飲んだくれ
日番谷と松本と、ルキアと一護と恋次、んでもって浮竹に京楽というわけのわからない面子がそろっていた。
一護の部屋で、松本と浮竹と京楽は酒を飲んでいた。
日番谷とルキアと一護と恋次は、ジュースを飲んでいた。
恋次は、酒もたまに飲んでいたが、ルキアに合わせてコーラなんて飲んでいた。
飲料のお金をだしてくれたのは、京楽だった。一護にぽんっと、一万円札を渡して。
ルキアと一護が、ジュース類の他にお菓子、あとは酒を飲む三人のためにつまみを買い出しに行った。
そして今に至る。
すでに、松本はかなり酒が入っていて、酒くさかった。
「じゃーん。今回のタイトル・・・・・・・・ずばり、初めてのキスの相手は誰だ!さぁ、順番に・・・・・・・・まずは隊長から!」
日番谷は、さらりと答えた。
「雛森だ」
「「「おおーーー」」」
誰しもが、納得した。
日番谷と雛森が、拙いながらも交際をしていることは、尸魂界ではちょっとした噂話になっていた。
「じゃあ次はあたしー。あたしは、ギンかな。亡くなっちゃたけど・・・・」
松本が暗くなると、みんなもつられて少し暗くなった。
「じゃあ次、ルキア!」
「むっ・・・・・わ、わたしはその・・・・秘密だ」
「えーんいけずう」
松本が、酒を呷る。
「じゃあ次、一護!」
「俺か?俺はルキアだな」
「なにぃ!」
一護の答えに、恋次が一護の首を締めあげた。
「てめぇ、いつの間にルキアに手だしたんだ!」
ルキアは真っ赤になって、あわあわしだした。
「恋次、やめぬか!そういう恋次も、幼い頃私に口づけをしたであろう!」
「なんだと・・・・おい恋次、初耳だぞ」
今度は、一護が恋次につめよると、二人して喧嘩をしだした。ルキアが止めに入っている間も、松本は止まらない。
「次、浮竹隊長!」
「俺か?俺は・・・・京楽だが?」
隠すこともしない答えに、その場にいた全員が、静かになった。
「じゃあ、京楽隊長はもしかして?」
「ああ、僕も答えは浮竹だよ。もっとも、キスだけじゃなくってヴァージンなるものももらちゃったけどね」
その場にいた、浮竹と京楽以外のみんなが、恥ずかしそうにしていた。
「やーん、京楽隊長!浮竹隊長といつからできてたの!」
松本は、酒を呷って赤くなりながらも、京楽に探りをいれてくる。
「院生時代からかなぁ。現世でいう、16、17あたりの頃にはできてたよ。なぁ、浮竹?」
「院生の2回生だから、もう少し後じゃないのか」
浮竹と京楽は、互いの関係を隠していない。
さらりと真実を打ち明けられて、その場にいた大半の者が朱くなった。
「やっぱ浮竹さんって京楽さんとできてたんだな・・・・」
こそこそ耳打ちする一護に、ルキアは頷く。
「尸魂界では、公認カップルになっている」
「もう、ここまでくると、夫婦みたいなもんだぜ」
恋次が零す。
尸魂界で一番仲のいいカップルは誰かと聞かれたら、十中八九、浮竹と京楽と答える死神が多いだろう。
「くだらねぇ・・・・・・」
日番谷は、オレンジジュースを飲み干した。
浮竹と京楽ができていることなど、もうかなり前から知っている。
その関係を隠さないのは、潔いといえばそうだが、よく恥ずかしくならないなとも思う。
その後、しばらく京楽ののろけ話が続いたそうな。
数分後、べろんべろんによっぱらった松本は、日番谷に連れられて尸魂界に帰っていった。恋次もそれについていった。
ルキアは、現世に残るらしい。
「俺たちも、お暇するか」
「そうだねぇ。酒もなくなったことだし」
京楽と浮竹も、ひとしきり酒を飲んで満足したのか尸魂界に帰っていった。
残されたルキアと一護は、溜息を零した。
京楽ののろけ話に。
それを聞いて、平気でいられる浮竹の器の大きさに。
「一護」
「なんだ、ルキア」
「後片付けは、貴様に任せたぞ!私は、ちょっと浦原の店にいってくる」
ルキアはその場を逃げ出した。
「あっ、ずりぃ!」
大人数が飲み食いしたせいで、ゴミは相当な量になっていた。
「ま、たまにはいいか・・・・・・・」
京楽と浮竹がくるのは、予定外だったが。
一護の部屋には、よく死神が集まる。現世組やら、派遣されてきた死神やらが。
「それにしても浮竹さんと京楽さん、仲よかったなぁ」
互いを比翼の鳥のように必要としあっているのが、接しているだけでもわかった。
そんな仲にルキアとなれたらいいなと、一護は思うのだった。
一護の部屋で、松本と浮竹と京楽は酒を飲んでいた。
日番谷とルキアと一護と恋次は、ジュースを飲んでいた。
恋次は、酒もたまに飲んでいたが、ルキアに合わせてコーラなんて飲んでいた。
飲料のお金をだしてくれたのは、京楽だった。一護にぽんっと、一万円札を渡して。
ルキアと一護が、ジュース類の他にお菓子、あとは酒を飲む三人のためにつまみを買い出しに行った。
そして今に至る。
すでに、松本はかなり酒が入っていて、酒くさかった。
「じゃーん。今回のタイトル・・・・・・・・ずばり、初めてのキスの相手は誰だ!さぁ、順番に・・・・・・・・まずは隊長から!」
日番谷は、さらりと答えた。
「雛森だ」
「「「おおーーー」」」
誰しもが、納得した。
日番谷と雛森が、拙いながらも交際をしていることは、尸魂界ではちょっとした噂話になっていた。
「じゃあ次はあたしー。あたしは、ギンかな。亡くなっちゃたけど・・・・」
松本が暗くなると、みんなもつられて少し暗くなった。
「じゃあ次、ルキア!」
「むっ・・・・・わ、わたしはその・・・・秘密だ」
「えーんいけずう」
松本が、酒を呷る。
「じゃあ次、一護!」
「俺か?俺はルキアだな」
「なにぃ!」
一護の答えに、恋次が一護の首を締めあげた。
「てめぇ、いつの間にルキアに手だしたんだ!」
ルキアは真っ赤になって、あわあわしだした。
「恋次、やめぬか!そういう恋次も、幼い頃私に口づけをしたであろう!」
「なんだと・・・・おい恋次、初耳だぞ」
今度は、一護が恋次につめよると、二人して喧嘩をしだした。ルキアが止めに入っている間も、松本は止まらない。
「次、浮竹隊長!」
「俺か?俺は・・・・京楽だが?」
隠すこともしない答えに、その場にいた全員が、静かになった。
「じゃあ、京楽隊長はもしかして?」
「ああ、僕も答えは浮竹だよ。もっとも、キスだけじゃなくってヴァージンなるものももらちゃったけどね」
その場にいた、浮竹と京楽以外のみんなが、恥ずかしそうにしていた。
「やーん、京楽隊長!浮竹隊長といつからできてたの!」
松本は、酒を呷って赤くなりながらも、京楽に探りをいれてくる。
「院生時代からかなぁ。現世でいう、16、17あたりの頃にはできてたよ。なぁ、浮竹?」
「院生の2回生だから、もう少し後じゃないのか」
浮竹と京楽は、互いの関係を隠していない。
さらりと真実を打ち明けられて、その場にいた大半の者が朱くなった。
「やっぱ浮竹さんって京楽さんとできてたんだな・・・・」
こそこそ耳打ちする一護に、ルキアは頷く。
「尸魂界では、公認カップルになっている」
「もう、ここまでくると、夫婦みたいなもんだぜ」
恋次が零す。
尸魂界で一番仲のいいカップルは誰かと聞かれたら、十中八九、浮竹と京楽と答える死神が多いだろう。
「くだらねぇ・・・・・・」
日番谷は、オレンジジュースを飲み干した。
浮竹と京楽ができていることなど、もうかなり前から知っている。
その関係を隠さないのは、潔いといえばそうだが、よく恥ずかしくならないなとも思う。
その後、しばらく京楽ののろけ話が続いたそうな。
数分後、べろんべろんによっぱらった松本は、日番谷に連れられて尸魂界に帰っていった。恋次もそれについていった。
ルキアは、現世に残るらしい。
「俺たちも、お暇するか」
「そうだねぇ。酒もなくなったことだし」
京楽と浮竹も、ひとしきり酒を飲んで満足したのか尸魂界に帰っていった。
残されたルキアと一護は、溜息を零した。
京楽ののろけ話に。
それを聞いて、平気でいられる浮竹の器の大きさに。
「一護」
「なんだ、ルキア」
「後片付けは、貴様に任せたぞ!私は、ちょっと浦原の店にいってくる」
ルキアはその場を逃げ出した。
「あっ、ずりぃ!」
大人数が飲み食いしたせいで、ゴミは相当な量になっていた。
「ま、たまにはいいか・・・・・・・」
京楽と浮竹がくるのは、予定外だったが。
一護の部屋には、よく死神が集まる。現世組やら、派遣されてきた死神やらが。
「それにしても浮竹さんと京楽さん、仲よかったなぁ」
互いを比翼の鳥のように必要としあっているのが、接しているだけでもわかった。
そんな仲にルキアとなれたらいいなと、一護は思うのだった。
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あいつ
いつも、起きるとあいつの顔を思い出した。
はねた黒髪に、珍しい紫色の瞳。
「たわけ!大ばか者!」そういって、けっこうな威力の蹴りを放つあいつの姿が、頭から離れなかった。
「これはどうやって飲むのだ?」
現世に来た頃は、同じクラスになっていた。
パックジュースの飲み方さえ知らない、その純白の雪のようなあいつが、現世のいろんな知識に触れ、なじんでいくのが面白かった。
「住むところも、お金もないんです」
親父の前で、ウソ泣きするあいつに苦笑を零した。
いつものように、俺の部屋の押し入れで寝起きするあいつの、朝のあいさつを聞くのが日課になっていた。
「弱くて、すみませんでした!」
俺の頭を、井上の前で無理やり下げさせる、あいつはけっこうな腕力があって。
その細い体から、どこをどうすればそんな力が出るのだと思った。
「舞え、袖白雪!」
舞を舞うように、氷を自在に操るあいつは、見た目よりずっと強かった。
席官クラスの実力をもっていると聞いたのは、それから少し後のことだった。
あいつは、強い。
確かに脆い部分もあるが、芯が強くて、何より仲間を大事にした。
俺に対しての言動は、少し雑なところがあったが、それも心地よかった。
気づいたら、俺は。
あいつのことを、好きになっていた。
その想いを、全部内に秘めたまま、時間だけが過ぎていく。
あいつの姿が、霊力をなくしたことで消えていく。
「別れは言わぬぞ」
「ああ・・・・・・またな」
あいつの、紫の瞳に映る俺の姿は、少しだけ悲しそうな色をしていた。
「ルキア!」
あいつの名を叫ぶと、少しづつ見えなくなっていくあいつが、振り返った。
「また、いつでも遊びにこいよな!」
姿が見えなくて、声がきこえなくとも。
書かれた文字を読むくらいは、できる。
あいつの霊圧を完全に感じれなくなったころ。
俺は、あいつに向かって、自分でも驚くほどのめちゃくちゃ明るい笑みを刻んで、手を振っていた。
「ルキア、またな!」
永遠の別れではない。
力を失い、皆を守ることが確かにできなくなってしまったけれど。
あいつとの繋がりが、全て消えたわけではない。
「何々・・・・冷蔵庫に、シロクマアイスを買って入れておけ・・・?また、アイスばっかだな、あいつは・・・・・・・・」
あいつの姿は見えないし、声も聞こえないけれど。
確かに俺たちを結ぶ糸は繋がっている。
たとえ、霊力をなくしても。
ノートに書き綴られた、あいつの上手いとはいえない絵と文字に、苦笑を零す。
俺とあいつは、確かに繋がっている。
あいつに、好きだと伝えなかったことを、後悔はしていない。好きだと伝えなくても、その糸は繋がっているから。
あいつは、きっと俺にとっての太陽のようなものだろう。
あいつは、強い。
けれど儚く脆い。
矛盾するあいつの全てが好きだ。
時間は過ぎてく。
世界は廻っている。
いつか、またあいつの姿が見れるようになったら。あいつだけでなく、たくさんの仲間を守れるようになったら。
繋がった糸がくっきりと形を成すようになったら、伝えよう。
好きだと。
ただ、あいつにだけ伝えよう。
この狂おしい気持ちを。
はねた黒髪に、珍しい紫色の瞳。
「たわけ!大ばか者!」そういって、けっこうな威力の蹴りを放つあいつの姿が、頭から離れなかった。
「これはどうやって飲むのだ?」
現世に来た頃は、同じクラスになっていた。
パックジュースの飲み方さえ知らない、その純白の雪のようなあいつが、現世のいろんな知識に触れ、なじんでいくのが面白かった。
「住むところも、お金もないんです」
親父の前で、ウソ泣きするあいつに苦笑を零した。
いつものように、俺の部屋の押し入れで寝起きするあいつの、朝のあいさつを聞くのが日課になっていた。
「弱くて、すみませんでした!」
俺の頭を、井上の前で無理やり下げさせる、あいつはけっこうな腕力があって。
その細い体から、どこをどうすればそんな力が出るのだと思った。
「舞え、袖白雪!」
舞を舞うように、氷を自在に操るあいつは、見た目よりずっと強かった。
席官クラスの実力をもっていると聞いたのは、それから少し後のことだった。
あいつは、強い。
確かに脆い部分もあるが、芯が強くて、何より仲間を大事にした。
俺に対しての言動は、少し雑なところがあったが、それも心地よかった。
気づいたら、俺は。
あいつのことを、好きになっていた。
その想いを、全部内に秘めたまま、時間だけが過ぎていく。
あいつの姿が、霊力をなくしたことで消えていく。
「別れは言わぬぞ」
「ああ・・・・・・またな」
あいつの、紫の瞳に映る俺の姿は、少しだけ悲しそうな色をしていた。
「ルキア!」
あいつの名を叫ぶと、少しづつ見えなくなっていくあいつが、振り返った。
「また、いつでも遊びにこいよな!」
姿が見えなくて、声がきこえなくとも。
書かれた文字を読むくらいは、できる。
あいつの霊圧を完全に感じれなくなったころ。
俺は、あいつに向かって、自分でも驚くほどのめちゃくちゃ明るい笑みを刻んで、手を振っていた。
「ルキア、またな!」
永遠の別れではない。
力を失い、皆を守ることが確かにできなくなってしまったけれど。
あいつとの繋がりが、全て消えたわけではない。
「何々・・・・冷蔵庫に、シロクマアイスを買って入れておけ・・・?また、アイスばっかだな、あいつは・・・・・・・・」
あいつの姿は見えないし、声も聞こえないけれど。
確かに俺たちを結ぶ糸は繋がっている。
たとえ、霊力をなくしても。
ノートに書き綴られた、あいつの上手いとはいえない絵と文字に、苦笑を零す。
俺とあいつは、確かに繋がっている。
あいつに、好きだと伝えなかったことを、後悔はしていない。好きだと伝えなくても、その糸は繋がっているから。
あいつは、きっと俺にとっての太陽のようなものだろう。
あいつは、強い。
けれど儚く脆い。
矛盾するあいつの全てが好きだ。
時間は過ぎてく。
世界は廻っている。
いつか、またあいつの姿が見れるようになったら。あいつだけでなく、たくさんの仲間を守れるようになったら。
繋がった糸がくっきりと形を成すようになったら、伝えよう。
好きだと。
ただ、あいつにだけ伝えよう。
この狂おしい気持ちを。
吐血
定期的に行われる、隊首会がめんどくさくて、京楽は山本総隊長の様子を見てはあくびをかみ殺していた。
「では、解散!」
13番隊隊長たちが、それぞれ自分の隊舎に戻っていく中、浮竹は強く手を握りしめて立っていた。
「浮竹?」
ぽたぽたと、手から血が流れる。
「浮竹!?」
ぐらりと、その細い体が傾ぐ。
「げほっ・・・・・ごほっごほっ」
強く咳き込んだ。
傷ついた手のひらからの出血ではない、吐血による血が床に広がる。
「すまない・・・・・・ごほっ、ごほっ」
他の隊長や山本総隊長に、弱い部分を見られるのがいやで、発作を我慢していたのだ。手のひらに爪をたてるほどに。
「謝罪なんていいから!4番隊隊舎に連れて行くよ!」
浮竹の軽い体を抱き上げて、京楽は立ち上がった。
「京楽、着物に血が・・・・・ごほっ」
ごぽりと、音をたてて大量に吐血する。
血が喉につまったのか、気管からヒューヒューと音がする。京楽は逡巡もなしに浮竹から血を吸い上げると、床に吐き出した。
「すま・・な・・い・・・・・・・・」
弱弱しく謝って、浮竹は意識を手放した。
「卯ノ花隊長はいるかい!?」
瞬歩で、浮竹を胸に抱いたまま、京楽は四番隊隊舎にやってくると、その場にいた死神を捕まえた。
「卯ノ花隊長なら、先ほどご自分の隊首室に戻られましたが・・・・」
「そうかい」
礼をいう暇も惜しい。
腕の中の浮竹は、意識を手放しているが苦しそうに呼吸していた。肺の病の発作が最近なかったので、京楽はどこかで安堵していたのだ。
彼が、真紅を吐き出すのがいやでいやで。
その真っ赤な色が、浮竹の命を削っていくのがいやで。
発作の少ない浮竹の小健康状態に慣れてしまっていたのが、仇になった。
「卯ノ花隊長、失礼するよ!」
瞬歩で卯ノ花隊長のいる隊首室にやってくると、ふすまを足であける。
「京楽隊長?」
勇音とお茶を飲んで談笑していた卯ノ花が、立ち上がった。
京楽の着ている隊長羽織が、浮竹の吐血で真っ赤になっていた。
「すぐ、部屋に運んでください、京楽隊長!勇音もきなさい!浮竹隊長が倒れたのはいつですか!?」
「さっきだよ!」
浮竹の体を寝台に横たえる。
発作を起こしてすぐに卯ノ花隊長に診てもらい、回道で手当てを受けたの幸いして、浮竹は大事に至らなかった。
だが、一週間ほど意識を取り戻さなかった。
「僕はバカだねぇ。君が、肺を患っていることをすっかり失念していた」
寝込んだまま、点滴に繋がれた細い手が、痛々しかった。
京楽は、仕事を浮竹の病室にもちこんでまでして、ただ傍にいた。
真っ白な肌の色が、余計に病気で青白くなっていくのが、悲しかった。真っ白な髪は好きだが、それも病気のせいだと思うと、どこか悲しくなった。
「京楽?」
翡翠色の瞳があいた。
「うん、僕だよ。君、今の状態わかるかい?」
「確か、隊首会で、発作を我慢して倒れて・・・・・・すまない、あまり覚えていない」
「浮竹」
京楽は、どこか怒っていた。
「京楽?何を怒っているんだ」
「君が、手に爪を食いこませるほど、発作を我慢していたことに、怒っているんだ」
「ああ・・・・・元柳斎先生に、心配をかけたくなくて・・・・・」
「だからって、発作を我慢することないでしょ?我慢すればするほど、苦しくなって酷くなるの分かってるでしょ?」
「すまない・・・・・・・」
浮竹は、握っていてくれた京楽の手を握り返した。
「もう、発作の我慢なんて真似、しない」
「うん。本当に、そうしてくれないと、心配で心配で僕が倒れるよ」
浮竹が倒れるのは仕方ない。肺を患っているせいで、吐血して倒れる浮竹を抱き上げて、4番隊の隊舎に連れていくことにも慣れてしまった。
院生時代からだ。院生時代は、発作に倒れた浮竹を医務室に送り届けるようなことをしていた。
「ほんとに、これ以上心配かけさせないでよ」
京楽は、浮竹に触れるだけのキスをする。
「すまない」
「それ、君の悪い癖だよ」
「え・・・・・」
「いちいち、謝らなくていいから」
「すまない・・・って、ああ、いい慣れてしまっているから。他にどう言葉をかけていいのかが、分からない」
「卯ノ花隊長のところにいってくる」
浮竹が意識を取り戻したことを、伝えなくてはならない。
「京楽!」
「なんだい、浮竹」
「その・・・・・・ありがとう」
やっと聞けた感謝の言葉は、少し小さかった。
誰もいなくなった病室は、静かだった。
「俺は・・・・京楽にばかり、重荷を背負わせて・・・・」
感謝してもしたりないのだ。
京楽は優しい。発作で倒れたりしたら、いつも傍にいてくれる。看病だってしてくれる。
「こんな体じゃなきゃな・・・・」
京楽に心配をかけたくないが、病に蝕まれた体はいうことをきいてくれない。せめて、早く元気になろう。
「京楽・・・・・本当に、ありがとう」
早く元気になって、雨乾堂でいつものように酒を飲みかわそう。それを想像するだけで、少し気持ちが楽になった。
「では、解散!」
13番隊隊長たちが、それぞれ自分の隊舎に戻っていく中、浮竹は強く手を握りしめて立っていた。
「浮竹?」
ぽたぽたと、手から血が流れる。
「浮竹!?」
ぐらりと、その細い体が傾ぐ。
「げほっ・・・・・ごほっごほっ」
強く咳き込んだ。
傷ついた手のひらからの出血ではない、吐血による血が床に広がる。
「すまない・・・・・・ごほっ、ごほっ」
他の隊長や山本総隊長に、弱い部分を見られるのがいやで、発作を我慢していたのだ。手のひらに爪をたてるほどに。
「謝罪なんていいから!4番隊隊舎に連れて行くよ!」
浮竹の軽い体を抱き上げて、京楽は立ち上がった。
「京楽、着物に血が・・・・・ごほっ」
ごぽりと、音をたてて大量に吐血する。
血が喉につまったのか、気管からヒューヒューと音がする。京楽は逡巡もなしに浮竹から血を吸い上げると、床に吐き出した。
「すま・・な・・い・・・・・・・・」
弱弱しく謝って、浮竹は意識を手放した。
「卯ノ花隊長はいるかい!?」
瞬歩で、浮竹を胸に抱いたまま、京楽は四番隊隊舎にやってくると、その場にいた死神を捕まえた。
「卯ノ花隊長なら、先ほどご自分の隊首室に戻られましたが・・・・」
「そうかい」
礼をいう暇も惜しい。
腕の中の浮竹は、意識を手放しているが苦しそうに呼吸していた。肺の病の発作が最近なかったので、京楽はどこかで安堵していたのだ。
彼が、真紅を吐き出すのがいやでいやで。
その真っ赤な色が、浮竹の命を削っていくのがいやで。
発作の少ない浮竹の小健康状態に慣れてしまっていたのが、仇になった。
「卯ノ花隊長、失礼するよ!」
瞬歩で卯ノ花隊長のいる隊首室にやってくると、ふすまを足であける。
「京楽隊長?」
勇音とお茶を飲んで談笑していた卯ノ花が、立ち上がった。
京楽の着ている隊長羽織が、浮竹の吐血で真っ赤になっていた。
「すぐ、部屋に運んでください、京楽隊長!勇音もきなさい!浮竹隊長が倒れたのはいつですか!?」
「さっきだよ!」
浮竹の体を寝台に横たえる。
発作を起こしてすぐに卯ノ花隊長に診てもらい、回道で手当てを受けたの幸いして、浮竹は大事に至らなかった。
だが、一週間ほど意識を取り戻さなかった。
「僕はバカだねぇ。君が、肺を患っていることをすっかり失念していた」
寝込んだまま、点滴に繋がれた細い手が、痛々しかった。
京楽は、仕事を浮竹の病室にもちこんでまでして、ただ傍にいた。
真っ白な肌の色が、余計に病気で青白くなっていくのが、悲しかった。真っ白な髪は好きだが、それも病気のせいだと思うと、どこか悲しくなった。
「京楽?」
翡翠色の瞳があいた。
「うん、僕だよ。君、今の状態わかるかい?」
「確か、隊首会で、発作を我慢して倒れて・・・・・・すまない、あまり覚えていない」
「浮竹」
京楽は、どこか怒っていた。
「京楽?何を怒っているんだ」
「君が、手に爪を食いこませるほど、発作を我慢していたことに、怒っているんだ」
「ああ・・・・・元柳斎先生に、心配をかけたくなくて・・・・・」
「だからって、発作を我慢することないでしょ?我慢すればするほど、苦しくなって酷くなるの分かってるでしょ?」
「すまない・・・・・・・」
浮竹は、握っていてくれた京楽の手を握り返した。
「もう、発作の我慢なんて真似、しない」
「うん。本当に、そうしてくれないと、心配で心配で僕が倒れるよ」
浮竹が倒れるのは仕方ない。肺を患っているせいで、吐血して倒れる浮竹を抱き上げて、4番隊の隊舎に連れていくことにも慣れてしまった。
院生時代からだ。院生時代は、発作に倒れた浮竹を医務室に送り届けるようなことをしていた。
「ほんとに、これ以上心配かけさせないでよ」
京楽は、浮竹に触れるだけのキスをする。
「すまない」
「それ、君の悪い癖だよ」
「え・・・・・」
「いちいち、謝らなくていいから」
「すまない・・・って、ああ、いい慣れてしまっているから。他にどう言葉をかけていいのかが、分からない」
「卯ノ花隊長のところにいってくる」
浮竹が意識を取り戻したことを、伝えなくてはならない。
「京楽!」
「なんだい、浮竹」
「その・・・・・・ありがとう」
やっと聞けた感謝の言葉は、少し小さかった。
誰もいなくなった病室は、静かだった。
「俺は・・・・京楽にばかり、重荷を背負わせて・・・・」
感謝してもしたりないのだ。
京楽は優しい。発作で倒れたりしたら、いつも傍にいてくれる。看病だってしてくれる。
「こんな体じゃなきゃな・・・・」
京楽に心配をかけたくないが、病に蝕まれた体はいうことをきいてくれない。せめて、早く元気になろう。
「京楽・・・・・本当に、ありがとう」
早く元気になって、雨乾堂でいつものように酒を飲みかわそう。それを想像するだけで、少し気持ちが楽になった。
〇ッ〇しないと出れない部屋
浮竹と京楽は、気づくと真っ白な部屋にいた。
「ここはどこだ?」
「わからないなぁ」
扉がある。
けれど、霊圧をぶつけても斬魄刀で切りかかっても、びくともしなかった。
扉の上に、文字があった。
〇ッ〇しないと、出れない。
噂で聞いたことはあるが、なんでもその部屋は、看板の通りのことをしないと出れないらしい。
真っ白な部屋には、豪華なダブルベッドが置かれていた。
「エッチしないと、出れないんじゃない?」
「そんなバカなことがあるか!」
「でも〇ッ〇しないと出れないって書かれてあるし、ダブルベッドまであるし・・・浮竹ぇ」
うなじに口づけられて、浮竹は京楽から距離をとった。
昨日、交わったばかりだ。そうほいほいと、肉体関係になるには無理がありすぎる。
京楽の性欲が多いのは分かっていた。だが、浮竹はやや淡泊で、とてもじゃないが交わった次の日にまた交わるなんて無理だ。
京楽の情欲した瞳に射抜かれて、背筋がぞくぞくした。
「〇ッ〇だろう!エッチとは、限らない!」
浮竹は、京楽に噛みつくような荒々しいキスをした。
「キッスだ!答えは、キッスだ」
「またまたぁ。エッチだよ。浮竹、おいで?」
ダブルべッドに腰かけて、京楽はぽんぽん自分の隣にこいと合図する。
「絶対、嫌だからな!」
「いいじゃない・・・・・エッチしないと、出れないんだし」
「いいや、キッスだ!」
もう一度、今度は深く口づけを交し合うと、部屋の扉は開いた。
「よし!」
浮竹はガッツポーズをとる。
浮竹は、京楽を貪ることができなくて舌打ちした。
「〇ッ〇だから、どっちでもよかったんだ」
京楽に押し倒されなくてよかったと、浮竹は安堵した。京楽のペースにはまってしまえば、たとえ前日体を重ねたといっても、また交じりあうことになるだろう。
「こんなばかげた部屋、さっさと出るぞ」
部屋の扉をくぐって外にでる。
京楽は、残念と浮竹の後をついて部屋をでた。
外に出るといつもの変わらぬ尸魂界だった。扉はまだ残っている。
「こんなもの!」
双魚理で、扉を破壊して、浮竹は満足した。
「あーあ。エッチだと、思ったのにな。その気になっちゃったのに」
「自分で処理しろ」
「浮竹ってば酷い。こんなに愛してるのに」
「知るか!勝手に盛るからだ!」
浮竹は、しょんぼりとした京楽を連れて雨乾堂に帰るのだった。
停電
がらがらがっしゃーん。
凄い音を立てて、近くに雷が落ちた。雨つぶが大地を叩く音がする。
「停電だー!エアコンと扇風機が!」
一護の部屋で、アイスをかじりっていたルキアは、停電で視界が急に暗くなったのに驚いた。現世ならではの夏の快適グッズが雷で止まってしまって、ルキアは叫んだ。
「一護、なんとかせんか!暑くなるだろう、たわけが!」
「んなこと俺に言われてもしらねーよ。時間たてばすぐ復旧するだろ」
一護は、階下におりて、懐中電灯をもってきた。
「一人にするな!怖いではないか!」
がらがらがっしゃーん。
また雷が落ちた。
その細い体で一護に抱き着いて、ルキアぎゅっと目を閉じていた。
「もしかして、雷が怖いのか?」
「そそそそそ、そんなたわけたことがあるはずがなかろう!」
意外なルキアの弱点に、一護はかわいいとこあるじゃねぇかと、心の中で呟いた。
「それにしても、電気復旧しねぇな」
もう、かれこれ15分はたっただろうか。
室内の温度が、じわりと上がってきた。
「あちぃ」
「熱いぞ、たわけ・・・・・・」
懐中電灯で、時計を照らすと、午後9時を回っていた。
寝るには、まだ早すぎる。
でもまぁいいかと、ルキアを抱き上げて、ベッドの上で横になった。
「なんなのだ、一護」
「いや、暇だしさ。電気復旧するまで、こうしてようぜ」
暗闇が、全部を隠してくれる。
別に、いちゃいちゃしてるわけではないが。ルキアと一緒に、ベッドに体を横たえながら、一護はルキアの少し高い体温を感じていた。
「今日はあちぃからなぁ。早く、電気復旧すればいいんだけどな」
「早く復旧させろ、このたわけが!」
「無理いうなよ」
「たわけたわけたわけ!ひゃっ、どこを触っておる!」
ルキアの背中にあたった手を、ルキアがつまみあげた。
日番谷と同じ、氷の斬魄刀をもつルキアは、暑さに弱い。
「いててて、わざとじゃねぇから!」
「いいや、わざとだ!そうに決まっておろう」
「触るなら、もっと胸とか尻とか触るぜ」
「このエロ魔人が・・・・・!」
意思をもった手で、ルキアの頬に手をあてると、ルキアは一護の手に手を重ねた。
触れるだけのキスをすると、ルキアは一護の腕の中で体を震わせた。
「あちぃな」
「暑い」
くっついていると、余計に暑くなって、二人は離れた。
ほどなくして、電気が復旧する。
エアコンをかけ直して、扇風機の電源を入れると、ルキアは嬉しそうに紫の瞳を瞬かせた。
「一護、アイスもってこい」
「自分でとりにいけよ」
「キスしただろう!代金を払うかわりに、もってこい!」
「キスくらいで金とる気かよ」
「四大貴族の一人だぞ、私は!」
そのわりには、身分でどうのこうのいうことは少ない。
「へいへい、全く、我儘な生き物だな」
本当なら、姫と呼ばれる身分なのだ、ルキアは。
一護は、文句を零しながらもアイスをとりにいく。
「雷は、嫌いだ・・・・・・」
昔、流魂街にいた頃、雷に打たれかかって、死ぬような思いをしたことがある。
その時の恐怖を思い出して、ルキアは戻ってきた一護に抱き着いた。
「おい、アイス溶けるぞ?どうしたんだよ、ルキア・・・・・」
「うるさい。しばらく、動くな」
溶け始めたアイスを、一護は食べた。
「ああっ、私のアイス!」
「食べないお前が悪い」
「くっ・・・」
がらがらぴっしゃーん。
「ひゃあっ!」
また雷がなって、ルキアは飛び上がった。それから一護にまた抱き着いた。
「雷そんなに怖いのか?」
「そそそそそそ、そんなわけがなかろう!」
そういうルキアは半分涙目になっていた。
強く抱きしめると、ルキアは一護を見あげた。
「一護?」
「今は、俺がついてるだろ。雷なんかで、おびえるな」
「たわけが・・・・・・・・」
ルキアの白い頬に、キスして、一護はルキアを抱きしめる腕に力をこめる。
ルキアは、紫の瞳でを閉じた。
自然と、唇と唇が、重なり合う。
「んっ・・・・・」
甘いルキアの声が、耳に心地よかった。
「たわけめ・・・・・」
頬を朱くして、ルキアは一護から離れた。それから、いつものように押入れに入る。
妹たちの部屋を寝室にと宛がわれているが、ルキアは一護の部屋の押し入れがすきだった。
狭くて小汚いけど。
「ねぇさーーん!」
抱き着いてくるコンを、一護のほうに投げ捨てて、ルキアは押入れの戸をしめた。
真っ赤に火照った顔を、隠すように。
凄い音を立てて、近くに雷が落ちた。雨つぶが大地を叩く音がする。
「停電だー!エアコンと扇風機が!」
一護の部屋で、アイスをかじりっていたルキアは、停電で視界が急に暗くなったのに驚いた。現世ならではの夏の快適グッズが雷で止まってしまって、ルキアは叫んだ。
「一護、なんとかせんか!暑くなるだろう、たわけが!」
「んなこと俺に言われてもしらねーよ。時間たてばすぐ復旧するだろ」
一護は、階下におりて、懐中電灯をもってきた。
「一人にするな!怖いではないか!」
がらがらがっしゃーん。
また雷が落ちた。
その細い体で一護に抱き着いて、ルキアぎゅっと目を閉じていた。
「もしかして、雷が怖いのか?」
「そそそそそ、そんなたわけたことがあるはずがなかろう!」
意外なルキアの弱点に、一護はかわいいとこあるじゃねぇかと、心の中で呟いた。
「それにしても、電気復旧しねぇな」
もう、かれこれ15分はたっただろうか。
室内の温度が、じわりと上がってきた。
「あちぃ」
「熱いぞ、たわけ・・・・・・」
懐中電灯で、時計を照らすと、午後9時を回っていた。
寝るには、まだ早すぎる。
でもまぁいいかと、ルキアを抱き上げて、ベッドの上で横になった。
「なんなのだ、一護」
「いや、暇だしさ。電気復旧するまで、こうしてようぜ」
暗闇が、全部を隠してくれる。
別に、いちゃいちゃしてるわけではないが。ルキアと一緒に、ベッドに体を横たえながら、一護はルキアの少し高い体温を感じていた。
「今日はあちぃからなぁ。早く、電気復旧すればいいんだけどな」
「早く復旧させろ、このたわけが!」
「無理いうなよ」
「たわけたわけたわけ!ひゃっ、どこを触っておる!」
ルキアの背中にあたった手を、ルキアがつまみあげた。
日番谷と同じ、氷の斬魄刀をもつルキアは、暑さに弱い。
「いててて、わざとじゃねぇから!」
「いいや、わざとだ!そうに決まっておろう」
「触るなら、もっと胸とか尻とか触るぜ」
「このエロ魔人が・・・・・!」
意思をもった手で、ルキアの頬に手をあてると、ルキアは一護の手に手を重ねた。
触れるだけのキスをすると、ルキアは一護の腕の中で体を震わせた。
「あちぃな」
「暑い」
くっついていると、余計に暑くなって、二人は離れた。
ほどなくして、電気が復旧する。
エアコンをかけ直して、扇風機の電源を入れると、ルキアは嬉しそうに紫の瞳を瞬かせた。
「一護、アイスもってこい」
「自分でとりにいけよ」
「キスしただろう!代金を払うかわりに、もってこい!」
「キスくらいで金とる気かよ」
「四大貴族の一人だぞ、私は!」
そのわりには、身分でどうのこうのいうことは少ない。
「へいへい、全く、我儘な生き物だな」
本当なら、姫と呼ばれる身分なのだ、ルキアは。
一護は、文句を零しながらもアイスをとりにいく。
「雷は、嫌いだ・・・・・・」
昔、流魂街にいた頃、雷に打たれかかって、死ぬような思いをしたことがある。
その時の恐怖を思い出して、ルキアは戻ってきた一護に抱き着いた。
「おい、アイス溶けるぞ?どうしたんだよ、ルキア・・・・・」
「うるさい。しばらく、動くな」
溶け始めたアイスを、一護は食べた。
「ああっ、私のアイス!」
「食べないお前が悪い」
「くっ・・・」
がらがらぴっしゃーん。
「ひゃあっ!」
また雷がなって、ルキアは飛び上がった。それから一護にまた抱き着いた。
「雷そんなに怖いのか?」
「そそそそそそ、そんなわけがなかろう!」
そういうルキアは半分涙目になっていた。
強く抱きしめると、ルキアは一護を見あげた。
「一護?」
「今は、俺がついてるだろ。雷なんかで、おびえるな」
「たわけが・・・・・・・・」
ルキアの白い頬に、キスして、一護はルキアを抱きしめる腕に力をこめる。
ルキアは、紫の瞳でを閉じた。
自然と、唇と唇が、重なり合う。
「んっ・・・・・」
甘いルキアの声が、耳に心地よかった。
「たわけめ・・・・・」
頬を朱くして、ルキアは一護から離れた。それから、いつものように押入れに入る。
妹たちの部屋を寝室にと宛がわれているが、ルキアは一護の部屋の押し入れがすきだった。
狭くて小汚いけど。
「ねぇさーーん!」
抱き着いてくるコンを、一護のほうに投げ捨てて、ルキアは押入れの戸をしめた。
真っ赤に火照った顔を、隠すように。
まどろみ
優しく優しく接した後、浮竹は京楽の腕の中で眠ってしまった。
最近、浮竹はよく肺の病の発作を出すので、抱くことはしていない。
ただ、何度も甘く口づけを交わして、全体の輪郭を確かめるように体のラインをなぞる。京楽は、自分で欲望を始末して、浮竹の負担を減らしていた。
ふと、眠っていた浮竹が薄く目をあけた。
翡翠色の瞳はとても綺麗な色をしている。
「京楽・・・・・・その、しなくていいのか?」
もう1か月近く交わっていない。
「何、浮竹。僕としたいの?」
「いや・・・・・・ただ、我慢を強いてるんじゃないかと思って」
「僕のことはいいから。君は、早く元気になることだけを考えて」
長い白髪に手が伸びる。優しく髪をすいていく指の動きに、気持ちいいのか浮竹は京楽にすり寄った。
「もう。誘うようなこと、しないでよ・・・・・」
我慢が、限界をこえてしまう。
「その、よければ俺が処理してやろうか?」
「いいのかい?」
京楽の雄は、熱をもっていた。
おずおずと、自分から京楽に口づけて、浮竹は京楽の熱に指をからめる。
いつも自分がされているようにすれば、京楽の熱はあっという間に弾けて、浮竹の手に欲望を放った。
「ん・・・・・・・・・」
まだ硬い熱に、浮竹は意を決して唇を這わせた。
「浮竹!」
今まで、ほとんどしてこなかった行為だ。浮竹は、京楽の熱に舌をからめると、京楽をくわえこんだ。
「無理、しなくていいから・・・・・・・」
浮竹の、白い髪を掴む。少し微熱を出しているのか、浮竹の潤んだ瞳と目が合った。
「浮竹、体が熱いよ?もしかして、熱だしてるの?]
「・・・・んう」
片方の手でしごきあげて、硬くなった熱にちろちろと舌を這わす。先端を吸い上げれば、先ほど放った京楽の体液の青臭い味が、口内に広がった。
何度か舐めあげられ、しごかれているうちに、京楽は熱い浮竹の口内に欲望を迸らせた。
ごくり。
音を出して飲み込む浮竹。
ぺろりと、自分の唇を舐める。
ああ、この子欲情してるんだ。
京楽は、けれど熱のある浮竹を思いやって、浮竹の誘いには乗らなかった。
「きょう・・・らく?」
不思議そうに、小首を傾げる浮竹。
その姿がかわいくて、京楽は浮竹の顎に手をかけた。
「何・・・・?」
綺麗だと思う。浮竹は、その容姿も、まとう色も、綺麗だ。
真っ白な長い髪をなでながら、京楽は浮竹の唇に触れるだけのキスをした。
「んっ・・・・・・・・」
浮竹は、甘い声を出した。
「今日は抱かない。熱もあるみたいだし。もうちょっと回復したら、ね?」
「気遣わなくても、いいのに・・・・・」
「気遣うに決まってるでしょ!バカ言わないで」
優しい優しい京楽。その京楽に、甘える浮竹。
浮竹は、自分から触れるだけの口づけを京楽にして、京楽の腕の中で微睡みはじめた。熱が出ているようで、起きたら解熱剤を飲ませなければ。
「愛してるよ、十四郎」
熱のせいか上気した浮竹の白い頬に唇をあてて、京楽はただ浮竹の白い髪を指ですいていた。
サラサラと零れ落ちていく長い髪。
伸ばせと囁いて、ここまで長くなった。
浮竹からは、甘い花のかおりがした。
寝ているだけなのに、どこか淫靡に見えて、京楽は視線をずらす。雨乾堂で、二人はただ抱き合いながら、朝を待っていると、京楽もいつの間にか眠ってしまっていた。
「浮竹?」
腕の中に、浮竹がいない。探して視線を彷徨わせると、雨乾堂の隅でがさごそしている浮竹と目が合った。
「どうしたの?」
「あ・・・・・薬、飲んでただけだから・・・・」
解熱剤といつも処方されている漢方薬を飲んだのだと、浮竹は白湯の入ったコップを手に、京楽の元まで戻ってくる。
白湯を全部飲みほして、浮竹はまた京楽の腕の中に戻ってきた。
「熱ひかないみたいだから、もう少し寝る」
「うん、おやすみ」
浮竹を抱きしめて、京楽はその火照った体から熱が去っていくのを、ゆっくり感じた。
浮竹が起きたら、好物の梅干し茶漬けでも食わせてやるか。
そんなことを考えて、腕の中の麗人を抱きしめる。
「大好きだよ」
返答はなかった。
浮竹が飲んでいる解熱剤には、少し睡眠薬も含まれているらしくて、スースーとよく眠っている。
昼になって、浮竹が起きた。彼が起きるまでずっと抱きしめていたので、体のあちこちが痛い。でも、甘い痛みだ。
京楽は、浮竹のために梅干し茶漬けを用意した。
雨乾堂の近くの隊舎に控えていた清音に、材料をそろてもらった。
食の細い浮竹は、お茶漬けが好きだ。特に、梅干しをいれたものを好んだ。
そういえば何も食べていないな・・・・・・・京楽は、自分の腹がすいているのを感じて、浮竹と同じ梅干し茶漬けを食べた。
思ったより美味しくて、おかわりしてしまった。
「浮竹、熱は下がったかい?」
「ああ・・・・・」
梅干しを頬張る姿に、苦笑する。
後で、甘味ものでも、食べさせてやるか。京楽は思った。
甘い甘い時間を、何百年も過ごしている。けれど、全然飽きない。
京楽は、浮竹の長い白髪を、螺鈿細工の値のはる櫛ですいてやった。今から20年ほど前に、誕生日プレゼントにと、あげたものだ。
大切にされているので、新品同然の輝きを放っている。
「後で、一緒にお風呂入ろうか。昨日入ってなかったから」
「ああ」
その長い白髪を、洗ってあげよう。浮竹の髪を洗うのは、好きだった。
京楽も、大部髪が伸びた。そろそろ、切ろう。そういえば、浮竹の髪もいつもより大分伸びてしまっている。ついでだし、切ってあげよう。
とりとめのない、日常。
それが、とても幸せだ。
願うならば、こんな幸せがいつまでも続きますように。
最近、浮竹はよく肺の病の発作を出すので、抱くことはしていない。
ただ、何度も甘く口づけを交わして、全体の輪郭を確かめるように体のラインをなぞる。京楽は、自分で欲望を始末して、浮竹の負担を減らしていた。
ふと、眠っていた浮竹が薄く目をあけた。
翡翠色の瞳はとても綺麗な色をしている。
「京楽・・・・・・その、しなくていいのか?」
もう1か月近く交わっていない。
「何、浮竹。僕としたいの?」
「いや・・・・・・ただ、我慢を強いてるんじゃないかと思って」
「僕のことはいいから。君は、早く元気になることだけを考えて」
長い白髪に手が伸びる。優しく髪をすいていく指の動きに、気持ちいいのか浮竹は京楽にすり寄った。
「もう。誘うようなこと、しないでよ・・・・・」
我慢が、限界をこえてしまう。
「その、よければ俺が処理してやろうか?」
「いいのかい?」
京楽の雄は、熱をもっていた。
おずおずと、自分から京楽に口づけて、浮竹は京楽の熱に指をからめる。
いつも自分がされているようにすれば、京楽の熱はあっという間に弾けて、浮竹の手に欲望を放った。
「ん・・・・・・・・・」
まだ硬い熱に、浮竹は意を決して唇を這わせた。
「浮竹!」
今まで、ほとんどしてこなかった行為だ。浮竹は、京楽の熱に舌をからめると、京楽をくわえこんだ。
「無理、しなくていいから・・・・・・・」
浮竹の、白い髪を掴む。少し微熱を出しているのか、浮竹の潤んだ瞳と目が合った。
「浮竹、体が熱いよ?もしかして、熱だしてるの?]
「・・・・んう」
片方の手でしごきあげて、硬くなった熱にちろちろと舌を這わす。先端を吸い上げれば、先ほど放った京楽の体液の青臭い味が、口内に広がった。
何度か舐めあげられ、しごかれているうちに、京楽は熱い浮竹の口内に欲望を迸らせた。
ごくり。
音を出して飲み込む浮竹。
ぺろりと、自分の唇を舐める。
ああ、この子欲情してるんだ。
京楽は、けれど熱のある浮竹を思いやって、浮竹の誘いには乗らなかった。
「きょう・・・らく?」
不思議そうに、小首を傾げる浮竹。
その姿がかわいくて、京楽は浮竹の顎に手をかけた。
「何・・・・?」
綺麗だと思う。浮竹は、その容姿も、まとう色も、綺麗だ。
真っ白な長い髪をなでながら、京楽は浮竹の唇に触れるだけのキスをした。
「んっ・・・・・・・・」
浮竹は、甘い声を出した。
「今日は抱かない。熱もあるみたいだし。もうちょっと回復したら、ね?」
「気遣わなくても、いいのに・・・・・」
「気遣うに決まってるでしょ!バカ言わないで」
優しい優しい京楽。その京楽に、甘える浮竹。
浮竹は、自分から触れるだけの口づけを京楽にして、京楽の腕の中で微睡みはじめた。熱が出ているようで、起きたら解熱剤を飲ませなければ。
「愛してるよ、十四郎」
熱のせいか上気した浮竹の白い頬に唇をあてて、京楽はただ浮竹の白い髪を指ですいていた。
サラサラと零れ落ちていく長い髪。
伸ばせと囁いて、ここまで長くなった。
浮竹からは、甘い花のかおりがした。
寝ているだけなのに、どこか淫靡に見えて、京楽は視線をずらす。雨乾堂で、二人はただ抱き合いながら、朝を待っていると、京楽もいつの間にか眠ってしまっていた。
「浮竹?」
腕の中に、浮竹がいない。探して視線を彷徨わせると、雨乾堂の隅でがさごそしている浮竹と目が合った。
「どうしたの?」
「あ・・・・・薬、飲んでただけだから・・・・」
解熱剤といつも処方されている漢方薬を飲んだのだと、浮竹は白湯の入ったコップを手に、京楽の元まで戻ってくる。
白湯を全部飲みほして、浮竹はまた京楽の腕の中に戻ってきた。
「熱ひかないみたいだから、もう少し寝る」
「うん、おやすみ」
浮竹を抱きしめて、京楽はその火照った体から熱が去っていくのを、ゆっくり感じた。
浮竹が起きたら、好物の梅干し茶漬けでも食わせてやるか。
そんなことを考えて、腕の中の麗人を抱きしめる。
「大好きだよ」
返答はなかった。
浮竹が飲んでいる解熱剤には、少し睡眠薬も含まれているらしくて、スースーとよく眠っている。
昼になって、浮竹が起きた。彼が起きるまでずっと抱きしめていたので、体のあちこちが痛い。でも、甘い痛みだ。
京楽は、浮竹のために梅干し茶漬けを用意した。
雨乾堂の近くの隊舎に控えていた清音に、材料をそろてもらった。
食の細い浮竹は、お茶漬けが好きだ。特に、梅干しをいれたものを好んだ。
そういえば何も食べていないな・・・・・・・京楽は、自分の腹がすいているのを感じて、浮竹と同じ梅干し茶漬けを食べた。
思ったより美味しくて、おかわりしてしまった。
「浮竹、熱は下がったかい?」
「ああ・・・・・」
梅干しを頬張る姿に、苦笑する。
後で、甘味ものでも、食べさせてやるか。京楽は思った。
甘い甘い時間を、何百年も過ごしている。けれど、全然飽きない。
京楽は、浮竹の長い白髪を、螺鈿細工の値のはる櫛ですいてやった。今から20年ほど前に、誕生日プレゼントにと、あげたものだ。
大切にされているので、新品同然の輝きを放っている。
「後で、一緒にお風呂入ろうか。昨日入ってなかったから」
「ああ」
その長い白髪を、洗ってあげよう。浮竹の髪を洗うのは、好きだった。
京楽も、大部髪が伸びた。そろそろ、切ろう。そういえば、浮竹の髪もいつもより大分伸びてしまっている。ついでだし、切ってあげよう。
とりとめのない、日常。
それが、とても幸せだ。
願うならば、こんな幸せがいつまでも続きますように。
安静と嫉妬
「隊長、梅干し茶漬けもってきましたよ」
「ああすまない海燕。そこに置いておいてくれ」
肺の病で、せきこんで吐血まではいかなかったが、発作が酷くて4番隊隊舎に運ばれた浮竹は、
二日間の安静を言い渡された。
だが、以外にも早く回復してしまった。
好物である梅干し茶漬けを食べながら、暇だなぁと浮竹はどうやって時間をつぶそうかと考えていた。
いつも、京楽がきてくれるわけじゃあない。
この前、たまった仕事に、雨乾堂を訪れていた京楽は副官の伊勢に連れ帰られていった。今頃、仕事に忙殺されているんだろうなと思うと、傍にいてくれないことが少し不満で、長い白い髪を無造作に耳にかける。
「海燕、暇だ。花札でもしないか?」
「花札?俺、これでも仕事で忙しいんですけど」
「たまにはいいじゃないか」
安静といわれても、体はもう大丈夫だ。寝ているのにも飽きた浮竹は、半ば海燕を無理やり誘って花札をしはじめた。
しかし、1時間もして飽きた。
「海燕、将棋はできるか?」
「はあ、一応ルールは知ってますが」
「じゃあ、将棋をしよう。ただの将棋じゃ面白くないな。そうだ、勝った方は負けた方の我儘を一つ聞くこと。そうしよう」
将棋で海燕に負けるはずがない。
そう思っていた浮竹に、海燕はあっさり勝ってしまった。
「仕方ない。言い出したのは俺だ。なんでも我儘を聞いてやる」
その桜色の唇に、唇を重ねていいですかなんて、とても言えない。海燕は、言いたかった我儘を飲み込んで、浮竹の翡翠色の瞳を見た。
「じゃあ、耳かきしてください。膝枕してもらいながら」
「なんだ、そんなことでいいのか。こんなおっさんの、膝枕でいいなら」
海燕は、正座した浮竹の膝に頭をのせて、耳かき棒を渡すと、耳かきをしてもらっていた。
「こんなこと、都にさせればいいのに」
あなただから、してもらいたいんだ。
海燕は、また声を飲み込んだ。
都は確かに愛しい。でも、同じくらいに上官を愛しいと感じている。もってしまってはいけない感情を、浮竹に抱いてしまっている。
居心地の良さに、軽い眠気を感じた頃、あまりにも冷たい霊圧に、海燕は体を起こした。
「何してるんだい、志波君」
「ああ、京楽!仕事は終わったのか?」
海燕は、殺意に似た霊圧に、言葉を飲み込む。海燕だけに向けての霊圧で、浮竹には感じさせていない。
「京楽隊長・・・・」
「志波君。ほどほどにね?」
あんまり調子に乗ったら、怪我するよ。
そう瞳で語られる。
海燕がどいた浮竹の正座した足に、京楽が頭をのせる。
「僕にも、耳かきしてよ、浮竹」
「いいぞ。それより、仕事は終わったのか?」
「ああ、あらかた片付いたよ。後は七緒ちゃんでもできる仕事だから、任せてきた」
「そうか」
京楽の耳かきをしてやりながら、浮竹は顔を蒼くした海燕を見た。
「どうしたんだ、海燕?」
「いや・・・ちょっと、具合が悪くなったんで。失礼します」
「・・・?」
浮竹は気づいていなかった。鈍感な上司をもって、志波君もかわいそうにと思う気持ちと、副官であることを利用して浮竹に接してくる志波君が鬱陶しいんだとまぜこぜになった想いで、京楽は浮竹の白い髪を手に取った。
「この髪に触れていいのは、僕だけだからね、浮竹」
「変な奴だな」
海燕に触らせないようにといっても、浮竹のことだから、海燕にもこの白くて綺麗で長い髪を櫛ですかせたりするんだろう。
想像しただけで、ちょっと嫉妬心がわいた。
「志波君には、気をつけて」
「海燕に?意味が分からない」
ほんとに鈍感だなぁ。
京楽は、仰ぎ見たまま、浮竹の白い髪を手に取ると、口づけをした。
「君は僕だけのものって意味」
京楽は、浮竹の白い顔(かんばせ)に顔を近づけると、深い口づけをした。
「んっ・・・・・・・」
浮竹は、目を閉じた。
角度を変えて何度も貪っていると、浮竹の綺麗に整った爪が、浮竹の肩に食い込んだ。
「も、いいだろ、京楽」
「君は、僕だけのものだ・・・・・」
決して、誰にも渡すものか。
京楽は、浮竹を貪る。
甘すぎて、とろけそうだ。
浮竹からは、いつも甘い香りがする。花のような香りだ。
時折太陽のにおいもする。
京楽の腕の中で、浮竹は長い睫毛を伏せて、翡翠色の瞳で京楽を見ていた。、
「どうしたんだ、京楽」
「なんでもないよ」
嫉妬って怖いよね。そう言葉を飲み込んで、京楽は浮竹を抱きしめる腕に力をこめるのだった。
「ああすまない海燕。そこに置いておいてくれ」
肺の病で、せきこんで吐血まではいかなかったが、発作が酷くて4番隊隊舎に運ばれた浮竹は、
二日間の安静を言い渡された。
だが、以外にも早く回復してしまった。
好物である梅干し茶漬けを食べながら、暇だなぁと浮竹はどうやって時間をつぶそうかと考えていた。
いつも、京楽がきてくれるわけじゃあない。
この前、たまった仕事に、雨乾堂を訪れていた京楽は副官の伊勢に連れ帰られていった。今頃、仕事に忙殺されているんだろうなと思うと、傍にいてくれないことが少し不満で、長い白い髪を無造作に耳にかける。
「海燕、暇だ。花札でもしないか?」
「花札?俺、これでも仕事で忙しいんですけど」
「たまにはいいじゃないか」
安静といわれても、体はもう大丈夫だ。寝ているのにも飽きた浮竹は、半ば海燕を無理やり誘って花札をしはじめた。
しかし、1時間もして飽きた。
「海燕、将棋はできるか?」
「はあ、一応ルールは知ってますが」
「じゃあ、将棋をしよう。ただの将棋じゃ面白くないな。そうだ、勝った方は負けた方の我儘を一つ聞くこと。そうしよう」
将棋で海燕に負けるはずがない。
そう思っていた浮竹に、海燕はあっさり勝ってしまった。
「仕方ない。言い出したのは俺だ。なんでも我儘を聞いてやる」
その桜色の唇に、唇を重ねていいですかなんて、とても言えない。海燕は、言いたかった我儘を飲み込んで、浮竹の翡翠色の瞳を見た。
「じゃあ、耳かきしてください。膝枕してもらいながら」
「なんだ、そんなことでいいのか。こんなおっさんの、膝枕でいいなら」
海燕は、正座した浮竹の膝に頭をのせて、耳かき棒を渡すと、耳かきをしてもらっていた。
「こんなこと、都にさせればいいのに」
あなただから、してもらいたいんだ。
海燕は、また声を飲み込んだ。
都は確かに愛しい。でも、同じくらいに上官を愛しいと感じている。もってしまってはいけない感情を、浮竹に抱いてしまっている。
居心地の良さに、軽い眠気を感じた頃、あまりにも冷たい霊圧に、海燕は体を起こした。
「何してるんだい、志波君」
「ああ、京楽!仕事は終わったのか?」
海燕は、殺意に似た霊圧に、言葉を飲み込む。海燕だけに向けての霊圧で、浮竹には感じさせていない。
「京楽隊長・・・・」
「志波君。ほどほどにね?」
あんまり調子に乗ったら、怪我するよ。
そう瞳で語られる。
海燕がどいた浮竹の正座した足に、京楽が頭をのせる。
「僕にも、耳かきしてよ、浮竹」
「いいぞ。それより、仕事は終わったのか?」
「ああ、あらかた片付いたよ。後は七緒ちゃんでもできる仕事だから、任せてきた」
「そうか」
京楽の耳かきをしてやりながら、浮竹は顔を蒼くした海燕を見た。
「どうしたんだ、海燕?」
「いや・・・ちょっと、具合が悪くなったんで。失礼します」
「・・・?」
浮竹は気づいていなかった。鈍感な上司をもって、志波君もかわいそうにと思う気持ちと、副官であることを利用して浮竹に接してくる志波君が鬱陶しいんだとまぜこぜになった想いで、京楽は浮竹の白い髪を手に取った。
「この髪に触れていいのは、僕だけだからね、浮竹」
「変な奴だな」
海燕に触らせないようにといっても、浮竹のことだから、海燕にもこの白くて綺麗で長い髪を櫛ですかせたりするんだろう。
想像しただけで、ちょっと嫉妬心がわいた。
「志波君には、気をつけて」
「海燕に?意味が分からない」
ほんとに鈍感だなぁ。
京楽は、仰ぎ見たまま、浮竹の白い髪を手に取ると、口づけをした。
「君は僕だけのものって意味」
京楽は、浮竹の白い顔(かんばせ)に顔を近づけると、深い口づけをした。
「んっ・・・・・・・」
浮竹は、目を閉じた。
角度を変えて何度も貪っていると、浮竹の綺麗に整った爪が、浮竹の肩に食い込んだ。
「も、いいだろ、京楽」
「君は、僕だけのものだ・・・・・」
決して、誰にも渡すものか。
京楽は、浮竹を貪る。
甘すぎて、とろけそうだ。
浮竹からは、いつも甘い香りがする。花のような香りだ。
時折太陽のにおいもする。
京楽の腕の中で、浮竹は長い睫毛を伏せて、翡翠色の瞳で京楽を見ていた。、
「どうしたんだ、京楽」
「なんでもないよ」
嫉妬って怖いよね。そう言葉を飲み込んで、京楽は浮竹を抱きしめる腕に力をこめるのだった。
わかめ大使
「やぁ、白哉」
浮竹は、朽木家の屋敷にまで来ていた。
「なんだ。兄は、何用で我が屋敷にきているのだ」
「いや、わかめ大使のお菓子、ほしいなぁと思って。隊長室を尋ねたら、屋敷にいるっていわれたので来てみたんだ」
白哉が考案したわかめ大使なるお菓子は、堂々と発売されていたのだが、あまりの人気のなさに発売中止になっていた。
「わかめ大使、うまいからな」
「兄は、見る目があるな。少し待て」
白哉は人を呼ぶと、大量のわかめ大使のお菓子をもってこさせた。
「えっと、いくらになる?」
財布をとりだした浮竹に、白哉は首を振った。
「兄から金をとる気はない。好きなだけもっていくがいい」
「お、悪いな。じゃあ、お言葉に甘えて・・・・・・京楽!」
浮竹は、京楽の名を呼んだ。
屋根の上にいた京楽は、浮竹の元にやってくると、紙袋の中にわかめ大使をつめこんでいく。
「わかめ大使ねぇ・・・・・」
あんまりおいしそうじゃないなと思いながら、つめこんでいく。
浮竹も、もってきた紙袋に大量のわかめ大使をつめこんでいた。
「全く浮竹はもの好きだねぇ」
こんなこと、3席である清音や仙太郎に任せればいいのに。
「そういうお前も、もの好きだろう。わざわざ荷物もちについてきてくれたんだから」
「僕は、ただ浮竹傍にいたいの」
わかめ大使を詰め終えて、けっこうな重さに少し辟易となるが、愛しい浮竹のためだ。
「兄には、特別にこれをやろう」
白哉が、浮竹にわかめ大使のキーホルダーを投げてよこした。
「お、ありがとう白哉。大切にする」
「礼など、いらぬ」
白哉は、わかめ大使を好きだといってくれた浮竹に、好印象を抱いた。
わかめ大使は、見た目こそ変だが、上品なあんこが入っていて甘くておいしい。
甘いもの好きな浮竹は、部下であるルキアからわかめ大使を渡され、それを食べてからもっと食べたいと思うようになっていた。
そして、今に至る。
「じゃあな、白哉」
手を振って去っていく浮竹と、それに黙ってついていく京楽を見て、白哉は少しだけ分からないほどの笑みを浮かべた。
「やっぱり、美味い」
雨乾堂で、浮竹はわかめ大使を食べていた。
「見た目は変なんだけどねぇ」
京楽は、わかめ大使を食べる気にはなれなくて、食べていく浮竹をただ見つめていた。
「お前はいらないのか、京楽」
「んー。僕はこれでいいよ」
わかめ大使を食べていた浮竹に、深く口づけすると、甘いあんこの味がした。
「なっ!」
浮竹は、真っ赤になってわかめ大使を飲み込んだ。
「ばかっ、食っている最中にキスするやつがあるか!」
「えー。別にいいじゃない。減るもんでもなし」
「減る!」
浮竹は、またわかめ大使を食べた。
「ほんとに、甘味ものはよく食べるねぇ」
いつもは食の細い浮竹。この甘味ものを食べるくらいに食事の時に食欲があれば、少しは肉がつつくんじゃないかと京楽は思った。
浮竹は、軽すぎる。病や熱を出して寝込むことが多いし、食も細いので、体が細い。
20個くらいわかめ大使を平らげて、浮竹は満足した。
京楽は、部屋で控えていた清音からお茶をもらって、それを飲みほした。
浮竹はというと、今度はおはぎを食べだしていた。
「ほんとに、甘味ものは別腹ってかんじだねぇ」
その細い体のどこに、こんな量が入るのだろうというほど食べる浮竹。
そんな浮竹を見て、京楽は苦笑した。
そして、酒瓶をとりだして、一人で酒盛りをはじめた。
「こんな朝っぱらから酒か」
「だって、どこかの誰かがかまってくれないんだもの」
二人は気づきているのだろうか。
雨乾堂に、清音と仙太郎が控えていることを。
京楽は、平気でキスをしていたので、きっと存在を忘れているのだろう。いや、気づいていて見せつけるためにキスしたのかもしれない。
「隊長・・・・・私たち、お邪魔のようですし、下がりますね」
「清音、いたのか!仙太郎も・・・・・うわぁ」
二人の目の前で、浮竹は京楽にキスされたのだ。
いつも二人のいない時にする。
仲の良すぎる浮竹と京楽に顔を赤くさせて、清音と仙太郎は雨乾堂を後にした。
「見られてた」
「別にいいんじゃない。僕たち、関係隠すようなことしてないしね」
日本酒を杯に注いで、それを呷る京楽の頭をはたいて、浮竹は顔を手で覆った。
「恥ずかしくて、しばらく清音と仙太郎の顔見れない!」
「浮竹は恥ずかしがりやだねぇ。別にえっちしてたわけじゃないんだから、いいじゃない」
「よくない!」
酒を飲む京楽に足蹴りをかます浮竹。
「ほんとに、君は足癖が悪いねぇ」
杯を空にして、その細い足首をとらえた。
「放せっ」
「悪いことする子には、お仕置きだよ」
足首をきつく吸われて、キスマークを残された。
まぁ、人目につくところではないので、浮竹も怒らない。
「浮竹も一杯やるかい?」
「ああ・・・・」
京楽から杯を受け取り、注がれた中身を呷る。
「今日は仕事もないし、もうやけだ」
浮竹は、雨乾堂の奥から、よく飲む果実酒を取り出して、京楽と飲み始めた。
一方その頃、朽木家では。
「ルキア、この調子でもっとわかめ大使を広げるのだ」
「はい、兄様!」
ルキアが、浮竹にわかめ大使を食べさせたのは、偶然ではなく謀(はかりごと)だった。
ルキアは、愛しい義兄のために、わかめ大使を恋次や一護に食べさせて、さらには他の隊の隊長や副隊長に広げてくのであった。
浮竹は、朽木家の屋敷にまで来ていた。
「なんだ。兄は、何用で我が屋敷にきているのだ」
「いや、わかめ大使のお菓子、ほしいなぁと思って。隊長室を尋ねたら、屋敷にいるっていわれたので来てみたんだ」
白哉が考案したわかめ大使なるお菓子は、堂々と発売されていたのだが、あまりの人気のなさに発売中止になっていた。
「わかめ大使、うまいからな」
「兄は、見る目があるな。少し待て」
白哉は人を呼ぶと、大量のわかめ大使のお菓子をもってこさせた。
「えっと、いくらになる?」
財布をとりだした浮竹に、白哉は首を振った。
「兄から金をとる気はない。好きなだけもっていくがいい」
「お、悪いな。じゃあ、お言葉に甘えて・・・・・・京楽!」
浮竹は、京楽の名を呼んだ。
屋根の上にいた京楽は、浮竹の元にやってくると、紙袋の中にわかめ大使をつめこんでいく。
「わかめ大使ねぇ・・・・・」
あんまりおいしそうじゃないなと思いながら、つめこんでいく。
浮竹も、もってきた紙袋に大量のわかめ大使をつめこんでいた。
「全く浮竹はもの好きだねぇ」
こんなこと、3席である清音や仙太郎に任せればいいのに。
「そういうお前も、もの好きだろう。わざわざ荷物もちについてきてくれたんだから」
「僕は、ただ浮竹傍にいたいの」
わかめ大使を詰め終えて、けっこうな重さに少し辟易となるが、愛しい浮竹のためだ。
「兄には、特別にこれをやろう」
白哉が、浮竹にわかめ大使のキーホルダーを投げてよこした。
「お、ありがとう白哉。大切にする」
「礼など、いらぬ」
白哉は、わかめ大使を好きだといってくれた浮竹に、好印象を抱いた。
わかめ大使は、見た目こそ変だが、上品なあんこが入っていて甘くておいしい。
甘いもの好きな浮竹は、部下であるルキアからわかめ大使を渡され、それを食べてからもっと食べたいと思うようになっていた。
そして、今に至る。
「じゃあな、白哉」
手を振って去っていく浮竹と、それに黙ってついていく京楽を見て、白哉は少しだけ分からないほどの笑みを浮かべた。
「やっぱり、美味い」
雨乾堂で、浮竹はわかめ大使を食べていた。
「見た目は変なんだけどねぇ」
京楽は、わかめ大使を食べる気にはなれなくて、食べていく浮竹をただ見つめていた。
「お前はいらないのか、京楽」
「んー。僕はこれでいいよ」
わかめ大使を食べていた浮竹に、深く口づけすると、甘いあんこの味がした。
「なっ!」
浮竹は、真っ赤になってわかめ大使を飲み込んだ。
「ばかっ、食っている最中にキスするやつがあるか!」
「えー。別にいいじゃない。減るもんでもなし」
「減る!」
浮竹は、またわかめ大使を食べた。
「ほんとに、甘味ものはよく食べるねぇ」
いつもは食の細い浮竹。この甘味ものを食べるくらいに食事の時に食欲があれば、少しは肉がつつくんじゃないかと京楽は思った。
浮竹は、軽すぎる。病や熱を出して寝込むことが多いし、食も細いので、体が細い。
20個くらいわかめ大使を平らげて、浮竹は満足した。
京楽は、部屋で控えていた清音からお茶をもらって、それを飲みほした。
浮竹はというと、今度はおはぎを食べだしていた。
「ほんとに、甘味ものは別腹ってかんじだねぇ」
その細い体のどこに、こんな量が入るのだろうというほど食べる浮竹。
そんな浮竹を見て、京楽は苦笑した。
そして、酒瓶をとりだして、一人で酒盛りをはじめた。
「こんな朝っぱらから酒か」
「だって、どこかの誰かがかまってくれないんだもの」
二人は気づきているのだろうか。
雨乾堂に、清音と仙太郎が控えていることを。
京楽は、平気でキスをしていたので、きっと存在を忘れているのだろう。いや、気づいていて見せつけるためにキスしたのかもしれない。
「隊長・・・・・私たち、お邪魔のようですし、下がりますね」
「清音、いたのか!仙太郎も・・・・・うわぁ」
二人の目の前で、浮竹は京楽にキスされたのだ。
いつも二人のいない時にする。
仲の良すぎる浮竹と京楽に顔を赤くさせて、清音と仙太郎は雨乾堂を後にした。
「見られてた」
「別にいいんじゃない。僕たち、関係隠すようなことしてないしね」
日本酒を杯に注いで、それを呷る京楽の頭をはたいて、浮竹は顔を手で覆った。
「恥ずかしくて、しばらく清音と仙太郎の顔見れない!」
「浮竹は恥ずかしがりやだねぇ。別にえっちしてたわけじゃないんだから、いいじゃない」
「よくない!」
酒を飲む京楽に足蹴りをかます浮竹。
「ほんとに、君は足癖が悪いねぇ」
杯を空にして、その細い足首をとらえた。
「放せっ」
「悪いことする子には、お仕置きだよ」
足首をきつく吸われて、キスマークを残された。
まぁ、人目につくところではないので、浮竹も怒らない。
「浮竹も一杯やるかい?」
「ああ・・・・」
京楽から杯を受け取り、注がれた中身を呷る。
「今日は仕事もないし、もうやけだ」
浮竹は、雨乾堂の奥から、よく飲む果実酒を取り出して、京楽と飲み始めた。
一方その頃、朽木家では。
「ルキア、この調子でもっとわかめ大使を広げるのだ」
「はい、兄様!」
ルキアが、浮竹にわかめ大使を食べさせたのは、偶然ではなく謀(はかりごと)だった。
ルキアは、愛しい義兄のために、わかめ大使を恋次や一護に食べさせて、さらには他の隊の隊長や副隊長に広げてくのであった。
日宇場Ⅱ
同じ屋根の下で暮らして、はや数か月。
まだうだる暑さが残る夏の終わりのある日、ルキアはいつもの押し入れではなく、一護のベッドの上でスース―と、静かな眠りについていた。
「なんだ、寝てんのか」
虚退治から帰還した一護は、ルキアを起こさないように窓からそっと室内に入った。
「しっかし、こんな暑い中よく寝れるもんだな」
エアコンはついていなかった。
虚退治で、軽い運動をしたような一護は、あちいと呟いて、エアコンのスイッチをいれた。
「ん・・・・一護・・・・・・・」
「ルキア起きてんのか?」
ただの寝言らしい。
どうやら、一護の夢を見ているようだった。
石田雨竜からもらった、ワンピース姿だった。ルキアは、ワンピースが好きなのか、買い物に行って服を買う時も、よくワンピースを選んだ。
「一護が巨大な苺に・・・・うーん兄様、わかめ大使が・・・うーんうーん」
「うなされてんのか」
変な夢を見ているらしい。
うーんうーんとうなされるルキアの細い手首をとって、一護はルキアの手を握った。
「ルキア、おい起きろ」
「うーんうーん」
起きそうにもなかった。
一護は、眠りについたままのルキアを見る。
朽木家の姫君だけあって、可憐な姿をしていると思う。男のようにさばさばした性格で、口調もどこか尊大だが、それがルキアであって、ルキアという少女を構築している全てが、一護は好きだった。
ルキアの、桜色の唇に、気づけば指を這わせていた。
「起きない、おまえがわるいんだからな」
一護は、そっと触れるだけのキスをした。
キスといえるのかもわからないようなキスだった。。
好きだと伝えたのに、ルキアは一護の前ではあまりにも無防備だ。
ルキアの存在は、一護にとっては本当は高根の花であった。
「ん・・・・・・・・・一護?帰ったのか」
目をこすって、眠そうにあくびをするルキアの頭を、ぐしゃぐしゃに撫でた。
「何をする、たわけ!」
ルキアはぷんぷんと怒った。
その姿かかわいくて、一護はルキアに顔面を足蹴りされるまで、笑っていた。
押入れが、そっと開いた。
そこから登場してきたコンが、ルキアの元にくると、一護をぬいぐるみの手で指さした。
「みーてーたーぞー一護!ねぇさん、聞いてくだせぇ、一護のやつ、眠っているねぇさんに!」
「うっせぇ!」
「もぎゅ」
コンを踏みつけて、一護はルキアの小さい手を握りしめる。
「アイスでも、買いに行こうぜ」
「む、コンビニにか?」
「そう。ファミマでいいよな?」
「うーん、個人的にはセブイレブンのシロクマアイスが食べたい・・・・・・」
「じゃあ、セブンいくか」
「ああ」
コンを念入りにふみつけて、一護とルキアはアイスを買いに出かけた。
「あ、当たりだ・・・・」
くじつきの棒アイスを食べたルキアは、嬉しそうに当たりとかかれた棒を一護に見せる。
「シロクマアイスが食べたいんじゃなかったのかよ」
「たわけ!その時の気分次第で、アイスは変わるのだ!それより、戻ってこの当たりをアイスと交換せねば・・・・・・・」
「もう、家がもうすぐだぜ。今度にしろよ」
コンビニは、少し離れた場所にあったので、今から戻るのは時間がかかる。
日差しはギラギラと照っていて、暑かった。
早く、家に帰ってエアコンをつけて扇風機で涼みたい。
「シロクマアイスも買っとけばよかった・・・・・・」
ルキアは、少ししょんぼりしていた。
「今日の夜は少し涼しくなるらしいから、そん時にでももっかいコンビニに連れていってやるよ」
ルキアは、まだコンビニまでの複雑な道のりを覚えていなかった。
「約束だぞ」
「ああ」
指きりげんまんをした。
「ルキア」
「なんだ一護」
ルキアを抱き寄せて、一護はキスをした。
「アイスの味がする・・・・・」
「こんな道中で・・・・たわけがっ」
真っ赤になって、ルキアは一護の足を思い切り踏みつけた。
「いいじゃねぇか。減るもんじゃなし」
「減るわ、たわけ!乙女の唇を、なんだと思っているのだ!」
一護は、ルキアを置いて歩き出した。
ルキアとのキスは、ルキアが食べたバニラの味がした。
甘い甘い、バニラの味だった。
まだうだる暑さが残る夏の終わりのある日、ルキアはいつもの押し入れではなく、一護のベッドの上でスース―と、静かな眠りについていた。
「なんだ、寝てんのか」
虚退治から帰還した一護は、ルキアを起こさないように窓からそっと室内に入った。
「しっかし、こんな暑い中よく寝れるもんだな」
エアコンはついていなかった。
虚退治で、軽い運動をしたような一護は、あちいと呟いて、エアコンのスイッチをいれた。
「ん・・・・一護・・・・・・・」
「ルキア起きてんのか?」
ただの寝言らしい。
どうやら、一護の夢を見ているようだった。
石田雨竜からもらった、ワンピース姿だった。ルキアは、ワンピースが好きなのか、買い物に行って服を買う時も、よくワンピースを選んだ。
「一護が巨大な苺に・・・・うーん兄様、わかめ大使が・・・うーんうーん」
「うなされてんのか」
変な夢を見ているらしい。
うーんうーんとうなされるルキアの細い手首をとって、一護はルキアの手を握った。
「ルキア、おい起きろ」
「うーんうーん」
起きそうにもなかった。
一護は、眠りについたままのルキアを見る。
朽木家の姫君だけあって、可憐な姿をしていると思う。男のようにさばさばした性格で、口調もどこか尊大だが、それがルキアであって、ルキアという少女を構築している全てが、一護は好きだった。
ルキアの、桜色の唇に、気づけば指を這わせていた。
「起きない、おまえがわるいんだからな」
一護は、そっと触れるだけのキスをした。
キスといえるのかもわからないようなキスだった。。
好きだと伝えたのに、ルキアは一護の前ではあまりにも無防備だ。
ルキアの存在は、一護にとっては本当は高根の花であった。
「ん・・・・・・・・・一護?帰ったのか」
目をこすって、眠そうにあくびをするルキアの頭を、ぐしゃぐしゃに撫でた。
「何をする、たわけ!」
ルキアはぷんぷんと怒った。
その姿かかわいくて、一護はルキアに顔面を足蹴りされるまで、笑っていた。
押入れが、そっと開いた。
そこから登場してきたコンが、ルキアの元にくると、一護をぬいぐるみの手で指さした。
「みーてーたーぞー一護!ねぇさん、聞いてくだせぇ、一護のやつ、眠っているねぇさんに!」
「うっせぇ!」
「もぎゅ」
コンを踏みつけて、一護はルキアの小さい手を握りしめる。
「アイスでも、買いに行こうぜ」
「む、コンビニにか?」
「そう。ファミマでいいよな?」
「うーん、個人的にはセブイレブンのシロクマアイスが食べたい・・・・・・」
「じゃあ、セブンいくか」
「ああ」
コンを念入りにふみつけて、一護とルキアはアイスを買いに出かけた。
「あ、当たりだ・・・・」
くじつきの棒アイスを食べたルキアは、嬉しそうに当たりとかかれた棒を一護に見せる。
「シロクマアイスが食べたいんじゃなかったのかよ」
「たわけ!その時の気分次第で、アイスは変わるのだ!それより、戻ってこの当たりをアイスと交換せねば・・・・・・・」
「もう、家がもうすぐだぜ。今度にしろよ」
コンビニは、少し離れた場所にあったので、今から戻るのは時間がかかる。
日差しはギラギラと照っていて、暑かった。
早く、家に帰ってエアコンをつけて扇風機で涼みたい。
「シロクマアイスも買っとけばよかった・・・・・・」
ルキアは、少ししょんぼりしていた。
「今日の夜は少し涼しくなるらしいから、そん時にでももっかいコンビニに連れていってやるよ」
ルキアは、まだコンビニまでの複雑な道のりを覚えていなかった。
「約束だぞ」
「ああ」
指きりげんまんをした。
「ルキア」
「なんだ一護」
ルキアを抱き寄せて、一護はキスをした。
「アイスの味がする・・・・・」
「こんな道中で・・・・たわけがっ」
真っ赤になって、ルキアは一護の足を思い切り踏みつけた。
「いいじゃねぇか。減るもんじゃなし」
「減るわ、たわけ!乙女の唇を、なんだと思っているのだ!」
一護は、ルキアを置いて歩き出した。
ルキアとのキスは、ルキアが食べたバニラの味がした。
甘い甘い、バニラの味だった。
記憶喪失
その日、虚の大群が尸魂界を襲った。虚の大群を率いていたのは、見たこともないアランカルだった。
護廷13隊は、11番隊と10番隊、8番隊と13番隊が処理にあったっていた。
更木率いる11番隊が、次々と虚を駆逐していくが、宙にあいたままの入口から次々と虚がやってくる。
「ちっ、きりがねぇぜ。あのでかぶつが虚を呼んでるみてーだな」
アランカルをみて、更木は舌打ちした。
「俺がいく・・・・・・おおおお、卍解大紅蓮氷輪丸!」
卍解した日番谷が、氷の龍をアランカルにぶつける。アランカルは、氷の龍を反射させながら、悲鳴のような声をあげて、虚を駆逐していた8番隊の副官、伊勢七緒に向かっていった。
「女ぁ、まずお前から記憶を食ってやる!」
「七緒ちゃん、危ない!」
京楽は、七緒をかばって背中に傷を負った。
「くそっ・・・・・」
「俺の氷輪丸をはじき返しただと!?」
氷をはじき返し、氷で攻撃してくるアランカルに、日番谷が目を見開いた。
波悉く(なみことごとく)我が盾となれ
雷悉く(いかずちことごとく)我が刃となれ 双魚理。
静かな声が響いた。
はじき返される氷を、片方の刀で受けて、片方の刀で放出する。
アランカルは、氷漬けになりながらも、傷を負った京楽に狙いを定めた。
「京楽!」
鮮血が散った。
双魚理でアランカルを刺したが、京楽をかばった浮竹もアランカルにやられていた。
「浮竹ぇ!」
京楽の悲鳴が、響く。
空中から、失墜していく浮竹に、アランカルは襲いかかる。
「せめて、お前だけでも記憶を食ってやる!」
間に合うか?
瞬歩で近づき、背中の傷が痛みの悲鳴をあげるのを無視して、京楽は花天狂骨でアランカルを真っ二つにした。
「へっ、やるじゃねぇか」
更木が、満足そうに言葉を放つのを合図に、虚の完全駆逐へと死神たちが移行する。
消えていく虚が、増えることはなかった。
「大丈夫か、浮竹、おい、浮竹!」
肺をやられたのか、血を吐いた。
ごぽりと、音がする。
肺の病での発作ではない。もっとひどい・・・・・・肺が潰れているのだ。
たさくんの吐血をして、浮竹は完全に意識を失った。
虚やアランカルにやられた死神たちが、4番隊隊舎に運ばれていく。浮竹を抱き上げて、京楽は自分の傷を無視して、卯ノ花のところに浮竹を運んだ。
「肺をやられているようですが、なんとかしましょう」
「頼む、卯ノ花隊長!」
「あなたの怪我も相当に酷い。勇音」
「はい、隊長」
「京楽隊長の傷を治してあげなさい」
「はい!」
別室に連れていかれて、手当を受けている間も、京楽は浮竹のことを思うと気が気でなかった。
それに、殺す前にいっていた「記憶を食らう」という言葉が酷く気になった。
京楽より酷い怪我を負った浮竹は、3日間生死の境を彷徨った。なんとか容体が落ち着き、二週間が経過した。
仕事も放置して、京楽は浮竹の看病をずっとしていた。
潰れた肺は、結局臓器移植でなんとかなったが、ずっと昏睡状態が続いていた。
ゆっくりと開いた翡翠の瞳で、浮竹はぼんやりとした表情で、天井を仰ぎ見る。
「・・・・・・ここは?」
「よかった、意識が戻ったんだね、浮竹」
京楽の喜びは、相当なものだった。
「お前・・・・・誰だ?」
自分の手を握っている男を、浮竹は不思議そうに見た。
顔を合わせての一言目に、京楽は被っていた笠をくいっとあげた。
「またまた~。変な冗談はよしてよ、浮竹」
「?」
きょろきょろととしだす浮竹。
「ここは?俺は確か、学院にいたはずだが・・・・・・・・・」
「冗談はやめてよ」
「お前・・・・・・京楽に似ているが、親戚か何かか?」
京楽は、その言葉に愕然とした。
「記憶を食ってやる・・・・・」
その言葉は、まさに本当だったのだ。
「診察の結果では、脳に異常はありませんでした。その、記憶を食らうというアランカルは、京楽隊長が退治なさったのでしょう?」
浮竹の寝ている病室の外の廊下で、卯ノ花と京楽は話し込みあっていた。
「消去された記憶は、普通その術者が死ねば解除されます」
「だけど、浮竹は・・・・・」
「ええ。どうやら、学院時代までしか記憶がない様子。隊長となった頃のことは、完全に忘れているみたいですね。どうやったら回復するのか、今の状況では見当がつきません」
卯ノ花の言葉に、京楽は戸惑っていた。
浮竹が、自分のことを忘れた。綺麗さっぱりではなく、学院の頃までの記憶はあって、しかしそれ以降の記憶がない。今の浮竹にとって、隊長となってしまった大人の京楽は、他人なのだ。
しかし、解せない。
記憶を食うアランカルの存在など、今まで確認されたことがない。可能性があるとすれ、反逆者となった藍染が、崩玉を使って新たに生み出したアランカルなのかもしれない。
「今は、様子を見ましょう。記憶も、混濁が落ち着いてきたようですし。なるべく、浮竹隊長の傍にいてあげてください。あなたの存在が、記憶を取り戻すのに一番効果的な気がします」
中途半端に記憶喪失の浮竹は、それから1週間後には退院して、雨乾堂に帰っていった。
「本当に、お前はあの京楽なのか?」
「そうだよ。こんなもじゃもじゃのおっさん、まさに学院後の京楽ってかんじがするだろう?」
「確かに、友人であった京楽は、もじゃもじゃだったが・・・・・・しかし、おっさんって・・・・・・:」
「君と仲良く、おっさん同士さ。まあ、浮竹と僕が同い年だなんて、誰も信じてくれないけどね」
一度手鏡を渡され、年齢を重ねた自分がそこにいるのを認めて、浮竹は自分が一時的な記憶喪失に陥っていると納得はした。だが、まだ完全に受け入れられないでいた。
「お前からは、確かに京楽の霊圧を感じる。かなり、今まで感じていたのより強いが」
「だから、僕は隊長になった未来の京楽なんだってば」
「未来の京楽か・・・・・・」
京楽は、長い浮竹の髪に手をもっていった。
「この白い髪を、ここまで伸ばせっていったのも、僕だよ?」
「このうっとしい長い髪がか?」
「綺麗じゃないか。雪のようで」
「こんな髪・・・・・・」
浮竹にとって、コンプレックスでしかない長い白髪が好きで、京楽は浮竹に伸ばさせた。
「長いと、その、何かいろいろと不便だな。まぁ、京楽が切るなというなら切らないが」
中途半端に記憶喪失の浮竹の記憶は、学院時代の2回生の春ごろのものだった。両想いになる夏の終わりより前のところで、浮竹の記憶はぷつんと途切れていた。
「愛しているよ、浮竹」
「俺は、その・・・・・」
京楽に、いつものように愛を囁かれても、素直に受け入れられない。
学院時代の京楽は、浮竹の傍にいたが、あくまで友人、親友としてだった。
「愛してる」
耳元で囁かれて、髪を長い指がすいていく。
髪をすいていくその指の動きが気持ちよくて、浮竹は目を閉じた。
触れるか触れないかのキスをされて、翡翠の瞳が瞬いた。
「本当に、俺と京楽は、恋人同士に・・・・・?」
「そうだよ」
京楽は諦めない。
浮竹が自分のことを忘却してしまったのなら、もう一度刻み込めばいいのだ。
どれほど、狂おしいまでに愛しているのかを。
「あっ・・・・・・・」
ゆっくりと、京楽に押し倒されて、浮竹は戸惑った。
「その、するのか?」
「しない。でも思い出して?」
記憶のない浮竹を抱いても、満足するものは得られるかどうか分からない。
ただ、甘く甘く、とろけるように甘くしてやればいい。
果実のように甘く囁いてとろけさせて、頭の中を京楽で満たしてしまえばいい。
京楽は、浮竹に啄むような口づけを何度も交わして、彼の細い体のラインをたどった。
「京楽・・・・・・」
4番隊の病室にた頃の浮竹は、消毒用のアルコールのにおいがまじっていたが、今の浮竹はいつものように花のような甘いかおりがした。
入院している間、ふくことくらしかできなかった髪を、洗髪したのも京楽だ。
いつものシャンプーと違うものを使ったのに、浮竹の髪からも甘い花の香りがした。
「んっ・・・・・・」
隊長羽織を脱がされて、侵入してきた指の動きに、浮竹の声がうわずった。
膝を膝で割られて、浮竹は逃げようとした。
だが、がたいのいい京楽に押し倒されていて、体を少しずりあげることしかできなかった。
「やっぱり、するのか・・・・・・・」
「最後まではしない。愛していいかい?」
「いやだといっても、するんだろう?」
「ご名答」
「やっ」
やわやわと花茎をはう手が、その長い指が浮竹を追い上げていく。
「やあっ、きょうら・・・・く・・・・」
真っ白になる世界。体が、痙攣する。
墜ちていく浮竹を、京楽はしっかりと受けとめる。
「愛している、十四郎」
耳元で囁けば、浮竹の白い頬は薔薇色に染まっていく。
浮竹の体は、甘い果実のようだ。いつもは嫌がる浮竹がいないのをいいことに、京楽は好きなだけ浮竹の白い肌に痕を残した。
何度めかの性を半ば無理やり吐き出させられて、浮竹はまどろむように意識を飛ばした。
そのまま意識を失った浮竹を抱きしめて、京楽もまた眠りについた。
朝起きると、腕の中にいた愛しい人は、いなかった。
布団の上を、手を這わせて確認する。
まだ、暖かい。
まだ、近くにいるはずだ。
「浮竹・・・・・?」
愛しい人の姿を探して雨乾堂の外にでると、欄干ごしに浮竹が鯉に餌をやっていた。
「起きたか、京楽」
浮竹は、どこかさっぱりしていた。
「まさか、もう記憶が?」
昨日のことを思い出して、浮竹は鯉にさらに餌をまき散らした。
「その・・・いや、それより俺の記憶がないのをいいことに、散々痕をつけやがって」
真っ白な浮竹の白い肌には、京楽が刻んだ情欲の証がいくつも刻まれていた。
「雨乾堂から、しばらく出れない。責任とれよ」
「浮竹ぇ!」
甘ったるくしたのが成功だったのか、それとも術が解けたのか。
ともかく、浮竹は元に戻っていた。
そんな浮竹に思い切り抱き着いた。
浮竹は、京楽の体重を支え切れずに、雨乾堂の板張りの廊下の上に倒れこむ。
「重いぞ京楽。どけ」
「ごめんごめん」
京楽は、浮竹の手を取って起き上がらせた。
「お前を庇うと、ろくなことにならないな」
「浮竹!今後、あんな無茶はしないでよ!」
「分かっている」
鯉に餌をやり終わった浮竹を抱き上げる。昨日、体の全体のラインを確かめたが、昏睡状態が長かったせでい、浮竹は悲しいほどに体重を落としていた。ただでさえ、細いのにさらに細くなってしまっていた。
「肉をつけるには、やっぱり肉を食うに限るね。今日は焼肉だ」
四番隊の隊舎にいた時は、病院食のような質素なものしか出なかった。
「快気祝いをかねて、ぱーっと派手にやろうよ」
一緒に戦った、更木や日番谷も呼んで酒を飲もうという京楽の提案に、浮竹は同意した。ただ、日番谷を飲みに誘うというのには、少し逡巡する。
「だが、日番谷隊長を飲みに誘っていいのか?あの子はまだ子供だろう」
「なあに、死神だし年齢は関係ないよ。現世じゃあるまいし。そんな法律も条令もない」
「日番谷隊長には、オレンジジュースでいいだろう。その方がいい気がする」
「はっくっしょん」
「あれー?隊長、風邪ですか?」
「違う。誰かが噂してやがるんだ。13番隊か8番隊あたりの、誰かが」
もう一度くしゃみをして、日番谷はまとめていた書類にハンコを押した。
伝令の蝶が飛んできた。松本は、それを手に止まらせて内容を受け取ると、目を輝かせた。
「隊長、浮竹隊長が記憶を完全に取り戻したらしいですよ!快気祝いに、11番隊と8番隊と10番隊と13番隊で、ぱーっと飲んで肉食べるそうで、京楽隊長のおごりですって!」
今から楽しみだと、松本は浮かれていた。
京楽隊長がおごってくれる店は、馴染みの店の時もあるが、時折高級な店の時がある。集まる店が高級店であると知って、松本は今から何を飲んで食べようかと悩んでいた。
「肉か・・・・・たまには、いいかもな」
がっつり、肉を食うことなどあまりない。
「のめのめ~」
京楽が、松本の杯に酒を注いでいく
「この酒おいしーい!ひっく・・・・・流石京楽隊長が選んだお酒だけ、ありますね。ひっく・・・」
松本は酒豪ではない。京楽が勧めるままに、杯を呷ってすでにべろんべろんに酔っていた。
「浮竹隊長も、のみなさ~い。ひっく」
浮竹は、いつもの果実酒を飲んでいた。そこに、松本が日本酒を注ぎ込む。
「松本副隊長、ちょっと飲み過ぎじゃないか?」
「なに、まだまだいけるわよぉ?ひっく」
「ふん、酒はいいが肉が足りねぇ」
いつもは一緒に飲むことなどない更木は、肉料理ばかり手をつけていた。
「うっきー、記憶もどってよかったね!」
「ああ、草鹿副隊長、ありがとう」
やちるは、更木の肩のうえで肉を食べながら、ぶどうジュースを飲んでいた。
日番谷は、離れたところで肉を食べながら、オレンジジュースを飲んでいる。
席官以上の人間が集まっていたが、四隊にもなると、けっこうな大人数になった。
「京楽、金はたりるのか?」
「なーに、心配しなさんさ。この前、一件別館を売りとばしたから、金には余裕ありまくりだよ。まぁ、売りとばさなくても金は腐るほどあるけどね」
上流貴族の出身である京楽は、金持ちだ。その金銭目当てで、寄ってくる女性も多い。見た目も悪くないし、女性には優しいし、上流貴族ということもあって、女性死神によくもてた。
下級貴族であるが、誰にでも平等に優しく、身目麗しい浮竹は、女性だけでなく男性死神にももてた。
「浮竹隊長、傷が癒えてよかったっす!俺の愛をうけとってください!」
酒にべろんべろんによっぱらった、11番隊の席官が、浮竹の手をとって指輪をはめようとしてくる。
「君、そこまでだよ」
殺気を漲らした京楽が、名も知らぬ席官の首に斬魄刀を当てていた。
「ひいっ」
男死神は、逃げていった。
「浮竹ぇ。僕の傍にいなさい」
「え、ああ・・・・」
肉より野菜を多めにとりながら、浮竹は果実酒を呷った。
「浮竹、せっかく高級店を選んだんだから、もっと肉食べなさい」
「ああ・・・・・」
肉を食べるが、その量は他の人に比べて少ない。
「そんなんだから、細いままなんだよ、君は。もっと食べて肉つけなきゃ」
「いや、俺はあんまり肉がつきにくい体質だから。食べても食べても、あんまり太らないし・・・・」
「何それぇ。すごく羨ましいですよ、浮竹隊長。ひっく」
松本が、酒の勢いもあって絡んできた。
「肉がだめなら、飲みなさい!もっとのめのめ~ひっく」
半ば、無礼講なだけあって、みんなわいわいと騒いでいた。
「松本ぉ!恥をかかせるな。酒はそれぐらいにしろ!」
「なんですか、隊長!隊長も、さけのみなさーい」
松本は、その豊満すぎる神々の谷間を、日番谷におしつけて、日番谷に無理やり日本酒を飲ませた。
「うっ、なんだこれ。喉が焼ける・・・・・・・・・」
始めて知る酒の味に、あまりうまそうな顔をしない日番谷。
きっと、大人になっても酒好きにはなりそうもない。
「うっきーの、回復を祝って、みんなで乾杯しよー」
やちるが、ぶどうジュースの入ったコップを手に、更木の肩の上で、乾杯と叫んだ。
「「「「乾杯!」」」」
たくさんの人が、浮竹の回復を祝った。
浮竹も、勧められるままに酒を呷って、そして酔いつぶれた。
「あーあ。寝ちゃった」
浮竹は、酔いつぶれると寝てしまう。そんな浮竹を抱き上げて、京楽は笠を深く被り直すと、残った面子に言い放つ。
「勘定は済ませといたから。0時まで、飲み放題食べ放題だ。まぁ、後はみんなの好きにすればいいよ」
瞬歩で、浮竹を雨乾堂に送り届けると、清音が布団をしいてくれたので、そこに浮竹をそっと寝かす。
「あれぇ?」
浮竹は、知らない間に京楽の、少し伸びた黒髪を掴んでいた。手を離させようにも、しっかりつかんで離さない。
「僕に、帰ってほしくないんだね」
京楽は苦笑して、浮竹の隣に横になる。酒をしこたま飲んだせいで、睡魔はすぐにやってきた。
すーすーと、静かに寝息を立てる自分の隊長の、安心しきった表情を見て、清音も自然と笑みが零れた。
「おかえりなさい、浮竹隊長。それからありがとうございます、京楽隊長」
かつては、こんな二人の面倒をみるのは海燕の役割だった。彼が死んで、もう何十年も経過していた。
浮竹は、まだ副官を置かない。
海燕の死が、浮竹の心に穴をあけているのを、清音も仙太郎も、そして京楽も知っていた。
今日は、満月だった。
眠り込む二人を包み込むように、窓から月光が入ってくる。
比翼の鳥は、寄り添いあいながら、しばしの休息をとる。
比翼の鳥は、片方は優しすぎて、片方は儚いが強さをもっていた。
比翼の鳥は、まどろみ、眠りへとついた。
闇空に、月が浮かぶ。
太陽のようにではないが、優しくそして平等に、その光は降り注ぐのであった。
護廷13隊は、11番隊と10番隊、8番隊と13番隊が処理にあったっていた。
更木率いる11番隊が、次々と虚を駆逐していくが、宙にあいたままの入口から次々と虚がやってくる。
「ちっ、きりがねぇぜ。あのでかぶつが虚を呼んでるみてーだな」
アランカルをみて、更木は舌打ちした。
「俺がいく・・・・・・おおおお、卍解大紅蓮氷輪丸!」
卍解した日番谷が、氷の龍をアランカルにぶつける。アランカルは、氷の龍を反射させながら、悲鳴のような声をあげて、虚を駆逐していた8番隊の副官、伊勢七緒に向かっていった。
「女ぁ、まずお前から記憶を食ってやる!」
「七緒ちゃん、危ない!」
京楽は、七緒をかばって背中に傷を負った。
「くそっ・・・・・」
「俺の氷輪丸をはじき返しただと!?」
氷をはじき返し、氷で攻撃してくるアランカルに、日番谷が目を見開いた。
波悉く(なみことごとく)我が盾となれ
雷悉く(いかずちことごとく)我が刃となれ 双魚理。
静かな声が響いた。
はじき返される氷を、片方の刀で受けて、片方の刀で放出する。
アランカルは、氷漬けになりながらも、傷を負った京楽に狙いを定めた。
「京楽!」
鮮血が散った。
双魚理でアランカルを刺したが、京楽をかばった浮竹もアランカルにやられていた。
「浮竹ぇ!」
京楽の悲鳴が、響く。
空中から、失墜していく浮竹に、アランカルは襲いかかる。
「せめて、お前だけでも記憶を食ってやる!」
間に合うか?
瞬歩で近づき、背中の傷が痛みの悲鳴をあげるのを無視して、京楽は花天狂骨でアランカルを真っ二つにした。
「へっ、やるじゃねぇか」
更木が、満足そうに言葉を放つのを合図に、虚の完全駆逐へと死神たちが移行する。
消えていく虚が、増えることはなかった。
「大丈夫か、浮竹、おい、浮竹!」
肺をやられたのか、血を吐いた。
ごぽりと、音がする。
肺の病での発作ではない。もっとひどい・・・・・・肺が潰れているのだ。
たさくんの吐血をして、浮竹は完全に意識を失った。
虚やアランカルにやられた死神たちが、4番隊隊舎に運ばれていく。浮竹を抱き上げて、京楽は自分の傷を無視して、卯ノ花のところに浮竹を運んだ。
「肺をやられているようですが、なんとかしましょう」
「頼む、卯ノ花隊長!」
「あなたの怪我も相当に酷い。勇音」
「はい、隊長」
「京楽隊長の傷を治してあげなさい」
「はい!」
別室に連れていかれて、手当を受けている間も、京楽は浮竹のことを思うと気が気でなかった。
それに、殺す前にいっていた「記憶を食らう」という言葉が酷く気になった。
京楽より酷い怪我を負った浮竹は、3日間生死の境を彷徨った。なんとか容体が落ち着き、二週間が経過した。
仕事も放置して、京楽は浮竹の看病をずっとしていた。
潰れた肺は、結局臓器移植でなんとかなったが、ずっと昏睡状態が続いていた。
ゆっくりと開いた翡翠の瞳で、浮竹はぼんやりとした表情で、天井を仰ぎ見る。
「・・・・・・ここは?」
「よかった、意識が戻ったんだね、浮竹」
京楽の喜びは、相当なものだった。
「お前・・・・・誰だ?」
自分の手を握っている男を、浮竹は不思議そうに見た。
顔を合わせての一言目に、京楽は被っていた笠をくいっとあげた。
「またまた~。変な冗談はよしてよ、浮竹」
「?」
きょろきょろととしだす浮竹。
「ここは?俺は確か、学院にいたはずだが・・・・・・・・・」
「冗談はやめてよ」
「お前・・・・・・京楽に似ているが、親戚か何かか?」
京楽は、その言葉に愕然とした。
「記憶を食ってやる・・・・・」
その言葉は、まさに本当だったのだ。
「診察の結果では、脳に異常はありませんでした。その、記憶を食らうというアランカルは、京楽隊長が退治なさったのでしょう?」
浮竹の寝ている病室の外の廊下で、卯ノ花と京楽は話し込みあっていた。
「消去された記憶は、普通その術者が死ねば解除されます」
「だけど、浮竹は・・・・・」
「ええ。どうやら、学院時代までしか記憶がない様子。隊長となった頃のことは、完全に忘れているみたいですね。どうやったら回復するのか、今の状況では見当がつきません」
卯ノ花の言葉に、京楽は戸惑っていた。
浮竹が、自分のことを忘れた。綺麗さっぱりではなく、学院の頃までの記憶はあって、しかしそれ以降の記憶がない。今の浮竹にとって、隊長となってしまった大人の京楽は、他人なのだ。
しかし、解せない。
記憶を食うアランカルの存在など、今まで確認されたことがない。可能性があるとすれ、反逆者となった藍染が、崩玉を使って新たに生み出したアランカルなのかもしれない。
「今は、様子を見ましょう。記憶も、混濁が落ち着いてきたようですし。なるべく、浮竹隊長の傍にいてあげてください。あなたの存在が、記憶を取り戻すのに一番効果的な気がします」
中途半端に記憶喪失の浮竹は、それから1週間後には退院して、雨乾堂に帰っていった。
「本当に、お前はあの京楽なのか?」
「そうだよ。こんなもじゃもじゃのおっさん、まさに学院後の京楽ってかんじがするだろう?」
「確かに、友人であった京楽は、もじゃもじゃだったが・・・・・・しかし、おっさんって・・・・・・:」
「君と仲良く、おっさん同士さ。まあ、浮竹と僕が同い年だなんて、誰も信じてくれないけどね」
一度手鏡を渡され、年齢を重ねた自分がそこにいるのを認めて、浮竹は自分が一時的な記憶喪失に陥っていると納得はした。だが、まだ完全に受け入れられないでいた。
「お前からは、確かに京楽の霊圧を感じる。かなり、今まで感じていたのより強いが」
「だから、僕は隊長になった未来の京楽なんだってば」
「未来の京楽か・・・・・・」
京楽は、長い浮竹の髪に手をもっていった。
「この白い髪を、ここまで伸ばせっていったのも、僕だよ?」
「このうっとしい長い髪がか?」
「綺麗じゃないか。雪のようで」
「こんな髪・・・・・・」
浮竹にとって、コンプレックスでしかない長い白髪が好きで、京楽は浮竹に伸ばさせた。
「長いと、その、何かいろいろと不便だな。まぁ、京楽が切るなというなら切らないが」
中途半端に記憶喪失の浮竹の記憶は、学院時代の2回生の春ごろのものだった。両想いになる夏の終わりより前のところで、浮竹の記憶はぷつんと途切れていた。
「愛しているよ、浮竹」
「俺は、その・・・・・」
京楽に、いつものように愛を囁かれても、素直に受け入れられない。
学院時代の京楽は、浮竹の傍にいたが、あくまで友人、親友としてだった。
「愛してる」
耳元で囁かれて、髪を長い指がすいていく。
髪をすいていくその指の動きが気持ちよくて、浮竹は目を閉じた。
触れるか触れないかのキスをされて、翡翠の瞳が瞬いた。
「本当に、俺と京楽は、恋人同士に・・・・・?」
「そうだよ」
京楽は諦めない。
浮竹が自分のことを忘却してしまったのなら、もう一度刻み込めばいいのだ。
どれほど、狂おしいまでに愛しているのかを。
「あっ・・・・・・・」
ゆっくりと、京楽に押し倒されて、浮竹は戸惑った。
「その、するのか?」
「しない。でも思い出して?」
記憶のない浮竹を抱いても、満足するものは得られるかどうか分からない。
ただ、甘く甘く、とろけるように甘くしてやればいい。
果実のように甘く囁いてとろけさせて、頭の中を京楽で満たしてしまえばいい。
京楽は、浮竹に啄むような口づけを何度も交わして、彼の細い体のラインをたどった。
「京楽・・・・・・」
4番隊の病室にた頃の浮竹は、消毒用のアルコールのにおいがまじっていたが、今の浮竹はいつものように花のような甘いかおりがした。
入院している間、ふくことくらしかできなかった髪を、洗髪したのも京楽だ。
いつものシャンプーと違うものを使ったのに、浮竹の髪からも甘い花の香りがした。
「んっ・・・・・・」
隊長羽織を脱がされて、侵入してきた指の動きに、浮竹の声がうわずった。
膝を膝で割られて、浮竹は逃げようとした。
だが、がたいのいい京楽に押し倒されていて、体を少しずりあげることしかできなかった。
「やっぱり、するのか・・・・・・・」
「最後まではしない。愛していいかい?」
「いやだといっても、するんだろう?」
「ご名答」
「やっ」
やわやわと花茎をはう手が、その長い指が浮竹を追い上げていく。
「やあっ、きょうら・・・・く・・・・」
真っ白になる世界。体が、痙攣する。
墜ちていく浮竹を、京楽はしっかりと受けとめる。
「愛している、十四郎」
耳元で囁けば、浮竹の白い頬は薔薇色に染まっていく。
浮竹の体は、甘い果実のようだ。いつもは嫌がる浮竹がいないのをいいことに、京楽は好きなだけ浮竹の白い肌に痕を残した。
何度めかの性を半ば無理やり吐き出させられて、浮竹はまどろむように意識を飛ばした。
そのまま意識を失った浮竹を抱きしめて、京楽もまた眠りについた。
朝起きると、腕の中にいた愛しい人は、いなかった。
布団の上を、手を這わせて確認する。
まだ、暖かい。
まだ、近くにいるはずだ。
「浮竹・・・・・?」
愛しい人の姿を探して雨乾堂の外にでると、欄干ごしに浮竹が鯉に餌をやっていた。
「起きたか、京楽」
浮竹は、どこかさっぱりしていた。
「まさか、もう記憶が?」
昨日のことを思い出して、浮竹は鯉にさらに餌をまき散らした。
「その・・・いや、それより俺の記憶がないのをいいことに、散々痕をつけやがって」
真っ白な浮竹の白い肌には、京楽が刻んだ情欲の証がいくつも刻まれていた。
「雨乾堂から、しばらく出れない。責任とれよ」
「浮竹ぇ!」
甘ったるくしたのが成功だったのか、それとも術が解けたのか。
ともかく、浮竹は元に戻っていた。
そんな浮竹に思い切り抱き着いた。
浮竹は、京楽の体重を支え切れずに、雨乾堂の板張りの廊下の上に倒れこむ。
「重いぞ京楽。どけ」
「ごめんごめん」
京楽は、浮竹の手を取って起き上がらせた。
「お前を庇うと、ろくなことにならないな」
「浮竹!今後、あんな無茶はしないでよ!」
「分かっている」
鯉に餌をやり終わった浮竹を抱き上げる。昨日、体の全体のラインを確かめたが、昏睡状態が長かったせでい、浮竹は悲しいほどに体重を落としていた。ただでさえ、細いのにさらに細くなってしまっていた。
「肉をつけるには、やっぱり肉を食うに限るね。今日は焼肉だ」
四番隊の隊舎にいた時は、病院食のような質素なものしか出なかった。
「快気祝いをかねて、ぱーっと派手にやろうよ」
一緒に戦った、更木や日番谷も呼んで酒を飲もうという京楽の提案に、浮竹は同意した。ただ、日番谷を飲みに誘うというのには、少し逡巡する。
「だが、日番谷隊長を飲みに誘っていいのか?あの子はまだ子供だろう」
「なあに、死神だし年齢は関係ないよ。現世じゃあるまいし。そんな法律も条令もない」
「日番谷隊長には、オレンジジュースでいいだろう。その方がいい気がする」
「はっくっしょん」
「あれー?隊長、風邪ですか?」
「違う。誰かが噂してやがるんだ。13番隊か8番隊あたりの、誰かが」
もう一度くしゃみをして、日番谷はまとめていた書類にハンコを押した。
伝令の蝶が飛んできた。松本は、それを手に止まらせて内容を受け取ると、目を輝かせた。
「隊長、浮竹隊長が記憶を完全に取り戻したらしいですよ!快気祝いに、11番隊と8番隊と10番隊と13番隊で、ぱーっと飲んで肉食べるそうで、京楽隊長のおごりですって!」
今から楽しみだと、松本は浮かれていた。
京楽隊長がおごってくれる店は、馴染みの店の時もあるが、時折高級な店の時がある。集まる店が高級店であると知って、松本は今から何を飲んで食べようかと悩んでいた。
「肉か・・・・・たまには、いいかもな」
がっつり、肉を食うことなどあまりない。
「のめのめ~」
京楽が、松本の杯に酒を注いでいく
「この酒おいしーい!ひっく・・・・・流石京楽隊長が選んだお酒だけ、ありますね。ひっく・・・」
松本は酒豪ではない。京楽が勧めるままに、杯を呷ってすでにべろんべろんに酔っていた。
「浮竹隊長も、のみなさ~い。ひっく」
浮竹は、いつもの果実酒を飲んでいた。そこに、松本が日本酒を注ぎ込む。
「松本副隊長、ちょっと飲み過ぎじゃないか?」
「なに、まだまだいけるわよぉ?ひっく」
「ふん、酒はいいが肉が足りねぇ」
いつもは一緒に飲むことなどない更木は、肉料理ばかり手をつけていた。
「うっきー、記憶もどってよかったね!」
「ああ、草鹿副隊長、ありがとう」
やちるは、更木の肩のうえで肉を食べながら、ぶどうジュースを飲んでいた。
日番谷は、離れたところで肉を食べながら、オレンジジュースを飲んでいる。
席官以上の人間が集まっていたが、四隊にもなると、けっこうな大人数になった。
「京楽、金はたりるのか?」
「なーに、心配しなさんさ。この前、一件別館を売りとばしたから、金には余裕ありまくりだよ。まぁ、売りとばさなくても金は腐るほどあるけどね」
上流貴族の出身である京楽は、金持ちだ。その金銭目当てで、寄ってくる女性も多い。見た目も悪くないし、女性には優しいし、上流貴族ということもあって、女性死神によくもてた。
下級貴族であるが、誰にでも平等に優しく、身目麗しい浮竹は、女性だけでなく男性死神にももてた。
「浮竹隊長、傷が癒えてよかったっす!俺の愛をうけとってください!」
酒にべろんべろんによっぱらった、11番隊の席官が、浮竹の手をとって指輪をはめようとしてくる。
「君、そこまでだよ」
殺気を漲らした京楽が、名も知らぬ席官の首に斬魄刀を当てていた。
「ひいっ」
男死神は、逃げていった。
「浮竹ぇ。僕の傍にいなさい」
「え、ああ・・・・」
肉より野菜を多めにとりながら、浮竹は果実酒を呷った。
「浮竹、せっかく高級店を選んだんだから、もっと肉食べなさい」
「ああ・・・・・」
肉を食べるが、その量は他の人に比べて少ない。
「そんなんだから、細いままなんだよ、君は。もっと食べて肉つけなきゃ」
「いや、俺はあんまり肉がつきにくい体質だから。食べても食べても、あんまり太らないし・・・・」
「何それぇ。すごく羨ましいですよ、浮竹隊長。ひっく」
松本が、酒の勢いもあって絡んできた。
「肉がだめなら、飲みなさい!もっとのめのめ~ひっく」
半ば、無礼講なだけあって、みんなわいわいと騒いでいた。
「松本ぉ!恥をかかせるな。酒はそれぐらいにしろ!」
「なんですか、隊長!隊長も、さけのみなさーい」
松本は、その豊満すぎる神々の谷間を、日番谷におしつけて、日番谷に無理やり日本酒を飲ませた。
「うっ、なんだこれ。喉が焼ける・・・・・・・・・」
始めて知る酒の味に、あまりうまそうな顔をしない日番谷。
きっと、大人になっても酒好きにはなりそうもない。
「うっきーの、回復を祝って、みんなで乾杯しよー」
やちるが、ぶどうジュースの入ったコップを手に、更木の肩の上で、乾杯と叫んだ。
「「「「乾杯!」」」」
たくさんの人が、浮竹の回復を祝った。
浮竹も、勧められるままに酒を呷って、そして酔いつぶれた。
「あーあ。寝ちゃった」
浮竹は、酔いつぶれると寝てしまう。そんな浮竹を抱き上げて、京楽は笠を深く被り直すと、残った面子に言い放つ。
「勘定は済ませといたから。0時まで、飲み放題食べ放題だ。まぁ、後はみんなの好きにすればいいよ」
瞬歩で、浮竹を雨乾堂に送り届けると、清音が布団をしいてくれたので、そこに浮竹をそっと寝かす。
「あれぇ?」
浮竹は、知らない間に京楽の、少し伸びた黒髪を掴んでいた。手を離させようにも、しっかりつかんで離さない。
「僕に、帰ってほしくないんだね」
京楽は苦笑して、浮竹の隣に横になる。酒をしこたま飲んだせいで、睡魔はすぐにやってきた。
すーすーと、静かに寝息を立てる自分の隊長の、安心しきった表情を見て、清音も自然と笑みが零れた。
「おかえりなさい、浮竹隊長。それからありがとうございます、京楽隊長」
かつては、こんな二人の面倒をみるのは海燕の役割だった。彼が死んで、もう何十年も経過していた。
浮竹は、まだ副官を置かない。
海燕の死が、浮竹の心に穴をあけているのを、清音も仙太郎も、そして京楽も知っていた。
今日は、満月だった。
眠り込む二人を包み込むように、窓から月光が入ってくる。
比翼の鳥は、寄り添いあいながら、しばしの休息をとる。
比翼の鳥は、片方は優しすぎて、片方は儚いが強さをもっていた。
比翼の鳥は、まどろみ、眠りへとついた。
闇空に、月が浮かぶ。
太陽のようにではないが、優しくそして平等に、その光は降り注ぐのであった。
日常
学校の帰り道。
一護は、ルキアとゲーセンに寄った。
夏休みも終わり、秋がこようとしていた。まだうだる暑さを含んだ大気は、当分残暑が続きそうだった。
「一護、これはなんだ?」
「あー?プリクラだ。写真とるようなもんだ」
「ほうほう。一度、とってみたいぞ。貴様とでいい」
「なんだその言い方」
カチンときたが、一護はルキアと一緒にプリクラをとった。
「おお、すごいな。文字も入れれるのか。ただ、値段が少し高いな。まぁ、兄様からたくさん小遣いをいただいているので、どうでもよいが」
「お前、一体いくら白哉からもらってるんだよ」
「ふふふふ、秘密だ」
少なくとも、10万以上はあるなと、一護は思った。
ブランドものの衣服を、時折買ってくることがある。ティーンズファッションのモデルにならないかと、芸能人スカウトされたことのあるルキアは、男のようなさばさばした性格と口調のわりには、高貴な身分だけあって、どこか気品があった。
「しっかし、白哉も変わったもんだなぁ」
「そうだな。兄様は、だいぶ変わられた」
義妹を素直に愛せなかった分を、取り戻すかのように、甘やかしている。
女性死神協会のメンバーと海に行った時など、わかめ大使とかいうわけのわからない砂細工を作っていた。となりででこぼこのチャッピーを作っているルキアと、まさに似た者義兄妹。
「一護、あれはなんだ」
「ああ?クレープ屋だよ」
「ふむ。金をやるから買って来い」
「なんで俺が買うんだよ。食いたいのはルキアだろうが。自分で行け」
「たわけ!愛しい彼女のために、働くのが現世の男子というものだろう」
「別に愛しくなんかないぞ」
「今までの私との関係は、遊びだったのか!」
「いや、俺らただの死神仲間だろうが」
別に、付き合っているというわけではない。交際するなら、まずは白哉の許しがいるだろう。
「泣くぞ!」
「わーったよ。買ってくればいいんだろ!」
ハンカチを目に添えられて、ぶつぶつと文句をいいながらも、一護は自分の分も含めて2つクレープを買った。
「うむ。美味いな。食べないなら、貴様の分もよこせ!」
「意地汚いやつだな!今から食べるんだよ、俺は!」
ルキアにとられる前に、一護はクレープを食べてしまった。
「むう。もう1つ買って来い」
「だから、自分で行けよ・・・・・・」
一万札を渡されて、一護はため息を零した。
あー。なんだこの生き物。かわいいけど、我儘で傲慢不遜だ。
そんなルキアに慣れてしまったのか、一護は素直にクレープを買いにいった。おつりをもらうのに少し時間がかかった。
「たわけ、遅いぞ!」
「ほんの数分も待てないのかよ」
「よこせっ!」
一護の手からクレープを奪いとるルキア。
「さっきと違う味がする。こっちのほうがうまいな」
「どれ」
食べかけのルキアのクレープを、一護は少しだけ食べた。
それに、ルキアは真っ赤になった。
「貴様!このたわけ者!」
まるで、彼氏彼女のようではないか・・・・・・・その言葉を飲み込んで、ルキアは歩き出す。
「現世は、やはりいいな」
「そうか?」
いつまで、現世にいられるの分からない。藍染との戦いが、一段落したら、ルキアはまた尸魂界に帰るのだろう。
「現世に、ずっと一緒にいられたらいいのに・・・・・・」
ルキアの声は、小さすぎて一護には届かなかった。
今は、穏やか日々を享受しよう。
決戦の時は、近づいていた。
一護は、ルキアとゲーセンに寄った。
夏休みも終わり、秋がこようとしていた。まだうだる暑さを含んだ大気は、当分残暑が続きそうだった。
「一護、これはなんだ?」
「あー?プリクラだ。写真とるようなもんだ」
「ほうほう。一度、とってみたいぞ。貴様とでいい」
「なんだその言い方」
カチンときたが、一護はルキアと一緒にプリクラをとった。
「おお、すごいな。文字も入れれるのか。ただ、値段が少し高いな。まぁ、兄様からたくさん小遣いをいただいているので、どうでもよいが」
「お前、一体いくら白哉からもらってるんだよ」
「ふふふふ、秘密だ」
少なくとも、10万以上はあるなと、一護は思った。
ブランドものの衣服を、時折買ってくることがある。ティーンズファッションのモデルにならないかと、芸能人スカウトされたことのあるルキアは、男のようなさばさばした性格と口調のわりには、高貴な身分だけあって、どこか気品があった。
「しっかし、白哉も変わったもんだなぁ」
「そうだな。兄様は、だいぶ変わられた」
義妹を素直に愛せなかった分を、取り戻すかのように、甘やかしている。
女性死神協会のメンバーと海に行った時など、わかめ大使とかいうわけのわからない砂細工を作っていた。となりででこぼこのチャッピーを作っているルキアと、まさに似た者義兄妹。
「一護、あれはなんだ」
「ああ?クレープ屋だよ」
「ふむ。金をやるから買って来い」
「なんで俺が買うんだよ。食いたいのはルキアだろうが。自分で行け」
「たわけ!愛しい彼女のために、働くのが現世の男子というものだろう」
「別に愛しくなんかないぞ」
「今までの私との関係は、遊びだったのか!」
「いや、俺らただの死神仲間だろうが」
別に、付き合っているというわけではない。交際するなら、まずは白哉の許しがいるだろう。
「泣くぞ!」
「わーったよ。買ってくればいいんだろ!」
ハンカチを目に添えられて、ぶつぶつと文句をいいながらも、一護は自分の分も含めて2つクレープを買った。
「うむ。美味いな。食べないなら、貴様の分もよこせ!」
「意地汚いやつだな!今から食べるんだよ、俺は!」
ルキアにとられる前に、一護はクレープを食べてしまった。
「むう。もう1つ買って来い」
「だから、自分で行けよ・・・・・・」
一万札を渡されて、一護はため息を零した。
あー。なんだこの生き物。かわいいけど、我儘で傲慢不遜だ。
そんなルキアに慣れてしまったのか、一護は素直にクレープを買いにいった。おつりをもらうのに少し時間がかかった。
「たわけ、遅いぞ!」
「ほんの数分も待てないのかよ」
「よこせっ!」
一護の手からクレープを奪いとるルキア。
「さっきと違う味がする。こっちのほうがうまいな」
「どれ」
食べかけのルキアのクレープを、一護は少しだけ食べた。
それに、ルキアは真っ赤になった。
「貴様!このたわけ者!」
まるで、彼氏彼女のようではないか・・・・・・・その言葉を飲み込んで、ルキアは歩き出す。
「現世は、やはりいいな」
「そうか?」
いつまで、現世にいられるの分からない。藍染との戦いが、一段落したら、ルキアはまた尸魂界に帰るのだろう。
「現世に、ずっと一緒にいられたらいいのに・・・・・・」
ルキアの声は、小さすぎて一護には届かなかった。
今は、穏やか日々を享受しよう。
決戦の時は、近づいていた。
比翼の鳥Ⅳ
「ああ、また散らかして・・・・・・・」
海燕は、雨乾堂でばらばらになった書類を、片付けていく。
ハンコはもう押されてあった。
後は、次の隊に回すだけの書類だ。
「またこんな場所で・・・・・」
浮竹と、京楽が寝ていた。
畳に敷いた布団の上で、京楽は、浮竹を抱きしめていた。京楽の腕の中で、浮竹はすーすーと眠っている。二人とも、よく眠っているようだ。
いくら京楽の手の中だからといっても、あまりにも無防備だ。
「隊長・・・・」
海燕は、浮竹のやや薄い桃色の唇に指で触れる。
起こすまいと、優しく。
「んー・・・・・・」
京楽が、身じろぎした。
自分の今しでかしたことに気づかれたのかと、ぎくりとなった。
浮竹は、変わらずスースーと眠りに入っている。京楽のほうが、眠りは浅いようだった。
真っ白な長い髪が、布団の上で乱れている。
その髪に、そっと触ってみると、サラサラと指の間から零れ落ちた。
「ん・・・京楽の、あほ・・・・」
眠っていた浮竹が、少しだけ動いた。
また、気づかれたのかと、ぎくりとなる。
自分には、都という名の妻がいる。浮竹と出会う前から、結婚していた。もし、妻帯していなかったら。もし、浮竹に京楽がいなかったら・・・。
敬愛する上官に抱いてしまった劣情に、海燕は首を振って想いを抑え込んだ。
「二人とも、風邪ひきますよ」
かけ布団を二人にかぶせて、拾い上げた書類を手に、海燕は雨乾堂を後にした。
「・・・・・・・・・」
ゆっくりと、京楽が目を開ける。
残っていた霊圧に、眉をしかめる。
愛しい浮竹の霊圧に触れるように、少しだけ霊圧の名残があった。
それは、浮竹が京楽の他に最も信頼しているはずの、副官のものだった。
確か、名前は志波海燕。妻帯者で、浮竹の世話をよくやいてくれる、京楽も頼りにしている相手だった。
「ちょっと、まずいんじゃないの・・・・・・」
もしも、浮竹を取られでもしたら、嫉妬で身が滅びそうだ。
「君は、僕だけのものだからね」
腕の中で眠る、白い髪の麗人を抱きしめる腕に、力を籠めると、僅かに翡翠色の瞳が開いた。
「ん・・・きょうら・・・く?」
交わったわけではない。だが、ぐずぐずになるように、甘く甘く、耳元で囁くように浮竹に接した。
何度も口づけして、体のラインを確かめた。
「まだ、眠い・・・・・・」
浮竹は、京楽のもじゃもじゃの胸毛のはえた胸筋に、頭をこすりつける。
浮竹の白い髪や体からは、甘い花の香りがした。
いつもそうだ。
香水も使っていないのに、甘い香りがする。花のような香りだ。
さらさらと零れ落ちていく、白い長い髪を、手に取る。
「誰にも、渡さない・・・・・・・」
やや乱暴に、口づける。
「んー・・・・・・きょうら・・く・・・・」
「どうしたんだい、十四郎」
下の名前で呼ぶと、ぴくりと浮竹の体が反応した。
「春水・・・・・・」
触れ合うだけのキスをする。
「浮竹は、甘いねぇ」
とろけるようなキスも、触れるようなキスも、甘くて甘くて。
まるで、果実のようだ。
「春水・・・・・・・愛してる・・・・・・」
「僕もだよ、十四郎」
その甘さを貪るように、覆いかぶさって、深く口づけた。
「誰にも、渡さない」
もしも、浮竹に自分以外の愛しい人ができたら、きっと相手を殺してしまう。
狂気じみた愛だ。
比翼の鳥の片割れは、貪欲だった。欲しいだけ貪る。
もう片方の比翼の鳥は、貪られて啼くことを覚えた。
優しく甘い時間は、あっという間に過ぎていく。
比翼の鳥は、お互いを抱きしめあいながら、熱を孕んで飛び立っていく。
休息を何度も取りながら。
ただ、真っ白な世界へと。
海燕は、雨乾堂でばらばらになった書類を、片付けていく。
ハンコはもう押されてあった。
後は、次の隊に回すだけの書類だ。
「またこんな場所で・・・・・」
浮竹と、京楽が寝ていた。
畳に敷いた布団の上で、京楽は、浮竹を抱きしめていた。京楽の腕の中で、浮竹はすーすーと眠っている。二人とも、よく眠っているようだ。
いくら京楽の手の中だからといっても、あまりにも無防備だ。
「隊長・・・・」
海燕は、浮竹のやや薄い桃色の唇に指で触れる。
起こすまいと、優しく。
「んー・・・・・・」
京楽が、身じろぎした。
自分の今しでかしたことに気づかれたのかと、ぎくりとなった。
浮竹は、変わらずスースーと眠りに入っている。京楽のほうが、眠りは浅いようだった。
真っ白な長い髪が、布団の上で乱れている。
その髪に、そっと触ってみると、サラサラと指の間から零れ落ちた。
「ん・・・京楽の、あほ・・・・」
眠っていた浮竹が、少しだけ動いた。
また、気づかれたのかと、ぎくりとなる。
自分には、都という名の妻がいる。浮竹と出会う前から、結婚していた。もし、妻帯していなかったら。もし、浮竹に京楽がいなかったら・・・。
敬愛する上官に抱いてしまった劣情に、海燕は首を振って想いを抑え込んだ。
「二人とも、風邪ひきますよ」
かけ布団を二人にかぶせて、拾い上げた書類を手に、海燕は雨乾堂を後にした。
「・・・・・・・・・」
ゆっくりと、京楽が目を開ける。
残っていた霊圧に、眉をしかめる。
愛しい浮竹の霊圧に触れるように、少しだけ霊圧の名残があった。
それは、浮竹が京楽の他に最も信頼しているはずの、副官のものだった。
確か、名前は志波海燕。妻帯者で、浮竹の世話をよくやいてくれる、京楽も頼りにしている相手だった。
「ちょっと、まずいんじゃないの・・・・・・」
もしも、浮竹を取られでもしたら、嫉妬で身が滅びそうだ。
「君は、僕だけのものだからね」
腕の中で眠る、白い髪の麗人を抱きしめる腕に、力を籠めると、僅かに翡翠色の瞳が開いた。
「ん・・・きょうら・・・く?」
交わったわけではない。だが、ぐずぐずになるように、甘く甘く、耳元で囁くように浮竹に接した。
何度も口づけして、体のラインを確かめた。
「まだ、眠い・・・・・・」
浮竹は、京楽のもじゃもじゃの胸毛のはえた胸筋に、頭をこすりつける。
浮竹の白い髪や体からは、甘い花の香りがした。
いつもそうだ。
香水も使っていないのに、甘い香りがする。花のような香りだ。
さらさらと零れ落ちていく、白い長い髪を、手に取る。
「誰にも、渡さない・・・・・・・」
やや乱暴に、口づける。
「んー・・・・・・きょうら・・く・・・・」
「どうしたんだい、十四郎」
下の名前で呼ぶと、ぴくりと浮竹の体が反応した。
「春水・・・・・・」
触れ合うだけのキスをする。
「浮竹は、甘いねぇ」
とろけるようなキスも、触れるようなキスも、甘くて甘くて。
まるで、果実のようだ。
「春水・・・・・・・愛してる・・・・・・」
「僕もだよ、十四郎」
その甘さを貪るように、覆いかぶさって、深く口づけた。
「誰にも、渡さない」
もしも、浮竹に自分以外の愛しい人ができたら、きっと相手を殺してしまう。
狂気じみた愛だ。
比翼の鳥の片割れは、貪欲だった。欲しいだけ貪る。
もう片方の比翼の鳥は、貪られて啼くことを覚えた。
優しく甘い時間は、あっという間に過ぎていく。
比翼の鳥は、お互いを抱きしめあいながら、熱を孕んで飛び立っていく。
休息を何度も取りながら。
ただ、真っ白な世界へと。
猫又
「京楽、この通りだ」
「だめなものはだめ」
「そう言わず」
「だーめ」
「これでもか?」
浮竹は、自分の服の襟元をはだけた。
「うっ・・・・・色仕掛けしても、だめなものはだめ!」
「そんな。又吉・・・・・・・」
にゃあ。
浮竹に抱き上げられた黒猫は、かわいく鳴いた。
といっても、ただの猫ではない。
正体が夜一だというパターンでもない。
尻尾が二つあった。
いわゆる、猫又・・・・・・妖怪の一種だった。
尸魂界では、一種の虚に似た姿を保つ獣の一種だ。分類上では。
「はっくしょん」
京楽は、くしゃみをした。
「頼むから、こっち向けないでくれないかい。くしゃみが止まらなくなる・・・・っくしょん」
京楽は、浮竹と同じで夜一と交流をもつ。だが、夜一が猫の姿をとると、京楽はいなくなる。彼は・・・・・・猫アレルギーだった。
「はっくしょん。とにかくだめなものはだめ!雨乾堂で、猫又かうなんて!僕が遊びにいけなくなるじゃない」
「京楽がきたら、清音と仙太郎に世話するようにもっていってもらうから!」
「もっていくまで、ここにいるんでしょ?僕が猫アレルギーだって知ってるでしょ?」
「だから、頼み込んでいるんじゃないか。雨乾堂は、俺の居場所だぞ。本当なら、京楽の許可なしでも飼えるのを、こうやって許しをえて飼おうとしてるだけましじゃないか!」
「だめなものはだめ!」
京楽は、猫又を我慢してつかみ、ぽいっと雨乾堂の外に捨てようとする。
「又吉!」
「にゃああ」
又吉と呼ばれた猫又は、暴れると京楽の顔をひっかいて、浮竹の元に戻ってきた。
「ここがだめなら、どうしよう・・・・・・・そうだ、シロちゃんだ!」
自分と同じ、シロちゃんこと日番谷を思い出した。
彼は、けっこう動物好きだ。
「ちょっと、行ってくる」
「あ、浮竹・・・・・・・はっくっしょん!」
京楽は、くしゃみをして、瞬歩で去って行った浮竹の後を追った。
「日番谷隊長!」
「なんだ、騒々しい」
10番隊の隊舎の隊長室にやってきた浮竹は、又吉と名付けた猫又を、ずいっと日番谷の目の前にもってきた。
「にゃああ」
「なんだ、猫か。猫なんてもってきて、なんなんだ、浮竹」
「10番隊で、飼ってくれないか」
「急にそんなこと言われてもな・・・・って、この猫、猫又じゃねぇか!」
「大丈夫、ただの猫が長生きして猫又化しただけで、害はない」
「問題あるわっ!」
猫又を飼うなんて、聞いたこともない。
普通の猫として飼えるのかもわからない。
「頼む!13番隊では、京楽が猫アレルギーだから飼えないんだ」
「あのもじゃもじゃが・・・・っていうか、雨乾堂にいつもくるのか、あのおっさん」
「どうせ、僕はもじゃもじゃのおっさんだよ・・・・・・・」
浮竹の後をつけてやってきた京楽は、笠を深くかぶっていじけだした。
それを浮竹は無視した。
「だめか、日番谷隊長・・・・・・」
「んーそうだ、雛森!おい、松本!」
「んー。なんですか、隊長・・・・ふあああ、あらかわいい。猫かぁ」
長椅子で寝ていた松本を乱暴に起こすと、日番谷は命令した。
「今すぐ、雛森を呼んでこい」
「えー、まだ寝ていたいですー」
「いいから、さっさと呼んで来い!」
怒鳴られて、松本は仕方なしに瞬歩で雛森を呼びにいった。
数分後。
「わーかわいい!」
呼ばれた雛森は、猫が好きだった。
実家でも、数匹の猫を飼っている。
「シロちゃん、本当にいいの?私がもらっちゃって・・・・・」
雛森は、黒い猫又をみて、次に日番谷の顔をみた。
「シロちゃんって呼ぶな!日番谷隊長と呼べ!」
「シロちゃんは、シロちゃんだよ?」
頭を撫でられて、その覆そうにもまだできない身長差に、少し悔しそうに日番谷は雛森のされるままにしていた。
「いつか、絶対背を追い越してやるからな」
「シロちゃんがー?あははは、いつになるんだろうねぇ」
雛森は、陽だまりのように日番谷を包み込んでいた。
「シロちゃん、大好き!」
「ばかっ!松本とか浮竹が見てるだろう!」
京楽はいるけど、省いておいた。
雛森は、黒い猫又をみて、次に日番谷の顔をみた。
「シロちゃんって呼ぶな!日番谷隊長と呼べ!」
「シロちゃんは、シロちゃんだよ?」
頭を撫でられて、その覆そうにもまだできない身長差に、少し悔しそうに日番谷は雛森のされるままにしていた。
「いつか、絶対背を追い越してやるからな」
「シロちゃんがー?あははは、いつになるんだろうねぇ」
雛森は、陽だまりのように日番谷を包み込んでいた。
「シロちゃん、大好き!」
「ばかっ!松本とか浮竹が見てるだろう!」
京楽はいるけど、省いておいた。
「シロちゃん、恥ずかしがりやだなぁ」
「にゃあ」
猫又が鳴く。
「そいつ、猫又だぞ。隊舎じゃかえねぇ。大体浮竹がもってきたものだしな」
その浮竹は、松本が入れたお茶を飲んで、せんべいをかじっていた。
「雛森副隊長、飼ってくれるか?」
「ええ、浮竹隊長!猫又なんて珍しいし、実家で良ければ飼います!」
「よかった・・・・・はっくしょん」
様子を見ていた京楽は、くしゃみをしながら安堵した。これで、今までのように雨乾堂に堂々と遊びに行ける。
「浮竹隊長~、キスマーク、うなじについてますよ」
「えっ」
今日もまた、浮竹は白く長い髪を結い上げていた。露出していたうなじに、痕が残っているのに気づいた松本は、むふふふと、腐った笑みを浮かべていた。
「京楽!」
浮竹は、痕を残されることを嫌う。
怒鳴られて、京楽は浮竹を置いて瞬歩で逃げ出した。
「あのくされエロ魔人がっ」
「浮竹。ほんとに、あんなもじゃもじゃおっさんの、どこがいいんだ?」
「自分でも、たまに分からなくなる」
「にゃあ」
又吉は、かわいく鳴いて、二本の尻尾を揺らした。雛森の腕の中で、気持ちよさそうにしている。
「シロちゃーん。名前、又吉じゃかわいくないから、エカテリーヌに変えていい?」
「べ、別にいいんじゃないか」
日番谷は、雛森のネーミングセンスに、ちょっと引きかけていた。
「にゃーお」
「元気でな、又吉・・・じゃなかった、エカテリーヌ」
浮竹は、雛森の腕の中の猫又の頭を撫でてから、雨乾堂に帰っていった。
それから、戻ってきた京楽とぎゃいぎゃい騒ぎあって、結局は京楽の甘い甘いキスとかにとろけさせられて、許してしまうのである。
比翼の鳥の片割れは、猫アレルギー。
男性死神協会
「あんたら、人の部屋で何勝手なことしてるんだよ」
現世にある、黒崎一護の部屋に、尸魂界の男性死神協会の面子が集まっていた。
吉良イヅル、檜佐木修兵、射場鉄左衛門。
「尸魂界には、男性死神協会に場所を貸してくれる場所がないんじゃあ!」
射場は、涙を流していた。
うんうんと頷く吉良と、檜佐木。
「まじかよ。でも、だからってなんで俺の部屋なんだ?」
「それは、ここが一番居心地がいいからだ!」
檜佐木は、ガッツポーズで、エアコンのスイッチを入れた。
「ああ、涼しい・・・・」
「ただ涼みにきただけかよ。それより・・・・・・・」
ちらりと、もう一人いた面子の、浮竹をみる。
「浮竹さんは、なんでそんな恰好してるんだ?」
「ああ、気にしないでくれ」
他の男性死神協会の面子と同じ、上半身裸でグラサン、腹巻、黒いズボン。そこまではいい。他の三人も同じ格好をしているからだ。
でも真っ白な髪を結い上げて、髪飾りで留めていた。んでもって、めっちゃ派手な女ものの着物を肩から羽織っていた。
「気にしないでくれって言われても・・・・・・背後の、京楽さんがめっちゃ気になるんだが」
「僕のこと?気にしないでいいよ。空気だと思ってくれれば」
「いや、無理だから」
「浮竹ぇ、やっぱりその恰好じゃだめだよ。色っぽすぎる。せめて、上半身裸はやめようよ。
僕以外の死神か人間にそんな姿見せるのがもったいない」
浮竹の白い髪をまとめあげて、この前買ってあげた翡翠の髪飾りで留めたのは京楽だった。
浮竹は、涼しいからと、別段気にもとめていなかったようだが、整った容姿と普段は見えないうなじが見えて、かなり色っぽかった。
じっと見ていると、京楽の怖い笑みに気づいて、一護は視線をずらす。
「浮竹さん、あんたは帰れ」
「えっ、なんでだい一護君。俺は、男性死神協会の看板を背負っているようなものだぞ」
「いや、後ろの人がすごい怖いから」
「京楽が?また冗談ばかっり」
いや、まじで怖いんですけど。
吉良も檜佐木も射場も、浮竹を見てはギロリとした視線で、京楽に睨まれている。
「浮竹。エアコンが欲しいなら、僕がいくらでも現世から買ってあげるから、やっぱり帰ろう。肩に着物羽織っただけのそんな姿じゃ、風邪をひいちゃうよ」
「大丈夫だ、京楽。俺は別にエアコンがあるからきてるわけじゃ・・・あああ、涼しい」
エアコンの風があたって、浮竹は幸せそうだった。
「甘味屋で、かき氷とアイスおごってあげるから」
「うーん」
浮竹は、甘いものにつられそうになっていた。
その場にいた男性死神協会の全員が、議題を出しそびれていた。
儚い浮竹のうなじが、とにかく色っぽいのだ。女ものの着物が、やたら似合っている。
「やっぱり帰ろう」
どうしても集まる視線に嫌気がさして、京楽は浮竹を抱き上げた。
「こんな格好、まるで狼に子羊を会わせるようなもんだよ」
いや、いくらなんでもそこまではいかないから。
その場にいた、誰もが思った。
むしろ狼はあんただろ。
一護は思った。
「浮竹さん、京楽さんまたな」
穿界門(せんかいもん)をあけて、去っていく二人に、一護が手を振る。
「浮竹隊長、京楽隊長、お疲れさまです」
吉良が、ぺこりとおじぎをする。
二人が去って、男性死神協会の面子はやっと、議題をだして会議をはじめた。
「あーうまい。エアコンの風にあたりながらだったら、もっとうまいだろうな」
京楽は、一度浮竹と一緒に雨乾堂に帰ると、浮竹を着換えさせて、甘味屋まで来ていた。
尸魂界に、エアコンがないわけではない。四大貴族の朽木家なんかにはあったりする。
アイスを幸せそうにほおばる浮竹は、髪は結い上げたままだった。暑いからだ。
「今年の夏も暑いなぁ、京楽」
「ああ、うん、そうだね・・・・」
京楽は、かき氷を食べていた。頭にキーンときて、ちょっとつらそうだ。
女性死神が、ちらちらと二人の姿を見ていた。
「今日の浮竹隊長、髪結っててなんか色っぽいわね」
「肌の色しろーい」
「あれ、京楽隊長の上着でしょ」
浮竹は、着替えさせられたが、京楽の女ものの上着の着物を肩にかけたままだった。
「かき氷も頼んでいいか?」
「好きにしたらいいよ。でも、風邪ひかない程度にね?」
「ああ、分かっている」
浮竹は、いろんな味のアイスを食べたあと、宇治金時のかき氷を注文した。
「浮竹はさぁ。もっと、危機感もったほうがいいと思うよ」
「ん?なんでだ?」
シャリシャリと、かき氷を口に運びながら、浮竹が小首を傾げた。
その様子があまりにかわいかったので、京楽は写真を撮りたいと思ったほどだった。
「いろいろとね。男ってもんは、危ない生き物だから」
「俺も男だが?」
京楽は、溜息を零した。
「やっぱ浮竹は分かってないねぇ」
時折、男性死神の熱い視線が浮竹に注がれているのを、京楽は気づいていた。
浮竹の今の姿は、男の情欲をそそるものがある。
満足するまで甘味ものを食べた浮竹は、京楽の着物を彼に返した。
「これは、もういい」
「似合ってるのに」
「京楽のほうが、似合ってる」
「まぁ、そりゃいつも着てるからね」
「また今度、髪結ってくれるか」
京楽に、髪を櫛ですかれるのが浮竹は好きだった。
「君のためなら、いくらでも」
にこりと、京楽は微笑む。
浮竹は、京楽の手を掴むと、建物の影に入った。
浮竹は、少し背伸びすると、京楽に口づける。
「浮竹?」
「今日のお礼だ」
少し赤くなって、浮竹は目を逸らす。
「あーもう。君は、なんでこんなにかわいいの」
京楽に抱きしめられて、浮竹の体は強張った。
いくら建物の影に入ったとはいえ、往来の中だ。
ちらちらと降る視線に、浮竹は京楽の笠をとって、走り出す。
「あ、浮竹!僕の笠、返してよ!」
瞬歩で浮竹は移動する。
同じく、瞬歩で京楽はその後を追う。
「捕まえた」
細い白い手首をとらえられて、浮竹は前乗りに倒れそうになった。抱き上げてくる京楽の胸に、顔を埋める。
それから、ぺろりと、自分の唇を舐めた。
ああ。
この子、誘ってるんだ。
浮竹が、情欲を覚ると自分の唇を舐める癖があるのを、京楽は知っていた。
それを知られているのを、浮竹も知っているようだった。
「ここじゃなんだから、僕の館にいこうか。お湯、わかしてあげるからまずは風呂に入ろう」
「ああ・・・・・・・・」
京楽は、尸魂界にいくつかの別邸をもっていた。
上級貴族なだけあって、どの別邸にも定期的に人をやって、いつでも使えるようにしていた。
浮竹の露出されたままのうなじに、唇を寄せて、京楽は囁く。
「愛してるよ、十四郎」
「・・・・・・・・俺も。春水」
浮竹は、京楽の腕から降りると、手を繋いで別宅へ向かった。
途中、死神と遭遇したが、気にしない。
二人は、関係を隠していない。手をつないでいる姿を見ても、萌える女性死神と、幸せそうな二人を見守る男性死神がいるだけだ。
比翼の鳥は、まどろむように、日常の幸せを享受しあうのだった。
無題
「浮竹隊長」
「なんだ、海燕か」
浮竹は雨乾堂で寝込んでいた。少し高い熱を出してしまった。肺の病であるが、吐血するようなことは最近少ないが、ただもとから体が弱く、熱を出すのはしょちゅうだった。
だが、今回の熱には問題があった。
海燕は、その理由で浮竹が熱を出すのが大嫌いだった。
「また無茶されたんですね。何度もいいますけど、あんたは病人なんだから、本当はこういうことするのは体に負担をかけるだけですよ」
浮竹は、京楽とできていた。
それを、副官である志波海燕は知っていた。
京楽に半ば無理やり抱かれると、浮竹が熱を出すことがある。微熱の時が多いが、本当に時折高熱を出して寝込んだ。
愛し合う二人に、別れろとは言えなかった。
ただ、京楽は浮竹を思いやっているはずなのに、熱を出させるほどに無理強いをして抱いているのかと想像しただけで、怒りが沸いてきた。
「京楽隊長に、一度ガツンと・・・・・・」
「いいんだ、海燕。俺も、望んだことだから。その結果熱を出すのは俺が悪いせいだ」
「あんたはどこも悪くない!悪いのは京楽隊長だ!」
海燕は怒っていた。
もう、何度目になるだろう。浮竹が、京楽に抱かれてその後に微熱を含めた熱を出すのは。
浮竹は、体が弱い。そのせいで熱を出すのはしょっちゅうだが、行為のせいで熱を出すのは時折だ。
ただ何百年とその関係を続けている。何十年も副官をしている海燕は、浮竹が京楽のせいでしょっちゅう熱を出しているのだと勘違いをしている。
何度も違うといっても、いつも傍に京楽がいたために、浮竹が熱を出すのは京楽のせいだと思い込んでいた。
「浮竹ぇ、熱だしたんだって?」
ふらりと現れた京楽に、海燕はつかみかからんばかりの勢いで、まくしてたてる。
「あんたのせいだぞ、京楽隊長。隊長に、無理強いするから!」
「海燕、よせっ!」
京楽の胸倉を掴みあげて、今にも殴りかかりそうな海燕を、浮竹が強い言葉で制止する。
「海燕。京楽に手を出すことは、俺が許さない。これは、俺たち二人の問題だ。たとえ海燕といえど、とやかくいう権利はない」
いつもは優しい浮竹だったが、京楽のことになると少し性格が変わる。
叱られて、海燕は京楽から手を離した。
少ししわになった衣服を正して、京楽は浮竹の元にいく。
「今回は、僕のせいで熱だしちゃったんだね。解熱剤は?」
「もう、飲んだ」
「飯は食ったかい?」
「ああ、お粥だけど食べた」
「そうか。それならいいんだ。ほんとに、ごめんね」
「別に、いい。俺の体が弱すぎるせいだから」
浮竹は、どこまでも優しい京楽に、甘えるように頬に伸ばされた手に、その白い頬をこすりつけた。
「志波君。こういうことだから」
海燕の怒りは、半ば嫉妬に似ていることを、京楽は知っていた。
「浮竹が熱を出すことがあるのは、本当だよ。でも、そんなに酷く扱っていない。志波君、何か勘違いしてるんじゃないかい。僕は、無理強いすることはないとは断言できないけど、ほとんどないよ」
あくまで、同意の上での行為だと、におわせるように囁いた。
「・・・・・・・・・」
京楽は、半身を起き上がらせた浮竹の長い白い髪を、指に絡めて遊んでいた。
「この綺麗な髪を、ここまで伸ばさせたのも僕だよ」
まるで、お互いの仲を見せつけるような京楽の仕草と言動に、海燕はバツが悪そう顔をすると、海乾堂を出て行った。
「あーあ、しばらく帰ってこないね、あれは」
京楽は浮竹のうなじに口づけを落とした。
「汗かいてるから、京楽」
「後で、ふいてあげるよ」
いつも、熱を出した浮竹の体を拭いて清めるのはいつもなら海燕の役目だった。だが、いつの間にか、その役目を京楽が奪っていた。
「かわいいねぇ志波君も」
「お前、俺がいるのに海燕にちょっかい出す気か!」
「違う違う。そういう意味で言ったんじゃない。嫉妬して、かわいいなぁと思って」
「嫉妬?誰が誰に」
「浮竹は分からなくていいんだよ」
敬愛を通りこした仄かな上官に対する想いを、必死で隠そうとしている海燕をいじるのは、京楽にとって娯楽のようで、楽しかった。
これは俺のものなんだと目の前で、刻み付けるのは愉悦に近かった。
「はは、僕もたいがい性格ねじれてるね」
「今頃気づいたのか」
「ひどい!僕との関係は遊びだったのね!」
「・・・・・・・・・・・・あほか」
飽きれる浮竹に、泣き真似をしていた京楽は、苦笑して浮竹に横になるようにと促した。
「まぁ、気を付けなくても、大丈夫だろうとは思うけど・・・・」
海燕は、妻帯者だ。都という、綺麗で聡明な、妻をもつ。
その身分で、よく上官に仄かな想いを寄せれるものだなぁと、京楽は思う。まぁ、想いを寄せるくらいならいいけど。
手を出したら、多分半殺しだ。浮竹が海燕を大事にしていなかったら、多分殺しているだろう。
京楽は、残忍な部分のあるもう一人の自分に、少し戸惑いながらも、浮竹に手を出す者がいたらきっと誰であっても許さないだろうと思った。
「京楽」
「なんだい、浮竹」
「あんまり、海燕を苛めるなよ」
「はいはい。努力するよ」
京楽は、浮竹の白く細い手首をとると、内側に痕をつけた。
「あんまり、痕つけるな・・・・・・・」
少しさっきより熱が下がっているようだが、薬のせいで眠いのか、浮竹は弱弱しく嫌がるだけだった。
こんな時に、肉体関係をもっていくのは、無理強いになるのかな?
京楽は思った。
「一応、虫よけしとくか」
「あっ」
ぴりっとした感触を感じて、浮竹の声がうわずった。
「何を・・・・・・」
「だから、虫よけ」
浮竹の白い首にくっきりとキスマークを刻んで、京楽は満足そうに微笑んだ。
いつも、痕を残すと蹴られた。
浮竹は、たまに足癖が悪い。剣術の稽古の時も、蹴りの体術をまじったことをしてくる。
それは、浮竹が力ない自分を恥じて、相手を仕留める隙を見せるために使うものだというこを京楽は知っていた。
半分まどろみに入っている浮竹は、キスマークをつけられたことに気づかない。
「これは、志波君が帰ってきたら、また荒れるだろうな」
僕、しーらないっと。
京楽は、浮竹を寝かしつけて、そそくさと雨乾堂を後にした。
「あのくされエロ魔人!」
帰ってきた海燕は、浮竹につけられた京楽のキスマークに気づいて、怒った。
だが、虫よけとしては覿面だった。
こんな無防備な姿の浮竹に、手を出せるわけがない。
もともと、手を出すつもりもない。
でも、見せつけられるのは辛かった。
海燕は、寝ている浮竹をそっとして、隊舎に戻った。
「海燕殿?」
「なんだー朽木」
「その、飲みすぎではないでしょうか」
「いいんだよ。こんくらいよっぱらったうちに入らねぇ」
海燕は、心配してくる、最近入隊したばかりの朽木ルキアの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「海燕殿。何かあったのですか」
「ああ、エロ魔人がな・・・・・・・・」
酔った赤い顔で、エロ魔人がとかいって飲みつぶれた海燕を、朽木は他の死神と一緒になって介抱するのだった。
「なんだ、海燕か」
浮竹は雨乾堂で寝込んでいた。少し高い熱を出してしまった。肺の病であるが、吐血するようなことは最近少ないが、ただもとから体が弱く、熱を出すのはしょちゅうだった。
だが、今回の熱には問題があった。
海燕は、その理由で浮竹が熱を出すのが大嫌いだった。
「また無茶されたんですね。何度もいいますけど、あんたは病人なんだから、本当はこういうことするのは体に負担をかけるだけですよ」
浮竹は、京楽とできていた。
それを、副官である志波海燕は知っていた。
京楽に半ば無理やり抱かれると、浮竹が熱を出すことがある。微熱の時が多いが、本当に時折高熱を出して寝込んだ。
愛し合う二人に、別れろとは言えなかった。
ただ、京楽は浮竹を思いやっているはずなのに、熱を出させるほどに無理強いをして抱いているのかと想像しただけで、怒りが沸いてきた。
「京楽隊長に、一度ガツンと・・・・・・」
「いいんだ、海燕。俺も、望んだことだから。その結果熱を出すのは俺が悪いせいだ」
「あんたはどこも悪くない!悪いのは京楽隊長だ!」
海燕は怒っていた。
もう、何度目になるだろう。浮竹が、京楽に抱かれてその後に微熱を含めた熱を出すのは。
浮竹は、体が弱い。そのせいで熱を出すのはしょっちゅうだが、行為のせいで熱を出すのは時折だ。
ただ何百年とその関係を続けている。何十年も副官をしている海燕は、浮竹が京楽のせいでしょっちゅう熱を出しているのだと勘違いをしている。
何度も違うといっても、いつも傍に京楽がいたために、浮竹が熱を出すのは京楽のせいだと思い込んでいた。
「浮竹ぇ、熱だしたんだって?」
ふらりと現れた京楽に、海燕はつかみかからんばかりの勢いで、まくしてたてる。
「あんたのせいだぞ、京楽隊長。隊長に、無理強いするから!」
「海燕、よせっ!」
京楽の胸倉を掴みあげて、今にも殴りかかりそうな海燕を、浮竹が強い言葉で制止する。
「海燕。京楽に手を出すことは、俺が許さない。これは、俺たち二人の問題だ。たとえ海燕といえど、とやかくいう権利はない」
いつもは優しい浮竹だったが、京楽のことになると少し性格が変わる。
叱られて、海燕は京楽から手を離した。
少ししわになった衣服を正して、京楽は浮竹の元にいく。
「今回は、僕のせいで熱だしちゃったんだね。解熱剤は?」
「もう、飲んだ」
「飯は食ったかい?」
「ああ、お粥だけど食べた」
「そうか。それならいいんだ。ほんとに、ごめんね」
「別に、いい。俺の体が弱すぎるせいだから」
浮竹は、どこまでも優しい京楽に、甘えるように頬に伸ばされた手に、その白い頬をこすりつけた。
「志波君。こういうことだから」
海燕の怒りは、半ば嫉妬に似ていることを、京楽は知っていた。
「浮竹が熱を出すことがあるのは、本当だよ。でも、そんなに酷く扱っていない。志波君、何か勘違いしてるんじゃないかい。僕は、無理強いすることはないとは断言できないけど、ほとんどないよ」
あくまで、同意の上での行為だと、におわせるように囁いた。
「・・・・・・・・・」
京楽は、半身を起き上がらせた浮竹の長い白い髪を、指に絡めて遊んでいた。
「この綺麗な髪を、ここまで伸ばさせたのも僕だよ」
まるで、お互いの仲を見せつけるような京楽の仕草と言動に、海燕はバツが悪そう顔をすると、海乾堂を出て行った。
「あーあ、しばらく帰ってこないね、あれは」
京楽は浮竹のうなじに口づけを落とした。
「汗かいてるから、京楽」
「後で、ふいてあげるよ」
いつも、熱を出した浮竹の体を拭いて清めるのはいつもなら海燕の役目だった。だが、いつの間にか、その役目を京楽が奪っていた。
「かわいいねぇ志波君も」
「お前、俺がいるのに海燕にちょっかい出す気か!」
「違う違う。そういう意味で言ったんじゃない。嫉妬して、かわいいなぁと思って」
「嫉妬?誰が誰に」
「浮竹は分からなくていいんだよ」
敬愛を通りこした仄かな上官に対する想いを、必死で隠そうとしている海燕をいじるのは、京楽にとって娯楽のようで、楽しかった。
これは俺のものなんだと目の前で、刻み付けるのは愉悦に近かった。
「はは、僕もたいがい性格ねじれてるね」
「今頃気づいたのか」
「ひどい!僕との関係は遊びだったのね!」
「・・・・・・・・・・・・あほか」
飽きれる浮竹に、泣き真似をしていた京楽は、苦笑して浮竹に横になるようにと促した。
「まぁ、気を付けなくても、大丈夫だろうとは思うけど・・・・」
海燕は、妻帯者だ。都という、綺麗で聡明な、妻をもつ。
その身分で、よく上官に仄かな想いを寄せれるものだなぁと、京楽は思う。まぁ、想いを寄せるくらいならいいけど。
手を出したら、多分半殺しだ。浮竹が海燕を大事にしていなかったら、多分殺しているだろう。
京楽は、残忍な部分のあるもう一人の自分に、少し戸惑いながらも、浮竹に手を出す者がいたらきっと誰であっても許さないだろうと思った。
「京楽」
「なんだい、浮竹」
「あんまり、海燕を苛めるなよ」
「はいはい。努力するよ」
京楽は、浮竹の白く細い手首をとると、内側に痕をつけた。
「あんまり、痕つけるな・・・・・・・」
少しさっきより熱が下がっているようだが、薬のせいで眠いのか、浮竹は弱弱しく嫌がるだけだった。
こんな時に、肉体関係をもっていくのは、無理強いになるのかな?
京楽は思った。
「一応、虫よけしとくか」
「あっ」
ぴりっとした感触を感じて、浮竹の声がうわずった。
「何を・・・・・・」
「だから、虫よけ」
浮竹の白い首にくっきりとキスマークを刻んで、京楽は満足そうに微笑んだ。
いつも、痕を残すと蹴られた。
浮竹は、たまに足癖が悪い。剣術の稽古の時も、蹴りの体術をまじったことをしてくる。
それは、浮竹が力ない自分を恥じて、相手を仕留める隙を見せるために使うものだというこを京楽は知っていた。
半分まどろみに入っている浮竹は、キスマークをつけられたことに気づかない。
「これは、志波君が帰ってきたら、また荒れるだろうな」
僕、しーらないっと。
京楽は、浮竹を寝かしつけて、そそくさと雨乾堂を後にした。
「あのくされエロ魔人!」
帰ってきた海燕は、浮竹につけられた京楽のキスマークに気づいて、怒った。
だが、虫よけとしては覿面だった。
こんな無防備な姿の浮竹に、手を出せるわけがない。
もともと、手を出すつもりもない。
でも、見せつけられるのは辛かった。
海燕は、寝ている浮竹をそっとして、隊舎に戻った。
「海燕殿?」
「なんだー朽木」
「その、飲みすぎではないでしょうか」
「いいんだよ。こんくらいよっぱらったうちに入らねぇ」
海燕は、心配してくる、最近入隊したばかりの朽木ルキアの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「海燕殿。何かあったのですか」
「ああ、エロ魔人がな・・・・・・・・」
酔った赤い顔で、エロ魔人がとかいって飲みつぶれた海燕を、朽木は他の死神と一緒になって介抱するのだった。
