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甘味屋

ここ百年で、尸魂界も大きく変わった。現世で文明開化がおこり、それに合わせて洋風のものが多くなってきた。
技術開発局のパソコンありき、伝令神機ありき、その他もろもろ。

「人間ってすごいな」

「何を突然いってるんだい」

「いやぁ、このこたつを編み出した人はすごいと思って」

こたつが尸魂界でもでできたのはここ数年のことだ。それまでは寒さをごまかすとしたら火鉢しかなかった。雨乾堂でも火鉢は置いてある。
でも、こたつのほうが楽だし暖かい。

「おはぎを考えたのも人間だし、梅干し茶漬けを考え出したのも人間だし・・・・・」

「言い出したら、きりがないよ」

「とにかく人間は素晴らしい。と思う。多分」

「まぁ、学院ができた頃なんて現世の日本じゃ弥生時代とかすごいことになってたからね。文明開化の起こった以後の日本は凄いと思うよ。特にここ数十年は、ほんとにすごい。現世じゃエアコンなるものがあって、夏の暑い時は冷房を、冬の寒い時には暖房を・・・・・それが当たり前の時代になってるからねぇ」

「尸魂界は少し閉鎖的だからな。鎖国してい江戸時代に少し似ている気がする」

「まぁ、古きよき時代をいつまでもってわけにもいかないからね。このこたつみたいに、現世から入ってきたものも多い。伝令神機だって、携帯っていう現世のものを真似ているからね」

京楽は、自分のもっている伝令神機にメールを送る。

それは浮竹の元に届いた。

(今日の夜、抱いてもいいかな)

(却下)

すぐにそう返されて、京楽はがっくりと肩を落とした。

(甘味屋につれてってくれるなら、考えないこともない)

(今すぐ甘味屋へいこう)

京楽は、浮竹の腕をとって草履をはいて歩きだす。

「待て、京楽」

あまりにも急なものだったから、こたつの上に自分の伝令神機をおきっぱなしにしていた。

「とってくる」

肌身離さず、なるべく持っているようにと言われているので、京楽も浮竹を待った。

「またせたな」

外は寒いので少し厚めの上着を着た。

「今すぐ甘味屋へ行こう今すぐ今すぐ」

「どんだけ行きたいんだお前。そんなに俺を抱きたいのか」

「そりゃもちろん。許されるなら今すぐ押し倒して・・・・・・」

その続きを、浮竹は京楽の手で塞いで言わせなかった。

「ここだと、清音と仙太郎に聞こえる」

ちょっと頬を朱くしたところとか、かわいいと思ってその頬にキスをする。

「壬生の甘味屋まで行こう」

少し遠くになるが、味がよく、流行っているお店だった。

二人そろって、歩きだす。

いつの間にか、手を繋いでいた。

「隊長、こんにちわ」

「浮竹隊長、デートですか」

「浮竹隊長、京楽隊長と相変わらず仲いいですね」

すれ違う死神たちは、浮竹と京楽の仲を知っているので、手を繋いでいても誰も不思議に感じない。違和感のない今のほうが不自然であると、二人は気づいていない。

手を繋いで歩く仲。これが二人にとっての自然体なのだ。

寒いなと思ったら、少し早いが雪が降ってきた。

「もう冬か」

「今年は暖冬になるとかいってたけど、いまいち当たらないね。夏も冷夏だっていってたのに酷暑だったし」

「今年の夏は一段と暑かったなぁ。あまりにも暑いので水かぶってたら熱出したし」

「君、僕のいない時にそんなことしてたの!真夏でも、君は水なんかかぶっちゃだめだよ。きっと、濡れた髪のままで、そのまま寝て風邪ひくんでしょ」

「お、正解。よく分かったな」

「君の行動って、たまに規格外のこと起こすから」

「この前、元柳斎先生に給料あげてくれっていったら、飴玉もらった」

「あああ、何してるのこの子!」

はやくなんとかしなければ。でも何を?

「飴玉でごまかされたから、次の日給料あげてくれっていいに行ったら、おはぎをもらった」

「だめだ、もう手遅れだ・・・・・・」

京楽の心配事は尽きない・。

「甘味ものでつられないぞっていって、給料あげてくれっていったら、お茶をだされた。作法忘れがちだったから、思い出すのに苦労した」

浮竹が給料あげてくれと言って、甘味もので誤魔化されいるシーンを想像すると、なんか萌えてきた。

「何このかわいい生き物・・・・・・・」

「ついたぞ。座る場所あるかな」

壬生と書かれた看板と旗があった。

中に入ると人気があるだけあって、混雑していた。幸いにも並ぶほどではなかったので、店の中に入って二人であることを告げると、奥のテーブルに案内された。

「白玉餡蜜3人前」

「いきなりそんなに食べるの?」

「おなか減ってるから」

「昼餉、ちゃんと食べた?」

「食べた。甘味屋にくるとお腹がすくんだ」

どういう体の構造してるんだろうとは思ったが、口には出さない。

「お姉さん、白玉餡蜜3人前と、抹茶アイス1つ」

給仕係を呼んで、注文する。

白玉餡蜜を3人前ぺろりと平らげて、浮竹はさらに注文していく。

京楽も白玉餡蜜を注文してみたが、一人分で十分だった。

「満足した」

3人前くらいは平らげて、浮竹は言った。

「まぁ、こんなに食べればね・・・・・」

テーブルの上には、下げられた分を除いても、けっこうな空の皿があった。

「これで、夕餉も食べるんでしょ?」

「当たり前だ」

「よく食べれるね。僕なら胃もたれおこしそう」

「甘味ものは別腹だ」

ここまで完全に別腹にできるのも珍しいと思うが、口には出さない。浮竹の勘定の分も、京楽が払って甘味屋を出た。

「今日は抱いていいの?」

「1回だけなら」

京楽は、店の外でガッツポーズをとった。

ちらちらと、視線が痛い。

「ほら、帰るぞ」

「はいはい」

また手を繋いで歩きだす。

雪が本格的に降り始める前に帰るために、少し歩行の速度をあげた。その気になれば瞬歩があるが、普通に歩けるときは歩くべきだ。

「雪、つもるかな?」

「んーこの調子なら、積もる前に解けちゃいそうだね」

「残念」

吐く息が白い。繋ぎあった手は、でも暖かい。

雨乾堂まで手を繋いで帰ると、清音と仙太郎がいた。

「どうしたんだ?」

「隊長にお茶を持って行こうと思ったら・・・・・」

猫が一匹、こたつにもぐりかけていた。

「はっくしょん。だめだ、僕猫アレルギーなんだ。なんとかしてよ」

「こんなにかわいいのに」

浮竹が、雨乾堂でこたつの近くで猫をゲットして、仙太郎に渡した。

「この子、5席の子のとこの猫だ。渡しておいてあげてくれ」

「了解であります隊長!」

「ええ、隊長私は!?」

「清音は・・・・・そうだな、玉露のお茶を二人前入れてくれ。お前の出すお茶が一番うまい」

どうだみたかと、清音は仙太郎を見る。仙太郎は、燃えるように嫉妬しながらも、猫を抱いて隊舎に戻っていく。

ちらつく雪が、窓から入ってくるので、窓をしめた。

こたつの中に入って、だらだらしだす。

「隊長、お茶です」

「ああ、ありがとう・・・・・・」

暖かいお茶を飲んでいると、眠気が襲ってきた。

「少し寝るかい?僕が起きておくから、1時間くらいしたら起こしてあげるから」

「そうしてくれ・・・・」

布団をしいて、横になる。意識はすぐに落ちていった。

「浮竹、浮竹」

「んー?」

「もう一時間以上たってるよ。何度起こしてもおきないんだから・・・・・・」

「あー、もうこんな時間か。湯あみして、夕餉にするか」

今日も、平和な何もない一日が過ぎていく。

でも、それもまた幸せの形なのだ。



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