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シンデレラ

昔々、あるところに薄幸の美少女が住んでおりました。

その名を、シンデレラといいます。

「ちょっとちょっと!配役、絶対間違ってるから!」

シンデレラは、もじゃもじゃのおっさんでした。

いや、京楽でした。

「なんで僕がシンデレラ!?」

「京楽さん、話すすまねーから静かにしてくれねーか」

意地悪な義母の一護が、シンデレラに怒りの矛先をむけます。

「俺だって、こんな配役ねーと思ってるけど、さっさと終わらせなきゃこのパラレルストーリーから抜け出せないみたいだから」

義母の一護は、たくさんの意地悪を、義姉である仙太郎と清音と一緒にシンデレラに与えました。

「なんで俺がシンデレラの義姉なんだ!隊長のほうが、絶対シンデレラに似合ってるのに!」

義姉の仙太郎は、自分の隊長がラブすぎて、シンデレラに冷たくあたります。

「あんたのバカじゃないの!京楽隊長がシンデレラってことは、王子様が隊長なのよ!」

清音は、姉である仙太郎と言い争いをはじめました。

「なんだとこのブス!」

「何よ、このいも男!」

「鼻くそ太郎が!」

「何よ、鼻くそ次郎のくせに!」

「この水虫脳みそ!」

「巨大鼻くそ!」

「ウルトラ鼻くそ!」

「何よインキンタムシ!」

「言ったなぁ!?」

以下云々。




「ほーっほっほっほ、シンデレラ、今宵は舞踏会だけとあなたが着ていくドレスはありませんからね」

清音は、義姉役にはまりかけていた。

「そうだぜシンデレラ。つくろっておいた俺たちのドレスを、出しておけ」

仙太郎も、のりのりでした。

「おい、京楽さん・・・・・じゃなかった、シンデレラ。舞踏会にはつれていかないからな」

義母の一護と、義姉の仙太郎と清音は、豪華なドレスを着て宝石で飾り立てていました。

一方のシンデレラは、つぎはぎだらけのぼろい服を着ていました。

「酷い!僕を浮竹と会わせないつもりなんだね!」

なんだかんだで、王子が浮竹だと思い込んでいるシンデレラは、舞踏会にいきたがっていました。

やがて、一護と仙太郎と清音は、豪華な馬車で舞踏会に出かけて行きました。

一人残されたシンデレラは、悲嘆にあけくれます。

そこへ魔法使いが現れました。

「京楽!じゃなかった、シンデレラ!ドレスと馬車をだしてあげるから、お前も舞踏会にいけ」

「あれぇ、浮竹!?王子役じゃなかったのかい!?」

魔法使いの浮竹は、王子役ではありませんでした。王子役が浮竹でないと知って、シンデレラはやる気を失いました。

「もうどうでもいいよ・・・・」

「いいから、舞踏会に行け!話がすすまんだろう!」

魔法使いの浮竹は、シンデレラのつぎはぎだらけの服を豪華なドレスに変えて、ガラスの靴をはかせ、豪勢な馬車をだしました。

「男なのに、何故にドレス・・・・・」

「それは、シンデレラだからだ」

もじゃもじゃのおっさんは、ドレスを着てももじゃもじゃでした。似合っていないことこの上ないのですが、ストーリー上無視して進めます。

「仕方ない。舞踏会にいってくるよ」

「ああ、ただし魔法は0時に解けるからな。それまでに帰って来いよ」

「はいはい」

シンデレラの乗った馬車は、舞踏会につきました。

たくさんの美女が、着飾って踊っています。

ざわり。

シンデレラは、異様すぎて皆遠巻きに見ていました。

「そこの京楽隊長・・・・・・じゃないそこのヘンタイ隊長・・・・でもない、そこの娘」

「僕かい?」

「私と、踊りませんか」

王子役は、ルキアでした。

王子であるルキアは、シンデレラの手をとって一緒に踊り出します。

「くやしい!あんなもじゃもじゃに王子を奪われるなんて!」

「せめて、ひげくらいそればいいのに・・・・」

屈強ながたいをしたシンデレラは、ぱっつんぱっつんのドレスが似合って・・・・いるわけがありませんでした。

王子と楽しいひと時を過ごすシンデレラ。

やがて、0時を告げる鐘が鳴り響き、シンデレラは急いで舞踏会から逃げ出します。ガラスの靴が走りにくくて、ぬいで階段の上において走り去ってしまいました。

「シンデレラ!」

王子は、ガラスの靴を手に、茫然としました。



やがて、お城の王子様がガラスの靴にぴったりの足をもつ娘を、花嫁に迎えるという、噂がたちました。

実際、城下町にきて王子様はガラスの靴を娘たちにはかせては、これも違うと溜息を零していました。

「この家にいる娘は二人だけか?」

王子様の側近である恋次が、シンデレラの家にやってきて、仙太郎と清音にガラスの靴をはかせます。どちらもぶかぶかで、ガラスの靴には合いませんでした。

「いや、もう一人いるが・・・・」

一護が、シンデレラを呼びました。

「っていうか一護、てめぇ継母とかすげぇ笑える」

「俺だって好きでやってるわけじゃねーよ。王子がルキアとかどういう配役なんだ。にしても恋次、てめぇだけ側近とかなにまともな役やってんだよ!」

「知るか」

恋次は、やってきたシンデレラにガラスの靴をはかせました。

「なんと、ぴったりではないか。娘、そなたがあの時のシンデレラなのだな?」

ルキアは、台本を棒読みしていました。

「ああシンデレラ。愛しい娘よ。私と結婚しようではないか」

「いや、僕には浮竹がいるから」

ぼふんと、現れた魔法使いの浮竹の手をとって、シンデレラは走り出します。

「おいシンデレラ!話がめちゃめちゃになるだろう!ちゃんと王子と結婚しろ!」

一護が、走り去っていくシンデレラに叫びますが、シンデレラは瞬歩で、魔法使いの浮竹を抱きかかえると、去っていきました。


その後、王子は継母である一護に一目ぼれし、二人は結婚しました。それに側近の恋次がくやしそうな顔をしていました。

シンデレラと母である一護を失った仙太郎と清音は、魔法使いの浮竹の元で、弟子になりました。

シンデレラは、隣国で浮竹と結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ。



「シンデレラ」

「なんだい、浮竹」

「本当に、これでよかったのか?」

「どうしてだい」

「いや、シンデレラは王子と結ばれ、王宮で華やかな暮らしをするはずだし・・・・・」

「僕にとっての王子は、浮竹、君だよ」

触れるだけの口づけをされて、浮竹は真っ赤になりました。

「さすがにもう、ドレス脱いでもいいよね?」

あまりに似合っていない女装に、浮竹も苦笑しました。

「シンデレラやめるよ、僕は」

「じゃあ俺も、魔法使いやめるか」

弟子の仙太郎と清音は、浮竹の元で穏やかに過ごしました。

京楽と浮竹は、仲睦ましく、それはそれは幸せにすごしましたとさ。

                

               終わり


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永遠

「ねえさあああん!その絶壁の胸に、俺を埋めてくれえええ!」

抱き着いてきたコンを、足蹴りにして、踏みつけながらルキアは一護をみた。

「おい、一護」

「なんだよ」

「私の胸は、絶壁か?」

「いや、知らねーよ」

一護は、話題ゆえに、ルキアの顔をまともに見ることができなかった。

「ほれ」

一護の背後から抱き着いてみる。柔らかな感覚はあったが、織姫や乱菊と比べれば確かに絶壁なのかもしれない。

「ななななな、何しやがる」

「私にも胸はあるぞ。絶壁ではない!」

拳を握りしめて、ルキアはコンをさらに踏みつけた。

「いたたたた、綿出る、綿出るから!」

そんなコンを、ルキアも一護も無視した。

「確かに、私の胸は井上や松本副隊長にくらべれば、小さいかもしれないが・・・・・あの二人が、でかすぎるだけだと、私は思うのだ」

真剣に、胸について語りだす。

「今のままで十分だろ。俺は、今のままのルキアがいい」

胸なぞ、小さくて構わないのだと、手をとると、ルキアは目を瞬かせた。

「貴様は、巨乳のほうが好きなのではないのか?」

部屋の中に転がっているグラビア雑誌(主に恋次が読む)には、巨乳のアイドルばかりがいた。

ルキアは、自分の胸が小さいことを少し気にしているようだった。

「巨乳でも、貧乳でも、ルキアはルキアだ」

「私は・・・・・・・!」

手をひかれて、体勢が崩れる。

ベッドに腰かけていた一護の上に、覆いかぶさるように倒れて、ルキアは紫の瞳を見開いた。

「一護・・・・・・・・」

優しく抱きしめられて、一護の腕の中でルキアは朱くなった。

「俺は、今のままのお前がいい。今のままのお前が、好きだ」

耳元で囁かれて、ルキアは自分の体温があがるのを自覚した。

「貴様は・・・・それでいいのか」

「何が」

「私は死神だぞ?」

「ああ、それがどうした」

「貴様は人間だ。私とは、決して結ばれない。それが運命だと分かっていても、私の手をとってくれるのか?」

「死神とか人間とか。恋愛に、そんなもの関係ねーだろ」

一護は、きっぱりと言い放つ。

好きだ、と。


その言葉に、ルキアの鼓動が高鳴る。

「貴様のことを、私も・・・好きだ」

「なら別にいいじゃねーか。死神だとか人間だとか、深く考えすぎなんだよ」

一護は、気づいていた。結ばれたとしても、それは一時のこと。死神であるルキアは長い時間を生き、ゆっくり成長していく。人間でしかない一護は、そんなルキアをおいて年老いていく。

それでも。

好きになってしまったものは、仕方ないのだと、現実から目を背ける。


「好きだぜ、ルキア」

啄むように口づけすると、ルキアはそれに応えてくれた。

「私も貴様のことが好きだ、一護」


お互いのことを確認しあうように、長い間抱擁しあっていた。エアコンは効いているが、長い間体を密着させたままだと、少し暑くなってきた。

「お前の胸、見た目よりけっこうあると思うぜ」

そんな台詞に、恥ずかしくてルキアは一護を蹴った。

「蹴ることねーじゃねーか」

「うるさい!貴様が全部悪いのだ!私のことを好きだとかいうから!」

「そういうお前も、好きだっていったじゃねーか」

「気、気の迷いだ!」

「いいや、言った!」

「言ってない!」

「言った!」

「言ってない!」

ぜーはー。呼吸を、二人して整えた。

「・・・・・・・・貴様は、残酷だな」

「なんでだよ」

「貴様が、本当の死神ならよかったのに・・・・・・・・」

そうしたら、尸魂界で一緒に暮らして、いつか結婚して・・・・・・。

ありえない未来を描いてしまいそうになる。

ぽたりと、紫の瞳から涙が一滴こぼれた。

「酷く優しくて、酷く甘く、そして酷く残酷だ。お前の手を握る今が、未来につながってはいない。それでも、私を求めてくれるか?」

「未来なんて、今の俺たちには関係ないだろ。そんな先のこと、考えるのはよそうぜ。俺は、今のルキアが好きなんだ」

繋ぎあった絆は、砕けない。

たとえ、死神と人間でも。

重なり合った想いは、溶けることはない。

たとえ、年月が経っても。


想いは、永遠だから。


世界は廻る。



やがて、ルキアは護廷13番隊の隊長となる。そして、阿散井ルキアとなり、一人娘を産む。
一護は、織姫と結婚して子をなす。

たとえ、違う道を歩むことになっても。

想いは、永遠だから。



だから、せめて今だけは。

互いの手を握り合って、甘い時間を共有しよう。


想いは、永遠だから。

たとえ、最後に結ばれなくても。

重なり合った心は、消えない。








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七夕も白哉と一緒

七夕の夜。
黒崎家では、笹がベタンダに飾られていた。
一護の願いは簡単。

「平和が欲しい」

死神代行として忙しい毎日を過ごす一護にとっては、平和が何よりも大切なものだろう。

二人の妹の願いは現実的。

「小遣いほしい」

「もっとサッカー上手くなりたい」

父親の願いは明るい。

「家族皆で健やかに過ごせませすように」

ちなみに、コンの願いは「姉さんともっとラブラブしたい」

ついでに、ルキアの願いはというと。

「もっと胸が欲しい」

それを見つけた一護は笑いをこらえるのに必死だった。やっぱり気にしてたんだ、ルキアは。
そりゃ、死神だけでなく、学校のクラスメイトもまわりみんな巨乳だらけだしなぁ。
特に、織姫と乱菊の胸は凄い。
あれは凄い。グラビアアイドルにだって負けない。

「こーんな願いかかなくったってなぁ」

ルキアの胸がでかくなることなんて、まずありえないだろう。
死神として何百年ももう生きているのだ。体の成長はとても極端にゆっくりだ。
いつか、胸が大きくなる日がくるかもしれないが、それは何百年後のことだろうか。

一護はアイスをとりだすと、だれているルキアの頬にあてた。

「ひああああ、冷たい!」

「アイス。ほら食えよ」

「何を考えておる!何かよからぬことを考えておるな!?さては、私のアイスを食ったか」

「バーカ。そんな意地汚いまねするかよ」

一護は、自分用においてあったアイスをルキアにあげた。

暑さにだれながら、ルキアはそれを食べていく。

「なー。笹、もう少し飾っておくか」

「おう、それはよい考えだ」

キラーンとルキアの目が光る。

次の日、笹を見ると願いごとがいっぱい増えていた。

「金が欲しい」「服はあれがいい」「一護をもっとこき使いたい」「宿題減らしてほしい」「藍染は死ね」「兄様がずっと元気でありますように」

「あー。やっぱ捨てちまうか」
一護は、笹を捨てた。

「ほう。兄は、そのような行為をするのか。ルキアの願いがたくさんこめられた短冊を」

悪寒を感じて振り返ると、そこには白哉が立っていた。

「なぁ!?白哉、なんで現世にいやがる!」

「ルキアが携帯電話で呼び出してきたので、いるまでだ」

「あ、兄様!アイス食べましょう!」

「ルキア、元気にしているか」

「兄様も!」

二人の兄妹はるんるんとはしゃぎあう。無表情ながら、白哉の喜びようが手にとるように分かった。

「あー」

一護は、捨てようとした笹に新しい短冊を飾った。

「白哉に切り殺されませんように」

「ほう。兄は、そのような行為をルキアに働いたのか。さっそく」

抜刀した白哉に追い掛け回されて、死神になった一護は、ルキアが見守るなか町内を一周していた。

「兄様、一護と仲いいなぁ」

片方は本気で、卍解さえしそうな勢いで一護を追い掛け回しているのだが。ルキアには、ただ兄様に遊んでもらえていいなという、羨ましさしかなかった。

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日常Ⅴ

「夏とは現世も尸魂界も変わらずあついものだな」

ルキアは、一護の部屋でクーラーの風に、黒い髪をそよがせながら、だれていた。

寒さには強いのだが、反面熱さに弱い。斬魄刀が、氷雪系のせいだろうか。
すでに溶けてしまったアイスを、スプーンでかき混ぜる。

「あ~~~~」

扇風機に声をかけると、あ~~と間延びした声が部屋中に響いた。
ミーンミーンと、閉じた窓の外から蝉がうるさくなく声がする。

夏真っ盛り。
尸魂界なら、今頃かき氷でも買って、兄様にもってかえったり、恋次と一緒にどこかに出かけて涼みにでもいっているだろう。
その恋次は、現世組として今、現世にきている。

「なぁ、恋次、現世の夏は暑すぎるとはおもわんか」

一緒にだれていた恋次に声をかける。

恋次はだれてはいるものの、現世の雑誌が珍しいのか一生懸命目を通している。

「あーん?こっちはクーラーってのもあるし、ましだろうが」

恋次が、ルキアにしっしと手を振る。
一護など、ベッドの上で腹を出して爆睡している。

「そうだ!」

「あん?」

恋次が、視線をルキアに移す。ルキアはいきなり死神姿になると、斬魄刀に手をかけた。

「おい、てめぇ何するつもりだ」

「氷を出すのだ!私の袖白雪で!

「あ?」

「初の舞、月白!!!」

どごーん!

解放された斬魄刀によって、一護の部屋中が氷づけになった。
氷になっているのは、恋次と寝ていた一護だ。

「ふう。涼しい」

「お前は~~~~」

寝ていた一護は、全身を氷づけにされて、それでもなおしゃべっている。
身を切るような痛みの寒さ。
もう涼しいとかそんな限界をこえている。

氷をなんとか死神姿になって粉々に砕くと、同じく氷漬けになっている恋次を放置して、ルキアの頭をぐりぐりした。

「何をする!痛いではないか!」

「そうか。じゃあついでに、夏を楽しんでこい」

「きゃああ?」

ルキアの首根っこをつかむと、一護はそのまま開け放った窓からルキアを放り投げた。ルキアはキランとお星様になった。

「覚えてろおお、いちごおおおおお」

「お前こそ、ちっとは反省してこいやああああ!!」

「わきゃああああああああ」

消えていくルキアの声。

氷漬けになった部屋で、一護は一言。

「どうしようこれ。恋次、おい、恋次!」

氷を砕いて恋次を助け出すが、綺麗に硬直していた。まだ全身に氷がこびりついている。

「あははははルキア、最高の夏だぜ。氷漬け最高」

そういって、恋次は力つきた。

結局、夏の暑さにまけて帰ってきたルキアが部屋の氷をなんとかして、一護とぎゃあぎゃあと言い合いをしながら、また扇風機に髪を泳がせる。

「おい、恋次伸びてるけどいいのかよ」

「ああ、恋次は氷漬けになるのにはなれている。よく尸魂界で一緒に氷漬けになって、兄様に驚かれたものだ」

どんな修行だよ。いや、遊びか?涼み方か?
まぁいいか。

「あ~~~」
「あ~~~」

伸びたままの恋次を放置して、二人で扇風機に向かって間延びした声をかける。

「涼しいな、一護」

「あー。涼しい」

氷が少しついたまま気絶した恋次をクーラーの風上において、そこからくる冷気にひんやりと二人は夏の熱さを忘れるのであった。

「一護、明日はスイカバーが食いたいぞ」

「あー。金やるからお前一人でかってこい」

「なにいい!こんな暑い中、私に買いに行けだと!貴様もくるのだ一護」

二人はまた言い争いをはじめる。

結局、ルキアに負けて明日たくさんのアイスクリームを一緒に買出しに出かける一護と、氷が関節についたまま放置されたせいか、カクカクと動く恋次の姿があったという。ルキアは笑顔で二人に「ご苦労」などと声をかけていた。


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日常Ⅳ

「暇だ。一護、かまえ」

ゴロゴロゴロ。

一護のベッドの上を、ひとしきりゴロゴロと寝転がった後、ルキアは足でベッドに凭れかかって本を読んでいる一護の頭を、ゲシっ と蹴った。

「いってぇ!」

一護が、悲鳴をあげる。

だが、ルキアの素行には慣れているのか、また本を読み出す

それに、ルキアがむっとなって、再び一護の頭を蹴った。思い切り。

「いてえええええ!!!」

流石の一護も、ルキアの鋭い蹴りに我慢できなくなったのか、ルキアの足を掴んだ

「何をする、離さんか」

「さっきから、人の頭をボールみたいに蹴りやがって!俺の頭はボールじゃねぇ、蹴るな!」

ルキアが、一護に掴まれた足首に目を落とす。

強くは掴まれているが、決して痕を残すほど強くは掴まない。一護とて、ルキアへの優しさを忘れることはない。

命をかけてまで守った存在を、自分から傷つけるような真似はしなかった。

ルキアが処刑を免れたのは、一重に一護という存在があったからこそだ。恋次の存在もあったが、一護が尸魂界にまで来なければ、 ルキアは間違いなく処刑されていたであろう。

ルキアとて、一護とこうして再び、同じ時間を共有できるとは思ってもいなかった。
藍染の計画を阻止するために、現世に派遣された中に、最初はルキアの名前はなかった。それを、義兄が止めるのも構わず、自ら志願したのだ。

「やっと、私の方を見たな」

ルキアが、にやりと笑んだ。

かわいいというよりは、かっこいいと表現したほうがいいような雰囲気のあるルキアだった。

容姿は、背が小さく華奢なこともあり、可憐である。だが、その口調はまるで男言葉のようで、一護に繰り出される蹴りや拳、肘撃ちなど、体術に優れている。
同じ女である織姫と違って、とにかく活発的で、爽快なほどに元気だった。

ルキアは、その見た目と裏腹にとにかく強い。
だが、どこか上品な物腰をしている。朽木家という4大貴族の養子として迎え入れるよりも遥か昔から、ルキアはどこか至高な存在を身に纏っていた。

一護は、ルキアの足をこそばしてやった。

「きゃああああああ!」

ルキアが、女のような悲鳴をあげる。
いや、ルキアは女だったか(←失礼な)

身近に接していると、女とはとても思えないような行動をとる。それがルキアだ。
だが、遠くを見つめる紫色の瞳はいつも憂いを帯びて、整った美しい顔は、少女のまま死神として時間を止めてしまったルキアを彩るかのようであった。
尸魂界でみた、朽木家の者としての着物を身に纏い、髪に美しい簪をさし、花を飾っているルキアと、今目の前にいるルキアとは、まるで別人のように 見える

ルキアの表情は、面白いほどにくるくるとよく変わる。
見ていて、疲れないかと思うほどに。

「はー。暑い。一護、アイスクリームが食べたい。冷蔵庫からとっこい」

冷房は、切っていた。
残暑の残るこの季節には、冷房なしの締め切った部屋は確かに暑いだろう。
ルキアは、うちわをパタパタと仰いで自分に風を送りながら、勝手に冷房のリモコンをとって、冷房をつけた。

「また最低温度に勝手に設定しやがって」

一護は、ルキアの手からリモコンをひったくると、室内温度を27度に設定した。ルキアが設定した温度は16度だ。いくらなんでも、 低すぎる。

「一護、暑い。溶けそうだ」

「勝手に溶けてろ」

「どろどろどろ~~」

冷房の風を受けながら、ルキアがベッドに突っ伏した。

ルキアは、斬魂刀が氷雪系であるせいか、寒さに強い。反面、暑さには弱かった。

尸魂界にも四季があるが、日本の気候のように激しい温度差はないようであった。特に、都市である一護が住む地方は、 夏は最高40度近くまで温度が上がる。反面、冬は零度近くにまで下がる。

冬のルキアは生き生きとしているが、夏のルキアは溶けたアイスのようにふにゃふにゃだ。気合をいれなければ、いつもだれている。

ルキアは、長いワンピースの裾を捲りあげた。下着が見えるのもお構いなしに、パタパタと扇ぐ。
それに、健全な男子である一護が紅くなった。

「お前、もうちょっとおしとやかになれねぇのかよ。それでも貴族か?」

「貴族だぞ。兄様のような立派な貴族ではないが、これでも貴族になって長い」

ルキアの義兄である白哉を思い出す。凛とした冷たさを湛えながらも、貴族として申し分のない物腰でしゃべり、行動する。
その妹であるルキアは、血こそ繋がっていないが、確かにどこか白哉に似ていた。
凛とした冷たい美しさを、ルキアは持っている。

だが、暑さのせいか、それも霞んでいた。

「ああああああああ。暑い」

クッションを抱えて、ルキアがうなだれる。

「夏は暑くて当たり前だ。冷房効いてきただろうが」

「一護~」

「なんだよ」

「斬魂刀ででっかい氷をだしていいか?」

どこからか、斬魂刀を取り出している。柄も鍔も刀も真っ白な袖白雪の、先端につけられた白い飾り布がひらひらと揺れた。

「却下」

一護が、ルキアから斬魂刀を奪った。

ルキアなら、しかねない。

一度、ルキアの刀で一護は氷づけにされたことがあった。簡単に涼しくなる方法があるといわれて、やってみろと言ったら、ルキアは袖白雪を 取り出して一護を凍らせた。

無論、その後は長いお説教だ。

いくら代理死神であるとはいえ、氷づけにされて喜ぶはずもない。身を切るような冷たさを味わわされた。涼しいというより、むしろ痛い。しかも物凄く。

「溶ける~」

だらだらとうなだれるルキアに、仕方ないとばかりに、一護は立ち上がり、妹達が食べるはずであったアイスを取ってきて、ルキアの額に置いた。

「ああ、生き返る」

たちまち元気を取り戻し、ルキアはアイスを美味しそうに食べた。
妹達に、後で謝らなければならない。

「一護、これイチゴ味だ」

「だからなんだ」

「お前も食え」

食べかけのアイスを差し出され、一護は迷いもせずに一口食べた。キーンとした冷たさが広がる。

「一護だけにイチゴ。はははは、なんておもしろくない冗談だ」

ルキアは、イチゴ味のアイスを食べながら、ベッドに腰掛けて足をぶらぶらさせる。

一護は、そんなルキアにため息をつきながら、読みかけだった本をまた読み始めるのだった。

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「浮竹!」

目覚めると、寝汗をたくさんかいていた。

いまだに、ドキドキと心臓は鼓動を大きく打っていた。

浮竹が、死ぬ夢を見た。肺の病で大量に血を吐いて、京楽の腕の中で死んでいく夢だ。

どうすることもできない自分が無力で、怨嗟の声を夢の中であげていた。

「夢・・・ね・・・・」

ぬるりとした血の感触がやけにリアルだった。

呼吸が荒いのに気づいて、大きく肺に空気を取り入れて、落ち着くようにと暗示をかける。
京楽は水を飲みに起き上がった、。ついでに、顔も洗う。

ゆらりと波紋を残す水が血に見えて、深酒をしてしまったせいかと、自嘲する。


「こりゃ、おさまりそうもないね」

時計をみると夜の3時過ぎだった。

まだ動悸がしている。京楽は、死覇装に着替えると、隊長羽織を着こんで外に出た。まだ蒸し暑さを残した大気を切り裂いて、瞬歩で走り出す。

早く早く早く。

会いたい。


雨乾堂にくると、京楽は静かに屋根から板張りの床に舞い降りた。

「・・・・・・・京楽?」

池の水面に、映る影があった。

浮竹が、夜着姿のまま、池の欄干に体重をかけてぼんやりとしていたのだ。

「どうしたんだ、こんな時間に」

それはこちらの台詞だよ、という言葉を飲み込んで、京楽は浮竹を思い切り抱きしめた。

「京楽?」

腕の中の浮竹は暖かかった。

夢の中で冷たくなっていく浮竹と、全然違う。

暖かくて、甘いかおりがして、京楽は安堵する。

「君が、死ぬ夢を見た」

「なんだ、ただの夢だろう?」

必死な形相で抱き締めてくる京楽をあやすように、ぽんぽんと背中をたたいてやれば、京楽は腕から力を抜く。

「そう、ただの夢だよ。でも、リアルすぎて怖いんだよ。君が吐血して、僕の腕の中で死んでいく夢だった・・・・・・」

「俺は、まだ死なんぞ」

まだまだやり残していることがあるんだと、翡翠色の瞳で笑った。

「浮竹こそ、こんな時間にどうしたの?」

「いや、ただ寝付けなくてな。外の風にあたって、ぼーっとしてた」

それからいくつか他愛ない話をしていたら、浮竹が眠気を訴えた。

「一緒に、寝てもいいかい?」

深い意味はない。ただ、浮竹の温もりを肌で感じていたかった。

「いいが・・・・布団は、一組しかないぞ?」

京楽が泊まりにくるときは、布団を二組だすが、あいにくと今の雨乾堂に布団は一組しか置いていない。

「構わないさ。畳の上でだって寝れるしね」

「客人を畳で寝かすわけにもいかないだろう。少し窮屈だが、同じ布団で寝るか」

「そうだね」

手を繋ぎあいながら、雨乾堂の中に入る。

一組の布団で横になって、目を閉じると以外とあっけなく睡魔に捕らわれて、意識は落ちていった。



「おーい、京楽」

「んーなんだい」

「もう昼過ぎだぞ」

「ええ!?」

飛び起きると、時計は12時を回っていた。

「あちゃー。七緒ちゃんに、11時から仕事をするって昨日言っちゃったのに・・・・」

「地獄蝶でも飛ばすか?」

「いや、火急な要件じゃないし・・・・まぁ、後で怒られるよ、素直に」

「昼飯は食べていくか?」

「え、いいのかい」

「朝餉を取り損ねただろう。そういう俺も、11時まで惰眠を貪っていたんだが」

あまり人のことはいえないなと、苦笑する翡翠の瞳が綺麗だった。

「浮竹」

「なんだ、京楽」

浮竹の白い頬に手をあてて、触れるだけの口づけをする。

「こんな時間だけど、おはよう」

「ああ、おはよう」

腕の中で吐血して死んでいく浮竹の姿は、もうどこにもちらつかなかった。

二人そろって、昼食を食べる。清音が京楽の分も急いで用意してくれた。

「んー。もっとここに、浮竹の傍にいたいけど、帰って仕事しなきゃいけないね」

名残惜しいのだとばかりに、長い白髪に口づけを落とす。

「今日は俺が非番だからな。京楽の隊首室にいこうか?」

一緒にいれるならと、京楽は嬉しそうに浮竹を抱き締める。

「陳腐だけど・・・・・・・不変の愛を、君に」

「本当に、どうしたんだ京楽」

浮竹は、京楽を抱き締め返しながら、その黒い瞳をのぞきこんでくる。

「なんでもないよ・・・・・さて、七緒ちゃんに怒られにいこうか」

浮竹を連れて、瞬歩ではなく普通の徒歩で8番隊隊舎に向かう。

ゆっくりとしたその時間が、どうか永遠であればいいのに。


永遠が、どこかにあればいいのに。

愛してると囁いても、なくなってしまわなければいいのに。

今は、ただ傍にいれるそれだけでいいのだ。













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命日(IF

「京楽総隊長、ここにいましたか」

副官の七緒が、京楽に声をかける。

京楽は、窓辺で一羽の小鳥に餌をやっていた。

「ああ、逃げちゃった・・・・・・」

チチチと、小さい声をあげて飛び立っていったのは、一羽の白い小鳥だった。目の色は綺麗な緑色だった。

「京楽総隊長?」

「七緒ちゃん。あの子に餌付けしてる時は、声をかけないでくれって前にもいったでしょ?」

「しかし、火急の要件がありまして」

七緒が、ばつの悪そうな顔で手にした書類を、京楽に見せる。

「そこに置いといて。すぐに片付けるから」

「はい。それでは」


七緒が去ると、窓辺に小鳥がまたやってっきた。

その種の小鳥は、本当なら羽の色は黒だ。色素がないために、真っ白になってしまったのだ。アルビノかと思ったのだが、目の色は赤くない。

瞳の色は鮮やかな翡翠色だった。

その色に、まるで、京楽がかつて想いを・・・・いや、いなくなってもなお想いが色あせることのない相手と似ているので、ついつい餌付けをしてしまった。

なつくことのないはずの野生の鳥だが、京楽によくなついていた。

体が弱く、一時は籠の中で飼育していたが、自然のままのほうがいいと自由にさせた。

手に乗ってきたり、肩にのってきたりと、随分なついた。

ただ、京楽以外の相手にはなつかずに、姿を見ると飛び立っていく。

チチチ・・・・。

書類を片付ける京楽の傍で、小首を傾げて小鳥は京楽の肩にとまった。


今日は、命日だ。

京楽の想い人の。


仕事を済ませると、京楽は小鳥を肩にとまらせたまま、花と酒を手に雨乾堂にでかけた。

そこには、京楽がもっとも愛した人が眠っていた。

「やぁ。こっちは相変わらずだよ。もう平和が15年も続いている。ちょっとした騒動はあるけれど、いたって平和だよ」

もう、彼がなくなって15年たっていた。彼の後は朽木ルキアが引き継いで13番隊隊長となった。そのルキアも、結婚して今は阿散井ルキアとなり、阿散井隊長と呼ばれている。

「そうそう、この小鳥みてよ。君の色にそっくりだろう?」

花を添えると、小鳥は墓石の上にとまった。

「またいつか・・・・・僕がそっちにいったら、酒を飲みかわそう」

酒瓶を傾げて、中身を墓石に注ぐ。

小鳥が、京楽の頭にとまった。

「やんちゃな子でね・・・・・・・シロって名付けたんだ。日番谷隊長もシロだけど、君もシロだったしね」

祈るように、黙祷を捧げた。

「さて。総隊長という身分は窮屈でね。昔みたいにさぼれない。君に会いにいくのも、ここ数年で命日だけになってしまっているけど、許してくれないかい」

苦笑して、また酒を注いだ。

いなくなっても、愛している。
何百年と共にいきた、比翼の片割れ。

失っても、色あせることのない記憶、恋慕、感情。

心は重なり合ったままだ。

伝えれるのなら、たくさんのありがとうを伝えたい。その真っ白な髪に口づけて、今でも愛しているのだと囁きたかった。

君のおかげで、今の僕がある。

「じゃあ、またね。ずっとずっと、愛してるよ。永遠の愛を君に・・・・」

チチチチ。

小鳥が飛び去って行った。

そして、久しぶりに彼の名を口にした。

「浮竹・・・・また、くるよ。来年になるかもしれないけれど」

比翼の鳥は、片割れを失ったけれど。

まだ一緒のところにはいけないのだと、総隊長になった。

そして、月日だけが無情に流れていく。


不変の愛を誓った。


総隊長になった京楽には、いくつもの縁談がもちこまれたけれど、全て拒絶した。


心は、彼と共にあるから。


ねぇ、そうだろう、浮竹?





花の神は、ゆっくりと瞼をあけた。


別名、椿の狂い咲きの王。冬に狂ったように咲く椿に恋こがれた、狂った王だ。


似ているな、と思う。京楽は王で、花が浮竹だ。


浮竹に狂った京楽。


さてはて、命を与えた愛児と、それを愛する男はどうなっていく?


そう考えながら、花の神はまた眠りについた。

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ムキムキがムチムチ

「とにかく、1日でいいんだ。ムキムキになってみたい。そんな薬を作れないだろうか」

浮竹が珍しく12番隊隊舎を訪れていた。浮竹にお茶をだした涅ネムは、浮竹の言葉をめもする。

浮竹は、いくら鍛錬しても筋肉ムキムキの体になれないことを気にしていた。

薄い筋肉はつくが、熱を出したりして寝こむとでその筋肉も落ちてしまう。いつも京楽から細いだの軽いだのいわれて、コンプレックスになっていた。

1日でいいから筋肉むっきむきになってみたい。

そこで浮竹が訪れたのは12番隊だった。技術開発局を兼ね揃えているこの場所なら、そんな薬を開発するのもたやすいだろう。

そう思っての、行動だったのだが。

涅マユリにはあったが、

「私は忙しいんダヨ」

と一蹴されてしまった。

代わりに、副官である涅ネムに話を聞いてもらっていた。

「分かりました。マユリ様に、伝えておきます。ムチムチですね?」

「すまないね、涅副隊長。よろしく頼む。あ、あとムチムチじゃなくってムキムキだから」

「承知しました」

メモ用紙に、ムチムチとネムは書きこんだ。



そんなことがあった数週間後。浮竹は、自分が言い出したことをもう忘れていた。
1週間たっても音沙汰がない時点で、取り合ってもらえなかったのだろうと諦めていた。

13番隊隊舎に、涅マユリからの届け物が届いていた。

「お、作ってもらえたのか」

錠剤タイプで、飲めば1日はもつと書いてあった。ただし、1錠しかなかった。

「よし、早速ムキムキに・・・・・・」

水の入ったコップを手に、錠剤を握りしめる。

「何が、ムキムキなんだい?」

「京楽!」

時すでに遅し。浮竹は、筋肉ムキムキになれる錠剤をのんでしまっていた。

「?・・・・・・あつっ」

体が燃えるように熱くなって、浮竹の体が傾ぐ。それをいつものように京楽が抱き留めた。

「何か変なものでも飲んだのかい?」

「それが・・・・・・・」

京楽に話をすると、京楽は筋肉ムキムキになるはずの浮竹の体をみた。だが、何かおかしい。全然なんの変化もおきない。でも、体は熱い。その熱さが終わる頃には、浮竹の体は確かに変わっていた。

「あれ?ムキムキじゃない・・・・?」

声のトーンが高かった。

ないはずのところに、ふくらみがあった。

「あれ?あれ???」

浮竹は、急いで届け物にかかれてあったメモを読む。

「一日ムチムチになりたい薬。効き目は1日。女体化。ただし交わるとかの無理は禁物ダヨ。ホルモンバランスが崩れて、元に戻れない可能性もあるからネ。その時は責任とれないヨ」

「ムキムキが・・・・・ムチムチ!?」

あわわわ。

慌てても遅い。背後をみると、やけににやにやした京楽と視線がかみ合う。

「浮竹、女の子になりたかったの?僕に、抱かれるために?」

ぶんぶんと首をふる。

浮竹はムチムチした自分の体をみる。いや、ムチムチまではいっていないが、あるはずのない胸があったりで、女体化しているのは明らかだった。

どちらかというと白く細い体に、少し大きめの胸。腕とか足とか、折れそうなくらいに細い。

涅ネムが、ムキムキという部分を聞き間違えてムチムチにしたらしい。

こんなことってあっていいのか。とりあえず、今は狼の京楽から逃げ出すのが先決だ。

「京楽!冗談なしに、エッチはだめだぞ、最後まではだめだからな!」

「最後までじゃなかったら、手を出してもいいってことかな?」

涅マユリ手書きの使用書を読む京楽は、にやにやしていた。もう、さっきから鼻の下が伸びっぱなしだ。

長い白髪は、床にふれんばかりに伸びている。ぶかぶかになった死覇装や隊長羽織が、心もとない。

浮竹は、狼から逃げようとするが、性別が逆転してしまったせいで、腕力までなくしてしまったのか、京楽の手から逃れられない。

「やっ・・・・・・」

死覇装の上から胸をもまれて、浮竹は甘ったるくなった自分の声のトーンに吃驚する。

貪るように、口づけされる。柔らかな女の体を楽しむように、京楽は浮竹を抱きしめた。

「京楽、やっぱり女がいいのか」

「違う。浮竹なら、なんでもいいんだよ。男でも女でも。性別なんて関係ない」

ちゅっと、音が鳴るくらいのキスをされて、浮竹は真っ赤になった。半分はだけた死覇装から見える肩にキスをして、京楽は浮竹を抱き締める。

「体を重ねるようなことはしないから。怖がらないでよ。そばにいて?」

やけに甘ったるい気分にさせる言葉だった。

「浮竹は甘いね・・・・・」

全身にキスの雨を降らせていく京楽。

浮竹は、それを感じるのに男も女もないのだと悟った。

「春水・・・・・・」

自分からも求めるように口づけをせがむと、京楽は舌が絡み合う深い口づけをしてくれた。

最後までできないのが、ちょっと残念だと京楽は思ったが、浮竹に無理をさせるわけにはいかない。女の浮竹は儚くかわいいが、男の浮竹も同じくらい儚くかわいいのだ。

優越をつけがたい。

京楽は、キスや手で浮竹を翻弄させる。

「ああっ」

オーガズムでいくことを覚えた体は、女になっても変わらない。

呼吸を乱しつつ、浮竹は交われないもどかしさに、早く薬の効果が切れてしまえばいいのにと願った。

「汗かいちゃったね。一緒にお風呂、入ろうか?もう何もしないからさ」

せっかく女のなったのだから、それを楽しむのもありだが、最後まですると元に戻れないので、中途半端になった。

「なんか・・・・・女になった俺が相手でも、京楽はいつもと変わらないな」

それが、嬉しくもあった。

「ムキムキに、まだなりたい?」

「いや・・・・・またムチムチになりたいんだろうと、薬を渡されそうでもういい」

「浮竹は、元のままが一番いいんだよ。細いけれど、しなやかな筋肉がついてるし。確かについている筋肉は薄いし細いけど、筋肉がないわけじゃあないし」

それにね、と、付け加えられる。

「君がそんな姿をずっととっていたら、ライバルがたくさん出てきそうだしね。君を手に入れるために、血が流れそうだ」

「そうか?そこまで、見た目はいいのか?」

手鏡で、自分の姿を見たわけではない浮竹に、京楽は教えた。どれだけ可憐な美女になっているのかを。

浮竹はほぼのろけ話になっている京楽の言葉に、顔を赤くした。

湯あみを済ませて、京楽の腕の中で、浮竹はまどろんでいた。

京楽は、すでに眠ってしまっている。

女のなった姿を例え清音と仙太郎にも見せようとしないだろう、京楽は。京楽は、独占欲が強い。浮竹を手放すどころか、女になってしまった浮竹を誰の目にも触れさせないだろう。

浮竹もまた、眠りの海に沈んでいく。



朝起きると、まだ女の体のままだった。

京楽が、13番隊隊舎にいって、朝餉をもってきてくれた。あと、薬も。

食事を終えて、薬を口にすると白湯を渡された。それを飲みほして、今日は一日どうしようかと浮竹は迷う。

「外に出るのはだめだよな?」

「当たり前でしょ。浮竹のそんな美女姿、僕以外の誰にも見せたくない」

結局、浮竹は男に戻るまで、京楽の腕の中にいた。

男に戻っても、京楽は落胆しない。

「おかえり」

「ああ・・・・ただいま。少し変なかんじだが」

元に戻るのに、体が熱くなったりはしなかった。ただ、倦怠感を覚えた。

「もぅこりごりだ」

「まぁ、涅マユリって人物は、あまり信用しないほうがいいよ」

かつて、金をかけて涅マユリに食べると猫耳と尻尾が生えてしまうにゃんにゃんキャンディーなるものを作らせた京楽であるが。

涅マユリが、ただで薬を作ってくれることは、ほとんどない。今回も、モルモットに実験をするようなものなのだろう。

何はともあれ、元に戻ってよかったと思う浮竹と、交われないなんて勿体ないなぁと思う京楽があったとさ。

















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いつものように、雨乾堂を訪れた京楽は、文机に向かって仕事をこなしている浮竹を、酒を飲みながら見ていた。

「君も、相変わらず仕事にせいがでるねぇ」

「ああ・・・・・少し前まで、熱で寝込んでいたからな。健康な今のうちに、少しでも書類を片しておかないと」

「真面目だねぇ」

京楽は、仕事のほとんどを副官である伊勢七緒に任せきりにしている。

そうでもしないと、日中から浮竹のいる雨乾堂に遊びに行けない。どうしても隊長である自分が片付けないといけない仕事は、ある程度ためてから片付けていた。

「君の背中を見ながら、酒を飲むのもいいけど、やっぱり君が一緒に飲んでくれないと、美味しくないねぇ」

「もうすぐ終わる。それまで待っていろ」

浮竹の背中に背中を預けて、京楽は酒を呷った。

「京楽は、仕事は伊勢副隊長に任せきりか?」

「当たり」

「たまには、自分で仕事もしろよ」

「ちゃんと、片付けないといけない仕事はこなしてるよ」

「そうか、それならいいんだが。だが、伊勢副隊長にあまり無理はさせるなよ」

「大丈夫。七緒ちゃんも慣れてるし、無理はしないしさせないよ」

暇だとばかりに、浮竹の長い白髪に指をからめて遊んでいると、浮竹が苦笑した。

「そんなに暇なら、俺の仕事の手伝いでもするか?」

「うーん、やめとく」

想像していた通りの言葉に、浮竹は京楽から酒をとりあげた。

「こんな日中から酒ばかり飲んでいると、体を壊すぞ」

「大丈夫、自分の体のことは自分が一番分かっているから」

取り上げられた酒を取り返して、一口、口に含むと、浮竹に口づけしながら酒を流し込んでいく。

「ん・・・・甘い・・」

いつもの、喉が焼けるような酒ではない。苺の味がした。

「果実酒か?」

「浮竹と飲もうと思って、もってきたものだからね」

京楽は、酒の入った酒瓶を振って、中身はまだ十分にあるのだと知らせた。

「おはぎももってきてるよ」

「仕事、早く終わらせる」

浮竹の大好物であるおはぎをちらつかせても、浮竹が仕事を放棄することはなかった。

一度仕事にとりかかると、片付けおわるまで大抵は動かない。

だが、京楽の酒の誘いとおはぎのお陰なのか、浮竹の仕事をこなすスピードが早くなった。

「よし、終わりだ」

一刻くらいして、浮竹が軽く伸びをした。
時刻をみれば、4時を回っていた。

「少し早いが、夕餉もとっていくだろう?」

「ああ、そうだね。君と食べるとなんでも美味くかんじるしね」

清音を呼んで、夕餉を持ってきてもらうように頼んだ。おはぎとお酒は、夕餉をとった後でいいだろう。

今日のメニューは、ちらし寿司だった。うなぎがのっかっている。

「うなぎか・・・・・・」

「嫌いなの?」

「いや。せいがつくからと、子供時代によく食べていたと思ってな」

「僕の分もあげるよ」

うなぎを浮竹の器に置くと、浮竹はそれならばと、デザートについていた苺を、京楽にあげた。

「苺、君も好きなんじゃなかったっけ」

甘いものを好む浮竹は、果実も好きだ。苺を本当にもらっていいのかとみると、浮竹はかまわないと、首を振る。

苺は、現世から仕入れてきたものだ。ビニールハウスで育てられたもので、13番隊の食事は他の隊のものと比べると、若干豪華だった。

隊長が病弱であるせいで、せいがつくものをと、浮竹の食事はとくに繊細に作られていた。

「清音か仙太郎にいえば、苺くらいいつでも持ってきてくれるしな」

「13番隊の食事は、新鮮なものがおおいからねぇ。浮竹が甘いものに目がないせいで、デザートもあるしね」

この時期に苺は、季節外れのために少々値がはるだろうが、大切な隊長のためならと、喜んで仕入れをしてくるだろう、13番隊の死神は。
その金を、実は陰で京楽が援助していた。

それを、浮竹は知らない。知れば、きっと怒るだろう。もっと金を大切にしろ、と。

もっとも、上流貴族で金のあまっている京楽にとっては、そんな出費は微々たるものだ。

夕餉を終えて、浮竹と京楽は杯を交わしあう。

京楽がもってきてくれた果実酒を口にすると、食べ損ねた苺の味がした。

「苺の果実酒か・・・・」

珍しいものを、京楽は見つけたものだなと、浮竹は思う。

いつもの果実酒は柑橘系だ。たまに味わう違う味に、浮竹は嬉しそうだった、

おはぎを食べながら、どんどん飲んでいく。

幸いにも、アルコール度が低いせいで、飲み潰れることはなかった。

「今度また、新しい果実酒用意しておくから。またもってくるよ」

二人で飲んでいると、果実酒は尽きてしまった。

雨乾堂に用意しておいた、浮竹用の果実酒の封をあける。檸檬の果実酒だ。

今日は随分と飲むなと、京楽は浮竹の様子を見るが、別段普段と変わったところはなかった。

「俺の酒だと、飲み足りないだろうが・・・・・・」

喉が焼けるような日本酒をいつも、京楽は飲んでいる。でも、たまには浮竹の好むような甘い酒もいいなと、京楽は浮竹から酒をもらってそう思った。

「たまには、君の飲むようなお酒も、いいもんだよ」

口に含んで、浮竹に口づければ、檸檬味の酒が浮竹の喉を流れていく。

「ん・・・・・・」

こくりとなる喉の白さに、眩暈を覚えた。

京楽は、また浮竹に口移しで飲ませる。

「美味しいかい?」

「ん・・・・・京楽も、飲め・・・・・・」

浮竹から口移しで飲まされて、その甘さにまた眩暈を覚えた。

浮竹を抱きしめる。浮竹は、素直にされるままだ。

このまま、流れに乗ってしまえばいいかもしれないが、そんなことをするためにここにきたのではない。

ただ、浮竹と酒を飲みに来たのだ。

扇情的な浮竹を前に、京楽は我慢した。

互いに、杯を交し合い、酒を飲んでいく。

夜は深まっていく。


二人は、夜更けまで飲みあって、結局京楽は雨乾堂に泊まっていった。









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日常Ⅲ

ジワジワと、アスファルトを照らす太陽が煌いている。
朝方はそれなりに涼しくとも、真昼になれば誰もが涼を求める。
夏休みも終わり、学校がはじまったからといって夏の暑さが過ぎたわけではない。
10月の半ばまでは冷房もいるだろう。

ルキアが尸魂界から、冬獅朗、乱菊、恋次、一角、弓親と一緒にやってきたのはつい最近のことだ。
他の死神メンバーは黒崎家に居候というわけにもいかず、ルキアのみが嘘の泣き落としで黒崎家に居候することになった。
以前は一護の押入れで寝泊りしていたが、さすがに体裁が悪いということで改造グッズをもちだしてきたのも空しく、妹たちの 部屋を宛がわれている。

そして、困ったことが訪れた。
学校へ行くには制服があるからいいのだ。
しかし、以前のように妹たちの服を勝手に拝借して着るわけにもいかない。
なぜならば客人ではなく、公然と黒崎家の一員として迎えられ、一護の父親には娘が増えたとまで言われる始末。

着るものも食べるもののなく、と泣き落としたのはいいが、実際に着るものに困っていた。
制服姿で一日中いるわけにもいかず、外に出るにもいつ虚が出るかもわからない。まして深夜などに出歩くこととなり、 そのまま制服で戦闘に突入すれば着替えようとあわせて2着しかない制服がっ。
以前、現世を去る前に制服姿で深夜に出歩いたことがあったが、警察官というものに捕まり、お説教をくらったことがある。
妹たちの服を借りようにも、本人のいるところで借りて着るというのもどうも心地がよくない。

着るものがない。
困った。
上記の理由からルキアは一護を(無理やり)伴って買い物に出かけることにしたのであった。


「服買うつったってよー。どこまでいくんだよ」

せっかくの休日で、今日は家でゴロゴロしようと決めていた一護は眉間に皺を寄せながら、ルキアの後をついていく。

「馬鹿者!買い物といえば場所はいろいろに決まっておろう!現世には死神衣装と違っていろいろとデザインというものがあるのだ。買うならば 気に入った物を探して買うのが当たり前であろうが」

ルキアが、尸魂界で石田雨竜からもらったワンピースを風に翻しながら振り返る。
着るものがないので、とりあえず貰ったものだし着ている現状だが、他に服がないのはルキアからしてみればかなり苦しい状況だった。

暑い中、汗をかいて服が汚れようがワンピース1枚。
どこの貧乏人だ。

ましてや4大貴族の姫と呼ばれても仕方のない身分にいるルキアには、着替えがないという状況は我慢できるものではなかった。
いざとなれば、一護の服を借りようと思っていたのだが、以前それをして後からかなり怒られた。





黒崎家に迎えられたルキアは、その日汗を流すために風呂にはいった。しかし、下着はあるものの着替えがない。困ったルキアは 、風呂上りにバスタオルを巻いただけという姿で一護の部屋を訪れた。

「着るものがない。服を貸せ」

そういって無断で部屋の扉をあけたとき、一護はベッドで寝転びながら勉強をしている最中だった。

「@★〇#$!!!」

言葉にならない悲鳴をあげて、飛び跳ねたかと思うと、顔を真っ赤にして視線をあわせようとせずに叫んだ。

「なんつーかっこしてやがんだ!」

「だから、服がないと言っている」

「そこのクローゼットに俺のがあるからとっとと何か着ろ!!」

一護の顔からは湯気が立ち上っている。
ルキアはクローゼットをのぞいて一護のTシャツを着たのだが(下着は着ていた)、あまりにぶかぶかでこれだけでもいいかと判断し、

「終わったぞ」

そう無造作に言い放った。
一護の視線がルキアに戻ると、一護は再び顔を赤くしながら

「何アニメかドラマみたいなベタな服の着かたをしてやがるーーーー!」

そう叫ぶので、ルキアはうるさいと肘鉄をかましたら、一護はベッドに沈没した。

なんでもこういうのは男を萌えさせるものの一つらしいと知ったのは、後で松本にこの話をしてからのこと。

「全く、たかが服1枚でそうぞうしい男だ。にしても、流石に大きいな」

ぶかぶかのTシャツのあまった部分をビローンと伸ばしながらつぶやいていると、コンコンと窓の外がノックされる。

一護は肘鉄が見事に顎にきまって伸びたままだ。
窓からノックとは、自分と同じ死神以外にはいないだろうと。ルキアは窓を開け放った。
スルリと音もたてずに入ってきたのは恋次だった。

「一護、すまねーなこんな時間に、ちょっと用が・・・・・ってブッ!」

恋次がみたものは、未だに髪から水を滴らせた、男物の大きなTシャツを着て、胸元とか太ももとかが露出しているルキアと、鼻血(肘鉄をくたっら衝撃で出た)を ドクドク流しながらベットにつっぷしている一護の姿だった。

ご丁寧に、シーツに血文字でルキアと犯人の名前を書いている・・・・。

恋次は、赤くなったかと思うと次に青くなって何故か黄色くなって(お前は信号か)、それからまた赤くなった。

「ルルルルルル、ルキア、ち、違うぞ、俺はのぞきにきたわけじゃねえ!」

「何がだ。見てのとおり一護は伸びているぞ。たたき起こそうか」

「っていうか何だこのシチュエーション!?は、まさか一護の野郎ルキアを襲ったのか!?」

錯乱している恋次の頭では、そういったことしか思い浮かばない。
そして、次の一言に恋次は心臓に刃をつきたてられた心境になった。

「違う。襲ったのは私だ(肘鉄をな←無論声にださずに)」

あんぐり。
恋次は固まった。

ツンツン。

一護のシャーペンでルキアがつつくも固まったままだ。

「だめだ、酒のみすぎたみてぇだ。これは幻覚だ。帰るか」

石から元に戻った恋次はやけに爽やかな笑顔をルキアにむけると、自分がきていた上着をルキアに羽織らせて、そのまま帰っていった。

幻覚でもルキアが一護の服一枚というのは納得がいかないし、まるで彼氏彼女のようで気分が悪い。自分の上着を羽織らせたのは半ば無意識だった。

「妙にリアルな幻覚だ・・・・。ちくしょう、一護にルキアはやらねーぞ」

屋根から屋根をつたいながら渡っていく恋次の独り言が、夜の闇に溶けていく。

「なんなのだ、全く」

全ては自分が元凶とは露知らず、ルキアは伸びている一護を放置で(ひでぇ)部屋を後にした。




そんなことがあって、次の日は休日ということもありルキアは一護を伴って買い物にでかけることにした。
当分の服を買うのだから、自分だけではもちきれない。荷物もちに一護は必要だ。

「一護、まずはあの店からだ!」

笑って、ルキアは一護の手をとって駆け出す。

「ってえええええランジェリーショップ!?!?待てルキア、俺は店の外でまっ・・・・」

「うるさい、黙っていついてこい」

足蹴りされながら、有無をいわせず店の中にひきこまれる。
当然、店内の客や店員の視線が一護に集中する。

「簡便してくれえええええええ」

さっそく女性ものの下着をルキアから手渡された(荷物もち係りに)一護は、ルキアがいない間の寂しさはどこへやら、今すぐ尸魂界にルキアを送り返したいとか 思いながら、天井を仰いでいた。

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またいつか

一護が完全に霊圧をなくして1年が経った。
 
「懐かしいな、この町も」
 
ルキアは、名も知らぬ家の屋根にたって、その町を見下ろす。
一護が生まれ、育った町。
 
「さて、いくか」
 
死神の衣装を纏い、斬魄刀を手に、ルキアは屋根伝いに走り出す。
 
一護の住んでいる黒崎医院までくると、勝手に窓をあけて中に入る。
中には、誰もいない。
 
この時間だと、一護は学校にいっている時間だろう。
 
「ね、ねえさんん!!」
 
気配を感じ取ったのか、コンが押入れから飛び出してきた。
それを蹴り倒して、ぐりぐりと踏みにじる。
 
「ああああ、姉さんの足!癖になるうううう」
 
口から綿がはみ出しそうな勢いのコンを放置して、ルキアは胸から一通の手紙を一護の机に置いた。
 
そして、何を思ったのかそのまま押入れに入ってうたた寝をはじめた。
 
「あー?なんだ、窓があけっぱなしじゃねーか」
 
帰宅した一護は、窓をとりあえずしめて、そして机の上に置かれた手紙に気付いて封を切る。
 
もう何度目になるかも分からない、ルキアからの手紙。
 
霊圧がなくても読むことが出きるような、特殊な紙で書かれたもの。
 
「はっ、変わらず字も絵もへたくそだな」
 
「へたくそで悪かったな」
 
「ぬおお、いたのか!」
 
押入れから飛び出した一護が見たのは、死神姿の見慣れたルキアの姿。
 
技術開発局に頼んで、霊力のない人間でも、姿が見えるような特殊な薬を作ってもらった。それを、先ほどルキアは押入れの中で飲んだところだ。
 
コンはガムテープでぐるぐる巻きして押入れの奥に、つっこんである。
 
「よお。元気かよ」
 
「たわけ。元気でないはずがなかろう」
 
「はは、そうだな」
 
他愛ない会話。
いつもの笑顔。
 
「きっと、またいつか。貴様が私の姿をいつでも見れるようなものを開発してもらう」
「そうだな」
 
じょじょに霞んでいく、ルキアの姿。
楼閣のように、崩れていく。足元から。
 
あの時のように。
消えていくルキア。
 
「なぁ。名を呼んではくれまいか」
 
「ルキア」
 
「貴様の声は心地よい」
 
ルキアは、笑顔を残して一護の視界から消え去った。
 
薬の効果が切れたのだ。
 
そして、唇に触れる感触。
ルキアが手を伸ばして触れたのだろう。
触れることはできる。でも声も聞こえないし、姿も見えない。
一護は少し屈むと、苦笑する。
 
「また痩せたか?」
「たわけ。そんなはずはない」
ルキアの声は一護には届かない。でも、応えずにはいられない。
 
一護は思いきりルキアを抱きしめた。
ルキアも一護の背中に手をまわす。
 
「いつか、元通りになれたらいいな。またお前と、笑って会話して・・・・」
「いつか、きっと。貴様に霊力を戻す方法を尸魂界でも探している。一護。好きだ」
 
届いていなくても。
声を、かけずにはいられない。
 
触れ合う唇。
音が止んだ。
 
「好きだぜ、ルキア。また遊びに来いよ」
 
勝手にまた開け放たれた窓から、風が入ってきた。
 
「またな、一護。虚退治に行かなくては。また、会おう」
 
姿が見えなくて声が聞こえなくても。
触れることはできるから。
心を重ねることはできるから。
俺は、私は一人ではない。
 
大好きだ。ありがとう。また、会おう。
 
また、いつか。
いつかまた、あの頃の日々を手に入れよう。
それまで、こうして貴様に会いにくるよ。一護。
 
今日もたくさんのありがとうを、貴様に。
 
「朽木ルキア、参る!」
 
タンと、窓を閉めて、虚の声に耳を澄ませ、ルキアは飛び立っていく。
一護は、掻き消えた温もりに、目を閉じるのであった。

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バースディ

12月20日は、日番谷の誕生日だった。

「誕生日おめでとう、シロちゃん」

雛森から誕生日プレゼントを渡されて、日番谷は嬉しそうだった。

「寒くなってきたから。マフラー・・・・手編みじゃないけど」

「こまけーことは気にすんな」

そうだそうだと、松本が酒を飲みながら、二人に絡んでくる。

「隊長、今年も誕生日おめでとうございます~。あたしからのプレゼントは~肩たたき券!」

「もっとましなもの用意できないのか」

「それが、今月飲み過ぎてピンチで・・・・・あはははははは」

日番谷の誕生日を、10番隊のみんなで祝っていた。だが、呼んでもいない面子もいた。

浮竹と京楽だ。

「日番谷隊長、誕生日おめでとう」

クリスマスも近いのでと、サンタクロースの恰好をした浮竹は、日番谷にお菓子セットを渡した。

「まだあるぞ」

赤い靴下の入れ物に、お菓子がいっぱいつまっていた。それを渡されて、日番谷はなんともいえない気分になった。

「子供あつかいするんじゃねぇ」

「まぁまぁ。同じシロちゃんだしいいじゃないか」

「こんなに食えるか」

「底の方には、甘納豆をいれておいたぞ」

「それを早く言え。それよりその恰好はなんだ」

「サンタクロースだ。知らないのか?現世の・・・・」

「サンタクロースくらい知ってる!」

だから、何故浮竹がサンタクロースの恰好をしているのかと、問い詰めると、浮竹は京楽を指さした。

「京楽がトナカイだからだ」

「は?」

京楽は、トナカイの恰好をしていた。

「ああ、日番谷隊長気にしいでくれないか。僕がトナカイの恰好すれは、浮竹がサンタクロースの恰好をしてくれるというから、こんな格好してるだけだから」

浮竹に着せたサンタクロースの服は、ちょっとひらひらしていた。

「京楽おまえ・・・・・」

頭を抱えこむ。

浮竹のかわいいサンタクロースの恰好に、女性死神が黄色い声をあげていた。

「浮竹隊長かわいい~」



松本が、浮竹に酒をもって絡んできた。

「お酒のみますぅ~?」

「ああ、もらおうか」

浮竹は、松本から杯を受け取ると酒を飲んだ。

「浮竹隊長、いい飲みっぷりですね!京楽隊長も飲みます?」

「いや、僕はいいよ」

「珍しい。京楽隊長がお酒飲まないなんて・・・・・・」

10番隊隊舎では、無礼講でみんなが酒を飲んだりして日番谷の誕生日を祝った。

「さてと」

時刻は、まもなく0時だ。

京楽は、トナカイ姿のまま、酔いつぶれている死神たちを踏んづけたりしながら、日番谷に声をかける。

「明日は、浮竹の誕生日だから・・・・・・日番谷隊長、祝ってやってほしい。明日の夜に、13番隊隊舎でパーティするらしいから」

「ああ、そうえば浮竹の誕生日は12月21日・・・・・・・俺と、一日違いか」

「そうなんだよ。プレゼントとかなくてもいいから、顔だけでも出してやってくれないか。きっと浮竹が喜ぶ」

「一応、プレゼントに酒を用意してある」

「じゃあ、また明日の夜にでも」

「ああ」

松本につられて、しこたま酒を飲んだ浮竹は、サンタクロース姿のまま眠ってしまっていた。

その体を抱き上げて、雨乾堂に戻る。

「おーい、浮竹」

揺さぶると、翡翠色の瞳がわずかにあいた。

「んー。もう飲めない・・・・・・・・・」

「0時だよ。誕生日、おめでとう」

京楽は、浮竹を抱きしめた。

「君が生まれてきたことに、最大の感謝を」

「京楽?」

「ん?」

「京楽も、生まれてきてくれてありがとう」

浮竹は、京楽を押し倒した。

「もしかして、酔っぱらってる?」

「酔っぱらってない」

浮竹は、京楽のトナカイの衣装を脱がせていく。日に焼けたその首筋に、キスマークを落とした。

「浮竹・・・・・・・」

零れ落ちる白い髪を、指で梳いてやると、浮竹は満足そうに微笑んだ。

トナカイの衣装を脱がされるのと一緒に、浮竹のサンタクロースの衣装を脱がしていく。似合っていたのにと思いながらも情欲のまま流れに任せた。

「ん・・・・・・」

浮竹は、自分から京楽に深く口づけた。

またキスマークを京楽の首に刻む。

「僕は、押し倒されるより押し倒すほうが好きなんだよね」

京楽と浮竹の位置が入れ替わる。

「あっ・・・・痕は、残すな・・・・・」

首筋にを吸い上げられて、浮竹は完全に覚醒したようだった。

毎年、浮竹の誕生日の0時になると、二人は交わる。今日も、それは変わらない。

いつ見ても見飽きることのない、細い浮竹の裸身が、白く輝いていた。

「あっ」

触れるだけのキスをされる。それから、全体の輪郭を確かめるように京楽の手が動いた。

肩甲骨から背骨のラインが綺麗で、唇を這わせていく。

浮竹の背中に、京楽はキスマークを残した。

見えない場所なら、痕を残しても浮竹は怒らない。

胸の先端の片方を舌で転がして、もう片方に爪をたてると、浮竹は京楽の髪をかき抱いた。

「も、いいから・・・・・・・早く、こい」

潤滑油を指にかけて、京楽は指で浮竹の中に侵入する。

「んっ」

いつ感じても、違和感は否めない。

蕾をほぐしていく動きに、浮竹は夢中になった。前立腺を刺激する動きに、浮竹は翻弄される。

「あ、あ・・・・・・」

ぐちゃぐちゃにかき回されて、蕾からは水音がした。

「もういいかい?」

浮竹にキスの雨を降らせて聞くと、彼はこくりと頷いた。

「いいから、早くこい・・・・・俺の中で、果てろ」

ごくりと、京楽はつばを飲み込んだ。

「ああっ」

突き上げると、浮竹の白い髪が畳の上に零れ落ちた。

「あ、あ・・・・・・・・」

何度も前立腺をすりあげていく。硬くなった浮竹の花茎に手をそえてしごくと、中がきゅっとしまった。

「十四郎・・・・・・・・」

「ああっ」

最奥を突き上げると、浮竹の体がずりあがる。

「やあっ・・・・・・」

「君から、求めたんだよ?」

逃げようとする体を制して、浮竹の細い足を肩にかつぐと、深く挿入した。

「やめっ・・・・・」

「やめない。君が、いやっていっても、やめない。今日は、特別な日だしね」

「っ・・・・・・・」

ぐりゃりと、中をかき乱す。

浮竹の弱い部分ばかりを突き上げると、彼は京楽より先に果てた。

「あ、あ、いったから、もう・・・・・やぁっ」

「僕はまだだよ・・・・・」

「春水っ」

頭が真っ白になって、何も考えられなくなっていく。

ただ、夢中に春水と名前を呼んだ。

「春水・・・・・も、むりっ」

京楽は、浮竹を追い上げていく。

何度も中を侵すと、浮竹は啼くばかりだ。結合部は、お互いの体液でぐちゃぐちゃになっていた。

「ああっ!」

強く最奥を突き上げると、浮竹は京楽の背中に爪をたてる。

京楽は、浮竹の最奥に欲望を放って、浮竹に深く口づけした。

舌をからめあい、歯茎の列をなめると、浮竹の体が震えた。

ずくりと、内部を侵す熱が、まだ硬かった。

「やぁ、もうやぁっ」

また中を侵すと、浮竹は涙を零しながら懇願する。

「無理だから・・・・・おかしくなるっ・・・・・」

でも、京楽は刻む律動を止めない。

「今日は特別な日だから・・・・いっぱい、愛させて?」

「春水っ」

オーガズムで、何度か浮竹が達する。

京楽は、ひとしきり浮竹を侵すと、また性を中に放って満足した。

「浮竹?」

「ん・・・・・・・・」

意識はあるようだった。

「ごめん、ちょっと無理させちゃったね」

「んー・・・・春水のえろじじい」

「ははは。愛してるよ、十四郎」

その後、軽く湯あみをしてお互を清めあう。2時もすぎた頃になると、浮竹はうとうとと眠りだした。

体を重ねるのは、浮竹にとっては大きな負担になる。ただでさえ、体が弱いのだ。無理をさせていると分かっていても、京楽は浮竹を交わることをやめれない。それは、浮竹とて同じことだった。



「もう、昼か・・・・浮竹?」

腕の中の浮竹は、まだ寝ていた。

「ちょっと、無理させっちゃったかな」

額に手を当てると、微熱があった。

「ごめんね、浮竹・・・・・・・」

ちゅっと、音をたてて頬にキスをした。京楽は13番隊隊舎にいた清音を呼ぶと、昼飯の用意と、解熱剤をもってくるように頼んだ。

京楽が戻ってくると、浮竹は起きていた。

「腰が痛い・・・・・・」

少し不機嫌そうだ。

「ごめん、夢中で君を貪ったから・・・・それに、久しぶりだったし」

その言葉に、浮竹は翡翠の瞳を瞬かせた。

「昼食頼んだけど、食べるでしょ?」

「ああ・・・・・・・・」

京楽は、かわいい恋人のご機嫌をとるのに必死になるのだった。



「浮竹隊長、お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう、清音」

「隊長、おめでとうございます」

「仙太郎も、ありがとう」

その日の夜、浮竹のバースディパーティが開かれた。

甘いものが好きな浮竹のために、いろんなスイーツが取り寄せられた。酒も、果実酒を用意してある。

「浮竹、おめでとう」

「日番谷隊長、来てくれたのか!」

「京楽にも言われたからな。ほら、プレゼント」

「おお、酒か。ありがとう!」

浮竹は、日番谷を気に入っている。その日番谷がプレゼントにくれたお酒は、梅酒だった。

いつだったか、養命酒を渡されたことがあるが、今回は普通の酒である。

浮竹は、その優しさと包容力から、他の隊の死神にも人気が高い。13番隊隊舎では、違う隊の
席官や死神の姿が見られた。

「浮竹、誕生日おめでとう」

「京楽も、ありがとう」

京楽が浮竹に用意したプレゼントは、絹で織られた夜着だった。

「また、高そうなものを・・・・・・・」

「これでも、遠慮したんだよ。本当は、僕の別邸をあげようかと思ったんだけど」

「いや、いらないからそんなもの・・・・・・・・」

京楽は、上流貴族なだけあって、高いものを選んでくる。酒の時は多いが、今回は服だった。

浮竹は、みんなに誕生日を祝われて、嬉しそうだった。

「また、来年も祝おうね」

「ああ。でもその前に、今度はお前の誕生日を祝わなければな。大分先だが・・・・・・」

京楽の誕生日は、7月だ。

「誕生日プレゼントは、君でいいよ」

「勘弁してくれ・・・・」

解熱剤のおかげで微熱は去ったが、貪られるように交わるのはきついものがある。

京楽の誕生日には、何をあげようかと、まだまだ先のことなのに、思案する浮竹であった。

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月見

その日は満月だった。

月見の季節で、雨乾堂の板張りの廊下で、静かに京楽と浮竹は酒を飲んでいた。

「月、綺麗だね」

「ああ。星も綺麗だしな」

まぁ一献と、酒を勧められるままに飲んだ。

団子を頬張るその姿が、どこかかわいいのだと、京楽は苦笑を零す。

「こんな月が綺麗な日は、昔のことを思い出すねぇ」

院生時代、よく月見をしては酒を飲みかわした。

「お前に連れられて行った廓のこと、まだ覚えているぞ」

女遊びの激しい京楽が、ぴたりと女を買うのをやめたのは院生の1回生の終わり頃。もうその頃には、浮竹を好きになっていた。

「そういえば、そんなこともあったねぇ」

嫌がる浮竹を連れて、馴染みの廓に行った。京楽は女を買うことはせず・・・・・無論、浮竹も女を買うようなことをしなくて、ただ遊女を侍らせて飲んだ。

廓の酒は驚くほど高くて、女を買わなくてもこんなに金がかかるのかと、浮竹はその値段に驚いたものだ。
女を買わなくても、指名するだけで買ったのと同じ値段がした。

「君、未だに童貞でしょ」

酒を飲む京楽は、笠を少しあげると月を仰ぎ見る。

「誰のせいだと、思っている」

まだ若い院生時代に、京楽のせいで男に抱かれて啼くことを覚えこまされた体は、たとえ遊びでも女を抱くことを躊躇させた。

「君の初めては、僕だものね」

「お前の初めてを、もらう気は全然ないがな」

酒を飲む。

もじゃもじゃの京楽に抱かれることはあれど、反対はない。

互いの杯に酒を注いで、呷る。

浮竹の飲んでいる酒は、アルコール度が高くて喉が焼ける。

浮竹の酒は、甘い果実酒だった。

「君の飲む酒は、甘いね」

「ああ。お前の飲む酒は、焼け付くようだ」

「高い日本酒だよ」

「俺は、果実酒のほうが好きだ」

自分の杯に、自分で用意した酒を注いでそれを一気に飲むと、月が笑ったような気がした。

「酔ったかな・・・・・・・・」

くらりと、視界が揺れる。

何度か互いの酒を交換して飲んだ。アルコール度の高い京楽の酒のせいで、浮竹は少し火照った体を手であおいだ。

「こっちにおいで」

呼ばれるままに傍にいくと、京楽は自分がかいた胡坐の足を、ぽんぽんと叩く。そこに、寝ろというのだ。

浮竹は、促されるままに京楽の足に頭を乗せた。

「月の光で、髪の色が余計に綺麗に見えるね・・・・」

長い白髪に手をやり、口元にもってきて口づけられた。

「お前のせいで、こんなに伸びてしまった」

院生時代から、綺麗だから伸ばせといわれて、自分ではさみをいれなくなった。長くなりすぎると、いつも京楽が切ってくれた。

「浮竹?おーい、浮竹ー」

「んー」

浮竹は、酒のせいもあってまどろみかけていた。

「こんなところで寝ると、風邪ひくよ」

「京楽が運んでくれるから、いい・・・・・・・・・・」

別に、甘えているわけではない。

浮竹が意識を失うと、京楽はいつも彼を雨乾堂の布団の上に横たえてくれた。酒に飲み潰れたりしてもだ。

「おう、飲んどるか?」

雨乾堂の廊下に、夜一がやってきた。

「なんだ、浮竹はもう酔いつぶれたのか」

面白くなさそうに、夜一は持ってきた酒を板張りの床において、胡坐を組んだ。

「まだ起きてる・・・・・・」

大分眠そうではあるが、浮竹はまだ意識があった。

「わしの酒を飲め」

「無理いうな。もう、今日は酒はいい・・・・・・・・」

京楽の膝に頭を乗せて寝転んだ浮竹は、スースーと眠ってしまった。

「つまらんやつじゃのう」

「まぁまぁ。酒なら、僕が付き合うから」

夜一の杯に酒を注いで、京楽は寝てしまった浮竹に、自分の女ものの着物の上着をかけた。

「砕蜂も呼べばよかったかのう」

「あの子は、酒あんまり飲めないでしょ」

「そうなのだ。酒を飲みかわすことができる酒豪となると、おぬしくらいしかいないからのう」

互いの杯に、互いの酒を注ぎあい、それを呷った。

「く、強い酒だの。美味じゃが。浮竹が飲み潰れるのが分かる気がする」

京楽の酒は、喉が焼けるようだった。

「浮竹は、甘い果実酒ばかり飲むからねぇ。僕の酒は、きつすぎるみたいだ」

「酔わせて、手を出すつもりだったか?」

「まさか。酔いつぶれて寝てしまった浮竹に手を出すなんて、面白くも何もないじゃないか。意識がない浮竹を抱くような真似はしないよ」

「その言い方、意識があれば手を出すと言っているのと同じじゃぞ?」

「勘弁してよ」

酒を飲んで、苦笑した。



京楽は夜一と一時間ばかり酒を飲みかわすと、浮竹を抱き上げた。

「風邪、引いちゃうからね」

「おーおー、見せつけてくれるのう」

京楽は、雨乾堂に敷かれたままの布団の上に、そっと浮竹を寝かせると、毛布とかけ布団をかぶせてやった。

浮竹は、スースーとよく眠っていた。

「おやすみ、浮竹。よい夢を」

額に口づけをしていると、雨乾堂の廊下から夜一の声がした。

「京楽、酒もってこーい。飲みたりんぞー」

「はいはい、今行くよ」

雨乾堂に隠していた酒をもちだして、封をあける。浮竹のために買っておいた酒だが、別にいいだろう。また、新しい酒を買ってくればいいだけだ。

「甘露じゃのお」

少しきつめの、でも甘い果実酒だった。

夜一は、それを浴びるように飲んでいく。

京楽は、夜一ほどの酒豪を他に知らない。いつも酒を飲みかわす浮竹は、酒に弱いわけでもないが、強いわけでもない。

「これ飲み終わったら、お開きにしようか」

「そうじゃの。砕蜂のことも気になるからの」

夜一は、褐色の肌に朱がさすほどに酒をのんで、帰って行った。



「僕もねるかぁ」

浮竹の布団にもぐりこんで、目を閉じるとすぐに睡魔がやってきた。

「京楽・・・・・・?」

朝になって、浮竹はいつの間に寝てしまったんだろうと思いながらも、まだ京楽が寝ているので
ゆっくりと布団から這い出した。

廊下をみると、空の酒の瓶がいくつも転がっていた。


自分が意識を失った後も、夜一と酒を飲みかわしたのだろう。遅くまで起きていたであろう京楽を気遣って、浮竹は雨乾堂を出ると、隊舎にいって清音を呼んだ。

「清音、いるか?」

「はい、隊長、おはようございます」

「朝食を二人分、頼む」

「はい、かしこまりました」




浮竹は、雨乾堂に帰ると、まずは顔を洗った。それから、京楽の髪に手を伸ばした。

くせっ毛で、浮竹のさらさらした髪とは違い、少し硬かった。

ゆっくりと、京楽の黒い瞳が開く。

「おはよう」

「ああ、おはよう」

浮竹の翡翠色の瞳に、京楽が映っている。

京楽は、起き上がると、浮竹の頬を手ではさみこんで、触れるだけのキスをした。

「おはようのキスだよ」

「朝食の用意ができている。食べて帰るだろう?」

「ああ、そうだね」

帰ったら、七緒ちゃんに叱られるなと思いながら、顔を洗ってから、京楽は浮竹と朝餉をともする。

「今日の夜、またきてもいいかい?」

「ああ、いいぞ。ただ、酒は飲まないからな」

もう十分飲んだ。酔い潰れるまで飲むのは、久方ぶりだった。


「んー。いい朝だね」

ゆっくりと伸びをする京楽を見習うように、浮竹は伸びをした。

「今日も一日、がんばろう」

「お互いにね」

こつんと額を合わせて、それから深い口づけをかわす。


「八番隊隊舎に帰るよ」:

「ああ」



世界は廻っている。

比翼の鳥は、羽ばたきはじめる。

時に互いを気遣いあいながら。





















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花火

「浮竹ぇー。遊びにいかないかい」
雨乾堂で文机に向かい、書類の整理をしていた浮竹に、京楽は被っていた笠をとって、浮竹にかぶせた。
「なんだ、いきなり!」
笠を手で払いのける。
「だからー、遊びにいかないかい?」
「こんな真昼間っからか。あいにく、俺には仕事があるんだ。またの機会にしてくれ」
つれない恋人に、京楽は近づいて、畳の上に落ちた笠を拾い上げる、
「10年に一度の祭りがあるんだ。出店だっていっぱい出るし、浮竹の好きな林檎アメや綿菓子だって、あると思うんだけどねぇ」
ぴくりと反応した浮竹は、軽く思案する。
「夕方からでも、いいか?どうしても今日中に片づけないといけない仕事があるんだ」
「夕方からでもいいよ。それに夜になれば花火もあがるしね」
「花火か・・・・・・」
久しく、見ていないなと浮竹は思った。
「じゃあ、夕方の6時半頃に迎えにいくから。それまでには、仕事終わらせといてね」
「ああ」
去っていく京楽の後ろ姿を確認してから、3席の二人を呼んだ。
「仙太郎、清音、いるか?」
「はい、ここにいます」
「私もここにいます」
「なんだこの鼻くそ!京楽隊長が用があるのは俺だ!」
「何よこの目くそ!京楽隊長は、私に用があるの!」
二人は、顔を合わせるなりぎゃーぎゃーと騒ぎ出した。
「二人とも、もっと仲良くできないのか・・・・・まぁいい。確か、5年くらい前に京楽からもらった浴衣があったはずだ。祭りに行く時に着ていくから、出しておいてくれ」
二人は、言い争いながら、それでも浮竹の願いをちゃんと聞き届けてくれる。
「隊長、浴衣きるんですね!想像しただけで色っぽすぎて、鼻血がでそう」
すでに、清音は鼻血をだしていた。
「うわこの変態女!大事にな浴衣に鼻血ついたらどうするんだ、このくそくそ女!」
「何よこの猿男!隊長が浴衣着るのよ!」
想像しただけで、仙太郎も鼻血をこぼしだす。
「おいおい。浴衣、鼻血で汚さないでくれよ」
「「ふぁい!」」
二人は、ティッシュを鼻につめこんで、大きな声で頷き合った。
緊急の仕事が終わり、6時頃になった。
浮竹は、隊長羽織と死覇装をぬいで、浴衣に袖を通した。
「今日も暑いからな・・・・・・清音、髪を結い上げてくれないか?」
「はい、隊長!」
浮竹の長い白髪は、清音の自慢だった。
とても綺麗で、さわりごごちがいい。螺鈿細工の櫛で梳いてから一つでまとめあげて、高価そうな翡翠の髪飾りで留めて、清音は満足したように浮竹の全身をみた。
「すごくお似合いです隊長!これなら、京楽隊長もきっと喜んでくれると思います」
「いや、別に喜ばすために着ているではないんだがな」
苦笑する。
でも、浮竹が身にまとっているものは、ほとんどが京楽からプレゼントされたものだった。
「浮竹、いるかい?迎えに来たよ」
「もうそんな時間か。すぐいく」
雨乾堂の外から響いた京楽の声に、小銭の入った財布をいれた巾着袋を手に、浮竹は京楽の元に向かった。
「あらまぁ・・・・えらい色っぽい恰好だねぇ」
浴衣姿を見た京楽は、笠を少しあげるとまじまじと浮竹の姿を見た。
白い肌と白い髪によく似合うような、紫紺色の浴衣。髪は結い上げられており、京楽が浮竹にと渡した髪留めで留められてあった。
いつもは見えない白いうなじがまぶしくて、京楽は目を細めた。
まるで、誘っているのはないか?
そんな錯覚を覚える。
一方の浮竹は、ただお祭りを楽しみたい一心だったので、京楽の手をとってぐいぐいと歩きだした。
「早く行くぞ!」
「はいはい。そんなに急かなくたって、祭りは逃げないよ」
「うわぁ、凄い人だなぁ」
その日は、10年に一度のお祭りだ。
流魂街でも比較的治安がよく、上級貴族なんかの邸宅もある地区での祭りだった。
「こんな人混みじゃあ、はぐれると大変だな。手を繋ごうか」
浮竹からの嬉しい申し込みを断るはずがない。
京楽は、浮竹と同じように浴衣を着ていたが、しぶい色合いの浴衣だった。浮竹の存在は、祭りの中でも目立っていた。
「あれ、浮竹隊長じゃない?」
「隣にいるのは京楽隊長だな」
「やだ浮竹隊長色っぽーい」
護廷13番隊の死神たちも、けっこう祭りに参加しているようで、二人を姿を遠巻きに見る見物人も出てくるしまつだった。
「まずは林檎飴だろ・・・・・・・・」
林檎飴の屋台にくると浮竹は小銭を出して京楽の分も買った。
「僕はいいのに」
「そう言うな。せっかくの祭りだし、楽しもうじゃないか」
林檎飴をかじりながら、浮竹は手を繋いだままの京楽と歩きはじめる。
「次は綿菓子だ」
子供が、綿菓子を作ってもらい、喜んで走っていくのを目にする。
「2つくれないか」
「毎度。おや、隊長じゃないですか!」
「あれ、そういうお前は・・・・」
店の主は、13番隊の、死神だった。
「色っぽい恰好ですね、隊長。綿菓子2つですね。ちょっとお待ちください」
京楽は、色っぽい恰好の浮竹の隣にいれることは嬉しかったが、変な虫がつかないように気配りを忘れていなかった。
熱い視線を送りこんでくる男がいれば、霊圧をむけて威圧した。
「お待ちどうさま!祭り、楽しんでいってくださいね」
金を払って綿菓子をもらい、それを口にしながら、歩いていく。
出店の道は、山の入口にある神社まで続いているらしかった。
「お、チョコバナナだ」
珍しい現世のお菓子をみて、浮竹は京楽を急かして、走り出した。
「すまないが、2つくれないか」
「いや、僕はいいから」
「じゃあ、1つ」
「毎度あり」
次々に甘いものを平らげていく浮竹に、京楽はちゃんとした食事をとらないとだめだなと思い、提案する。
「たこ焼きと、焼きそばも買おうか」
「ん?ああ、別にいいが」
二人分かいこんで、祭りを楽しみながら食べた。
「お、金魚すくいやってる。懐かしいなぁ」
何十年か前に、今日と同じように京楽と祭りにきた浮竹は、金魚を持ち帰った。はじめは雨乾堂の中の金魚鉢でかっていたが、大きくなりすぎて今では雨乾堂の鯉にまざって生きている。
「よし、1回やろう。ぼーっとしてないで京楽もするんだ。どっちが多く金魚とれるか、競争だ」
「僕、こういうの苦手なんだけどねぇ」
「いいじゃないか、たまには。祭りなんだし」
浮竹のポイは、ほどなくしてすぐに破れてしまった。
「大きいの狙ったのがあだになったか・・・・」
「この勝負、僕の勝ちだね」
20匹ほどの金魚をすくいあげて、お椀の中を見せる京楽。
「金魚、持って帰りますか?お持ち帰りだと、追加のお金がかかりますが」
「いや、僕はいいよ。浮竹はどうする?」
浮竹は、逡巡した後首をふった。
「寝込んで世話できない可能性あるからな・・・・雨乾堂の池に放とうにも、鯉がでかくなりすぎて、金魚を食べてしまいそうだ」
少し残念そうに、金色の金魚をみる浮竹。
「じゃあ、僕が持って帰るよ。8番隊の隊首室で飼おう。世話は僕がするから、浮竹は見に来ればいいよ」
浮竹が、僕の隊首室にくるいいわけにもなるし、という言葉は飲み込んだ。
ひゅるるるるる、パーン。
「お、花火だ」
「浮竹、いい場所知ってるんだ。こっち!」
浮竹は、京楽につれられるまま、河原にやってきた。途中、林檎飴を購入する。、
河原には、人はほとんどいないかった。
「この祭りの花火は、ここから見るのが絶景なんだよ」
「そうか。綺麗だな・・・・・・・・・」
ひゅるるるる、パーン。
花火は次々に打ちあげられて、夜空に光の花を咲かす。
花火は儚い。光の雨となって、消えていく。
京楽と浮竹は、河原に座り込んで、ただじっと花火を見つめていた。
1時間ばかり、空を見上げていた。花火も終わってしまい、出店も閉じられていく。
帰り道に、浮竹は京楽にお礼をいった。
「祭りに、誘ってくれてありがとう。また、機会があればこような」
うなじの白さに、ドキリとする。自分があげた髪飾りを、つけてくれている。浴衣も、自分があげたものだ。
「君が望むなら、何度だって連れていくよ」
抱き寄せる。
京楽の手首には、金魚の入った透明な袋がぶら下げらていた。
金魚を落とさないように注意しながら、浮竹に口づけた。浮竹は、河原に来る前に林檎飴を再度購入していた。
「・・・・・甘い」
キスは、林檎飴の味がした。
浴衣から見える白い肌に、京楽は目の毒だなと思いつつも、つい目をやってしまう。
「浮竹。僕のいないところで、そんな恰好しちゃだめだよ」
「?なんかおかしなところ、あったか?」
「色っぽすぎるんだよ」
白い髪に手をやり、口づける。
「俺は男だし、そんな気を起こすのはお前くらいだ」
浮竹は分かっていない。自分が、どれだけ儚く美しいのかを。
「少し、冷えてきたね。帰ろうか」
京楽は、念のためにともってきていた上着を京楽に着せて、雨乾堂に浮竹を送り届けた。
「ただいま」
「隊長、お帰りなさい!」
浮竹は、清音と仙太郎の分の林檎飴も購入していた。
「これ、お土産だ」
「ありがとうございます、隊長!」
「感激で涙が止まりません、隊長!」
三席の二人を見るのは飽きないなと、浮竹を送り届けて帰る寸前だった京楽は思った。
「隊長!やっぱりその浴衣、よく似合ってます!」
「このくそ女!俺の台詞とるな!」
「なにぃ、この鼻くそ仙太郎が!」
「なんだと、この鼻くそ清音!」
「お前のほうがすごい鼻くそだ!」
「いいや、お前のほうが巨大な鼻くそだ!」
「ロケット鼻くそのくせに!」
「なんだと!この鼻くそ隕石が!」
「相変わらずだねぇ」
京楽は、自然な笑みが零れるのを自覚した。
「じゃあ浮竹。また明日」
「ああ。わざわざ送ってくれて、ありがとう」
大分出店で食べたので、今日はもう夕飯はいらないと、三席の二人に告げて、浮竹は湯あみを済ませて色合いの薄い着物に着替えた。
その着物も、京楽が浮竹に与えたものだ。
いつも処方されている肺の病のための漢方薬を飲んで、お茶をすする。
「鼻くその鼻くその鼻くそ!」
「巨大隕石の鼻くその目くそ星人!」
雨乾堂では、清音と仙太郎がまだ言い合いをしていた。
「清音、すまないが少し早いが横になる。布団をだしてくれないか」
「すみません隊長!布団しくの忘れてました!」
「ふふん、俺は覚えたぞ。隊長、俺がだしますね!」
仙太郎が、清音を放り出して押入れから布団をだすと、手早く広げた。
「あーっ、このくそ仙太郎!隊長は、私に布団を出せと頼まれたのよ!何勝手にあんたが布団だしてるのよ!」
「うるさい、このくそ清音!早い者勝ちだ!」
二人の言い合いを耳にしながら、まだ寝るには早いので図書館から借りてきた恋愛ものの書物を読みだす。
「ふむ・・・・・喧嘩するほど仲がよくて好きあっている・・・・」
陳腐なその内容に、目の前の二人をあてはめてみる。
「清音、清音は仙太郎のことが好きなのか?仙太郎も、清音のことが好きだから、喧嘩してるのか?」
「!?」
二人は互いに顔を見合わせてから、真っ青になった。
「こんな類人猿!好きなはずありません!」
「それはこっちの台詞だこのミトコンドリア!」
二人は、ぎゃいぎゃいいいあって、ふと気づく。
「隊長。何読んでるんですか」
「いや、京楽からすすめられた本を・・・・・・・・・・」
「変な内容じゃないですよね!?」
「いや、変といえば変かな。男同士で恋愛しているから」
いわゆる、現世でいうボーイズラブの小説だった。
「あのくされ隊長、うちの隊長にまた変なものを!」
仙太郎は、浮竹からボーイズラブ小説を奪うと、自分が借りていてきていたギャグ探検ものの小説を手渡した。
「あ、こっちのほうが面白いな・・・・・・・・」
奪い取られた小説に未練など全くない。
「隊長、この腐った小説はこの仙太郎が責任をもって京楽隊長に返しておきます!」
「ああ、そうしてくれ」
浮竹は、ギャグものの探検小説が気に入ったのか、のめりこんでいく。
「まったく、あの腐れ隊長・・・・・・・・・うちの隊長に手を出すだけでも許しがたいのに・・・・・・・」
「それ、私も同意だわ」
仙太郎と清音は、珍しく意見が一致した。
二人で顔を合わせる。
京楽隊長の魔の手から、浮竹隊長をどうやって救いだそうかと、二人はこそこそと議論しだす。
「はっくしょい」
その頃、腐れ隊長こと京楽は、さぼっていたために残っていた書類を片付けていた。
「浮竹が、僕のうわさしてるんだろうなぁ」
全然あってなかった。

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浮竹は、甘いものが好きだ。

甘味ものに目がない。果物も好きだった。

季節は初夏。

桃をむくと、その甘ったるい匂いに釣られて、浮竹が寝ていた布団から這い出してきた。

「お前が食べるのか?」

ほしいと、顔にかいてあった。

京楽は苦笑して、皮を剥いて適当な大きさにカットした桃を入れた器を渡した。

「ちゃんと冷やしておいたから、きっと美味しいよ」

ルキアに、氷をだしてもらい、それで冷やしておいた。現世には冷蔵庫という便利なものがあるが、尸魂界は基本的に氷をいれて冷やす冷蔵庫しかない。

桃を一つかじって、浮竹がつぶやく。

「甘い・・・・・・」

甘ったるい匂いが、雨乾堂に漂う。

「京楽、お前も食え」

爪楊枝でさされた、カットされた桃を口元にもってこられる。

京楽はそれを一口だけ食べて、浮竹に口づける。

「んっ」

浮竹の喉から、甘い声が出た。

「京楽・・・・・?」

浮竹の、長い白髪を指ですいてやると、口中に桃の味が広がった。

口に含んだ桃を、口づけのついでに渡されて、それを咀嚼して飲み込むと、ゴクリと自分が思っていた以上に大きな音がたった。

「ふっ・・・・・・」

浮竹が、桃の汁にまみれた京楽の指に舌を這わす。

「誘ってるのかい?」

「さぁ?」

押し倒すと、桃の甘ったるいにおいにまじって、浮竹の甘い香りがした。

ぱさりと、畳に浮竹の長く白い髪が流れる。

口づけを交わす。

桃の味がした。

「桃、もう一つあるんだけど、食べるかい?」

「今は、いい・・・・・・」

お前を貪りたいのだとばかりに、口づけられる。

全体の輪郭を確かめるように指を這わすと、浮竹がびくりと体を強張らせた。

「力、ぬいて?」

また口づける。

何度も口づけると、甘ったるい気分になってきた。

「きょうら・・・く・・・・・・」

京楽の体の下で、浮竹は乱れていく。

そうさせることができるのは、自分だけなのだと、刻むように見えない場所に痕を残した。

「あ、あ、あ・・・・・・・」

刻む律動に、浮竹が上ずった声をあげる。

浮竹の中は、吸い付いてくるようで、酷く心地がよかった。

「ごめん、潤滑油、少し足りなかったね」

「大丈夫、だから・・・・・・」

相手を思いやる気持ちを、忘れてはいけない。

京楽は、一度浮竹の中から出ると、己の熱に潤滑油をぬりこんで、また浮竹の中を侵した。

「あっ」

浮竹の声のトーンが、あがっていく。

そろそろ限界が近いのだと、お互いに認識しあう。

「あうっ」

浮竹のいいとこを突きあげると、彼は白い髪を乱してあえぐ。

「十四郎、愛してる」

「あ、あ、あ・・・・・・・春水っ!」

名を呼ばれたのと同時に、浮竹の中に熱を放った。浮竹も、京楽の手の中に熱を放った。

ぐったりと弛緩した体を抱きしめる。

「浮竹?」

「・・・・・・・ん」

ほんの少しの間、意識を飛ばしていた浮竹は、京楽の肩に爪をたてた。



「桃、もう一つ食べる?」

「食べる・・・・・・・・・」

雨乾堂には、甘ったるい匂いが満ちている。

桃の果実と、浮竹の、甘いにおいに。

冷蔵庫から桃をとりだして、むいていく。浮竹に食べさせてやる。

行為の後のせいで、気だるげな浮竹はそれはそれは色っぽかった。

桃を食べ終えると、その耳朶を噛んで、耳元で囁いた。

「もう一回、抱いてもいいかい?」

こくりと、浮竹は頷く。


かわいい恋人は、とても儚げだ。でも、芯は強い。病弱で細い体をしているが、お互いの命を預けて、背中合わせに戦うことができるくらいに、強い。

そんな浮竹の、乱れる姿を見ることができるのは、京楽だけだ。


「桃、また買ってくるね・・・・・・」

「んー・・・・・・」

甘ったるい果実は、浮竹に似ていると、京楽は思った。



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