだけど・・・あなたたち、ただの始祖ヴァンパイアとその血族ね?」
浮竹は、それを聞かずに違うミミックにかじられていた。
「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよ~~~」
勇者グレイセルは、聖剣イルジオンで、ミミックを倒した。
「あ、ありがとう。Sランク冒険者のソロか。よくこの階層までこれたな」
古代の魔法書がドロップされて、すぐに浮竹の関心はそっちに移った。
「なんか、勇者とか名乗ってたけど」
「この世界に、今は人間の勇者はいないはずだろう?」
「勇者グレイセルって聞いたことあるよ。30年前に、魔王カイザルを倒して、その後病で亡くなった女勇者だよ」
「つまりは、反魂・・・・藍染の手の者か!」
浮竹は威嚇しだした。
「待って。私は争うつもりはないわ」
その言葉も、浮竹がきょとんとなる。
「え、そうなのか」
「そう。私は死んでいたのね。藍染というやつに利用されたってことかしら。この反魂とやらは、効果はいつまでなの?」
「術者が死ぬか、対象者がダメージを負いすぎて、体が維持できなくなったら、終わりだ」
「つまり、争わなければ生きていけるのね?」
「そうなるな」
「やっほーーーい!!私、冒険者になりたかったの!仲間にいれてくれないかしら!」
「ええ、でも藍染の手の者なんだろう」
「あんなやつの言葉を信じた私がばかだったわ。せっかく生き返ったのだし、第2の人生を謳歌してやるんだから!」
勇者グレイセルは、お茶目というか前向きな考えの人間であった。
「勇者グレイセルとは、もう名乗れないわね。今日から私はアリス。アリス・マキナって名乗るから、気軽にアリスって呼んでちょうだい」
「アリス、いいのか?藍染に反魂で蘇らされたんだろう?俺たちをやっつけるためにきたんだろう?」
「そうだったんだけど、藍染が私に嘘をついていたの。あなたたちを魔王と偽勇者だと言っていたわ」
背後から襲い掛かってきら、グレータードラゴンを、アリスは一撃で仕留めてしまった。
「強いんだな」
「これでも、魔王カイザルを滅ぼした勇者よ。あ、元勇者になるのかしら」
「こっちの京楽は、魔王アレスを倒した勇者だ」
「魔王アレス!私の倒した魔王カイザルよりよほど強い魔王ね!そんな人と知り合いになれるなんて、私ついてるわ~」
こうして、元勇者であり反魂で蘇ったグレイセル・マキナは名をアリス・マキナと改めて、浮竹と京楽と一緒に、S級ダンジョンをもぐっていくのであった。
50階層までくると、ボスのブラックワイバーンの群れが襲ってきた。
「そっちにいったぞ」
任せてちょうだい。
アリスは跳躍して、ブラックワイバーンの背中に乗ると、聖剣イルジオンでブラックワイバーンの心臓を一突きした。
「ぎゃおおおお」
ブラックワイバーンが地面に倒れる前に、次のブラックワイバーンの背中にのって、心臓を一刺しだ。
「強いな・・・・敵じゃなくてよかった」
敵だったら、多分苦戦を強いられたことだろう。
ブラックワイバーンの群れは、結局ほとんどをアリス一人で倒してしまった。
「財宝の間だ」
ゴゴゴゴゴと開いてく、ボスを倒した報酬の財宝の間をはじめて見るアリスは、目を輝かせた。
「うわぁ、金銀財宝がいっぱい!」
「欲しいならもって行け。予備のアイテムポケットをやろう」
「いいの?私がもらったら、あなたたちの取り分がなくなっちゃうわよ」
「ブラックワイバーンはドラゴンではないが、素材としてギルドに持ち込めばそこそこの値段がつく。それに俺と京楽は、よくS級ダンジョンを踏破しているから、金銀財宝なんてはいて捨てるほどある」
「踏破!強いのね。敵じゃなくてよかったわ」
「あ、宝箱!」
財宝の間の中心に置かれた宝箱は、見るからにミミックだった。
だって、小刻みに動いていた。
「ミミックよ!私が倒すわ!」
「待って、アリスちゃん。浮竹の好きなようにさせてあげて」
「でも、ミミックに」
浮竹は、すでにミミックに上半身をかまれていた。
「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよ~~~」
じたばたをもがく浮竹を、アリスは呆れた顔で見ていた。
「ミミックにかじられた浮竹はね、こうやって。よいしょと」
ミミックに更に押し付けると、ミミックはおえっとなって、浮竹を吐き出した。
「フレイムロンド」
「ぎゅいいいいい」
炎の魔法で燃やされて倒れていったミミックの後には、古代の魔法書が残されていた。
「魔法書!」
浮竹がそれを取ろうとすると、隣にあった宝箱のミミックが浮竹を噛んだ。
「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよ~~~」
「またやってる・・・・・・」
「ごめんねぇ。浮竹はミミックにかじられるのが大好きなんだ。趣味みたいなものかな」
その言葉に、アリスが引き気味に顔を強張らせた。
「ミミックにかじられるのが趣味の、始祖ヴァンパイア・・・普通なら、怖いイメージしか浮かばないんだけど、ミミックにかじられるのが趣味って聞くと、なんだかかわいいわね」
「かわいくていいから、助けてくれ」
じたばたともがく浮竹を、京楽が助けた。
ミミックを倒すと、金よりレアな、神の金属であるミスリルのインゴットが出た。
「なんだ、ミスリルか・・・魔法書じゃないなら、いらないな」
「え、放置しておくの!?」
アリスが驚いていた。
ミスリルの値段は高い。そこらの金銀財宝よりも。
「いらない。欲しければアリス、お前がもっていけ」
京楽もいらないようで、アリスは唾をごくりと飲みこみながら、自分のアイテムポケットにミスリルのインゴットを入れた。
「結局、この財宝の間の魔法書は3冊だけか」
くまなく財宝の間を探索して、浮竹は隠し扉を見つけた。
「京楽、この奥に隠し扉がある!」
「仕掛けは?」
「この壁の窪みだと思う」
浮竹が壁の窪みを押すと、ガコンと壁が動いて、人が一人入れるだけの入り口ができた。
「危ないかもしれないから、浮竹はここで待ってて?」
「分かった」
先に、京楽が隠し部屋に入った。
「きても大丈夫だよ、浮竹、アリスちゃん」
浮竹とアリスは、隠し部屋に入った。
そこは賢者が住んでいたようで、いろんな書物が溢れていた。
魔法書から、古代のレシピ、創作の物語、日記まで。
「これは・・・・賢者メイエドの遺産だな」
「賢者メイエド?」
「今から700年くらいまでに、魔法を極め、3体の精霊王を従えたという伝説の賢者の名だ」
「その遺産が、こんなところに・・・・」
隠し部屋は、壁に光苔をはやしており、光はいらなかった。
「どうするの、浮竹」
「魔法書の他にも、気になる本とかある。全部、持って帰る」
「そう言うと思ったよ」
京楽は、諦めて自分のアイテムポケットの中に、棚にしまわれていた本を放り込んでいく。
一通り収納して、3人は隠し部屋からでた。
「いやぁ、収穫が多いと気持ちいいな」
「浮竹にはね。僕は早く深層まで辿りついて、古城に戻りたいよ」
「ミスリルのインゴットに金銀財宝・・・・ふふふふ」
アリスは、危ない扉を開けかけていた。
そのまま60階層まで潜り、ボスのブラックドラゴンを倒して、財宝の間に入ると、魔力が付与された武器防具がそろっていた。
「これは・・・ミスリル銀!」
ただのミスリルよりも上位の金属に、剣士であるアリスは目を輝かせた。
ミスリル銀でできた鎖かたびらと、胸当てがあった。
「これも、もらってもいいのかしら?」
「身に付けれそうなものがあったら、もっていけ。ただ、ミスリル銀は貴重なので、身に付けないものは回収する」
「じゃあ、この鎖かたびらと、胸当てをもらうわ。ミスリル銀の剣も欲しいけど、私には聖剣イルジオンがあるし」
「その聖剣とやら、一度見せてくれないか」
「いいけど、この子には意思があるわ。存在が隠だと、その存在を焼いてしまうの」
その言葉を聞きながらも、浮竹は聖剣イルジオンを触った。
最初は火傷したが、もっているうちに熱さが消えて、火傷は治ってしまった。
「あなたの存在は、隠だけど、けれどとても陽に近いのね。イルジオンが、そう言ってるわ」
「ふむ。聖剣を返す」
「ありがとう」
「僕は・・・駄目だね」
「そうね。イルジオンが言っているわ。あなたは残酷だって」
「まぁ、浮竹を傷つける者はみんな殺すからね」
残酷に笑う京楽に、アリスは背筋がぞくっとした。
その日は、60階層の財宝の間で一晩を明かした。テントは1組してもってきていなかったので、アリスに使わせた。
夕食は、来る前に京楽が作っておいたビーフシチューと、ドラゴンステーキだった。
浮竹と京楽は、硬い地面に直接布団をしいて、その上で毛布をかぶってねた。
その次の日は、最下層の90階層まで降りた。
「何故!何故、魔王カイザルがここにいるの!」
90階層のボスは、アリスが倒したはずの魔王カイザルであった。
「ある方の手で、復活をしたのだ。ここで会ったが運命!我を滅ぼした勇者グレイセルよ、覚悟せよ!」
「もう私は勇者じゃないわ。グレイセルという名を捨てた、ただのアリスよ!」
「アリスちゃん、ここは僕らに任せて?」
「でも、危険だわ!相手は魔王よ!?」
「いいから、任せて」
京楽は、自分が愛用しているミスリル銀の剣を抜いた。
「ある方って、どうせ藍染でしょう?」
「そうなのか、京楽?」
「あのゴキブリがしそうなことだよ。勇者が意のままに動かないから、その封印された魔王をもってくる。あいつがやりそうな手だね」
「藍染め・・・・」
アリスは、自分を反魂してくれたとはいえ、こんな形にもってきた藍染に呪詛のような言葉を吐く。
「絶対、許さない、藍染!」
「まぁ、おちついて」
「アリス、危ないからこっちにこい」
浮竹は結界を作り、そこにアリスを避難させた。
「フレイムロンド」
ぽっ、ぽっ、ぽっ。
京楽の周囲に、いくつもの鬼火のような青い炎が灯る。
それは意思をもち、魔王カイザルを燃やそうとした。
「く、我は魔王ぞ。復活したのだ、魔王ぞ」
「魔王アレスより格段に弱いんでしょう?死んじゃってよ」
「ぐ・・・お主の大切なものを殺してくれる!」
魔王カイザルは、魔力で満ちた矛を浮竹に向けた。
それは浮竹の張ったシールドをやすやすと貫いて、浮竹の肩を抉っていた。
「ぐ・・・・」
「大丈夫、浮竹!?」
アリスが、浮竹の傷を押させた。
すぐに血はとまり、再生していくが、魔王カイザルは目の前で立ち上る魔力の高さに、足を震わせいた。
「なんだ、足がいうことを聞かぬ」
「君の本能が言ってるんじゃない?浮竹を傷つけられた僕の力が怖いって」
「そんな馬鹿なことがあるか!勇者ならいざ知らず、たかが小物のヴァンパイア如きに・・・」
「ファイアオブファイア。ヘルインフェルノ。トライアングルボルケーノ」
立て続けに、3つの威力の高い炎の魔法を使われて、魔王カイザルの右手は炭化していた。
「ええい、ヴァンパイア如きが!」
魔王カイザルが、魔法を使う。
魔力の礫が皆に襲い掛かる。
それは、浮竹の放ったシールドで防がれた。
「ありがとう、浮竹」
京楽が、礼を言う。
「魔王カイザルって、こんなに弱かったかしら」
「いや、京楽が強すぎるだけだ」
浮竹は、京楽の、自分と同じ神に匹敵する魔力が、揺らぎながら尖っていくのを感じていた。
魔王カイザルは、奥の手だととっておきの魔法を放った。
「凍てついて死ぬがいい!エターナルアイシクルワールド!」
禁呪の氷の魔法に、残酷に笑った京楽が、魔法を放つ。
「エターナルフェニックス!」
それは、炎の最高位精霊を使った炎の禁呪。
「ぬおおおおおおおお」
氷は、不死鳥を模った炎に溶かされていた。
「我の負けだ!我を殺すな!我はまだ人間界に復讐をしておらぬ!汝とて、ヴァンパイア。人間を守る義理など、ないであろう?」
「勘違いしないで。僕は人間がどうなろうと知ったこっちゃないよ。ただ、君は浮竹を傷つけた。僕は、それが許せない。カイザーフェニックス!!!」
再び、炎の不死鳥が呼び出される。
「我が、我がこんなヴァンパイアごときにいいいいい」
その言葉を最後に、体の全てを炭化させて、魔王カイザルはボロボロと灰となり崩れていった。
最後の財宝の間が開いた。
ミスリル銀のインゴットで溢れていた。
「きっかり3当分しよう」
もっともな浮竹の意見に、皆賛成した。
アリスは、大量の金になるものをアイテムポケットに入れいるので、辺りをきょろきょろと見回っていて、ちょっとした不審者に見えた。
「アリス。S級ダンジョンを踏破したんだ。もっと誇れ」
「でも、最後は私の出番はなかったわ」
「とりあえず、ガイア王国の冒険者ギルドに戻ろう」
3人は、ガイア王国の冒険者ギルドに戻った。
S級ダンジョンを踏破したとして、ギルドマスターに呼ばれいた。
「君が、浮竹と京楽の二人とS級ダンジョンを踏破した、アリス・マキナだね?」
「はい」
「ギルドは、君をSランク冒険者として認定しよう。このガイア王国の冒険者ギルドでの活躍を、今後期待しているよ」
浮竹と京楽は、今回のS級ダンジョン攻略で手に入れた魔物の素材を買い取ってもらった。
魔物素材には、ドラゴンも含まれていたので、大金貨2万枚になった。
「ミスリル銀製の武器防具があるんだが」
「全部、ギルドで買わせていただく!」
ミスリル銀のインゴットも売って、大金貨10万枚になった。
大金貨1枚で、4人家族で半年食べていける。
「私、故郷には戻れないから、このガイア王国に住もうと思うの。どこかいい場所はないかしら」
「それなら、このアラルの町がいいと思うよ。僕たちの住んでいる古城から一番近い町なんだ。猫の魔女乱菊ちゃんも住んでるし、冒険者ギルドもあるし、Sランク冒険者として生きていけばいいと思う」
「そうね。この街はアラルというのね」
「そうだ。王都にある冒険者ギルドよりでかい冒険者ギルドがあって、冒険者で賑わっている町だ」
「私、決めたわ。せっかく再びこの世に生を受けたんですもの。今度は勇者じゃなく、普通の冒険者として世界を巡ってみたいわ!」
「それもいいね」
「ああ、それがいいだろう」
こうして、勇者グレイセル・マキナはアリス・マキナといしてアラルの町の冒険者ギルドのSランク冒険者として、名声を高めていくのであった。
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「勇者はいい手ごまだと思ったんだがな。自由意思をもたせたの失敗だったか。反魂の時に、コアをくり抜いて、こちらで保存しておけばよかった」
魔国アルカンシェルで、藍染はイライラしながら爪を噛んだ。
勇者グレイセル・マキナはいい駒だったが、結局浮竹と京楽と戦わずに終わってしまった。魔王カイザルの封印を解いて、ダンジョンに配置したはいいが、呆気なく京楽にやられてしまった。
「愛しいあなた。4番目の子も完成したわ。5番目の子を・・・・あの始祖ヴァンパイアから入手した血を元に、作りましょう?」
いつだったか、始祖浮竹を拉致した時に、その血液を大量に抜いて、魔族の戦士に与えて聖帝国へ攻め入らせた。
その時に残っていた血液を元に、ゼイラムという浮竹の細胞をもつ子どもを作りあげたが、失敗した。
今度は、基礎から浮竹の血をべースにした、ヴァンパイアの子を作ってみせるか。
藍染は、女神アルテナが宿った、寵姫のヴァンパイアを身ごもらせて、そのヴァンパイアをベースに、浮竹の血を大量に与えて、小さな浮竹のクローンのような存在になるように作り始めた。
「この子が完成するまで、時間を稼いでおいで。レキ、サニア」
3番目と4番目の女神アルテナと藍染の子は、やはり10歳くらいの体で、レキが男の子でサニアが女の子だった。
「「行ってきます、父上、母上」」
レキの体には銃火器を、サニアの体には自爆機能を備え付けておいた。
「今度こそ・・・・・・・」
サーラの世界からやってきた、女神アルテナの知識を頼りに、サーラの世界の武器を作り出し、それを我が子に植え付けた。
我が子に対しての愛情など、欠片もなかった。
ただ、始祖浮竹と京楽を、少しでも苦しめられるならそれでよかった。
レキとサニアは、古城に向かって歩きだす。
その頃、浮竹と京楽は血の帝国にいた。
ブラッディ・ネイが懐妊したのだという。それも、浮竹の子を。
/ 始祖なる者、ヴァンパイアマスター38-2
ディープキスを繰り返しながら、お互いに衣服を脱がせていく。
「浮竹、この印は?」
「ああ、魔王のものの証だと、刻まれたものだろう」
鎖骨の下で、淡く紅色に光る桜の花びらの形をした文様に、京楽が触れると、文様は消えてしまった。
「何もされてないんじゃなかったの?」
「服の上から、我のものだって言われただけだぞ。その時はなんの異常もなかったし、さっき初めて気づいた」
「僕の浮竹に文様を刻むなんて許せないね。煮たった鍋に放り投げてこようか・・・・」
「魔王はもう、封印されて静かな眠りについている。そっとしておいてやれ」
「君がそういうなら、それに従うよ」
「あっ」
京楽の手が、鎖骨の下にあった文様を、まるでかき消すように噛みついて、そこから血をすすった。
そして、キスマークを残した。
「これで、僕のものになったね」
「やきもち焼きだな」
「仕方ないでしょ。君が孕まされたって聞いた時は、腸(はらわた)が煮えくり返ったよ」
「ただの嘘だ。本当に孕ませれてたら、お前に会う顔がない」
本気そうな浮竹に、京楽が哀しそうな顔をする。
「そんなこと言わないで!君がたとえ他の男に汚されても、僕は君を愛するよ?」
「不吉なことを言うな」
「うん、ごめんね」
また、ディープキスを繰り返していく。
「んあっ」
浮竹のものを握り込んで、指ですりあげた。
「ひあう」
浮竹のものはどんどん硬くなっていき、先走りの蜜をこぼした。
それを、ぱくりと頬張れて、その刺激に浮竹の体が跳ねた。
「ああああ!!!」
浮竹は、京楽の口の中に精を弾けさせていた。
「ああ、君の体液はやっぱり甘い」
「や・・・・」
浮竹の精液を飲みこんで、味わうようにもう一度浮竹のものを口にする。
「やああああ!!」
すぐには吐精せずに、浮竹は京楽の背中に爪を立てた。
「んあああ」
ローションを手に取って、人肌の温度になじませると、浮竹の蕾にぬりこみ、指とすでに昂っている己にも塗りこんだ。
「あ・・・・」
まずは、指が入ってきた。
1本、2本とだんだん増やされて、最終的には指は3本になっていた。
「やあああん」
「ここが、浮竹のいいところ」
前立腺を押されて、浮竹は体をくねらせた。
「やっ」
「君の中に挿入るよ?いいね?」
「ひああああああ!!」
ぎしりと、大きな天蓋つきのベッドが軋んだ。
「ああああ!!」
浮竹は背中を弓ぞりにしならせて、吐精していた。
「あ、や!」
感じていっている瞬間も、京楽の律動は止まらない。
前立腺をすりあげて、浮竹の最奥に辿り着く。
「僕の子種をあげるから、孕んでね?」
孕めないと知っていながら、わざとそんなこを言う。
「ひあ、孕む、孕むからもっと子種をくれ!」
浮竹の内部が締め付けてくる。
それに合わせて、京楽は精子を浮竹の胎の奥に注ぎ込んでいた。
「あああ、孕んじゃた・・・・」
「それは嬉しいねぇ」
ごりっと音をたてて、京楽のものが結腸に入っていく。
「ひあああああ!!」
「ここ、ごりごりされるの好きだもんね?」
「好き、好きだから、もっと孕むから、春水のザーメンちょうだい」
「いい子だね」
浮竹を貫き、抉り、揺すぶって、京楽はまた浮竹の中に精液を注ぎ込む。
「ああああ!んあっ」
首の動脈に噛みついて、散る血液を啜ってやった。
ベッドのシーツが血まみれになる。
「ああ、君の血が。勿体ないことをしちゃったね?」
動脈の傷を癒しながら、今度は浮竹が京楽の肩に噛みついて、ごくごくと血を飲んだ。
「僕の血は美味しいかい?」
「美味しい」
「じゃあ、下の口でも僕をいっぱい味わってもらわないとね?」
「やああああ」
ズクリと貫かれて、浮竹は最後の熱をシーツの上に吐き出していた。
「やああ、もう出ないからぁ!」
それでも、京楽はしつこく萎えた浮竹のものをしごいた。
ぷしゅわああ。
勢いをつけて、浮竹は潮をふいていた。
「あ、あ、潮いやあぉあ」
その潮ををペロリと舐めあげる。
「やあああ、そんなの、舐めないでええ」
「君の体液は、なんでも甘いよ?」
「やあん」
京楽は、もう啼くことしかできない浮竹を犯し、蹂躙した。
「あああ・・・」
もう何度目か分からない熱を吐き出されていた。
浮竹の腹は、外からでも分かるほどの、精液を注ぎ込まれて腹部がぽっこりとなっていた。
「これが、最後だよ」
「やああ・・・・・」
最後の熱を吐き出すのと同時に、浮竹はぐったりとなった。
浮竹が、京楽の中から出ていく。
タオルを用意していたが、だらだらと零れていく己の精子の、尋常ではない量に少し興奮した。
「僕は、こんなに十四郎の中に出したのか・・・十四郎が孕んでも、おかしくないね?」
「やああ、春水のバカ。孕めるわけ、ないだろ」
ぐったりしながらも、なんとか意識を保っていた浮竹が反論する。
「さっきは孕んだって言ってたじゃない」
「その時の気分に流されただけだ」
「よっと」
浮竹を抱きあげて、京楽は風呂場に向かう。
「君を孕ませられなかったから、かき出さないとね」
「ん・・・・」
かき出されれる行為にも、浮竹は敏感に反応した。
「もう、煽らないでよ。息子が元気だったら、ここでも犯していたよ?」
「やあああんん」
「浮竹の声って、ほんとに腰にくるよね」
「ばか・・・・・」
風呂に入り、情欲の後を洗い流して、二人はシーツを変えたベッドに横になると、睦み合った疲れからか、寝てしまった。
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「君の名は?」
「勇者グレイセル。グレイセル・マキナ」
藍染は、反魂で先代の勇者を蘇らせた。女勇者で、まだ少女であった。
魔王を打ち滅ぼした後、突然の病気で儚くこの世を去った伝説の勇者だった。
魔王は、この世界では複数確認されていた。
魔王アレスではなく、魔王カイザルを滅ぼした勇者だった。
魔王カイザルは、ヴァンパイアロードだった。
「この世界に、偽勇者と、新たなヴァンパイアマスターの魔王がいるんだ。滅ぼしてくれるかい?」
「悪は許さない。偽勇者も」
勇者グレイセルは旅立つ。
聖剣イルジオンを手に。
「悪は、許さない。始祖魔王浮竹、偽勇者京楽。覚悟しなさい」
藍染は、笑っていた。
「魔王がだめなら、次は勇者だ。ははははは」
「愛しいあなた。3人目の子はもう完成したわ。4人目の子を、作りましょう?」
「ああ、愛しい女神アルテナ。君の女神としての力には脱帽だよ。まさか魔王や勇者を手ごまにできるなんて」
「うふふふ。あなたほどの人が、神じゃないなんておかしいわね」
「私は、いずれ神になる」
「その時は、隣に私がいるわ。うふふふふ」
「あはははは」
二人は、狂ったように笑い続けるのだった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター38
伴侶にすると言われたが、乱暴に扱われることはなく、古城にはちょっと風変わりな、極東の島国の昔の着物であった、十二単を着させられていた。
魔王アレスも、浮竹のように血でメイドを作り出し、浮竹の世話をそのメイドたちに任せていた。
首飾りに触れる。
豪華な翡翠のあしらわれた首飾りであったが、魔封じの首飾りでもあった。
普通の魔法どころか、血の魔法さえ操れず、浮竹は魔王の元で軟禁されて、ただ時が過ぎていく。
「京楽・・・・・」
今頃、あの愛しい血族は、躍起になって浮竹を救いにくる手はずを整えているだろう。
魔国アルカンシェルと、自分の古城のあるガイア王国は遠い。
「京楽・・・早く、俺を助けにきてくれ。俺は、籠の中の小鳥だ・・・・」
魔法を封じられて、魔王アレスはよく浮竹に歌を歌えと命じた。
適当に、知っていた子守唄を歌うと、魔王アレスは眠っていた。
今だと、外に出ようにも、扉はびくともしなくて、窓にも結界が張ってあって、古城の外には出られなかった。
「汝は、我が花嫁。次の月が満ちる時、汝には我の子を授ける」
次の満月まで、あと半月。
浮竹は、捕らわれの姫のように、ただ京楽が助けにきてくれることを祈るのだった。
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「というわけなんだ。平子クン、力を貸してくれないかい」
「お安いごようやで。友人のためや、人肌脱ごうやないか」
血の帝国で、古代の遺跡を守護していた星の精霊ドラゴン、平子真子は竜化して、白い羽毛が生えた10メートルほどのドラゴンになると、京楽を乗せて魔国アルカンシェルまで向かった。
魔国アルカンシェルに行くには、いくつもの山脈を越えねばいけず、天候の悪い時は飛ぶことができずに、休憩をとりつつ、一週間かけて京楽と平子は、魔国アルカンシェルに到着した。
そこで地図を買い、離島のハンニバルまで更に飛んだ。
「ここが、魔王の居城・・・・・・」
「ほんとに、俺は手助けせんでええんか?」
「これは僕と浮竹に降りかかった試練だ。ここで待っていてくれないかい」
「分かったで。ここで待機しとくわ」
平子は、ドラゴンの姿のまま、離島ハンニバルにある魔王アレスの古城の中庭に待機するのであった。
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「浮竹、助けにきたよ!」
扉ごと魔法で破壊して中に入ると、魔王アレスが奥の間の玉座にいた。
「よくきたな、勇者京楽」
「はぁ?誰が勇者だって?」
「魔王が連れ去った姫を助けるのは、勇者の役割であろう」
「そんなことはどうでもいい。浮竹を返してもらう!」
「あれは、もう我が子を孕んだ。汝の元に帰しても、我が子を産むだけだぞ」
京楽の顔が一気に青くなった。
「たとえそうだとしても、浮竹は返してもらう!子は、僕の子として育てる!」
その言葉に、魔王アレスはさも愉快そうに笑った。
「此度の勇者は、魔王討伐よりも姫のことに、夢中のようだ」
「当たり前でしょ!僕は浮竹の血族!僕は浮竹のもので、浮竹も僕のものだ!」
ゆらりと、魔王アレスが魔力を揺らめかせた。
「決着をつけようぞ。我は2千年前に人間の勇者に封じられし魔王アレスである」
ぐらりと空間が歪んだ。
「我の空間だ。古城を傷つけたくないのでな。さぁ、どこからでもかかってこい」
京楽は、まずは小手調べだと、炎の魔法を放つ。
再覚醒してから、魔法が自分で使えるようになっていた。
「フレイムロンド!」
「アイスエッジ」
京楽が唱えた火の魔法を、魔王アレスが氷で相殺した。
「なるほど。魔王って名乗るのも、嘘じゃないみたいだね」
渦巻くその魔力の本流に、京楽は好敵手を見つけたかのように、笑んだ。
「我は、あくまで魔王ぞ。そこらの魔族と一緒にしないでもらおうか」
「フレアサークル!」
「アイシクルランス!」
二人の魔力は、ほぼ互角であった。
魔王は余裕をもって、京楽の相手をする。そこに隙を見つけた。
「うおおおおおお!!」
猛毒の血の刃をいくつも作りあげて、魔王アレスに放つ。
魔王アレスはいくつもの血の刃に斬り裂かれて、血を滲ませていた。
「我を傷つけるとは、なかなかやるな。だが、我はこの程度では倒れんぞ?」
傷を再生させながら、魔王アレスは手を伸ばした。
その手は、巨大な影となって、京楽の喉を締め上げた。
「ぐっ・・・・」
血の魔法で、影を切ろうにもすり抜ける。
本体に向けると、血は蒸発した。
「うぐっ・・・・」
「もう終わりか?」
「まだだ・・・エターナルアイシクルワールド!」
絶対零度の氷が、魔王アレスに襲いかかる。
「ほお、氷の魔法の禁呪か。だが、それなら我も使える。エターナルアイシクルワールド」
お互い、氷になりながら、魔力をうねらせていく。
まず、京楽が氷の魔法を割って、アイテムポケットからミスリル銀の魔剣を取り出すと、炎の魔法をまとわせて、魔王アレスに切りかかった。
魔王アレスは全身を炎で焼かれた。
「我はこの程度では死なぬ!」
けれど、魔王アレスは炎に飲まれたまま、京楽の体をその腕で握りつぶしにかかった。
「うおおおおおお」
魔王アレスを包みこむ炎が、京楽にも遅いかかる。
「く、ウォーターワールド!」
水の世界を作りだして、お互い鎮火する。
「ウォーターランス!」
「エアリアルエッジ!」
水と風の魔法がぶつかりかあう。
京楽は、炎の最高位精霊フェニックスを呼び出した。
「ゴットフェニックス!」
それに対して、魔王アレスもまた氷の最高位精霊フェンリルを呼び出す。
「ゴッドフェンリル!」
炎の不死鳥と氷の魔狼は、お互いの属性をぶつけ合いながら、消滅した。
京楽は、ニタリと笑った。影を潜めていた残酷さが滲み出てくる。
「ブラッディ・サークル!」
自分の血を円形状にして、その中にいた魔王アレスをずたずたにした。
「まだ、生きてるの。しぶといね」
魔王アレスは、傷を再生しながら、笑った。
「ふはははははは」
「あはははははは」
二人は笑いあいながら、お互いの隙を狙っていた。
「そこだ!」
魔王アレスが、魔法で作り出した槍で、京楽の胸を貫いた。
「ぐふっ」
吐血しながら、京楽も自分の血の槍で、魔王アレスの胸を貫いていた。
「ごふっ・・・・」
お互い、倒れる。
「よくぞ、我にここまでダメージを負わせた。エターナルアイシクルワールド・・・」
ああ、駄目だ。
僕はここで負けるのか。
そう思った瞬間、浮竹の声が聞こえた気がした。
「京楽、俺を助けにきたんだろう!そんな奴に負けるな!」
浮竹は涙を流していた。
浮竹の涙を見るのは、嫌だだった。
「エターナルアイシクルフィールド!」
さっき唱えた氷の禁呪の魔法よりも、更に高位の禁呪の魔法を繰り出す京楽。
「ぬおおおおお!!!」
魔王アレスは、氷に閉じこめらられていく。
「エターナルアイシクル・・・・・」
呪文の途中で、完全に凍り付いた。
凍り付いた両足をぱきんと割って、上半身でなんとか空間の歪みから脱出すると、目の前には涙を流している浮竹がいた。
「京楽、京楽!」
「僕は大丈夫」
「大丈夫なものか。足がないじゃないか!」
「ああ、魔封じをされているんだね。今、とってあげるから」
魔力を流し込むと、魔封じの首飾りはパキンと割れた。
「今、治癒してやるからな!」
浮竹は自分の血を大量に使い、京楽の足を形成してくっつけた。
「だめだよ、君の血が足りなくなってしまう」
「念のために、血液製剤を服に忍ばせておいた」
それを不味そうにがりがりとかじり、血を補給して、浮竹は京楽に抱きついた。
「バカ!俺のために無茶をしやがって!」
「でも、僕はお姫様を助ける勇者だからね」
「勇者なら、魔王くらい簡単にやっつけて、俺を迎えに来い!」
浮竹は、無茶難題を言ってきた。
「厳しいことを言うねぇ」
「本当に、心配したんだからな!」
「それはこっちの台詞だよ!子を孕まされてはいないね?」
「ああ、何もされていない」
完全に回復した体で、京楽は浮竹を抱き上げた。
「その恰好、どうしたの?」
「魔王アレスが似合っているって、俺にくれた」
「確かに、凄く似合ってるよ。ちょっと重いけどね」
浮竹は真っ赤なった。
十二単を着た浮竹を抱きあげて、古城を出ようとすると、封印されたはずの魔王アレスが立っていた。
「僕の後ろに隠れて」
浮竹は、言われた通り京楽の後ろに隠れた。
「汝は、見事に我に打ち勝った。金銀財宝はないが、代わりにこれをやろう」
すーっと、京楽の手の中に、赤く輝く魔法石のようなものがやってきた。
「これは?」
「世界の賢者や錬金術士たちが欲しがる、本物の賢者の石だ」
「本物の賢者の石だって!」
京楽の背後から浮竹が出てきて、賢者の石を手にとった。
「うわぁ、本物だ。はじめて、本物の賢者の石を見た・・・・」
別名、神の血。
神々でも最高ランクの上位神が流した血が、賢者の石となった。
錬金術でも作れるが、それは仮初の賢者の石であった。
最高位神・・・たとえば、浮竹の父である創造神ルシエードクラスの神が流した血のみが、本物の賢者の石になりえた。
「お前は、これを使わなかったのか」
「我にはいらぬものよ」
賢者の石を使うと、なんでも願いが叶うと言われていた。
例えば、王になりたいとか、世界を支配したいとか、神になりたいとか。
どんな望みでも叶うと言われている。
浮竹は、賢者の石を手に取ると、砕いた。
「何を!?我が秘宝は本物だぞ!?」
「だからだ。こんなもの、世界にあっちゃいけないんだ」
「ふむ・・・・・・」
「もしも藍染の手に渡ると、奴は神になるだろう」
「そうやも知れぬな」
魔王アレスは、同意する。
「だから、こんな賢者の石なんていらない」
「浮竹・・・・」
「俺には、血族の京楽が傍にいてくれる。それだけで、満足だ」
京楽は、感動していた。
錬金術士でもある浮竹なら、喉から手が出るほどに欲しいだろう、賢者の石を砕くとは。
自分がいてくれたら、それだけでいいと言ってくれた。
それだけで、京楽は満足だった。
「お前はこれからどうするんだ?」
「我か?我は、また長い時を眠る。いつか封印が解けた時、また魔王としてこの世界に君臨しようぞ。だから我が嫁にならぬか、浮竹。汝なら、我が封印も解けるはず」
「お断りだ。京楽以外の子を産みたくない。もっとも、俺も男だから子供なんで欲しいとも思わないが」
「賢者の石があれば、可能だったのだぞ。汝らに子を授けることもできただろう」
「それでも、いらない。俺は京楽さえいれば、それでいい。それに育児なんて大変だし、母親の苦労なんてしたくない」
「そうか。引き留めて悪かった。さぁ、いくといい。魔王を倒した勇者として、世界中がお前たちの存在を歓喜するだろう」
魔王アレスの言葉に、浮竹は首を横に振った。
「俺たちは古城でひっそり暮らしている。騒がしいのは、ご免だ」
「つくづく変わった者よ。勇者京楽」
「なんだい」
「この姫の浮竹を、大事にするのだぞ」
「もちろんだよ」
「姫ってなんだ姫って!」
ぷんぷん怒る浮竹がかわいくて、京楽は魔王アレスの前で口づけていた。
「ちょ、京楽、お前!」
「熱いのう。いつか我にも、そのような存在が欲しいものよ。我はまた眠りにつく。始祖ヴァンパイアは悠久を生きる。いつか、また会おうぞ」
「ばいばい」
「じゃあね」
魔王アレスの魂は封印の眠りについていった。
「外の中庭で、平子クンを待たせてあるんだ。彼に乗って、帰ろう」
「ああ、分かった」
中庭に出ると、平子が目を開いた。ドラゴンの姿をしていた。
「なんや、けったいな恰好してるなぁ、浮竹」
「ほっとけ。俺に趣味じゃない」
「でもようにおうとるで。まるで勇者に助けられたお姫様やな」
「どいつもこいつも俺を姫だと・・・・」
浮竹は、怒りそうなったが、平子もわざわざ自分を助けるのに力をかしてくれたので、礼を言った。
「平子、俺を助けにきてくれてありがとう」
「どういたしてましてやな。京楽、あんたは魔王を討ち取ったんやろ?」
「うん。封印だけどね。一応討ち取ったことにはなるのかな」
「血の帝国中で、祝い事せなな。勇者京楽の誕生や!」
「おい、平子、そういう騒がしことは!」
「たまにはええやんか。血の帝国の民はお祭り好きやのに、肝心の祭りがないって嘆いとったで」
「仕方ない。血の帝国に凱旋だ!」
-------------------------------------------------
始祖浮竹の血族、京楽が魔王を討伐したという話は、すぐに血の帝国中に広まった。
新しい勇者として、正式にブラッディ・ネイから勇者王の名を与えられて、皇族に叙された。
「あの京楽が、俺と同じ皇族か・・・・・」
「不満なのか、浮竹」
「ああ、白哉か。別に不満はないが・・・・」
白哉は、恋次を伴って、その戴冠式に出ていた。
「これで、キミも皇族だ。兄様以外の伴侶をとるべきだ」
「いやだね。そこはなんと言われても、僕は浮竹以外の伴侶をとることはないよ」
「勇者の血は、残さなければいけない」
「ブラッディ・エターナルがいるでしょ」
「ああ、それもそうだね」
ブラッディ・エターナルは、浮竹が魔女の秘薬で女体化した時に、そのままの京楽に抱かれたことでできた、受精卵から生まれた子供であった。
だが、公式に浮竹と京楽の子であるとは言われていなかった。
「ブラッディ・エターナルを、今この瞬間をもって、正式に始祖浮竹と血族京楽の子として、皇族にするものとする」
「ああ、また勝手に・・・・あの愚昧は」
浮竹も京楽も、ブラッディ・エターナルを愛していないし、ブラッディ・エターナルも両親として認めたわけではなかった。
「まぁ、勝手にしてくれ。京楽の勇者の血族として必要なら、連れていけばいい」
ブラッディ・エターナルはブラッディ・ネイの寵姫であるが、皇族ではなかった。その存在が皇族に変わったところで、さしたる変化もないであろう。
「帰るぞ、京楽」
「うん、ちょっと待って」
「今をもってこの日を、勇者記念日として、毎年祭りを開催するものとする」
ブラッディ・ネイの言葉に民衆はわああああと、歓声をあげた。
「やってられない。帰るぞ」
「じゃあ、僕は戻るから。あとはそっちで勝手にやっておいて」
「浮竹さん、ほんとにいいんすか!京楽さんも!」
恋次が、二人を呼び止める。
「俺たちには、もう関係のないことだ。勇者記念日とかいうが、ただ祭りをしたいだけだろ」
「そりゃそうでしょうけど」
「だから、ブラッディ・ネイに任せるといいよ。あの子は、性格は歪んでて僕の浮竹に伴侶としての愛を囁くけど、統治者としては有能だから。なんとかしてくれるでしょ」
そうして、浮竹と京楽は古城に戻っていった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター37
それは様々な効果をもつ。
媚薬だったり、一時的な若返りの薬だったり、一時的な性別転換の薬だったり。
京楽は、浮竹に内緒で猫の魔女乱菊から、一時的な若返りの薬を買った。おまけに効果は5歳児になるというもの。
いつの日だったか、3歳児になった東洋の浮竹と京楽の可愛さにやられて、自分のところの浮竹が5歳になったらどうなるのだろうかという、純粋な好奇心からきていた。
浮竹の飲み物に、5歳児になる魔女の秘薬を混ぜた。
「京楽、お前俺に何か・・・・」
そう言って、ぼふんと音をたてて、その場に5歳の子供の姿に若返った浮竹がいた。
自分の体を見て、小さく縮んでいるのを確認して、5歳の浮竹はぷりぷり怒りだした。
「魔女の秘薬を飲ませたな!京楽のアホ!」
「浮竹、かわいい!」
ひげづらでほっぺに頬すりされて、浮竹は苦しがった。
「痛い!ひげが痛い!」
「ああごめん。君は、5歳になっても中身はあんまり変わらないんだね。少し残念だよ」
「変わってほしいのか。春水お兄ちゃん」
「今の、今のもう一回言って!」
「春水お兄ちゃん」
見上げながらの浮竹に、京楽は鼻血を出しながら、浮竹を抱きしめた。
「うわあああ、鼻血、鼻血!」
浮竹が、ティッシュを探す。
「この秘薬の効果はどれくらいだ」
「3日間くらいかな」
「長いぞ。京楽のばか!」
ぷりぷり怒る5歳の浮竹がかわいすぎて、京楽はまた浮竹のほっぺに頬ずりしていた。
「痛い!ひげが痛い!!」
ぽかぽかと殴ってくるが、所詮5歳児。
力は全然なくて、京楽は浮竹の手をって服を買いにいこうと言い出した。
今浮竹が着ている衣服も一緒に縮んでいたが、他に着る服がないので、まずは町に服の買い出しにいくことにした。
「迷子にならないようにね?」
「恥ずかしい・・・・」
二人は、ずっと手を繋いでいた。
子供服の店にくると、京楽は浮竹が疲れて帰りたいと言い出すまで、着せ替え人形にした。
「じゃあ、この服とこの服をこの服を買うよ。会計、たのめるかな」
「合計で金貨1枚と銀貨20枚になります」
そこそこ有名なブランドで、少しお高めだった。
「浮竹、その服は着て帰るから、そのままの姿でいてね?」
「納得できん。何故俺の服が猫耳つきのフードの猫の服なんだ」
浮竹の恰好は、猫の着ぐるみの恰好に頭に猫耳のフードがついたものだった。
「それはかわいいから。浮竹はかわいすぎてなんでも似合うけど、着ぐるみみたいな服はめちゃくちゃかわいくて僕がけしからんとなるから」
「言ってることがむちゃくちゃだぞ」
「うん、君のかわいさにやられたから」
帰り道は、浮竹が疲れた様子だったので、京楽が抱き上げて帰った。
古城に戻ると、まずは写真をとられた。
「勝手にとるな!」
「かわいい君の姿を残しておきたいからね」
「むう」
ぷくーっとほっぺを膨らませる浮竹に、京楽はまた鼻血を出しそうになっていた。
「か、かわいい・・・」
「こんな姿、誰にも見せられない・・・」
(やぁ、元気にしてた・・・って、東洋の浮竹、その姿は?)
(西洋の俺!かわいすぎる!)
何故そんな姿になったかも聞かずに、東洋の浮竹は小さくなってしまった西洋の浮竹を抱きしめて、頭をなでて抱き上げた。
「京楽に、若返りの魔女の秘薬を飲まされた、今日から3日間はこの姿だ。中身は元のままだからな」
「それでもかわいい!」
「ちょっと、東洋の俺。東洋の京楽、止めてくれ」
(かわいからいいじゃない。十四郎に、好きなだけ可愛がられるといいよ)
「むう、覚えてろ」
ぷくーっと頬を膨らませる西洋の浮竹に、東洋の浮竹は手土産にもってきたドーナツをちらつかせた。
「ドーナツ!」
味覚は子供に戻ってしまっているようで、東洋の浮竹からドーナツを受け取って、西洋の浮竹はそれをもぐもぐ食べていく。
ちなみに、東洋の浮竹の膝の上だった。
(かわいいなぁ、西洋の俺。ああ、このまま持ち帰りたい)
(ダメだよ?西洋の浮竹は西洋のボクのものなんだから持ち帰っちゃダメ!)
東洋の浮竹は、まるでおかんのような目つきで、東洋の浮竹をたしなめた。
「ちょっと、いくら東洋の浮竹でも持ち帰りは許さないよ。こんな姿になっても、浮竹は僕のものなんだから」
「お前が悪いんだろが!」
東洋の浮竹の膝の上で、西洋の浮竹は近づいてきた西洋の京楽のひげをひっぱった。
「あいたたた、ひげひっぱるのはやめて!」
「ふん」
(西洋の俺、食事はまだか?)
「ああ、まだだな。そう言えばそろそろ夕飯の時間だな、腹が減った」
(よし、俺がお子様ランチを作ってやろう。春水、手伝ってくれるか?)
(もちろんだよ。立派なお子様ランチを作ってあげるね?)
「むう、俺は見かけはこうだが中身は元のままなんだがな」
「浮竹、彼らの気が済むまで付き合ってあげたら?」
「仕方ない。そうする」
やがてできあがったお子様ランチは、とても美味しくて西洋の浮竹は残さず食べた。
(残さないなんて偉いぞ)
東洋の浮竹に頭を何度も撫でられる。
(ああ、弟ができたみたいで、こういうのいいなぁ)
その日は一緒に風呂に入りたいという東洋の浮竹に負けて、西洋の浮竹は東洋の浮竹に風呂に入れてもらい、髪と体を洗われた。
パジャマは、カエルさんだった。
(ああ、可愛すぎる・・・・)
「東洋の僕ら。ゲストルームで泊まってね?」
(むう、この小さな東洋の俺を独占する気だな)
「まだ、この姿の日は続く。明日はお前と寝るから、とりあえず今日は就寝しよう。俺も疲れて、眠い・・・・・」
こっくりこっくり船をかぐ西洋の浮竹をベッドに寝かしつけて、東洋の二人は仕方なくゲストルームで寝た。
次の日の朝、朝食を皆でとった後、西洋の浮竹がこう言い出した。
「なんだか、むしょうに遊びたい。体がうずうずする」
(じゃあ、木登りでもする?こう見えて俺は木登りが得意なんだ)
「する!中庭に生えている大樹なら、俺も何度か上ったことがある!」
「気をつけるんだよ、浮竹。怪我しないよにね」
(気をつけてね、十四郎と西洋の十四郎。僕とこっちの僕は、食事の後片付けと昼食の用意、それにお菓子を作っておくから)
「お菓子!」
(お菓子、俺の分もあるよな?)
きらきらを目を輝かせる東洋の浮竹と、西洋の浮竹だった。
「ほら、この木の上からだと、一番近い街がよく見えるだろう」
(いい景色だな)
二人は、木登りをした。
東洋の浮竹がするするとあまりにも自然に上るものだから、西洋の浮竹は東洋の自分に助けてもらいながら、木登りした。
「じゃあ、後は追いかけっこ」
(いいよ。僕が鬼になるから、西洋の俺は逃げてね)
(はーち、きゅうー、じゅう!)
数を数えて、東洋の浮竹は逃げる西洋の浮竹を追いかけた。
(待てーーーー)
「うわ、早いな!負けるものか!エアウォーキング!」
魔法を唱えて、西洋の浮竹は空を飛んでしまった。
(じゃあ、俺はこうだ)
東洋の浮竹は、巨大な白蛇を召還してその上に乗ると、宙にいる西洋の浮竹を捕まえてしまった。
「まいった、降参だ」
白蛇は、東洋の浮竹の服を掴んで離さない。
そんな様子を、古城の窓から西洋と東洋の京楽が、微笑ましそうに見つめていた。
(捕まえた。そろそろお昼だな。昼食を食べに行こうか)
「ああ」
東洋の浮竹は西洋の浮竹の小さな手を握って、古城の中に戻った。
昼食を食べ終えて、西洋の浮竹は眠そうに船をこいでいた。
「お昼寝の時間かな」
(そうみたいだね。中身は元の西洋の十四郎のままでも、体が子供だから、お昼寝を体が求めてるんだと思うよ)
(じゃあ、俺が寝かしつけてくるな)
東洋の浮竹は、西洋の浮竹を抱き上げて、寝室に入るとベッドの上にそっと寝かせて、毛布をかぶせた。
(早く元に戻るといいな。その姿もかわいくて大好きだけど、普通の西洋の俺に会いたい)
やがて3日が経ち、西洋の浮竹は元の姿に戻った。
そろそろだろうと、ぶかぶかの元のサイズの衣服を着せれていたので、いきなり裸になるとかいうハプニングは起きずに済んだ。
「世話をかけた。でも、楽しかった」
(俺も楽しかった!まるで弟ができたみたいで!)
(ボクはやっぱりその姿のままが一番だと思うね。今回はどこの誰かさんのせいで、苦労したね)
「全くだ。おい、京楽。覚悟はできてるんだろうな?」
「ぎくり」
「マンドレイク、5本生のまままるかじりだ。いいな?」
「はい」
東洋の京楽は、しゅんとする西洋の京楽の肩をぽんと叩いて満面の笑みで。
(がんばれ)
しょんぼりする今回の騒ぎの犯人あった、西洋の京楽は皆が見ている前でマンドレイクを生で5本まるかじりの刑に処された。
(じゃあ、俺たちは戻るな)
「ああ、本当に世話になった。兄ができたようで、嬉しかった」
(じゃあね、西洋の十四郎。あと、西洋のボクはほどほどにね)
「マンドレイクが、マンドレイクがあああ」
ちょっと混乱に陥っている西洋の京楽を残して、東洋の浮竹と京楽は元の世界へ戻っていった。
--------------------------------------------------------------------------------
「やっと、帰った・・・・・」
古城の様子を伺っていたゼイラムは、浮竹と京楽が二人いるのに驚き、身を潜めていた。
そして、改めて古城に乗り込んだ。
「やっと出てきたか」
「気配は察知していたんだよね」
浮竹と京楽は、追いかけてくるゼイラムを利用して、庭にまでやってきた。
古城の中では、思う存分に暴れれないからだった。
「俺の、存在が、ばれて?俺は、ゼイラム」
「ばればれでしょ。女神アルテナと藍染の匂いをそこまでさせといて」
ゼイラムは、血の刃を作りだすとそれで京楽に切りかかった。
「な、血の魔法!?ヴァンパイアか!?」
「違う。こいつ、俺の細胞を持っているようだ。気を付けろ。お前が狙われている」
「力の、弱い、血族の、京楽、殺す」
ゼイラムは、浮竹にも攻撃するが、しつこく京楽を狙ってきた。
「京楽、強い、何故?」
「僕は再覚醒したからね。今までの僕と思ったら、痛い目をみるよ!」
京楽は渦巻く魔力を血の鎌にかえて、ゼイラムを袈裟懸けに斬り裂いた。
その傷口は、シュウシュウと音をたてて癒されていく。
「く、ヴァンパイアの癒しの力か」
「灰になるまで攻撃すれば、それも意味をなさないだろう」
「そうだね」
「俺が、殺す、血族の、京楽」
「お前の力を、そいつに見せつけてやれ!」
「分かったよ!」
浮竹の言葉を受けて、京楽は渦巻く魔力を炎に変えて、次に雷にかえた。
「フレイムサンダースピア!」
炎と雷の2重の属性を持った槍が、ゼイラムに襲い掛かる。
「ぎゃあああ!でも、俺には、浮竹の、細胞がある、死なない」
ゼイラムは、血の刃で京楽の首の動脈をかき切った。
「京楽!」
「大丈夫だよ、これしきの傷」
しゅうしゅうと、音を立てて鮮血を噴き上げていた傷がなおっていく、
「俺の存在を、忘れるな」
浮竹が、血の刃を操り、ゼイラムの背中を斬り裂いた。
京楽は、ニタリと笑って、ゼイラムに埋め込まれていた浮竹の細胞を、えぐり取っていた。
「ぎゃああああ、俺の、俺の、力の、源が・・・・・・」
浮竹の細胞は、ゼイラムの右目に集中していた。
ただ、全身にもあるようで、右目をくりぬいたものの、凄まじい速度で再生が始まる。
京楽は残忍に笑った。
「僕の浮竹を傷つけようとする存在は、許さないよ」
右手で、再生されていったゼイラムの右目を再度くりぬいた。
「京楽、行くぞ!」
「うん!」
「「エターナルアイシクルワールド!!」」
それは禁呪の氷の封印魔法。
それをもろに浴びて、ゼイラムは氷ついていく。
「何故、京楽、魔法、使える?」
徐々に氷ついてく体を、ゼイラムはなんとか血の魔法でどうにかしようとするが、浮竹と京楽の魔力は絶大であった。
「俺、死にたく、ない・・・・・」
完全に凍り付いた体に、京楽がトドメをさす。
「アイアンメイデン!」
鋼鉄の処女、拷問器具のアイアンメイデンが現れて、ゼイラムを閉じ込めると、その中にある針で串刺しにした。
血が滲みでていく。
それを、京楽がアイアンメイデンごと、ゼイラムの体ごと業火で焼き払った。
「ヘルインフェルノ!」
アイアンメイデンの鉄が溶けていった。
「終わったね」
「ああ。それにして、京楽、本当に強くなったな。それに残酷になった」
「今までの僕は、君を守りたいと思っても、結局は君に守られていた。君を傷つける存在は、僕が許さない」
「再覚醒すると、ここまで強くなれるものなんだな」
浮竹は、京楽を見た。
「それは、君が強いからだよ。血族として再覚醒した時、君と同じ力を手に入れた。やっと、君を守るための力を手に入れた」
京楽は、浮竹を胸にかき抱いた。
「愛しているよ、浮竹」
「ん、俺もだ、京楽」
------------------------------------------------------------------------
「ああ!」
ベッドの上で、浮竹は喘いでいた。
京楽のものに貫かれて、シーツの上にぽたぽたと欲望を零していた。
「あ!」
京楽のものが、ごりっと音を立てて最奥を抉る。
「ひあああ!!」
浮竹は、ドライのオーガズムでいっていた。
「ああ!」
「愛してるよ、十四郎」
そう耳元で囁かれて、浮竹は自然と唇を自分の舌で舐めていた。
その仕草が、京楽は好きだった。
「ああ、君はやっぱり淫らでエロいね」
「んっ」
浮竹に肩を噛まれて、吸血される。
その凄まじい快感をやり過ごしてから、浮竹も京楽の肩に噛みついて、吸血した。
「んっ・・・いいよ、十四郎。喉が渇いてるんだね?もっと吸っていいよ」
浮竹は、溢れる血を啜って何度も嚥下した。
「お腹いっぱいかな?じゃあ、ご褒美あげないとね?」
ごりっと、奥に侵入した京楽のものが爆ぜた。
「あああ・・・・・・・」
じんわりと広がっていく熱を感じながら、浮竹は自分が京楽のものであると、安堵した。
「春水、春水」
「どうしたの」
「愛している。何が起こっても」
「僕も、愛しているよ。何が起こっても」
「ずっとお前の傍にいたい」
「僕が、君を離さないよ」
二人は、舌が絡みあうキスを繰り返しながら、更に乱れていくのであった。
―-------------------------------------------------------------------------
それは、ずっと封印されていた。
魔王と人間たちが呼ぶ、存在であった。
魔王は、藍染の手で封印を解かれた。
「これが、始祖浮竹だよ」
水鏡で、魔王アレスは藍染に、始祖ヴァンパイアの浮竹の姿を見せられていた。
「強い。我の力と同じかそれ以上に。我の伴侶として、欲しい」
「え、伴侶に?」
「そうだ。我は力の強い者なら、男でも女でも妊娠させれる」
藍染めは、引き気味に魔王アレスを見ていた。
「汝も強い。だが、我の好みではない。この浮竹という始祖ヴァンパイアは美しい。我の妻に欲しい」
「できれば、殺してほしいのだけどね」
魔王アレスは、藍染を睨んだ。
「うわ!」
睨まれたあけで、藍染の手は石化していた。
「我のは絶対。我は欲のままに生きる」
そう言って、魔王アレスは浮竹のいる古城にまでやってきた。
「ヴァンパイアの始祖、浮竹十四郎」
「なんだ。また、藍染の手の者か?」
「ちょっと、浮竹、気をつけて。そいつ、藍染並みに強いよ!」
「我は魔王アレス。藍染に封印を解いてもらった。始祖浮竹よ、汝を我の伴侶とする」
「何を言っている!」
魔王アレスは、浮竹の背後にくると、浮竹の体を抱き寄せて、浮竹を自分の方に向かせると、唇を奪っていた。
がりっ。
浮竹は、魔王アレスの舌を思い切り噛んでいた。
「血迷ったことを。俺は京楽のものだ」
「ますます気に入った。汝を、我が花嫁としよう」
「俺は男だ!」
「我は男でも女でも妊娠させられる」
その言葉を聞いて、浮竹は暴れ出した。
「離せ!離せ、この!!」
「浮竹!」
京楽が血の鎌で切りかかると、魔王アレスは右腕を切り取られただが、すぐに再生してしまった。
「魔国アルカンシェルの離島、ハンニバルに我が城がある。この我が伴侶を助けたければ、そこまでこい」
「浮竹ーーーー!!」
浮竹を腕の中に、魔王アレスは影の中にとぷんと沈んでしまった。
「浮竹・・・・絶対に助け出すから、それまで無事でいてね!!」
京楽は、魔国アルカンシェルに向かうための助力を、星の精霊ドラゴン平子真子に頼むのであった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝
それは、西洋の浮竹が目を離している隙に起こった。
古代の魔道具を、出しっぱなしにしていたのだ。
東洋の浮竹と京楽は、その魔道具をただのランプと思って、部屋が暗かったので灯りをつけた。
「あ、それは!!」
気づいた時には、東洋の浮竹と京楽は、その年齢を一時的に3歳にするという魔道具のせいで、3歳の幼児になっていた。服も縮んでいた。
東洋の浮竹は、西洋の浮竹を見上げて、こう言った。
(お兄たん?)
自分によく似た西洋の浮竹を、兄と勘違いしているらしかった。
「くっ」
西洋の浮竹は、実の弟のようにかわいがっている東洋の浮竹から「お兄たん」と呼ばれて、頭がくらくらしていた。
「浮竹、何かあったの?」
そこに、西洋の京楽がやってきた。
「うわ、その二人の子供・・・・・もしかして」
「ああ。この魔道具を使ってしまったらしい。置いておくんじゃなかった」
東洋の京楽は、ただじーっと西洋の浮竹と京楽を見ていた。
人見知りが激しいらしく、感情を表に出すのが得意ではないようだった。
「浮竹、その魔道具の効果時間はどれくらい?」
「24時間だ」
「じゃあ、1日中彼らの世話をしなくちゃいけないんだね」
「元を正せば、そんな魔道具を置いていた俺のせいだ。二人は責任をもって、俺が見よう」
(お腹すいた。お兄たん、お菓子ちょーらい)
「確か、クッキーがあったはずだな。京楽、持ってきてくれるか」
「クッキーだね。確かキッチンにあったはず。あと、何か甘い飲み物ももってくるよ」
(・・・・・お腹すいたぁ。あーん)
(じゅーしろー。泣くな)
「おい、京楽、クッキーはまだか!」
「今、飲み物作ってるから、少しだけ待って!」
「十四郎に春水、ちょっとだけ、待ってくれ」
(うん)
キラキラした瞳で笑われて、西洋の浮竹はダメージをくらった。
(しゅんすい、どーしたの?)
(ん・・・手、放したくない)
東洋の京楽は、東洋の浮竹の手をぎゅっと握っていた。
「さぁ、クッキーだよ。あと、蜂蜜を入れたミルクももってきたよ」
西洋の京楽は、クッキーの入った籠と、2つのカップを持って戻ってきた。
カップに入った蜂蜜入りのミルクを受け取って、東洋の浮竹は小さい手でそれをこくこくと飲んでいった。
(おいしー。おかわりー)
「おかわりだね!今作ってくるから!」
西洋の京楽は、空になったカップを手に、またキッチンに急いだ。
(しゅんすい、クッキーたべる?)
(ん)
東洋の浮竹が差し出したクッキーを、さくりと齧る。
(おいしい)
(おいしーね?)
東洋の浮竹もクッキーをかじりながら、にこにこしていた。
そして、キラキラした瞳で西洋の浮竹を見上げた。
(おいしーい。お兄たん)
「ぐっ」
西洋の浮竹はまた、ダメージをくらった。
「このまま拉致したい」
それくらい、3歳になった二人はかわいかった。
(あ、おかわりだー)
西洋の京楽が、蜂蜜たっぷりのミルクをもってきてくれた。
(おいしーね)
(ん)
(あまーい)
(ん)
「東洋の京楽は、あまりしゃべらないんだな」
様子を見ていた西洋の浮竹が、東洋の京楽の頭を撫でた。
(やだ)
「かわいいなぁ。やだだって」
「かわいいねー。僕にも触らせて?」
西洋の京楽が、東洋の自分を触ろうとすると、東洋の京楽は影から蛇を出して威嚇してきた。
「お、小さいのにやるな」
(じゅーしろーは、渡さない)
「誰もとりあげたりしないぞ」
(あやしい)
「ぐっ。拉致したいとか思ってるけど、しないぞ」
(あたりまえ。じゅーしろーは、ボクの)
「3歳になっても、仲はいいんだなぁ」
「まるで僕たちの子供みたいだね」
(お兄たん)
「ん、どうした?」
(おしっこ)
「わーーー!京楽、おまるはあるか!?」
「そんなものあるわけないじゃない!」
「十四郎、トイレに行くぞ!」
(や)
東洋の京楽が、東洋の浮竹を抱き上げようとした、西洋の浮竹に反抗した。
「おい、春水。手を離してくれ」
(ボクもいく)
「分かったから、急ぐぞ」
東洋の二人を抱き上げて、西洋の浮竹はトイレに行き、無事用を足した東洋の浮竹が手を洗うのを手伝った。
(お兄たん、大きい。どうやったら、俺もおーきくなれる?)
「ん、いっぱい食べて、いっぱい寝ることかな」
(じゃあ、いっぱい食べていっぱい寝る!)
夕食の時間になり、西洋の京楽はお子様ランチを作った。
(おいしー)
(ん)
二人は、美味しそうにお子様ランチをゆっくり食べた。
それから、西洋の浮竹と京楽と一緒に風呂に入り、髪と体を洗ってもらった。
(お兄たん、くすぐったい)
急きょ買いに出かけた西洋の京楽のお陰で、うさぎさんの形をした3歳児くらい用のパジャマを着せた。
「今日は、俺たちと一緒に寝ような」
(お兄たん、絵本読んで)
「え、絵本か。京楽!」
「こんなこともあろうかと、古城の図書館に行って子供向けの本探してきたから」
「お前、なかなかやるな?」
「ふふん」
(ねむい)
東洋の京楽は、そう言って一足先に眠ってしまった。
「そこで、お姫様は王子様と結ばれて、幸せに過ごしました」
(すーすー)
「あら、東洋の浮竹も寝ちゃったね」
「ああ、今日は一日大変だったな。明日も、元に戻るまで大変だが、がんばるか」
「お菓子、作らないとね」
「俺も手伝おうか?」
「君は、幼い彼らを見ていてあげて?」
「分かった」
そうして、皆は就寝した。
(ピーマンやー。にがいー)
朝食はピラフだった。
ピーマンを嫌がる東洋の浮竹に、西洋の浮竹が困った顔をする。
「好き嫌いしてると、大きくなれないぞ」
「こっちの春水は、なんでも食べるんだけどね」
(じゅーしろーのピーマン、ボクが食べる)
そう言って、東洋の京楽は東洋の浮竹の食べていたピラフのピーマン全部食べてしまった。
「こら、春水」
(ふん)
「むー、お前は3歳児になっても、東洋の俺に甘いな」
(あたりまえ)
「まぁいい。あと8時間もすれば、元に戻るだろうし」
昼食を食べさせて、昼寝をさせて、お菓子のドーナツを与えた後、二人は元に戻った。
(あれ、俺は何をしていたんだ?)
「覚えてないのか」
(どうしたんだ?)
「いや、覚えてないなら、それはそれでいい。それにしても、かわいかったなぁ」
西洋の浮竹は、いい思い出ができたと、心の中で東洋の浮竹に起こった出来事をしまいこんだ。
(なんの話だ?)
(十四郎、覚えてないんだ)
(だから、何をだ?)
(いや、覚えないなら、思い出さなくていいよ。きっと、恥ずかしがるから)
(よくわからん)
「いやぁ、君は覚えてるんだ」
ニマニマした顔の西洋の京楽に、東洋の京楽は。
(貸しひとつだ。いずれ、返すよ)
「返してくれなくてもいいんだよ。君も十分にかわいかったから」
(十四郎には、内密にね)
「分かっているよ」
こうして、東洋の浮竹と京楽が、3歳児になってしまった事件は、終末を迎えるのだった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝
(おーい、いないの?)
古城をのぞいてみると、肝心の二人がいなかった。
「ひいいいいい」
「ぎゃあああああ」
(中庭で悲鳴がする!)
(敵襲かい!?)
急いで二人が見に行ったところには、地獄の雄叫びのような悲鳴をあげているマンドレイクを収穫している、西洋の浮竹と京楽の図があった。
(な、何してるんだ?)
「お、遊びに来てくれたのか。見ての通り、マンドレイクを収穫している」
(これがマンドレイク・・・・)
中庭にズラーっと並んでいる人参の色のような物体は、蠢ていて、収穫されるのを待っていた。
「ひぎゃあああああああ」
「マンドレイクの悲鳴は、普通の人間が聞くと死ぬけど、お前たちなら大丈夫だろう?暇なら、マンドレイクの収穫を手伝ってくれ」
(う、うん)
(十四郎、無理はしなくていいんだよ。ボクが手伝うから)
「そうだよ、東洋の浮竹。こいつら、悲鳴だけはすごいから」
「ぎええええええええええ」
そう叫ぶマンドレイクを、東洋の京楽がほいほいと収穫していく。
(よ、よし俺も!)
そのマンドレイクは、涙を流していた。
収穫されるのを拒んでいた。
「東洋の俺、見た目に騙されちゃいけないぞ。一気に引っこ抜くんだ!」
東洋の浮竹が掴んでいたマンドレイクの葉を、一緒になってひっぱった。
「人でなし~~~」
そう言って、泣いていたマンドレイクは収穫されてしまった。
(こ、こんなにマンドレイク収穫して、どうするんだ?)
「ん、近所に住んでいる猫の魔女の乱菊に安価で売るんだ。マンドレイクは収穫の時の悲鳴を聞くと、普通の人間なら命を落とすから、あまり栽培している農家がなくてな。俺も錬金術や料理で使うから、自家栽培を始めたんだ」
(そ、そうか・・・・)
「そうだ。せっかく生きのいいマンドレイクが手に入ったんだ。みんなでマンドレイクを使った料理を作ろう」
「えー。浮竹が料理作ったら、またゲテモノができるよ」
(俺が、西洋の俺に野菜スープの作り方を教えてやろう。マンドレイクも刻んでいれれば、きっとおいしくなると思う)
「東洋の俺、いつの間に料理の腕があがってないか?」
(ふふふふ。春水のおかげさ)
「こっちの京楽は、教えるの全然だめだぞ」
「だめっていう前に、君が途中で放棄してそのまま煮込むからでしょ!」
(ふう、だめだね、こっちのボクは。叱ってばかりじゃ、誰でもいやになるよ?ようはアメとムチさ)
そう言って、東洋の京楽は、生きのいいマンドレイクを数本選び、キッチンに向かってしまった。
西洋と東洋の浮竹も、それぞれ1本ずつマンドレイクをもって、キッチンに向かった。
「待って~~」
西洋の京楽も、マンドレイクを2本手に、キッチンに入った。
コンロでぐつぐつ煮た鍋の中に、いきなり洗っただけのマンドレイクをぶちこみそうになった西洋の浮竹を、東洋の浮竹が止めた。
「どうした?」
(だめだ。ちゃんと、刻まないと。あと、出汁もとらないと)
「出汁?」
教えるところは、まずそこからだった。
(西洋の春水、出汁をとれるものはあるか?)
「ああうん、そっちの棚の上に、かつおぶしと煮干しが入ってる」
東洋の浮竹は、きょとんとしてる西洋の浮竹の前で、まずは鍋に中に煮干しとかつおぶしを入れて、出汁をとった。
「これが、出汁・・・」
(そう。野菜スープの基本材料になるものだ)
「ふむ。メモする」
自動的にインクが滲むマジックペンで、西洋の浮竹は東洋の浮竹から、作り方を聞いてはメモしていた。
(まずは、この人参、じゃがいも、玉ねぎと、マンドレイクを洗って手ごろな大きなに切り分けよう)
「切るのか。マンドレイクを・・・・・」
(切るよ。切らないと、料理にならないからね)
「そうなのか。今まで、生でぶちこんでも料理になると思っていた」
(さぁ、切ろう)
「ああ」
ズダン!
その包丁さばきに、東洋の浮竹がびっくりした。
(そ、そんなに豪快に刻まないで、もっと小さく切って)
「こ、こうか?」
「浮竹が・・・・あの浮竹が、ちゃんと料理してる!」
西洋の京楽は、涙を流していた。
(そんなに驚くことなの、西洋のボク)
「僕が指導してきても、マンドレイクを刻まなかったあの浮竹が、マンドレイクを刻んでる!」
マンドレイクは、刻まれるたびに悲鳴をあげていたが、細切れにされると何も言わなくなった。
一方、西洋の京楽も西洋の京楽と一緒に、マンドレイクを使ったビーフシチューを作り始めた。
(人参はそれくらいで。うん、いいかんじ。やればできるじゃないか)
「そ、そうか?」
(あとは、刻んだ野菜を鍋に入れて、柔らかくなるまで煮込もう)
「なんだか一緒に料理するのって、照れるな」
(でも、楽しいでしょ?)
「ああ、楽しい。料理をするのが楽しく感じたなんて、生まれてはじめてだ」
(西洋の春水は、こっちの俺に料理を教えるのが下手なんだな)
「ぎくっ」
西洋の京楽は、野菜を煮込みながら強張った。
(ほら、続きするよ。固まってないで)
「あ、ごめん」
東洋の京楽に急かされて、西洋の京楽も動くのだった。
煮込んで柔らかくなった野菜に、キャベツを足してまた煮込む。
最後に塩コショウで味つけして、出来上がった。
「早速、味見してみよう」
(そうだな)
「ん、うまい!いつもよりうまい!さすがだな、東洋の俺!」
(西洋の俺も、やればできるじゃないか)
「ほとんどをお前がしてくれただろう」
(ううん、共同作業だ。やればできるじゃないか)
東洋の自分に褒められて、西洋の浮竹は赤くなった。
「こっちもできたよ~」
(マンドレイクを刻んでいれたビーフシチューだよ)
匂いをかいで、西洋と東洋の浮竹は、お腹を鳴らした。
それに、二人そろって真っ赤になる。
「少し早いけど、夕飯にしよう」
(そうだね。出来立てを食べるのが一番おいしいからね)
西洋と東洋の京楽の言葉に、西洋と東洋の浮竹が頷いた。
ダイニングルームにうつり、それぞれ皿にビーフシチューと野菜スープを盛る。
「いい匂いだな。さすが京楽のコンビだけあるな」
(うん、匂いからしておいしそう。でも、俺たちの野菜スープも負けてないぞ)
まずはビーフシチューを頬張り、西洋と東洋の浮竹は、ふにゃりとなった。
「肉が柔らかくて美味しい」
(このまったりしたルーの味がたまらない)
「そうだ、俺たちの作った野菜スープも、食べてくれ」
(うん。西洋の俺も頑張って作ったんだぞ)
「どれどれ・・・・・」
まず、西洋の京楽が野菜スープを一口飲んで、涙を流していた。
「あの浮竹が、たとえ指導があったとしても、こんなおいしいものを作るなんて!」
「京楽、大げさだろう」
「浮竹、やればできるじゃない」
「東洋の俺のお陰だ」
(うん、ほんとに美味しくできてるね)
東洋の京楽に褒められて、西洋の浮竹は赤くなった。
「お前から褒められると、一番照れるな」
(春水のお墨付きだ。もっと誇ってもいいんだぞ、西洋の俺!)
「ああ。これからは、俺もマンドレイクはちゃんと刻んで料理する。東洋の俺のお陰で、料理するのが楽しく感じれた」
(それはよかった)
(うん、本当に)
「あの浮竹が・・・・」
「しつこい」
まだ涙を流して嬉しがっている、西洋の京楽を、ハリセンで赤くなりながら、西洋の浮竹が殴った。
「お陰で、美味しい夕食が楽しめた。ありがとう」
(こっちこそ。こんな機会があって、嬉しかった。ちゃんとやればできているからその調子でやってくれ。お前はやればできる子だから!)
東洋の浮竹は、西洋の浮竹の肩をがしっと握った。
西洋と東洋の京楽は、お互いに握手しあっていた。
「マンドレイクも、ちゃんと調理すれば食べられるのが分かったよ」
(元々は野菜でしょ、あれも)
「まぁ、分類するなら野菜かな」
その日の晩は、東洋の浮竹と京楽は、古城に泊まって次の日の朝に帰っていった。
「京楽、引っこ抜いたマンドレイクの畑に、苗を植えるぞ。また、美味しいマンドレイクを育てよう」
「うん、そうだね」
西洋の浮竹は、その日からたまに、西洋の京楽の料理の手伝いをするようになるのであった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝
西洋の浮竹と京楽は、東洋の浮竹と京楽の住む雑居ビルを訪れていた。
「花火大会をしよう」
いつの日だったか、遊園地で見た花火が忘れられなくて、西洋の浮竹と京楽は、大量の家庭用花火を手に、押しかけた。
(まだ花火をする季節じゃなんだけどねぇ)
まだ、春になったばかりであった。
「季節なんて関係ない。したいと言ったら、俺はする」
「ごめんねぇ、そっちの僕に浮竹。こっちの浮竹は、一度言い出すと聞かなくて」
(俺は別にいいぞ。いつでも大歓迎だ。花火大会をしよう)
「分かってくれるのか、東洋の俺!」
西洋の浮竹は、東洋の浮竹に抱き着いた。
(わわわ)
それに東洋の浮竹がびっくりして、顔を赤くした。
(東洋の俺、落ち着け)
「ああ、すまない。いろいろあって、最近お前たちのところにこれなかったから。どうしているかと思って、花火大会を口実に、会いにきたんだ」
西洋の浮竹も、自分でかなり恥ずかしい言葉を言っていると自覚しているのか、顔を赤くしていた。
「ああ、かわいいねぇ」
(そうだねぇ)
もじもじする二人を、西洋と東洋の京楽は心から、平穏であると噛みしめながら、幸せそうにしていた。
「まずは、バケツに水を用意しよう」
(うん、じゃあ俺が汲んでくるから)
「重いだろう。俺が水の魔法で水を出すから、バケツは空のままでいいぞ」
(魔法って、ほんとに便利だな)
「まぁ、その分制約とかも多いがな」
雑居ビルの裏に出て、人通りの少ない道を選んで、花火をすることにした。
空のバケツに、西洋の浮竹が魔法を唱える。
「ウォーター」
何もない空間から水がドバドバ出て、バケツから溢れた。
西洋の浮竹はいきなり家庭用花火1つに、まるまる魔法の炎で火をつけた。
(わあああああ!やりすぎだぞ!)
「浮竹、一気に火をつけすぎだよ!」
(わあ、やっちゃったね!)
ぱちぱちと火花が散って、鎮火する頃には、1つの家庭用花火は焦げてしまっていた。
それにしゅんとなる。
「すまない。一つ一つに火をつけるんだな。俺の火の魔法じゃ強すぎてだめだな」
(西洋の俺は、知らなかっただけだろう?今度から気つければいい)
東洋の浮竹に頭を撫でられて、西洋の浮竹ははにかんだ笑みを零した。
(ろうそくに火をつけて使おうよ)
東洋の京楽が、当たり前な・・・・けれど、西洋の二人には考え付かなかったことを口にした。
「なるほど、ろうそくに火をつけて、それで花火をするのか」
(そうだぞ、西洋の俺)
東洋の浮竹は、まずはロケット花火に火をつけて、離れるように指示を出す。
ロケット花火は宙を飛び、ぱぁんと小さな花火を咲かせて、終わったしまった。
「意外とあっけないな」
「こんなものでしょ。家庭用花火なんだし」
(次の花火をしよう。西洋の俺、その花火に火をつけて)
「わあ・・・綺麗だなぁ。花火の色が変わった!今の見たか、京楽!」
「見たよ!すごいね!」
西洋の浮竹と京楽には、炎の色が変わるのが不思議でならなかった。
(次の花火をしようか)
次の花火は、炎が青から白に変わった。
(そっちの浮竹とボクは、家庭用花火をするのは初めてかい?)
「ああ、初めてだ」
「うん、僕も初めてだよ」
(そうか。じゃあ、この線香花火は、一つずつもって、火をつけるんだよ。ぼとって落ちたら、終わりだからね)
そういって、東洋の京楽は、西洋の浮竹と京楽に線香花火を持たせた。
ぱちぱちと弾ける火花は小さく、あっという間にぼとっと地面に落ちてしまった。
その小さな火花が気に入ったのか、西洋の浮竹は線香花火ばかりをしていた。
「ああ、もう終わってしまった・・・・」
「僕の分もあげるから」
「本当か!」
目を輝かせる西洋の浮竹に、ならばと、東洋の浮竹と京楽も、自分の分の線香花火をあげた。
「ありがとう」
そう言って、一つ一つに火をつけて、線香花火をじっくりと味わった。
他にもたくさんの花火をして、その夜の花火大会は終わった。
「今日は、泊まって行ってもいいか?」
(いいけど、狭いぞ?布団なんてないし)
「空間ポケットに寝袋が入っているし、毛布も布団も入ってる」
(わあ、やっぱりいろいろと便利そうだな)
「まぁ、モンスターに襲われないことを考えると、こっちの世界のほうが、暮らしやそうだが・・・そうか、金を手に入れるには働かないとだめなんだな。俺と京楽は、主に冒険者稼業でもうけているから・・・・」
(こちらの世界でも、悪い妖とかいたりして、たまに苦労するぞ)
「どちらの世界も、平穏無事というわけには、いかないのだな」
(そっちの僕、明らかに強くなってる気配がするんだけど、何かあったの?)
「ああ、ちょっと再覚醒したんだよ。僕の世界の浮竹と同じくらいに魔力はあがったし、魔法も自分一人の手で使えるようになったよ」
(今度、手合わせしてみたいね)
「負けないぞ」
(それはボクもだよ)
そんな会話をしながら、皆で両方の世界の京楽が作った夕食を食べて、西洋の浮竹と京楽は、ダイニングルームとかの空いている空間に布団と毛布をしいて、寝てしまった。
ちなみに、東洋の浮竹と京楽は、同じベッドで眠ってしまった。
それは西洋の浮竹と京楽も同じで、二人は同じ布団で毛布をかぶり、寝ていた。
(起きてきたのか?)
「ああ、ちょっと目が覚めてしまって)
(ココアでも飲むか?)
「なんだそれは?」
(ちょっと待ってくれ。今作ってあげるから)
そう言って、東洋の浮竹は自分の分と、西洋の自分の分もココアを作り、渡した。
「甘い・・・・・」
(暖かいから、体があったまるぞ。春とはいえ、まだ夜は冷えるしな)
「なぁ、東洋の俺」
(なんだ?)
「今、幸せか?」
(うん、幸せだぞ。春水もいるし、こうして時折だけど、お前たちとも会えるし)
「それならいいんだ」
(どうかしたのか?)
「俺のせいで、京楽が傷つくのが怖い」
(それは俺もだ。でも、信じることはできるだろう?そっちの春水も強くなったんだろう?)
「そうだな。伴侶を信じるのは、当たり前だな」
(俺の春水は、とにかく優しいんだ。俺を駄目にさせるのかと思うくらいに優しい」
「俺の京楽も優しいぞ。戦闘メイドがいるのに、わざわざ俺の好きなデザートを作ってくれる」
(お互い、伴侶に恵まれたな)
「そうだな」
顔を見合わせあって、クスリと笑んだ。
「ココアごちそうさま。眠くなってきたから、もう少し寝てくる」
(うん、おやすみ)
そうして、二人はまた眠った。
(ちょっと、二人ともいい加減に起きて。もう9時過ぎだよ)
朝起きると、9時を回っていた。
「わあ、寝すぎた」
「わ、ほんとだ」
実は、東洋の浮竹も8時半には起きてきていた。おはようと言いながら、船をこいでいた。西洋も東洋も、どちらの浮竹も朝に弱いようであった。
(グッスリ寝てたから起こさなかった。朝食の用意はできてある。食べていくだろう?)
「そこまで世話になるつもりはなかったんだが、せっかくだからいただこう」
「いつもは僕が朝に起きて浮竹を起こすんだけどね。向こうの世界と、少し時間の流れが違うのかな?」
「さあ、どうだろう。どっちみち、今日はすることはなかったし、ゆっくりしよう」
東洋の浮竹も京楽も、依頼が来ていないので暇をしていた。
(今日はスーパーでお一人様一品の特売日をしているんだ。よかったら、買い物に付き合ってくれ)
西洋の浮竹と京楽も買い物に付き合った。
おばちゃんの波に押されて、ぐったりしていた。
(こっちの世界のスーパーでの買い物は初めてか)
「いや、花火を買った時とかには利用したが、特売日があるとこうまで女性が多く押しかけてくるとは・・・・・」
雑居ビルに帰って、東洋の浮竹はお一人様一品の品物が4つも買えて、喜んでいた。
(また、遊びに来た時には、スーパーでの買い物に付き合ってくれたら、嬉しい)
「またあのおばちゃんの波にもまれるのか」
「まぁ、いいじゃない、浮竹。世話になってるんだし」
「そうだな」
(じゃあ、昼は・・・)
「ああ、俺たちはもう戻る」
(ああ、じゃあこれ持って帰れ。昼用に作ったお好み焼きだ)
「お好み焼き・・・?」
「こっちの世界特有のメニューっぽいね。レシピはある?」
(これだよ)
いつものように、西洋の京楽に東洋の京楽は、レシピを渡していた。
「じゃあ、僕たちは帰るね。また今度、会おう」
「またな!」
(またねぇ)
(次来たときは、おかしのレシピを用意しといてあげるよ)
そうやって、西洋の浮竹と京楽は、自分たちの世界へと帰っていった。
東洋の浮竹と京楽は、今度は
