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青春白書1

「恋次。起きているか?」

同じ家の同居人である阿散井恋次に、ルキアは声をかける。

恋次はというと、椅子に座って机にノートと科学の教科書を開いたまま、その上から手を置いて寝ていた。

「恋次、恋次」

声をかけるが、起きる気配はない。

「全く、仕方ない・・・」

ルキアは自分が着ていたストールを、恋次の肩にかけた。

今日の宿題に出された科学の教科書を開くと、ルキアは15分ほどで問題を解いてしまったi。

ルキアは頭がよく、将来が有望視されている。

難関の大学に進むだろうと、進路指導の先生も楽しみにしているようだ。実際に、進路志望で提出した大学の名前は国内でもTOPの大学だ。

だが、ルキアにとってそれはあくまでも、周囲を納得させるための「答え」だった。

実際に行く大学とは違う。そのうち、進路指導の先生と相談することになるだろう。周囲は納得しないかもしれないが、どこの大学にいくのもルキアの自由だ。

恋次と同じ大学に行こうと思っている。

まぁ、まだ先の話だ。

ルキアと恋次は、高校の寮には入らなかった。

ルキアには実の両親はいない。恋次もいない。
恋次は高校に入って一人暮らしをはじめるはずだった。遅かれ早かれ、大学に進めば一人暮らしをして独立することが決まっていた。

ルキアは、居候だ。同じく、遠い親戚の日番谷冬獅郎という中学1年生と一緒に住んでいた。

ルキアは両親がいなかったが、施設暮らしをしていたわけでもない。高校から、義兄である朽木白哉に、育てられた。白哉は、今ルキアが通っている高校の教師でもあった。

白哉の両親は、白哉の亡き妻の妹であるルキアを、どこの馬の骨とも知らぬと疎んだ。実際、虐待されていた。ネグレクトが基本だったが、身体的虐待もあった。白哉がいつも庇ってくれた。

義理の父親は、ルキアを異常な目で見ていた。主に虐待するの義理の母親で、父親はそれを放置していた。父親が、異性としてルキアのことを見ていると 白哉から告げられた時、寒気を感じた。強姦されそうになった中学2年の春、とうとうルキアは家を飛び出した。

幼い頃はただ愛されたいと必死になっていた。虐待されるのも、全部自分が悪いのだと思っていた。中学に入った頃から、父親の異常な視線に気づきはじめた。

その頃から、ルキアはしょっちゅう家出を繰り返すようになっていた。不良グループの仲間に入り、学校にもいかなくなった。容姿のよいルキアを彼女にしたがる男は多かった。


ルキアは、やがて一人暮らしをはじめた白哉に、に引き取られた。ルキアは冬獅郎と親友の恋次と義兄の白哉以外、誰も信用できなくなっていた。

「今日から、私と一緒に住もう。ルキアは、緋真の妹だ。私が養育する義務がある」

優しくさし伸ばされた白夜の手を、今でも忘れたことはない。
とても優しい微笑み。頭を撫でられ、抱きしめられた。

ルキアを前にした白哉は、くるくると表情を変えるルキアに、亡き妻の緋真を重ねていた。また虐待されていたということを知っていたせいで、まるで腫れ物にでも触るように扱ってきたこともあったが、基本は優しかった。

でも、やはり血の繋がりがないのは大きかった。一人で生きていく力が欲しいと思った。親戚の中で引き取りたいと声を出す者は誰もいなかった。

朽木ルキアではなく、ただのルキアを愛してくれる者なんていない。そう思っていた。
恋次に出会うまでは。

恋次とは、本当に親友をこえた仲であった。恋次は優しかった。いつでも、包み込んでくるように。

抱きしめられた時も、最初はその頬を叩いた。それでも、恋次は怯まなかった。

不良グループの仲間にいたせいで、暴力を振るうことに対してなんの抵抗感もなくなっていた。

不良グループのリーダーは女性だった。ルキアを気に入り、またルキアの可憐な容姿のせいで異性から無理やりを強制されるだろうと恐れ、庇護下に置いた。

そして、リーダーだった彼女は、財閥の令嬢でもあった。ルキアは、彼女から自分の身を守る方法というものを教わった。

ルキアは水のように吸収していく。護身術を身につけたルキアは、もう義理の母親から身体的に虐待されることはなくなった。

義理の父親から強姦されそうになったときも、彼女から教わった護身術で身を守れた。

でも、同時にもうこの家にはいられないと思った。だから家を飛び出して、不良グループの仲間の家を点々として、中学校にも完全に通わなくなった。

無論、世間体というものを気にする義理の両親は、無理やり連れ帰ろうとするが、その度に同じ不良グループの者が匿ってくれた。

だが、このままでいいはずもなし。

まだ中学生という少女が、不良グループの男性の家に寝泊りするのを許す者などいない。

不良グループの皆は、ルキアを実の家族のように扱ってくれた。

交際を申し込まれた時もあったが、断ってもまるで実の妹に接するようにしてきてくれて、ルキアにとっての家族は大きく歪んだ形となっていた。

警察に保護されたとき、ああもう終わりなんだなと思った。

そして恋次と出会う。
何度頬をぶっても、恋次は優しく抱きしめてくれた。

そして、ルキアは本当に、心の底から泣いた。子供のように震えて泣き叫んだ。

恋次はずっと抱きしめていてくれた。
ルキアが、恋次と一緒に住むことを決めたのは、その澄んだ瞳を見た時だった。

中学を卒業した頃から、白哉の元で生活をしていたが、ルキアは恋次を受け入れた。

不良グループの仲間も決して悪くはなかったが、やっぱり他者に対して暴力をふるうという行為は、ルキアにとっては相容れないものだった。

虐待を受けてきながらも、ルキアは決して他者に暴力を無意味に振るうことはなかった。あくまで自分を守るためだけの力だった。


「お前は、こんな私を愛してくれるのか?私の朽木家という名はただの飾りだ。大財閥の朽木ルキア
はここにはいない。それでも、私を見てくれるか?」

泣きながら尋ねるルキアを抱きしめながら、恋次は言った。

「もう大丈夫だ。だから、少しづつ変わっていこうぜ一緒に。俺と一緒に暮らしながら。愛しているとも」

愛されたかった。

ルキアの虚勢は、ただ愛されたかったゆえに成り立っていた。

それが崩れていく。中学2年の冬。ルキアは、ただの少女に戻った。

不良グループから抜けた。手紙でのやり取りもあるし、携帯電話で話たり、会って笑いあって帰ることだってある。完全に、抜けたというわけではない。

だって、それまでルキアをずっと守ってくれたのは彼ら。

友人だと思っている。今までのように、誰かの家に寝泊りしたり夜を遊び歩いたりすることはなくなった。

そうする必要がなくなった。不良グループの皆は、ルキアが事情を説明すると、自分のことのように泣いてルキアを抱きしめ、いつでも会えるからと、泣きあった後に最後は笑顔で別れを告げた。

恋次とルキアは、高校2年になってから一緒に生活をしだした。

楽しかった。

愛されていると分かった。恋次のことを、ルキアは呼び捨てにしていた。それだけ仲が良かった。

やがて受験も終わり、進学する高校が決まった。更生したルキアに、もっと上の高校を進める先生は多かったが、あえて恋次と同じ高校に進学する。

そして、高校になって恋次が一人暮らしするといいはじめた。
ルキアは、高校2年になった時、恋次に一緒に暮らしてもいいかと聞いた。恋次は良いと答えた。

借りたマンションに、まさかルキアだけでなく、その遠い親戚の冬獅郎まで一緒についてくるとは、流石の恋次も思っていなかっただろう。

「ルキアのこと一人にできねーからな」

ルキアも、冬獅郎と離れることは考えていなかった。

冬獅郎は自分が住んでいた家を家出してしまって、もはや恋次も止めることはしなかった。

生活費もマンションを借りるお金も全額白哉が出してくれた。こんな好条件に乗らない手はないだろう。

義理の親の仕送りがなく生活ができる。

バイトだけでは、生活は成り立たない。

こうして、恋次のマンションにはルキアと冬獅郎が同居することになった。

「恋次の奴、寝ちまったか?」

冬獅郎が部屋に入ってきた。二人がかりで、寝てしまった恋次を抱きかかえてベッドにおくと、毛布と布団を被せた。

「俺も、もう寝る。ルキアは?」

「ああ、もう少ししたら寝る」

「そうか。俺は明日創立年日で休みだから、朝食は作っておくけど、多分寝てる」

「分かった。おやすみ」

「おやすみ、ルキア」

おやすみのキスを頬に受けて、ルキアも同じように頬にキスで返す。

理想の家族を手に入れた。

辛いものなど、どこにもないはずだった。
そう、どこにも。

自分が、恋次に恋していると気づくまでは。

恋次には、かわいらしい彼女がいた。家に何度も遊びにきていた。ルキアは恋次の彼女と決して仲良くなろうとはしなかった。

どんなに想っても、この恋は報われない。

報われることは一生ないだろう。恋次を家族の愛ではなく、異性として愛していると告白することもないだろう。

恋次がが幸せであればそれでいい。ルキアはそう思う。

ルキアは、電気を消した。

「おやすみ、恋次」

そして、自分の寝室に向かう。ベッドの中に入っても、先ほどの恋次の穏かな顔がちらついて中々眠りにつけなかった。

「バカだな私は。恋をしても無駄なのに」

今になって、やっと分かる。

異性から、付き合って欲しいといわれたときの、相手の気持ちが。

好きでもないのに、付き合って欲しいと言われることもあっただろう。それはルキアが朽木の名をもつことと、美少女だからだ。

見栄のため、というものあったかもしれない。でも、憧れはあっただろう。本気で自分に恋していた相手もきっとあったはず。

きっと、こんな苦しい気持ちをしていたのだろう

不良グループの仲間以外は、笑って「貴様はばかか?私と付き合おうなど、何様のつもりだ?」ってそう冷たく何度もあしらった。その時のショックを受けた相手の顔を見ても、その時は何も思わなかった。

誰かを好きになってから、今になって、酷いことをしたなと思うが、もはや過去のできごとだ。

「好きだ、恋次・・・」

言えない相手に向かって、言葉を投げる。

やがて、ルキアは眠りについた。


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