忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2025/11 3 4 5 6 7 89 10 11 12 13 14 1516 17 18 19 20 21 2223 24 25 26 27 28 2930 12

稀人と皇太子6

ルキアが、一護の正妃になって半年が経とうとしていた。

付き人は相変わらず浮竹と京楽だった。

「ルキアちゃん、最近あんまり食べてないね?気分悪いんじゃないの」

「そうなのだ、京楽殿。何かの病気であろうか」

「朽木は、前回の妊娠の時にはつわりなかったからな。子ができたんじゃないか?」

「それは真か、浮竹殿!」

ルキアは目を輝かせる。

「多分おめでただ」

「一護のところに行ってくる!」

ルキアは、与えられた正妃の寝室を飛び出して、一護の元に駆け付けた。

一護は忙しかった。

前に抱かれたのは3カ月前だ。

父の皇帝である一心が、病気のため退位することが決まり、一護が皇帝になったのだ。

それまで政治を父に任せていたが、いざ統治する側になるといろいろと大変だということを、骨身に染みて感じた。

父は、妹たちに甘くアホだったが、よい皇帝であった。

一護もそれを見習い、大臣や家臣たちを会議を開いていた。

「一護」

「どうしたんだ、ルキア。今は会議中で手が離せねぇ。なんか緊急の要件でもあるのか?」

「その‥‥また、子を懐妊したのかもしれぬのだ」

ざわり。大臣や家臣たちの顔に喜びの感情が浮かぶ。

「皇帝陛下、今日はもうお休みを。ルキア様を一刻も早く、医師に診せるべきです」

「え、ああ、わりぃな。後のことはお前たちに任せる。大事な決定事項は俺に知らせてくれ」

一護はルキアをお姫様抱っこすると、医師の元に連れていった。

「おめでとうございます。ご懐妊です。3カ月ですね」

「3カ月前、最後に抱いたのがその時か‥‥‥」

一護は、ルキアの頭を撫でまくって髪をくしゃくしゃにする。

「でかしたぞ、ルキア!未来の皇帝だ!今度こそ、無事に生まれるように祈ろう」

「ああ、一護。もう、暗殺者や毒はごめんだ」

一護は、妻として娶れといってくる他の国との縁談を断って、ルキアだけを愛していた。

ルキアも、そんな一護を愛していた。

二人の絆は強固なものになっており、そこに有翼人の稀人である亜人との差などないようであった。

ルキアのお腹は、時間と共にゆっくりであるが膨らんでいった。

心なしか、あまりない胸も大きくなっていた。

やがて、9カ月が経った頃、ルキアは陣痛を訴えた。

生まれるには10月10日かかる。

またもや未熟児でのお産となるが、最新の医療を取り揃えて、一護はルキアの出産に立ち会った。

「うーーん」

「ルキア、俺の手を握ってろ。爪立てていいから、あと呼吸を忘れずに」

女医の手で、出産が促される。

逆子で、出産には6時間かかった。

初め、へその尾が首に巻きついていたため、また死産かと思われた。

担当の女医が、何度も人工呼吸と心臓マッサージを繰り返して、赤子はこの世に誕生した。

「おぎゃあ、おぎゃああ」

元気に泣く赤子を見届けて、ルキアは意識を失った。

意識を取り戻したルキアは、赤子にお乳を与えた。

「名前は女の子なので、苺花にしようと思う。一護、貴様の名の響きを入れてみた」

「苺花か。かわいいなぁ」

一護は、苺花を見て抱き上げる。

「そっとだぞ?持ち方はもっとこうだ」

「こうか?」

「そうそう、その調子だ」

ルキアは、正妃として母として、子に愛情を注ぐ。

それから、ルキアは体調を崩しがちになり、赤子の世話は乳母に任された。

粉ミルクで育っており、熟練していた乳母だったので安心して任せられた。

「ルキア、今日は何か食えそうか?」

一護は、毎日どんなに忙しい時でも必ずルキアの元を訪れる。

「ああ、一護。今日は気分がいいんだ。散歩をしたい」

長いこと臥せっていたので、足の筋力がおぼつかないので、一護はルキアを車椅子に乗せて、中庭の薔薇園までやってくる。

「やあ、一護君にルキアちゃんじゃない」

「お、二人で散歩のデートか?」

京楽と浮竹が、暇だというので庭師の仕事を任されていた。

「そうそう、最近やっと青い薔薇が咲いたんだ。朽木にあげよう」

浮竹が、青薔薇の一本をはさみで切って、ルキアの髪に飾る。

「ありがとうございます、浮竹殿。京楽殿も元気そうで何よりです」

「ルキアちゃんも、早く元気になりなよ?」

「はい」

一護は、ルキアを中庭のテーブルのある場所の椅子に座らせて、午後の茶の時間をもうけた。

「菓子はいろいろあるから、好きなの絵らべ」

「すまん、一護。有翼人の稀人にとって、出産はとても危ういものなのだ。こうして今回は助かったが、次回はもう産めぬ」

「まじか。でも問題ねーよ。今の俺たちの子の苺花は無事に育ってくれている。ルキア、今後もお前と抱くけど、ちゃんと避妊する」

「すまぬ」

「お前の命が第一だ。失いたくない」

「一護、苺花は女児だ。この帝国では、女児は女帝になれない」

「そんな心配する必要ねぇよ。俺はこの国の皇帝だぜ?法律なんて変えちまえばいいんだよ」

一護の言葉に、ルキアは安心する。

苺花は、将来女帝として生きていくことになるのだった。

拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/02)
(11/02)
(11/02)
(11/02)
(11/02)
"ココはカウンター設置場所"