猫の人生
「にゃあ」
綺麗な真っ白い猫がいた。
瞳の色は金と銀のオッドアイだ。
そういう猫は、体が弱い。
「にゃあ」
猫は鳴いた。
外でであった、ロシアンブルーの綺麗なの猫に、にゃあと、囁いた。
(京楽?)
「にゃああ」
(浮竹?)
言葉を伝えようにも、にゃあとかなーとかしか言えなかった。
でも、通じた。
光の先は、無ではなかった。猫だけど、また出会えた。
「にゃあ」
(おいで、浮竹)
ロシアンブルーの猫は、野良だった。
飼い猫の、綺麗な真っ白な猫に、家を出ろと囁いた。
気まぐれに、一緒に過ごそうと。
「にゃあああ」
(待ってくれ、京楽)
オッドアイの白猫は、振り返ってくるロシアンブルーの猫の後を追って、走り出す。
「にゃあ」
「にゃあああ」
二人の雄猫は、楽しそうに走り出した。
自由だ。
海のように深く、空のように広大な世界を、自由に楽しむ。
猫でもいいかと、京楽は思った。猫でもいいかと、浮竹は思った。
光の先は、無だと思っていた。でも、違った。
できれば人として生まれたかったが、猫でもよかった。
お互いが、生きているならば。
「にゃーお」
猫の浮竹は、飼い主にごめんなさいと鳴いて、京楽であるロシアンブルーの猫の後を追って、走っていく。
自由に、生きよう。
また、光に飛んでいくまで。
死神と違って、寿命は短いが、それでもいい。
また、永遠の愛を囁こう。
その後、二匹の猫の姿を見た者はいなかった。
綺麗な真っ白い猫がいた。
瞳の色は金と銀のオッドアイだ。
そういう猫は、体が弱い。
「にゃあ」
猫は鳴いた。
外でであった、ロシアンブルーの綺麗なの猫に、にゃあと、囁いた。
(京楽?)
「にゃああ」
(浮竹?)
言葉を伝えようにも、にゃあとかなーとかしか言えなかった。
でも、通じた。
光の先は、無ではなかった。猫だけど、また出会えた。
「にゃあ」
(おいで、浮竹)
ロシアンブルーの猫は、野良だった。
飼い猫の、綺麗な真っ白な猫に、家を出ろと囁いた。
気まぐれに、一緒に過ごそうと。
「にゃあああ」
(待ってくれ、京楽)
オッドアイの白猫は、振り返ってくるロシアンブルーの猫の後を追って、走り出す。
「にゃあ」
「にゃあああ」
二人の雄猫は、楽しそうに走り出した。
自由だ。
海のように深く、空のように広大な世界を、自由に楽しむ。
猫でもいいかと、京楽は思った。猫でもいいかと、浮竹は思った。
光の先は、無だと思っていた。でも、違った。
できれば人として生まれたかったが、猫でもよかった。
お互いが、生きているならば。
「にゃーお」
猫の浮竹は、飼い主にごめんなさいと鳴いて、京楽であるロシアンブルーの猫の後を追って、走っていく。
自由に、生きよう。
また、光に飛んでいくまで。
死神と違って、寿命は短いが、それでもいい。
また、永遠の愛を囁こう。
その後、二匹の猫の姿を見た者はいなかった。
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光に向かって
それは、決して避けて通れない道。
まるで、運命のような.。
霊王の死により、崩壊する世界を安定させるために、自身の病気の進行を抑える薬代わりでもあった霊王の右腕「ミミハギ様」を解放した。
一時的に世界を安定させたのと引き換えに、病気が進行していく。
もう末期だと、4番隊隊長卯ノ花は京楽に、最後の対面をと、浮竹が静かに療養のために過ごしている部屋に行くように勧めた。
「もう、だめなのか・・・・・・・・」
比翼の鳥は、片翼を失うと失墜する。京楽にとって、片方の翼であった浮竹は、もう長くなかった。
毎日のように、せき込んでは大量に吐血した。
「浮竹・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・きょう、らく・・・・・」
さっきも、吐血した。
そして、京楽に見せたくないのに、咳き込んでまた吐血した。
べったりと張り付いた血の赤さに、京楽は眩暈を覚えた。
なぜ、彼なのだろう。
運命とは、かくも残酷だ。
浮竹がもう長くないと、皆知っていた。だから、せめて最後まで京楽が傍にあれるようにと、邪魔する者はいなかった。
愛していた。
海よりも深く。空より広大に。
愛されていた。
比翼の鳥のように、お互いを大切にして寄り添いあった。
院生時代からの、恋人だった。何千回・・いや、何万回も交わった。数百年の時を一緒に生きてきた。
それが、もうすぐ終わる。
「春水・・・・・・」
京楽は、血に濡れるのも構わずに、浮竹に口づけた。
「愛して、いるよ・・・・」
涙が、頬を伝った。京楽の初めて見せる涙に、浮竹は微笑した。
「俺も・・・・愛してる。さよなら・・・・・」
京楽は、浮竹の手を握りしめ、浮竹が少しずつ深い昏睡状態になるのを見守った。
そして、浮竹が息を引き取るまで、傍にいた。
比翼の鳥は、片翼を失った。だが、時代は京楽を必要とした。山本総隊長はなくなり、その代わりにと、京楽が総隊長の座についた。
「さよなら、浮竹。たくさんの愛を、ありがとう」
痛々しいまでにやせ細った体を隠すように、棺は白い桜の花で満たされた。朽木百哉に頼んで、桜の花をだしてもらった。
浮竹は、よく花見をする人だった。とりわけ、桜を好んだ。
棺の中には、おはぎが供えられた。
誰もが、泣いていた。京楽は、涙を零さなかった。
そのまま、火葬されていく。
数百年にわたって、愛してきた恋人が、灰となっていくのを、京楽は見守った。
-------------------------------------
「浮竹ぇ。遅いよ」
総隊長の座について、千年の時が過ぎた。
迎えにやってきた浮竹は、長い白い髪をなびかせて、京楽の手をとる。
京楽は、年のせいでやせ細った自分の体をみた。髪の色など、もうとっくの昔に浮竹とおそろいの白になっていた。
「迎えに来た、京楽」
「うん。ずっと、待ってた」
現実世界の京楽は、老衰により死を迎えようとしていた。
まどろむ夢の中で、愛しい人と出会った。
最後にみた、長い白髪のまだ病弱であるけれど、元気であった姿をしていた。
「いこう、京楽」
「ああ・・・・・・・」
ふわりと、京楽の体が浮かんだ。自分の体を見ると、総隊長に就いた頃の年齢の姿をとっていた。
浮竹の体を抱きしめる。涙が零れ落ちた。
体温が、暖かかった。
まるで、本当に生きているようだ。
「浮竹、愛している」
「俺もだぞ、京楽」
深い口づけを交し合い、二人は光にむかって、まっすぐ歩いていく。
死の先に待っているのは、輪廻か、それとも完全な無か。
輪廻があるのなら、浮竹はすでに生まれ変わり、京楽の元きていただろう。だから、きっと無になるんだ。
光へと向かっていく。
二人の姿は、やがて鳥になった。
比翼の鳥だ。
お互いに翼は一つしかない。羽ばたきあい、空を駆け、ずっと遠いところにある光めがけて、飛んでいく。
海より深く、空より広大な世界を。
愛という名で塗りつぶして、光に向かって飛んでいく。
やがて、光は消えた。
静寂だけが満ちた。
世界は、沈黙に包まれた。
京楽の墓は、雨乾堂の浮竹の眠る墓石の隣に建てられた。
もう、離れない。
永遠に、一緒だ。
刹那と永遠(とわ)の時間を刻んで。
まるで、運命のような.。
霊王の死により、崩壊する世界を安定させるために、自身の病気の進行を抑える薬代わりでもあった霊王の右腕「ミミハギ様」を解放した。
一時的に世界を安定させたのと引き換えに、病気が進行していく。
もう末期だと、4番隊隊長卯ノ花は京楽に、最後の対面をと、浮竹が静かに療養のために過ごしている部屋に行くように勧めた。
「もう、だめなのか・・・・・・・・」
比翼の鳥は、片翼を失うと失墜する。京楽にとって、片方の翼であった浮竹は、もう長くなかった。
毎日のように、せき込んでは大量に吐血した。
「浮竹・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・きょう、らく・・・・・」
さっきも、吐血した。
そして、京楽に見せたくないのに、咳き込んでまた吐血した。
べったりと張り付いた血の赤さに、京楽は眩暈を覚えた。
なぜ、彼なのだろう。
運命とは、かくも残酷だ。
浮竹がもう長くないと、皆知っていた。だから、せめて最後まで京楽が傍にあれるようにと、邪魔する者はいなかった。
愛していた。
海よりも深く。空より広大に。
愛されていた。
比翼の鳥のように、お互いを大切にして寄り添いあった。
院生時代からの、恋人だった。何千回・・いや、何万回も交わった。数百年の時を一緒に生きてきた。
それが、もうすぐ終わる。
「春水・・・・・・」
京楽は、血に濡れるのも構わずに、浮竹に口づけた。
「愛して、いるよ・・・・」
涙が、頬を伝った。京楽の初めて見せる涙に、浮竹は微笑した。
「俺も・・・・愛してる。さよなら・・・・・」
京楽は、浮竹の手を握りしめ、浮竹が少しずつ深い昏睡状態になるのを見守った。
そして、浮竹が息を引き取るまで、傍にいた。
比翼の鳥は、片翼を失った。だが、時代は京楽を必要とした。山本総隊長はなくなり、その代わりにと、京楽が総隊長の座についた。
「さよなら、浮竹。たくさんの愛を、ありがとう」
痛々しいまでにやせ細った体を隠すように、棺は白い桜の花で満たされた。朽木百哉に頼んで、桜の花をだしてもらった。
浮竹は、よく花見をする人だった。とりわけ、桜を好んだ。
棺の中には、おはぎが供えられた。
誰もが、泣いていた。京楽は、涙を零さなかった。
そのまま、火葬されていく。
数百年にわたって、愛してきた恋人が、灰となっていくのを、京楽は見守った。
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「浮竹ぇ。遅いよ」
総隊長の座について、千年の時が過ぎた。
迎えにやってきた浮竹は、長い白い髪をなびかせて、京楽の手をとる。
京楽は、年のせいでやせ細った自分の体をみた。髪の色など、もうとっくの昔に浮竹とおそろいの白になっていた。
「迎えに来た、京楽」
「うん。ずっと、待ってた」
現実世界の京楽は、老衰により死を迎えようとしていた。
まどろむ夢の中で、愛しい人と出会った。
最後にみた、長い白髪のまだ病弱であるけれど、元気であった姿をしていた。
「いこう、京楽」
「ああ・・・・・・・」
ふわりと、京楽の体が浮かんだ。自分の体を見ると、総隊長に就いた頃の年齢の姿をとっていた。
浮竹の体を抱きしめる。涙が零れ落ちた。
体温が、暖かかった。
まるで、本当に生きているようだ。
「浮竹、愛している」
「俺もだぞ、京楽」
深い口づけを交し合い、二人は光にむかって、まっすぐ歩いていく。
死の先に待っているのは、輪廻か、それとも完全な無か。
輪廻があるのなら、浮竹はすでに生まれ変わり、京楽の元きていただろう。だから、きっと無になるんだ。
光へと向かっていく。
二人の姿は、やがて鳥になった。
比翼の鳥だ。
お互いに翼は一つしかない。羽ばたきあい、空を駆け、ずっと遠いところにある光めがけて、飛んでいく。
海より深く、空より広大な世界を。
愛という名で塗りつぶして、光に向かって飛んでいく。
やがて、光は消えた。
静寂だけが満ちた。
世界は、沈黙に包まれた。
京楽の墓は、雨乾堂の浮竹の眠る墓石の隣に建てられた。
もう、離れない。
永遠に、一緒だ。
刹那と永遠(とわ)の時間を刻んで。
隊長羽織
「おい、浮竹」
「なんだい、日番谷隊長」
「おまえ、また隊長羽織、間違えてるぞ」
「え?」
自分の着ている隊長羽織を、浮竹は脱いだ。
「ああほんとだ。8番隊のになってる。道理で、少し大きいわけだ」
「お前なぁ。もうちょっと、しっかりしろよ」
「まぁまぁ。よくあることだし」
浮竹は、隊長羽織を間違えて出歩くことがある。それは京楽も同じで、京楽の場合は13番隊の羽織を着ていた。
つまり、お互いの隊長羽織を間違えているのだ。
大抵は、そんな日の前は肌を重ね合わせたか、泊まっていった日が多い。
「あんなもじゃもじゃのおっさんのどこがいいんだか」
「はははは。もじゃもじゃだけど、優しいぞ?」
「浮竹の気が知れない」
「まぁ、日番谷隊長も、雛森副隊長の傍にいたくなるだろう?」
日番谷は、顔を少し赤くした。
「そんな気持ちと同じさ」
「俺と雛森はそんな関係じゃねぇ」
全然違うと、日番谷は否定する。
でも、顔を赤くしているので、それは嘘だとすぐにわかった。
「あいつとは、数百年の付き合いだからなぁ。それこそ、院生時代からの友人で、親友で、恋人だ」
浮竹は、京楽との関係を隠そうとしない。
ある意味、器は大きいのかもしれない。
「俺は、もっと強くなる」
雛森を、守るために。大事な彼女を二度と傷つけないために。泣かせないために。
「あ、シロちゃーん」
少し遠くから、雛森が手をふりながらやってきた。
「あれ、浮竹隊長。京楽隊長のにおいがする。変なの」
雛森は、浮竹と京楽の関係を知らない。
「どうして、浮竹隊長が京楽隊長の隊長羽織をきてるの?」
「それはだな」
日番谷は、言葉を濁す。
正直に打ち明けるのが、いいことなのか悪いことなのか分からない。
「ああ、昨日京楽が酒を飲んで寝てしまってね。雨乾堂に泊まっていったんだ。朝から今日は何かと忙しかったから、そのせいで隊長羽織を間違えてしまったみたいだ」
それは、本当だった。
浮竹は、暇森が気づかないならそのままでいいと判断した。
「浮竹隊長は、京楽隊長と、ほんとに仲がいいんですね!」
お互いの隊舎の隊長室に、泊まったりするくらいに。
もっと厳密にいえば、恋人同士だからだ。
「暇森副隊長、体調はいいのかい?」
「ええ、怪我も大分癒えましたから!シロちゃんが、早く元気になれってうるさいし」
雛森は、太陽のような明るさで、日番谷の腕をとった。
「シロちゃん。昨日約束してた、甘味屋にいこう?」
「お、甘味屋にいくのか。俺もご一緒してもいいかな?」
「僕も、ご一緒していいかな~?」
にょきっと現れた京楽。霊圧を完全に消して、忍び寄ってきたのだ。
「京楽、ちょうどよかった。隊長羽織、互いに間違えてるって」
「おや、ほんとだね。13番隊のを着てた。道理で、きついわけだ」
浮竹は、身長はあるが病に伏せることが多いので、あまり筋肉がついておらず、細かった。その体に合わせて採寸されているので、がたいのいい京楽はには浮竹の隊長羽織は少し窮屈だった。
「あれ?京楽隊長から、浮竹隊長のにおいがする。どうして?」
京楽と、浮竹はお互いの顔を見合った。
「ま、それはいろいろとあってだね。甘味屋にいくんだろう?みんなまとめておごってあげるよ」
「わぁ、いいんですか、京楽隊長!」
うまく話をそらせた京楽に、浮竹は何を食べようかと、すでにスイーツのことで頭がいっぱいになりかけていた。
関係を知らない者に、わざわざ教える必要はないだろう。京楽と浮竹の、お互いの関係に気づいて問いかけれた時に、正直に答えればいいだけだ。
「とりあえず、おはぎとお汁粉・・・・」
浮竹は後何を食べようと、すでに迷っていた。
「ほら、浮竹も早く。雛森ちゃんに、日番谷君も、早く早く。昼時だし、店が客でいっぱいになっちゃうよ」
雛森と日番谷がいこうとしていた甘味屋は、尸魂界でも治安のいい場所にあり、かなり人気の高い店だ。浮竹が大好きな店でもある。
早めにならばないと、待たされる羽目になる。
「待ってください、京楽隊長~。シロちゃん、いこ?」
「おまえなぁ。いい加減、シロちゃんはやめろ。日番谷隊長と呼べ」
「まぁまぁ、いいじゃないか。なぁ、シロちゃん?」
「なんだ浮竹まで。お前も、シロちゃんだろ!」
浮竹十四郎。シロちゃんと、いえないこともない。名前の一部に、シロという文字が入っている。
甘味屋につくと、混雑はしていたが、なんとか4人分の席は確保できた。日番谷と雛森は、おごりと言われたので好きなものをどんどん注文していく。
「浮竹も、好きなもの、頼みなよ?」
お汁粉と、おはぎだけ食べて、まだ食い足りないだろう浮竹に、京楽はアイスなんてどうだと、メニューを見せる。
その甘味屋は、現世で提供するようなメニューも置いてあることで、有名で、それゆえに人気が高かった。
「じゃ、ジャンボイチゴパフェ」
一人では食べきれない量のパフェである。いつも、頼む時は京楽と一緒に食べた。
「あ、それ私も食べたい。でも一人じゃ無理だから・・・・・シロちゃん、一緒に食べよ?」
「好きにしろ」
日番谷は、溜息をついた。
浮竹が頼んだジャンボイチゴパフェが、先にやってきた。京楽も、浮竹と一緒に食べる。
「ほんとに、仲いいんですね」
そりゃ、恋人同士だものな。日番谷はつっこみをいれたいのを、我慢した。
3人分をおごると、けっこうな金額になったが、上級貴族のぼんぼんである京楽にとってはたかがしれているだろう。
何せ、尸魂界にいくつかの屋敷を所有している。よく、浮竹と一緒に泊まったりする場所だ。
「美味しかった。京楽隊長、おごっていただいてありがとうございました」
ぺこりとおじぎをする雛森に、京楽はひらひらと手を振った。
「気にするな、雛森副隊長。こいつは、金持ちだからな。上流貴族なだけあるよ」
浮竹が、京楽の背中をバンバンと叩いた。
「じゃあ、俺たちは戻るからな」
「あ、待ってよシロちゃん!置いていかないで!」
「早くしろ、雛森」
残された浮竹と京楽は、二人が去っていく姿を見守っていた。
「若いって、いいねぇ」
「おじさんだもんな、俺ら」
「そうそう、いい年したおっさんだよ、僕も君も」
「その割は、随分と性欲があるようだが」
実は昨日は、泊まっただけではなかった。肌を重ねあった。風呂には入ったが、風呂上がりもいちゃこらしていたせいで、お互いのにおいがまぜこぜになってしまっていた。
「雛森ちゃん、僕らのことに気づいちゃったかな?」
「さぁ、どうだろうな」
気づかれたからといって、何があるわけでもない。
まぁ、京楽も浮竹も、一目のある場所でいちゃこらするのは控えていたが。
「京楽、今日の夜は俺がおごってやる」
「お、いいねぇ。果実酒の置いてある店にしようか」
「ああ、そうだな」
浮竹は、果実酒が好きだ。酒まで、甘いものを好んだ。
浮竹とて、隊長だ。それなりの賃金をもらっているのだが、半分を家族に仕送りをして、もう半分で飲み食いをして、そして病のための薬代をだせば、すっからかんになる。
はっきりいって、貯蓄している金額は雀の涙だ。
日々の生活に困るほどではないが、だいぶ京楽に依存していた。
何せ、お互い所帯をもっていない。外で飲食することが多い。
数百年を、一緒に過ごしてきた。
お互いが、比翼の鳥だ。
片方が欠けては、だめなのだ。
永劫の時を、刻んでいく。
何十年、何百年と。
「なんだい、日番谷隊長」
「おまえ、また隊長羽織、間違えてるぞ」
「え?」
自分の着ている隊長羽織を、浮竹は脱いだ。
「ああほんとだ。8番隊のになってる。道理で、少し大きいわけだ」
「お前なぁ。もうちょっと、しっかりしろよ」
「まぁまぁ。よくあることだし」
浮竹は、隊長羽織を間違えて出歩くことがある。それは京楽も同じで、京楽の場合は13番隊の羽織を着ていた。
つまり、お互いの隊長羽織を間違えているのだ。
大抵は、そんな日の前は肌を重ね合わせたか、泊まっていった日が多い。
「あんなもじゃもじゃのおっさんのどこがいいんだか」
「はははは。もじゃもじゃだけど、優しいぞ?」
「浮竹の気が知れない」
「まぁ、日番谷隊長も、雛森副隊長の傍にいたくなるだろう?」
日番谷は、顔を少し赤くした。
「そんな気持ちと同じさ」
「俺と雛森はそんな関係じゃねぇ」
全然違うと、日番谷は否定する。
でも、顔を赤くしているので、それは嘘だとすぐにわかった。
「あいつとは、数百年の付き合いだからなぁ。それこそ、院生時代からの友人で、親友で、恋人だ」
浮竹は、京楽との関係を隠そうとしない。
ある意味、器は大きいのかもしれない。
「俺は、もっと強くなる」
雛森を、守るために。大事な彼女を二度と傷つけないために。泣かせないために。
「あ、シロちゃーん」
少し遠くから、雛森が手をふりながらやってきた。
「あれ、浮竹隊長。京楽隊長のにおいがする。変なの」
雛森は、浮竹と京楽の関係を知らない。
「どうして、浮竹隊長が京楽隊長の隊長羽織をきてるの?」
「それはだな」
日番谷は、言葉を濁す。
正直に打ち明けるのが、いいことなのか悪いことなのか分からない。
「ああ、昨日京楽が酒を飲んで寝てしまってね。雨乾堂に泊まっていったんだ。朝から今日は何かと忙しかったから、そのせいで隊長羽織を間違えてしまったみたいだ」
それは、本当だった。
浮竹は、暇森が気づかないならそのままでいいと判断した。
「浮竹隊長は、京楽隊長と、ほんとに仲がいいんですね!」
お互いの隊舎の隊長室に、泊まったりするくらいに。
もっと厳密にいえば、恋人同士だからだ。
「暇森副隊長、体調はいいのかい?」
「ええ、怪我も大分癒えましたから!シロちゃんが、早く元気になれってうるさいし」
雛森は、太陽のような明るさで、日番谷の腕をとった。
「シロちゃん。昨日約束してた、甘味屋にいこう?」
「お、甘味屋にいくのか。俺もご一緒してもいいかな?」
「僕も、ご一緒していいかな~?」
にょきっと現れた京楽。霊圧を完全に消して、忍び寄ってきたのだ。
「京楽、ちょうどよかった。隊長羽織、互いに間違えてるって」
「おや、ほんとだね。13番隊のを着てた。道理で、きついわけだ」
浮竹は、身長はあるが病に伏せることが多いので、あまり筋肉がついておらず、細かった。その体に合わせて採寸されているので、がたいのいい京楽はには浮竹の隊長羽織は少し窮屈だった。
「あれ?京楽隊長から、浮竹隊長のにおいがする。どうして?」
京楽と、浮竹はお互いの顔を見合った。
「ま、それはいろいろとあってだね。甘味屋にいくんだろう?みんなまとめておごってあげるよ」
「わぁ、いいんですか、京楽隊長!」
うまく話をそらせた京楽に、浮竹は何を食べようかと、すでにスイーツのことで頭がいっぱいになりかけていた。
関係を知らない者に、わざわざ教える必要はないだろう。京楽と浮竹の、お互いの関係に気づいて問いかけれた時に、正直に答えればいいだけだ。
「とりあえず、おはぎとお汁粉・・・・」
浮竹は後何を食べようと、すでに迷っていた。
「ほら、浮竹も早く。雛森ちゃんに、日番谷君も、早く早く。昼時だし、店が客でいっぱいになっちゃうよ」
雛森と日番谷がいこうとしていた甘味屋は、尸魂界でも治安のいい場所にあり、かなり人気の高い店だ。浮竹が大好きな店でもある。
早めにならばないと、待たされる羽目になる。
「待ってください、京楽隊長~。シロちゃん、いこ?」
「おまえなぁ。いい加減、シロちゃんはやめろ。日番谷隊長と呼べ」
「まぁまぁ、いいじゃないか。なぁ、シロちゃん?」
「なんだ浮竹まで。お前も、シロちゃんだろ!」
浮竹十四郎。シロちゃんと、いえないこともない。名前の一部に、シロという文字が入っている。
甘味屋につくと、混雑はしていたが、なんとか4人分の席は確保できた。日番谷と雛森は、おごりと言われたので好きなものをどんどん注文していく。
「浮竹も、好きなもの、頼みなよ?」
お汁粉と、おはぎだけ食べて、まだ食い足りないだろう浮竹に、京楽はアイスなんてどうだと、メニューを見せる。
その甘味屋は、現世で提供するようなメニューも置いてあることで、有名で、それゆえに人気が高かった。
「じゃ、ジャンボイチゴパフェ」
一人では食べきれない量のパフェである。いつも、頼む時は京楽と一緒に食べた。
「あ、それ私も食べたい。でも一人じゃ無理だから・・・・・シロちゃん、一緒に食べよ?」
「好きにしろ」
日番谷は、溜息をついた。
浮竹が頼んだジャンボイチゴパフェが、先にやってきた。京楽も、浮竹と一緒に食べる。
「ほんとに、仲いいんですね」
そりゃ、恋人同士だものな。日番谷はつっこみをいれたいのを、我慢した。
3人分をおごると、けっこうな金額になったが、上級貴族のぼんぼんである京楽にとってはたかがしれているだろう。
何せ、尸魂界にいくつかの屋敷を所有している。よく、浮竹と一緒に泊まったりする場所だ。
「美味しかった。京楽隊長、おごっていただいてありがとうございました」
ぺこりとおじぎをする雛森に、京楽はひらひらと手を振った。
「気にするな、雛森副隊長。こいつは、金持ちだからな。上流貴族なだけあるよ」
浮竹が、京楽の背中をバンバンと叩いた。
「じゃあ、俺たちは戻るからな」
「あ、待ってよシロちゃん!置いていかないで!」
「早くしろ、雛森」
残された浮竹と京楽は、二人が去っていく姿を見守っていた。
「若いって、いいねぇ」
「おじさんだもんな、俺ら」
「そうそう、いい年したおっさんだよ、僕も君も」
「その割は、随分と性欲があるようだが」
実は昨日は、泊まっただけではなかった。肌を重ねあった。風呂には入ったが、風呂上がりもいちゃこらしていたせいで、お互いのにおいがまぜこぜになってしまっていた。
「雛森ちゃん、僕らのことに気づいちゃったかな?」
「さぁ、どうだろうな」
気づかれたからといって、何があるわけでもない。
まぁ、京楽も浮竹も、一目のある場所でいちゃこらするのは控えていたが。
「京楽、今日の夜は俺がおごってやる」
「お、いいねぇ。果実酒の置いてある店にしようか」
「ああ、そうだな」
浮竹は、果実酒が好きだ。酒まで、甘いものを好んだ。
浮竹とて、隊長だ。それなりの賃金をもらっているのだが、半分を家族に仕送りをして、もう半分で飲み食いをして、そして病のための薬代をだせば、すっからかんになる。
はっきりいって、貯蓄している金額は雀の涙だ。
日々の生活に困るほどではないが、だいぶ京楽に依存していた。
何せ、お互い所帯をもっていない。外で飲食することが多い。
数百年を、一緒に過ごしてきた。
お互いが、比翼の鳥だ。
片方が欠けては、だめなのだ。
永劫の時を、刻んでいく。
何十年、何百年と。
バレンタイン
四楓院夜一は、四大貴族の一つ四楓院家の出身である。本人さえ忘れがちだが、上流貴族の姫君であった。そんな夜一は、さっぱりした性格の女性であった。>
「夜一様!これを、受け取ってください!」
砕蜂は、敬愛する夜一にチョコレートを渡そうと、綺麗にラッピングされたかわいい包み紙に入った箱を、夜一の前に突き出した。
今日はバレンタイン。
砕蜂は、丹精込めて、一晩かけて作った。
いわゆる、手作りチョコだった。
夜一のために、猫型に整えられたチョコレートだ。
「おう、すまんのう砕蜂」
夜一は、砕蜂から箱を受け取ると、その場で中身をあけてしまった。
「ふむ。かわいいのう。それに、美味いではないか。菓子を作る腕前も、昔に比べて立派になったものだのう」
猫型の、少し小さめのチョコレートを食べ終えて、夜一は砕蜂のほうを向いた。
「何か、礼をしてやらねばならんのう」
「そんな、勿体のうございます!私なんかのために」
「いやいや、可愛いおぬしのため、どれ一肌脱ぐか」
そう言って、本当に服を脱ぎだした夜一に、砕蜂は真っ赤になって目を手で覆うが、しっかりと指の隙間からみていた。
「夜一様!こんな冬に裸になってしまっては、風邪をひいてしまいます!」
「いや、着換えをするだけなんじゃが。おぬしは、こういうことのほうが、喜びそうじゃからのう」
「いえ、夜一様がくださるものなら、たとえ枯れ木の一枝でも大切にいたします!」
「そうか?では、ほれ」
夜一は、ぽいっと、砕蜂に髪飾りを投げてよこした。
「わしが、昔愛用していた髪飾りじゃ。お古で悪いが、値もけっこうするいい品だぞ」
「夜一様!」
感動のあまり、砕蜂は涙を浮かべた。
ちりんと、鈴の音がなる。金細工でできた鈴がついていた。
「ああ、愛しています夜一様!」
「ふふふ、砕蜂、今夜は寝かさぬぞ」
夜一と、砕蜂はできていた。どこぞの、隊長たちのように関係を隠していないわけではないので、二人ができていると知っている者は一部の者だけだが。
じー。
二人の愛の語らいを見ていた京楽は、浮竹のいる雨乾堂に、瞬歩で向かうと、浮竹に向かって手を突き出した。
「なんだ、京楽」
「ちょうだい」
「何を」
「ほら、例のあれだよ」
「ソウルキャンディ?」
「違う、違う」
「モッドソウル(改造魂魄)?」
「いや、それは犯罪でしょ」
「わかめ大使?」
「いや、それは朽木隊長のトレードマークでしょ!」
「じゃあ、チャッピー」
「いや、それはルキアちゃんがすきなものだから!」
「じゃあ・・・・・・・雑草」
「なんかひどくない!?」
「なんなんだ、一体」
「愛の結晶!」
「愛の・・・・・・・ミトコンドリア?」
「全然違うから!なんで愛の結晶がミトコンドリアなの!」
「じゃあ、葉緑体」
「なんか現世の理科になってない!?」
「愛の・・・・・・・贈り物?」
「そうそう、大部近い!」
「やっぱり、わかめ大使か!」
浮竹は、朽木百哉のわかめ大使が何気にすきだ。甘くておいしい。
「ちがう、今日という日の愛の結晶のあれだよ」
「ふむ。頭でもわいたか?」
「しくしく」
京楽は、冷たい反応の浮竹に、畳の上に座り込んで、泣き真似をしていた。
「なんだ一体。何が欲しいんだ」
「ほら、今日は何の日かな?ヒントはそれ」
「仏滅の日」
「しくしく・・・・・・・・」
ああ、そうか、今日はバレンタインだったな・・・・。
浮竹は、去年は京楽にバレンタインチョコを渡していたので、京楽は今年もあると思っていたのだろう。
「その、悪いが用意していない。もらいもののチョコでいいなら、大量にあるが」
女性死神からの人気も高い浮竹は、甘いものが好きで、チョコも好きなため、部下の男死神からなんかもチョコをもらっていたりした。
今日で一番うれしかったのは、日番谷隊長から、友チョコだと、ただの板チョコを渡されことだろうか。
「これやるよ、浮竹」
「えっ、日番谷隊長、いいのか?」
板チョコを渡されて、浮竹は喜んだ。日番谷は、浮竹と同じように、女性死神協会の女性たちから、大量のチョコをもらっているようだった。
「言っとくが、友チョコだからな。深い意味はない」
「ああ、わかっている」
浮竹は、大量のチョコを抱えて、雨乾堂に戻って行った。
「えー、今年はないの?楽しみにしてたのに」
大げさに落胆する京楽に、浮竹は苦笑した。
「お前も、女性死神からチョコを大量にもらっただろう?」
数では、浮竹の方が多いが、女性に優しい京楽を慕う女性死神も多い。
「それはまた別!君からもらうのが、嬉しいんだよ」
「今から買いにいったものでもいいか?」
「うん、それでもうれしい」
京楽は、浮竹と手を繋いだ。
「そういえばね、砕蜂隊長が夜一にチョコ渡してたよ。あの二人、前から妖しいと思ってたけど、できてたんだねぇ」
「知らなかったのか京楽」
「えっ、浮竹知ってたのかい?」
「いや、夜一とは昔馴染みだからな。たまに遊びにくるし」
浮竹と京楽の仲を誰よりも知っていて、からかったりする夜一に、恋人がいるとは京楽は知らなかった。
浮竹は、夜一からたまに砕蜂のことで悩みを聞いていたので、知っていた。
ただ、それだけのことだ。
「僕だけ仲間外れなんて悲しいねぇ」
夜一もけっこう酒豪で、浮竹と京楽と一緒に飲みに行くことも多い。でも、知らなかった。
「まぁ、とにかく今からチョコ買いに行くから。京楽もくるか?」
ルキアからも、チャッピー型の大きなチョコをもらった浮竹は、ちゃっぴーのチョコでも買おうと思っていた。
「君がくれるなら、駄菓子のチョコでも嬉しいよ」
繋いだままの手にキスを落とされて、浮竹は翡翠の瞳を瞬かせた。
京楽のことだから、本当に駄菓子屋で売っているような5円チョコのようなものでも喜ぶだろう。
でも、バレンタインなのだ。
チャッピーの形のチョコでも買ってやるか。
浮竹は、京楽の手をひいて、菓子屋にやってきた。
「うわぁ、いろいろあるねぇ」
浮竹のために、甘味ものを買いにスイーツの店にいくことはあっても、駄菓子を買うために菓子屋にいくことなかった。
浮竹は、同じシロちゃんだからと、お気に入りの日番谷によくこの店で菓子を買っては渡していた。
「あった」
よかった、売り切れてなかった。
チャッピー型のチョコを選んで、勘定をすますと、雨乾堂に帰った。
京楽は浮竹の耳元で囁く。
「君の手で、食べさせてよ」
浮竹は、京楽の口の中にチャッピーのチョコを乱暴につっこんだ。
「ちょっと!こういう時は、もうちょっとエロティックに・・・・・」
じー。
視線をかんじて、浮竹は後ろを振り返った。
そこに、夜一がいた。
「いや、やっぱりおぬしらを見るのは飽きないのう」
「夜一」
「どうだ、浮竹、京楽。酒でも飲みに行こうはないか」
夜一の後ろでは、少し小さくなった砕蜂が、隠れていた。
「京楽にもばれているみたいだし、もう隠す必要もなかろう」
夜一は、砕蜂を抱き上げて、キスをした。
京楽はそれを見て、自分も負けるかとばかりに浮竹を抱き上げ、キスをした。
「わしらは、似た者同士じゃのう」
「そうか?」
浮竹は、首を傾げる。白い髪が、さらさらと音をたてる。
「夜一様に、手をだしたら許さないからな、お前たち」
威嚇してくる砕蜂に、夜一が頭をなでると、一瞬でしおらしくなった。
「夜一様・・・・・・・」
「そうじゃ、忘れるとこじゃった。ほれ、浮竹、京楽。おぬしらの分のチョコじゃ」
「おのれ、浮竹、京楽!夜一様に、チョコをもらうなど・・・・・」
「砕蜂、わしが愛しているのはおぬし一人じゃ。チョコ程度で、焼きもちを焼くな」
「はい、夜一様!」
その後、4人はべろんべろんに酔っぱらうまで、酒を飲んだ。
朝起きると、隣に全裸の夜一が転がっていて、京楽はびっくりした。
少し間をあけて、浮竹が寝ている。隣には、やや乱れた衣服の砕蜂が寝そべっていた。
「あー。飲みぎた・・・・何したのか、覚えてないよ」
まさか、夜一に手を出したわけじゃあるまい。浮竹も、砕蜂に手を出すなどありえないだろう。
事実、起きた夜一は、京楽と浮竹が寝た後で、砕蜂といちゃいちゃしていたという。
酒に強い京楽までべろんべろんに酔っぱらわせるほどの酒豪である、夜一は。
「また、飲みにいこうのう」
「いや、勘弁してくれ」
浮竹は、京楽に介抱されながら、水をのんだ。
「酒に強すぎた、夜一」
「ふーむ。まぁ、ホワイトデーなるものを、期待しておるからの!」
「やっぱ目的はそれか・・・・・・」
夜一が、砕蜂以外にチョコを渡すはずがないのだ。
結局、夜一へのホワイトデーは少し高価なおくりものになった。
京楽から、浮竹へのホワイトデーは、現世へのスイーツ店巡りツアーだったという。
「夜一様!これを、受け取ってください!」
砕蜂は、敬愛する夜一にチョコレートを渡そうと、綺麗にラッピングされたかわいい包み紙に入った箱を、夜一の前に突き出した。
今日はバレンタイン。
砕蜂は、丹精込めて、一晩かけて作った。
いわゆる、手作りチョコだった。
夜一のために、猫型に整えられたチョコレートだ。
「おう、すまんのう砕蜂」
夜一は、砕蜂から箱を受け取ると、その場で中身をあけてしまった。
「ふむ。かわいいのう。それに、美味いではないか。菓子を作る腕前も、昔に比べて立派になったものだのう」
猫型の、少し小さめのチョコレートを食べ終えて、夜一は砕蜂のほうを向いた。
「何か、礼をしてやらねばならんのう」
「そんな、勿体のうございます!私なんかのために」
「いやいや、可愛いおぬしのため、どれ一肌脱ぐか」
そう言って、本当に服を脱ぎだした夜一に、砕蜂は真っ赤になって目を手で覆うが、しっかりと指の隙間からみていた。
「夜一様!こんな冬に裸になってしまっては、風邪をひいてしまいます!」
「いや、着換えをするだけなんじゃが。おぬしは、こういうことのほうが、喜びそうじゃからのう」
「いえ、夜一様がくださるものなら、たとえ枯れ木の一枝でも大切にいたします!」
「そうか?では、ほれ」
夜一は、ぽいっと、砕蜂に髪飾りを投げてよこした。
「わしが、昔愛用していた髪飾りじゃ。お古で悪いが、値もけっこうするいい品だぞ」
「夜一様!」
感動のあまり、砕蜂は涙を浮かべた。
ちりんと、鈴の音がなる。金細工でできた鈴がついていた。
「ああ、愛しています夜一様!」
「ふふふ、砕蜂、今夜は寝かさぬぞ」
夜一と、砕蜂はできていた。どこぞの、隊長たちのように関係を隠していないわけではないので、二人ができていると知っている者は一部の者だけだが。
じー。
二人の愛の語らいを見ていた京楽は、浮竹のいる雨乾堂に、瞬歩で向かうと、浮竹に向かって手を突き出した。
「なんだ、京楽」
「ちょうだい」
「何を」
「ほら、例のあれだよ」
「ソウルキャンディ?」
「違う、違う」
「モッドソウル(改造魂魄)?」
「いや、それは犯罪でしょ」
「わかめ大使?」
「いや、それは朽木隊長のトレードマークでしょ!」
「じゃあ、チャッピー」
「いや、それはルキアちゃんがすきなものだから!」
「じゃあ・・・・・・・雑草」
「なんかひどくない!?」
「なんなんだ、一体」
「愛の結晶!」
「愛の・・・・・・・ミトコンドリア?」
「全然違うから!なんで愛の結晶がミトコンドリアなの!」
「じゃあ、葉緑体」
「なんか現世の理科になってない!?」
「愛の・・・・・・・贈り物?」
「そうそう、大部近い!」
「やっぱり、わかめ大使か!」
浮竹は、朽木百哉のわかめ大使が何気にすきだ。甘くておいしい。
「ちがう、今日という日の愛の結晶のあれだよ」
「ふむ。頭でもわいたか?」
「しくしく」
京楽は、冷たい反応の浮竹に、畳の上に座り込んで、泣き真似をしていた。
「なんだ一体。何が欲しいんだ」
「ほら、今日は何の日かな?ヒントはそれ」
「仏滅の日」
「しくしく・・・・・・・・」
ああ、そうか、今日はバレンタインだったな・・・・。
浮竹は、去年は京楽にバレンタインチョコを渡していたので、京楽は今年もあると思っていたのだろう。
「その、悪いが用意していない。もらいもののチョコでいいなら、大量にあるが」
女性死神からの人気も高い浮竹は、甘いものが好きで、チョコも好きなため、部下の男死神からなんかもチョコをもらっていたりした。
今日で一番うれしかったのは、日番谷隊長から、友チョコだと、ただの板チョコを渡されことだろうか。
「これやるよ、浮竹」
「えっ、日番谷隊長、いいのか?」
板チョコを渡されて、浮竹は喜んだ。日番谷は、浮竹と同じように、女性死神協会の女性たちから、大量のチョコをもらっているようだった。
「言っとくが、友チョコだからな。深い意味はない」
「ああ、わかっている」
浮竹は、大量のチョコを抱えて、雨乾堂に戻って行った。
「えー、今年はないの?楽しみにしてたのに」
大げさに落胆する京楽に、浮竹は苦笑した。
「お前も、女性死神からチョコを大量にもらっただろう?」
数では、浮竹の方が多いが、女性に優しい京楽を慕う女性死神も多い。
「それはまた別!君からもらうのが、嬉しいんだよ」
「今から買いにいったものでもいいか?」
「うん、それでもうれしい」
京楽は、浮竹と手を繋いだ。
「そういえばね、砕蜂隊長が夜一にチョコ渡してたよ。あの二人、前から妖しいと思ってたけど、できてたんだねぇ」
「知らなかったのか京楽」
「えっ、浮竹知ってたのかい?」
「いや、夜一とは昔馴染みだからな。たまに遊びにくるし」
浮竹と京楽の仲を誰よりも知っていて、からかったりする夜一に、恋人がいるとは京楽は知らなかった。
浮竹は、夜一からたまに砕蜂のことで悩みを聞いていたので、知っていた。
ただ、それだけのことだ。
「僕だけ仲間外れなんて悲しいねぇ」
夜一もけっこう酒豪で、浮竹と京楽と一緒に飲みに行くことも多い。でも、知らなかった。
「まぁ、とにかく今からチョコ買いに行くから。京楽もくるか?」
ルキアからも、チャッピー型の大きなチョコをもらった浮竹は、ちゃっぴーのチョコでも買おうと思っていた。
「君がくれるなら、駄菓子のチョコでも嬉しいよ」
繋いだままの手にキスを落とされて、浮竹は翡翠の瞳を瞬かせた。
京楽のことだから、本当に駄菓子屋で売っているような5円チョコのようなものでも喜ぶだろう。
でも、バレンタインなのだ。
チャッピーの形のチョコでも買ってやるか。
浮竹は、京楽の手をひいて、菓子屋にやってきた。
「うわぁ、いろいろあるねぇ」
浮竹のために、甘味ものを買いにスイーツの店にいくことはあっても、駄菓子を買うために菓子屋にいくことなかった。
浮竹は、同じシロちゃんだからと、お気に入りの日番谷によくこの店で菓子を買っては渡していた。
「あった」
よかった、売り切れてなかった。
チャッピー型のチョコを選んで、勘定をすますと、雨乾堂に帰った。
京楽は浮竹の耳元で囁く。
「君の手で、食べさせてよ」
浮竹は、京楽の口の中にチャッピーのチョコを乱暴につっこんだ。
「ちょっと!こういう時は、もうちょっとエロティックに・・・・・」
じー。
視線をかんじて、浮竹は後ろを振り返った。
そこに、夜一がいた。
「いや、やっぱりおぬしらを見るのは飽きないのう」
「夜一」
「どうだ、浮竹、京楽。酒でも飲みに行こうはないか」
夜一の後ろでは、少し小さくなった砕蜂が、隠れていた。
「京楽にもばれているみたいだし、もう隠す必要もなかろう」
夜一は、砕蜂を抱き上げて、キスをした。
京楽はそれを見て、自分も負けるかとばかりに浮竹を抱き上げ、キスをした。
「わしらは、似た者同士じゃのう」
「そうか?」
浮竹は、首を傾げる。白い髪が、さらさらと音をたてる。
「夜一様に、手をだしたら許さないからな、お前たち」
威嚇してくる砕蜂に、夜一が頭をなでると、一瞬でしおらしくなった。
「夜一様・・・・・・・」
「そうじゃ、忘れるとこじゃった。ほれ、浮竹、京楽。おぬしらの分のチョコじゃ」
「おのれ、浮竹、京楽!夜一様に、チョコをもらうなど・・・・・」
「砕蜂、わしが愛しているのはおぬし一人じゃ。チョコ程度で、焼きもちを焼くな」
「はい、夜一様!」
その後、4人はべろんべろんに酔っぱらうまで、酒を飲んだ。
朝起きると、隣に全裸の夜一が転がっていて、京楽はびっくりした。
少し間をあけて、浮竹が寝ている。隣には、やや乱れた衣服の砕蜂が寝そべっていた。
「あー。飲みぎた・・・・何したのか、覚えてないよ」
まさか、夜一に手を出したわけじゃあるまい。浮竹も、砕蜂に手を出すなどありえないだろう。
事実、起きた夜一は、京楽と浮竹が寝た後で、砕蜂といちゃいちゃしていたという。
酒に強い京楽までべろんべろんに酔っぱらわせるほどの酒豪である、夜一は。
「また、飲みにいこうのう」
「いや、勘弁してくれ」
浮竹は、京楽に介抱されながら、水をのんだ。
「酒に強すぎた、夜一」
「ふーむ。まぁ、ホワイトデーなるものを、期待しておるからの!」
「やっぱ目的はそれか・・・・・・」
夜一が、砕蜂以外にチョコを渡すはずがないのだ。
結局、夜一へのホワイトデーは少し高価なおくりものになった。
京楽から、浮竹へのホワイトデーは、現世へのスイーツ店巡りツアーだったという。
ツインテール
「「浮竹隊長、お似合いです!」
朽木ルキアは、チャッピーのついた髪ゴムで、浮竹の髪をツインテールに結ってしまった。
「うーん」
浮竹は、しぶい顔をしていた。
かわいいと、部下のルキアは言ってくれる。
だが、本当にかわいいのだろうか?分からない。
いい年をしたおっさんが、長い髪をツインテールにして、はたしてそれが似合うのかどうか。
だが、実年齢より100歳は若く見える浮竹に、ツインテールは似合っていた。
浮竹が自分で大嫌いな白い長い髪を、後ろで結うことはある。だが、基本は背中に流している。
「似合っているのか?」
「はい、とてもお似合いです!」
ルキアは、紫の瞳をしていた。とても珍しい色だ。
朽木家の養子になって、すぐに真央霊術院を卒業し、13番隊に入ってきた。面倒は、海燕が見てくれていたが、その海燕が亡くなって数十年が経過していた。
本当なら、ルキアは席官クラスの実力をもっている。だが、義兄である朽木白哉によって、席官にしないようにと、強く訴えられていた。いろいろ根回しがされていたせいで、ルキアは一般隊士の死神だった。
だが、浮竹はルキアのことを好んでいた。そのさっぱりした性格が好きで、よく傍においていた。
「自分ではよくわからん。暇だし、盆栽の手入れでもしてくる」
雨乾堂の外に出て、浮竹は趣味の盆栽いじりをしだした。
その腕は・・・・・・・はっきりいって、へぼい。
変な形をした盆栽に囲まれて、浮竹は少しご機嫌になった。
「やっぱり、盆栽はいいなぁ。この至高の趣味を、何故誰も分かってくれないんだろう」
親友であり、恋人である京楽も分かってくれない。
「浮竹ぇ。また、かわいい恰好してるね?ハグしていいかい?」
そう言葉がかけられた次の瞬間には、京楽の腕が浮竹の胴に回っていた。
「なんだ京楽。気配を消して、近づくなんて悪趣味だぞ」
霊圧を消して近づいて、言葉の通り軽く抱き着いて、ハグをしてくる京楽に、浮竹は弄っていた盆栽の枝を、ちょきんとはさみで切ってしまった。
「ああ、ここは切るべきではなかったか・・・・・・・」
抱き着いてくる京楽を無視して、浮竹は盆栽をいじり続けた。
「相手してくれないなら、こうしちゃうよ」
「ひゃっ」
うなじを舐めあげられて、ちょっと変な声を零してしまった。
「隊長?」
雨乾堂から顔をのぞかせたルキアが見たのは、ツインテールの髪をした浮竹を抱きしめて、浮竹のうなじにキスをしている京楽の姿だった。
「はうっ」
ルキアは、真っ赤になった。見物人であるルキアに一瞥をくれただけで、京楽の動きは止まらない。
背後から深く口づけられて、足と足の間に、膝をいれてくる京楽の動きに、貞操の危機をかんじた浮竹は、その頭をはたいた。
「部下が見ている前で、盛るな!」
「いけずー」
「あほかっ」
「京楽隊長!いいもの見せてもらいました」
ぐっと、鼻血を出しながら、OKサインをだすルキアに、京楽が声をかける。
「ルキアちゃんがしたいのかい、この髪型」
「そうです」
いつもは男みたいな口調のルキアだが、上司の前ではですます口調になる。
「最高だよ、ルキアちゃん」
褒められて、ドクドクと鼻血を垂らしながら、ルキアは言った。
「チャッピーの髪ゴム、限定販売ものなんです。今じゃ、人気がありすぎて手に入りません。兄様が、この前買ってきてくれたのです」
「あの白哉がねぇ」
ルキアの義兄である朽木白哉は、変わった。ルキアが尸魂界の双極で処刑になりそうなのを、死神代行の黒崎一護が救いだしてから、変わった。
今までは、冷たい態度をとっていたが、愛しい義妹に、静かに夢中になっていた。
「これは女性死神協会のため!」
ぱしゃりと、浮竹に抱き着いたままの京楽とのツーショットを、隠し持っていたカメラで撮影するルキア。
「朽木、写真とるなっ!」
「浮竹隊長、それではお暇させていただきます!京楽隊長、いいもの見せてくれてありがとうございました!」
瞬歩で去っていくルキアを、追いかけようにも、後ろから羽交い絞めみたいにされている。
「京楽っ、離れろ」
「無理。かわいいよ、浮竹。僕も、ルキアちゃんの撮った写真、焼きまわししてもらおっと」
「あほかっ!」
「全部、かわいい浮竹が悪い」
「やめっ・・・・・・」
浮竹の声は、京楽の口づけで、無理やり黙らせられた。
数時間後。
ツインテ―ル姿のままで、尸魂界を歩いている、浮竹の姿があった。隣には、やけに嬉しそうな、京楽が。
浮竹は、溜息を零した。
ツインテールの姿のまま、1日を過ごさないと、ルキアにもっと過激な姿を見せさせると、半ば脅しに近いことを言われて。
ツインテールがかわいいと、通りすがる死神たちが口にする。
道行く死神たちは、特に女性が、黄色い声をあげていた。
「浮竹隊長に、京楽隊長!写真、目の保養にさせてもらいますね!」
偶然通りかかった松本乱菊が、ぶんぶんと、浮竹と京楽に手を振ってくる。
「松本、やめんか・・・・・・・・浮竹隊長、どうした。その変な髪型。かわいいじゃないか」
「日番谷隊長か・・・・日番谷隊長も、ツインテール、してみるか?」
「いや、無理だろ。俺の髪じゃ、短すぎる。もっとも、長くてもそんなかわいい髪型にするつもりはないがな」
「やっぱり、かわいいのか」
自分より、何百歳も年下で、かわいいと表現できる日番谷隊長にまでかわいいと言われて、浮竹はげんなりした。
真っ白な髪には、チャッピーのぬいぐるみの髪飾りのついた髪ゴム。
「今度は、ポニーテールにでもしようね」
京楽は、かわいい姿の浮竹が見れて、それを自慢げに他人に見せれて、ご機嫌だった。
「あー。髪、切りたくなってきた・・・・・・・・」
浮竹は、ツインテールを揺らしながら、空を見上げた。
空は、どこまでも広く、青かった。
その後、情勢死神協会が発行する会員誌に、ルキアの撮った写真が掲載され、その号は飛ぶように売れて、売り切れになったらしい。
それはまた、別のお話。
比翼の鳥Ⅲ
京楽が見合いをして、結婚するらしい。というか、もう見合いはすませて、後は結婚するだけらしい。
そんな話を聞いたのは、夏も終わり秋が深まった頃だった。
夜になると、いつも過ごしている雨乾堂の少し離れた草原からは、リーンリーンと涼やかな虫の声が聞こえる、そんな季節だった。
「京楽が?」
浮竹は、その日京楽と一緒にいなかった。馴染みの居酒屋で、院生時代からの友人たちと飲んでいた。
「らしいですよ。なんでも、相手は上級貴族の姫君だとか」
「嘘だろう?」
浮竹は、酒を飲むことをやめて、真剣な表情で話を聞いていた。
「それが、なんでも山本総隊長からも根回しされたとかで。京楽隊長も、もてますからねぇ。もう潮時じゃないんですかねぇ」
友人たちは、京楽と浮竹ができているのを知らない。
院生時代からの友人だが、それほど深い仲でもなく、たまに飲むくらいだった。
「京楽が見合い・・・・結婚・・・・・・・・」
想像しただけで、身が引き裂かれる想いだった。
永遠の愛を、誓い合った仲ではなかったのだろうか、京楽は。
愛していると甘く囁いてくる、あの声も嘘か?
京楽が。
つい先日も、耳元で好きだよと囁いて、触れるだけのキスをしてきた京楽が。
遊びで、廓の女を買っても、関係はもたずにただ酒を飲みあう。そんな京楽が。
今まで築き上げてきたものすべてが、真っ白に崩れ落ちていく錯覚にとらわれる。
「どうしたんですが、浮竹隊長」
「いや・・・少し、飲みすぎたみたいだ。今日は、もう寝るよ」
逃げるように、勘定を済ませ、浮竹は居酒屋をでた。
肌寒い。夜は、少し冷えこむ。
でも、そんなことはどうでもいい。
真相を確かめることもせずに、海乾堂に帰った浮竹がしたことは、長くなった真っ白な髪を、斬魄刀でざくざくに切り落とすことだった。
「こんな髪!」
浮竹が大嫌いの白い髪。綺麗だから伸ばしてほしいと京楽に懇願され、ずっと伸ばしてきた。腰の位置より少し高い位置で、伸びすぎるといつも京楽が切ってくれた。
「こんな髪・・・・・・」
真っ白な、色素を失った髪。
肺病のせいで、元は黒かった色がぬけて純白になってしまった。
太陽の光を浴びると、銀色の輝いて綺麗だと、囁いてくれる京楽の声が忘れられない。
「京楽の大馬鹿野郎!」
涙が、頬を伝った。
親が無理やり見合いをさせて困ると、浮竹に零したことがある。でも、そんな見合いなんて全部断ってくれた。
「僕には、大切な浮竹がいるからね」
穏やかで優しい微笑みを思い出す。ずきりと、胸が痛んだ。
もう、見合いを済ませたという。今まで、見合いなど一切せずに断っていたのに。見合いを済ませた。
イコール、結婚。
俺とは、遊びだったのか?
次々と沸いてくる想いに、疑心暗鬼になりかけていた。
「隊長・・・・きゃっ!」
清音が、帰ってきた上官の顔を見ようと顔をのぞかせると、そこにいたのは美しかった長い白髪を、ざんばらに切って、斬魄刀を持ったまま放心している浮竹の姿だった。
「ちょ、隊長!髪こんなに切ったりして・・・隊長!」
揺さぶれて、はっとなった。
「清音・・・・・・・」
「せめて、斬魄刀をしまってください。話があるなら、私が聞きますから!」
浮竹は、少し冷静さを取り戻したのか双魚理をしまった。
「どうしたんですか、浮竹隊長」
美人が台無しですよ。清音は、泣きながら浮竹のざんばらに散らばった髪を集めた。
「京楽が、見合いを済ませ結婚するって・・・・・」
「ああ、あの噂ですか」
「本当なのか?」
清音は、目を伏せた。
「本当だと、聞きました」
もう終わりだ。
数百年続いてきた恋人の関係が、こんなことで終わるなんて。
ただ、切なくて苦しくて。涙が、また零れそうだった。
清音がいる。
浮竹は我慢して、唇をかんだ。
錆びた鉄の味がした。
「隊長、しっかりしてください!きっと、京楽隊長は、結婚しませんから!」
「そんなこと、本人に聞かないと分からないだろう」
そうだ。
本人に、直接聞けばいいのだ。
だが、怖い。
話が全部真実で、浮竹を捨てていく京楽がいるのが、怖かった。
ただとてつもなく。ぽっかりと巨大な穴ができたようだ。
半身を失うようなものだ。
比翼の鳥は、片方がいないと空を飛べない。そんな比翼の鳥のような関係だった二人を引き裂くのは、片方の結婚。
きっと京楽のことだから、結婚したとしても別れるとは言わないだろう。あれほど、浮竹に執着している京楽のことだ。手放さないに、決まっている。
だが、浮竹は結婚した相手と関係を続ける気は一切なかった。
「京楽のところに、行ってくる」
「隊長!髪、せめて整えてからでも・・・・」
「このままでいい」
肩より上で、ざんばらに切られた髪をそのままに、霊圧を消して、浮竹は8番隊の隊舎に瞬歩で近づくと、そのまま京楽のいるだろう隊長室に向かった。
「入るぞ」
ばんと、乱暴に扉を開けると、京楽が文机に向かって珍しく仕事をしていた。
「どうしたの・・・・・・その髪、どうしたの!誰かに、切られたの?もしそうなら、相手を半殺しにしてやる」
京楽は、浮竹の傍にくると、浮竹を抱きしめた。
「本当か」
「何が」
「結婚するって、本当か」
低い声が出た。涙を流して別れないでと、懇願するような男ではない、浮竹は。どす黒い感情そのままに、抑えていた霊圧を京楽に向けた。
まさに、殺意をこめて。
「あー、あの話ね」
「京楽っ!」
押し倒されていた。
「こんな関係、終わらせてやる!」
「できるの?僕なしで、生きていけるの?僕に散々啼かされている君が、僕なしで生きていけるとはとても思えないよ」
情欲のままに、貪られ、貪ることを覚えた体にされてしまった。
乱暴に口づけられて、浮竹は京楽の舌を少しきつめに噛んだ。
「痛いじゃないか」
「髪は、自分で切った」
「そうか。綺麗だったのに・・・・・。後で、切りそろえてあげる」
「そんなことより、どうなんだと、聞いているんだ。はぐらかすな」
「一言でいうなら、結婚しないよ。見合いも、山じいがうるさいからしたけど、結婚はしない。相手は同じ上級貴族の姫君だから、破断にするのに、時間かかったけどね。もしも、結婚を強制されたら、家を出る」
家族と、縁を切ると、強く京楽は浮竹の耳に囁きかけた。
安堵すると、自然と緩んだ緊張感から解放されて、涙が頬を伝った。
「ごめんね。もっと早くに、僕から伝えるべきだったね」
「ん・・・・」
深く口づけられても、今度は舌をかまなかった。舌をからませあいながら、京楽が与えてくる快楽を、素直に受け取る。
「怖かった。お前を失うのかと思って」
「そんなこと、ならないよ。結婚なんてしない。むしろ、許されるなら君と結婚したい」
京楽は、強く浮竹を抱きしめた。
おずおずと、抱き返して、それから京楽を力のままに押し倒す。立場が逆転して、京楽は浮竹を見上げた。
「もしもお前が他の相手と結婚したら、相手を殺してやる」
翡翠の瞳には、確かな殺意が静かに宿っていた。
「怖い怖い」
ざんばらになった、短くなった髪に京楽の指がからまった。
「僕のせいで、やけをおこして髪をきったんだね」
「そうだ。全部、お前のせいだ」
情欲というものを覚えたのも。激しく燃え上がる情熱を覚えたのも。
「髪、切りそろえてあげる。それから、また伸ばして?毛先はいつものように僕が揃えあげるから」
ぎらりと光る翡翠に、ああ、なんて綺麗な生き物なんだろうかと、京楽は微笑む。
浮竹は、静かに京楽の上からどいた。
「ちょっと待ってね。仕事、片付けるから。すぐに終わるから、待っててね」
素直に待って、畳の上でざんばらになった白い髪で遊んでいると、10分も経たずに京楽がやってきた。
いつも髪を切ってくれる大きめの鋏と、手鏡と、櫛をもっていた。
「それにしてももったいないなぁ。何で切ったの?ざんばらじゃない」
「斬魄刀で切った」
「なんて無駄な使い方だろう。双魚理が、かわいそうだよ?」
「そうだな・・・・・少し早まりすぎたみたいだ。反省する」
しゃき、しゃき。ぱらぱら。
櫛で真っすぐに伸ばされて、切られていく白い髪。
京楽は、慣れた手つきで浮竹の髪をきっていった。
「ほら、できた。かわいいね。院生時代を思い出すよ。短くても、似合ってる」
手鏡を渡されて、少し潤んだ翡翠の瞳がその中に映っていた。
綺麗に、院生時代のように短く整えられた白い髪。前までの長さに伸ばすには、数年はかかるだろう。
「改めて、約束するよ。もう見合いもしない。結婚もしない。君だけを愛し・・・・・・」
言葉は、浮竹の口づけで塞がれた。
舌をぬくと、浮竹は銀の糸をひく舌で、ぺろりと自分の唇を舐める。
京楽だけが知っている、浮竹の癖だ。
情欲すると、浮竹は自分の唇を舐める。
「京楽・・・・・愛して?」
京楽の隊長羽織を、浮竹が脱がしていく。
浮竹は、京楽に隊長羽織を脱がされ、死覇装に手がかけられる。何度見ても、見飽きない、浮竹の裸身が露わになっていく。
「あっ・・・・・・・・」
体の輪郭全部を確かめるように、音もなく、京楽の手が浮竹の体のラインをたどっていく。
浮竹は、京楽の肩にかみついた。
それも、京楽だけが知る浮竹の癖だ。快楽を覚えて戸惑っていると、肩に噛みついてくる。
「愛してる」
浮竹は、熱にうなされるように囁いた。
珍しく、浮竹から体を求めてきた。
薄い筋肉のついた胸を撫でて、先端に爪をたてると、また浮竹が京楽の肩にかみついた。
甘噛みだ。
舌で先端を転がして、もう片方に爪をまたたてる。
「おっと・・・・・・潤滑油、もってくるね」
行為の途中で置き去りにされた浮竹は、翡翠の瞳で京楽をにらんだ。
でも、潤滑油なしでは、交われない。無理に交わることもできるが、そうすると浮竹の中が傷ついて、血を流す。
京楽は、浮竹の血の色が何より嫌いだった。
それは、浮竹の命の色そのものだ。
「ん・・・」
潤滑油に濡らされた指が、蕾をえぐってくる。内部を侵す指に、浮竹は翻弄される。
「愛してる」
何度めかの囁きが、浮竹の唇から零れ落ちた。
「あうっ」
前立腺をひっかかれて、声がうわずる。浮竹は、ペロリと自分の唇を舐めていた。
水音をたてて、京楽の指が抜かれていく。
「愛して?」
小首を傾げてくる。明らかに、同じ男の京楽に犯されて、情欲していた。いつもは白い髪で、表情が見れない時があるが、今ならはっきりとわかる。
ゆるゆると、たちあがったままの浮竹の花茎に手をそえてしごきあげ、同時に挿入した。
「やあっ」
前立腺を何度もつきあげると、浮竹は翡翠の瞳を伏せた。長い睫毛が、頬に陰影を作り出す。
「あ、あ、あ・・・・・」
刻まれるリズムと一緒に、声が漏れた。
浮竹を貫いたまま、京楽は浮竹の腕をとって起き上がらせた。体重で、京楽の熱を深く呑み込んでいってしまう。
「この体勢、いやだっ・・・・・・・・」
浮竹が涙を零した。
「あ、あ、激し・・・・」
下から突き上げると、浮竹は短い白い髪をぱらぱらと宙に泳がせた。
「春水、やだっ」
ねだられて、体位を変えた。いつものように、浮竹の細い足を肩に乗せる。柔軟な浮竹の体は、少々無理な体位でも受け入れた。
「んっ」
最奥を突き上げると、浮竹も限界が近いようで、生理的な涙を浮かべている。
「一緒にいこう、十四郎。愛してるよ」
「俺も愛して・・・る・・・・・ああっ!」
花茎をしごかれ、先端に爪を立てられて、半ば強引に性を放たされた。同時に、腹の奥で京楽の熱が弾けた。
「あ、あ、いっちゃう。今はだめっ・・・・・・・」
白い液体を迸らせたままの浮竹を、京楽は侵略するように犯していく。また深く挿入され、前立腺をこすりあげられた。
「!」
頭が真っ白になった。肉体的に達しているのに、オーガズムでいくことを覚えさせられた体が、快楽で真っ白になって、ぐずぐずになっていく。
二度目の熱を、浮竹の中に吐き出して、京楽もようやく満足したようだった。
何度味わっても、飽きない。
浮竹の体は、よすぎる。
お互いにとって、肌を重ねることは麻薬に似ていた。
快楽を伴って、常用性が出る。また、体を重ねたくなる。禁断症状がでる。
「きもちよかった?」
体をふいて清めてくる京楽に、浮竹は言葉もなくこくりと頷いた。死覇装で、体のラインを隠す浮竹のうぶな動きに、またのそりと京楽の熱が高まっていく。
いけない、いけない。
激しくすると、浮竹は意識を手放してしまう。そんな相手を労わることのあまりない、快楽だけの交わりは、避けないと。
何千回と体を重ねてきたが、浮竹は激しくされるより、時間をかけてとろけるような愛され方をする方が好きだ。
だが、そのやり方だと京楽のほうが悲鳴をあげそうになる。気を放たずに、浮竹を満足させるのは難しい。
だが、できるだけ、快楽を味わって欲しかった。
「あ、そうだ」
「?」
「11番隊の、やちるちゃんに、金平糖(こんぺいとう)もらったんだ。食べるかい?」
こくこくと、頷く浮竹に、京楽は後始末を全部終わらせて、お互いに服を着あってから、もらった金平糖を、浮竹の綺麗な形の手に、転がした。
本当に、同じ死神だろうか。剣を握って戦うというのに、綺麗な手をしている。無駄なぜい肉は一切ない。だからといって、鍛え上げられた硬い筋肉もない。薄い筋肉だけを持つ浮竹は、軽い。
「甘い・・・・」
「運動した後は、余計に甘く感じるよね」
かっと、顔を赤らめて、浮竹は目を伏せた。
「浮竹は、睫毛が長いね」
「そうか?」
「うん。でも、睫毛は黒いんだね」
眉毛も、黒い。体毛はほとんどないが、黒い。もじゃもじゃの京楽からすれば、体毛があまりないのは羨ましかった。
「髪だけだ。白いのは」
「そんなことはないよ。今は上気してバラ色になってるけど、肌も白いよ」
浮竹は、もっとと、金平糖をねだったてきた。だが、手元にはもうない。
かわいい恋人に、京楽は明日あげる予定だった、浮竹の大好物のおはぎを出してきた。ついでにと、酒ももってきた。
「甘い・・・・・・・」
おはぎをほおばる浮竹の短くなった白い髪に、口づけをする。
「また、伸ばそうね」
京楽は、自分の杯に酒を注ぎ、一気に呷った。
「ああ」
同じ杯を、浮竹に持たせて、酒を注ぐ。少し躊躇した後、浮竹は杯を煽った。
喉が焼けるようだ。京楽は、アルコール度の高い強め日本酒を好む。果実酒みたいな甘い酒を好む浮竹も、日本酒を飲むが、やはり果実酒の方が好きだった。
「浮竹の好きな果実酒もあるよ」
「だったら、最初からそっちを出してくれ」
違う瓶をとりだして、浮竹にもたせた杯に注ぐ。
浮竹は、それを飲んだ。
「甘い酒、好きだね。もしも、今度一緒に現世にいくときがあるなら、カクテルを好きなだけおごってあげる」
尸魂界に、カクテルを出す飲み屋がないわけではないが、現世のほうが種類も豊富だった。
浮竹が飲んだ果実酒は、柑橘系の味がした。気に入ったので、どこに売っていたのかと聞くと、わざわざ現世から取り寄せたものだという。
きっと、値も張っただろう。
比翼の鳥は、翼を取り戻した。
半身を失わずに、済んだ。
比翼の鳥は、大空に向かって飛んでいく。
どこまでも、果てなく。
お互いの、命ある限り、寄り添いあいながら。
そんな話を聞いたのは、夏も終わり秋が深まった頃だった。
夜になると、いつも過ごしている雨乾堂の少し離れた草原からは、リーンリーンと涼やかな虫の声が聞こえる、そんな季節だった。
「京楽が?」
浮竹は、その日京楽と一緒にいなかった。馴染みの居酒屋で、院生時代からの友人たちと飲んでいた。
「らしいですよ。なんでも、相手は上級貴族の姫君だとか」
「嘘だろう?」
浮竹は、酒を飲むことをやめて、真剣な表情で話を聞いていた。
「それが、なんでも山本総隊長からも根回しされたとかで。京楽隊長も、もてますからねぇ。もう潮時じゃないんですかねぇ」
友人たちは、京楽と浮竹ができているのを知らない。
院生時代からの友人だが、それほど深い仲でもなく、たまに飲むくらいだった。
「京楽が見合い・・・・結婚・・・・・・・・」
想像しただけで、身が引き裂かれる想いだった。
永遠の愛を、誓い合った仲ではなかったのだろうか、京楽は。
愛していると甘く囁いてくる、あの声も嘘か?
京楽が。
つい先日も、耳元で好きだよと囁いて、触れるだけのキスをしてきた京楽が。
遊びで、廓の女を買っても、関係はもたずにただ酒を飲みあう。そんな京楽が。
今まで築き上げてきたものすべてが、真っ白に崩れ落ちていく錯覚にとらわれる。
「どうしたんですが、浮竹隊長」
「いや・・・少し、飲みすぎたみたいだ。今日は、もう寝るよ」
逃げるように、勘定を済ませ、浮竹は居酒屋をでた。
肌寒い。夜は、少し冷えこむ。
でも、そんなことはどうでもいい。
真相を確かめることもせずに、海乾堂に帰った浮竹がしたことは、長くなった真っ白な髪を、斬魄刀でざくざくに切り落とすことだった。
「こんな髪!」
浮竹が大嫌いの白い髪。綺麗だから伸ばしてほしいと京楽に懇願され、ずっと伸ばしてきた。腰の位置より少し高い位置で、伸びすぎるといつも京楽が切ってくれた。
「こんな髪・・・・・・」
真っ白な、色素を失った髪。
肺病のせいで、元は黒かった色がぬけて純白になってしまった。
太陽の光を浴びると、銀色の輝いて綺麗だと、囁いてくれる京楽の声が忘れられない。
「京楽の大馬鹿野郎!」
涙が、頬を伝った。
親が無理やり見合いをさせて困ると、浮竹に零したことがある。でも、そんな見合いなんて全部断ってくれた。
「僕には、大切な浮竹がいるからね」
穏やかで優しい微笑みを思い出す。ずきりと、胸が痛んだ。
もう、見合いを済ませたという。今まで、見合いなど一切せずに断っていたのに。見合いを済ませた。
イコール、結婚。
俺とは、遊びだったのか?
次々と沸いてくる想いに、疑心暗鬼になりかけていた。
「隊長・・・・きゃっ!」
清音が、帰ってきた上官の顔を見ようと顔をのぞかせると、そこにいたのは美しかった長い白髪を、ざんばらに切って、斬魄刀を持ったまま放心している浮竹の姿だった。
「ちょ、隊長!髪こんなに切ったりして・・・隊長!」
揺さぶれて、はっとなった。
「清音・・・・・・・」
「せめて、斬魄刀をしまってください。話があるなら、私が聞きますから!」
浮竹は、少し冷静さを取り戻したのか双魚理をしまった。
「どうしたんですか、浮竹隊長」
美人が台無しですよ。清音は、泣きながら浮竹のざんばらに散らばった髪を集めた。
「京楽が、見合いを済ませ結婚するって・・・・・」
「ああ、あの噂ですか」
「本当なのか?」
清音は、目を伏せた。
「本当だと、聞きました」
もう終わりだ。
数百年続いてきた恋人の関係が、こんなことで終わるなんて。
ただ、切なくて苦しくて。涙が、また零れそうだった。
清音がいる。
浮竹は我慢して、唇をかんだ。
錆びた鉄の味がした。
「隊長、しっかりしてください!きっと、京楽隊長は、結婚しませんから!」
「そんなこと、本人に聞かないと分からないだろう」
そうだ。
本人に、直接聞けばいいのだ。
だが、怖い。
話が全部真実で、浮竹を捨てていく京楽がいるのが、怖かった。
ただとてつもなく。ぽっかりと巨大な穴ができたようだ。
半身を失うようなものだ。
比翼の鳥は、片方がいないと空を飛べない。そんな比翼の鳥のような関係だった二人を引き裂くのは、片方の結婚。
きっと京楽のことだから、結婚したとしても別れるとは言わないだろう。あれほど、浮竹に執着している京楽のことだ。手放さないに、決まっている。
だが、浮竹は結婚した相手と関係を続ける気は一切なかった。
「京楽のところに、行ってくる」
「隊長!髪、せめて整えてからでも・・・・」
「このままでいい」
肩より上で、ざんばらに切られた髪をそのままに、霊圧を消して、浮竹は8番隊の隊舎に瞬歩で近づくと、そのまま京楽のいるだろう隊長室に向かった。
「入るぞ」
ばんと、乱暴に扉を開けると、京楽が文机に向かって珍しく仕事をしていた。
「どうしたの・・・・・・その髪、どうしたの!誰かに、切られたの?もしそうなら、相手を半殺しにしてやる」
京楽は、浮竹の傍にくると、浮竹を抱きしめた。
「本当か」
「何が」
「結婚するって、本当か」
低い声が出た。涙を流して別れないでと、懇願するような男ではない、浮竹は。どす黒い感情そのままに、抑えていた霊圧を京楽に向けた。
まさに、殺意をこめて。
「あー、あの話ね」
「京楽っ!」
押し倒されていた。
「こんな関係、終わらせてやる!」
「できるの?僕なしで、生きていけるの?僕に散々啼かされている君が、僕なしで生きていけるとはとても思えないよ」
情欲のままに、貪られ、貪ることを覚えた体にされてしまった。
乱暴に口づけられて、浮竹は京楽の舌を少しきつめに噛んだ。
「痛いじゃないか」
「髪は、自分で切った」
「そうか。綺麗だったのに・・・・・。後で、切りそろえてあげる」
「そんなことより、どうなんだと、聞いているんだ。はぐらかすな」
「一言でいうなら、結婚しないよ。見合いも、山じいがうるさいからしたけど、結婚はしない。相手は同じ上級貴族の姫君だから、破断にするのに、時間かかったけどね。もしも、結婚を強制されたら、家を出る」
家族と、縁を切ると、強く京楽は浮竹の耳に囁きかけた。
安堵すると、自然と緩んだ緊張感から解放されて、涙が頬を伝った。
「ごめんね。もっと早くに、僕から伝えるべきだったね」
「ん・・・・」
深く口づけられても、今度は舌をかまなかった。舌をからませあいながら、京楽が与えてくる快楽を、素直に受け取る。
「怖かった。お前を失うのかと思って」
「そんなこと、ならないよ。結婚なんてしない。むしろ、許されるなら君と結婚したい」
京楽は、強く浮竹を抱きしめた。
おずおずと、抱き返して、それから京楽を力のままに押し倒す。立場が逆転して、京楽は浮竹を見上げた。
「もしもお前が他の相手と結婚したら、相手を殺してやる」
翡翠の瞳には、確かな殺意が静かに宿っていた。
「怖い怖い」
ざんばらになった、短くなった髪に京楽の指がからまった。
「僕のせいで、やけをおこして髪をきったんだね」
「そうだ。全部、お前のせいだ」
情欲というものを覚えたのも。激しく燃え上がる情熱を覚えたのも。
「髪、切りそろえてあげる。それから、また伸ばして?毛先はいつものように僕が揃えあげるから」
ぎらりと光る翡翠に、ああ、なんて綺麗な生き物なんだろうかと、京楽は微笑む。
浮竹は、静かに京楽の上からどいた。
「ちょっと待ってね。仕事、片付けるから。すぐに終わるから、待っててね」
素直に待って、畳の上でざんばらになった白い髪で遊んでいると、10分も経たずに京楽がやってきた。
いつも髪を切ってくれる大きめの鋏と、手鏡と、櫛をもっていた。
「それにしてももったいないなぁ。何で切ったの?ざんばらじゃない」
「斬魄刀で切った」
「なんて無駄な使い方だろう。双魚理が、かわいそうだよ?」
「そうだな・・・・・少し早まりすぎたみたいだ。反省する」
しゃき、しゃき。ぱらぱら。
櫛で真っすぐに伸ばされて、切られていく白い髪。
京楽は、慣れた手つきで浮竹の髪をきっていった。
「ほら、できた。かわいいね。院生時代を思い出すよ。短くても、似合ってる」
手鏡を渡されて、少し潤んだ翡翠の瞳がその中に映っていた。
綺麗に、院生時代のように短く整えられた白い髪。前までの長さに伸ばすには、数年はかかるだろう。
「改めて、約束するよ。もう見合いもしない。結婚もしない。君だけを愛し・・・・・・」
言葉は、浮竹の口づけで塞がれた。
舌をぬくと、浮竹は銀の糸をひく舌で、ぺろりと自分の唇を舐める。
京楽だけが知っている、浮竹の癖だ。
情欲すると、浮竹は自分の唇を舐める。
「京楽・・・・・愛して?」
京楽の隊長羽織を、浮竹が脱がしていく。
浮竹は、京楽に隊長羽織を脱がされ、死覇装に手がかけられる。何度見ても、見飽きない、浮竹の裸身が露わになっていく。
「あっ・・・・・・・・」
体の輪郭全部を確かめるように、音もなく、京楽の手が浮竹の体のラインをたどっていく。
浮竹は、京楽の肩にかみついた。
それも、京楽だけが知る浮竹の癖だ。快楽を覚えて戸惑っていると、肩に噛みついてくる。
「愛してる」
浮竹は、熱にうなされるように囁いた。
珍しく、浮竹から体を求めてきた。
薄い筋肉のついた胸を撫でて、先端に爪をたてると、また浮竹が京楽の肩にかみついた。
甘噛みだ。
舌で先端を転がして、もう片方に爪をまたたてる。
「おっと・・・・・・潤滑油、もってくるね」
行為の途中で置き去りにされた浮竹は、翡翠の瞳で京楽をにらんだ。
でも、潤滑油なしでは、交われない。無理に交わることもできるが、そうすると浮竹の中が傷ついて、血を流す。
京楽は、浮竹の血の色が何より嫌いだった。
それは、浮竹の命の色そのものだ。
「ん・・・」
潤滑油に濡らされた指が、蕾をえぐってくる。内部を侵す指に、浮竹は翻弄される。
「愛してる」
何度めかの囁きが、浮竹の唇から零れ落ちた。
「あうっ」
前立腺をひっかかれて、声がうわずる。浮竹は、ペロリと自分の唇を舐めていた。
水音をたてて、京楽の指が抜かれていく。
「愛して?」
小首を傾げてくる。明らかに、同じ男の京楽に犯されて、情欲していた。いつもは白い髪で、表情が見れない時があるが、今ならはっきりとわかる。
ゆるゆると、たちあがったままの浮竹の花茎に手をそえてしごきあげ、同時に挿入した。
「やあっ」
前立腺を何度もつきあげると、浮竹は翡翠の瞳を伏せた。長い睫毛が、頬に陰影を作り出す。
「あ、あ、あ・・・・・」
刻まれるリズムと一緒に、声が漏れた。
浮竹を貫いたまま、京楽は浮竹の腕をとって起き上がらせた。体重で、京楽の熱を深く呑み込んでいってしまう。
「この体勢、いやだっ・・・・・・・・」
浮竹が涙を零した。
「あ、あ、激し・・・・」
下から突き上げると、浮竹は短い白い髪をぱらぱらと宙に泳がせた。
「春水、やだっ」
ねだられて、体位を変えた。いつものように、浮竹の細い足を肩に乗せる。柔軟な浮竹の体は、少々無理な体位でも受け入れた。
「んっ」
最奥を突き上げると、浮竹も限界が近いようで、生理的な涙を浮かべている。
「一緒にいこう、十四郎。愛してるよ」
「俺も愛して・・・る・・・・・ああっ!」
花茎をしごかれ、先端に爪を立てられて、半ば強引に性を放たされた。同時に、腹の奥で京楽の熱が弾けた。
「あ、あ、いっちゃう。今はだめっ・・・・・・・」
白い液体を迸らせたままの浮竹を、京楽は侵略するように犯していく。また深く挿入され、前立腺をこすりあげられた。
「!」
頭が真っ白になった。肉体的に達しているのに、オーガズムでいくことを覚えさせられた体が、快楽で真っ白になって、ぐずぐずになっていく。
二度目の熱を、浮竹の中に吐き出して、京楽もようやく満足したようだった。
何度味わっても、飽きない。
浮竹の体は、よすぎる。
お互いにとって、肌を重ねることは麻薬に似ていた。
快楽を伴って、常用性が出る。また、体を重ねたくなる。禁断症状がでる。
「きもちよかった?」
体をふいて清めてくる京楽に、浮竹は言葉もなくこくりと頷いた。死覇装で、体のラインを隠す浮竹のうぶな動きに、またのそりと京楽の熱が高まっていく。
いけない、いけない。
激しくすると、浮竹は意識を手放してしまう。そんな相手を労わることのあまりない、快楽だけの交わりは、避けないと。
何千回と体を重ねてきたが、浮竹は激しくされるより、時間をかけてとろけるような愛され方をする方が好きだ。
だが、そのやり方だと京楽のほうが悲鳴をあげそうになる。気を放たずに、浮竹を満足させるのは難しい。
だが、できるだけ、快楽を味わって欲しかった。
「あ、そうだ」
「?」
「11番隊の、やちるちゃんに、金平糖(こんぺいとう)もらったんだ。食べるかい?」
こくこくと、頷く浮竹に、京楽は後始末を全部終わらせて、お互いに服を着あってから、もらった金平糖を、浮竹の綺麗な形の手に、転がした。
本当に、同じ死神だろうか。剣を握って戦うというのに、綺麗な手をしている。無駄なぜい肉は一切ない。だからといって、鍛え上げられた硬い筋肉もない。薄い筋肉だけを持つ浮竹は、軽い。
「甘い・・・・」
「運動した後は、余計に甘く感じるよね」
かっと、顔を赤らめて、浮竹は目を伏せた。
「浮竹は、睫毛が長いね」
「そうか?」
「うん。でも、睫毛は黒いんだね」
眉毛も、黒い。体毛はほとんどないが、黒い。もじゃもじゃの京楽からすれば、体毛があまりないのは羨ましかった。
「髪だけだ。白いのは」
「そんなことはないよ。今は上気してバラ色になってるけど、肌も白いよ」
浮竹は、もっとと、金平糖をねだったてきた。だが、手元にはもうない。
かわいい恋人に、京楽は明日あげる予定だった、浮竹の大好物のおはぎを出してきた。ついでにと、酒ももってきた。
「甘い・・・・・・・」
おはぎをほおばる浮竹の短くなった白い髪に、口づけをする。
「また、伸ばそうね」
京楽は、自分の杯に酒を注ぎ、一気に呷った。
「ああ」
同じ杯を、浮竹に持たせて、酒を注ぐ。少し躊躇した後、浮竹は杯を煽った。
喉が焼けるようだ。京楽は、アルコール度の高い強め日本酒を好む。果実酒みたいな甘い酒を好む浮竹も、日本酒を飲むが、やはり果実酒の方が好きだった。
「浮竹の好きな果実酒もあるよ」
「だったら、最初からそっちを出してくれ」
違う瓶をとりだして、浮竹にもたせた杯に注ぐ。
浮竹は、それを飲んだ。
「甘い酒、好きだね。もしも、今度一緒に現世にいくときがあるなら、カクテルを好きなだけおごってあげる」
尸魂界に、カクテルを出す飲み屋がないわけではないが、現世のほうが種類も豊富だった。
浮竹が飲んだ果実酒は、柑橘系の味がした。気に入ったので、どこに売っていたのかと聞くと、わざわざ現世から取り寄せたものだという。
きっと、値も張っただろう。
比翼の鳥は、翼を取り戻した。
半身を失わずに、済んだ。
比翼の鳥は、大空に向かって飛んでいく。
どこまでも、果てなく。
お互いの、命ある限り、寄り添いあいながら。
太陽のように
その日は、月に一回の朝礼があった。
山本総隊長が、学院がいかにして作られただの、寮に入り学ぶことの大切さ、死神となるには云々・・・・・・・・・・ようは、話が長かった。
朝から、少し顔色の悪かった浮竹。尊敬する師の言葉を、感動のきもちで聞いているだろうが、やはり体調が芳しくないのか、少しふらついているのを、京楽は見逃さなかった。
学院に入って、3年が経とうしていた。
京楽も浮竹も、鬼道はともかく、剣術は、もうお互い以外相手にならないありさまだった。強くなったと、自分でも思う。
座学の成績と鬼道の成績こそ、浮竹に負けているが、剣術ではやや、京楽の方が上か。
上級貴族の家に生まれ、次男だからと、学院に押し込まれたのであるが、浮竹に出会って全てが変わった。
よい友人に恵まれたと思う。恋人でもあるが、その前に親友であった。
ああ、ほら倒れる・・・・・・
京楽の心配事が的中した。
ふらりと傾いだ体を、瞬歩で近寄った京楽が音もなく抱き留めた。
ざわり。
また。浮竹が倒れたと、他の生徒たちが心配そうに見てくる。
「見世物じゃないよ」
意識を手放した浮竹を軽々と抱き上げて、山本総隊長に手をふって、京楽は浮竹を医務室へと運んでいった。
浮竹の、白い髪はもう肩より長くなっていた。京楽が伸ばせというので、その通りにしていたら、髪にはさみを入れるタイミングを完全に失ってしまっていた。
「すいません、ベッドをかりていいですか?」
浮竹を抱き上げたまま、京楽は医務室の担当者に、そう言った。
「ああ、浮竹君がまた倒れたのか。吐血は?」
「いえ、熱はあるみたいだけど、吐血はしてません」
いつも、酷い咳をしたあと、吐血して意識を失うことの多い浮竹にしては、珍しい倒れ方だった。夏の暑い日差しにやられたのか、体温も高い。水分をきちんととっていないとすれば、この倒れ方は浮竹の不注意だ。
「夏の日差しにやられたのかな。浮竹君は、色素がないからね。直射日光は体に悪い」
肺の病のせいで、真っ白になってしまった髪。色素がぬけおちてしまったその色。白い肌に、翡翠色の瞳をもつ浮竹は、誰よりも強くありながら儚かった。
抱き上げていた体重の軽さに、また痩せたのかと、心の奥で呟く。
「奥のベッドに、寝かせてください。氷枕で体を冷やして、様子を見ましょう」
浮竹を奥ベッドに横たえると、京楽はその場を去ろうとせずに、浮竹の寝るベッドの近くの椅子を引き寄せた。顔色が真っ白で血の気のひいた、生きているのかも疑わしくなるような浮竹の様子に、呼吸をちゃんとしているのかと確認したくなる。
小さく上下に動いている薄い筋肉の動きが、浮竹がちゃんと生きているのだと、音もなく知らせてくれる。
「点滴をしておきますね。京楽君、授業はじまってますよ。浮竹君のことは私に任せて、教室に戻りなさい」
医務室の職員に、うるさいのだと、高めた霊圧をぶつけると、職員は顔を蒼くして、奥にひっこんでいった。
「浮竹・・・・」
起きたら、思いっきり叱ってやろう。
2時間ほどたつと、氷枕で体温を冷やし、点滴を受けたせいか、翡翠色の瞳が開いた。
「・・・・・ああ、また俺は倒れたのか」
「浮竹ぇ。夏場は、ちゃんと水分補給をしろっていったよね?この前、海水浴にいって日差しで倒れたこと、忘れたのかな?」
にっこりと微笑む、京楽の機嫌は悪そうだ。
浮竹が倒れると、看病するのは自然と京楽になった。
「水分補給はしたさ」
「じゃあ、なんで倒れるの」
「夏場の、直射日光がだめなんだ。太陽に嫌われているから」
ちゃんと水分をとって、熱射病対策をとれば、浮竹とてそうほいほいと倒れるわけではないだろうと思っていたのが、根本的な間違いだったのだろうか。
今日は、いつにも増して、暑い。太陽はギラギラと地上を焦がし、生き物の体力を奪っていく。
浮竹は、太陽のような温かく優しい男だ。でも、本物の太陽には嫌われているようだ。
太陽のように明るくて、同時に月のように儚い。
「授業、間に合うかな」
「もう昼休みだよ。午後の授業から、参加すればいいよ」
浮竹の額に手をあてると、熱は大分ひいて微熱程度になっていた。これくらいなら、授業に出ても倒れないだろう。
「意識がない間、ずっと傍にいてくれたのか」
「当たり前でしょう」
「ありがとう」
素直に礼をいう浮竹がかわいかった。
その白い髪を手ですいて、口元にもっていく。髪にキスをして、京楽は浮竹に冷えピタシートを投げた。
「これは?」
「現世で、熱をもったときに額に張って体温をさげるやつだよ」
「現世には、そんな便利なものがあるのか」
封をきって、額にはってみる。
「おお、冷たい!ヒンヤリする。これなら、酷い直射日光でもない限り、大丈夫かもしれない」
冷えピタシートを、大量に買い込みに現世にいくか・・・・・。
京楽は、浮竹の喜びように、自然と笑みがこぼれる。お説教をしまくろうと思っていたが、浮竹の体が弱いせいであるので、どうしようもない。
「京楽、いつもすまない」
「吐血したわけじゃあないんだから、そんなに気にすることじゃないよ」
本当に怖いのは、咳が止まらなくなって、血を吐き出すその真紅の色だ。
「俺の体が、もっと強ければ・・・・・」
「あんまり、気に病みなさんな」
京楽に、珍しく浮竹から触れるだけのキスがきた。
「浮竹?」
「感謝の、きもちだ」
「もっと、してもいいんだよ?」
「ばかいうな、恥ずかしい。ここの職員、いるんだろう?」
「僕が霊圧をぶつけたら、隣の部屋に逃げちゃったけどね」
医務室にいるのは、二人だけだ。
「午後の授業の前に、腹ごしらえをしにいこう。食堂で、なにかたべるか」
「ああ、そうだね。昼飯食べるの忘れてたよ」
学院の食堂は、安くてボリュームがある。
いつも残して、京楽がその残りを食べる羽目になるのだが、小食でもちゃんとした食事を、食べるだけましだ。放っておくと、簡単なものだけとかですませてしまう。例えば、お茶漬けとか。
「夏は始まったばかりなんだから、食って少しは元気をだしなさい」
「はいはい」
3回生の夏も、すぎていく。
平穏な日々は退屈であるが、穏やかだ。
また、浮竹を誘って甘味屋までいくかと、京楽は浮竹が喜びそうなのをことを思いついては、一人で浮竹の感情の揺れを思い出す。
ギラギラと、太陽が地上を焦がす。
その年の夏は異常気象で、尸魂界でも今までにないほどの高い気温を記録した。
浮竹は、なるべく直射日光をさけて、行動している。夏風邪も引きやすい彼が、倒れないように常に傍にいた。四六時中べったりというわけではないが、時間の許す限り愛しい恋人と過ごした。
太陽のように暖かい浮竹。強い日差しのように、芯が強い男だ。だが、月の光のように儚い。食べて、鍛錬しても薄い筋肉しかつかないようで、そのくせ細いのに剣術の稽古となると想像できない力を出してくる。
太陽の光に反射して、白い髪は銀色に輝いて見えた。
「髪、切らないでね」
「切ってないだろう。もう、肩より長くなってしまった」
浮竹を包み込むような優しさをもった京楽は、浮竹の白い髪が特にお気に入りだった。浮竹にとってはコンプレックスでしかないその髪を、綺麗だから伸ばせと囁く。
浮竹は、その甘やかな囁きに縛られて、はさみを入れたことがない。京楽が、毛先を揃えるくらいにしか髪は切ったことがない。
「こんな白い髪の、どこがいいんだか」
白い毛をつまんでいると、京楽の手が伸びた白い髪を指ですいてくる。サラサラと零れる、細い髪は手入れもちゃんとされているせいで、触り心地がよかった。
「雪のようで、純白だからいいんだよ。または、ふわふわした雲みたいに」
ふわふわした雲は、京楽だろうと浮竹は思う。つかみどころがなくって、そのくせ優しくて強くて、包み込むような愛をもっている。
「卒業しても、切らないでね?僕が切る以外は」
白い髪に口づけて、京楽は笑った。
「卒業か・・・・」
すでに、護廷十三隊入りは確実と、囁かれている彼ら。
その運命が、どうなるかは、まだ先お話しだ。
山本総隊長が、学院がいかにして作られただの、寮に入り学ぶことの大切さ、死神となるには云々・・・・・・・・・・ようは、話が長かった。
朝から、少し顔色の悪かった浮竹。尊敬する師の言葉を、感動のきもちで聞いているだろうが、やはり体調が芳しくないのか、少しふらついているのを、京楽は見逃さなかった。
学院に入って、3年が経とうしていた。
京楽も浮竹も、鬼道はともかく、剣術は、もうお互い以外相手にならないありさまだった。強くなったと、自分でも思う。
座学の成績と鬼道の成績こそ、浮竹に負けているが、剣術ではやや、京楽の方が上か。
上級貴族の家に生まれ、次男だからと、学院に押し込まれたのであるが、浮竹に出会って全てが変わった。
よい友人に恵まれたと思う。恋人でもあるが、その前に親友であった。
ああ、ほら倒れる・・・・・・
京楽の心配事が的中した。
ふらりと傾いだ体を、瞬歩で近寄った京楽が音もなく抱き留めた。
ざわり。
また。浮竹が倒れたと、他の生徒たちが心配そうに見てくる。
「見世物じゃないよ」
意識を手放した浮竹を軽々と抱き上げて、山本総隊長に手をふって、京楽は浮竹を医務室へと運んでいった。
浮竹の、白い髪はもう肩より長くなっていた。京楽が伸ばせというので、その通りにしていたら、髪にはさみを入れるタイミングを完全に失ってしまっていた。
「すいません、ベッドをかりていいですか?」
浮竹を抱き上げたまま、京楽は医務室の担当者に、そう言った。
「ああ、浮竹君がまた倒れたのか。吐血は?」
「いえ、熱はあるみたいだけど、吐血はしてません」
いつも、酷い咳をしたあと、吐血して意識を失うことの多い浮竹にしては、珍しい倒れ方だった。夏の暑い日差しにやられたのか、体温も高い。水分をきちんととっていないとすれば、この倒れ方は浮竹の不注意だ。
「夏の日差しにやられたのかな。浮竹君は、色素がないからね。直射日光は体に悪い」
肺の病のせいで、真っ白になってしまった髪。色素がぬけおちてしまったその色。白い肌に、翡翠色の瞳をもつ浮竹は、誰よりも強くありながら儚かった。
抱き上げていた体重の軽さに、また痩せたのかと、心の奥で呟く。
「奥のベッドに、寝かせてください。氷枕で体を冷やして、様子を見ましょう」
浮竹を奥ベッドに横たえると、京楽はその場を去ろうとせずに、浮竹の寝るベッドの近くの椅子を引き寄せた。顔色が真っ白で血の気のひいた、生きているのかも疑わしくなるような浮竹の様子に、呼吸をちゃんとしているのかと確認したくなる。
小さく上下に動いている薄い筋肉の動きが、浮竹がちゃんと生きているのだと、音もなく知らせてくれる。
「点滴をしておきますね。京楽君、授業はじまってますよ。浮竹君のことは私に任せて、教室に戻りなさい」
医務室の職員に、うるさいのだと、高めた霊圧をぶつけると、職員は顔を蒼くして、奥にひっこんでいった。
「浮竹・・・・」
起きたら、思いっきり叱ってやろう。
2時間ほどたつと、氷枕で体温を冷やし、点滴を受けたせいか、翡翠色の瞳が開いた。
「・・・・・ああ、また俺は倒れたのか」
「浮竹ぇ。夏場は、ちゃんと水分補給をしろっていったよね?この前、海水浴にいって日差しで倒れたこと、忘れたのかな?」
にっこりと微笑む、京楽の機嫌は悪そうだ。
浮竹が倒れると、看病するのは自然と京楽になった。
「水分補給はしたさ」
「じゃあ、なんで倒れるの」
「夏場の、直射日光がだめなんだ。太陽に嫌われているから」
ちゃんと水分をとって、熱射病対策をとれば、浮竹とてそうほいほいと倒れるわけではないだろうと思っていたのが、根本的な間違いだったのだろうか。
今日は、いつにも増して、暑い。太陽はギラギラと地上を焦がし、生き物の体力を奪っていく。
浮竹は、太陽のような温かく優しい男だ。でも、本物の太陽には嫌われているようだ。
太陽のように明るくて、同時に月のように儚い。
「授業、間に合うかな」
「もう昼休みだよ。午後の授業から、参加すればいいよ」
浮竹の額に手をあてると、熱は大分ひいて微熱程度になっていた。これくらいなら、授業に出ても倒れないだろう。
「意識がない間、ずっと傍にいてくれたのか」
「当たり前でしょう」
「ありがとう」
素直に礼をいう浮竹がかわいかった。
その白い髪を手ですいて、口元にもっていく。髪にキスをして、京楽は浮竹に冷えピタシートを投げた。
「これは?」
「現世で、熱をもったときに額に張って体温をさげるやつだよ」
「現世には、そんな便利なものがあるのか」
封をきって、額にはってみる。
「おお、冷たい!ヒンヤリする。これなら、酷い直射日光でもない限り、大丈夫かもしれない」
冷えピタシートを、大量に買い込みに現世にいくか・・・・・。
京楽は、浮竹の喜びように、自然と笑みがこぼれる。お説教をしまくろうと思っていたが、浮竹の体が弱いせいであるので、どうしようもない。
「京楽、いつもすまない」
「吐血したわけじゃあないんだから、そんなに気にすることじゃないよ」
本当に怖いのは、咳が止まらなくなって、血を吐き出すその真紅の色だ。
「俺の体が、もっと強ければ・・・・・」
「あんまり、気に病みなさんな」
京楽に、珍しく浮竹から触れるだけのキスがきた。
「浮竹?」
「感謝の、きもちだ」
「もっと、してもいいんだよ?」
「ばかいうな、恥ずかしい。ここの職員、いるんだろう?」
「僕が霊圧をぶつけたら、隣の部屋に逃げちゃったけどね」
医務室にいるのは、二人だけだ。
「午後の授業の前に、腹ごしらえをしにいこう。食堂で、なにかたべるか」
「ああ、そうだね。昼飯食べるの忘れてたよ」
学院の食堂は、安くてボリュームがある。
いつも残して、京楽がその残りを食べる羽目になるのだが、小食でもちゃんとした食事を、食べるだけましだ。放っておくと、簡単なものだけとかですませてしまう。例えば、お茶漬けとか。
「夏は始まったばかりなんだから、食って少しは元気をだしなさい」
「はいはい」
3回生の夏も、すぎていく。
平穏な日々は退屈であるが、穏やかだ。
また、浮竹を誘って甘味屋までいくかと、京楽は浮竹が喜びそうなのをことを思いついては、一人で浮竹の感情の揺れを思い出す。
ギラギラと、太陽が地上を焦がす。
その年の夏は異常気象で、尸魂界でも今までにないほどの高い気温を記録した。
浮竹は、なるべく直射日光をさけて、行動している。夏風邪も引きやすい彼が、倒れないように常に傍にいた。四六時中べったりというわけではないが、時間の許す限り愛しい恋人と過ごした。
太陽のように暖かい浮竹。強い日差しのように、芯が強い男だ。だが、月の光のように儚い。食べて、鍛錬しても薄い筋肉しかつかないようで、そのくせ細いのに剣術の稽古となると想像できない力を出してくる。
太陽の光に反射して、白い髪は銀色に輝いて見えた。
「髪、切らないでね」
「切ってないだろう。もう、肩より長くなってしまった」
浮竹を包み込むような優しさをもった京楽は、浮竹の白い髪が特にお気に入りだった。浮竹にとってはコンプレックスでしかないその髪を、綺麗だから伸ばせと囁く。
浮竹は、その甘やかな囁きに縛られて、はさみを入れたことがない。京楽が、毛先を揃えるくらいにしか髪は切ったことがない。
「こんな白い髪の、どこがいいんだか」
白い毛をつまんでいると、京楽の手が伸びた白い髪を指ですいてくる。サラサラと零れる、細い髪は手入れもちゃんとされているせいで、触り心地がよかった。
「雪のようで、純白だからいいんだよ。または、ふわふわした雲みたいに」
ふわふわした雲は、京楽だろうと浮竹は思う。つかみどころがなくって、そのくせ優しくて強くて、包み込むような愛をもっている。
「卒業しても、切らないでね?僕が切る以外は」
白い髪に口づけて、京楽は笑った。
「卒業か・・・・」
すでに、護廷十三隊入りは確実と、囁かれている彼ら。
その運命が、どうなるかは、まだ先お話しだ。
桃が食べたい
「桃が食べたい」
唐突だった。
「みかんの缶詰も食べたい。いや、でも桃のほうが食べたい気がする。桃の缶詰は味が変わってしまっているからいまいちだ」
げほごほ、ごほ。
布団から半身を起こしていた浮竹は、咳をした。
「ほらほら、横になって。まだ熱高いんだし、無理しないで」
「桃が食べたい」
「分かった分かった。買ってきてあげるから、大人しくしてるんだよ」
しきりに、桃が食べたいと訴える浮竹を寝かしつけて、京楽は雨乾堂の外に出た。夏が、はじまろうとしていた。
太陽の光はじわじわと体力を奪っていく。こんな季節は、海にいきたいが、今の浮竹を海に行こうと誘う気にもならなかった。
夏風邪をひいてしまったらしい。こじらせて、かなり長引いていた。
尸魂界の市場で、値段のはる高級な桃を数個買い込んだ京楽は、市に並んでいた髪盛りに視線を移した。
「へぇ、翡翠細工か」
本物の翡翠があしらわれた髪飾りを手に取ると、値段をみる。隊長の1か月分の給料の数倍はした。繊細な細工のそれを、気に入ったとばかりに購入した。
京楽は、上流貴族だ。お金は、腐るほどにある。次男だが、生前分与でかなりの額を両親からもたされており、銀行に預けっぱなしだった。
浮竹のために使う金は、けっこうな額になった。飲食代だけでも相当なものだ。
「浮竹に似合うだろうねぇ」
翡翠細工の髪飾りをあげても、女の子じゃないからと、浮竹があまりつけたりしないのを分かっていても、買ってしまう。
ただ、一時でもいいから身につけさせれば、それで満足だった。
浮竹は、贅沢を好まない。どちらかというと、質素なものを好む。
髪飾りだの、宝石だの、そういうものを好まない。衣服も、高いものは受け取ってくれないことが多い。
唯一、酒は高いものをプレゼントしても喜んでくれた。
「ただいまー」
雨乾堂は、もはや我が家に近かった。毎日のように浮竹に会いに来る京楽を止める者は伊勢七緒くらいだ。
二人ができていることを知ってはいるが、頻繁すぎると怒られた。
気にしない、気にしない。
七緒の怒った顔もかわいいけれど、恋人の浮竹の儚い美しさにはかなうものはいないと思う。
「桃、買ってきたよ。むいてあげるから」
「んー?」
布団からのそのそと顔をのぞかせて、浮竹は氷で冷やした冷たい水を飲んで、京楽のほうを向いた。
「西瓜が食べたい」
「おいおいおいおい。桃が、食べたかったんだろう?」
「西瓜がいい」
「そりゃないよ。高い美味しそうなの、買ってきたのに」
「じゃ、それでもいい」
猫のように伸びをして、まだ少し高い熱に瞳を潤ませて、こちらを見てくる浮竹に、京楽は買ったばかりの髪飾りを、その白い長く伸びた髪にさした。
「ん?」
「髪飾りだよ」
「俺は、女じゃないぞ。そんなものもらっても、嬉しくない」
「分かってるよ。今、つけてくれてるだけでいいから」
「・・・・・うん」
簪や、髪飾りを京楽は好んだ。京楽は自分の髪にも、女ものの値段のはる簪をしている。
髪飾りを、浮竹は手にとってみてみた。
「これ、翡翠じゃないのか」
「いいや。ただのガラス玉さ」
「そうか」
多分、本物であると気づいているだろう。高い髪飾りや簪は、もうたくさんある。全部、京楽が浮竹の髪にと、買ったものだった。
今浮竹がもっている、京楽から贈られた髪飾りや簪を全部売り払えば、屋敷が建てれるくらいの値段にはなるだろう。
高価なそんなものより、京楽が昔編んでくれた花冠のようなものが好きだった。
手作りの置物や、現世から部下に購入させた安価なキーホルダーのようなものを好んだ。
甘味ものを特に好む浮竹には、プレゼントはスイーツ系のものも多い。
食べ物と酒なら、少々値がはっても喜んでくれる。
「ほら、桃がむけたよ」
無言で、じっと見上げてくる。
まだ、熱は完全に下がっていない。
「はいはい。口開けて」
皮をむいて、適当な形にカットされた桃を口元にもっていくと、浮竹はぱくりとそれを食べた。
甘えん坊なのは、熱が高い証拠だ。
「甘い」
「甘いだろうね」
ぺろりと、唇をなめる浮竹の唇に触れる。
少しだけついた桃の雫を味わって、京楽は浮竹に桃を食べさせていく。
甘ったるい匂いが、むしろ心地よい。
お互い、護廷13番隊の隊長であることを忘れて時を過ごす。
「早く、治るといいね。元気になって、8月になったら海にいこうか」
「海か・・・・・・西瓜が食べたい」
「西瓜、好きだねぇ。桃の方が甘くておいしいんじゃないの?」
「西瓜もすきだ。塩をかけると甘味がます」
去年は、女性死神協会主催の海の旅行についていった浮竹だが、暑さにやられて倒れて、お墓のようなもの作られて、山本総隊長からの金一封をてにいれたらしいが、その時は忙しくて京楽は一緒に行けなかった。
「桃、もっと食べたい」
「はいはい。甘えん坊だねぇ、浮竹は」
京楽のいうままに、伸ばした白い髪が、畳の上で乱れている。
「後で、体ふいてあげるよ。今日は熱が高いから、お風呂はだめだよ」
浮竹はけっこう綺麗好きだ。熱があっても、風呂に入る時が多いが、湯冷めし具合を悪くすることなど日常茶飯事だった。
「むー」
「そんな顔したってだめなものはだめ」
ついばむような口づけを交わした。
桃の、甘ったるい味に、京楽は苦笑する。
「浮竹は、甘いね」
「甘味ものか、俺は・・・・・・・・」
「髪、ほつれてる。すいてあげるよ」
20年ほど前に、買ってあげた螺鈿細工の櫛を渡される。贈り物は、大事には、してくれているようだ。
白く長くなった髪をすいていると、きもちいいのか浮竹はすり寄ってきた。
「浮竹ぇ、僕を煽ってるの?病人なんだから、その気にさせないでよ」
浮竹は、キスが好きだ。触れるだけのやつも、深い口づけも。
額に口づけて、京楽は浮竹の髪をすいていく。
もうすぐ、夏も本格的になる。
それまでには、こじらせた夏風邪も治っているだろう。
8月になったら、海にいこう。
みんなを連れていくのもいいかもしれない。楽しく、西瓜割でもしよう。
京楽は、窓の外の太陽を見上げた。
唐突だった。
「みかんの缶詰も食べたい。いや、でも桃のほうが食べたい気がする。桃の缶詰は味が変わってしまっているからいまいちだ」
げほごほ、ごほ。
布団から半身を起こしていた浮竹は、咳をした。
「ほらほら、横になって。まだ熱高いんだし、無理しないで」
「桃が食べたい」
「分かった分かった。買ってきてあげるから、大人しくしてるんだよ」
しきりに、桃が食べたいと訴える浮竹を寝かしつけて、京楽は雨乾堂の外に出た。夏が、はじまろうとしていた。
太陽の光はじわじわと体力を奪っていく。こんな季節は、海にいきたいが、今の浮竹を海に行こうと誘う気にもならなかった。
夏風邪をひいてしまったらしい。こじらせて、かなり長引いていた。
尸魂界の市場で、値段のはる高級な桃を数個買い込んだ京楽は、市に並んでいた髪盛りに視線を移した。
「へぇ、翡翠細工か」
本物の翡翠があしらわれた髪飾りを手に取ると、値段をみる。隊長の1か月分の給料の数倍はした。繊細な細工のそれを、気に入ったとばかりに購入した。
京楽は、上流貴族だ。お金は、腐るほどにある。次男だが、生前分与でかなりの額を両親からもたされており、銀行に預けっぱなしだった。
浮竹のために使う金は、けっこうな額になった。飲食代だけでも相当なものだ。
「浮竹に似合うだろうねぇ」
翡翠細工の髪飾りをあげても、女の子じゃないからと、浮竹があまりつけたりしないのを分かっていても、買ってしまう。
ただ、一時でもいいから身につけさせれば、それで満足だった。
浮竹は、贅沢を好まない。どちらかというと、質素なものを好む。
髪飾りだの、宝石だの、そういうものを好まない。衣服も、高いものは受け取ってくれないことが多い。
唯一、酒は高いものをプレゼントしても喜んでくれた。
「ただいまー」
雨乾堂は、もはや我が家に近かった。毎日のように浮竹に会いに来る京楽を止める者は伊勢七緒くらいだ。
二人ができていることを知ってはいるが、頻繁すぎると怒られた。
気にしない、気にしない。
七緒の怒った顔もかわいいけれど、恋人の浮竹の儚い美しさにはかなうものはいないと思う。
「桃、買ってきたよ。むいてあげるから」
「んー?」
布団からのそのそと顔をのぞかせて、浮竹は氷で冷やした冷たい水を飲んで、京楽のほうを向いた。
「西瓜が食べたい」
「おいおいおいおい。桃が、食べたかったんだろう?」
「西瓜がいい」
「そりゃないよ。高い美味しそうなの、買ってきたのに」
「じゃ、それでもいい」
猫のように伸びをして、まだ少し高い熱に瞳を潤ませて、こちらを見てくる浮竹に、京楽は買ったばかりの髪飾りを、その白い長く伸びた髪にさした。
「ん?」
「髪飾りだよ」
「俺は、女じゃないぞ。そんなものもらっても、嬉しくない」
「分かってるよ。今、つけてくれてるだけでいいから」
「・・・・・うん」
簪や、髪飾りを京楽は好んだ。京楽は自分の髪にも、女ものの値段のはる簪をしている。
髪飾りを、浮竹は手にとってみてみた。
「これ、翡翠じゃないのか」
「いいや。ただのガラス玉さ」
「そうか」
多分、本物であると気づいているだろう。高い髪飾りや簪は、もうたくさんある。全部、京楽が浮竹の髪にと、買ったものだった。
今浮竹がもっている、京楽から贈られた髪飾りや簪を全部売り払えば、屋敷が建てれるくらいの値段にはなるだろう。
高価なそんなものより、京楽が昔編んでくれた花冠のようなものが好きだった。
手作りの置物や、現世から部下に購入させた安価なキーホルダーのようなものを好んだ。
甘味ものを特に好む浮竹には、プレゼントはスイーツ系のものも多い。
食べ物と酒なら、少々値がはっても喜んでくれる。
「ほら、桃がむけたよ」
無言で、じっと見上げてくる。
まだ、熱は完全に下がっていない。
「はいはい。口開けて」
皮をむいて、適当な形にカットされた桃を口元にもっていくと、浮竹はぱくりとそれを食べた。
甘えん坊なのは、熱が高い証拠だ。
「甘い」
「甘いだろうね」
ぺろりと、唇をなめる浮竹の唇に触れる。
少しだけついた桃の雫を味わって、京楽は浮竹に桃を食べさせていく。
甘ったるい匂いが、むしろ心地よい。
お互い、護廷13番隊の隊長であることを忘れて時を過ごす。
「早く、治るといいね。元気になって、8月になったら海にいこうか」
「海か・・・・・・西瓜が食べたい」
「西瓜、好きだねぇ。桃の方が甘くておいしいんじゃないの?」
「西瓜もすきだ。塩をかけると甘味がます」
去年は、女性死神協会主催の海の旅行についていった浮竹だが、暑さにやられて倒れて、お墓のようなもの作られて、山本総隊長からの金一封をてにいれたらしいが、その時は忙しくて京楽は一緒に行けなかった。
「桃、もっと食べたい」
「はいはい。甘えん坊だねぇ、浮竹は」
京楽のいうままに、伸ばした白い髪が、畳の上で乱れている。
「後で、体ふいてあげるよ。今日は熱が高いから、お風呂はだめだよ」
浮竹はけっこう綺麗好きだ。熱があっても、風呂に入る時が多いが、湯冷めし具合を悪くすることなど日常茶飯事だった。
「むー」
「そんな顔したってだめなものはだめ」
ついばむような口づけを交わした。
桃の、甘ったるい味に、京楽は苦笑する。
「浮竹は、甘いね」
「甘味ものか、俺は・・・・・・・・」
「髪、ほつれてる。すいてあげるよ」
20年ほど前に、買ってあげた螺鈿細工の櫛を渡される。贈り物は、大事には、してくれているようだ。
白く長くなった髪をすいていると、きもちいいのか浮竹はすり寄ってきた。
「浮竹ぇ、僕を煽ってるの?病人なんだから、その気にさせないでよ」
浮竹は、キスが好きだ。触れるだけのやつも、深い口づけも。
額に口づけて、京楽は浮竹の髪をすいていく。
もうすぐ、夏も本格的になる。
それまでには、こじらせた夏風邪も治っているだろう。
8月になったら、海にいこう。
みんなを連れていくのもいいかもしれない。楽しく、西瓜割でもしよう。
京楽は、窓の外の太陽を見上げた。
会いにいく
ダン!
床を蹴る足は、軽やかだ。
木刀を京楽に向かって振りおろす。
ぶんっ!と風を切る音が聞こえ、京楽は浮竹のもった木刀を間一髪よけると、居合の要領で浮竹の胴を狙った。
浮竹の体が、軽く飛び上がる。
竹刀は空を切った。
翡翠色の相貌が、楽しそうに輝いていた。
ダン!
床を蹴ると、衝撃で穴があいた。浮竹の真正面からの攻撃に、竹刀を盾代わりにして受け止める。
本当に、軽い体重に細い体をしているというのに、どこにそんな力があるのだろう。
受け止めた竹刀を握る右手が、力に押し負けて、ぐっと下がる。左手を添えて力を出すが、このままでは力に押し負ける。一度離れて距離をとると、浮竹の鋭い一撃がやってくる。
カンカンカキン。
何度も木刀で切り結びあう。
もし、刃のある刀だったら、きっと京楽は出血で倒れていただろう。
「右ががらあきだぞ、京楽!」
左側ばかり責められて、竹刀を受けるのも左側ばかりで、右側にまで気が回らなかった。
カーン。
高い音をたてて、京楽の手から竹刀が浮竹の竹刀にからめとられ、宙を舞って床に転がった。
ニッと、浮竹が笑んだ。とどめとばかりに、首元に竹刀が。
「そこまで!」
山本総隊長の声を無視して、京楽は落ちた竹刀を握りしめると、浮竹に振り下ろした。
浮竹は、真正面から受けずに、右足で浮竹の竹刀を蹴り上げた。
「足癖、悪いなぁ」
竹刀で一騎打ちをしている間に、何度か蹴りが襲ってきた。実戦なら、その蹴りの一撃で片がつくだろう勢いの、蹴りだ。
「そこまで!これ、十四郎、春水、言うことをきかぬか!」
「山じい、やられっぱなしは性に合わないんだよ。あともうちょっと」
竹刀を、2つもつ。
尸魂界に、2つしかない二対一刀の斬魄刀をもつ二人は、両利きだった。
院生の卒業まであと3か月。
すでに、京楽と浮竹は護廷十三隊入りが確定している。院生でいる時代に斬魄刀を扱える者など、今までの学院の歴史にはなかった。
山本総隊長の指導の元、剣術の稽古に励んでいのだが、浮竹が京楽と一騎打ちをしたいといいだして、今に至る。
「そおら、どうする!?」
右、左、左、右下、上、左下、頭。
「京楽、あまいぞ!」
次々と、竹刀を打ち下ろしていく京楽を、浮竹はまるで舞を舞うような軽やかさで避けている。だが、浮竹の長くなった白髪が、宙を舞った。髪を束ねていた髪ゴムが、衝撃に耐えきれずにちぎれたのだ。
繰り出される、京楽の突きを、間一髪でかわすが、空気が渦を巻いて浮竹の頬をかすめた。
白い肌が裂け、血が流れだす。
「おっと。大丈夫かい、浮竹」
「たわけっ!そこまでじゃ!」
山本総隊長の大声が、道場中に響き渡った。
竹刀だというのに、剣圧だけで空気を切り、かまいたちを起こす京楽の腕に、浮竹は舌打ちした。
いつもののほほんとした浮竹ではない。
命のやり取りをするときの、浮竹の姿がそこにあった。
優しいのに、冷酷で、血の色を好むように自分自身を朱に染め上げる。
率先して、前をいく武闘派ではないが、一度敵と認識すると、容赦はしない。
「これくらい、大丈夫だ」
頬の傷を手で拭うと、思ったより出血が多く、血が止まらなかった。
「あーあー。綺麗な顔に傷つけちゃった。傷跡、残らなきゃいいんだけど」
本気で心配してくる京楽が、山本総隊長を無視して真新しい手ぬぐいを、浮竹の傷にあてた。
「全く、十四郎も春水も、手がかかるのお」
道場は、二人が暴れたため、壁はぶち壊れていたり、床に穴があいていたりと、散々な様子だった。竹刀での一騎打ちだけで、ここまでできるのは、なかなかにいない。しかも、二人の霊圧は、護廷十三隊でも、隊長クラスに匹敵した。
「医務室いこう。念のため、ちゃんと手当してもらったほうがいいよ」
「こら十四郎、春水!話はまだ終わっとらんぞ!」
「山じいまた今度ね」
「元柳斎先生、ありがとうございました」
浮竹は、ぺこりとおじぎするが、京楽は手をひらひらとさせるだけだ。
山本総隊長を残して、京楽は浮竹の手を握ると、医務室まで歩いていく。その長いようで短い時間が、心地よかった。
浮竹は、かなり久しぶりに本気で暴れた。その相手が務まるのは、同級生でも京楽くらいのものだろう。
京楽も浮竹も、汗をかいている。お互い、本気をだして一騎打ちをしていた。流派とかあったものではなかったが。
二人とも、山本総隊長から剣を学んでいるが、それに我流を加えている。
「すみませーん。けが人だよー」
がらりと、医務室の戸をあけると中には誰もいなかった。
京楽は、消毒用のアルコールを綿にひたして、浮竹の頬の傷を消毒した。
「しみる。いたい」
「ごめんよ。まさか、剣圧で切れるとは思ってなかった」
「手を抜かずに相手してくれた証拠だから、別にいい」
傷跡が残っても、男の勲章としようと思う浮竹とは別に、京楽は綺麗な顔に傷跡が残ったらどうしようと本気で考え込んでいた。
手際よくガーゼを切って、傷口に宛がう。そのままテープで固定して、手当は終わった。1週間もすれば、傷跡も大分薄れるだろう。
「本当に・・・・ごめんね」
「だから、別にいいといっている」
思い切り抱きしめられて、浮竹はため息をついて、京楽の体に身を委ねた。
「君の血の色は、あまり見たくない」
吐血して、頽(くずお)れる瞬間をよく目の当たりにしているので、浮竹の真紅は命の色そのものだった。京楽にとっては。
「傷跡残ったら、責任とってお嫁さんにもらってあげるよ」
二人ははじめ、ただの親友同士だった。だが、京楽は浮竹に恋をしてしまった。ずっと秘めていた想いに気づかれたのは、2回生になった頃。そして、2回生の夏あたりから京楽の想いは通じて、二人は恋人同士になった。
「お前は次男だろう。長男の俺が、嫁にもらってやるよ」
「こんなもじゃもじゃの毛深いお嫁さんでいいのかい」
「脱毛エステを受けさせる」
クスクスと、他愛ない冗談で笑いあった。
コツンと、額をぶつけ合う。身長差は、ほとんどなくなった。初めの頃は、京楽のほうが身長が大分高かったが、今では数センチくらいしかかわらない。
ただ、病をもっている浮竹はどんなに鍛錬しても、京楽のような男らしい筋肉がつくことができなかった。吐血したり、熱をだしては寝込み、食事もとらないような日々がある。
今は小健康状態を保っているが、いつ熱を出して倒れてもおかしくなかった。
「教室に戻ろう」
浮竹の手を、京楽が握った。
「君の、殺気、凄かった。ぞくぞくしちゃったよ」
「そういうお前の殺気も、相当なものだったぞ」
触れるだけのキスをされて、浮竹は目を伏せた。長い睫毛が、影を落とす。
「卒業したら、今までのように毎日一緒にいられなくなるな」
「そうだね。どの隊に入っても、会いに行くから」
「ああ。俺も、会いにいく」
卒業まであと3か月。院生として学院にいる時間もあとわずかだ。
卒業と同時に、死神になり、護廷13隊の席官の地位が用意されてある。
そのうち、訓練であったように、虚退治で命をかける日々が訪れるだろう。穏やかだけれど、危険と隣り合わせの日々が始まるのだ。
「会いに、いく。必ず」
「僕もだよ」
卒業と同時に、京楽は8番隊の、浮竹は13番隊の席官になった。その後、数年足らずで、若くして隊長の座を任されるようになるのは、まだ少し遠い未来のお話。
床を蹴る足は、軽やかだ。
木刀を京楽に向かって振りおろす。
ぶんっ!と風を切る音が聞こえ、京楽は浮竹のもった木刀を間一髪よけると、居合の要領で浮竹の胴を狙った。
浮竹の体が、軽く飛び上がる。
竹刀は空を切った。
翡翠色の相貌が、楽しそうに輝いていた。
ダン!
床を蹴ると、衝撃で穴があいた。浮竹の真正面からの攻撃に、竹刀を盾代わりにして受け止める。
本当に、軽い体重に細い体をしているというのに、どこにそんな力があるのだろう。
受け止めた竹刀を握る右手が、力に押し負けて、ぐっと下がる。左手を添えて力を出すが、このままでは力に押し負ける。一度離れて距離をとると、浮竹の鋭い一撃がやってくる。
カンカンカキン。
何度も木刀で切り結びあう。
もし、刃のある刀だったら、きっと京楽は出血で倒れていただろう。
「右ががらあきだぞ、京楽!」
左側ばかり責められて、竹刀を受けるのも左側ばかりで、右側にまで気が回らなかった。
カーン。
高い音をたてて、京楽の手から竹刀が浮竹の竹刀にからめとられ、宙を舞って床に転がった。
ニッと、浮竹が笑んだ。とどめとばかりに、首元に竹刀が。
「そこまで!」
山本総隊長の声を無視して、京楽は落ちた竹刀を握りしめると、浮竹に振り下ろした。
浮竹は、真正面から受けずに、右足で浮竹の竹刀を蹴り上げた。
「足癖、悪いなぁ」
竹刀で一騎打ちをしている間に、何度か蹴りが襲ってきた。実戦なら、その蹴りの一撃で片がつくだろう勢いの、蹴りだ。
「そこまで!これ、十四郎、春水、言うことをきかぬか!」
「山じい、やられっぱなしは性に合わないんだよ。あともうちょっと」
竹刀を、2つもつ。
尸魂界に、2つしかない二対一刀の斬魄刀をもつ二人は、両利きだった。
院生の卒業まであと3か月。
すでに、京楽と浮竹は護廷十三隊入りが確定している。院生でいる時代に斬魄刀を扱える者など、今までの学院の歴史にはなかった。
山本総隊長の指導の元、剣術の稽古に励んでいのだが、浮竹が京楽と一騎打ちをしたいといいだして、今に至る。
「そおら、どうする!?」
右、左、左、右下、上、左下、頭。
「京楽、あまいぞ!」
次々と、竹刀を打ち下ろしていく京楽を、浮竹はまるで舞を舞うような軽やかさで避けている。だが、浮竹の長くなった白髪が、宙を舞った。髪を束ねていた髪ゴムが、衝撃に耐えきれずにちぎれたのだ。
繰り出される、京楽の突きを、間一髪でかわすが、空気が渦を巻いて浮竹の頬をかすめた。
白い肌が裂け、血が流れだす。
「おっと。大丈夫かい、浮竹」
「たわけっ!そこまでじゃ!」
山本総隊長の大声が、道場中に響き渡った。
竹刀だというのに、剣圧だけで空気を切り、かまいたちを起こす京楽の腕に、浮竹は舌打ちした。
いつもののほほんとした浮竹ではない。
命のやり取りをするときの、浮竹の姿がそこにあった。
優しいのに、冷酷で、血の色を好むように自分自身を朱に染め上げる。
率先して、前をいく武闘派ではないが、一度敵と認識すると、容赦はしない。
「これくらい、大丈夫だ」
頬の傷を手で拭うと、思ったより出血が多く、血が止まらなかった。
「あーあー。綺麗な顔に傷つけちゃった。傷跡、残らなきゃいいんだけど」
本気で心配してくる京楽が、山本総隊長を無視して真新しい手ぬぐいを、浮竹の傷にあてた。
「全く、十四郎も春水も、手がかかるのお」
道場は、二人が暴れたため、壁はぶち壊れていたり、床に穴があいていたりと、散々な様子だった。竹刀での一騎打ちだけで、ここまでできるのは、なかなかにいない。しかも、二人の霊圧は、護廷十三隊でも、隊長クラスに匹敵した。
「医務室いこう。念のため、ちゃんと手当してもらったほうがいいよ」
「こら十四郎、春水!話はまだ終わっとらんぞ!」
「山じいまた今度ね」
「元柳斎先生、ありがとうございました」
浮竹は、ぺこりとおじぎするが、京楽は手をひらひらとさせるだけだ。
山本総隊長を残して、京楽は浮竹の手を握ると、医務室まで歩いていく。その長いようで短い時間が、心地よかった。
浮竹は、かなり久しぶりに本気で暴れた。その相手が務まるのは、同級生でも京楽くらいのものだろう。
京楽も浮竹も、汗をかいている。お互い、本気をだして一騎打ちをしていた。流派とかあったものではなかったが。
二人とも、山本総隊長から剣を学んでいるが、それに我流を加えている。
「すみませーん。けが人だよー」
がらりと、医務室の戸をあけると中には誰もいなかった。
京楽は、消毒用のアルコールを綿にひたして、浮竹の頬の傷を消毒した。
「しみる。いたい」
「ごめんよ。まさか、剣圧で切れるとは思ってなかった」
「手を抜かずに相手してくれた証拠だから、別にいい」
傷跡が残っても、男の勲章としようと思う浮竹とは別に、京楽は綺麗な顔に傷跡が残ったらどうしようと本気で考え込んでいた。
手際よくガーゼを切って、傷口に宛がう。そのままテープで固定して、手当は終わった。1週間もすれば、傷跡も大分薄れるだろう。
「本当に・・・・ごめんね」
「だから、別にいいといっている」
思い切り抱きしめられて、浮竹はため息をついて、京楽の体に身を委ねた。
「君の血の色は、あまり見たくない」
吐血して、頽(くずお)れる瞬間をよく目の当たりにしているので、浮竹の真紅は命の色そのものだった。京楽にとっては。
「傷跡残ったら、責任とってお嫁さんにもらってあげるよ」
二人ははじめ、ただの親友同士だった。だが、京楽は浮竹に恋をしてしまった。ずっと秘めていた想いに気づかれたのは、2回生になった頃。そして、2回生の夏あたりから京楽の想いは通じて、二人は恋人同士になった。
「お前は次男だろう。長男の俺が、嫁にもらってやるよ」
「こんなもじゃもじゃの毛深いお嫁さんでいいのかい」
「脱毛エステを受けさせる」
クスクスと、他愛ない冗談で笑いあった。
コツンと、額をぶつけ合う。身長差は、ほとんどなくなった。初めの頃は、京楽のほうが身長が大分高かったが、今では数センチくらいしかかわらない。
ただ、病をもっている浮竹はどんなに鍛錬しても、京楽のような男らしい筋肉がつくことができなかった。吐血したり、熱をだしては寝込み、食事もとらないような日々がある。
今は小健康状態を保っているが、いつ熱を出して倒れてもおかしくなかった。
「教室に戻ろう」
浮竹の手を、京楽が握った。
「君の、殺気、凄かった。ぞくぞくしちゃったよ」
「そういうお前の殺気も、相当なものだったぞ」
触れるだけのキスをされて、浮竹は目を伏せた。長い睫毛が、影を落とす。
「卒業したら、今までのように毎日一緒にいられなくなるな」
「そうだね。どの隊に入っても、会いに行くから」
「ああ。俺も、会いにいく」
卒業まであと3か月。院生として学院にいる時間もあとわずかだ。
卒業と同時に、死神になり、護廷13隊の席官の地位が用意されてある。
そのうち、訓練であったように、虚退治で命をかける日々が訪れるだろう。穏やかだけれど、危険と隣り合わせの日々が始まるのだ。
「会いに、いく。必ず」
「僕もだよ」
卒業と同時に、京楽は8番隊の、浮竹は13番隊の席官になった。その後、数年足らずで、若くして隊長の座を任されるようになるのは、まだ少し遠い未来のお話。
比翼の鳥Ⅱ
「好きだよ。愛している」
そう言われて、2年が過ぎた。
浮竹の髪は、京楽が伸ばせといったまま、もう肩の位置まで伸びてしまった。
ぬるま湯のような関係は、破局の冷水にならずに、想いの通じ会う熱湯になった。
京楽の想いを受け入れて、熱湯になった。
浮竹は、かくも儚く、白い髪に、白い肌、翡翠の瞳に、鍛錬をつんであるわりにはあまり筋肉がついていなかった。
そんな浮竹を、京楽は美しいと思った。
秀麗な容姿のせいで、浮竹は女にもてた。女好きの京楽ほどではないが、もてた。
京楽の想いを知っているのか知っていないのか、今はそんなことを考えれないからと、告白してきた女生徒を振ったのは、半年前のこと。
この前も告白されたが、好きな人がいると、はっきりと断った。
浮竹は、かくも儚い。
真っ白になった髪は、肺の病のせいだ。
今でも、血を吐いて倒れる。
そのたびに、京楽の世話になった。
そんな京楽の想いに、気づいたのは院生になって2年目の夏だった。
今までにない、大きな吐血をして、生死の境を彷徨った。京楽は泊まりこみで浮竹の面倒をみて、命が儚くなっていく浮竹に、憔悴しきった表情で、戻って来いと囁いた。
京楽の想いが通じたのか、浮竹は一命を取り留めた。山本元柳斎重國が、死神の救護施設である4番隊の隊長を呼んでくれたお陰だった。
山じいも、たまにはいいことするね。
京楽は、そう山本元柳斎重國に礼をして、浮竹の元に戻った。
悲しいほどに、体重が落ちて痩せてしまった。
数週間も寝込み、意識を取り戻した浮竹は、自分が生きているのが不思議なくらいだと思った。
点滴の管をつながれた腕は、自分が覚えている腕より細くなっていた。
「愛してるよ、浮竹」
憔悴しきった京楽の言葉に、浮竹は自然と答えていた。
「俺も、愛して・・・る・・・・・・」
「本当に?」
京楽の瞳が、一気に輝きを戻した。憔悴しきっていた表情は、歓喜で笑みが刻まれていた。
「その言葉、信じてもいいんだね?」
「ああ・・・・・・・」
まだ弱弱しい浮竹を気遣い、京楽はその手を握るのが精いっぱいだった。
それから、半月が経った。
病は大分いえ、学業にも復帰した。遅れを取り戻そうと躍起な浮竹の傍に、京楽は常に傍にいた。
比翼の鳥は、愛を覚えた。
意識を取り戻して、元気になって半月。
はじめての、意識がある浮竹とのキスは、甘すぎた。
「も、やぁっ」
何度も、深く口づけられた。いやになるほどに。
「まだ、先があるんだよ?今日はここで我慢するけど」
潤んだ翡翠の瞳に浮かんだ涙を吸い取って、京楽は悲愴的になりそうなほど痩せていた浮竹の、少し肉がついてきた体をかき抱いた。
自分の想いをぶつけるには、まだ浮竹はうぶすぎる。
少しずつ、教えていけばいい。どれだけ、狂おしいほどに、京楽が浮竹を愛しているのかを。
「本当に、いいのかい?」
「ん・・・・」
大分肉がついて・・・・・それでもまだ細かったが、病的にやせていた頃に比べれば随分とましになった。
「僕は、君が愛しくて愛しくて、でも壊してしまうかもしれないよ?」
「大丈夫、だから・・・」
もう、覚悟は決めていた。
京楽の愛に答えたことで、肉体関係を持つことは避けれないものだと。お互い、まだ若すぎる。京楽は、女を買うことをやめ、浮竹だけを愛するようになった。浮竹だけを求めていた。
浮竹は、京楽に我慢をずっと強いていた。少しずつ、大人の関係を覚えていった。
7月の京楽の誕生日に、浮竹はプレゼントを用意しなかった。
ただ、代わりに、俺の全てをやると言われて、京楽は天を仰いだ。ようやく、浮竹の全てを手に入れられるのだ。
2年と半年かかった。
「嫌がっても、やめてあげない」
比翼の鳥たちは、欲望を覚えた。
「あっ、やっ・・・・」
薄い胸の先端を何度もつまみあげられ、かじられる。輪郭全部を愛部する手が、白い頬にあてられた。
「愛してるよ、浮竹」
浮竹は、こくりとうなずいて、体から力を抜いた。
「痛いかい?」
「んっ・・・・大丈夫・・・」
潤滑油で濡らされた指が、意思をもって浮竹の内部をせめる。蕾に三本も指をくわえて、浮竹は翻弄される熱の行き場を求めて、京楽の背に爪をたてた。
「あっ・・・・・・・・」
前立腺を刺激されて、浮竹は唇をかんだ。血がにじむ。
「だめだよ浮竹。ちゃんと、声聞かせて?」
血の出た唇を舐められ、深く口づけされる。浮竹は、京楽のキスが好きだった。何度もせがむ。
「あっ」
挿入された瞬間、衝撃で意識が飛びそうになった。性急ではなく、緩慢な、浮竹の体を気遣った行為であったが、それでも浮竹の負担は大きかった。
何せ、がたいのいい京楽のことだ。それをくわえこむ浮竹の内部を侵す熱は、相当のものだ。
「んっ・・・・・動いて、いいぞ」
時間をかけて、質量に慣らしていると、浮竹の了承がおりた。
「あ、あ!」
前立腺を突き上げてくる、少し乱暴な動きに、浮竹は涙を浮かべた。
「ごめん、もっと優しくするね」
きついのは京楽も同じだ。吸い付いてくる浮竹の内部を思いっきり犯して、熱を放ってやりたいが、初めてなのだ。優しく、優しくしてやるべきだ。
緩慢な動作で、挿入と抜くことを繰り返されて、浮竹は後ろで快楽を覚えられるのだと初めて知った。
「十四郎!」
何度も前立腺をこすりあげられて、浮竹のほうが最初に熱を放った。
真っ白になっていく世界。
それから、最奥を貫かれて、意識が飛びそうになる。
「愛してる・・・・・・・」:
じんわりと、腹の奥で放たれた熱を感じて、浮竹は瞼を閉じた。
瞼をあけると、京楽と視線があった。
お互い、少し恥ずかしそうに。
「春水・・・・・・・・もう、俺のものだ」
京楽は、浮竹の全てを手に入れたと思っていた。だが、それは浮竹も同じだった。
「あっ、あっ、もうやぁっ」
足首を捕まえられて、逃げることもできない。もう何度犯されたのか、覚えていない。最初は優しかったが、京楽が壊してしまうという台詞通りになっている状況。
結合部が、お互いの体液でぐちゃぐちゃだ。
浮竹の花茎を手でしごき、無理やり性を放たせると、浮竹が軽い悲鳴をあげた。
「春水っ!」
「十四郎。もう僕のものだ。絶対、誰にも渡さないよ」
欲望のこもった熱い瞳に射抜かれる。
浮竹の翡翠の瞳は、涙を浮かべて与えられる快楽という行為を受け止めていた。
「あっ。あーーーーーーーーー・・・・・・」
もう、性を放てない。でも、頭は真っ白になっている。初めてのオーガズムを経験して、浮竹の足が痙攣した。
「十四郎・・・・」
最後の熱を、浮竹の最奥にたたきつけて、京楽も果てた。もう、これ以上は交われない。
「気持ちよかった?」
逡巡気味にきくと、こくりと浮竹は頷いた。
手練手管で、浮竹を落とした。
もう、俺だけのものだ。
比翼の鳥は、交じりあうことを覚えた。
欲望を、お互いにぶつけあうことを覚えた。
もう、ただの比翼の鳥ではない。
「キス、して・・・・・」
浮竹の甘い声に、京楽は答る。浮竹はキスが好きだ。
舌をからめあう。
「痛いとこ、ない?」
「んー。腰が重い」
二人で、寮の個室備え付けの、狭い浴槽に入っていた。京楽の放った体液をかき出されて、その感覚にまたドライでいきそうになったが、浮竹はかろうじで我慢した。
体を洗われて、髪も洗われた。熱いシャワーを浴びて、お互いに身を清めた。
「また、今度も抱いていいかい?」
京楽も浮竹も若い。欲望は、すぐに出るだろう。
「もう少し、回数を制限するなら。月に2回くらいまでなら、OKだ」
「んーそう言わずに。1週間に1回にしようよ」
「無理!」
「そう言わずに」
比翼の鳥は、飛び立つことを覚え、お互いを支えながら愛を語る。
比翼の鳥は、愛を囁きながら、翼を羽ばたかす。
そして、数百年の時を刻むのだ。
そう言われて、2年が過ぎた。
浮竹の髪は、京楽が伸ばせといったまま、もう肩の位置まで伸びてしまった。
ぬるま湯のような関係は、破局の冷水にならずに、想いの通じ会う熱湯になった。
京楽の想いを受け入れて、熱湯になった。
浮竹は、かくも儚く、白い髪に、白い肌、翡翠の瞳に、鍛錬をつんであるわりにはあまり筋肉がついていなかった。
そんな浮竹を、京楽は美しいと思った。
秀麗な容姿のせいで、浮竹は女にもてた。女好きの京楽ほどではないが、もてた。
京楽の想いを知っているのか知っていないのか、今はそんなことを考えれないからと、告白してきた女生徒を振ったのは、半年前のこと。
この前も告白されたが、好きな人がいると、はっきりと断った。
浮竹は、かくも儚い。
真っ白になった髪は、肺の病のせいだ。
今でも、血を吐いて倒れる。
そのたびに、京楽の世話になった。
そんな京楽の想いに、気づいたのは院生になって2年目の夏だった。
今までにない、大きな吐血をして、生死の境を彷徨った。京楽は泊まりこみで浮竹の面倒をみて、命が儚くなっていく浮竹に、憔悴しきった表情で、戻って来いと囁いた。
京楽の想いが通じたのか、浮竹は一命を取り留めた。山本元柳斎重國が、死神の救護施設である4番隊の隊長を呼んでくれたお陰だった。
山じいも、たまにはいいことするね。
京楽は、そう山本元柳斎重國に礼をして、浮竹の元に戻った。
悲しいほどに、体重が落ちて痩せてしまった。
数週間も寝込み、意識を取り戻した浮竹は、自分が生きているのが不思議なくらいだと思った。
点滴の管をつながれた腕は、自分が覚えている腕より細くなっていた。
「愛してるよ、浮竹」
憔悴しきった京楽の言葉に、浮竹は自然と答えていた。
「俺も、愛して・・・る・・・・・・」
「本当に?」
京楽の瞳が、一気に輝きを戻した。憔悴しきっていた表情は、歓喜で笑みが刻まれていた。
「その言葉、信じてもいいんだね?」
「ああ・・・・・・・」
まだ弱弱しい浮竹を気遣い、京楽はその手を握るのが精いっぱいだった。
それから、半月が経った。
病は大分いえ、学業にも復帰した。遅れを取り戻そうと躍起な浮竹の傍に、京楽は常に傍にいた。
比翼の鳥は、愛を覚えた。
意識を取り戻して、元気になって半月。
はじめての、意識がある浮竹とのキスは、甘すぎた。
「も、やぁっ」
何度も、深く口づけられた。いやになるほどに。
「まだ、先があるんだよ?今日はここで我慢するけど」
潤んだ翡翠の瞳に浮かんだ涙を吸い取って、京楽は悲愴的になりそうなほど痩せていた浮竹の、少し肉がついてきた体をかき抱いた。
自分の想いをぶつけるには、まだ浮竹はうぶすぎる。
少しずつ、教えていけばいい。どれだけ、狂おしいほどに、京楽が浮竹を愛しているのかを。
「本当に、いいのかい?」
「ん・・・・」
大分肉がついて・・・・・それでもまだ細かったが、病的にやせていた頃に比べれば随分とましになった。
「僕は、君が愛しくて愛しくて、でも壊してしまうかもしれないよ?」
「大丈夫、だから・・・」
もう、覚悟は決めていた。
京楽の愛に答えたことで、肉体関係を持つことは避けれないものだと。お互い、まだ若すぎる。京楽は、女を買うことをやめ、浮竹だけを愛するようになった。浮竹だけを求めていた。
浮竹は、京楽に我慢をずっと強いていた。少しずつ、大人の関係を覚えていった。
7月の京楽の誕生日に、浮竹はプレゼントを用意しなかった。
ただ、代わりに、俺の全てをやると言われて、京楽は天を仰いだ。ようやく、浮竹の全てを手に入れられるのだ。
2年と半年かかった。
「嫌がっても、やめてあげない」
比翼の鳥たちは、欲望を覚えた。
「あっ、やっ・・・・」
薄い胸の先端を何度もつまみあげられ、かじられる。輪郭全部を愛部する手が、白い頬にあてられた。
「愛してるよ、浮竹」
浮竹は、こくりとうなずいて、体から力を抜いた。
「痛いかい?」
「んっ・・・・大丈夫・・・」
潤滑油で濡らされた指が、意思をもって浮竹の内部をせめる。蕾に三本も指をくわえて、浮竹は翻弄される熱の行き場を求めて、京楽の背に爪をたてた。
「あっ・・・・・・・・」
前立腺を刺激されて、浮竹は唇をかんだ。血がにじむ。
「だめだよ浮竹。ちゃんと、声聞かせて?」
血の出た唇を舐められ、深く口づけされる。浮竹は、京楽のキスが好きだった。何度もせがむ。
「あっ」
挿入された瞬間、衝撃で意識が飛びそうになった。性急ではなく、緩慢な、浮竹の体を気遣った行為であったが、それでも浮竹の負担は大きかった。
何せ、がたいのいい京楽のことだ。それをくわえこむ浮竹の内部を侵す熱は、相当のものだ。
「んっ・・・・・動いて、いいぞ」
時間をかけて、質量に慣らしていると、浮竹の了承がおりた。
「あ、あ!」
前立腺を突き上げてくる、少し乱暴な動きに、浮竹は涙を浮かべた。
「ごめん、もっと優しくするね」
きついのは京楽も同じだ。吸い付いてくる浮竹の内部を思いっきり犯して、熱を放ってやりたいが、初めてなのだ。優しく、優しくしてやるべきだ。
緩慢な動作で、挿入と抜くことを繰り返されて、浮竹は後ろで快楽を覚えられるのだと初めて知った。
「十四郎!」
何度も前立腺をこすりあげられて、浮竹のほうが最初に熱を放った。
真っ白になっていく世界。
それから、最奥を貫かれて、意識が飛びそうになる。
「愛してる・・・・・・・」:
じんわりと、腹の奥で放たれた熱を感じて、浮竹は瞼を閉じた。
瞼をあけると、京楽と視線があった。
お互い、少し恥ずかしそうに。
「春水・・・・・・・・もう、俺のものだ」
京楽は、浮竹の全てを手に入れたと思っていた。だが、それは浮竹も同じだった。
「あっ、あっ、もうやぁっ」
足首を捕まえられて、逃げることもできない。もう何度犯されたのか、覚えていない。最初は優しかったが、京楽が壊してしまうという台詞通りになっている状況。
結合部が、お互いの体液でぐちゃぐちゃだ。
浮竹の花茎を手でしごき、無理やり性を放たせると、浮竹が軽い悲鳴をあげた。
「春水っ!」
「十四郎。もう僕のものだ。絶対、誰にも渡さないよ」
欲望のこもった熱い瞳に射抜かれる。
浮竹の翡翠の瞳は、涙を浮かべて与えられる快楽という行為を受け止めていた。
「あっ。あーーーーーーーーー・・・・・・」
もう、性を放てない。でも、頭は真っ白になっている。初めてのオーガズムを経験して、浮竹の足が痙攣した。
「十四郎・・・・」
最後の熱を、浮竹の最奥にたたきつけて、京楽も果てた。もう、これ以上は交われない。
「気持ちよかった?」
逡巡気味にきくと、こくりと浮竹は頷いた。
手練手管で、浮竹を落とした。
もう、俺だけのものだ。
比翼の鳥は、交じりあうことを覚えた。
欲望を、お互いにぶつけあうことを覚えた。
もう、ただの比翼の鳥ではない。
「キス、して・・・・・」
浮竹の甘い声に、京楽は答る。浮竹はキスが好きだ。
舌をからめあう。
「痛いとこ、ない?」
「んー。腰が重い」
二人で、寮の個室備え付けの、狭い浴槽に入っていた。京楽の放った体液をかき出されて、その感覚にまたドライでいきそうになったが、浮竹はかろうじで我慢した。
体を洗われて、髪も洗われた。熱いシャワーを浴びて、お互いに身を清めた。
「また、今度も抱いていいかい?」
京楽も浮竹も若い。欲望は、すぐに出るだろう。
「もう少し、回数を制限するなら。月に2回くらいまでなら、OKだ」
「んーそう言わずに。1週間に1回にしようよ」
「無理!」
「そう言わずに」
比翼の鳥は、飛び立つことを覚え、お互いを支えながら愛を語る。
比翼の鳥は、愛を囁きながら、翼を羽ばたかす。
そして、数百年の時を刻むのだ。
ぬるま湯
「髪、綺麗だねぇ。肌も白いし。翡翠色の瞳も素敵だ。でも、ちゃんと食ってるかい?細いよ」
学院に入ったころの、京楽はよく浮竹をにそんな言葉を囁いた。
「ちゃんと食べてるぞ。寝込むことはあるし、食欲がない時もあるが、なるべく食べるようにはしている」
もう、京楽に綺麗だとかかわいいとか、そういうことを言われ慣れた。
「ほら、また京楽が浮竹口説いてる」
クスクスと、他の院生が笑っていた。
勉強のよくできる、座学も鬼道も剣の腕もTOPの浮竹。下級貴族ではあるが、貴族という身分をもつ。
一方の京楽は、四大貴族ほどではないが、名も有名な上級貴族。もしも女として生まれてきていたら、姫君として育てられて、学院にはこなかっただろう。霊圧が半端なく、次男ということもあって護廷13隊に入る死神になるためにと、学院に半ば無理やりいれられた。
座学は中の上。だが、鬼道と剣術は、浮竹に勝るとも劣らない。
よく授業をさぼる京楽を、先生の代わりに叱って連れ戻すのは、浮竹の役目になっていた。
今日の朝も、さぼろうとしている京楽を、教室に連れ戻した。
浮竹は、入学テストを首席で合格した。頭がずばぬけていい。だが、自慢したりは一切せずの努力家で、先生からも他の生徒からの信頼も厚かった。
浮竹が、倒れた。血こそ吐かなかったが、せきをして、倒れた。
救護室に浮竹を抱き抱えて運んだ京楽は、ベッドの上に浮竹を寝かすと、意識を取り戻すまでの数時間、ずっと傍にいた。
「あれ?ここは・・・・・・そうか、俺はまた倒れたのか」
ゆっくりと起き上がる浮竹。その手を握って、心配そうにのぞき込んでくる京楽に、浮竹はすまないと、謝った。
「すまない、京楽。また世話になったようだ」
「いいんだよ、そんなことは。浮竹が目覚めてよかった」
握っていた手を放し、半身を起き上がらせた浮竹に、囁く。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ?」
「髪、伸ばしなよ」
「どうして?」
「綺麗だから。真っ白で、太陽の光にあたったら銀色に見える」
「俺が、この白い髪を嫌いなこと、知ってていってるのか?」
「うん」
京楽は、浮竹の短い白髪を手ですいた。
柔らかくて、サラサラだった。
「伸ばしなよ。きっと、長い方が似合う」
京楽は、浮竹のことが好きだった。だが、浮竹は京楽の想いを知らない。
友人の延長戦だと思っている。
まだ、浮竹の意識があるときに、キスをしたこともない。浮竹が倒れて意識がないのをいいことに、触れるだけのキスを何度かしたことがあった。
あとは、ただ、抱き上げられたり、抱きしめられたり。
「んー。君からはお日様のにおいと、なんか甘いかおりがするねぇ」
抱きしめられて、浮竹は京楽の肩に頭を乗せた。
「甘えん坊だなぁ、京楽は」
「そうなの。もっと甘えていい?」
「いいぞ」
「好きだよ、浮竹」
「俺も好きだぞ、京楽」
京楽の好きと浮竹の好きは、意味が違う。
京楽は恋愛感情で。浮竹は友情でだった。
それが分かっていたので、京楽は寂しそうに微笑んだ。
本当なら、想いのたけをぶつけてぐちゃぐちゃに犯して、自分のものにしたい。それができないから、いっそ殺して自分だけのものにしてしまおうか。
浮竹の白い細い首に、手をかける京楽。
「京楽?」
不思議そうな翡翠の瞳はあくまで穏やかで、京楽は浮竹の喉から手を離すと、その手を背中にまわし、力いっぱい抱きしめた。
「苦しいぞ、京楽」
「ごめんね」
「変な奴だな」
浮竹の少し高い体温が心地よかった。
愛していると、心の中で呟いて、京楽は浮竹を離さなかった。
愛しているといって、拒絶されるのがすごく怖かった。京楽にとって、浮竹からの拒絶は絶望だ。
だから、まだ愛しているとは言わない。いや、言えない。
「授業はもう終わったし、まだ熱があるようだから、もう少し寝なさい」
「いや、明日の分の予習が・・・・・」
「勉学より、体調のほうが大事でしょ!」
京楽に怒られて、浮竹は素直にベッドにまた横になった。
「2時間くらいしたら、迎えにくるから。起きなくても構わないよ。寮の部屋に送り届けるから」
抱きかかえて、と付け足された。
「すまない。世話になってばかりで」
「いいんだよ。僕が、好きでやってることなんだから。とにかく、今は熱を下げて体調を回復させることだけを考えて」
「ああ・・・・・・」
明日は、剣術の稽古がある。浮竹の尊敬する、山本元柳斎重國の授業だが、参加はできなさそうだ。
「山じいとは、今度個別で指導してもらえばいいから。とにかく、今日と明日は休んで」
「分かった」
山本元柳斎重國は、浮竹と京楽の師である。たくさんいる教え子の中でも、彼らは特別のお気に入りで、まさに実の子供のようにかわいがっていた。
そのせいもあって、個別に指導もしてくれる。
「京楽」
「なんだい?」
「いろいろとすまない。心配ばかりかけて」
「体が弱いのは仕方ないよ。だけど、できるだけちゃんと飯を食べること。君、細すぎるよ。筋肉がないわけじゃないけど、触ると肋骨が分かる」
肋骨が浮き出るほどに痩せているわけではないが、輪郭を確かめると肋骨が目立つ。
「食べては、いるんだがなぁ」
好きな甘味もののおはぎを、腹いっぱい食べても全然太らない。高カロリーの食事をとっても、肉がつかない。
体重が軽く痩せていることも、浮竹のコンプレックスの一つだった。
この白い髪ほどではないが。
京楽は、浮竹と違って背が高く、がっしりしている。浮竹の背が低いわけでもないし、まだ成長期だから、伸びてはいるのだが、肺の病のせいで鍛錬しても筋肉は薄くしかつかず、体重は軽かった。
「おやすみ、浮竹」
「ああ、おやすみ」
浮竹の額に口づけて、京楽は去っていった。
「・・・・・・京楽は・・・」
多分、好きだという意味が違うのではないか。自分が思っている好きとは、違うのではないかと、京楽の言動で、少しずつではあるがそれは確信に近づいていた。
「俺は、どうすれば・・・・・・・・」
京楽の想いに、答えることはできるのだろうか。
分からない。
京楽が嫌いなわけではない。抱きしめられたり、頬に手を伸ばされたり、白い髪をすいていったりとした行動は、どちらかというと心地よい。
だが、京楽の想いは深い。
まだ、今の浮竹にはその想いに答えるだけの勇気はなかった。
ぬるま湯のようだ、今の関係は。
冷水にもなれず、熱湯にもなれない。
想いを拒絶することも、受け止めることもできない。
なんて半端なんだろう、自分は。
浮竹は、悩みながらもまどろんでいく。高くなってきた熱にうなされる。
「いつか、答えはでるんだろうか・・・・」
想いが互いに通じあうのは、まだ当分先のことだった。
今は、ぬるま湯でいい。
比翼の鳥のように、お互いを必要としあうだけでいい。
いつか。
いつかきっと、今の関係は壊れる。
それが、冷水なのか熱湯なのかはわからない。
今はまだ、分からなくていいのだ。
学院に入ったころの、京楽はよく浮竹をにそんな言葉を囁いた。
「ちゃんと食べてるぞ。寝込むことはあるし、食欲がない時もあるが、なるべく食べるようにはしている」
もう、京楽に綺麗だとかかわいいとか、そういうことを言われ慣れた。
「ほら、また京楽が浮竹口説いてる」
クスクスと、他の院生が笑っていた。
勉強のよくできる、座学も鬼道も剣の腕もTOPの浮竹。下級貴族ではあるが、貴族という身分をもつ。
一方の京楽は、四大貴族ほどではないが、名も有名な上級貴族。もしも女として生まれてきていたら、姫君として育てられて、学院にはこなかっただろう。霊圧が半端なく、次男ということもあって護廷13隊に入る死神になるためにと、学院に半ば無理やりいれられた。
座学は中の上。だが、鬼道と剣術は、浮竹に勝るとも劣らない。
よく授業をさぼる京楽を、先生の代わりに叱って連れ戻すのは、浮竹の役目になっていた。
今日の朝も、さぼろうとしている京楽を、教室に連れ戻した。
浮竹は、入学テストを首席で合格した。頭がずばぬけていい。だが、自慢したりは一切せずの努力家で、先生からも他の生徒からの信頼も厚かった。
浮竹が、倒れた。血こそ吐かなかったが、せきをして、倒れた。
救護室に浮竹を抱き抱えて運んだ京楽は、ベッドの上に浮竹を寝かすと、意識を取り戻すまでの数時間、ずっと傍にいた。
「あれ?ここは・・・・・・そうか、俺はまた倒れたのか」
ゆっくりと起き上がる浮竹。その手を握って、心配そうにのぞき込んでくる京楽に、浮竹はすまないと、謝った。
「すまない、京楽。また世話になったようだ」
「いいんだよ、そんなことは。浮竹が目覚めてよかった」
握っていた手を放し、半身を起き上がらせた浮竹に、囁く。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ?」
「髪、伸ばしなよ」
「どうして?」
「綺麗だから。真っ白で、太陽の光にあたったら銀色に見える」
「俺が、この白い髪を嫌いなこと、知ってていってるのか?」
「うん」
京楽は、浮竹の短い白髪を手ですいた。
柔らかくて、サラサラだった。
「伸ばしなよ。きっと、長い方が似合う」
京楽は、浮竹のことが好きだった。だが、浮竹は京楽の想いを知らない。
友人の延長戦だと思っている。
まだ、浮竹の意識があるときに、キスをしたこともない。浮竹が倒れて意識がないのをいいことに、触れるだけのキスを何度かしたことがあった。
あとは、ただ、抱き上げられたり、抱きしめられたり。
「んー。君からはお日様のにおいと、なんか甘いかおりがするねぇ」
抱きしめられて、浮竹は京楽の肩に頭を乗せた。
「甘えん坊だなぁ、京楽は」
「そうなの。もっと甘えていい?」
「いいぞ」
「好きだよ、浮竹」
「俺も好きだぞ、京楽」
京楽の好きと浮竹の好きは、意味が違う。
京楽は恋愛感情で。浮竹は友情でだった。
それが分かっていたので、京楽は寂しそうに微笑んだ。
本当なら、想いのたけをぶつけてぐちゃぐちゃに犯して、自分のものにしたい。それができないから、いっそ殺して自分だけのものにしてしまおうか。
浮竹の白い細い首に、手をかける京楽。
「京楽?」
不思議そうな翡翠の瞳はあくまで穏やかで、京楽は浮竹の喉から手を離すと、その手を背中にまわし、力いっぱい抱きしめた。
「苦しいぞ、京楽」
「ごめんね」
「変な奴だな」
浮竹の少し高い体温が心地よかった。
愛していると、心の中で呟いて、京楽は浮竹を離さなかった。
愛しているといって、拒絶されるのがすごく怖かった。京楽にとって、浮竹からの拒絶は絶望だ。
だから、まだ愛しているとは言わない。いや、言えない。
「授業はもう終わったし、まだ熱があるようだから、もう少し寝なさい」
「いや、明日の分の予習が・・・・・」
「勉学より、体調のほうが大事でしょ!」
京楽に怒られて、浮竹は素直にベッドにまた横になった。
「2時間くらいしたら、迎えにくるから。起きなくても構わないよ。寮の部屋に送り届けるから」
抱きかかえて、と付け足された。
「すまない。世話になってばかりで」
「いいんだよ。僕が、好きでやってることなんだから。とにかく、今は熱を下げて体調を回復させることだけを考えて」
「ああ・・・・・・」
明日は、剣術の稽古がある。浮竹の尊敬する、山本元柳斎重國の授業だが、参加はできなさそうだ。
「山じいとは、今度個別で指導してもらえばいいから。とにかく、今日と明日は休んで」
「分かった」
山本元柳斎重國は、浮竹と京楽の師である。たくさんいる教え子の中でも、彼らは特別のお気に入りで、まさに実の子供のようにかわいがっていた。
そのせいもあって、個別に指導もしてくれる。
「京楽」
「なんだい?」
「いろいろとすまない。心配ばかりかけて」
「体が弱いのは仕方ないよ。だけど、できるだけちゃんと飯を食べること。君、細すぎるよ。筋肉がないわけじゃないけど、触ると肋骨が分かる」
肋骨が浮き出るほどに痩せているわけではないが、輪郭を確かめると肋骨が目立つ。
「食べては、いるんだがなぁ」
好きな甘味もののおはぎを、腹いっぱい食べても全然太らない。高カロリーの食事をとっても、肉がつかない。
体重が軽く痩せていることも、浮竹のコンプレックスの一つだった。
この白い髪ほどではないが。
京楽は、浮竹と違って背が高く、がっしりしている。浮竹の背が低いわけでもないし、まだ成長期だから、伸びてはいるのだが、肺の病のせいで鍛錬しても筋肉は薄くしかつかず、体重は軽かった。
「おやすみ、浮竹」
「ああ、おやすみ」
浮竹の額に口づけて、京楽は去っていった。
「・・・・・・京楽は・・・」
多分、好きだという意味が違うのではないか。自分が思っている好きとは、違うのではないかと、京楽の言動で、少しずつではあるがそれは確信に近づいていた。
「俺は、どうすれば・・・・・・・・」
京楽の想いに、答えることはできるのだろうか。
分からない。
京楽が嫌いなわけではない。抱きしめられたり、頬に手を伸ばされたり、白い髪をすいていったりとした行動は、どちらかというと心地よい。
だが、京楽の想いは深い。
まだ、今の浮竹にはその想いに答えるだけの勇気はなかった。
ぬるま湯のようだ、今の関係は。
冷水にもなれず、熱湯にもなれない。
想いを拒絶することも、受け止めることもできない。
なんて半端なんだろう、自分は。
浮竹は、悩みながらもまどろんでいく。高くなってきた熱にうなされる。
「いつか、答えはでるんだろうか・・・・」
想いが互いに通じあうのは、まだ当分先のことだった。
今は、ぬるま湯でいい。
比翼の鳥のように、お互いを必要としあうだけでいい。
いつか。
いつかきっと、今の関係は壊れる。
それが、冷水なのか熱湯なのかはわからない。
今はまだ、分からなくていいのだ。
見られた
「浮竹隊長・・・・はわわわ、ごめんなさい!きゃああああああああああ」
顔を真っ赤にして、朽木ルキアは去っていった。
雨乾堂にきたルキアが見たものは、壁に押し付けられて、京楽と深い口づけを交わしている浮竹の姿だった。
「あ、朽木!・・・・・・・行っちゃった」
京楽を押しのけて、浮竹は乱れた衣服を整える。
別に、隠しているわけじゃないから見られても困るものでもないが、たいていこういうシーンに出くわした男女は真っ赤になって去っていく。
見物とばかりに見ていくのは夜一くらいのものだ。
そういう夜一も、浮竹と京楽が本気になっているときは去っていく。
「いいじゃないか浮竹。ルキアちゃんは、前から僕と君の関係を知っているよ」
「まじか」
「まじだよ」
「はぁ・・・・・・・・関係、隠したほうがいいのかな?」
「無理じゃない?もう、護廷13隊中に知れ渡ってるよ。僕らのこと」
「はぁ・・・・・・・」
深いため息をついて、浮竹は畳の上にしゃがみこむ。
何百年も恋人関係を続けていて、隠さなくなったのは学院を卒業した頃だろうか。
隊長になる頃には、浮竹と京楽はできていると、もっぱらの噂だった。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ」
「僕と、こういう関係になったこと、後悔してる?」
「いや・・・・・後悔は、してない」
「なら、なんの問題もないじゃないの。・・・・続き、してもいいい?」
「好きにしろ」
毛深い京楽の胸に抱き寄せられて、浮竹は吐息を零した。
浮竹の唇に指をはわせると、浮竹はそれを口に含んだ。甘噛みして、そして再び京楽と深い口づけを交わした。
「すんません、ルキアみませんでしたか浮竹さん・・・・・・・・・・・・・・」
雨乾堂に入ってきた、黒崎一護は固まった。
「え?一護君?」
「気にしない、気にしない」
膝をわって、覆いかぶさってくる京楽を無理やりどけて、浮竹は固まったままの黒崎一護を揺さぶった。
「ああっ、まさか俺らのこと知らなかった?」
「みたいだねぇ」
固まったままの黒崎一護は、我に返って真っ赤になった。
「あ、あんたたちって、できてたのか」
「そうだよ」
あっさりと肯定する京楽と、違うんだと言い訳する浮竹。
浮竹の中で、黒崎一護は少し特別な存在だった。亡き、副官によく似ているせいで。
「違うんだ一護君、これはね、その、やぁっ」
京楽は、黒崎一護が見ているのもお構いなしに、浮竹の首にキスマークを残す。
「こういうことだから、ね?」
京楽が、ぎらついた瞳を黒崎一護に向けた。
「す、すんませんでしたっ」
潤んだ浮竹の翡翠の瞳と黒崎一護の視線がぶつかりあい、真っ赤になった黒崎一護は、先ほど朽木ルキアが去っていったように、その場から逃げて行った。
「京楽っ・・・・・さかるな、このあほっ」
「いいじゃない、浮竹。見せつけてやればいい。君が、僕のものだって、教えてあげればいい」
もう黒崎一護はその場にはいなかったが。
「きょうら・・・・ああっ」
声が、もれる。
必死に、口を手でふさぐが、それを京楽が浮竹の細い手首をとって、口づけると畳の上にぬいつけた。
「京楽っ」
黒崎一護に今度会ったら、どんな顔をすればいいのだろうと考えながらも、京楽が与える刺激に体は敏感に反応した。
恋人同士になって数百年。体を重ねること数千回。
二人の関係は、変わらない。
「なぁ、浮竹さんと京楽さんってできてたんだな、ルキア」
「ああ、そうだ。護廷13隊で知らない者はいないというくらい、大っぴらな関係だぞ」
「京楽さんって、女好きだって聞いてたから、ちょっと驚いた」
「確かに、女性とよく飲んでたりするが。浮竹隊長は・・・・・儚い人だからな。院生時代の頃からそういう関係だったと、兄様から聞いたことがある」
朽木ルキアの義兄である朽木白哉も、浮竹と京楽の関係を知っている。
というか、二人の関係を知らないのは、さっきまでの黒崎一護と、茶虎、井上、石田くらいのものだろう。
「っていうか、浮竹さんが女役なんだ」
「浮竹隊長は美人だからな。もじゃもじゃの京楽隊長が受けだとあまりそそられない」
ちょっと腐女子な意見のルキア。
「お前、知ってたのか」
「たわけ。なぜ、すぐに気づかぬ」
あれほど、堂々と抱きあっていたりするのに。
「いや・・・・浮竹さん体が弱いって聞いてたから。京楽さんが抱き上げたり、額に手をあてたりしてたの、ただの親切心からだと思ってた」
「女性死神協会で発行する新聞では、二人のことを扱った記事とかあるぞ」
「まじかよ」
「ちなみに、二人のツーショットはよく売れるらしい」
「まじかよ」
黒崎一護は、理解できないが、まぁ浮竹の白く儚い容貌は確かに女性には売れそうだ。あと、どこか危険なにおいのする京楽も女性受けはよさそうだ。
「なんか尸魂界って、変な場所だな。隊長同士ができてて、それが公認だとか」
「たわけ。尸魂界だからこそ許されるのだ。数百年も愛し合い続けるなんて、夢のようじゃないかっ」
「げっ。あの二人、そんなに生きてるのか」
「たわけ!」
ルキアは、一護をはたいた。
「浮竹隊長は、かりにも私の上司だぞ。一番隊隊長の山本元柳斎重國殿も、千年以上は隊長をしていらっしゃるのだ。その愛弟子であられる浮竹隊長と京楽隊長が数百年生きてても不思議ではあるまい!」
「あの爺さん、そんなに生きてるのか。すげー」
すでに、一護の思考は二人のことから山本元柳斎重國のことで頭がいっぱいだ。
ルキアと一護はああだこうだといいながら、浮竹と京楽が、幸せでありますようにと思うのだった。
顔を真っ赤にして、朽木ルキアは去っていった。
雨乾堂にきたルキアが見たものは、壁に押し付けられて、京楽と深い口づけを交わしている浮竹の姿だった。
「あ、朽木!・・・・・・・行っちゃった」
京楽を押しのけて、浮竹は乱れた衣服を整える。
別に、隠しているわけじゃないから見られても困るものでもないが、たいていこういうシーンに出くわした男女は真っ赤になって去っていく。
見物とばかりに見ていくのは夜一くらいのものだ。
そういう夜一も、浮竹と京楽が本気になっているときは去っていく。
「いいじゃないか浮竹。ルキアちゃんは、前から僕と君の関係を知っているよ」
「まじか」
「まじだよ」
「はぁ・・・・・・・・関係、隠したほうがいいのかな?」
「無理じゃない?もう、護廷13隊中に知れ渡ってるよ。僕らのこと」
「はぁ・・・・・・・」
深いため息をついて、浮竹は畳の上にしゃがみこむ。
何百年も恋人関係を続けていて、隠さなくなったのは学院を卒業した頃だろうか。
隊長になる頃には、浮竹と京楽はできていると、もっぱらの噂だった。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ」
「僕と、こういう関係になったこと、後悔してる?」
「いや・・・・・後悔は、してない」
「なら、なんの問題もないじゃないの。・・・・続き、してもいいい?」
「好きにしろ」
毛深い京楽の胸に抱き寄せられて、浮竹は吐息を零した。
浮竹の唇に指をはわせると、浮竹はそれを口に含んだ。甘噛みして、そして再び京楽と深い口づけを交わした。
「すんません、ルキアみませんでしたか浮竹さん・・・・・・・・・・・・・・」
雨乾堂に入ってきた、黒崎一護は固まった。
「え?一護君?」
「気にしない、気にしない」
膝をわって、覆いかぶさってくる京楽を無理やりどけて、浮竹は固まったままの黒崎一護を揺さぶった。
「ああっ、まさか俺らのこと知らなかった?」
「みたいだねぇ」
固まったままの黒崎一護は、我に返って真っ赤になった。
「あ、あんたたちって、できてたのか」
「そうだよ」
あっさりと肯定する京楽と、違うんだと言い訳する浮竹。
浮竹の中で、黒崎一護は少し特別な存在だった。亡き、副官によく似ているせいで。
「違うんだ一護君、これはね、その、やぁっ」
京楽は、黒崎一護が見ているのもお構いなしに、浮竹の首にキスマークを残す。
「こういうことだから、ね?」
京楽が、ぎらついた瞳を黒崎一護に向けた。
「す、すんませんでしたっ」
潤んだ浮竹の翡翠の瞳と黒崎一護の視線がぶつかりあい、真っ赤になった黒崎一護は、先ほど朽木ルキアが去っていったように、その場から逃げて行った。
「京楽っ・・・・・さかるな、このあほっ」
「いいじゃない、浮竹。見せつけてやればいい。君が、僕のものだって、教えてあげればいい」
もう黒崎一護はその場にはいなかったが。
「きょうら・・・・ああっ」
声が、もれる。
必死に、口を手でふさぐが、それを京楽が浮竹の細い手首をとって、口づけると畳の上にぬいつけた。
「京楽っ」
黒崎一護に今度会ったら、どんな顔をすればいいのだろうと考えながらも、京楽が与える刺激に体は敏感に反応した。
恋人同士になって数百年。体を重ねること数千回。
二人の関係は、変わらない。
「なぁ、浮竹さんと京楽さんってできてたんだな、ルキア」
「ああ、そうだ。護廷13隊で知らない者はいないというくらい、大っぴらな関係だぞ」
「京楽さんって、女好きだって聞いてたから、ちょっと驚いた」
「確かに、女性とよく飲んでたりするが。浮竹隊長は・・・・・儚い人だからな。院生時代の頃からそういう関係だったと、兄様から聞いたことがある」
朽木ルキアの義兄である朽木白哉も、浮竹と京楽の関係を知っている。
というか、二人の関係を知らないのは、さっきまでの黒崎一護と、茶虎、井上、石田くらいのものだろう。
「っていうか、浮竹さんが女役なんだ」
「浮竹隊長は美人だからな。もじゃもじゃの京楽隊長が受けだとあまりそそられない」
ちょっと腐女子な意見のルキア。
「お前、知ってたのか」
「たわけ。なぜ、すぐに気づかぬ」
あれほど、堂々と抱きあっていたりするのに。
「いや・・・・浮竹さん体が弱いって聞いてたから。京楽さんが抱き上げたり、額に手をあてたりしてたの、ただの親切心からだと思ってた」
「女性死神協会で発行する新聞では、二人のことを扱った記事とかあるぞ」
「まじかよ」
「ちなみに、二人のツーショットはよく売れるらしい」
「まじかよ」
黒崎一護は、理解できないが、まぁ浮竹の白く儚い容貌は確かに女性には売れそうだ。あと、どこか危険なにおいのする京楽も女性受けはよさそうだ。
「なんか尸魂界って、変な場所だな。隊長同士ができてて、それが公認だとか」
「たわけ。尸魂界だからこそ許されるのだ。数百年も愛し合い続けるなんて、夢のようじゃないかっ」
「げっ。あの二人、そんなに生きてるのか」
「たわけ!」
ルキアは、一護をはたいた。
「浮竹隊長は、かりにも私の上司だぞ。一番隊隊長の山本元柳斎重國殿も、千年以上は隊長をしていらっしゃるのだ。その愛弟子であられる浮竹隊長と京楽隊長が数百年生きてても不思議ではあるまい!」
「あの爺さん、そんなに生きてるのか。すげー」
すでに、一護の思考は二人のことから山本元柳斎重國のことで頭がいっぱいだ。
ルキアと一護はああだこうだといいながら、浮竹と京楽が、幸せでありますようにと思うのだった。
甘いもの
「おはぎ食べる?」
「食べる」
「羊羹食べる?」
「食べる」
「あんこ餅食べる?」
「食べる」
「桜餅食べる?」
「食べる」
「団子食べる?」
「食べる」
「たい焼き食べる?」
「食べる」
もっきゅもっきゅ。
京楽がもってきた甘味ものを、浮竹はすごいスピードで平らげていく。
「相変わらず、甘味ものはよく食うねぇ」
「そうか?」
清音がいれてくれたお茶を、ずずーっと飲んで、浮竹は小首を傾げた。さらさらと、白い髪が零れ落ちる。
「もう、かわいいねぇ、浮竹は。でも、甘味ものを食べても全然脂肪つかないもんね。食事はちゃんとしてるかい?」
「最近は、1日3食ちゃんと食べているぞ」
「ほんとに?」
「ああ」
「どれ」
京楽は、浮竹を軽々と抱き上げた。
「やっぱ、細いよ君。もっと肉つけなきゃ」
抱き抱えられ慣れているので、抵抗はなかった。
「お前がごついだけだろう。最近は寝込んでないし、ちゃんと食べてるし鍛錬もしてる」
「でも、細いよ。腰なんかこんなに細い」
「くすぐったい」
清音がいることを、すでに二人は忘れていた。
清音は顔を真っ赤にして出て行った。
「おはぎのおかわりあるんだけど、食べる?」
「食べる」
おはぎは浮竹の好物だ。
「お前も食うか?俺ばっかり悪いだろ」
「いやいいよ。全部、君に食べてもらうために買ってきたものだしね」
京楽は甘いものが好きというわけでも嫌いというわけでもない。ただ、浮竹は甘いものが大好きだ。
「今度、尸魂界に新しい、現世の甘味ものを出す店ができたんだよ。一緒にいくかい?」
「行く!」
即答だった。
「朽木がいっていたんだが、パフェとかいうものがおいしいそうだ。出るかな?」
「出ると思うよ。アイス系の甘味ものも多いらしいから」
「よし、今すぐ行こう」
「ええ、こんなに食べたのにまだ食べるの?」
「甘味ものは別腹だ」
デザートは別腹というやつだ。
京楽の腕から降りて、浮竹は京楽を促した。
「仕方ないねぇ」
二人そろって、新しい店に行くことになった。
尸魂界でも、治安が比較的良い場所にその店はあった。
洋風の建物で、ドアをあけるとチリンとベルが鳴った。
「お洒落な店じゃない」
京楽は、店の洋風な中にも和風を取り入れた内装が気に入ったようだった。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
「ああ、そうだよ」
浮竹は、高そうな店だなぁと、金は足りるだろうかとか考えていた。
「ああ、浮竹、心配しなくても僕のおごりだから。好きなもの、好きなだけ食べるといいよ」
案内された席につき、メニュー表をみた浮竹は、京楽のおごりという言葉に甘えることにした。
酒を飲むときとかでも、しょっちゅうおごられているので、もう違和感さえない。
「すまない、この上からこの5つまでの品をお願いしたい」
パフェ系を5つも注文する浮竹に、京楽は笑った。
「本当に、甘いものには目がないね、浮竹は」
京楽は、上流貴族だ。隊長としての給料以外に莫大な財産を銀行に預けている。
それに対して、浮竹は下級貴族だ。貧しくこそなかったが、金持ちというわけでもなかった。高額な隊長としての給料の半分は、仕送りしている。
残りの半分で、飲み食いすればもう残らない。
京楽におごられることに、申し訳ないという心はすでに麻痺していた。
しばらくして、パフェがテーブルの上に5つ並んだ。
「京楽は、頼まないのか?」
紅茶を頼んだだけの京楽に、少し申し訳なさそうにする浮竹の頭を、京楽は撫でた。
「君の食べてる姿を見てるだけでいいんだよ、僕は」
「そうか」
パフェにスプーンをいれて、口に運ぶ。ひんやりとしたアイスが、おいしい。
「うまいぞこれ。京楽も食べてみろ」
アイスをスプーンですくって、京楽の口元にもっていく。
それを、京楽はさも当たり前とばかりに口にした。
「うん、おいしいね」
京楽は、浮竹に触れるだけのキスをして、頬に手をあてる。
白い髪に手を伸ばすと、翡翠の瞳がふせられた。睫毛の長い浮竹の翡翠の瞳は、宝石のようだ。
周囲のことなど、二人は気にしていないし、気にするつもりもなかった。関係を隠すことのない二人のやりとりを、女性だけでなく、男性死神も顔を朱くしていた。
「例の隊長だぞ。仲いいな」
「しーっ!せっかくの目の保養なんだから、邪魔しないで」
「浮竹隊長って、あんなかわいかったっけ」
「京楽隊長かっこいい」
「浮竹隊長は、どちらかというと綺麗よね。美人だもの。女の私でも嫉妬しちゃうくらい」
さざめく見学者たち。
二人の関係を、汚いものとして見る者はいない。
何百年も恋人関係を続けていたら、もう周囲の者のことなど、あまり気にしなくなるものだ。
パフェを全て平らげて、浮竹は満足そうだった。何回か京楽にも食べさせた。
「また、こようね。おごってあげるから」
「ああ」
浮竹の外での飲食の3分の2以上は、京楽が出している。
女なら、高いブランドもののバックや化粧品、衣服などに金を費やすだろうが、浮竹は男だ。
衣服はあまり欲しがらないし、高価な贈り物も拒絶する。そんな浮竹にできるのは、食べ物や酒をおごってあげるくらいだ。
浮竹は、酒なら高いものでもあまり嫌がらない。
高い酒ほど、美味いからだ。
「ごちそうさま。勘定、ここにおいていくからね。おつりはいらないよ」
多めにだした金銭をテーブルの上に置いた京楽は、傘をかぶり直して、店を先に出た浮竹の後を追った。
「すまないな、京楽。いつもおごってもらってばっかりで」
「いいのいいの。僕が好きでやってることなんだから」
浮竹をおごるのは、好きだった。浮竹は、初めの頃は逡巡しがちだったが、今では京楽が甘やかせばそれにすり寄るように、おごられてばかりだ。
「よっと」
「うわっ」
道の真ん中で、浮竹を少し抱き上げると、やはり悲しいくらいに細かった。
「うーん、まだまだだなぁ」
もっと肉をつけてもらいたい。
浮竹をおろすと、京楽は傘をあげて、浮竹をみた。
「夕飯、どっかに食べに行こうか」
「いいが。そうだ、今日の夕飯は俺がおごろう。たまにはいいだろう?」
「うん、うれしいね。高い店じゃなくていいからね」
馴染みの料亭でいい。
値段はほどほどで、酒がうまい。
京楽は、笑った。それにつれられて、浮竹も微笑む。
風に、長い白い髪が流れていく。
どうか、願うならばこんな穏やかな毎日がずっと続きますように。
「食べる」
「羊羹食べる?」
「食べる」
「あんこ餅食べる?」
「食べる」
「桜餅食べる?」
「食べる」
「団子食べる?」
「食べる」
「たい焼き食べる?」
「食べる」
もっきゅもっきゅ。
京楽がもってきた甘味ものを、浮竹はすごいスピードで平らげていく。
「相変わらず、甘味ものはよく食うねぇ」
「そうか?」
清音がいれてくれたお茶を、ずずーっと飲んで、浮竹は小首を傾げた。さらさらと、白い髪が零れ落ちる。
「もう、かわいいねぇ、浮竹は。でも、甘味ものを食べても全然脂肪つかないもんね。食事はちゃんとしてるかい?」
「最近は、1日3食ちゃんと食べているぞ」
「ほんとに?」
「ああ」
「どれ」
京楽は、浮竹を軽々と抱き上げた。
「やっぱ、細いよ君。もっと肉つけなきゃ」
抱き抱えられ慣れているので、抵抗はなかった。
「お前がごついだけだろう。最近は寝込んでないし、ちゃんと食べてるし鍛錬もしてる」
「でも、細いよ。腰なんかこんなに細い」
「くすぐったい」
清音がいることを、すでに二人は忘れていた。
清音は顔を真っ赤にして出て行った。
「おはぎのおかわりあるんだけど、食べる?」
「食べる」
おはぎは浮竹の好物だ。
「お前も食うか?俺ばっかり悪いだろ」
「いやいいよ。全部、君に食べてもらうために買ってきたものだしね」
京楽は甘いものが好きというわけでも嫌いというわけでもない。ただ、浮竹は甘いものが大好きだ。
「今度、尸魂界に新しい、現世の甘味ものを出す店ができたんだよ。一緒にいくかい?」
「行く!」
即答だった。
「朽木がいっていたんだが、パフェとかいうものがおいしいそうだ。出るかな?」
「出ると思うよ。アイス系の甘味ものも多いらしいから」
「よし、今すぐ行こう」
「ええ、こんなに食べたのにまだ食べるの?」
「甘味ものは別腹だ」
デザートは別腹というやつだ。
京楽の腕から降りて、浮竹は京楽を促した。
「仕方ないねぇ」
二人そろって、新しい店に行くことになった。
尸魂界でも、治安が比較的良い場所にその店はあった。
洋風の建物で、ドアをあけるとチリンとベルが鳴った。
「お洒落な店じゃない」
京楽は、店の洋風な中にも和風を取り入れた内装が気に入ったようだった。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
「ああ、そうだよ」
浮竹は、高そうな店だなぁと、金は足りるだろうかとか考えていた。
「ああ、浮竹、心配しなくても僕のおごりだから。好きなもの、好きなだけ食べるといいよ」
案内された席につき、メニュー表をみた浮竹は、京楽のおごりという言葉に甘えることにした。
酒を飲むときとかでも、しょっちゅうおごられているので、もう違和感さえない。
「すまない、この上からこの5つまでの品をお願いしたい」
パフェ系を5つも注文する浮竹に、京楽は笑った。
「本当に、甘いものには目がないね、浮竹は」
京楽は、上流貴族だ。隊長としての給料以外に莫大な財産を銀行に預けている。
それに対して、浮竹は下級貴族だ。貧しくこそなかったが、金持ちというわけでもなかった。高額な隊長としての給料の半分は、仕送りしている。
残りの半分で、飲み食いすればもう残らない。
京楽におごられることに、申し訳ないという心はすでに麻痺していた。
しばらくして、パフェがテーブルの上に5つ並んだ。
「京楽は、頼まないのか?」
紅茶を頼んだだけの京楽に、少し申し訳なさそうにする浮竹の頭を、京楽は撫でた。
「君の食べてる姿を見てるだけでいいんだよ、僕は」
「そうか」
パフェにスプーンをいれて、口に運ぶ。ひんやりとしたアイスが、おいしい。
「うまいぞこれ。京楽も食べてみろ」
アイスをスプーンですくって、京楽の口元にもっていく。
それを、京楽はさも当たり前とばかりに口にした。
「うん、おいしいね」
京楽は、浮竹に触れるだけのキスをして、頬に手をあてる。
白い髪に手を伸ばすと、翡翠の瞳がふせられた。睫毛の長い浮竹の翡翠の瞳は、宝石のようだ。
周囲のことなど、二人は気にしていないし、気にするつもりもなかった。関係を隠すことのない二人のやりとりを、女性だけでなく、男性死神も顔を朱くしていた。
「例の隊長だぞ。仲いいな」
「しーっ!せっかくの目の保養なんだから、邪魔しないで」
「浮竹隊長って、あんなかわいかったっけ」
「京楽隊長かっこいい」
「浮竹隊長は、どちらかというと綺麗よね。美人だもの。女の私でも嫉妬しちゃうくらい」
さざめく見学者たち。
二人の関係を、汚いものとして見る者はいない。
何百年も恋人関係を続けていたら、もう周囲の者のことなど、あまり気にしなくなるものだ。
パフェを全て平らげて、浮竹は満足そうだった。何回か京楽にも食べさせた。
「また、こようね。おごってあげるから」
「ああ」
浮竹の外での飲食の3分の2以上は、京楽が出している。
女なら、高いブランドもののバックや化粧品、衣服などに金を費やすだろうが、浮竹は男だ。
衣服はあまり欲しがらないし、高価な贈り物も拒絶する。そんな浮竹にできるのは、食べ物や酒をおごってあげるくらいだ。
浮竹は、酒なら高いものでもあまり嫌がらない。
高い酒ほど、美味いからだ。
「ごちそうさま。勘定、ここにおいていくからね。おつりはいらないよ」
多めにだした金銭をテーブルの上に置いた京楽は、傘をかぶり直して、店を先に出た浮竹の後を追った。
「すまないな、京楽。いつもおごってもらってばっかりで」
「いいのいいの。僕が好きでやってることなんだから」
浮竹をおごるのは、好きだった。浮竹は、初めの頃は逡巡しがちだったが、今では京楽が甘やかせばそれにすり寄るように、おごられてばかりだ。
「よっと」
「うわっ」
道の真ん中で、浮竹を少し抱き上げると、やはり悲しいくらいに細かった。
「うーん、まだまだだなぁ」
もっと肉をつけてもらいたい。
浮竹をおろすと、京楽は傘をあげて、浮竹をみた。
「夕飯、どっかに食べに行こうか」
「いいが。そうだ、今日の夕飯は俺がおごろう。たまにはいいだろう?」
「うん、うれしいね。高い店じゃなくていいからね」
馴染みの料亭でいい。
値段はほどほどで、酒がうまい。
京楽は、笑った。それにつれられて、浮竹も微笑む。
風に、長い白い髪が流れていく。
どうか、願うならばこんな穏やかな毎日がずっと続きますように。
かき氷
ミーンミーンミン。
蝉の声がうるさい、夏の季節がやってきた。
「今日も暑いなぁ」
宇治金時のかき氷を食べながら、浮竹は雨乾堂の外の欄干で、板張りの廊下に座り込み、池を見ながら暑い日差しをにらんでいた。
「浮竹ぇ。こんな暑いのに、外でかき氷かい?」
「ああ、京楽か」
日番谷隊長に頼み込んで、氷輪丸で氷をたくさん作ってもらい、13隊の全員にかき氷を配った。
シロップはいちご、練乳、メロン、ブルーハワイ、宇治金時だ。
文句をいいつつも、日番谷隊長は氷をだしてくれた。そんなことのためにある斬魄刀ではないのだが。
「京楽もくると思って、かき氷用意しといたぞ。メロン味だが、別にいいよな?」
「え、僕の分まであるの?」
「ああ。来るだろうと思ってたから」
昨日も会ったばっかりだ。
京楽は、時間があれば浮竹に会いにくる。浮竹が臥せっているときは自重するが、浮竹が元気な時には、暇つぶしとばかりに遊びにくる。
「いいねぇ」
浮竹が、雨乾堂に戻り、メロンシロップのかけられたかき氷をもってくる。普通の氷と違って、日番谷隊長が出す氷輪丸の氷は、溶けにくい。
少しくらいおいておいても、溶けないので、京楽の分も用意したのだ。
「甘い。こんな暑い日にかき氷なんて贅沢だねぇ」
「何、外にでればかき氷くらいうってるだろう」
「まぁそうなんだけど。とても暑くて食べに出かける気にもならないよ。こんな暑い中、死神の黒装束の上に隊長羽織だよ?脱ぎたくなるけどそういうわけにもいかないしねぇ」
シャリシャリと、かき氷をを口に運びながら、京楽は浮竹を見た。
夏の日差しに、京楽はすっかり日に焼けてしまったが、色素を失った浮竹は太陽の光を浴びても日に焼けることがない。
白い髪に白い肌、翡翠の瞳。秀麗な容姿。実に涼やかだ。
「浮竹は、日に焼けないよね」
「あー。そういえばそうだな。夏になっても、暑い日差しをどんなに浴びても日焼けしないな」
「羨ましいねぇ」
「そういう京楽は真っ黒だな。日焼けしすぎじゃないか?」
「なに、いつものように、屋根の上で寝てたら日に焼けちゃってねぇ」
「こんなくそ暑い時期でもお前は屋根の上で寝るのか」
「うん、そうだよ?変かな?」
「想像するだけで暑そうだ」
京楽は、メロンのかき氷をすぐに平らげてしまった。
そして、浮竹が食べていた宇治金時のかき氷を見た。
「見ても、分けてやらないぞ」
「わけてくれなくてもいいよ。こうするから」
かき氷の器を奪い取って、浮竹に口づけた。舌をいれられて、浮竹が京楽の頭をなぐった。
「痛いじゃないか」
「キスで味わるくらいなら、わけてやるに決まっているだろう」
「いやぁ。宇治金時の味がして、おいしかったよ。もっかいしていい?」
「だめだ。あと、ハグも禁止。暑いから」
「こういう時、現世のエアコンってのがほしくなるねぇ。まぁ、扇風機があるだけましか」
先ほどから、生暖かい風を扇風機が送ってくる。
現世のものを取り入れることが多くなった尸魂界では、扇風機はまだ珍しいが、隊長くらいになれば入手も困難ではなかった。
「氷枕がほしいくらい暑いし、いっそ日番谷隊長の氷輪丸で氷漬けにしてほしいくらいだ」
「そりゃ僕が止めるよ。浮竹は夏風邪をひきやすいんだから。熱中症対策もしなきゃいけないけどね」
「水浴びしたいなぁ」
「まぁ、この天気なら水浴びくらいしてもいいんじゃないの」
「よし、一緒に浴びるか」
「ええっ」
それっと、浮竹はどこにそんばか力があるのか、自分よりも重い京楽を池に投げ捨てた。
「ちょっと!」
「俺もだ」
ザパーン。
池に飛び込んだ浮竹を見て、京楽は眩暈を覚えた。
少年のような瞳で京楽に水をかける浮竹。
かわいい。ハグしたい。
「こっちもしかえしだよ」
池の水をかけて二人でしばし水のかけあいをした。
池にいる錦鯉が、二人の邪魔をしないように遠くを泳いでいく。
「あまり、長い間濡れたままだと風邪をひくよ。そろそろあがろう」
「そうだな。お陰で大分涼しくなったし」
水を吸った白い髪をかきあげて、浮竹は池からあがった。
それに、京楽も続く。
「冷えるまえに、着替えなさい」
京楽は、浮竹にバスタオルをなげると、新しい服を出してきた。
「心配しすぎだろう。これくらいで風邪をひいたりしないぞ」
「いいや、放置してると絶対風邪ひくね」
「そうか?」
「君は、自分が思っているよりも体が弱いんだから」
バスタオルで、白い髪をごしごしふいて、濡れた衣服を脱がしていく。
肌にはりついた衣服を見ていると、少し欲情してしまった。ぶんぶんと首をふって、京楽は濡れた自分の衣服も髪もふいて、浮竹に新しい服を着させてどっかりと、座り込んだ。
「扇風機の風に当たるのは禁止ね」
京楽だけが、扇風機の風を独り占めする。
「むっ。ずるいぞ」
「だーめ。今の状態で扇風機なんかにあたって体を冷やしたら、絶対熱だすんだから」
「今年の夏はまだ2回しか風邪をひいてないぞ」
「十分多い。普通の人は、ひかないよ」
「むう」
「いい子だから、いうことききなさい」
「京楽のどけち」
「はいはい」
まるで、ちょっとした痴話喧嘩だ。
「また今度日番谷隊長に、氷をだしてもらってかき氷をつくるか」
「日番谷隊長も大変だねぇ」
氷輪丸を、そんな使い方にされて気の毒だと、京楽は思ったが、浮竹が喜ぶのであれば日番谷隊長にはがんばってもらわねば。
「っくしゅん」
「あれぇ?隊長、風邪ですか?」
くしゃみをした日番谷は、松元の言葉に首を振った。
「多分、誰かが噂してるんだ。13番隊の隊長あたりが」
ビンゴだ。
日番谷は、夏によく氷を出してくれると頼まれる。もう慣れてしまったので、氷をだすくらいはしてやった。
「今年も夏も、暑いな」
暑さに弱い日番谷は、氷輪丸を使って涼んでいる。松本が、それをずるいと口をとがらせていた。
ミーンミンミン。
蝉も声がする。
夏は、まだ真っ盛り。
暑い日は、しばらく続きそうだった。
蝉の声がうるさい、夏の季節がやってきた。
「今日も暑いなぁ」
宇治金時のかき氷を食べながら、浮竹は雨乾堂の外の欄干で、板張りの廊下に座り込み、池を見ながら暑い日差しをにらんでいた。
「浮竹ぇ。こんな暑いのに、外でかき氷かい?」
「ああ、京楽か」
日番谷隊長に頼み込んで、氷輪丸で氷をたくさん作ってもらい、13隊の全員にかき氷を配った。
シロップはいちご、練乳、メロン、ブルーハワイ、宇治金時だ。
文句をいいつつも、日番谷隊長は氷をだしてくれた。そんなことのためにある斬魄刀ではないのだが。
「京楽もくると思って、かき氷用意しといたぞ。メロン味だが、別にいいよな?」
「え、僕の分まであるの?」
「ああ。来るだろうと思ってたから」
昨日も会ったばっかりだ。
京楽は、時間があれば浮竹に会いにくる。浮竹が臥せっているときは自重するが、浮竹が元気な時には、暇つぶしとばかりに遊びにくる。
「いいねぇ」
浮竹が、雨乾堂に戻り、メロンシロップのかけられたかき氷をもってくる。普通の氷と違って、日番谷隊長が出す氷輪丸の氷は、溶けにくい。
少しくらいおいておいても、溶けないので、京楽の分も用意したのだ。
「甘い。こんな暑い日にかき氷なんて贅沢だねぇ」
「何、外にでればかき氷くらいうってるだろう」
「まぁそうなんだけど。とても暑くて食べに出かける気にもならないよ。こんな暑い中、死神の黒装束の上に隊長羽織だよ?脱ぎたくなるけどそういうわけにもいかないしねぇ」
シャリシャリと、かき氷をを口に運びながら、京楽は浮竹を見た。
夏の日差しに、京楽はすっかり日に焼けてしまったが、色素を失った浮竹は太陽の光を浴びても日に焼けることがない。
白い髪に白い肌、翡翠の瞳。秀麗な容姿。実に涼やかだ。
「浮竹は、日に焼けないよね」
「あー。そういえばそうだな。夏になっても、暑い日差しをどんなに浴びても日焼けしないな」
「羨ましいねぇ」
「そういう京楽は真っ黒だな。日焼けしすぎじゃないか?」
「なに、いつものように、屋根の上で寝てたら日に焼けちゃってねぇ」
「こんなくそ暑い時期でもお前は屋根の上で寝るのか」
「うん、そうだよ?変かな?」
「想像するだけで暑そうだ」
京楽は、メロンのかき氷をすぐに平らげてしまった。
そして、浮竹が食べていた宇治金時のかき氷を見た。
「見ても、分けてやらないぞ」
「わけてくれなくてもいいよ。こうするから」
かき氷の器を奪い取って、浮竹に口づけた。舌をいれられて、浮竹が京楽の頭をなぐった。
「痛いじゃないか」
「キスで味わるくらいなら、わけてやるに決まっているだろう」
「いやぁ。宇治金時の味がして、おいしかったよ。もっかいしていい?」
「だめだ。あと、ハグも禁止。暑いから」
「こういう時、現世のエアコンってのがほしくなるねぇ。まぁ、扇風機があるだけましか」
先ほどから、生暖かい風を扇風機が送ってくる。
現世のものを取り入れることが多くなった尸魂界では、扇風機はまだ珍しいが、隊長くらいになれば入手も困難ではなかった。
「氷枕がほしいくらい暑いし、いっそ日番谷隊長の氷輪丸で氷漬けにしてほしいくらいだ」
「そりゃ僕が止めるよ。浮竹は夏風邪をひきやすいんだから。熱中症対策もしなきゃいけないけどね」
「水浴びしたいなぁ」
「まぁ、この天気なら水浴びくらいしてもいいんじゃないの」
「よし、一緒に浴びるか」
「ええっ」
それっと、浮竹はどこにそんばか力があるのか、自分よりも重い京楽を池に投げ捨てた。
「ちょっと!」
「俺もだ」
ザパーン。
池に飛び込んだ浮竹を見て、京楽は眩暈を覚えた。
少年のような瞳で京楽に水をかける浮竹。
かわいい。ハグしたい。
「こっちもしかえしだよ」
池の水をかけて二人でしばし水のかけあいをした。
池にいる錦鯉が、二人の邪魔をしないように遠くを泳いでいく。
「あまり、長い間濡れたままだと風邪をひくよ。そろそろあがろう」
「そうだな。お陰で大分涼しくなったし」
水を吸った白い髪をかきあげて、浮竹は池からあがった。
それに、京楽も続く。
「冷えるまえに、着替えなさい」
京楽は、浮竹にバスタオルをなげると、新しい服を出してきた。
「心配しすぎだろう。これくらいで風邪をひいたりしないぞ」
「いいや、放置してると絶対風邪ひくね」
「そうか?」
「君は、自分が思っているよりも体が弱いんだから」
バスタオルで、白い髪をごしごしふいて、濡れた衣服を脱がしていく。
肌にはりついた衣服を見ていると、少し欲情してしまった。ぶんぶんと首をふって、京楽は濡れた自分の衣服も髪もふいて、浮竹に新しい服を着させてどっかりと、座り込んだ。
「扇風機の風に当たるのは禁止ね」
京楽だけが、扇風機の風を独り占めする。
「むっ。ずるいぞ」
「だーめ。今の状態で扇風機なんかにあたって体を冷やしたら、絶対熱だすんだから」
「今年の夏はまだ2回しか風邪をひいてないぞ」
「十分多い。普通の人は、ひかないよ」
「むう」
「いい子だから、いうことききなさい」
「京楽のどけち」
「はいはい」
まるで、ちょっとした痴話喧嘩だ。
「また今度日番谷隊長に、氷をだしてもらってかき氷をつくるか」
「日番谷隊長も大変だねぇ」
氷輪丸を、そんな使い方にされて気の毒だと、京楽は思ったが、浮竹が喜ぶのであれば日番谷隊長にはがんばってもらわねば。
「っくしゅん」
「あれぇ?隊長、風邪ですか?」
くしゃみをした日番谷は、松元の言葉に首を振った。
「多分、誰かが噂してるんだ。13番隊の隊長あたりが」
ビンゴだ。
日番谷は、夏によく氷を出してくれると頼まれる。もう慣れてしまったので、氷をだすくらいはしてやった。
「今年も夏も、暑いな」
暑さに弱い日番谷は、氷輪丸を使って涼んでいる。松本が、それをずるいと口をとがらせていた。
ミーンミンミン。
蝉も声がする。
夏は、まだ真っ盛り。
暑い日は、しばらく続きそうだった。
加工された写真
「できた!うむ、我ながら完璧だ」
そこには、死神代行の黒崎一護の写真があった。隠し撮りらしく、ちゃんとカメラをみて映った様子がなかった。
その一護の写真は、オレンジの髪がマジックで黒く塗りつぶされ、下睫毛が追加されていた。
「うわー、ひどいねぇ、浮竹。それ、一護君じゃないの?もう、違うものになってるよ」
一護の写真をマジックで加工して、かつて失った副隊長の志波海燕にしていた。
浮竹のいる雨乾堂を訪れきた京楽がみたものは、加工された一護の写真。、
「いやぁ、ほんとに酷いよ浮竹。いくら志波君が好きだといっても限度があるでしょ」
「京楽か。本当は、黒いカツラをかぶって下睫毛をつけて、13番隊の副官の姿をしてほしいんだが、実物に頼むにはけっこう抵抗があってな」
「まぁ流石の一護君も、そこまでしてはくれないだろうねぇ」
「だろうなぁ。おはぎあげても、無理かな?」
かわいく、小首をかしげる浮竹に、うっときたが、京楽は我慢した。何この子かわいい。そう、京楽の顔に書いてあった。
「いや、流石に無理なんじゃないの。食い物でつられるような子じゃないでしょ」
「うーん。この写真、ポスターにするか」
「そこまでするの?うわー、僕ちょっと引いちゃうよ」
「一護君が、副官になってくれたらいいのになぁ」
「いや、流石に無理でしょ」
「だなぁ。死神代行だしな」
死神代行、黒崎一護に、一目ぼれした状態の浮竹に、京楽はため息をついた。
「浮竹も、いい年してるんだから、若い子を巻き込むのはやめなさい」
「むっ。年の話はするな。これでもまだまだ現役だ」
齢数百歳になるが、人の年齢にしてみると30代後半~40代前半あたりだろうか。
真っ白な髪と白い肌、翡翠色の瞳の浮竹は実年齢より100歳ほど若く見えた。
「代行証は渡したしな。ふふふふふ」
どす黒く笑う浮竹は、いつものほんわかとしてふわふわした浮竹と違った。
昨日など、13番隊の隊長羽織を着ずに、間違えて、京楽の8番隊の羽織を着ていた。誰の目から見ても、できている二人は、別段関係を隠すことをしていない。
さすがに黒崎一護は、8番隊の隊長羽織を着ていた浮竹につっこんでいたが。
京楽と、肉体関係をもつ深い仲であることには、まだ気づいていないようだった。
「一護君に、手をだしちゃだめだよ、浮竹」
「うーん」
純粋に、ただ懐かしいのだ。
副官として、面倒を見てきてた志波海燕のことが。
京楽にとって、志波海燕とはあまり好きな相手ではなかった。浮竹との仲を知り、浮竹が京楽と関係をもって、寝所を共にしたあと、熱を出す浮竹を心配して仲を裂こうとしたことがあるからだ。
何度か志波海燕は、浮竹に京楽と別れるように進言したが、浮竹はそれを聞き流していた。
そんな志波海燕によく似た、黒崎一護を、京楽は最初あまりいい印象を抱かなかった。だが、すぐに誰とでも仲良くなれて、強く、仲間を守るために命をかける一護に好感を抱くようにはなった。
「はぁ。一護君にまた会いたいなぁ」
「まだしばらく尸魂界にいるらしいから、また会えるでしょ」
「でも、会ったら・・・・そうだ、今度はツーショットで写真をとらせてもらえるように頼んでみよう。それから、現世に誘ってデートでも・・・・・・」
「浮竹ぇ」
「ん?」
「君、バカだろ」
「なんだと!」
「僕がいるのを、忘れてないかい」
「ん?」
小首を傾げる浮竹は、破壊的にかわいかった。
「なんだ京楽、焼いているのか。いっちょまえに、やきもちか!」
「いっちょまえとは酷いねぇ。そんなこという口はこうだ」
「んーーーーーー!」
浮竹の唇を強引に奪って、言葉の続きを紡げなくした。
「んんっ」
角度をかえて、何度も浮竹に口づける。
京楽は、浮竹を抱きしめて、今度はきつく首筋にキスをして跡を残した。
いつもなら、浮竹が嫌がるので、跡は残さないのだが。
いわゆる、所有物の証というものだった。
「京楽のあほっ!おたんこなす!」
「はいはい。あんまり言うことを聞かないなら、犯すよ?ぐちゃぐちゃに」
耳元で低く甘い声で囁かれて、鳥肌がたった。
ざわりと、背筋が冷たくなる。
黒崎一護とデートをしようものなら、お仕置きだと酷く犯されることは目に見えていた。
それが怖いので、浮竹は大人しくなった。
「浮竹はいい子だね」
すっぽりと、京楽の腕の中だ。
身じろぎもできなくて、浮竹は、困った。
「じゃりじゃりする!」
浮竹が、ひげごと顎を、浮竹の頬にすりよせた。
「ほらほら」
京楽のひげで、じゃりじゃりさせられるのを浮竹はあまり好きではなかった。
ちょっとしたお仕置きだ。
愛しい子が、他の子に関心をもつから。
我ながら心が狭いなと、京楽は思う。
「もう、分かったから・・・・・」
薄い腹の筋肉を撫でていく京楽の手に、危機感を感じた。貞操の危機だ。
冗談じゃない。
おとつい、散々啼かされたばかりだ。
浮竹に対しては、京楽はどこまで貪欲になる。何度犯しても、足りない。何度手にいれても、満足しない。
「あの、隊長・・・・・すみません、見てはいけないものを見てしまいました!」
「ああっ、清音いるの忘れてたっ!」
雨乾堂の隅に、目立たないように控えていたのは、3席である虎徹清音だ。
自分の隊長が、他の、しかも男である京楽隊長にいいようにされている場面を目撃してしまい、真っ赤になっていた。
今までも、何度か軽いキスやらハグやらのシーンは見てきたが、それ以上は見ていなかった。
清音は、耳まで真っ赤だ。そして、去って行った。
「京楽!アホバカまぬけおたんこなす!」
「あーはいはい。続き、しちゃうけどいいよね?」
「いやだっ」
身を捩る浮竹を抱き上げて、畳に転がすと、全身の輪郭をなぞるように愛撫していく。
淡泊な浮竹と違い、どす黒い欲望をもった京楽は、毎日でも浮竹を抱きたがる。
「京楽、俺が悪かった。だからやめ・・・・っ」
「スイッチはいちゃったから。もう、無理」
「やぁっ・・・・」」
雨乾堂の外にいた清音は、浮竹のあげる甘い声を耳にして、さらに真っ赤になって完全に去って行った。
そこには、死神代行の黒崎一護の写真があった。隠し撮りらしく、ちゃんとカメラをみて映った様子がなかった。
その一護の写真は、オレンジの髪がマジックで黒く塗りつぶされ、下睫毛が追加されていた。
「うわー、ひどいねぇ、浮竹。それ、一護君じゃないの?もう、違うものになってるよ」
一護の写真をマジックで加工して、かつて失った副隊長の志波海燕にしていた。
浮竹のいる雨乾堂を訪れきた京楽がみたものは、加工された一護の写真。、
「いやぁ、ほんとに酷いよ浮竹。いくら志波君が好きだといっても限度があるでしょ」
「京楽か。本当は、黒いカツラをかぶって下睫毛をつけて、13番隊の副官の姿をしてほしいんだが、実物に頼むにはけっこう抵抗があってな」
「まぁ流石の一護君も、そこまでしてはくれないだろうねぇ」
「だろうなぁ。おはぎあげても、無理かな?」
かわいく、小首をかしげる浮竹に、うっときたが、京楽は我慢した。何この子かわいい。そう、京楽の顔に書いてあった。
「いや、流石に無理なんじゃないの。食い物でつられるような子じゃないでしょ」
「うーん。この写真、ポスターにするか」
「そこまでするの?うわー、僕ちょっと引いちゃうよ」
「一護君が、副官になってくれたらいいのになぁ」
「いや、流石に無理でしょ」
「だなぁ。死神代行だしな」
死神代行、黒崎一護に、一目ぼれした状態の浮竹に、京楽はため息をついた。
「浮竹も、いい年してるんだから、若い子を巻き込むのはやめなさい」
「むっ。年の話はするな。これでもまだまだ現役だ」
齢数百歳になるが、人の年齢にしてみると30代後半~40代前半あたりだろうか。
真っ白な髪と白い肌、翡翠色の瞳の浮竹は実年齢より100歳ほど若く見えた。
「代行証は渡したしな。ふふふふふ」
どす黒く笑う浮竹は、いつものほんわかとしてふわふわした浮竹と違った。
昨日など、13番隊の隊長羽織を着ずに、間違えて、京楽の8番隊の羽織を着ていた。誰の目から見ても、できている二人は、別段関係を隠すことをしていない。
さすがに黒崎一護は、8番隊の隊長羽織を着ていた浮竹につっこんでいたが。
京楽と、肉体関係をもつ深い仲であることには、まだ気づいていないようだった。
「一護君に、手をだしちゃだめだよ、浮竹」
「うーん」
純粋に、ただ懐かしいのだ。
副官として、面倒を見てきてた志波海燕のことが。
京楽にとって、志波海燕とはあまり好きな相手ではなかった。浮竹との仲を知り、浮竹が京楽と関係をもって、寝所を共にしたあと、熱を出す浮竹を心配して仲を裂こうとしたことがあるからだ。
何度か志波海燕は、浮竹に京楽と別れるように進言したが、浮竹はそれを聞き流していた。
そんな志波海燕によく似た、黒崎一護を、京楽は最初あまりいい印象を抱かなかった。だが、すぐに誰とでも仲良くなれて、強く、仲間を守るために命をかける一護に好感を抱くようにはなった。
「はぁ。一護君にまた会いたいなぁ」
「まだしばらく尸魂界にいるらしいから、また会えるでしょ」
「でも、会ったら・・・・そうだ、今度はツーショットで写真をとらせてもらえるように頼んでみよう。それから、現世に誘ってデートでも・・・・・・」
「浮竹ぇ」
「ん?」
「君、バカだろ」
「なんだと!」
「僕がいるのを、忘れてないかい」
「ん?」
小首を傾げる浮竹は、破壊的にかわいかった。
「なんだ京楽、焼いているのか。いっちょまえに、やきもちか!」
「いっちょまえとは酷いねぇ。そんなこという口はこうだ」
「んーーーーーー!」
浮竹の唇を強引に奪って、言葉の続きを紡げなくした。
「んんっ」
角度をかえて、何度も浮竹に口づける。
京楽は、浮竹を抱きしめて、今度はきつく首筋にキスをして跡を残した。
いつもなら、浮竹が嫌がるので、跡は残さないのだが。
いわゆる、所有物の証というものだった。
「京楽のあほっ!おたんこなす!」
「はいはい。あんまり言うことを聞かないなら、犯すよ?ぐちゃぐちゃに」
耳元で低く甘い声で囁かれて、鳥肌がたった。
ざわりと、背筋が冷たくなる。
黒崎一護とデートをしようものなら、お仕置きだと酷く犯されることは目に見えていた。
それが怖いので、浮竹は大人しくなった。
「浮竹はいい子だね」
すっぽりと、京楽の腕の中だ。
身じろぎもできなくて、浮竹は、困った。
「じゃりじゃりする!」
浮竹が、ひげごと顎を、浮竹の頬にすりよせた。
「ほらほら」
京楽のひげで、じゃりじゃりさせられるのを浮竹はあまり好きではなかった。
ちょっとしたお仕置きだ。
愛しい子が、他の子に関心をもつから。
我ながら心が狭いなと、京楽は思う。
「もう、分かったから・・・・・」
薄い腹の筋肉を撫でていく京楽の手に、危機感を感じた。貞操の危機だ。
冗談じゃない。
おとつい、散々啼かされたばかりだ。
浮竹に対しては、京楽はどこまで貪欲になる。何度犯しても、足りない。何度手にいれても、満足しない。
「あの、隊長・・・・・すみません、見てはいけないものを見てしまいました!」
「ああっ、清音いるの忘れてたっ!」
雨乾堂の隅に、目立たないように控えていたのは、3席である虎徹清音だ。
自分の隊長が、他の、しかも男である京楽隊長にいいようにされている場面を目撃してしまい、真っ赤になっていた。
今までも、何度か軽いキスやらハグやらのシーンは見てきたが、それ以上は見ていなかった。
清音は、耳まで真っ赤だ。そして、去って行った。
「京楽!アホバカまぬけおたんこなす!」
「あーはいはい。続き、しちゃうけどいいよね?」
「いやだっ」
身を捩る浮竹を抱き上げて、畳に転がすと、全身の輪郭をなぞるように愛撫していく。
淡泊な浮竹と違い、どす黒い欲望をもった京楽は、毎日でも浮竹を抱きたがる。
「京楽、俺が悪かった。だからやめ・・・・っ」
「スイッチはいちゃったから。もう、無理」
「やぁっ・・・・」」
雨乾堂の外にいた清音は、浮竹のあげる甘い声を耳にして、さらに真っ赤になって完全に去って行った。
