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嫌な教師

「次の授業はさぼるか」

珍しく、真面目な浮竹が京楽を誘って授業をさぼるといいだした。
それに違和感を感じて京楽は浮竹に詰め寄った。

「何か理由でもあるのかい?」

「その・・・・先生が、いやな目で俺を見てくるんだ。放課後とかになると呼び出されて、体を触ってくる・・・・・」

「セクハラじゃないか!」

京楽は、浮竹を心配そうに見た。

「僕が、言おうか?」

「いや・・・ただの、気のせいかもしれないし」

浮竹の無防備さに、京楽はやりきれない思いを浮かべた。

「君は無防備すぎるんだよ。この前も上級生に襲われそうになっていたね」

「あれは、自分でなんとかした」

もう少し浮竹の対応が遅れていたら、京楽が上級生をのしていただろう。

「相手は先生だから・・・・暴力で解決するのも問題があるし」

「僕がいくよ」

「しかし・・・・・・・」

「君に手を出す奴は、僕が許さない」

京楽と浮竹が付き合っていた。去年の2回生の秋に、想いを告げ合った。

それから京楽の存在もあり、今までのように男性から告白されることは少なくなったが、そんな目で見てくる奴が多くなった。

放課後になり、その先生に浮竹は呼び出されていた。

「どうして僕の授業をさぼったのかな?」

顎に手がかけられる。

浮竹は我慢した。

臀部を触られた。

それも我慢した。

抱き寄せられて、キスされそうになって、浮竹は距離をとった。

「いけない子だ。お仕置きが必要だね」

伸びてくる手に、やってきた京楽が、その手をはたいた。

「なっ・・・・・なんだね君は」

「それはこっちの台詞だよ。僕の浮竹に何しようとしているの」

「別に私は何も・・・・・」

「全部見てたよ。山じいに訴えるから。首だね」

「生徒の分際で、先生に逆らうつもりか!」

殴りかかってくる教師を、京楽は殴り返していた。

「ちょ、京楽落ちつけ!」

「やっちゃった・・・・停学1週間ってとこかなぁ」

伸びた教師をそのままに、元柳斎のところにいくと、今までのセクハラを訴えた。

「ふーむ。腕のよい教師だったが・・・・そういうわけなら、置いておくわけにはいかんな。退職してもらうか」

「その教師殴っちゃったんだけど」

「いつもなら停学1週間といいたいところだが、十四郎を守ったのであろう?」

「そうだよ」

「あの教師を雇ったのは儂じゃ。責任は儂がもとう」

その少し後で、教師がやってきた。浮竹と京楽がいる前で、京楽がいかに暴力をふるったかないことまで元柳斎に訴えた。

「元柳斎先生!この先生が言っていることは嘘です」

「浮竹君。何をいっているんだね。僕が君に手を出しただって?言いがかりも甚だしい」

「山じい」

「分かっておる。お主を、今日をもって解雇とする」

「なっ・・・・・」

教師は顔を真っ赤にさせて、浮竹を見た。

「この淫乱が!元柳斎殿、この生徒はあの生徒とできているんですよ!」

京楽を指さす。

「それがなんじゃ。それくらい、儂とて知っておるわ」

元柳斎は、愛しい教え子ができていることくらい、すでに知っていた。

「この!」

逆上して、浮竹に殴りかかろうとした教師を、元柳斎は恐ろしいほど早い動きでのしてしまった。

「十四郎、嫌な目にあわせてしもうたな。すまぬ」

「そんな元柳斎先生が謝ることはありません!」

結局その教師は首になり、浮竹と京楽の前に出てくることは二度となかった、

復讐心に燃えて、刃物をもって潜んでいのを元柳斎が見つけ、厳しい処分を言い渡したらしい。

これからも、浮竹に手をだそうとするやつがいれば、消えてもらおうと京楽は思うのであった。


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色のない世界 終章

「浮竹ーーーーーーーーー!!」

京楽の叫び声も空しく、浮竹は花の神によって天に連れ去られてしまった。



京楽は走り出す。

浮竹の墓のところまで。

あまりのショックに、瞬歩が使えない。

走って走って、こけて。血を流して。それでも走った。心臓の鼓動が限界を告げ、肺が空気を求める。

それさえどうでもいいのだと走った。

浮竹の墓の前にくると、次元が歪んでいた。

「きたか」

花の神の声だけがする。

次元の歪みに足を踏み入れて、浮竹を取り返そうとするが、弾かれてしまう。

「浮竹を返せ!」

「愛児は・・・・十四郎は、お前の愛を忘れてしまうかもしれない。それでも、十四郎を求めるか?」

「たとえ浮竹・・・・いや、十四郎が僕を忘れても、もう一度最初から築きあげる。愛を」

「築きあげるか・・・・・・・」

ゆらりと、花の神が姿を現す。
それは、京楽とそっくりな姿をしていた。院生時代の京楽の姿だった。

「十四郎の記憶に触れた。お前の色に染まって、お前以外に、何もない世界があった」

「僕の覚悟を見せろといったね」

「そうだ。愛児を返してほしければ、どれほどの覚悟があるのか見せてみろ」

「もう、浮竹のいない世界なんていらないよ」

京楽は。
花天狂骨で、自分の心臓を突き刺していた。

「!」

花の神が、怯む。

「お前は・・・・・花に狂い天に骨となるか」

花天狂骨が泣いていた。

「その覚悟、見届けたり。愛児を返してやろう」

浮竹は、自分の墓の前に放り出されていた。全てを見ていた。

「京楽・・・・嘘だろう?」

京楽の心臓から、血がとめどなくあふれ出て、その鼓動は止まっていた。

「京楽、なんとかいってくれ!京楽!!」

京楽の血で真っ赤に染まるのも構わずに、京楽の体をかき抱く。

「花の神よ!京楽を返せ!」

「京楽は、覚悟を見せた。返してほしいなら、お前も覚悟を見せろ」

「京楽のいない世界なんて、いらないんだ。俺も一緒にいく。待っていろ、京楽」

泣き続ける花天狂骨を手にして、首の軽度脈をかき切る。

ばっと吹き出た血が、花の神の顔や服を汚した。

「心中か」

花の神は、意外そうに・・・でも、満足そうに、ふわりと笑みを浮かべた。


「花の神の祝福を受ける者たちよ」

重なり合って倒れている、京楽と浮竹の体が宙に浮かぶ。


「椿の狂い咲きの王の名にて、全てを命じる。花の神の祝福と愛を永久’(とこしえ)に」


ちらちらと、

花が散っていく。まるで桜のように。

散っていく花びらは、浮竹と京楽の傷口に集まって、癒していく。流れ出た血が逆流する。

花天狂骨は、花天狂骨枯松心中.の姿になっていた。

「万物の全てに命じる。花の神、椿の狂い咲き王の名において、今一度、羽ばたきを」

チチチチチ。

白い小鳥が飛んできて、花の神の肩に止まった。

花の神の姿がかすんでいく。

ぴくりと、京楽の指が動いた。同時に、浮竹の指も。

「京楽・・・?」

「浮竹・・・?」

「無事なのかい、浮竹!」

「そういう京楽こそ、生きているのか!?」

お互いを抱き合いながら、互いの無事を確認して、花の神を見る。

ゆらりと、影だけになっていた。その影は、シロと名付けた小鳥の中に入っていく。

「そうか・・・・お前が、花の神だったのか」

シロは、緑の瞳で京楽の肩にとまった。

「お前があまりにも哀れで・・・・我が化身を遣わせ、愛児を授けた。我が名は椿の狂い咲きの王」

シロが翼を広げる。

「そして、今の名はシロ」

花の神は、2つの命にもう一度の始まりを与え、祝福した。永久に在るようにと。

「逝ってしまうのかい?」

「花の神・・・・いや、シロ。俺をこの世界にもう一度在るようにしてくれたことに、感謝を・・・・・・・・・」

シロが羽ばたいた。

「我が祝福を二人に授けた。永久を。我が名は椿の狂い咲きの王。冬になれば、椿が咲く。それを我と思い、大切にしてくれ」

光となって消えていく。

舞い散る羽は、光の花びらとなって消えていった。

いつまでも、その光の痕を見ていた。

浮竹の墓は消えて、むきだしの地面だけがそこにあった。

「帰ろう」

「そうだね」

花の神の祝福を授かった二人は、またこの世界で生まれ落ちた。浮竹だけでなく、京楽からも花の香がするようになっていた。

花の愛児は、二人になった。

花の神は、また存在を失った。でも、名は失わなかった。今の名は椿の狂い咲きの王ではなく、ただのシロだ。

その日、互いの存在を確認しあうようにして、泥ような眠りに落ちた。二人は、花の香をさせて数日間起きなかった。

心配した七緒が、虎徹勇音に診せたが、ただ深い眠りについているだけだと言われた。

やがて、花の愛児となった二人は目覚める。

「おはよう」

「ああ、おはよう」

狂おしいほどの愛を抱えながら、二人は生きる。

一度命を失ってしまった浮竹は、花の神に愛されてもう一度命を与えられた。それは、時の輪に影響を与える、本当ならあってはいけないこと。

花の神は、均衡を崩さぬために、愛児を取り戻そうとした。でも、愛児を与えるきっかけになった京楽の覚悟次第で、返してやろうと思った。

覚悟はしっかりと受けとった。その覚悟を見届けた愛児もまた、覚悟を見せた

それで充分だった。

花の神は、存在をなくすほどに二人を愛し、祝福を授けた。

もう一度、この世界で芽吹くようにと。

代償は、花の神の命。




やがて、時は巡り冬になった。

京楽は京楽総隊長として。浮竹は元13番隊隊長として生きた。

「見ろ、京楽!椿が咲いている!」

京楽は、椿の花を一輪手折って、浮竹の白い長い髪にさ。浮竹はもまた、一輪手折って京楽の髪にさした。

「僕には、似合わないだろうに」

「お揃いにしたいから、これでいいんだ」

二人が泥のような眠りから目覚めてから、シロがやってくることは一度もなかった。ただ、クロとそひなが成鳥となり、餌を啄みにきた。

「シロは今頃、どうしてるかな?」

「僕らのために散ってしまったからね。でも、冬にはまた椿の花が咲く。きっと、その花のどこかにシロはいるよ」

「椿の花、手折ったのまずかったかな?」

「愛でているんだから、大丈夫じゃない?」

二人は寄り添いあう。

浮竹の墓はもうない。浮竹は今ここに在る。京楽は、浮竹を愛した。浮竹もまた、京楽を愛した。

二人は、永久(とこしえ)を生きる。

花の神に愛された者として。

祝福を受けた者として。





 IF 色のない世界  FIN




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告白

「ずっと好きでした!これ、読んでください!」

学院の、桜の木の下に呼ばれた浮竹は、肩まで伸びた白い髪を風に靡かせて、困った顔をしていた。
桜の木の上から、会話を聞いていた京楽は思う。
突き放せばいいのに。

「すまないが、もう好きない人がいるんだ」

「そんな・・・・・・」

告白してきたのが、女性なら何も思わなかった。でも、相手は男性だったのだ。しかも年下。別に浮竹と付き合っているわけではないが、密かに想いを寄せている京楽は、あれが自分だったらと思うと、怖くなった。

「好きな相手か・・・・誰だろうね」

桜の木の上から、様子をうかがっていると、相手の男性は泣いて去ってしまった。けっこうかわいい子だった。女の子みたいで。
浮竹と同じような種類の子だった。浮竹も、秀麗な容姿のせいで、背丈がなければ女性に見間違えられることもある。

「百合みたい・・・・・」

さっきの子とできてしまえば、まるでそっちの世界に見えてしまうだろう。

「おい、京楽!そこにいるんだろう!」

「ばれてたか・・・・・・」

「こんな近くにいて、ばれないと思っているのか」

京楽が桜の木の上から降りてくる。桜はもう散ってしまい、今は葉桜だった。その葉も、あと2か月もすれば散ってしまうだろう。
降りてきた京楽は、睨んでくる浮竹の様子を見る。

「俺をからかうつもりで見ていたのか」

「違うよ。たまたま居合わせただけさ」

「気づいていたなら、去るなりなんなりできたんじゃないのか」

「いやぁ、君の答えが気になってね」

飽きれ気味の浮竹が、京楽の耳を引っ張る。

「あいたたたた」

「午前の授業さぼって。午後からはちゃんとでろ」

「分かったよ。分かったから、手を放してくれる?」

浮竹の手が離れていく。その手を、気づけば掴んでいた。

「ねぇ」

体を引き寄せて、耳元で囁いた。

「なんだ」

浮竹は、京楽のそんな行為など慣れているので、ある程度距離をとる。

「君の好きな人って誰?」

「そんなの、お前には関係ない」

ふいっと、視線を逸らす浮竹。ひらりと、桜の葉が気まぐれに強い風に吹かれて降ってくる。浮竹の少し長くなった髪も、風で揺れてサラサラと音をたてていた。
浮竹の髪も、大部長くなった。入学当初は短かったけれど、常に隣にいて、髪を伸ばせばいいと囁いていたら、浮竹は髪を切らなくなった。

ねえ。

少しは、優越感に浸っていいのかな?

「いいじゃない。僕と君の仲でしょ」

「ただの友人だ」

「親友っていってよ」

「いくら親友でも、話すつもりはない」

浮竹は頑なで。今までも告白されて、好きな人がいるんだと何度も聞いてきたけど、その好きな人が誰なのか、京楽には非常に気になった、

もしも、その相手と相思相愛だったらどうしようという不安に駆られた。

「けち」

「うるさい」

浮竹は、京楽に教えるつもりはなかった。

「そういうお前こそ、この前付き合ってた女の子はどうしたんだ」

「振られた」

「お前が?」

「そう。他に好きな人がいるんでしょうって。私を見てくれていないって、ビンタされたよ」

「ビンタはきついが・・・本当に他に好きな子がいるなら、その子と付き合えばいいのに」

ふいっと、浮竹がまた視線を逸らす。京楽と視線を合わせようとしない。この手の会話になると、浮竹はいつも京楽から視線を逸らした。

「こっち見てよ」

「いやだ」

「ねぇ、こっちを見て?」

「なんなんだ・・・・・・・」

ふわりと。柑橘系の香水の匂いに包まれた。京楽の匂いだ。京楽は、浮竹を抱き寄せていた。今までもこんな行為をされたことは何度かあるが、抱きしめてくる力が強いので、その名を呼ぶ。

「おい、京楽!?」

「悔しいなぁ。君の好きな人が僕ならいいのに」

かっと、腕の中の浮竹が朱くなった。
その様子に、ドクンと京楽の鼓動が高鳴る。

「聞いてもいい?」

「何も聞くな・・・・・放っておいてくれ」

ねえ。

優越感に浸ったまま、想いを告げてもいいかな?

「浮竹・・・・・・」

翡翠の瞳に引き込まれるように、気づけば口づけしていた。

「きょうら・・・・・く・・・・・?」

酸素を求める唇に、深く唇を重ねると、突き飛ばされた。

「弄ぶな!」

「違う!」

京楽は、真剣な表情そのもので、もう一度浮竹の細い体を抱き寄せた。

「君が、好きなんだ!」

「!」

腕の中の浮竹の体が、強張る。

ああ。

言ってしまった。

これで、僕たちの友情も終わりだね。

つっと、浮竹の翡翠の瞳から涙が零れ落ちた。

「俺で遊ぶのは止めてくれ・・・・・お前が好きなんだ。この気持ちを、弄ばないでくれ」

京楽の背中に手が回される。

「浮竹!?本当に!?」

浮竹が、はっとなって体を離そうとする。でも、京楽は逃がさない。

「今の言葉、君が僕を好きで、僕も君が好き・・・・両想いって受け取っていいんだね?」

顔を真っ赤にした浮竹を抱き上げる。

「京楽!」

「今はもう女の子と付き合っていない。フリーだよ。将来護廷13番隊の席官クラス入りは間違いなし!おまけに上流貴族でお金もある!こんな優良物件他にないよ!」

抱き上げた浮竹が、真っ赤になった。

「ああ、もう!」

やけくそ気味に、浮竹は叫んだ。

「俺はお前が好きだ大馬鹿野郎!」

「大馬鹿野郎だよ。君が振り向いてくれないと思って、好きでもない女の子と付き合って、廓では女を買って・・・・・知ってた?僕が付き合う子、瞳の色に緑がまざっているか、色素の薄い子なんだよ?」

浮竹の髪は白い。色素を失ってしまったせいだ。肌の色も白い。おまけに肺の病を抱えていて、病弱だ。

「それは知ってた」

静かに、浮竹は呟いた。

「俺は・・・男だし、病弱だし、金もないし、将来護廷13番隊の席官クラス入り間違いなしだが、優良物件には程遠い。それでもいいのか?」

「いいよ。何もかも、受け入れるから。君の病弱なところさえ愛しい」

「京楽・・・・・・」

二人は、また口づけた。
無理やり指で浮竹の口を開けさせて、舌をいれると怒られた。

「いきなり舌をいれるやつがあるか!」

ぼかっと、殴られても、京楽は幸せそうだった。

「今晩は赤飯だ!」

「ばか!」

浮竹を抱き上げて、くるくると京楽はまわる。

やがて落ち着いた二人は、寄り添いあって桜の木の下に座った。

「午後の授業、はじまっちゃったね」

「こんな気分で、授業なんて受けれるか」

二人で顔を見合わせて、くすくすと笑いあう。
これからの関係が、何百年も続くとはその時はおもっていなかった。

告白は、桜の木の下で。


「という話があってさぁ」

「完全にのろけ話じゃねーか!」

わかめ大使を食べていた日番谷は、京楽の話につっこみを入れた。

「でもさぁ、もめたんだよねぇ」

「何がだよ」

「どっちが受けになってどっちが攻めになるかで」

ブーーーー!

日番谷は、お茶を吹き零していた。

「そういう専門用語使うのやめろ。松本ぉ!何録音してやがる!」

松本は、テープで京楽の会話を録音していた。
ずっと話をきいていた浮竹が、零す。

「俺は攻めがよかったんだ。なのに、見た目がいいほうが受けだといって、京楽が襲ってきてな・・・・・・」

ブーーーー!

日番谷はまたお茶を吹き零した。

「だから松本おおおおお!録音するなああああ!!!」

「きゃああああああ!隊長、おこっちゃいや!」

腐っている松本は、どこまでも腐っていた。

「今でも、僕を抱きたいと思うかい、浮竹?」

「いや、今のままでいい。抱かれる側に慣れてしまった」

「かわいいね、浮竹は」

「あっ、京楽・・・・・・」



「・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸!松本おおおおお、お前もだああああ!」

氷輪丸を避けて、二人は逃げ出した。

そして松本は、氷輪丸の攻撃をもろに受けて、せっかく録音したテープを破壊されて泣いていた。

「酷い!隊長のばか!」

「ばかはお前と京楽と浮竹だーーーー!!」




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花に狂った王

「浮竹・・・・・?」

久しぶりに睦みあった夜、湯あみをして寝ようとした時に、ふと浮竹が視線を彷徨わせた。

「呼んでる」

「誰が」

「懐かしい花の神が」

そう言って、ベッドから降りてしまった。何処かへ行こうとする浮竹を止めると、むせるような甘い花の香に包まれた。

「行かなきゃ・・・・・」

「浮竹!」

本当に、どこかにいってしまいそうで、京楽は焦った。

「どこにもいっちゃだめだよ、浮竹!」

「大丈夫。きっと、戻ってくるから」

そう笑って、浮竹は夜の闇に消えてしまった。



「夢?」

はっと起きて、隣を見る。スースーと、規則正しい呼吸をしている浮竹がいた。

「誰にも、渡さない・・・・・」

寝ている浮竹を抱き締めると、浮竹が目覚めた。

「ん・・・・京楽?」

「君は僕のものだ。たとえ相手が神であろうと、渡さない」

一時期はむせるような甘い花の香をさせていた浮竹だが、それも最近では薄まり、浮竹が消えてしまう前兆なのではないかと恐れていた京楽を安心させた。

さっきの夢はなんだったのだろうか。

赤子の頃、浮竹を愛し、甘い花の香という祝福を与えた花の神が、浮竹を呼んでいるのだろうか。

たとえそうであっても、許さない。

浮竹を僕から奪うなんて、誰にもさせない。

絶対に許さない。

「まだ深夜だ・・・・もう一度、寝なおそうか」

京楽は、浮竹を寝かしつけて自分も目を閉じた。でも、眠気は一向にやってこなかった。

ベッドを降りて、開け放たれたままの窓から、月光がさしていた。

その光を浴びながら、久しぶりに強い酒を飲んだ。浴びるように飲んでも、眠気は訪れなかった。

朝になり、浮竹が起きてきた。

「おはよう」

「おはよう。もしかして、ずっと起きてたのか?」

浮竹が、心配そうに京楽の顔を覗き込む。

「大丈夫だよ。眠くなったら仮眠をとるから」

「無理はするなよ?約束だぞ」

指きりげんまんをした。

他愛のない、約束。

今日も一日が始まろうとしていた。


今日は、甘味屋にきていた。ルキアと苺花を誘ってだ。

「シロさんと京楽総隊長は、今日もあつあだね!」

「いやまぁ・・・・・あつあつなのか?」

浮竹が京楽を見ると、京楽はでれた顔で頷いた。

「そうそう、僕たちいつでもあつあつなの。寝る時も食事も風呂も仕事も・・・いつも一緒だからね」

「うわー大人なんだ」

「こら苺花、あまりこみいった話をするでない!」

「いいじゃないか朽木」

浮竹は、注文をとりにやってきた給仕係に、白玉あんみつを4人前頼んだ。

「あー、あたしも白玉あんみつ好き!」

「隊長いいのですか?おごってもらうなんて・・・・・」

「いいんだ。どうせ、京楽の金だし」

渡されていた金子を見せると、朽木家から一般人になったルキアが驚く。

「そんな大金、あまり持ち歩かないでください」:

「もっていると見せなければ、誰もとろうとしないさ。それに俺も元隊長だ。今では双魚理もあるし、賊ごときに遅れはとらない」

「それはそうですが・・・・・・・」

もってこられた白玉あんみつを口にして、ルキアは幸せそうだった。

「朽木はその・・・一護君と結ばれるものと思っていたんだが」

ずっと気になっていたのだ。あれほど、お互いを必要としあい、時に愛を囁きあった二人が離れ離れになり、違う伴侶をえるなんて、できるものなんだろうかと。

「一護のことは、まだ好きです。愛していますよ?でも、恋次も愛しているんです。私は、欲張りなのです」

白玉あんみつのメインである白玉を口にしながら、ルキアは言う。

「一護も、きっと同じ想いです。私を愛しながら、織姫を愛している」

「そういう、複雑な恋愛関係はちょっとわからないな」

浮竹が、白玉あんみつを口にする。

「隊長には京楽総隊長だけでしょうから。私には苺花もおりますし・・・もう、後戻りはできないのです」

アメジスト色の瞳が、少し悲し気に臥せられる。

「でも、私は今が幸せなのです。たまに一護とやり取りをして、恋次と苺花と過ごす毎日が。この結末を迎えても、後悔はしておりません」

「そうか・・・・・・」

「母上は、三角関係のドロドロなんだって、チカさんがいってたよ」

「苺花の名前の由来も、一護からですし」

「ああ、それには気づいてた」

京楽は、あまり口を挟まずに白玉あんみつを食べていた。

元上司と部下の話し合いに、ちゃちゃをいれるようなことはしない。

恋次との馴れ初めとかいろいろ聞いていたら、浮竹は涙目になっていた。

「朽木は苦労したんだな。阿散井副隊長と結ばれてよかった。できれば、結婚式をこの目で見たかった」

「ああ、それは私も思っています。隊長が、あの場にいたらどんなに泣いてくれるかと想像してしまいました」

甘味屋で、長いことしゃべっていた。

白玉あんみつを3回頼んで、ゆっくり食べて語らっていたら、いつの間にか夕方になっていた。

「僕たちはこれで失礼するよ」

京楽が、浮竹の腕をとる。

「ああ、朽木、またな!」

浮竹が勘定を済ませ、外に出る。

「急にどうしたんだ、京楽?」

「君の花の香がきつくなって・・・・浮竹?」

目の前の浮竹の姿の輪郭が、ぶれる。

「え。なんだこれ!?」

浮竹は、自分でも分かるほどのむせかえる花の匂いに、クラリときていた。

「浮竹!」

花に狂った王がやってくる。

「愛児を、返しにもらいにきたぞ」

花の神は、花びらになって浮竹を包み込んだ。、

それに、京楽が花天狂骨を引き抜いて、浮竹を守ろうと背後に隠した。

「神様だろうがなんだろうが、浮竹は渡さないよ!」

「京楽!」

浮竹が悲鳴をあげる。

京楽が構えていたはずの花天狂骨が、京楽の心臓に突き刺さっていた。

「浮竹・・・・逃げ・・・・・・・」

「京楽!!!」

「お前次第だ、愛児。この者を助けたいなら、我が元へこい。この椿の狂い咲きの王のところへ」

「分かったから、京楽を助けてくれ!」

そう叫んだ時には、ぶわりと京楽を、花びらが包み込んでいた。

花天狂骨が、地面に落ちていた。その柄を握りしめて、京楽は叫んでいた。

「浮竹、行ってはだめだ!」

「花に狂った天の骨を持つお前に、チャンスをやろう。愛児の墓の前で、覚悟を見せろ。その覚悟次第で、愛児を返してやろう」

花に狂った王は、浮竹を抱き上げて天に昇っていく。

「浮竹ーーーーーーー!」

京楽の叫び声は、どこまでも続いていた。




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「本当に、この薬を飲めば?」

「君もしつこいネ。説明通りだといっているだろう」

涅マユリに、全財産をはたいて作らせた薬・・・・・一種の惚れ薬のようなものを手にその女死神はこれで願いが叶うとうれし気だった。

愛する京楽隊長を手に入れることができると。

あとはどうやって京楽に飲ますかだ。

「飲ませればいいのね?」

「スプレー状にして吹きかけても効果はあるヨ」

「本当に!?」

「こんなことで嘘をついてもなんにもならないからネ。ただ、スプレー状だと効果は薄いヨ。直接飲ませることだネ」

マユリは、もう興味はないのだと、女死神を追い払った。



京楽は、浮竹と一緒に甘味屋にきていた。

この時を待っていたのだ。

いつかこの甘味屋にくる浮竹に付き添って、京楽がくる可能性は非常に高い。いきなり飲みものをといって薬いりのものを差し出しても、飲んでくれない可能性がある。

女死神は、京楽の分のお冷の中に薬を流しこんだ。

「ふふ、これで・・・・・・・」

「おい、そこでぼーっとしてないで注文とってこい」

店主にせかされて、接客係として前から甘味屋で働いてた女死神は、急いでお冷とおしぼりをもって京楽と浮竹のところにきた。

「お汁粉を2つ。それから抹茶アイスと白玉あんみつも2つずつ」

注文をメモする。

京楽と浮竹にお冷をだすと、二人ともなんの疑いもせずにそれを口にした。

「甘い・・・・?」

京楽が、首を傾げていた。

「なんだ?何か変なのか?」

「いや、別になんでもないよ」

京楽が薬入りのお冷を飲んだのを確認して、女死神は厨房に注文を伝えるために去って行った。

京楽と浮竹は、何事もなかったように甘味屋で食事をして出て行った。

これでいいのだと、女死神は仕事を放棄して二人の跡をつけた。

「じゃあ、俺は先に雨乾堂に帰っているから」

「ああ、仕事をすませたらまたよるよ」

京楽を尾行する。

人通りもなくなった場所で、女死神は笛を吹いた。

それが合図だった。

「・・・・・・浮竹?」

薬を飲まされた京楽の目には、女死神が浮竹として映っていた。

「京楽隊長・・・・じゃない、京楽。少しあそこに寄って行こう」

女死神が指示した場所は、安めの宿屋。

「こんな真昼からどうしたんだい。大胆だね」

嬉しそうに、京楽は女死神の腰に手を回す。

「好きだぞ、京楽」

「僕も好きだよ、浮竹」

二人はそのまま安宿屋に入っていった。

急いで着物を脱いでいく。既成事実を作ってしまえば、こっちのものだ。このときのために、確実に妊娠する薬をマユリに別に作らせておいた。

それを飲み干して、女死神は、ベッドの上に転がった。

「・・・・・・浮竹?」

京楽が、いつもよりあまりに積極的な浮竹に首を傾げる。

「京楽、こい」

女死神は、裸になっていた。

薬は確実にきいている。その証拠に、京楽もその気になっていた。

「あんっ・・・・」

まさぐられ、甘い声をだした女死神。

「本当にどうしたんだい浮竹・・・・・・・」

「お前がほしい・・・・・早くきてくれ」

「こんな急に・・・それに潤滑油もなしじゃあ・・・」

「そんなものいらないわ、早く!」

浮竹のふりをするのを忘れて、女死神はしまったと思った。

「君・・・・・浮竹じゃない?浮竹からはいつも甘い花の香がするのに・・・君からは、薔薇の香水の匂いする」

「た、たまたまプレゼントにもらったものをつけただけだ。俺は浮竹だ!」

熱弁して、京楽の衣服を脱がせようとする。

「浮竹はね、香水なんてつけないよ」

浮竹・・・・いや、京楽には浮竹に見えている女死神の手を振り払う。

「京楽!俺が分からないのか!」

もう一度、笛を吹いた。反応がないので、女死神は何度も笛をふいた。

「・・・・・・・」

眩暈がして、ぐらりと、京楽の体が傾ぐ。なんとか膝をついて、荒い呼吸を繰り返す。

京楽は、刀を出すとそれで自分の太ももを突き刺した。

「・・・・・・幻覚系の薬か何かだね」

傷の痛みのせいで、薬の効果は切れてしまった。

裸になって縋り付いててくる女を突き飛ばす。

「服着なよ。僕はその気はないから」

「待って!」

女死神は、京楽の背後から抱き着いた。

「抱いて!一度だけでいいから!」

「僕は、その気がないと言っている。こんなバカな真似をする女を、同情でも抱く気はしないね。それに、僕には浮竹がいる」

もう一度、ベッドのほうに突き飛ばすと、女死神は狂気に似た光を瞳に宿らせていた。

「乱暴されたって言いふらしてやる!」

「好きにすれば?君が僕に薬か何かをもったことを、僕は公言するね。それに、僕が浮竹以外に手を出すなんて、瀞霊廷のみんなが信じないと思うけどね」

それだけ、京楽と浮竹の関係は知られているのだ。

「じゃあね」

それだけ言い残すと、京楽は瞬歩で雨乾堂まできていた。



「京楽!?」

太ももから血を流している京楽を見つけて、浮竹が驚く。

「すぐ手当てするから!清音、救急箱を!」

「はい、隊長!」

雨乾堂で控えていた清音に、すぐに救急箱をもってきてもらって、傷口をみるために服を脱がせていく。

「一体どうしたんだ、この怪我は!」

深くはない。4番隊に見てもらうほどではないが、血が出ているのは確かだ。

止血して、消毒してからガーゼを当てて、包帯を巻いていく。

浮竹は、兄弟がよく怪我して帰ってくるので、応急処置の仕方とかに詳しかった。

「手当は一通り済ませた・・・・・・・京楽?」

「薬をもられたらしいんだ・・・・・・君は、ちゃんと甘い花の香がするね。本物だ」

京楽の口から、女死神のしでかしたことを聞かされて、浮竹は女死神の捕縛を命じた。
ほどなくして、女死神は安宿の近くで逮捕された。
浮竹はかんかんに怒っていた。中央四十六室から、後に判決がくだされるだろう。



「痛くないか、京楽?」

念のため、薬がぬけきるまで京楽を雨乾堂の布団に横たえて、心配する浮竹に京楽は苦笑を零す。

「まさか、いきなり薬を盛られるなんて思ってなかったからね。惚れ薬じゃなくてよかったよ。しかも涅隊長が個人用に作った薬には、欠陥品が多いからね」

あんな女を、短い時間とはいえ愛しい浮竹と間違えて認識していた自分に、腹を立てていた。

惚れ薬の一種らしいが、飲んだ相手を笛の音を合図に、愛しい相手と誤認させるという薬だった。本物の惚れ薬を盛られていたら、いくらなんでも洒落にならない。

まぁ、涅マユリが惚れ薬を作ることなど、まずはないだろうが。作っていたなら、今頃瀞霊廷はどこかで大騒ぎになっているだろう。

今回の薬も欠陥品だ。痛みですぐ解けたし、何より笛の音を何度もきくと眩暈を覚えた。

「全く、涅隊長は!」

ぷんすか怒る浮竹がかわいくて、その白い髪をひっぱった。

「なんだ、京楽?」

ちゅっと、音をたてキスされて、浮竹が朱くなる。

「ばか!」

「ああこの反応・・・・本物だって思うなぁ。君からは、いつも甘い花の香がするしね」

「これは、赤子の頃に花の神とやらに捧げられたせいで・・・・・・」

また、髪をひっぱってくる。

「なんだ?」

京楽は、その髪の匂いをかいだ。

「何してる?」

「本物だと思って」

半身を起き上がらせた京楽に、抱き寄せられた。

口づけられて、浮竹の手が京楽の背中に回される。

「今度から、気をつけろよ」

「それは君もだよ。君を狙う男死神もけっこういるみたいだしね」

「とにかく、まだ薬がぬけきっていない可能性があるから、寝てろ」

「傍にいてくれるかい?」

「ここは俺の住処だぞ。傍にいるのは当たり前だ」

夜が更けて、一緒に眠った。

布団は別々にしいたけど、結局一組の布団で寝た。


後日、女死神には強制労働と官席クラスの剥奪の命令が、中央四十六室から降りた。










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うだる夏の太陽の視線に、じっとりと汗ばむ。氷で冷やしていたはずの麦茶も、いつの間にか生ぬるくなっていた。8月の終わり。
蝉の鳴く声が、うるさい。ミーンミーンと、耳を塞いでも聞こえてくる音にいい加減うんざりする。せめて風でもと、あおぐうちわで風を起こしてみるが、熱気をはらんだ風だけがやってきて、ちっとも涼しくない。
こんな日には水浴びをしたい・・・・・。
でも、したらしたでまた寝込むのだろうと思うと、自分の体の弱さに嫌気がさした。

「暑い」

声に出すと、余計に暑く感じた。
額から流れ出た汗が、顎を伝って畳の上に落ちる。

「暑い」

そういって、長い白髪を乱して浮竹は、生ぬるくなった麦茶を飲みほして、畳の上に寝転がった。

「暑いっていったら、余計暑くなるよ」

「分かってる」

見ているだけでも暑苦しい、死覇装の上に隊長羽織、さらにその上に女もの着物をきている京楽を睨む。

「なんとかしろ」

「そんな無茶な」

「俺のためなら、なんでもするんじゃなかったのか」

「なんでもするよ」

「じゃあ、あの暑い太陽を消してくれ」

窓の外の太陽を指さすと、京楽が浮竹に近づいた。京楽は、汗一つ浮かべていない。その涼しげな顔が気に入らなくて、浴衣が大きく乱れるのも関係なしに、京楽の背中を蹴った。

「足癖の悪い子だね」

足首をとらえられて、キスをされる。
暑いからと、胸元を大きく広げていたら、じっと京楽が見てきた。黒曜石の瞳と翡翠の瞳が絡み合う。どちらが先だったろうか。気づけば、唇を重ねていた。

「おい、こんな暑い中するのは勘弁だぞ」

「それは僕も同じことだよ。汗かいてないから涼しそうに見えるだろうけど、確かに暑さには強いけど、こんな暑い中で動きたくないよ」

「あのな・・・・」

浮竹が、長い白い髪を乱して、下からのぞき込んでくる。潤んだ翡翠色の瞳と、暑さでやられているとはいえ、白い肌が艶めかしい。ああ、何かふっかけられるなと身構える。

「氷室、もってただろう?」

13番隊にも氷室はあるが、この夏の暑さで消耗が酷く、もう残り少ないのだ。上級貴族の京楽は、8番隊の氷室の他にも、個人で大きな氷室を所有していた。

「かき氷がくいたい。宇治金時で」

「いやだっていったら?」

「夏が過ぎるまで、お前とはしない」

「そんな殺生な」

京楽が、音をあげた。愛しい浮竹に触れないことほど、堪えるものはないからだ。

「分かったよ」

地獄蝶を飛ばして、個人で所有する氷室を解放させて、家人に氷を雨乾堂までもってくるように伝えた。家人の中には、元死神もいるので、瞬歩を使える者がいる。

チリン。
音だけは涼しい、風鈴が音を鳴らす。

「ありがとう」

京楽は、家人の一人から氷の塊を受け取って、大きな皿にいれた。それから、現世から買ってきたかき氷機を使って氷を削っていく。器にしゃりしゃりっとしたかき氷がもられる。小倉餡と抹茶シロップをかけて、宇治金時のかき氷の完成だ。一口食べてみる。まったりとした甘さが口いぱいに広がり、その冷たさに心地よさを感じた。

「まだかー。溶けるーーー」

だらだらしっぱなしの浮竹の傍に寄って、宇治金時のかき氷をいれた器を、その頬に当てた。

「冷たい!」

浮竹がその冷たさに驚いて、また浴衣を乱す。

「ちゃんとかき氷できたから。君、いつまでもそんな扇情的な恰好してないで、ちゃんと浴衣を着なさい」

「はぁ?扇情的?」

浮竹は自分の姿を見る。胸元をはだけさせて、裾から太ももが見えていた。

「そんな風に見えるのは、お前くらいだ」

「そんなことないよ」

君は知らないのだ。どれだけの男が、君をそんな目で見ているかを。

浮竹は、京楽からかき氷を受け取って、幸せそうにそれをほうばっていく。暑い夏にも楽しみはある。かき氷を食べ終えた浮竹は、強請ってきた。

「もう一人前」

まだ食べるつもりか。あまり食べさすと、体を冷やして熱を出すだろうから、京楽は硝子細工の器をとりあげて、残っていた氷を全部くだいて、ビニール袋に入れた。それを放り投げると、浮竹が冷たいと、嬉しそうな声をあげた。

「全部溶けたら、終わりか・・・・・」:

外の甘味屋にいけば、かき氷くらい売ってるだろうが、浮竹の場合直射日光にあたるだけで倒れてしまう。食べにいくことも、真夏にはなかなかできないのだ。
ごろごろと、溶けてく氷と戯れる浮竹が可愛くて、思わず伝令神機で写真を撮った。

うだる暑さは、まだまだ続きそうで。

「今日の夜、いいかい?せっかく氷室をあけてあげらんだから、お礼くらいもらってもいいよね?」

少し無理があるかもしれないけれど。夏場で体を重ね合わすのは暑さとの闘いでもある。暑いのを嫌がる浮竹と、最近ろくにしていないので、はっきりいうとたまっていた。

「1回だけなら」

よっしゃと、内心でガッツポーズをとる京楽の思いなど知らずに、浮竹は氷と戯れていた。

チリン。
涼しい音を鳴らすしか能のない風鈴が、生ぬるい風に吹かれて揺れていた。

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千本の薔薇

むせかえるような薔薇の匂いに包まれて。

朝起きると、部屋中が薔薇の花びらで覆われていた。

金がかかっただろうと思われる、バラの花束が落ちてあった。

「なんだ?」

メッセージカードが添えられていた。

『愛する君に千本の薔薇を』

深いため息をつく。

京楽が、またよからぬことを思いついたのだろう。

「浮竹、愛しているよ」

音もなく雨乾堂に入ってきた京楽は、尸魂界でも珍しい青い薔薇の花束を抱えていた。

「おい、京楽・・・・もっとましなことに、金を使えないのか」

「大好きな君のために惜しむ金銭なんてないよ」

「でもこれはやりすぎだろう」

畳の上を覆う薔薇の花びらをつまみあげる。

「ムードがあるでしょ?」

「ムードもなにもあるかこのばか!」

青い薔薇の花束を押し付けられて、頬を朱くしながら薔薇の花束を受け取る。

「今日は特別な日だからね」

「?」

浮竹は身に覚えがなくて、首を傾げる。

「ああ、ここ十数年、祝ってなかったからね。今日は、院生の時の僕らが結ばれた、恋人になった日だよ」

夏の終わりの秋。

確かに、京楽と結ばれた。

「恥ずかしいことを・・・!」

院生時代の初体験を思い出して、浮竹は顔を真っ赤にした。

「ああ、あの頃はよかったなぁ。若いまま、流れに任せて毎日のように・・・・」

京楽の口を、口で塞いだ。

黒い瞳が見開かれる。

噛みつくような乱暴なものだったが、深く味わえばしかけたほうが臆した。

「んうっ・・・・」

舌と舌を絡ませないながら、何度も深く口づけする頃には、浮竹は立っていられなくなっていた。

「君が誘ったんだよ?いいよね?」

薔薇の海に、沈められて、浮竹は潤んだ熱のはらんだ翡翠の瞳で、京楽を見上げた。

「一度だけだぞ。明日は、学院に講師として招かれている」

「じゃあ、一度だけ・・・・」

浮竹の隊長羽織を脱がし、死覇装を乱していく。

「あっ・・・・・・・」

甘い声をもっと聞きたくて、見えない場所に痕を残していく。

「好きだよ・・・・・」

耳元で囁けば、言葉が返ってくる。

「俺も、好きだ・・・・・・・・・・」


何もかも、薔薇に埋もれて。

千本の薔薇を君に。


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柚子風呂

「やぁ、きもちいいね」

湯殿を借り切って、柚子風呂にしてみた。

浮竹も京楽も、バスタオルを腰にまいたまま、風呂に浸かった。

浮竹は、髪が長いので結い上げて、翡翠の髪飾りで留めていた。京楽はというと、一つにくくっただけで長めの髪を結ってはいなかった。

「はー。落ち着くなぁ」

この時間、湯殿はいつも死神たちが利用していて、浮竹と京楽は、雨乾堂の近くに建てられた小さな風呂にいつも入るのだが、広い湯殿に入るのも好きだった。

いわゆる公共浴場だ、今の場所は。

それを、隊長権限で貸し切りにした。隊舎内には、他にも風呂が設置されているので、文句をいってくる死神はいなかった。

「柚子風呂なんて、思い切った真似をしたな」

いくら柚子が手に入る季節とはいえ、この広さの湯を柚子風呂にするくらいの柚子を買ったのだ。それなりの金はかかっているだろう。

「七緒ちゃんからもらった、バスグッズに、柚子の元っていう入浴剤があってねぇ。香がよかったから、いっそ本物の柚子風呂に入ろうと思ってね」

是非、浮竹にも味わってもらいたいのだと、広めの湯殿を貸し切って、柚子を浮かべてみた。

ぷかぷかと湯を漂う柚子を沈めたり浮かべたりして、京楽は遊んでいた。

浮竹は、赤子の頃に花の神に捧げられたせいで、肌や髪から甘い花の香がする。でも、ちゃんとシャンプーや石鹸の匂いだってした。

泳げるくらいの広さの柚子風呂に、肩まで浸かる。

湯船からでると、互いの長い髪を洗いあった。

浮竹の髪は特に長いので、洗うのに時間がかかる。いつもはシャンプーだけなのだが、今日は京楽がバスグッズをもってきているせいで、リンスにトリートメントまでされた。

「京楽、シャンプーだけで十分だろ」

「だめだめ!君のサラサラの髪をもっとサラサラのつやつやにするんだよ!」

そうしたところで、喜ぶのが京楽一人なのだが。

「浮竹、また痩せたかい?」

背中を洗ってくれている京楽が、ふと浮竹のわき腹を撫でる。肋骨が浮かんでいるような酷いものではないが、さわると肋骨の位置が分かった。

「ちゃんと食べてるぞ」

「もっと筋肉がつくように、よく食べて運動しないとね」

浮竹の食の細さは知っていた。

だから、甘味ものを与えて少し太らせようとするのだが、甘味ものをいくら食っても太らないのだ、浮竹は。

女性死神の敵だなと思いつつ、背中に湯をかけてやった。

「今度は、俺がお前の背中を流そう」

京楽を座らせて、石鹸で泡立てたスポンジで京楽の背中を洗っていく。京楽は毛深いので、背中まで毛が生えていた。

「浮竹はすべすべだねぇ」

「そういうお前はもじゃもじゃだな」

二人して、また柚子風呂に入る。洗った髪をまとめいた髪飾りをとられて、浮竹の長い白い髪が湯の中を泳いだ。

「おい、京楽」

「僕たち以外誰もいないんだから、いいじゃない」

「しかし・・・・・」

次に入る者がいて、もしも長い髪が漂っていては気持ち悪いだろうと思った。

「ああ、この後湯をぬいて風呂掃除してもらうから。心配はいらないよ」

「そうか?」



「浮竹、浮竹!」

名を呼ばれてはっとする。

いつの間にか、浴衣姿になっていた。

「どうしたんだ、俺は?」

「湯あたりしてのぼせて倒れたんだよ」

「・・・・長いこと湯に浸かっていたからな」

京楽がでても、まだ湯に浸かっていた。柚子の香が気に入って。

「ほら、氷水」

受け取って、飲んでいくと火照った体も冷えていく気がした。

「柚子風呂・・・・・今度は、雨乾堂の風呂で入るか」

狭くも広くもない、雨乾堂の備え付けの湯船は、温泉の元を少し多めにいれたらいいだろう。柚子を浮かべてまた柚子湯に入るのも悪くない。

「何してるんだ京楽?」

浮竹の髪をすんすんとかいでいる、京楽の頭をどけようとする。

「ちゃんと、柚子の匂いもする。君の香の上から上書きされたみたいに、柚子の香が匂い立って・・・・・なんか、湯上りのせいもあるのかもしれないけど、すごいエロいね」

「お前の頭はそういうことしか考えないのか!」

京楽の脛を蹴ると、京楽が覆いかぶさってきた。

「柚子の匂いがするね」

「それはお前もだろう」

触れるままに口付けを交わす。

京楽の柚子の匂いに、浮竹はクラリときた。

京楽の肩にかみつくと、京楽は笑って浮竹を抱き上げて、雨乾堂の布団の上に横たえた。

「夜はこれからだよ?」

「・・・・加減しろよ」

浴衣を脱いでいく京楽の肩に、浮竹はもう一度噛みついた。





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襲われた日番谷隊長

いろいろあって、涅が開発した薬を口にしてしまった

その名もニャンニャンキャンディ。

昔、猫耳と尻尾が生えた上に媚薬の効果まである飴玉だった。今回は、その完成版。

完全に猫になる薬だった。

「にゃああああ」

(どうしよう)

キョロキョロと当たりを見回しても、猫の視点からの世界に圧迫される。人が大きな生き物に見える。

なんでも、薬は誰かとキスすることで、解除されるらしい。

猫アレルギーの京楽には頼めなくて・・・・・というか、言葉すら伝わらないだろう。

京楽は、今頃何をしているんだろう。12番隊舎にいってくるとだけは伝えておいたので、帰ってこない浮竹を心配しているかもしれない。

「にゃあ」

(そうだ、日番谷隊長だ)

浮竹はおもった。けっこう動物好きらしい日番谷のところにいって、悪いがキスしてもらおう。

日番谷には雛森という想い人がいるが、緊急事態なのだ。

誰かとキスしなくては、永遠と猫の姿のままらしいのだ。

善は急げ。

浮竹は、にゃあにゃあ鳴きながら、10番隊の執務室に侵入した。

「にゃあああ」

(日番谷隊長!)

「なんだ、猫か?」

「わー珍しい。綺麗な白猫ですね、隊長」

松本の手が伸びて、猫の姿の浮竹を抱き上げる。松本でもいい。キスさえできれば、元に戻れるのだ。

キスしようとじたばたもがいていると、松本は浮竹に頬ずりした。

「んーいい毛並み。なんかこの子、浮竹隊長みたい。花の甘い香がします」

「にゃああああ」

(そうだぞ、松本副隊長!俺だ!)」

もう少しでキスできる・・・・・という近さで、日番谷が浮竹の後ろ首をつかんで浮竹をだっこした。

「ほんとだな。花の香がする。でも、まさか浮竹なわけじゃないだろう」

「そうですよ。いくらなんでも、浮竹隊長が猫になるわけないじゃないですか」

二人して、否定される。

「にゃあああああああ」

(俺なんだ!気づいてくれ!)

まさか、永遠に猫のまま・・・・涅のところにいけばなんとかしてくれそうだが、お礼に実験体になれとか言われそうで怖い。

なんとか、自分の手で元に戻らなけれれば。

霊圧を高めてみる。

「浮竹?」

日番谷が、室内をキョロキョロ見る。

「気のせいか・・・・・・・・・」

その後、どんなに霊圧を高めても、日番谷は猫になった浮竹の存在に気付かずに、太陽は落ちてしまった。

「にゃああ」

(どうしよう)

迷っていると、松本が買ってきたらしい猫缶を与えられた。

お腹がすいていたし、何も食わなくては飢え死にしそうなので、意を決して食べてみる。

けっこう美味しかった。

その日は、日番谷の屋敷に連れて行かれて、ケージにいれられて夜を過ごした。


次の日。

「日番谷隊長、浮竹を見なかったかい?なんでも涅に変なもの飲まされたとかいって行方不明になってるらしい」

京楽が日番谷のところにやってきて、もう1日以上も浮竹が行方不明なのだと話す。

技術開発局で薬を飲まされた時、「変なもの飲まされたー」といって、浮竹の姿は猫になった。その言葉を耳にしていた者はいたが、浮竹が猫になった姿を目撃した者はいない。

だが、浮竹がいなくなった後に白猫の姿を目撃した者は複数いた。

「可能性は低いが、猫になっているかもしれないと、12番隊の者から聞いたんだけど」

まさかねぇ。

日番谷の腕の中にいる、白猫を京楽は凝視した。

「おかしいね。こんなに猫に近づいたら、アレルギー症状がでるんだけど」

「こいつ、野良みたいだぞ。よければ飼ってやれ」

ぶらんと持ち上げられて、京楽の手の中に。

「にゃああああああああ!」

(京楽、俺だ!)

しっぽをぶんぶんふっていると、京楽は浮竹を抱き締めた。「

「アレルギーが出ないなんて不思議な子だね・・・・・・・あれ、甘い花の香がする・・・・まさか浮竹?」

「にゃあ!」

(そうだ!)

「なわけないか。返すよ。僕は猫は嫌いじゃないけど、アレルギーがいつ出るかもわからないし」

「にゃあ!」

(このばかっ!)

「そうか。俺のとこで飼うか・・・・・」

日番谷は、浮竹を抱き上げて、キスをした。

ぼふん。

音をたてて、浮竹は人間に戻った。

衣服はそのままだ。

「日番谷隊長!」

「はぁ!?浮竹!?」

浮竹は、変化が解かれた後もまだ猫耳と尻尾があった。浮竹に押し倒された姿いる日番谷をみて、松本が腐った目と腐った脳をふる活用してはぁはぁと荒い息を吐いていた。

「ちょ、どけ」

「日番谷隊長、ありがとう!お陰で元に戻れた」

事情を話す。

「いいからどけ・・・・・・ぎゃああああああああ」

ニャンニャンキャンディには、媚薬成分も・・・・・含まれていた。額や頬に口づける浮竹に、日番谷が悲鳴をあげる。

松本は、腐った目で二人を凝視していた。

「松本!はぁはぁいってないで、助けろ!」

「無理です隊長・・・(;゚∀゚)=3ハァハァ」

日番谷を押し倒す浮竹に、京楽の霊圧がゆらりと揺れた。

「浮竹ぇ~?」

「・・・・・・京楽?」

冷たい霊圧に、浮竹は我に返る。

「浮気は、許さないよ?」

「ちがう、これは薬のせいで・・・・ぎゃあああああああ」

「おい、ここは10番隊の執務室だぞ・・・・・」

乱れた死覇装をなおして、京楽と浮竹を追い出そうとする。

「かわいいねぇ、猫耳と尻尾・・・・ああ、今すぐ食べちゃいたい」

「猫耳と尻尾はだめだ・・・だめだっていってるだろう・・・・・ああん」

隊長羽織を脱がされて、死覇装の胸元をはだけられる。

「・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸!」


京楽が、浮竹を抱いて逃げ出した。

「あのおっさんどもーーーーー!」

日番谷は、欲情した浮竹の顔を思い出す。京楽がいなかったらやばかった。操を奪われていたかもしれない。
上気した頬、潤んだ翡翠の瞳、暖かい手、桜色の唇。

自分が女だったら、きっといちころだったろう。

「松本ー!撮った写真のデータは全部消せー」

「隊長命令でも嫌です!」

「蒼天に座せ、氷輪丸!」

松本の携帯を粉々に砕いて、日番谷は半壊した執務室を見て、これどうしようとまた悩むのであった。










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翡翠Ⅱ(IF

「あった・・・・」

遺品を整理していると、かつて大切にしていた翡翠のお守り石をみつけた。

京楽がもっているかもしれないと聞いてみたのだが、君を思い出して辛いから遺品の中にそのままにしておいてあると言われて、探していたのだ。

屋敷が数件建つ値段の翡翠は、時を経ても変わらぬ煌めきをもっていた。

遺品の中には、京楽とのたくさんの思い出がつまっていた。翡翠の簪、螺鈿細工の櫛、共に酒を飲みあうときに使っていた杯。

「こんなものまであるのか」

京楽にあげた、手作りの栞・・・・。

遺品自体、京楽の屋敷で大切に保管されていた。

京楽は、浮竹を失っても記憶がいろあせないように、いろいろと残してくれているらしかったが、翡翠の石はもっているのがつらいのか、遺品の中にあった。

ペンダントになっていて、チェーンを外せばただのお守り石になる。それを首にかけて、京楽の元にいくと、京楽は驚いていた。

「その翡翠・・・・・」

「そう、かつてお前がくれたものだ」

「そうか。遺品の中から見つけたんだね」

「ああ」

「その石は・・・・持っているとあまりに辛くて、君との思い出がつまった大切なものなのに置き去るようにしていたよ・・・・ごめんね」

「謝るのは俺のほうだ。お前を一人にして・・・辛い目に合わせてしまった、すまない」

でも、今は互いに傍に在る。

この前、紅瑠璃をあしらった、浮竹が作ったペンダントを京楽にあげた。拙い作りであったが、京楽は喜んでくれて今でも身に着けている。お返しにと、蒼瑠璃があしらわれた金細工の髪飾りをもらった。普段はつけることはないけれど、いつも懐に大切にもっていた。

この翡翠も、また大切にしよう。

京楽が翡翠を手に取って、浮竹の首につけてくれた。

「懐かしいねぇ。一度喧嘩して、池に放り投げられたっけ」

「あの時は本当にすまなかった」

「君は、見つかるまで池から出ないといって、冬の中水に入って。結局は一緒に探してくれた清音ちゃんがみつけてくれたんだっけ」

「ああ」

「次の日には、やっぱり高熱をだして倒れたね」

「自業自得だった」

「すごく心配したんだよ」

「知っている」

「懐かしいなぁ。20年近くも前のことなのに、昨日のことのように思い出すよ」

色あせない記憶がそこにある。

「この翡翠、お気に入りだったんだ。俺と同じ瞳の色をしている」

「だから、君にあげたんだよ」

そう耳元で囁かれて、浮竹は瞳を伏せた。長い睫毛が、頬に影を作り出す。

「もう、離れ離れにはなりたくない」

「何があっても、君を離さないよ」

腕の中の浮竹の、花の香にくらりときた。

「このまま、君を食べてしまってもいいかい?」

最近、浮竹の花の香がきつくなっている気がしたが、気のせいだろうか。

蜜蜂がむらがるように、京楽は浮竹を求める。

「好きにしろ・・・・・」

「花の香がするね・・・・・・」

浮竹は、自分から花の香がするのを昔から知っていた。なんでも、赤子の頃に花の神に捧げられて愛されたらしい。

花の神というのは、図書館で調べたか地方の伝統ある神で、別名椿の狂い咲きの王と呼ばれる。

浮竹と京楽は、もつれあいながらベッドに倒れた。

ふと、腕の中の浮竹の姿がぶれて、目をこする。




花の神は目覚める。

「愛児を、返せ-----------」

椿の狂い咲きの王は、ゆっくりと愛児の名を呼ぶ。




「京楽、呼んだか?」

「いいや?どうしたの」

「誰かに、名を呼ばれた気がしたが・・・・気のせいみたいだ」



花に狂った人の子よ。花天狂骨を持つ者よ。
お前に、愛児を愛する資格はあるか-------------?

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一緒のベッドで眠った。

ルキアが押し入れでいいというのに、一護が一緒に寝ようというので、ただ本当に、一緒のベッドで寝た。

それだけのことだった。

一護の黒い瞳と、ルキアの紫紺の瞳の視線が絡みあう。

「アメジストみてー」

一護が手を伸ばしてくる。

その少しひんやりした手が冷たくてきもちよくて、ルキアは頬を摺り寄せていた。

「そういう貴様の目はまるで黒曜石のようだ」

「黒い瞳なんてありふれてるだろ」

「私は、貴様の瞳の色が好きだ」

そういって、手を伸ばしてくる。頬に触れる手に、一護は自分の手を重ねた。

「髪の色も好きだ」

オレンジという色は目立ちすぎて、嫌いではなかったが、普通に黒ければいいのにと思ったこともある。
ルキアは、そのオレンジの髪がとても好きだった。
一護の色だ。

「ルキアの髪はさらさらだよな」

額にかかっていた髪を払われる。

くすぐったくて、小さく笑みをこぼす。

「なんだよ」

「いや、なんでもない」

「変な奴」

その時、ルキアの伝令神機がピーピーピーとアラームを鳴らした。

「虚か!」

ルキアが起き上がる。

「俺がいく。お前は寝てろ」

死神代行証で死神化した一護は、斬魄刀を手にガラリと窓をあけると、出て行った。

「せわしのないやつめ」

ルキアの伝令神機を手に、一護は虚の位置を確認して見つけ、苦もなく片付けた。

「終わりか・・・・」

もう、虚の気配はなかった。

窓から部屋の中に入ると、ルキアが待っていた。

「寝てろっていったのに」

「たわけ。そうそうおちおち寝ていられるか。虚は、ちゃんと退治したのであろうな?」

「当たり前だろ」

一護は霊体から自分の肉体に戻ると、すぐに横になった。

「ルキア、来いよ」

「たわけ・・・・・・」

そう言いながらも、一護のベッドに腰かける。

シングルベッドなので、二人は少し窮屈だったが、寝れないわけではない。

「来いよ」

手招きされて、一護の腕の中にすっぽりと納まるように寝転んだ。

ルキアからは、シャンプーの甘い匂いがした。

クリスマスプレゼントにと、渡したアメジストの首飾りが胸に光っていた。

「お前、それ大切にしてくれてるんだな」

「当たり前であろう。貴様からもらったものなのだぞ。心のこもったものだ」

胸に光るアメジストと、ルキアの目を見比べる。

「やっぱ、宝石よりルキアの瞳の方が綺麗だ」

瞳に口づけられた。

くすぐったくて、身じろぎする。

「あんま動くなよ。落ちるぞ」

「たわけ。大体二人で寝るにはこのベッド狭すぎだ。もっと大きいベッドを買え」

「この部屋でお前を住まわせるって知ってるの、家族には誰もいないんだぞ」

もう最後の戦いが終わり、本当なら13番隊の副官であるルキアは尸魂界に帰らねばいけない身だった。

それを、あれこれ理由をつけて先延ばしにしていた。

「貴様と離れたくないと思う。これは罪なのか?」

「んなわけねーだろ」

抱き締められて、ルキアは目と閉じた。

自然と唇が重なる。

好きだと告白されて、また自分も告白し、相思相愛になって2か月が経とうとしていた。

未だ、男女の仲にはいたっていない。

一護がいつも我慢しているのは知っていた。だが、一歩先に踏み出すことが怖いのだ.。

死神と人が結ばれるなど、本当はあってはならないことだから。

「いつか、貴様は人の誰かと結ばれるのだろうな・・・・・・・」

「そういうお前は、死神の誰かと結ばれるんだろう?」

想いあいつつの矛盾。

決して、最後は結ばれることがないと分かっていて、付き合い始めた。

「今は、未来のことなど考えぬ。貴様と在れることを嬉しく思う」

「ずっと傍にいれたらいいのにな」

「私には死神としての責務があるからな。近々、また帰らねば」

護廷13番隊副隊長朽木ルキア。

朽木家の名に恥じぬためにも、尸魂界に帰り、上官である浮竹十四郎のサポートをしなければいけない。

そう分かっていても、一護と別れたくないのだ。

時間が許す限り、傍にいたいと思う。

「一護・・・・寝てしまったのか?」

ルキアを残して、一護は眠りに落ちてしまった。

今、一護は大学に通っている。その大学での生活とバイトで忙しく、ルキアを一日中構っている暇などない。

それでも、限りある時間を割いて、ルキアと接していた。

ルキアとて、ただ現世にいるわけではない。空座町の変わらぬ虚退治のために、滞在していた。

「貴様はずるいな一護・・・・。出会ったときから大分背が伸びた。私と貴様の歩む時間の違いに・・・・私は、いつまで貴様の傍にいれるのだろうな?」

眠ってしまった一護に口づけて、悩みなどいらぬのだと、ルキアもまた眠りの海に旅立つのであった。



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嫌いなもの


「おー。珍しいなムカデじゃんか」

部屋の中に入ってきたそれを見て、一護は平気でつまみあげた。

隣にいたルキアは、それを視線で見て顔を蒼くした。

「ひいいいい」

「どうしたんだよ。もしかして虫とかだめとか?」

「じ、地獄蝶がいるだろうが。蝶とかは平気なのだ。だが足がいっぱいある虫は・・・・ええい、こっちに近寄るんじゃない、しっし」

まるで、犬をおっぱらうみたいに、あっちにいけと身振り手振りをするルキアは、読みかけの小説を投げつけてきた。

「へー。おもしれぇ」

キランと一護の目が輝いた。

散々蹴られたり殴られたりしてきたのだ。

少しぐらい悪戯したっていいよな。

「ほーれほーれ」

「ひいいいいいいいい」

「ほれほれ~~」

「いやあああああ」

「ほれほれ~~~」

「いい加減にせぬか!」

ドゴっ。

一護の頭を足蹴りにして、ルキアは部屋のすみっこで涙を流しそうになっていた。

「あー。俺が悪かったって」

ぽいっとムカデを窓の外に捨てて、ルキアのほうによる。

「あああ、ムカデを触わった手で触れるなあああ!」

バキィ。
肘うちを受けて一護は沈黙した。

「はぁはぁ。まて、一護気絶するなああ!またでてきたらどうする!一人では怖いではないか!」

自分で気絶させといて、ルキアは一護の服を揺さぶるのであった。

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女性死神協会

「兄らは何をしにきた」

朽木家の屋敷に足を踏み入れた浮竹に、白哉は顔色一つ変えずに、対応する。

浮竹だけでなく、京楽もいた。

「いやぁ、女性死神協会に、遊びにこいって言われてねぇ」

ガコンと音をたてて、朽木家の壁があく。

「うっきー、もじゃりん、こっちだよー」

やちるが手を振る。

「・・・・・・・散れ、千本桜」

女性死神協会は、朽木家の中にあった。壁をこわすと、今度は廊下からやちるが顔をのぞかせた。

「・・・・今日だけ、見なかったことにする」

「白哉、いいのか?」

「兄らの知ったことではない」

見ないでおいたことにするのは、白哉なりの優しさなのだろう。

朽木の屋敷を好き勝手に改造する女性死神協会には、怖いものなどなにもなかった。

「じゃーんここが女性死神協会だよー」

廊下の下に、広い空間があってそこが女性死神協会の本拠地になっていた。

「お、久しいのう、浮竹、京楽」

「夜一・・・最近見ないと思っていたら、こんなとこにいたのか」

正確には、夜一は女性死神ではないが、一応一員として数えられていた。

「今日はなんなんだ、よび出して」

浮竹がそう切り出すと、やちるが女性死神協会の会誌をもってきた。

「うわぁ~」

浮竹が、額に手を当てた。

ここに誰もいなかったら、顔を手で覆ってゴロゴロと照れていただろう。

京楽とキスしているシーンを、盗み撮りだろうが撮られ、それが会誌の表紙になっていた。

「うっきーともじゃりんのアツアツの写真、いつも隠し撮りだから、ちゃんとしたのが撮りたいってみんないってるから、アツアツなの見せて!」

「草鹿副隊長、何言っているんだ!」

逃げ腰になる浮竹を、京楽がその腰に手を回してきた。

「キスやハグでいいんだよね?」

「おい、京楽!」

京楽は、見せつけるように浮竹に口づけた。

「んう!?」

舌が絡まるほどの濃厚なキスをされて、浮竹が潤んだ瞳で睨んできた。

「お前、何を考えている!」

「盗撮されるくらいなら、いっそばっちり撮られたらいいよ」

そう言って、またキスをされた。

その姿を涅マユリが「はい、バター」とかいって写真を撮っていく。

「違いますよ、チーズです」

虎徹勇音が、訂正する。

松本や七緒もいた。

浮竹は、真っ赤になった。耳まで真っ赤になる浮竹に、京楽は「かわいいね」と耳元で囁き、抱きしめてくる。

その間も写真に撮られていた。

「浮竹隊長と京楽隊長のアツアツ生写真、確かにいただきました」

勇音が、ぺこりを頭をさげる。

「じゃあ、僕らは戻るね」

京楽に抱き上げられて、浮竹は京楽と共に女性死神協会を後にした。


「ばかっ!」

蹴りをいれてくる恋人を、雨乾堂でその機嫌をとる。

「ほら、君の大好きなおはぎだよ」

高い菓子店から買ってきたものを、浮竹に与える。

「こんなもので、機嫌がなおるとでも・・・・」

そういいながら、もきゅもきゅと食べていく。

まるでハムスターのようだと、京楽もおはぎを口にしながら見ていた。

「あんこがついてる」

ぺろりと、口元を舐められて、浮竹はまた朱くなった。

「お前、隠すつもりがないのはいいが、何も見せつけなくても!」

「ああしたら、盗み撮りなんてされないだろう?」

「だが・・・・!」

京楽が、浮竹のうなじを舐めた。

「なっ」

「君があんまりにかわいいから、食べたくなっちゃうんだよ」

「このばか・・・・・」

浮竹は、京楽の頭をたたいた。

でも、その手に力はこもっていなかった。

菓子を食べ終えて、お茶をすする。

結局、女性死神協会の次の表紙は、あつあつな生写真として表紙を飾り、その号は売り切れが続出したという。









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翡翠をなくした日

秋も終わり、冬が始まろうとしていた。

ある日、京楽と浮竹は喧嘩した。喧嘩をすること自体、数年ぶりの出来事だった。

「お前なんて嫌いだ!」

「ああそうかい」

浮竹が、怒りに任せ京楽を睨みつける。

「このわからずや!」

「君のためを思って言っているのに!」

かっとなった京楽が、浮竹の胸倉を掴む。

「知るか!」

「ふん」

京楽は、決して手を出さない。たとえ喧嘩していても。

「こんなもの!」

いつかお守りにと、浮竹にあげた翡翠の石を、浮竹は京楽が見ている前で雨乾堂の近くにある池に投げ捨ててしまった。

ぽちゃんと音がして、浅いがどこかに落ちてしまった。

屋敷が数件建つ値段の翡翠。想いをこめて選んだ。それを、お守り石にすると、浮竹は喜んでくれた。互いの絆の証のようなもの。

「君という子は・・・・・!」

京楽が手をあげようとする。びくりと強張る体を、京楽は突き飛ばした。

「もういいよ。君なんて知らない」

「せいせいする!」

浮竹は去っていく京楽にそう言葉を投げて、雨乾堂に戻って行った。



それから1週間が過ぎた。二人は、喧嘩したままだ。

「あのー隊長?」

「なんだ清音」

「今日、確か京楽隊長が泊まりにくる日じゃ・・・・・」

「あんなやつのこと、口にするな!」

浮竹は、まだ怒っているらしかった。

一方の京楽は、新しい翡翠の石を探していた。浮竹のことはもう怒っていないが、浮竹は想いの証である翡翠を投げたことにきっと心を痛めるだろうと思って。

喧嘩してから、10日が過ぎた。

「きゃあああああ、やめてください、隊長!」

「放っておいてくれ!」

浮竹は、この寒い中、死覇装と隊長羽織という姿で、雨乾堂の近くにある池の中に入っていった。

「隊長、風邪ひいちゃいます!」

清音の制止の声を無視して、投げ落とした翡翠の石を探す。

「ない・・・・どうしてだ。ここら辺に投げたはずなのに」

「隊長!」

仙太郎が、池の中に入ってきた。浮竹を抱き上げて、池からあがらせようとするが、力強く拒否されて、池の外までふっとばされてしまった。

「俺のことは放っておいてくれ!ない・・・・・どうしてだ、ない・・・・・」

京楽に謝ろうと思った。でも、思い出の翡翠を投げてしまったことが自分でもショックで、どうしても取り戻したかった。

「清音、京楽隊長呼んでこい。俺たちじゃ、止めれない」

清音は、ことがことなので瞬歩で京楽を呼びにいった。

「なんだって、浮竹がこんな寒い中池の中に入ってるだって!?」

「はい。なんでも、京楽隊長にもらった大切な翡翠のお守り石を探すのだと聞かなくて・・・・・・」

「ああもう、あの子は!」

京楽は、清音と一緒に雨乾堂にやってきた。

「やめないか、浮竹!」

寒い中、池の中で石を探している浮竹の姿をみるだけで、心が凍り付いたように酷く軋んだ。

「止めるな京楽。あの石を見つけるまで、俺は池からあがらない。見つけて、お前に謝罪するまでは・・・・・・・!」

無理やり止めることもできた。

でも、それじゃあ浮竹の想いが浮かばれない。

「京楽!?」

京楽は、女ものの着物を脱ぎ捨てて、浮竹と一緒に池の中に入ってきた。

「風邪ひくぞ!」

「それはこっちの台詞だよ。君は、どうせ石が見つからない限り、熱を出しても探すんでしょ」

「それは・・・・」

図星だった。

あの石が見つかるまで、何度でも探すつもりだった。

そんな行為、熱を出して寝込んで、命を縮めるようなものだ。

二人だけでなく、清音と仙太郎も一緒になって探してくれた。

「あったーーーー!」

清音が、日の光に煌めく翡翠を掲げた。

「よかった・・・・・」

キラリと眩しく、緑色に光る翡翠を見て、浮竹は安堵したのか倒れてしまった。

「浮竹!」

その体は、すでに熱をはらんでいた。

「急いで着換えと毛布を!布団をしいて、タオル忘れないで。あと解熱剤と白湯を」

浮竹を池から抱き上げる。

冷え切ってしまったその体に、心が痛んだ。こんなことなら、喧嘩するんじゃなかったと。

まさか、浮竹が翡翠の石を投げるなんて思わなかったのだ。いつも身に着けて、大切にしてくれていたのに。

だから、余計に怒ってしまった。

新しい翡翠の石は見つけたけれど、まだ買っていなかった。あの翡翠の石は特別だった。浮竹に贈ったものの中で、多分一番大切にしてくれていた。

「浮竹、しっかりしろ!」

濡れた衣服を着換えさせて、濡れた髪と体をタオルでふく。厚めの夜着に着替えさせて、その凍えるような体温をあげるために毛布にくるんで、布団の上に寝かせた。

「翡翠見つけたぞ・・・・・すまなかった京楽。俺が悪かった」

「もう怒ってないよ。翡翠の石を見つけてくれた清音ちゃんと、手伝ってくれた仙太郎君に、元気になったら感謝の意を伝えるんだよ」

「ああ・・・・・」

用意されていた解熱剤と白湯を飲んで、その日浮竹はそのまま眠ってしまった。

そして、京楽が恐れていた通り、次の日には高熱を出して臥せってしまった。

京楽は、浮竹の傍にいたが、ふと思いついて細工師の元を訪れた。翡翠の石を、ペンダントにしたのだ。つけはなしが可能で、ただのお守り石として持つこともできるし、なくさないようにペンダントとして首からかけることができる。

「京楽・・・・いないのか?」

雨乾堂に帰ると、いつも京楽がいるせいで、姿を探している浮竹がいた。

「ここにいるよ。翡翠、ペンダントにしたから。チェーンを外せば、ただのお守り石として持つこともできるから」

「うん・・・・・・・」

浮竹は、京楽の手で首に翡翠のペンダントをかけてもらった。

「見つかってよかった・・・・・」

「もう、あんあ無茶しちゃだめだよ」

「ああ・・・・・」

冬の時期に池に入るなんて、高熱を出して命を縮ませるような行為だ。

「まだ熱あるみたいだから、大人しくしてなさい」

「京楽・・・・」

「なんだい?」

「嫌いっていってごめん」

「もういいよ。気にしてないから」

額に口づける。

翡翠をなくした日、浮竹は怒っていたがやり過ぎたと思った。翡翠をなくされた日、数年ぶりの喧嘩もあってが許せないと思ったが、すぐに想いは変わった。

結局、どんなに喧嘩しても元の鞘に収まるのだ。

二人は、永劫に近い時間を共に過ごしていく。

極上の翡翠の石は、キラキラと、いつまでも浮竹の瞳のように輝いていた。

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銀杏

銀杏の木の下で、銀杏(ぎんなん)を拾った。

1つ、2つ、3つ・・・・。

ちらちらと、銀杏が黄色い葉を落とす。風は少しだけ冷たくて、でも身震いを起こすよな寒さでもなくて。

夏の残暑も過ぎ去り、過ごしやすい季節になった。それでも真昼になって晴天にでもなれば、じわりとした暑さを覚えた。

尸魂界にきた秋の訪れは、少し早かった。現世ではまだ猛暑がうだるような暑さを大気に含ませているというのに、尸魂界ではもう紅葉がはじまり、銀杏などの木は葉を黄色くしてそして風に揺れて葉を落としていく。

「そんなに銀杏ひろってどうするの?」

いつも傍らにいる男が、不思議そうに浮竹の行動を見ていた。

4つ、5つ・・・・拾っているうちに数が分からなくなって、それでもいいかと、大地に影を落とす。

「茶碗蒸しに入れてもらおうと思って」

浮竹の答えに、なるほどと京楽が納得した。

13番隊の夕餉はけっこう凝っていて、美味いからだ。茶碗蒸しもでてくるのだろう。8番隊の食事は、京楽が金をだしているせいもあって豪華だが、13番隊の食事も浮竹のためにと、一部資金援助をしているせいで、他の隊では味わえないようなメニューがついてくる。

甘いものと果物がすきな浮竹のために、いつも昼食と夕餉にはデザートがついてきた。

「そんなこと言われたら、茶わん蒸しが食べたくなってきたよ」

「どこかに、食いにいくか?」

「それもいいねぇ。でも、銀杏の食べすぎには注意だよ。食中毒を起こすからね」

「それくらい、知っている」

京楽の言葉に、銀杏を拾っていた手を止める。

自分と京楽の分くらいでいいのだ。そんなにたくさん拾い集めても、捨てるだけになる。

でも、清音と仙太郎の分も作ってもらうかと、また銀杏を拾いだす。

「そういえば、そろそろ柿が旬だね」

「ああ、そうだな」

柿はあまり甘味がないので好きではないが、雨乾堂のすぐ近くに大きな柿の木があった。それによじのぼり、京楽はいくつか柿をもぎとると、浮竹に向かって投げる。

なんとか無事にキャッチすると、拾い集めていた銀杏を零してしまった。

また後でとりにくるかと、雨乾堂の中に戻った。

京楽は、柿の実にそのままかじりついた。

皮ごと食えるからと、京楽は次々と食べていく。

浮竹も、京楽の真似をした。柿を口にすると、林檎とは違うが、しゃりっとした食感が口いっぱいに広がり、ほのかな甘みが舌を刺激する。

今にも落ちそうなほどに熟して柔らかくなった柿よりは、硬さを保ったままの柿のほうが好きだった。

3つほど食べると、夕餉が近いことを思いだして柿を食べるのをやめた。

「京楽、夕餉食べていくだろう?」

隣でまだ柿をほうばっている京楽に聞くと、

「食べて帰る」

という答えが返ってきた。

仙太郎を呼び出して、京楽の分まで夕餉を出してもらうように伝える。

一番困るのは、食事を任させている厨房係なのだが。流石に隊長である浮竹の食事は特別で、他の隊士のものより値の張るものばかりが用意されてある。それをいきなり2人前にしろなどと、まさに厨房係を泣かせるようなものだ。

分かってはいるのだが、京楽と時間を共に過ごしたくて、浮竹は外食する時以外は大抵、雨乾堂に遊びに来た京楽と夕餉を共にする。

1時間ほどして、夕餉が運ばれてきた。

茶碗蒸しがついていた。それは嬉しかったのだが、デザートの果物を見ると、柿だった。

「はぁ・・・・柿はもういい・・・・」

「同じく」

腹がすいているままに柿を食べていた京楽は、もう柿は見たくないのだと避けていた。

茶碗蒸しを口にすると、流石に隊長クラスの食事を任されている厨房係の腕のよなさがわかった。

「僕の隊も、お金を出しているからけっこういい料理出してくれるんだけど・・・この茶碗蒸しのできは、真似できないね」

茶碗蒸しの中には、銀杏が入っていた。

そういえば、広い集めた銀杏は結局落としてしまったままだ・・・そんなどうでもいいことを考えながら、夕餉を食してていく。

あまり食べない浮竹の食事の量は、京楽の分の3分の2くらいだった。

たくさん出しても残してしまうので、食事の量にも配慮があった。

夕餉を終えると、薬の時間だ。肺の病の薬の、漢方薬は、最近苦いものからシロップの味のついた甘いものに変わって、飲み辛くなくなった。

それが京楽のせいであるということは知っていた。

浮竹の給料の大半は親族へのもので消えてしまう。肺の病の薬にはけっこうな金がかかった。効果があるものは大抵苦い。
数回、苦いと零していたら、いつの間にか処方される漢方薬の苦い薬が甘い味のものに変わっていた。

そんな細かなとこまで配慮してくれる京楽の優しさに感謝しつつ、何も返せないでいる自分の無力さに溜息が零れる。

「俺は、お前の優しさに何を返せるだろう」

薬を飲み終えてそう聞くと、京楽はだらしない笑みを零した。

「「君」をもらえると嬉しいなぁ」

「人が本気で感謝いているというのに!」

京楽の脛を蹴り飛ばすと、その足を掴まれた。

ちゅっと、音をたてて足首にキスをされて、体のバランスが崩れる。床に倒れそうになったのを、手でひっぱられて京楽の腕の中に体がすっぽりと収まる。

「痛い、痛い!ひげあるのに頬ずりするな!」

「いいじゃない、たまには」

「おい、どこに手をいている!」

「気のせいだよ」

着物の裾から薄い胸板を触るように侵入してきた手をひねって、浮竹は抵抗しとうとするが、押さえつける力のほうが遥かに強くて、結局は京楽の思いのままにされてしまう。

「んっ・・・・・京楽」

「週に2回・・・・・ちゃんと守ってるよ?今日はその2回目の日だけど、いいかな?」

「今更了承をとるなっ・・・・・・」

長い白髪が畳の上に乱れて流れていた。

翡翠の目を閉じると、黒い京楽の瞳と目を閉じる瞬間、目線が合わさる。

上気した白い頬とか、乱れた死覇装からのぞく鎖骨のラインに、京楽の喉が鳴る。

「もう、好きにしろ・・・・・」

半ばやけになって、体から力をぬくと、布団を敷かれてその上に抱き寄せられた。

「愛してるよ、十四郎」

耳元で囁かれて、ぞくりとした。

お返しだとばかりにその肩に噛みつく。でも、それさえ快楽に変えてしまう京楽の動きに翻弄される。

「君は言ってくれないの?」

「・・・・・・俺も、愛している」

ひらりと、庭で銀杏の葉が零れ落ちた。

本当に、この男はどうしてこう、性欲があるのだろうかと、本気で謎に思う。この年で週に2回はかなりきつい。なのに、京楽は足りないという。

最近は浮竹が嫌がるのと体調がわるかったせいで、週1かそれ以下になっていたが、今は小健康状態なので、京楽も我慢した分貪りたいのだろう。

「銀杏・・・明日、拾わないと」

「今は僕以外のことは考えないで」

銀杏が、また葉を落としていく。

結局、拾い集められた銀杏なその存在を忘れられてしまい、庭の掃除をする仙太郎の手でごみとして処理されてしまうのであった。




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