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奴隷の歌姫と義賊の王太子

朽木ルキアは、奴隷の歌姫だった。

でっぷりと肥えた主である商人のために今日も歌い、そして犯された。

ルキアには、奴隷の証であり主のお気に入りの証である純金の首輪をはめられており、鎖も純金だった。

主の商人は、ルキアを寵愛していたが、ある日国王に税を納めていないのが発覚して、処刑されてしまった。

ルキアは、商人の財の一部として、国王のものになった。

リリア王国の国王は黒崎一心といって、民に信頼されていてよい国王だった。

しかし、ルキアは奴隷の身分のせいで国王に謁見も叶わず、奴隷として売られていった。

売られた先は、黒崎一心に仕える貴族の男だった。

ルキアは純金の首輪と鎖をつけたまま、その貴族の男のものになった。寵愛された。そういえば聞こえはいいが、前の主と同じで、無理やり歌わされて犯された。

「もう、死にたい‥‥」

ルキアは涙を流し、川に身投げをしようとしていた。

「この鎖、純金ですぜ頭!」

「あの貴族の男のとこの奴隷ですね、頭」

「あいつの奴隷か。つまりは財産の一部ってことだな」

そう言って、オレンジの髪の少年がルキアを抱きあげた。

「え、あ?」

頭と呼ばれた少年は、リリア王国でも義賊と名高い疾風の風の盗賊団の首領であった。

散々財産を貯めこんだ、ルキアの主を殺すことはせずに、その財を生きる分は残してあとは根こそぎもっていった。

そして、貧しい民に財を分け与えた。

「お前、名前は?」

「朽木ルキア。歌いましょうか?それとも、私の体を抱きますか?」

「お前はもう自由だ。どこへなりとも、行くがいい」

「私は生まれた時から奴隷です」

「口調も、普通でいい。行き場所がないなら、俺の元に来い」

ルキアは、その少年の名を聞いた。

「名は?」

「黒崎一護」

「黒崎‥‥‥まさか、この国の王子?」

ルキアは、身震いした。

王子相手に、無礼な真似をしなかったかだろうと。

一護は、ルキアを抱き寄せた。それから、口づける。その後、純金の首輪と鎖にキスすると、ルキアを戒めていた首輪と鎖がとれた。

「これしか、解呪の方法が分からなかった。いきなりキスしてごめんな」

「私の主は、貴様だ」

「だから、お前はもう奴隷じゃない」

「しかし、私には行き場所がない。貴様の元にいていいのか?」

「いいぜ。ルキアだったな。俺のものになる気はあるか?」

「私は、生まれた時から奴隷だった。ある程度成長したら、客をとらされたり、主から犯された。何度も何度も。それでも、私を貴様のものにすると?」

一護は、ぎゅっとルキアの細すぎる肢体を抱きしめた。

「辛い思いを、ずっとしてきたんだな」

じんわりと広がっていく優しい温もりに。忘れていたはずの涙が溢れてきた。

「あああああ!!!!」

ルキアは、一護にしがみ付いて大声で泣いた。

泣くのは、本当に久しぶりだった。



ルキアに、一護は付き人を二人つけた。珍しい黒猫と白猫の亜人で、名を京楽春水と浮竹十四郎といった。

「大丈夫かい、ルキアちゃん」

京楽は隻眼で、右目に眼帯をしていた。

「大丈夫か?」

浮竹は見目麗しく、京楽と一緒に奴隷として売られて、流れに流れて一護の元にきて、従者をしているのだという。

「大丈夫です、京楽殿、浮竹殿。わざわざすみません」

京楽と浮竹は、来たばかりのルキアの世話をしてくれた。


「落ち着いたか?」

檸檬水をもらい、ルキアは一護にこくりと頷いた。

「じゃあ、今日から仕事してもらう」

「客をとればいいのか?」

「バカ、そんなことさせねぇよ。歌姫なんだろ?俺たちの酒場で歌を歌ってもらうだけだ」

「一護の酒場?」

「ああ、そうだ」

一護は、浮竹と京楽に頼んで、ルキアを風呂に入れて、真っ白な肌を際立たせるようなワインレッドのドレスを着せた。

着せるのは、浮竹がしてくれた。風呂にいれるのも信頼の厚い浮竹と京楽に任されて、隅々まで磨かれ、長すぎる黒髪はシャンプーで洗い、リンスとトリートメントでケアした後、肩の高さあたりで整えられた。

「お、綺麗になったな。見違えた」

「こ、こんな高価なドレスと宝石‥‥」

「もう、それらはお前のものだ。いらなくなったら、好きに処分するといい」

「しかし」

浮竹が苦笑する。

「受け取っておけ」

「受け取りなよ。一護君の言葉を聞くべきだよ」

京楽がそう言うが、ルキアは逡巡していた。

「ああもう、仕方ねぇなぁ」

一護は、ルキアを抱き寄せてキスをした。

「んっ」

「お前は、俺のものだ。俺が与えるものはお前のものだ。俺の命令を聞いて、生きろ」

「分かった」

ルキアは頷いた。

「じゃあ、歌声を披露してくれ」

酒場には、盗賊の主だった者たちが集まっていた。娼婦を買って、侍らしている男たちもいた。

「らららら~~~」

ルキアが歌い出すと、ざわついていた酒場が静かになった。

中には、涙を流している男たちもいた。

ふわりと、空から光が降ってくる。

「歌声を介した魔法か‥‥」

ルキアは歌った。たくさん歌った。歌い終わると、多くの拍手が送られた。

ルキアは、目をぱちくりしていた。

「ルキア、お前には魔法の素質がある。魔法士になれる。魔法を習ってみないか。俺たち疾風の風には魔法士がいない。特にルキア、お前の魔法の属性は光だ。光の魔法は他者を癒すことができる」

「一護がそう言うなら、魔法士になる」

ルキアは、酒場で歌う以外の起きてる時間を、ほぼ魔法の使い方や修行に費やした。

2カ月が経つ頃には、光魔法で他人を癒せるようにまでなっていた。

ある日、一護と昼食をとっているとき、ルキアが急に苦しみだした。

「ルキアちゃん?」

京楽が、ルキアを抱き上げる。

浮竹が、ルキアの飲んでいたワインを口に含み、吐き出した。

「毒だ!」

わっと、場が騒がしくなった。

黒崎家の、リリア王国の王族の血を引いているのは一護だけではばないが、王位継承権第一位の一護の命を狙う者は多い。

一護は、京楽からルキアの体を預かると、その場に広げられた布の上に寝かせた。

「ルキア、吐き出せるか?おい、町から医者を呼んでこい」

「だい、じょう、ぶ。自分で、解毒できる‥‥‥」

ルキアは、得意の光魔法で自分の中の毒を中和してしまった。

「一護も、同じ毒をとっている。魔法で、癒す‥‥」

「いいんだよ、俺は。毒に対して耐性もってるからな。今すぐ、毒を入れた犯人を見つけ出せ」

一護の命令で、盗賊たちはまず料理人に聞いて、毒をいれたとされる男を捕まえた。

一護と共に、この国を変えようと一緒に盗賊団を築き上げた、貴族の青年だった。

「お前の仕業か」

「そうだ。殺すか?お前を殺せば、一心は俺を王位につけてくれると約束した」

「は、ばかじゃねぇの。親父には、二人の娘が‥‥‥俺にとっては妹がいる。そいつらのどっちかが、王家を継ぐに決まってるじゃねぇか。そもそも、お前みたいな男と親父は会ったりしないし、暗殺しようなんて絶対にしない」

「な、俺は騙されたのか?」

「そうみたいだな。でも、自業自得だ。お前のせいでルキアが死にかけた。恨むなら、自分を恨むんだな」

一護は、剣で男の首を切り落とした。

「この男の友人たちを集めろ!」

「ひいい、王子、どうかお助けを」

「王子、俺は悪くありません」

命乞いをする男たちを、一護は殺さずに奴隷に落として売ることにした。

「ほら立って。さっさと歩いて」

「さっさといけ。奴隷市に間に合わなくなる」

京楽と浮竹は、捕まえた男たちをまとめて奴隷市に引っ張っていく。

「一護、私が裏切れば、私もあの男たちのように?」

「お前は、俺を裏切らないだろ?おい、太もも血が流れてる!どうしたんだ!」

「あ、分からない」

一護の従者の女性が、状態を見て医者を呼んでくれた。

「流産だそうだ。身籠っていたらしい」

「むしろ、流れてくれてすっきりした。あの、前の主の子など、産みたくない」

そう言いながらも、ルキアは涙を流していた。

他の男の手で汚されいる証を見せつけてしまったようなものだった。

それから2日が経つが、ルキアは与えられた自室に引きこもっていた。

戻ってきていた京楽と浮竹に、一護は事情を伝えてルキアを慰めてくれるように言った。

「一護君、ルキアちゃんをちょっと外に出しても大丈夫かい?」

「ああ、別に構わないが」

「部屋の中にこもってばっかりだから、気分が滅入るんだよね。ほら、浮竹も一緒に行くから、ボクたちと一緒に外の市場にでも出かけよう。食べ歩きとかもいいかもね」

「京楽、あんまり無理をさせるなよ。子を流してまだ日が浅いんだから」

「分かってるよ」

「京楽殿は、浮竹殿と仲がいいんですね」

「ああ、俺たちは幼馴染だし、一緒に捕まって奴隷にされて売られる時もいつも一緒だったからな」

「浮竹は見目がいいから、男娼にされかけたこともあって、ボクが主の足をかみちぎって止めたんだよね。そのせいで、この右目を失ったけど、安いものさ」

笑い合う二人の関係は不思議だった。親友以上、恋人未満のようであった。

「ほら、ここの串焼きおいしいんだよ。買ってみる?」

ルキアは、自分の意思で買い物をしたことがない。

奴隷だったので、全部与えられてきた。

一護からもらった財布から銅貨を6枚だして、店の主人に渡して、3本串焼きを買った。

「京楽殿と浮竹殿の分を」

「お、気を利かせちゃったみたいでごめんね」

「朽木、俺たちのことは気にする必要はないぞ」

ルキアは、生まれて初めて自由の身分で見る市場を楽しんだ。

少し高かったが、一護の髪と同じオレンジ色をした宝石をあしらったブレスレットを2つ買う。

「これ、一護に贈ったら受け取ってくれるだろうか」

「受け取るよ。一護君、ルキアちゃんのこと気に入ってるみたいだから」

「朽木、当たって砕けろだ」

「ちょっと浮竹、砕けちゃだめでしょ」

「それもそうか」

ルキアは、笑い声を自然とあげていた。

酒場に戻ると、一護の元に向かい、お揃いのブレスレットだと買ってきた片方を渡すと、一護は頬を少し赤くしながらそれを受け取ってつけてくれた。

それから半年が過ぎた。

一護は、ルキアを未来の妻にすると言ってきかなかった。

「ルキア、好きだ。愛している」

「でも、一護、私は処女ではない。どこぞの貴族の子を身籠ったこともある元奴隷だ」

「関係ない。愛してる」

一護は、ルキアを抱きしめる。

ルキアは、おずおずと一護の背に手を回した。

そのまま、口づけをした。




「らららら~~~~~~」

その日も、ルキアは歌声を披露していた。

すると、王国の騎士団がやってきた。

「疾風の風の面子だな!盗賊として皆捕らえる!反抗する者は、切り捨てる!」

ルキアに、好色そうな騎士の手が伸びてくる。

それを、一護が阻んだ。

「こいつは俺のものだ。俺は黒崎一護。この国の王の黒崎一心の実の息子にして、王太子だ」

「な、一護様!?何故、盗賊団などに?」

「それはこの国が腐っているからだ。貴族王族だけが財を蓄え、平民の中には貧しい者も多い。挙句の果てにはスラム街の住民は税を払っていないと、疫病がはやっても助けの手ひとつよこさない」

一護は、王族の、王太子の顔をしていた。

「そこをどけ。親父に直談判する。仲間に手を出すのは許さねぇ」

一護は、ルキアと京楽と浮竹を伴って、王宮に出向いた。

「おい、くそ親父!」

「なんだ、バカ息子!」

「あんたの統治の仕方じゃあ、貧富の差がですぎる。王の座をよこせとは言わねぇ。ただ、祭事(まつりごと)には俺も口出しする」

「小童が」

「なんとでも言いやがれ。あと、妃を連れてきた。歌姫のルキアだ」

一心は、目を見開く。

どんなに妻を娶れといっても一向に興味を見せず、女はだめなのかと思っていたが、そうでもなかったらしい。

「い、一護!私は、汚れている。貴様の妃になどなれるはずがない」

「黙ってろ。それを決めるのは俺だ」

「ルキアちゃん、王太子の妃だよ。未来の国母さ」

「京楽、茶化すな」

「わ、私が国母?」

ルキアはめまいを感じて、倒れてしまった。

「おい、ルキア!」

「ルキアちゃん!?」

「朽木!?」

みんなの声が、段々遠くなっていく。

次にルキアが目覚めた時、そこは王宮の後宮であった。

「私は?」

「ああ、ルキアちゃん気づいたのかい」

「京楽殿?浮竹殿も‥‥‥ここは後宮なのでは?男性の出入りができるのですか?」

「ああ、俺たちは奴隷にされた時に、幼い頃にいらぬと去勢をされている」

「ボクは浮竹より去勢されるのが遅かったから、男らしい体つきになれたけど、浮竹は早くに去勢されたから、見た通り男にしておくにはもったいない美人さんでしょ」

「京楽、だから茶化すな」

「はいはい」

そこへ、一護がやってきた。

「疾風の風は解体した。主だった者は、俺の傘下に入った。ルキアが眠っている間に王位継承の儀を終わらせた。ルキア、お前は今は黒崎ルキア。俺の正妃だ。後宮はあるが、寵姫はおかない。妾も作らない。俺の伴侶は、ルキア、お前だけだ」

ルキアの目に、涙が浮かぶ。

「一護‥‥‥好き、だ」

「ああ、俺も好きだ。愛している」

それは、一人の奴隷の歌姫と、義賊を率いていた王太子の物語。

二人は、子を3人なして、国を民主主義に変えて、国の象徴として王族を残した。

やがて、リリア共和国と呼ばれ、その国にはもう王族も貴族もいないのだった。

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