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狂気

隊首会が終わり、解散となった。

卯ノ花と談笑している浮竹が、突然身を折った。

「どうしたのですか、浮竹隊長!」

「なんでも・・・・ごほっごほっ」

ここ3か月、全く発作が出ないので、周囲の者も安心していた。

それが、いきなりだ。

「ごほっごほっごほっ」

咳込んで、苦しげに息をしているかと思うと、口から大量の血をはいた。

「浮竹!」

傾ぐ体を、京楽が受け止める。

「着物が・・・・・」

浮竹が吐いた血で、京楽の値のはる女もの着物は真っ赤になった。

「そんなことはどうでもいいから!」

酷い発作であったが、たまたまそこに卯ノ花が残ってくれていたおかげで、回道ですぐに手当てをうけたことで、大事に至らずにすんだ。

浮竹の肺の病は、とても気まぐれだ。2~3か月発作をおこなさい小健康状態もあれば、毎日血を吐くような酷い発作もある。

浮竹は、手当てが早かったお陰で、京楽に抱き上げられて雨乾堂に帰宅した。

「隊長!」

「隊長、大丈夫ですか、京楽隊長!」

雨乾堂に戻ると、仙太郎と清音が心配そうにしていた。

地獄蝶を事前に飛ばしていたので、布団はすでにしかれていた。

「着換えを」

仙太郎がだしてきた着物で、京楽が浮竹を着換えさせた。

布団に横にして、タオルを湯につけて、口元を綺麗にふいてやる。血を吐いたせいで、浮竹の着ていた隊長羽織と死覇装は、もう使い物にならないだろう。

「今回の発作は酷かったからね。しばらく休養になると思う」

一度大量に吐血したその後は、数日吐血を続けたりする。もしくは、意識をなくしたままか。

代われるものなら代わってやりたいが、どうにもできない。

自分の無力さを痛感しつつ、京楽は浮竹の傍にいた。意識の戻らない浮竹のために、点滴が用意された。

数日に1回、卯ノ花が自ら様子を見にきては、回道で手当てをしてくれた。

仕事をこなして、午後~夕暮れ時まで、毎日京楽は浮竹の様子を見に来てくれて、傍にいてくれた。

そして、看病をする。それには、仙太郎と清音も舌をまくくらいだ。

1週間が過ぎた頃、やっと浮竹の意識が回復した。

「大丈夫かい?」

その言葉に、

「おはぎが食べたい・・・・あと苺大福」

というので、苦笑をこぼした。

「もう少しよくなったら、差し入れしてあげるから」

点滴の管が痛々しかった。

かわいそうなほどに細くなってしまって、まずは体力をつけるのが先だ。

流動食を口にして、次におかゆ、次に消化のいいメニュー、そして最後に普通の食事がとれるようになった。

その頃には起き上がることもできるようになっていて、京楽は約束通りおはぎと苺大福を差し入れた。

「全く我ながら嫌になる体だ」

「自分を嫌いにならないで」

その言葉に、翡翠の瞳は悲しそうではあるが、瞬く。

「大丈夫だ。もう数百年の付き合いになるしな」

「君が元気になってくれてよかったよ。好きだよ、浮竹」

抱き締めると、浮竹も抱き締め返してくれた。

「俺も好きだ、京楽・・・毎度毎度、すまないな」

「いいんだよ。君の病さえ愛しい。この気持ちに言葉があるならきっと狂気だね」

「俺も、狂おしいほどにお前を愛している」

「僕もだよ」

二人は、寄り添いあった。

互いが大切で仕方ないのだ。

それはまるで狂気に似た想い。







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熱Ⅱ

13番隊と8番隊で、合同の飲み会があった

「もっと飲んでください、浮竹隊長」

「ああ、すまない」

酒を注ぎたされて、浮竹はそれを飲んでからにしていく。

どうぞどうぞと、次々に杯に酒を満たされて、やや困惑気味の浮竹。

飲み屋の奥の方で、女性死神に囲まれていた京楽は、突然立ち上がった。

「ごめん。ここの勘定は僕がもつから、後は好きにして」

「あ、京楽隊長!」

「え~つまんないー」

女性死神の言葉を無視して、ずんずんと浮竹に近づいていく。

「京楽?」

小首を傾げる浮竹を、京楽は抱き上げた。

「うわ、なんだ」

「多分、熱あるよ。お酒はここまで」

「え、熱?」

「今は微熱だけど、このまま酒をのんでいたらきっともっと酷くなる」

浮竹自身も気づいていなかった。

自分の額に手をあてて、ああ本当に熱があると、驚いていた。

お開きにするには時間が早かったので、勘定は全て京楽がもつといって、隊長である京楽と浮竹は飲み会を後にした。

「どうして分かったんだ?」

「ただの感だよ。あと、君が僕の知らない死神たちに囲まれて酒を飲むのが、気に食わなかったのもあるかな」

席官クラス以外も出席していたので、京楽の知らない死神もたくさんいた。

「そういうお前は、女性死神たちに囲まれてでれでれしてたじゃないか!」

「あれはただの付き合い。僕が、浮竹以外に心を動かすはずないでしょ」

噛みつくようなキスをされて、浮竹は朱くなった。

「一人で歩ける」

「だめ。けっこうきついお酒飲まされてたでしょ」

「それは・・・・本当に、何もかもお見通しなんだな」

「君の隣で杯に酒を満たしてた男死神、前に後輩に手を出しかけて捕まった子だよ」

よく死神に戻れたものだと、京楽は呆れ声だ。

「え、それじゃあ・・・・・」

「きっと、君を酔わせていかがわしいことしようとしてたんじゃないの。君は鈍感すぎて疎いから、蜘蛛の糸に捕まる前に助けなきゃね」

「なっ。俺一人でも、どうにかなる」

「この前、薬もられて強姦されかけたの、忘れたの」

「それは・・・・・」

浮竹が口ごもる。

あの体験は、想い出すだけで恐怖を感じた。

ぎゅっと京楽に抱き着くと、京楽はため息をこぼした。

「君はほんとに無防備なんだから。自分の見た目がいいの、もっと理解しなきゃ」

「すまない・・・・・・」

「謝らなくていいよ。瞬歩で雨乾堂まで移動するよ。しっかり捕まっててね」

言葉通り、京楽に抱き着くつと、雨乾堂はすぐそこだった。

「ついたよ」

「ああ、すまない」

浮竹は一人で立ち上がろうとするが、京楽がそれを許さなかった。

「3席の子呼んで」

「ああ。清音ーーー!」

「はい、隊長!」

叫ぶと、すぐに清音は現れた。

「清音ちゃん、布団だしてくれるかな。僕の手、塞がってるから。あと解熱剤と白湯を」

「隊長、また熱出したんですか!」

清音は、布団をしくと、京楽の前に夜着を置いて、解熱剤を白湯をとりに隊舎まで戻っていった。

「着替えくらい、一人ででき・・・・・」

くらりと歪んだ視界に、嫌気がさした。

結局、京楽の手をかりて着替えた。着換えが終わった頃には、清音が解熱剤と白湯をもってきてくれた。

薬と白湯を飲んで、布団に横になる。

「京楽はどうするんだ。8番隊隊舎に戻るのか?」

「君の傍にいるよ。七緒ちゃんには、地獄蝶を飛ばしておくから」

「じゃあ、お泊りだな」

浮竹は、どこか楽しげだった。

よく京楽が泊まりにくるので、布団はもう一組あった。

それをしいて、京楽も横になる。

「今は、とにかく寝て熱下げて」

「分かった」

浮竹が眠りについたことを確認して、京楽もまた眠りにつくのであった。



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「隊長、隊長ねているのですか?」

文机につっぷしてしまっている浮竹のを起こそうとして、ルキアは止めた。

きっと、いい夢を見ているのだろう。

そう思って、そっと毛布をかけておいた。

その姿が、次の瞬間には消えていた。

「何やつだ!」

ルキアは腰の斬魄刀を抜く。

だが、すぐに鞘に戻した。

「京楽隊長・・・・・驚かせないでください」

部屋の隅で、毛布にくるんだ浮竹を抱き抱えた京楽が、静かに立っていた。

「ルキアちゃん、布団しいてくれる?」

「え、あ、はい」

どうしたんだろうと思いつつも、言われた通りに布団をしいた。

まさか、よからぬことを考えているのではとみていると、布団の上に浮竹を寝かせて、毛布とかけ布団をかけて、京楽はただ静かに傍にいた。

「氷、もらってきてくれるかな。あと解熱剤と白湯を」

「え。隊長、熱があるのですか?」

気づかなかった。

「うん。微熱より、少し高いかな。君もあと100年は浮竹と過ごすようになれば、分かるよ」

海燕のようにと言われて、ちくりと心が痛んだ。

13番隊の隊舎にさがり、砕いた氷をいれたビニール袋と、それを包むタオル、あと解熱と白湯をもって、雨乾堂まで戻ると、京楽が眠っている浮竹に、口づけしていた。

「はわわわわ!私は、何も見ておりません」

くすりと笑って、京楽が手まねきする。

ルキアの手をとって、浮竹の額を触らせる。

「熱い・・・・・熱、ありますね」

砕いた氷をさしだすと、それをタオルでくるんで京楽は浮竹の額の上に置いた、

「浮竹、浮竹・・・・・」

「ん・・・京楽?」

うっすらと目をあけた浮竹を助け起こして、上半身だけ起き上がらせる。

「解熱剤と白湯だよ。自分でのめる?」

「多分。眩暈が酷い・・・・」

薬を受け取ろうとして、ごほごほと咳込んだ。

「仕方ない子だね」

京楽は、解熱剤を口の中にほうりこむと、白湯を口にふくんで、浮竹の喉に流し込んだ。

「んうっ」

甘い声をあげる浮竹に、ルキアが真っ赤になった。

「自覚してないだろうけど、結構熱あるみたいだから。仕事は明日にして寝なさい」

「だが、納期が・・・・・・・」

「浮竹?怒るよ?」

「すまない」

しゅんとなって、横になる浮竹。

その額に氷をくるんだタオルを置いて、京楽はただ静かに浮竹の傍にいた。

どれくらい経っただろうか。

解熱剤に含まれる睡眠剤がきいたのか、スースーと静かな寝息が聞こえてきた。

「浮竹は、体が弱いのに無理するからね。熱があるのに無理に仕事をしたりするから、そういう時は遠慮なくしかってやってね」

「どうして、触ってもいなかったのに、隊長が熱を出していると分かったのですか」

「ただの感だよ」

意外な言葉に驚く。

「浮竹が熱を出して寝込んでる時の、顔色とか霊圧のささいな乱れとか・・・まぁ、ほとんどが感だけどね。たまに間違えて、元気な浮竹を寝かしつける時もあったね。主に院生時代とかに」

懐かしそうに話す京楽に、院生自体の浮竹に興味をもった。

「お二人は、一緒にいるようになって数百年だと聞きますが、嫌になったりするときはないのですか?」

「ないよ」

即答だった。

「僕は、誰より浮竹を大切にしているからね」

そう言って、ルキアの前で浮竹の長い白髪に口づける。

「この髪だって、僕が伸ばせっていって、浮竹が伸ばしてくれてるからね」

初耳だった。

「院生時代は短かったんだよ」

「そうなのですか・・・・・・」

少しばかり院生時代の二人のことを聞いて、改めて二人の絆の深さをしるルキアであった。









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花の神

朝になった。

京楽の寝所で起きる。いつものように、何もしないでただ一緒に眠っただけの朝。

チチチチチチ。

小鳥の鳴き声が聞こえて、浮竹は夜着のままベッドからおりて、小鳥用のえさをいれた皿を、いつもの窓辺の下においた。

チチチチチ。

小鳥は、シロとクロと、あと二羽いた。

「ヒナが生まれたのか!」

二羽のヒナは、シロとクロから餌をねだり、大きな口をあけてぴよぴよと鳴いていた。

「おい、京楽!」

浮竹は、京楽を起こした。

「んー今何時」

「それより、シロとクロがヒナを連れてきたんだ!」

「えっ、ヒナかい?」

京楽も興味をそそられたようで、そっと窓辺の下を見る。二羽のヒナは精一杯口を大きくあけて、餌をねだっていた。

「あと半月もしないうちに、巣立ちだろうねぇ」

「そうだな」

この間、綿をおいておいたら、巣作りのために運んではいたが、あれからもう1か月はたつのだろうか。

卵を産んで、ヒナが育ち、巣立ちを目の前にしていた。

「時間が過ぎるのって、結構早いね」

「ああ」

このまま生き続ければ、いずれシロとクロとも別れがくるだろう。でも、その子供たちがいる。しっかりと絆は受け継がれていく。

「今日の予定は?」

「今日は何もないよ」

「珍しいな」

「たまには総隊長にも休暇がないと、やってけないからね」

京楽の、総隊長としての仕事を一緒にすることが多い浮竹には、嬉しいことだった。

いつもは京楽が総隊長としての仕事に追われて、日が落ちる頃に自由になる。昔のくせで、仕事をほっぽりだして浮竹をでかけることはあったが、翌日にはその前の日の分も仕事に追われて、夜になるのだ。

「何する?」

「さぁ、休日だと思っていなかったから、いつものように日番谷隊長のところに遊びに行こうかと思ってた」

「じゃあ、二人で遊びに行こうか」

「ああ、そうしよう」

総隊長が、10番隊の執務室に遊びにいくというのも変だが、とにかく二人は日番谷のところにやってきた。

「何の用だ、この暇人のおっさんどもが!」

日番谷は、京楽と浮竹の姿を見ると、眉間にしわを寄せた。

「まぁまぁ、いいじゃないの日番谷隊長」

京楽が、松本のいれたお茶をすすりながら、茶菓子として置かれていたわかめ大使を食べる。

「このわかめ大使も、大部尸魂界に浸透したねぇ」

朽木白哉が考案したわかめ大使というお菓子は、見た目のせいであまり人気がなかった。浮竹がよくもらいにくるので、浮竹を通じて尸魂界に浸透したといっていいだろう。

「俺は、昔から好きだぞ、このわかめ大使」

あんこがくどくなくて美味いのだと、浮竹はいう。

「仕事でもしてろよおっさんども」

「いや、それが今日は仕事のない日なんだ」

浮竹が、お茶をすする。すでに、マイ湯呑・・・・専用の湯呑があるくらい、日番谷の執務室に出入りしていた。

「菓子食って茶を飲んだら帰れ。俺は用があるんだ」

「まぁまぁ、そう言わずに・・・・・・・・」

京楽が、外から感じる霊圧ににまにましだした。

「これだね?」

小指を立てる。・

「うっせぇ!」

京楽の頭を、どこからもちだしたのか分からないスリッパではたいて、日番谷は執務室の扉をあけた。

「シロちゃん、こんにちわ・・・・って、京楽総隊長に浮竹元隊長!?」

小指の意味に、遅まきに浮竹が気づく。

「すまない、デートがあるならそうはっきり言ってくれ日番谷隊長!」

「ななななな、べ、別にデートじゃねぇ!」

にまにましている京楽を引きずって、浮竹は10番隊の執務室を後にした。

することがなくなって、二人で甘味屋にいく。日番谷と雛森も入ってきたので、二人して遠くの席に移動して、若いカップルを見学する。

分かったことは、雛森は思っていたよりよく食べるのと、日番谷は抹茶アイスばかり食べていた、ことくらいだろうか。


午後になった。

「暇だな」

「暇だね」

二人して、木陰の下で寝転んで、あまりの暇さに午睡をはじめた。

「京楽総隊長!浮竹隊長!」

名を呼ばれ、ゆり動かされて、目覚める。

「ルキアちゃん?」

「ん、朽木か?」

「あたしもいるよー」

苺花と手を繋いで、買い物帰りらしかった。

「こんなところで寝ていると風邪をひきますよ」

「いやぁ、あまりに暇で」

「同じく」

「そんなに暇なら、我が家にきますか?歓迎します」

席官クラスの者たちの屋敷が並んでいる通りに、ルキアの家はあった。恋次の金では買えるはずもない大きさに、朽木という名のもつ意味を知った。

「今は、屋敷の者はいませんので・・・・」

きょろきょろと、ルキアの家の中を見ていく。いたるところに、チャッピー人形が置いてあった。

「ここ、あたしの部屋!入っちゃだめ!チカさんにもまだ見せてないんだよ」

苺花が通せんぼするので、その部屋には入らなかった。

談笑していると、時間が経つのも早くて、恋次が帰宅してきた。

「うわっ、京楽総隊長に浮竹元隊長!なんでこんなとこにいるんすか!」

「いやぁ、あまりに暇だったのでお呼ばれしちゃったの」

「右に同じく」

京楽と浮竹は、阿散井家の団欒にまじって、夕食を食べさせてもらい、1番隊の隊首室に帰ってきた。

湯あみをすませると、もう9時を過ぎていた。

「今日は、日番谷隊長と暇森副隊長のデートも見れたし、阿散井家で楽しく過ごせたし、悪くない一日だった」

浮竹の長い、膝裏まで伸びてしまった髪をドライヤーで乾かしながら、京楽も頷く。

「悪くない一日だったね」

「こんな平和もいいものだな。暇すぎるのはあれだが、明日は久しぶりに朽木のところに遊びにいこうかな。仙太郎と話しもしたいし」

「僕の仕事が終わるまで、待ってくれるかい?」

「勿論だ」

浮竹は、そう笑みを零した。

今はもう雨乾堂はない。そこは、死んでしまった浮竹の墓になっている。

まだ、自分の墓にはいったことがない。

あの墓の前から、今の浮竹は出てきた。花の神に、新しい命を与えられて。

あの墓にいけば、自分が消滅しそうな気がして怖いのだ。

だから、わざと避けている。それを知ってか、京楽も浮竹の墓参り、という行為をやめてしまった。

「今度の休みの日には、山じいの墓参りにいこうか」

「ああ、そうだな」

京楽は、浮竹の墓参りに行こうとは言わない。今ここに、浮竹が生きて動いているからだ。

次の休みがいつになるか分からない。

でも、いつか、と思う。

自分の墓を見て、一区切りつけたい。

赤子の頃、花の神の愛児として祝福を受けた。その花の神の力で生き返った。神掛をしたことに悔いはないが、京楽を残して逝ってしまったことにはとても後悔している。

花の神に愛され、浮竹は生きる。

今を。


ふと、花の神は目覚めた。存在をなくし、意識をなくし、名をなくしていた、

「浮竹十四郎・・・・・・・・」

花の神は、愛児の名を呼ぶ。

それにこたえる者は、誰もいなかった-------------。


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怒った浮竹さん

「日番谷隊長~」

「あーもううっせーな、朝からなんだよ」

10番隊の執務室にやってきた浮竹は、何かの包みをもっていた。

「お弁当をつくってみたんだ。味見してくれ」

「はぁ?浮竹、お前が作ったのか?」

「そうだが」

「お前、料理なんてできたのか?」

意外だと見ると、少し照れくさそうにしている浮竹がいた。

「普通だ」

「自分で味見しろよ」

「したけど、よくわからない」

どういう弁当だよ。

包みをあける浮竹。日番谷は、どんな恐ろしい弁当が待っているのかと身構えていた。ぶくぶく泡立つ液体や、ゲル状のものが入ってたらどうしようか、胃薬常備してたかとか。

ぱかっと中をあけると・・・・・・京楽の顔があった。

「キャラ弁かよ。しかもおっさんの」

「ああ・・・ただの海苔だから」

ご飯の上にかかれた京楽の顔は、海苔でできていた。おかずを見てみる。卵焼き、タさんンウィンナー、焼きそば、ツナとほうれん草のあえもの、ポテトサラダ。

あまりにも普通・・・いや思っていた以上の弁当に、日番谷が声を出す。

「これ、本当に俺が食っていいのかよ?」

「ああ。感想がききたい」

「味がすげぇとかだったらどうすればいいんだ」

「食べ残してもいいし、捨ててもいい」

まずは、いまいましい京楽の顔から食ってやった。海苔の味がしたが、ご飯は炊きこみご飯で上品な味がした。

「けっこううまい・・・・?」

卵やきを食べてみる。

出汁巻き卵らしく、料亭の味がした。

「美味い!?」

気づくと、全部平らげていた。

「本当か?」

浮竹が顔を輝かせる。

「浮竹、お前料理できたんだな」

「いや、子供の頃たくさんの弟や妹はいたからな。両親は共働きだったし、たまに兄弟たちの分まで飯をつくることがあったんだ」

「それ、料理ができるで、いいんじゃねーか?」

嬉し気な浮竹に、自然と日番谷の表情も綻ぶ。

「あとは、同じ弁当をつくって、涅マユリの薬を入れるだけだ・・・・・」

「おい、ちょっとまて。今、聞き捨てならない言葉が聞きこたぞ」

「いっそ、ヒ素でも盛るか?」

「まてまてまて。何故そうなる」

浮竹を止めようとすると、浮竹はゆらりと霊圧をほとばしらせた。

「あの男、涅マユリの性別転換の薬を俺に盛りやがった。おまけに最後までしやがった・・・・同じ目に、あわせてやる!」

ブーーーー!

日番谷は、お茶を吹き出した。

「せ、性別転換の薬?」

「しかも中だししやがった」

ブーーーー!

日番谷は、またお茶を吹き出していた。

だんだんと、状況が読めてきた。

浮竹は、京楽に騙されて性別転換の薬を盛られ、おいしくいただかれてしまったのだ。

「待て、だからといって殺すのはやばいだろ!」

「女にして、飢えた流魂街の男どもの巣にほうりこんでくれる!」

女性化した京楽を想像してみる。もじゃもじゃの京楽に胸と少し大きめのけつをつけたしてた。

想像するだけで、寒気がした。

「浮竹ぇ~」

情けない声が聞こえてきた。

「・・・・・・・・・・」

浮竹は、それを無視する。

「そんなに怒らないでよ。僕が悪かったってば。もう薬は使わないから」

「・・・・・・・・・殺す」

双魚理を解放する浮竹の霊圧に、日番谷は身震いした。

「なんて霊圧をもってやがんだ・・・・・俺以上じゃねーか」

抜刀して、切りかかる浮竹は本気で怒っていた。花天狂骨でなんとか受け止める。

「くっ、こうだ!」

何かのスプレーを、浮竹にふきかける京楽。

浮竹の霊圧が急激に弱まる。スプレー状の催眠薬だった。

「ずるいぞ京楽・・・・・・」

くたりと、浮竹の体から力が抜けてその体が頽れる。

それを抱きとめて、京楽は愛しそうに浮竹の髪に口づけた。

「おいおっさん!」

さすがに浮竹がかわいそうで、日番谷は険しい表情になっていた。

「ああ、浮竹がなんかいってたんでしょ。酒でに酔った時に薬使ってもいい?って聞いたら許可得たから、君が思っているほど、酷いことはしてないよ」

「でも、性別転換の薬なんて・・・・・・」

「君も興味あるの?」

「あるわけねーだろ!」

「浮竹は僕を女にして復讐したいみたいだけど、あいにく僕は女になったことはあるけど、あんまり美女じゃなかったからね」

「おっさん、自分自身で薬試したのかよ」

ちょっとだけ京楽が女になったところを見てみたいと思った。

「そりゃそうじゃない。愛しい浮竹に薬を使う前に、自分で試してみたさ」

ほらこれと、携帯の写真を見せられて、思っていたよりも美人な京楽の姿に、驚く。

「で、こっちが浮竹」

携帯で写真を見せられる。

かなりの美女だった。白い肌に白い髪、上気した頬に、桜色の唇・・・・基本構造は、今の浮竹と変わらないが。

胸とかぼんばーで、これが浮竹かと思うと、その美貌になんとなく納得がいく。

「日番谷隊長にあげるよ、これ」

ぽんっと渡された。

ラベルに女体化する薬と書いてあった。

「こんなもんいるかああああああ!蒼天に座せ、氷輪丸!」
















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浮竹が二人

「俺が本物だ」

「いいや俺だ」

二人の浮竹は、互いを睨みあう。

「いやぁ、両手に花だね」

右と左に浮竹を並べて、ご満悦気味の京楽に本物の浮竹は鳩尾に蹴りをいれた。

「いたたた」

「大丈夫か、京楽!」

偽浮竹が、京楽に駆け寄って、肩をかした。

「いやぁ、君が本物かな?」

「そうだぞ、京楽」

「違う、京楽そいつは偽物だ」

「何を言う。偽物はお前のほうだろう」

偽浮竹は、京楽に抱き寄せられていた。



事の起こりは数時間前。

涅マユリに、半ばさらわれるように12番隊の技術開発局に連れられて、偽浮竹を見せられた。

「これは・・・・?」

「君の髪の細胞から作り出した霊骸だヨ。いってしまえばクローンみたいなもんだ」

「お前、勝手にそんなこと!」

浮竹は怒ったが、他にも違う隊長のクローンが並んでいたし、京楽のクローンも見つけた。

「今日は、このクローンで君の恋人が、本物か偽物か区別つくか試そうと思ってネ」

「ちょっと待て!クローンってことは、声も姿かたちも、霊圧まで同じなんだろう!」

「ついでにいうと、記憶もだヨ。まぁ、中に入っている義魂丸のせいだが。ただ分かりやすいように、性格はちょっと変えてあるがネ」

性格が少し違うくらいで、はたして京楽には分かるのだろうか。

でも、京楽ならきっと俺が本物と分かってくれる。

そう思って、クローンを起動することに同意をしたのだ。




京楽は、二人いる浮竹に口をぽかんとあけて間抜けな顔をしていた。

「こっちが、霊骸の、いわゆる偽物だ」

「京楽、大好きだ!」

今にも京楽に抱き着かんばかりの偽物を、浮竹が止めた。

「こっちが本物ならいいなぁ。素直で、かわいい」

ぴき。

浮竹の頭に血管マークができる。

「京楽、お前は偽物のほうがいいのか?」

「いやだなぁ。そんなことないよ。僕の愛する浮竹は君一人・・・・・」

偽物が、瞬歩で本物の浮竹を連れて雨乾堂まできてしまった。

「お前、何を考えている!」

偽物を糾弾すると、偽浮竹は

「今日から俺が浮竹十四郎だ。もう、あんな試験官の中はごめんだからな。たとえ義魂丸とはいえ、俺はお前の記憶をもっている。京楽は、俺のものだ」

といって、本性を現した。

姿形、声、指紋から霊圧、霊骸に入っている義魂丸は同じ記憶をもつのだ。偽浮竹のきもちも分からないでもないが、譲れないものがある。

性格が少しひんまがっている・・・・・これなら、きっと京楽も分かるはず。

そう思った。

瞬歩で追いかけてきた京楽は、どっちがどっちだ分からなくて困惑気味だった。

「俺が本物だ!」

「いいや俺だ!」

どちらがどちらか分からなくて、京楽は問いをかけた。

「浮竹が、欲情したときにするくせは?」

「そんなの言えるか!」

「唇をなめることだ」

ぺろりと、偽浮竹は自分の唇をなめた。

「ふむ・・・・じゃあ、僕の名前を下で呼ぶときはどんな時?」

「お前、そんな恥ずかしいこといえるわけないだろう!」

「かんじたりいってるとき」

「ふむ・・・・・」

京楽が、あごに手をやる。

「俺が本物だ」

「いいや俺だ」

二人の浮竹は、互いを睨みあう。

「いやぁ、両手に花だね」

右と左に浮竹を並べて、ご満悦気味の京楽に本物の浮竹は溝降りに蹴りをいれた。

「いたたた」

「大丈夫か、京楽!偽物は酷いやつだな。京楽を蹴るなんて」

偽浮竹が、京楽に駆け寄って、肩をかした。

「いやぁ、君が本物かな?」

「そうだぞ、京楽」

「違う、京楽そいつは偽物だ」

「何を言う。偽物はお前のほうだろう」

偽浮竹は、京楽に抱き寄せられていた。

かっと、全身が沸騰しそうな怒りを覚えた。

「もういい、お前は消えろ」

偽物の自分を解放した斬魄刀で葬ろうとすると、京楽が制してきた。

「京楽、お前俺が本物だって分からないのか!」

ショックだった。

たとえ同じ姿形でも、魂が違うのだ。分かってくれると思っていた。これはただの自惚れなのだろうか。

涙が零れそうになった。

「消えろ!」

偽浮竹が、偽の斬魄刀で本物の浮竹に切りかかった。

「なぜ・・・?京楽?」

その体を、京楽の花天狂骨が貫いていた。

「浮竹はね、恥ずかしがりやだから、素直に言葉にしない時があるんだ。おまけに足癖が悪くて、怒ると蹴ってくるんだよ。それにね、君からは花の香がしない」

かつて赤子の頃、花の神、別名椿の狂い咲きの王に愛され、祝福を受けた浮竹からは、髪や肌から甘い花の香がした。

「そんなことで・・・・・俺も同じ、「浮竹」なのに・・・・」

「君は違うよ、同じ姿をもつただの霊骸で、浮竹の記憶をもつただの義魂丸が君の正体」

霊骸の口の中から義魂丸を出して、花天狂骨で粉々に砕いた。

魂をうしなった浮竹の霊骸は、さらさらと灰になっていった。

「京楽!」

浮竹は、涙を浮かべて京楽を思い切り抱きしめた。

「いやぁ、両手に花もいいけど、君を殺そうとするなんてばかな子だね」

「いつから分かった?俺だが本物だって」

「最初からだよ。君からは甘い花の香がしたけど、偽物からはしなかった」

「なっ、全部わかっててあんなことを言ったのか」

浮竹は怒って、京楽の頭をなぐった。足を蹴ると、京楽は

「本当に足癖の悪い子だねぇ」

と言って足首をつかみ、噛みつくようなキスを足首にした。

「京楽・・・」

「浮竹、大好きだよ。偽物の君なんていらないから。どんなに俺好みでも、本物以外はいらない」

浮竹を抱き寄せて、口づける。

「うんっ・・・・・」

舌が絡むみあう。口腔を思う存分蹂躙されて、浮竹はたっているのがやっとだった。

「雨乾堂もそこだし、ちょっと、ね?」

情欲したらしき京楽の首に手をまわし、布団を出すとその上で性急に交わった。

「ん・・・春水っ」

いった時に、京楽の下の名を呼んでいた。そして、まだ足りないのだと自分の唇を舐める。

「十四郎。欲情してる?」

「そんなこと、聞くなっ・・・・ああっ」

貫いて揺さぶられて、生理的な涙が流れた。

「十四郎、愛しているよ・・・・・・」

最奥を貫くと、京楽の熱が浮竹の腹の奥で弾けた。

「ああっ!」

浮竹たもう二度ほど精を放ったが、京楽はまだ一回だけだ。硬さを失わない京楽の雄に侵されて、浮竹が甘い声をあげる。

「ああん」

「君の花の香は、くらくらするね」

「んっ・・・・俺のせいじゃない・・」

生まれた赤子の頃、両親が病弱な子供に少しでも長生きしますようにと、花の神に捧げられた。

花の神に愛されて、浮竹は肌や髪から、自然と花の香がするようになっていた。

その甘い香りに、理性なんてとっくの昔に飛んでいた。

二人してぐずぐずになるまで溶け合った、

もう二度と偽物など作らないように、涅マユリに強くいい聞かせようと決めて、二人は泥のように眠るのだった。

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インフルエンザⅡ

京楽が完治したと思ったら、今度は浮竹がインフルエンザにかかった。

高熱を出して、臥せるのを京楽は看病していた。

「何か食べるかい?」

「なにも食べたくない・・・」

高熱にうなされて、食欲もない。全身がだるくて関節が痛くて喉も痛くて、何より熱のせいで世界が回るようだ。

「熱があるからって、ちゃんと食べなきゃだめだよ。お粥、もってくるから」

京楽は13番隊舎の厨房から、お粥を作ってもらってそれをもって帰ってきた。

浮竹は、3口ほどおかゆを食べて、それ以上は受けつけないようで、結局は雨乾堂にいながら、点滴を受ける羽目になった。

「点滴は楽で・・・いいな・・・・」

ふと。高熱でうなされいるときに、たまに起きてはおかゆを食べる体力すら失っているので、点滴でなんとかなるのは楽だと思った。

「インフルエンザだからってバカにしちゃいけないね。うつしちゃってごめんね」

京楽がかかったインフルエンザも、高熱をだしたが、点滴をされるほど重症ではなかった。

多分というか確実に、自分のインフルエンザを浮竹にうつしてしまったために、京楽は申し訳なさそうにしていた。

「京楽が、インフルエンザになってるのに、会いにいったのは俺だから・・」

京楽は、インフルエンザで臥せってる間は、医者から面会をしないようにと言われてそれを守り、自分の屋敷で大人しくしていた。
浮竹がやってきていたのは知っていたが、うつしてはいけないと、医者の許可がおりるまで面会しなかった。

でも、結局はうつしてしまった。

高熱でうなされている浮竹を見るのは、京楽でも辛かった。

「桃が・・食べたい・・・・・」

ふと、浮竹がそう言った。

「桃だね!」

京楽は、雨乾堂を出ると、瀞霊廷中の果物屋を探したが桃は置いてなかった。治安の悪い流魂街の外れに、季節外れなのに置いてある桃を買おうとして、大金をふっかけられた。

早く浮竹に桃を食べさせてやりたくて、もっていた金の板を放り投げた。4人暮らしなら、半年は食うに困らない額だった。

その額をみて、殺し合いがはじまる。

どうでもいいのだと、その場所を瞬歩で去った。

「浮竹!」

雨乾堂に戻ると、浮竹は解熱剤がきいたのか眠っていた。

桃を氷の入った水の中に沈める。いつでも食べれるように、冷やしておいた。

「ん・・・・きょう・・・く?」

意識を取り戻した浮竹の額に手をあてる。

体温計ででも寝をはかると、40度はあった熱が38度まで下がっていた。

それに、心底ほっとした。

まだ熱はあるが、なんとか4番隊の世話になることは避けれそうだった。

「桃、食べるかい?」

「バナナがいい・・・・・アイスクリームも食べたい・・・・プリンも食べたい」

食欲を取り戻したらしい浮竹の願いを、京楽は全部叶えてやるつもりだった。

でも、最初に桃だ。

一口サイズにカットしていったものを、口元にもっていくと、浮竹は小さく口をあけてそれを食べていく。

「よく冷えていて、うまいな・・・・・」

日番谷隊長を頼ってもよかったのだが、京楽は自分のもつ氷室から氷をだしていた、

額には、冷えピタシートがつけられていた。

先ほど、現世に買いにいかせたのが、やっと帰ってきたのだ。なんでも、虚に襲われたらしくて帰還まで数日を要した。

桃を食べ終わらせると、京楽はバナナとアイスとプリンを手に入れるために、出て行こうとする。

「京楽、傍にいてくれ・・・・・」

珍しく、甘えてくる浮竹を放置できなくて、乱れた布団を直してやり、畳の上に寝転がった。

ちょうど、浮竹を目線が合わさるように。

「ちゃんとここにいるからね」

「ああ・・・・・・・」

浮竹に、薬を飲ます。苦いのが嫌いなので、シロップで味付けした甘い薬をやると、それを飲んだ。

「この薬、甘いな・・・」

「君のために特別に調合したやつだからね」

「金がかかっただろうに」

「いいんだよ、そんなことは。今は熱を下げて元気になることを考えて」

「すまない」

「謝らないで。いいから、寝なさいな」

まどろんでいく浮竹を見届けて、京楽はバナナにアイスにプリンを入手する。部下を現世にいかせて買ってきてもらった。」」

また氷室から氷を出して冷やしておく。アイスは溶けないようにと、日番谷隊長に頼みこんで氷漬けにしてもらった。13番隊には他に氷雪系の斬魄刀をもつルキアもいるが、ルキアは今は現世だ。

次に目覚める頃、浮竹は熱もすっかり下がって、布団から出ていた。

「まだ寝てなきゃだめじゃない!」

「いや、もう大丈夫なんだ。熱が下がれば、もう平気だ」

「だめだよ。昨日まで、点滴を受けていた体なんだから。せめて明日までは安静にしないと!」

京楽に怒られ、様子を見にきた清音と仙太郎にも同じことを言われて渋々布団に戻る。

暇だという浮竹のために、いつの日だったか、読み聞かせたように、図書館から本をかりてそれを朗読してやった。

翌日、本当に全快したようで、朝餉をおかわりする浮竹の姿に苦笑をこぼす。

よほど腹がへっていたのだろう。

いつもなら、普通の人の3分の2くらいしか食べない浮竹用のご飯が、大盛になっている。

「隊長、もう大丈夫なんですね?」

「ああ、清音には心配をかけた」

「隊長が寝ている間に、仕事も雨乾堂の掃除も鯉に餌をやることも全部俺がしてました」

「ありがとう仙太郎」

「ちょっとこのクズイモ男!あたしだって、掃除したんですからね!

「うるさいなこのドブス!」

「なんですって、このハゲ!」

「誰がハゲが鼻くそ野郎!」

「それはこっちの台詞よウルトラ鼻くそ!」

雨乾堂で、いつもと変わらぬ日常がやってくる。

言い争う二人が面白かったので、浮竹も京楽も笑っていた。





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インフルエンザ

京楽が、インフルエンザにかかった。

七緒がまずインフルエンザになって、それがうつって京楽までダウンしたのだ。

本来なら、看病するのはもっぱら京楽のほうなのだが、今回ばかりは浮竹が京楽の看病をしていた。

熱は大分下がり、あとは完治するまでというところまできた。

「七緒ちゃん、大丈夫かな?」

自分より部下のことを考える京楽の優しさに、流石だとは思いつつも、京楽もインフルエンザになって寝込むこともあるのだなと、知らされた。

「よし・・・・・熱は平熱だ。あと1、2日寝てれば完治だ」

体温計で体温を測ると、36.8℃だった。微熱に届くか届かないかのラインだが、症状自体はもうほぼないので、あと完治するのを待つだけだった。

「浮竹、すまないねぇ。いろいろ迷惑かけちゃって」

「何、いつも俺の看病をお前がしてくれているからな。こんな時くらい、素直に甘えとけ」

「じゃあ甘える。林檎が食べたいねぇ。うさぎさんにカットされたやつが」

「はいはい、わかったわかった」

京楽の屋敷の厨房へいき、林檎をもらってナイフをかしてもらった。

京楽が見ている前で、林檎の皮を剥いていると、指まできってしまった。

「いたっ・・・・・」

「ちょっと、大丈夫?」

京楽が、ベッドから起き上がった。

「大丈夫だ。少し、切っただけだから。俺はあまり器用じゃないからな」

切った親指を口にふくむ前に、京楽の口にふくまれた。

「京楽!」

「僕のせいだからね。いつもなら僕が手当てするんだけど、まだ動かないほうがいいと思うから」

京楽が、使用人を呼んだ。

「旦那様、どうなされました?」

妙齢の美女がやってきた。

「浮竹が怪我をしたんだ。ちょっと、手当をしてやってくれないかい」

「かしこまりました。こちらへどうぞ」

案内されるままに、広い京楽の屋敷の廊下を進む。

「こちらで、お待ちください」

少しまっていると、アルコールで消毒された。しみるその痛みに、思わず声がもれそうになった。、

血止めの粉をぬられて、ガーゼをあてられた。

「絆創膏でいいのに」

「いけません。旦那様の想い人に傷が残ったら、私がしかられます」

京楽との関係を隠しているわけではないが、さすがに家人にまで知られていると、恥ずかしくなる。

「京楽、お前どこまで俺との仲を広めてるんだ?」

ベッドに半身を起き上がらせて、林檎をかじっていた男に詰め寄る。

「え、両親とかも知ってるよ」

眩暈がするかと思った。

上級貴族だけに、政略結婚とか、そういう柵(しがらみ)から解放されないせいもあって、京楽は両親どころか親族の全員に浮竹との関係を吹聴していた。

「お前というやつは!」

インフルエンザにかかっていなかったら、蹴りの一発くらいお見舞いしてやるのにと、浮竹は思った。

「まぁそう怒らないで。お陰で、前みたいな縁談だの見合いだの煩わしいことがなくなって、僕はスッキリしたよ。それに、君が大切だって紹介しても大丈夫だしね」

両親にそのうち紹介するよと言われて、浮竹は天井を仰いでいた。

京楽がいなかったら、顔を手で覆って床をごろごろしたいくらい、恥ずかしかった。

「俺はまだ、両親や兄弟には話してない」

「それでもいいよ。何も、カミングアウトしなさいって言ってるわけじゃあないからね」

「いつか、俺も家族に話す」

「そっか」

林檎をかじり終えて、京楽は浮竹長い白髪を撫でた。

「無理しなくていいんだよ」

家族に知られたら、両親はどんな顔をするのだろうか。素直に仲を認めくれるだろうか。

肺の病で何度も死にかけた京楽を、育ててくれた両親は優しい。けれど、薬代のせいで家は貧しい時もあった。

せめものお返しにと、隊長になった今の給料の大半を仕送りしているが・・・・金額が金額なだけに、そのお金だけで生きて仕事をしない兄弟もいる。

「家族のこと、考えてたの?」

「ああ・・・・・俺たちのことを、知ったらなんていうかと思って。多分、祝福はされないだろうな」

愛しい長兄を、男などにとられたと知ったら、両親はきっと激怒するだろう。優しいけど、厳しい面もある親だ。

でも、と思う。

あの両親以外の元で生まれていたら、きっと今を生きていなかっただろう。

「僕とこういう関係になったこと、後悔してる?」

「いいや・・・・後悔は、していない」

インフルエンザのせいもあるので、この1週間なるべく接触を断っていた。浮竹がインフルエンザにかかると生死の境を彷徨うほどに悪化するからだ。

「お前の両親は、祝福してくれたのか?」

「んー。まぁ、結果的には祝福してくれたかな」

「羨ましいな・・・・・・・」

「君には、僕がいるでしょ。家族のことなんて、気にしないでよ」

「それはそうなんだが・・・・・・」

また、髪に手が伸びた。キスをされる。

「髪を触るの、好きだなお前は」

「だってインフルエンザだもの。君にうつすわけにはいかないから、濃厚接触なんてできないしね」

キスなんて、もっての他だ。

「抱き締めてもいいかい?」

「好きにしろ」

抱き寄せられて、その厚い胸板に頭を抱え込まれた。

「君が好きだよ・・・・・たとえ、君の両親が罵倒しようと、僕らは幸せでしょ?」

「そうだな・・・・・・・」

京楽の鼓動を聞いていると、安心できる。

たとえ、禁忌だとしても。

今の関係を絶とうとは思わない。思えない。

「明日には、職場に復帰するから。今日は泊まって行きなさいな」

「ああ、言葉に甘える」

京楽は屋敷をいくつかもっているが、この屋敷は本来の京楽が寝起きする場所だ。月に数回、浮竹もこの屋敷に来ていた。

家人はもう、浮竹のことを京楽の伴侶として見ている。

「はやく、治せよ」

「もう治るよ」

京楽のべッドに腰をかけて、浮竹は京楽に体重を預けていた。

インフルエンザにかかって高熱を出した京楽に、近寄ることは禁止されていた。昨日から、やっと面会の許可が下りたのだ。

二人の恋人はしばしの別れを埋めるかのように、お互いを抱きしめあいながら、互いの存在を確認しあうのだった。






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黄金の鎖Ⅱ

百貨店に入ると、ルキアは見るものが全て珍しいのか、キョロキョロしていた。

「おい、はぐれるといけねーから、手を繋ぐぞ」

「ななななな!こんな人前で!」

「別にいいだろ、手を繋ぐくらい」。

尸魂界に戻ることも多いルキアと、一緒に過ごす時間も減ってきた。なんでも、ルキアは13番隊の副隊長になるんだとか---------。

離れていても心は重なっている。

でも、共にいれる時間があればそれにこしたことはない。

レストランに入って、ルキアの好きな白玉あんみをおごってやると、ルキアはとても美味しそうに食べていた。

「俺にも一口くれよ」

「いいぞ。はい、あーん」

口をあける一護に、白玉あんみつをスプーンでひとさじだけすくって、与えると、一護がこういった。

「なんか俺たち、恋人同士みたいだな」

「たたたたたたたわけ!何を言う」

真っ赤になったルキアがかわいかった。

服を中心に百貨店で一通りのものを買い込んで、一護が少し離れた隙に、ルキアがいなくなっ
た。

心配して探し回ると、宝石店でショーウィンドウごしに宝石を見ているらしかった。

「どうしたんだよ」

「いや・・・・綺麗だなと思って」

尸魂界に戻れば、宝石などいくつでも身につけれるはずなのに。

「アメジストが好きなのだ。私の瞳のようだと、兄様が・・・・・・」

「すみません、これみせてください」

「い、一護!?」

すぐに店員がやってきて、ショーウィンドウの中から、アメジストのブローチを見せてくれた。

「今キャンペーン中で、30%引きですよ」

値段を見る。

一護は、財布を取り出した。

「買います。つけるんで、包装はなしで」

「一護!?」

「欲しいんだろ?」

「だが、貴様の金が・・・・・」

「黙ってろ」

包装せずにもらったブローチに飾られているアメジストは、ごく普通だった。まだ学生である、一護のバイト代でも買えるような、お手頃のものだった。

「つけてやるから、じっとしてろ」

一護は、ルキアの心臓の位置に、ブローチをつけた。

「似合ってるぞ」

「たわけ・・・・・・」

ルキアは真っ赤になっていた。

「手を、繋ぐのであろう?」

百貨店の外に出ても、繋がれたままの手は離れない。

黙ったまま、紅葉のはじまった街路樹をぬけて、公園にまでやってきた。

「その・・・・今日は、いろいろとありがとう。・・・・一護、私は貴様のことがずっと・・・・・・・」

言葉は、口づけに飲み込まれた。

大きく見開かれたアメジストの目が、閉じていく。

「んっ・・・・・・」

舌がからまりあう。その感触に、ルキアの体から力がぬける。

「おい!」

「た、たわけ!初めてなのだぞ!もっと優しくせぬか!いきなり、舌など・・・・」

言って、真っ赤になった。

「さっきの続きだ。俺はお前が好きだ、ルキア。お前も俺が好き、で、いいんだな?」

一護の言葉に、耳まで真っ赤になって、ルキアはアメジストの目を伏せた。

「こんなたわけを好きになるなど・・・・・・」

でも、否定はしなかった。

一護は荷物をベンチに置くと、ルキアを抱き上げた。

「ひゃあっ」

「軽いな」

抱き上げて、くるくると回る。

「め、目が回るではないかっ!」

「すげー嬉しい。お前が、俺のこと好きでいてくれて」

「たわけ!私はずっとずっと前から、それこそ尸魂界で救われた頃から・・・・」

ルキアを抱き締めた。

シャンプーの甘い香りがした。

「俺は、出会った頃から好きだった」

「なななな」

「霊圧を失って、お前が見えなくなって・・・・でも、絆は断ち切れることはなくて・・・・」

一護は空を見上げた。

「貴様には、井上がおるのであろう?」

「ただの友達だ」

きっぱりと断言されて、ルキアはまた朱くなった。

「誰にでも、あのようなことを・・・・・」

「お前にだけだ。お前が好きで、お前だけを見ていたい。傍にいたい」

「たわけ・・・・私は死神で、貴様は人間だ・・・・」

「それでも、一緒にいたい。お前の答えは?」」

「たわけ、そのようなこと・・・・」

ルキアが、一護の背中に手を回す。

言葉では恥ずかしくて言えなかったけれど、背に回された手で想いは全てわかった。

「今日は、記念日な?」

「なんのだ」

「俺とお前の想いが通じた、付き合う記念日」

「付き合うなど・・・・」

「いやなのか?俺はお前が好きだ。付き合いたい」

「でも、私には任務があり、毎日のようにお前の傍には・・・・・」

「それでもいいんだよ。心が重なっていれば、少しくらい遠くても。お前は嫌なのか?」

「誰が嫌だといった!」

風がでてきた。ひらひらと、銀杏の葉が落ちてくる。

「私は誰よりも貴様のことを想っている!この想いは、誰にも負けぬ!」

「なら、いいじゃねーか。9月30日。俺たちの記念日な?」

「たわけ、勝手に記念日など作りよって・・・・」

寄り添いあう。

少し寒くなってきた。秋も深まりつつある。

一護は、着ていたコートをルキアに着せた。

「帰ろうか。家に」

黒崎家に、帰ろう。

銀杏が、また一枚、葉を落とす。

「貴様が好きだ、一護」

ルキアは、アメジストの瞳ではっきりとそう言った。

「ああ、知ってる」

「たわけが・・・・乙女の告白くらい、ちゃんと聞け」

「お前、乙女って年齢か?150歳こしてるんじゃなかたっけ」

「たたたたたわけ!私はまだまだ乙女だ!年齢など関係ない!」

「そうだな。たとえ死神と人間でも、この絆は切れない」

一度。出会いという名のもつれを経験し。再開という名のさらなるもつれを経験し。

複雑にからみあった鎖は、断ち切られることはない。

それは、黄金の鎖。







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日番谷隊長の大冒険(嘘


俺の名は日番谷冬獅郎。自分でいうのもなんだが、天才だ。史上最少年で死神となった。

そんな俺は、ひょんなことで・・・・・異世界に飛ばされ、勇者を、やっていた。

その異世界だが、普通と違った。

最近の現世ではやっている、異世界ものの漫画や小説のような世界と思っていたら、瀞霊廷の人間がたくさんいるのだ。しかも、役が決まっている。

俺は、今日から勇者として魔王討伐に出かけるのだ

「日番谷勇者のおなり~」

ぱっぱらっぱー

ラッパの音が流され、日番谷が入ってくる。

国王藍染と、王妃市丸・・・・・・・・もはや、ここからして日番谷はつっこみたくて仕方なかった。頬の筋肉が、笑いをこらえることで引きつっていた。

「国王陛下と王妃殿下におかれましては・・・・・・・やってられねぇ。おい藍染何を企んでやがる!市丸もだ!」

「いややなぁ。僕、何もたくらんでへんで」

「そうだぞ、日番谷君。勇者といっても所詮は平民。図が高いぞ」

日番谷は、勇者の剣氷輪丸を抜くと、藍染に切りかかった。

「平民だの王族だの、関係ねぇんだよ」

切りつけると、藍染の顔から血の気が失せてきた。

「!?」

「残念だったな、冬獅郎。藍染は、俺がやっつけた後だ」

ごとりと音をたてて、藍色は倒れた。

「一護!」

本当の魔王、藍染は黒崎一護の手によって倒されていた。

「あら、どないしましょ。藍染様死んでしもた。俺も自由にさせてもらおうかな・・・・・
乱菊、どこにおるかしらへん?」

「城下町にいるんじゃねーか。ルイーダの酒場で女将やってるぞ」

そう答えると、市丸は風のように去ってしまった。


「一護!」

捕らわれていた姫、ルキアは一護に助け出されてしまった。

日番谷は勇者だ。でも、それがなんだ。勇者。ただそれだけだ。

真の魔王藍染が倒されたせいで、魔王京楽は、暇を持て余していた。

「今日も勇者、こなかったね・・・・・」

魔王城につくための船も出ているのに、くるのは観光者ばかりで。

「まぁいいんじゃないか。平和で・・・・現世に侵攻する計画はまだか?」

魔王四天王の一人、浮竹がお茶をすすっていた。

「まだだよ。人手不足で、とてもやってけないよ」

他の四天王・・・・清音と仙太郎、海燕は浮竹がLOVEすぎて、仕事は浮竹が与えたものしかしない。現世に侵攻など、性格もあいまってとてもできるものじゃなかった。

「そもそも、俺たちは何故に現世に侵攻しようとしているんだ?」

「いや、現世の食事が美味しいからでしょ?」

現世に侵攻しようという理由も、ばからしいものだった。



俺は勇者だ。多分偉い。でも、真の魔王藍染はアサシンの一護が倒してしまった。勇者とはいえ、一人ではやっていけないのが分かり、俺はルイーダの酒場にやってきた。

「隊長!どうしたんです?」

松元がやってきて、オレンジジュースをおごってくれた。

勇者として、勝手に人の家に入り込んでタンスやツボをあさって、アイテムをもっていくと、住民が泣くのだ。でも、勇者である俺が家中を物色することに抗うことははステム上できなくて、大泣きしたり罵倒を浴びせられた。
いい加減、モンスターを倒して金銭を得たいのだが、真の魔王藍染が死んだことでモンスターは絶滅してしまった。

仕方なく、他人の家に土足でふみこみ、家探しをする。
大人な水着なるものを手に入れて、さっそく道具屋に売ると2000Gにもなった。

その金を軍資金にして、残っている魔王京楽を倒すためのパーティーメンバーを募った。

集まったのは、アサシン一護、プリーストルキア、ウィザード恋次、スライム。
最後のスライムが気になったが、藍染も倒した一護もいるパーティーだ。どうにかなるだろう。

観光船が出ている、魔王京楽の城までやってきた。

モンスターは出なかった。

魔王の四天王といわれる、清音、仙太郎、海燕は・・・・海燕以外はざこだった。

「く、隊長のいるとこにはいかせない。今行くとやばいんだ」

なんとか海燕を倒して、城の最上階を目指した。

「やぁっ、京楽」

「またまた。ここがいいんでしょ?」

「だめだっ・・・・・人がきたらっ・・・・・・」

俺は。
俺は勇者だ。

扉の奥にいる、魔王と、魔王といちゃついているらしき四天王の一人、浮竹を倒さなければ・・・・・・。

・・・・・。

「あっ京楽・・・・・」

「きもちいいかい、浮竹?」
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
「ああ、そんな、スライムだなんて!」

「いいでしょうこの子。さっき見つけたんだ。ほら、奥まで入る・・・・」
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
仲間のはずの、スライムの姿を探してみる。いなかった。

スライムだけでなく、一護もルキアも恋次もいなくなっていた。


「ああっ、春水、もっと奥に!」

「十四郎、愛している」

・・・・・・・。

・・・・・・・・・。

「卍解!大紅蓮氷輪丸!」

俺は勇者だ。いかがわしいことをする魔王を倒さなければ。

俺は・・・・・・・・・・。



「・・・・・・・・・・・夢か」

がばりと起きると、全身にすごい寝汗をかいていた。

自分の屋敷に戻らずに、隊首室のベッドで横になっていたら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

「京楽・・・・もしも、日番谷隊長が起きたら・・・・」

「大丈夫、起きないよ。ねぇ、もっと求めて?僕を」

「ああっ、春水!」

「愛してるよ、十四郎・・・・・・・」

「卍解!大紅蓮氷輪丸!」

執務室を、全壊してしまった。
宙には、衣服をいつの間にか整えた二人がいた。仲を邪魔されて不機嫌奏な京楽と、行為のせいで頬を上気させている浮竹の姿が見えた。

「ばか京楽、だからいっただろう!日番谷隊長が起きたらどうするって!」

「スリル、あったでしょ?」

「ばか!」

浮竹は、京楽の腕の中だ。京楽の頭をたたいていた。

俺は、勇者・・・・じゃない、10番隊隊長だ。

「風紀を乱す奴は許さん!」

氷輪丸を手に、逃げ出す二人をどこまでも追いかけていった。

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もはや始末書も

「日番谷隊長・・・・・・・」

そう言って現れた浮竹は、目元を朱くして泣きはらした目をしていた。

「どうしたんだ、浮竹」

「実家で飼っていた犬の「春水」が死んでしまったんだ」

「あの、例の春水か?十四郎に子供産ませたっていう、雄犬の黒柴か」

「そうなんだ。たまに帰郷すると時にかわいがっていたんだが・・・腫瘍ができて、手術してもったんだが、悪性で・・・・」

また、ぽろりと涙を零す。

よほどかわいがっていたんだなと、日番谷は思った。

「日番谷隊長~~~~~~」

ぞくりとする、霊圧を感じで振り返る。

「なんだ京楽!」

「浮竹を泣かせたね!」

花天狂骨を手に、京楽は怒っていた。

「な、違う!」

日番谷は斬魄刀を、抜刀する。

「京楽、ちゃんと浮竹から話を聞け」

「話を聞こうとしても何もいわないし、君のとこにきたら泣き出したから、君の何かが、浮竹を泣かせたんでしょ?」

「違う!蒼天に座せ、氷輪丸」

始解された花天狂骨を相手にするには、日番谷も始解するしかなかった。

「ちゃんと、浮竹から話を聞け!おい、浮竹!」

「え?二人とも、どうしたんだ。斬魄刀なんて解放させて?」

「え?日番谷隊長が、君を泣かせたんじゃないのかい?」

「え?」

「え?」

日番谷は、氷輪丸を鞘にしまった。

「こんな時に松本はいやがらねぇし」

浮竹は、ちゃんと説明をした。犬の春水がなくなったこと、とても可愛がっていたので、泣いてしまったこと。

「なんだ、そうなら最初からそう言ってくれればいいじゃない」

「お前とは、口を聞きたくなかったからだ」

「ええっ、どうしてだい」

京楽の慌てぶりは、日番谷には面白かった。

茶をすすっていると。

「昨日、嫌だっていったのに騎乗位のまま!」

ブーーーーー!

日番谷は、茶を吹き出した。

「お前ら、痴話げんかなら他所でやれ!」

「聞いてくれ、日番谷隊長。俺は騎乗位が嫌いなんだ、それなのに京楽が!」

「いいじゃないの、たまには。君だって、あんなに気持ちよさそうにしてたじゃない」


「・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸ーーーーーーー!!


「一体何事!?」

今頃になって、松本が現れた。酒の飲みすぎで、執務室の奥の隊首室で寝ていたのだ。

「隊長、一体・・・・・・?」

半壊した、執務室に言葉も出ない様子で。

「また、いつもの二人組だ」

はぁと、溜息をつく。

「また始末書かかねーと・・・・・・」

日番谷は、もう何枚も同じことで始末書を書いてきた。この際それが1枚や2枚増えたところでかあまり変わらないと思うのだった。






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蒼瑠璃

「あげるよ」

そういって渡されたのは、大粒の蒼瑠璃があしらわれた髪飾りだった。

紅瑠璃と対をなす尸魂界でしかとれない、希少な石で、霊力をこめることがでる。紅瑠璃は、霊力をもつ者の力を増大させてくれる。石の意味は変わらない愛。蒼瑠璃はの石の意味は慈しむ心。護廷13隊の死神に霊力を注いでもらった物を、上流貴族はよくお守りにしていたりした。

この前、京楽に紅瑠璃をはめこんだ首飾りをあげた。拙かったが、自分で作った。細工師に見てもらいながら、心をこめて。

それを京楽はいつも首にかけていた。どうしたのだと聞くと、愛しい恋人からもらったのだと自慢げに話す。

それが酷く恥ずかしくはあったが、大事にしてくれていると思うと嬉しさが全身を支配する。

「こんな大粒の石・・・・高かっただろうに」

「何、辺鄙なところに屋敷をたてるくらいの値段しかしないよ」

「屋敷ってお前・・・・・」

こんな高価なもの、もらえない。
過去の浮竹なら、そう言って拒絶しただろう。

でも、一度離れ離れになって、花の神に愛されたことで戻ってきた浮竹には、いならいとのだと突っぱねることができなかった。

「ありがとう。大切にする」

そういうと、京楽は櫛を手に、浮竹の長い髪を結い上げて、その髪飾りをさした。

「僕がいない時でも、君を守ってくれる」

蒼瑠璃には、京楽の霊力が強くこめられていた。

守ってもらうほどやわではないのにな、と思いながら、浮竹は髪飾りをつけない時は常に懐の中にいれて大事にもっていた。



1番隊に、苺花が遊びにきた。京楽は仕事でかまってやれないので、基本仕事のない浮竹が苺花の面倒を見ることになった。

「シロさんの髪飾り、綺麗だね。蒼瑠璃っていうんだっけ。シロさん美人だからよく似合ってるね」

「ありがとう。苺花ちゃんはものしりだな。石のこと、誰に教わったんだ?」

「父様だよ。もっともっと小粒の石だけど、お守りにって母様にあげてたんだ。らぶいらぶあつあつで、妹か弟ができるかも」

その場にルキアがいたらなら、注意していたかもしれない。子供の目の前で行為に及んだのだとしたら、叱責ものだが、賢い苺花はきっと分かっているのだろう。

大人の関係というやつを。

「あたしのはじめてはね、チカさんにあげようと思うの」

ブーーーーー!

浮竹はお茶を吹き出していた。

「苺花ちゃん?意味ちゃんとわかっていってるのか?」

「分かってるよ。処女を捧げるならチカさんがいい」

億尾にも出さない苺花の様子に、浮竹がかわりに朱くなった。

「君は本当におませだね・・・・・・・・」

「父様と母様と、師匠にもいわれるの。別に普通なのに」

年端もいかないような子供は、普通自分のはじめを・・・・なんていいださない。

「何話してるんだい、浮竹、苺花ちゃん」

仕事を終わらせた、京楽が隊首室にやってきた。

茶菓子を手に苺花と談笑していたのだが、京楽も交じってきた。

「京楽総隊長のその首飾りはどうしたの?紅瑠璃でしょ?」

「これかい?いやぁね、僕のとてもとても大事で愛する人がくれたんだよ」

「シロさんのことだよね?やっぱり毎日エッチしたりしてるの?」

ブーーーーー!

浮竹も京楽もお茶を吹き出した。

年端もいかぬ少女にしては、ちょっと問題があるかもしれない。

「ちょっと浮竹!あの子、両親のせいでああなったと思うかい?」

「朽木の教育なら、あんな風にはなるはずはないと思う」

「聞こえてるよー。ぜーんぶ、チカさんから学んだの」

綾瀬川弓親。

今度、呼び出して説教してやろうと、京楽は思った。

「ねぇねぇ、やっぱり毎日してるの?父様と母様みたいに」

阿散井夫妻はほんとにアツアツだなと思いながらも、首を傾げて聞いてくる少女に、本当に何をふきこんでいるんだ弓親と、浮竹も文句をいってやろうと決めた。

「いや、流石に毎日は・・・・・・週1くらいかな?僕らは君の父様や母様のように若くないからね」

「若くなくなったら、回数へるの?」

「自然とね・・・・」

「おい京楽!何真面目に答えてるんだ」

「いいじゃない。子供の戯言だよ」

「この子は、ただの子供じゃないんだぞ」

そのまとう霊圧も、子供のものにしては高すぎる。

「隠す意味もないじゃない」

「でもな・・・・・」

浮竹の髪飾りが、チリンと音をたてる。蒼瑠璃をはめこんだ髪飾りには、純金でできた鈴がついていた。

「おじさんたちは、もう院生時代・・・そうだねとても若い時代からできていて、もう数百年も
一緒なんだ」

「・・・・・・・・・・・・・ステキ」

苺花は陶酔していた。

「何百年も、まるで永遠を愛し合うみたい。京楽総隊長の、首飾りの石の意味みたいだね」

変わらぬ愛。

京楽は、嬉しげに答える。

「苺花ちゃんも、愛する人を見つけたら、いつかこの紅瑠璃を贈ってあげればいいよ」

「でも高いんでしょ?あたしの小遣いじゃかえないなぁ。今すぐほしいのに」

「ちょっと待ってて、苺花ちゃん」

京楽は奥の寝室に入って行った。

「お待たせ」

戻ってくると、京楽の手には小さな紅瑠璃の欠片があった。

「え、もしかしてくれるの?」

「うん。欠けてるけど、ちゃんと霊力を増大してくれる効果をもつよ」

「欠片なら、いいか・・・・・」

もし、京楽は大粒の石をあげていたら、浮竹が怒っていた。子供に与える値段のものじゃないからだ。

お守り石かにされていたのが砕け散って、欠片になってしまったのだろう。

粉々ではないが、欠片になってしまっている。でも、その欠片の一つでけっこうな値段がするかもしれない。

紅瑠璃と蒼瑠璃は対をなす、希少な石だ。

浮竹が京楽のために手に入れた紅瑠璃は、浮竹の遺品として残っていたものを処分した金でかったものだ。

京楽からもらう多額の小遣いでは買わなかった。それを知っているから、京楽は余計に喜んでくれるのだ。

「ありがとう、京楽総隊長!シロさんも・・・・・・これで、チカさんに告白できる」

告白しても、多分もっと大人になったらね、で終わりそうだ。弓親との年の差がありすぎて、交際はするとしてもおままごとみたいなものになるだろう。

「どう思う、浮竹」

「まぁ、苺花ちゃんの初恋は綾瀬川3席なんだから、彼が責任をもつべきだと思うな」

「告白、成就すると思う?」

「大人になったらね・・・・・で、終わりそうだな」

「奇遇だね。僕もそう思ってたとこなんだよ」

チリンと、髪飾りが鈴の音を転ばせる。

また長くなってしまった白髪に、京楽の手が伸びる。

「いい加減、切りたいんだが」

「もう少し伸ばしてよ・・・」

膝裏まで伸びた髪が邪魔過ぎて、浮竹は髪を切りたいきもちでいっぱいだった。京楽は、浮竹の髪が寝所で乱れる様が好きで、伸ばせという。

「来月には切るぞ」

「ええ、勿体ない」

「あんまり文句いうなら、肩よりうえでばっさりいくぞ」

「浮竹の意地悪」

京楽が、くすくす笑って浮竹の体を長椅子に押し倒した。

チリン。

髪飾りが、鈴の音をたてる。

乱れていく白髪は、床まで伸びている。窓から入ってくる日の光を浴びて、銀色に輝いていた。

チリンチリン。

その白髪にさされた髪飾りは、いつまでの錫の音を響かせていた。





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おちおちいちゃつけない

「あー寒いな」
 
吐く息が白い。

「確かに寒いが、夏よりはましであろう」

先を歩くルキアは、空を見上げた。

もう12月。もうすぐクリスマスの時期だ。
街路樹は夜になればイルミネーションが灯り、綺麗に点滅を繰り返してまるで星の瞬きのようだ。

「12月はクリスマス。クリスマスといえばプレゼント。一護、貴様にはチャッピー等身大人形をくれてやろう」

すでに尸魂界で買い物をした。あとはイブの日が訪れれば、ラッピングしたチャッピー等身大人形を一護に贈って、それをふりまわして一護をノックアウトさせるのだ。
一護も、きっとチャッピーのよさが分かるに違いない。
うむ。

一人自己完結をして、満足そうにルキアはマフラーの裾を風に遊ばせる。

「いらねーよんなもん。なんで等身大なんだよ!くれるならもっとましなものにしろよ」

「ふむ。ではフンドシ」

自販機で買ったホットのコーヒーを飲んでいた一護は、ふきだした。

「ぶばー!」

「ぬおお、汚い、こちらにむけてふきかけるな!」

「ふんどしだぁ!?お前、そんなもの俺につけてほしいのかよ!」

「最近の尸魂界では昔ながらのふんどしが、男性の間で流行っているとか、聞いたような?でも死神の男性の下着姿なんて見ることがないからな。分からん。ふむ、ここは兄様に」

ピポパ。

毎度ながら、このブラコンは、白哉専用の携帯を取り出して番号を押そうとする。
呼び出されてたまるかと、携帯をとりあげた。

「何をする!返せ!」

ジャンプしても届かないので、ルキアは悔しそうにしていた。

そんなルキアを抱き締めた。

「なっ」

真っ赤になるルキアがかわいくて、耳元で囁いた。

「クリスマスプレゼント、ちゃんとしたもの用意してあるから」

バイトで得た金で、アメジストの首飾りを買った。ルキアの瞳と同じアメジストはすきだった。

「よこせ」

「はぁ?まだクリスマスじゃないだろ」

「貴様、さっきから何かこそこそと隠していると思えば、プレゼントを持っているのであろう?」

図星だった。

「今ほしいのだ。クリマスマスまで待てない」

「仕方のねーやつだな。ほらよっ」

ポンとて手渡されて、危うく落としかけた。

「もっと大切に扱わぬか!」

「クリスマスには、また違うプレゼント用意しておいてやるよ」

「おおこれは・・・・・綺麗だな。値がはったのではないのか?」

きらきら光るのが綺麗で、太陽に透かして見上げているルキア。

「そういう時のためにバイトしてるんだから、別にいいんだよ」

「本当にもらってよいのか?」

「返せなんていわねーよ」

「もらうぞ。本当にもらうからな。返せと言われても返さぬぞ」

「お前もしつこいな、やるっていってるだろ。貸してみろ」

ルキアから首飾りを取り上げて、ルキアの首にかけてやった。

「お前の目の色だ。綺麗だろ」

「確か、アメジストというんだったな」

「好きだぜ、ルキア」

「私も・・・・・貴様が好きだ」

アメジストのペンダントトップをいじっているルキアを、一護が見ていた。

「来年もここにこれたらいいな」

「貴様は霊圧を取り戻した。また来年もこれるであろう」

戦いの全てが終わって、1年が経過しようとしていた。13番隊の副官になったルキアは、前ほど気軽に現世に遊びにこれなくなっていた。

クリスマスの日には遊びにくるだろうが、今日は時たま現世の虚退治で訪れていたのだ。数日の滞在を許可されてある。

ルキアのマフラーごと、体をひきよせる。街路樹の陰に連れ込まれた。
顔に落ちた影に、ルキアが目を閉じた。

吸い込まれそうな太陽のオレンジの輪郭だけが、最後にはっきりとうつった。

ルキアの桜色の唇に、一護は自分の唇を重ねた。

「んんう」

深いキス。

「んー」

唇をなめられて、ルキアは甘い吐息をもらす。

「あっ」

喉元をきつく吸われて、眩暈がした。

「おしまい」

「う、うむ」

互いに違う方向を向いて、ギクシャクとしてカクカクと歩きだす。

それから、一護の暖かい手をルキアは握り締めて、二人で歩き出す。

「見ろ、雪だ」

ちらちらと降ってきた雪に、ルキアが嬉しそうに天を仰ぐ。

同時に、一護は死神となって駆け出した

「一護?おい、どこへ・・・・」

「あああああああああああ!あああああああやっぱいたのかああああああ!!!絶対この展開になると思ってたあああああああ!!!」

全力疾走する一護。

その後を、斬魄刀をすでに抜き放ち、軽やかに一護を切り捨てようとする白哉が続く。

「あ、兄様、ごきげんよう!」

「うむ」

学校でするように、スカートの裾をもっておかしなお辞儀をしたルキアに、一度白哉は止まって、それに応えてからまた一護を追いかけだした。

「兄は、ルキアに接吻をしたな。しかも首筋に痕まで残すとは。待たぬか、塵にしてやろう」

「誰が塵になるかああ!誰がまつかああ!!」

すでに、ルキアは白哉を呼び出した後であった。その後のキスだった

目の前で、義妹が男に接吻されている姿に、白哉は斬魄刀をためらいもなく鞘から抜き放った。そしてきりつけようとした瞬間、一護はそれを察知して、死神化して逃げ出した。

「兄様、キスくらいで。私と一護はもっとすすんでおります」

ピキ。

白哉の冷たい氷のような瞳がさらに冷たさをます。

「あああああ、ルキアああああ、俺を殺すきかあああ!!!!」

脱兎のごとく逃げ出す一護と、それを追いかける白哉の姿はすぐに消えてなくなった。

「また、一人残されてしまった。まぁいいか」

マフラーを巻きなおして、ルキアは一護の自宅へと足を向ける。

そして、24日のイブには本当に、一護にチャッピー等身大人形が贈られるのであった。

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甘味魔

「わーい、甘味屋だ。何注文してもいいの、チカさん?」

「いいよ。だけど、一人で食べきれるのをね。僕は苺花ちゃんの食べ残しを食べる気はないからね」

浮竹と京楽は、甘味屋で珍しいカップルを見つけた。

否、カップルと呼ぶにはあまりにも年の差があるだろうか。片方は綺麗と表現できる綾瀬川弓親、もう一人はルキアと恋次の子、阿散井苺花だった。

苺花ははっきりいってとてもかわいい。美人なルキアに似ているが、髪の色は父親似で赤い赤銅色の髪をしている。

苺パフェを頼んで、美味しそうにほうばる姿を、弓親がとても優しい眼差しで見ていた。


「珍しい組み合わせだなぁ」

浮竹もつられて苺パフェを注文していた。ジャンボパフェを平らげたばかりなのに、その細い体のどこに入るのかと疑問を抱きたくなる。

京楽も、苺パフェを注文してみた。

「苺花ちゃんの師匠は班目副隊長だからね。いつも傍にいる綾瀬川3席と一緒に行動していても、おかしくはないね」

「あの年で、もう師匠がいるのか」

「なかなかの剣の腕だそうだよ」

この前、筋がいいと師匠に褒められて、とても嬉しそうにしていたんだと、ルキアが言っていた。

「朽木の子だから、将来ははっとするような美人になるなろうなぁ」

「そうだねぇ・・・」

席は離れていたけど、弓親が京楽と浮竹に気づいた。

「京楽総隊長、浮竹元隊長、こんにちわ」

「こんにちわ」

「ああ、こんにちわ」

「あー、シロさんだ」

苺花は、浮竹を気に入っている様子で、シロさんといって懐いていた。

「シロさんとチカさんてさぁ、男なのに美人さんだよね。どっちが美人なのかな?」

「そりゃ決まってるよ、僕でしょ」

弓親はナルシストだ。だが、確かに美しいし、着るものに気を配ったり、睫毛にや耳にアクセントをつけたりしてお洒落だった。

一方の浮竹といえば、長い白髪を結い上げていて、白いうなじが見えた。

「僕は浮竹のほうが美人だと思うけどねぇ」

恋人だから、余計に肩入れしてしまう。

「まぁ、どっちが美人かなんてどうでもいいよね」

弓親が、柔和な笑みを浮かべた。

「そうだよね。チカさんもシロさんも美人さん。それでいいよね」

苺花は、苺パフェを食べて終えて満足したのか、弓親と一緒に甘味屋から出て行ってしまった。

「男に美人というのも変なんだがなぉ」

「そうかい?僕はいつでも、浮竹が美人だと思っているよ」

恥ずかしい台詞をはかれて、浮竹は頬を赤らめた。甘味屋の他の客が、カップルである浮竹と京楽の言葉に耳を傾けている。

「今日はここまでにして、帰るか」

「もういいの?」

「苺花ちゃんと話せて満足したからな:」「

浮竹は、勘定を京楽の分までだした。

「おごるのに」

「たまには、俺にもおこらせろ」

そう言って、二人は甘味屋をでた、

「これからどうする?」

「暇だし、日番谷隊長のところにでもいくか」

浮竹は、日番谷を気に入ってる。なんだかんだといって二人の仲はけっこういい。

「浮竹は、ほんとに日番谷隊長が好きだね」

「同じシロちゃんだからな」

名を呼んだわけでもないのだが、シロと名付けた小鳥が空を飛んでいた。

チチチチ。

小さく鳴いて、浮竹の肩に止まる。

「ああ、お前もシロちゃんだったな」

小鳥は京楽の肩にもとまり、そしてまた大空を飛び立っていった。







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紅瑠璃(IF

チチチチチチ。

小鳥が鳴いていた。

「ん・・・もう、朝か」

窓から勝手に入ってきた小鳥は、浮竹の裸の肩に止まった。

「京楽、おい京楽」

揺さぶると、ぴくりと隣にいた同じく裸の男が目覚めた。

「今何時だい?」

「6時だな」

「あと2時間はねれる。おやすみ」

そういって、一人だけまた夢の中に旅立ってしまった。

「怠惰なやつだな」

もう、それにも慣れてしまった。いつもは浮竹も惰眠を貪るのだが、昨日は早めに寝たせいか眠くなかった。

睦みあったのは、夜の9時頃から。湯あみも終わらせて、面倒なので裸で眠ってしまったのが11時前。

睦みあったとはいえ、かなり軽くだったので、行為自体は1時間とかからなかった。

「服着なきゃ・・・・」

襦袢だけとりあえず身につけて、クローゼットを開ける。タンスもあったが、服がしわになるからとクローゼットをよく利用していた。

いつもと同じ色の、黒い死覇装に、何もない白の羽織を着る。

顔を洗って、歯を磨く。髪を櫛でといて、軽く結うと七緒が隊首室のほうから顔をのぞかせた。

「浮竹元隊長、京楽総隊長は起きていますか?」

隊首室にもベッドはあるのだが、寝室のほうがベッドが大きいので、いつも京楽と浮竹は、寝室のベッドで共に眠りについた。

「まだ寝ている。起こそうか?」

「いえ、まだ6時ですし。8時に起こしてください」

隊長や総隊長の朝は早い・・・・ようで、普通だった。大体7時頃におきて1時間ほど余裕をもってから、8時に朝食をとって8時半から仕事をしだす。

副隊長はもう少し遅くて、9時からの出勤だ。

中には7時頃から仕事をしだす元気な隊長副隊長もいるが、大体が8時以降から仕事に・・・主に、書類整理など雑務に精を出すのだ。

浮竹は、待っているシロに、餌をいれた皿をだす。窓から、クロも入ってきた。

窓はいつも開けっ放しにされている。小鳥たちのためだ。

「京楽、おい起きろ京楽」

「んーあと5分」

そう言って、腰に抱き着いてくる京楽の頭をはたいた。

「あいたっ。・・・・・おはよう」

「もう8時過ぎだぞ」

「え、まじで?やばい、七緒ちゃんと6番隊のことについて話し合う予定だったんだ」

いそいそと服を着て、適当に髪を髭を整える。昔のように笠をかぶって、京楽は執務室に向かった。

そこで、七緒とあれこれ会話をしだす。長引きそうだったし、邪魔をしては悪いと思い、一人で一番隊の隊舎を後にした。

「日番谷隊長、いるかい?」

そっと、10番隊の執務室に入ってみると、時間が経っても背が伸びる様子のない、小柄な体を文机に向かわせ、何かを書いていた。

「ああ、浮竹か。暇で遊びにきたのなら、松本とでも遊んでろ」

「隊長、それひっどーい。あたしだって、ちゃんと仕事してるんですからね」

みれば、松本も書類を整理していた。

「年のくれだしな。いろいろ処分しとかねぇといけない案件が多くて、嫌になるぜ」

2時間ほど、お茶菓子を食べたり、松本が入れてくれたお茶を飲んでいたり、最新の女性死神協会の会誌などを読んで時間をつぶしていると、日番谷がやってきた。

「今日の仕事は終わりだ。珍しいな、一人なのか?京楽のおっさんは?」

「仕事で、伊勢副隊長と話し込んでいた。暇なのでここに遊びにきたけど、ここも暇だな」

「まぁ、浮竹は仕事の邪魔をあまりしてこないからいいが・・・京楽と一緒にはくるなよ?」」

昔、二人のせいで執務室を何度も半壊させた。

「甘味屋にいかないか?」

日番谷を誘うと、日番谷はいいぞと答えてくれた。

それが嬉しくて、頭を撫でると

「子供扱いするんじゃねぇ」

と怒られてしまった。

「隊長!浮竹元隊長も!あたしも一緒に甘味屋にいきたい」

「お前はまだ整理する書類が残ってるだろ!仕事しろ、仕事を!」

「あーん、こんな仕事はやく片付けたいー」


浮竹は、日番谷と並んで歩きだす。

甘味屋につくと、すでに人だかりができていた。

「ああ、そういえば今日はアイスの新商品が発売で・・・違う甘味屋にいこうか」

「ああ、別にどこでもいいが・・・・」

全ての戦いが終わって、尸魂界も変わった。特に瀞霊廷は、現世の家電を取り入れたせいで、急激に変わりつつあった。

「ここ、何気に好きなんだ」

「こんなとこに甘味屋が?」

流魂街の外れにある、その甘味屋は、閑散としていたが、数人の客がいた。

「浮竹様!またきてくださってのでありんすか」

色街の、遊女の言葉遣いの女性がお冷とおしぼりをもってきてくれた。

「知り合いか?」

日番谷が、浮竹に聞くと浮竹は頷いた。

「昔、身請けした遊女で、カナという」

ブーーーーーーー!

日番谷がお冷を吹き出した。

「お、お前、京楽に知られたら!」

「大丈夫だ。京楽の金で身請けした、幼馴染なんだ。中流貴族と結婚したけど、姑との関係がうまくいかずに飛び出して、今に至る」

「浮竹様、こちらの方はどなたでありんすか」

「10番隊隊長の、日番谷冬獅郎だ」

日番谷が名乗った。

こそこそと耳打ちしてくる。

「本当に、ただの幼馴染なんだな?浮気相手だったら、俺があのおっさんに殺される」

「はははは日番谷隊長は心配性だなぁ。浮気相手なら、京楽が日番谷隊長を手にかけるまえに、京楽が彼女を惨たらしく殺している」

笑顔で怖い話をされて、日番谷は身震いした。

「お汁粉を二つ。後おはぎと羊羹も二つずつ。あと持ち帰りで甘納豆を一人前」

適当に注文していく浮竹を見る。

「お前のおごりだと思って、金をもってきていないが、持ち合わせはあるな?」

「いや、俺も忘れた」

「おい!」

「つけがきくし・・・まぁ問題はない」

そう言い切られて、注文された品を食べていく。

「ありがとうでありんす。お勘定ですが・・・・・」

「これで、足りるだろうか」

浮竹は、紅瑠璃を見せた。尸魂界でしかとれない、とても珍しい石で、小粒ではあったが注文した内容を30回頼んでもおつりが出る。

「こんな高価なもの!お代はいいでありんすよ」

「いいから、受け取ってくれ。暮らしの足しにしてほしい」

そう言われて、カナという元遊女は紅瑠璃をもらい、手をふった。

「またきてほしいでありんす~」

「ああ、またくる」

「あの紅瑠璃、どうしたんだ?」

「京楽にもらった金で買ったんだ。何か、細工物を作って浮竹にあげようかと思って。でも小粒だったし、もっといい石が手に入って完成したから」

「お前と京楽の金使いには、眩暈がする」

甘味屋をでると、そこには京楽がいた。

ぞくりと、背筋が凍る気がした。

「もう、なるべくあの子と関わらないって決めてたんじゃないの?」

周囲を威圧するような霊圧に、日番谷は言葉をなくした。

「甘味屋で働いていただけだ。やましいことは何もない」

「声、聞こえてたよ。紅瑠璃をあげたんだって?石の意味知ってて?」

「変わらぬ愛、だろう?ここにちゃんとある」

そう言って、大粒の紅瑠璃をはめこんだ首飾りを、浮竹は京楽に与えた。

「これは・・・・・・?」

「拙くてすまない。俺が作ったんだ。変わらない愛を、お前に」

「浮竹!」

京楽は、浮竹を抱き寄せて口づけを交わした。

「日番谷隊長は、昔のように斬魄刀を解放しないのか?」

「もう、お前らのいちゃつきで解放する斬魄刀なんてねーよ」

それだけ、日番谷も大人になったのだろう。何より、一度大切なものを失った京楽が哀れすぎて、総隊長でありながら、幽霊のような存在に、憐れみを覚えすぎていた。これ以上ないくらいの嬉しそうな笑みを刻む京楽の幸せを、つぶすような真似はするまいと、日番谷も彼なりに気を使っているのだ。

「いやぁ、嬉しいねぇ。普通のプレゼントも嬉しいけど、手作りとかもう本当に嬉しいよ。このまま、高級料亭にいこう。日番谷隊長もおいで」

「おい、俺はお前らがいくような、高級料亭にいける金なんてないぞ」

例え、給料が出ても、とても使うような額ではないので、首を振ると、京楽は嬉し気こういう。

「僕のおごりだよ」

「のった!」

京楽の選ぶ高級料亭に外れはない。甘味ものでお腹はあまり減っていないが、久しぶりに高級な美味しいものをただで食べれる機会なのだ。

無碍にすることもないだろう。



ちゃりん。

紅瑠璃で作られた首飾りはいつまでも京楽の首にかけられて、紅色の光を放ち、石の言葉通りの変わらぬ愛を奏でるのであった。













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