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  • 08/21/01:30

制服

「どうだ?刹那は青のイメージが強かったから、青を基調とした制服にしてみたんだが。背丈は思伸びると予想して、昔より大きめのサイズにしてみた」

「ああ、ぴったりだ」

「そうか。ならよかった」

ティエリアはほっとした。
やっと邂逅できた刹那は、この5年で大人になり、ティエリアよりも背丈が高くなり、そして頼れる存在となっていた。
男としての野性味もましており、魅力的な存在に見えた。

「アレルヤはサイズが少し小さすぎるようだった。ライルはぴったりだったが」

ガンダムマイスターに新しく選ばれたライルの存在は、ティエリアには衝撃的だった。ニ-ルと同じ顔、同じ声。
でも仕草の一つ一つが違う。
違和感でいっぱいだった。

ティエリアはもう、ニールとの婚約指輪をつけていない。この5年で、想いは昇華した。
今でも愛しているが、もうニールとの愛は思い出の中だ。
彼がなしえなかったこと。争いの根絶を、ティエリアは願っていた。ニールのかわりに、刹那やティエリアが変わって、彼の想いを継いでいくのだ。

「また朝食をぬいたそうだな」

「食欲がなかっただけだ」

「食事はちゃんととれ」

命令形だった。でも、不快には思わない。

「ティエリア。俺では、ニールの代わりにはなれないか?」

「え」

突然だった。

「お前のことが大切なんだ」

強い力で抱き寄せられて、触れるだけのキスをされた。

「僕は・・・・・・・・・・」

「すまない、性急すぎたか」

「・・・・・・・・少し、考えさせてくれないか」

「お前が今でもニールのことを想っているのは知っている。だが、代わりというのも変だが、お前を大切にしたい」

「ありがとう、刹那」

その気持ちだけで、十分だった。

ティエリアは変わる。刹那と出会い、比翼の鳥になり、互いにお互いを必要とする存在へと変化していく。

ライルではなく、刹那を選ぶことになるのは、まだ先のお話。ただ、肉体関係はない。本当に、おままごとのような清い交際だ。

それは、ティエリアがニールを忘れることができないから。

刹那を代わりとして見たくないから。

ティエリアは人間だった。

イノベイターでも人間だった。

世界は変わる。ティエリアも刹那も変わっていく。

比翼の鳥は、一羽では生きていけない。二羽揃って、はじめて生きていけるのだ。それを、今のティエリアはまだ知らなかった。


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嘘つき

「ロックオン、ドコニモイナイ。ロックオン、ドコニモイナイ」

いつも自由に飛び跳ねているハロを抱えて、ティエリアは血が滲むほど唇を噛みしめていた。

「嘘つき」

「ティエリア、ナイテル?ナイテル?」

「泣いてなんかいない」

ティエリアはそう言うけれど、瞳は充血して、涙を何度も流したことを物語っていた。
もう、涙を流しすぎて、流れる水分さえない気がする。

「アイルランドに、一緒に住もうって約束したのに!」

約束をした。ロックオンと。
ロックオンの生家のあるアイルランドで、結婚して一緒に骨を埋めようと。
けれど、彼はその約束を破った。

元を正せば、負傷したティエリアが悪いのかもしれない。でも、それを庇って目を負傷し、再生治療も拒否して、ティエリアとの未来ではなく、家族の仇をとることを選んだのはロックオン自身だ。

「嘘つき・・・・・」

現実は、悲しいもので残酷だった。

ハロに、生きて戻るからと録音を託し、ロックオンは宇宙に散った。

もう、戻ってこないロックオン。声をかけてくれない。手を握ってくれない。頭を撫でてくれない。笑ってくれない。抱きしめてくれない。

何もかも、ロックオンが嘘をついたから。

「僕は貴方を・・・・・・」

憎めたらいいのにね。

愛しているからこそ、憎めない。憎める筈がない。

「嘘つき・・・・」

ロックオンの嘘は、残酷だった。

生きて戻ると、互いに誓いあったのに。婚約の指輪ももらった。ティエリアは、その指輪を外すと、放り投げた。

カラーン。

乾いた音がして、婚約指輪は何処かへいってしまった。

これから、クルーたちを支えていかなければならない。ティエリアは長い昏睡状態から目覚めてまだ間もない。

CBは壊滅的な打撃をうけ、マイスターであるアレルヤと刹那の居場所はようとして知れない。

そんな中、ティエリアは生き残ったガンダムマイスターとして、生き残ったクルーたちをまとめあげていかなければならない。

悲しみに浸っている暇はないのだ。感傷は捨て去れ。

そう言われた。

あの人の元にいけると思った。

戦いの最後、負傷して意識を失い、ロックオンの元にいけると思った。宇宙で散ったロックオン。ティエリアはトレミーに帰還したとき、ロックオンを必死で探した。機体のハッチをあけてそこにいたのは、ロックオンではなくハロだけだった。

彼は嘘をついたのだ。

ティエリアは、投げ捨てた婚約指輪を探し始めた。一時の感情で投げ捨てたとはいえ、大切なものだった。彼がくれた最後のものだ。

やがて数時間さがして見つけると、ほっとしてハロを抱きしめ直す。

「あなたは、嘘つきだ。それでも愛している。どうにもならないくらいに。いっそ、この身が八つ裂きにされてしまえばいいと思う。それくらい苦しい。この想いをどうすればいい?」

もういなくなったロックオンに語りかける。ティエリアは、意識を戻してすぐに宇宙に花束を流した。

ロックオンと住んでいた部屋にあったものは、トレミーが大破したことでほとんどがぐちゃぐちゃになっていたけれど、遺品はなんとか手に入れられた。

だが、ティエリアはそれを身近に置かなかった。処分した。

後ろを向いてはいられないのだ。

まずは他のマイスターたちを見つけなければいけない。

「嘘つきでも、まだ愛している」

この気持ちをどうすればいい?

分からない。

分からないから、振り返らずにがむしゃらに前に進むしかない。

愛と憎しみは紙一重。

この愛がいっそ憎しみに変わればどんなに救われることだろう。

でも、ティエリアにはできない。

愛してると何千回も互いに囁いた。記憶を切り取れるなら、それを選んだかもしれない。

どうしようもないくらいに愛している。でも、もう愛せない。

一方的に愛を囁いても、死者は語り返してくれない。

苦しい。

ただ、苦しかった。

嘘つきの愛しい人は、果たして天国にいけただろうか。それとも輪廻の環に入っただろうか。

いつか、アイルランドに行こう。

そして、ロックオンの・・・ニール・ディランディとして生きてきた彼の軌跡をたどって、墓参りに行こう。

強く決意する。その時は赤い薔薇をそえよう。墓に。服は黒の喪服のスーツだ。

「前を向かなければ・・・・・・・」

指にはめ直した、婚約指輪を握りしめて、彼は悲しみを振り切っていく。

これからまた人が死んでいくだろう。

それでも前を向いて歩いていかなければならない。

ただ一つ、確実に言えること。

きっと、もう二度と人を愛さないだろう。けれど、それは刹那と出会って変わる。刹那と邂逅し、痛みを分け合っているうちに比翼の鳥となる。

ロックオンとは違う、愛しい存在。

今のティエリアは知らない。まだ、自分には未来があるということを。















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風に揺られて

「あ~~あ~~~」

風に揺られて高いソプラノの声が流れてくる。

「あ~~~~~~~」

時にそれは少年の綺麗なボーイズソプラノへと変わる。

「あ~~~~~~~」

「また歌ってるのか?」

「あ~~~」

ティエリアは、風に紫紺の髪をなびかせながら、デッキでうなる風に流される髪を右手で押さえて、ロックオンの方を見た。

歌の名前もない、即興のただの音を辿るような歌だった。

綺麗なボーイズソプラノと少女のソプラノの声が交じり合う。

まるで全身を風に揺られている錯覚を、ティエリアは覚えていた。肩まである少し長めの髪を、流れる風にさらわれながら、ロックオンに捧げるように歌う。

中性の天使は、美声の持ち主だった。

ティエリア・アーデ。少年とCBでは位置づけられてはいるが、他のクルーもマイスターたちも知っている、特殊な性別だ。少年よりであったが、今では少女よりになりかけている中性体。
少女になりかけているのは、ロックオンという恋人の存在のせいだ。
彼と真剣に付き合い、時には体を繋げるティエリアは少女よりの中性になっていった。

それでも少年の仕草や、性格は少年のものを残す。
自我を築いた時、少年として作られ生まれ落ちて、少年として過ごしてきた。

「あ~~~~~~~~~」

にこりと笑って、ロックオンのほうに手を伸ばす。

ロックオンはその手をとって、風に揺れるティエリアの髪を撫でながら、彼の手にキスをした。

「あなたも歌いませんか」

「いや、俺は歌は聞くだけでいい。お前さんの声を聞いていたい」

「そうですか。らららら~~~~~~~~」

ソレスタルビーイングの中で、歌姫と名高いティエリアの声は綺麗だ。透明な風のようで。
古い時代の本当の歌姫の曲を好んでよく歌う。

デッキで、こうして歌を歌うのは日常茶飯事。誰にも迷惑をかけているわけでもなく、むしろその声をききたげにクルーたちは、ティエリアが歌っていると、デッキの近くに集まりその綺麗なボーイズソプラノと、少女のソプラノの声をいききする音程に酔う。

「ロックオン。今日は風が強いですね」

「そうだな」

歌うのをやめたティエリアの声をもっと聞きたげに、小鳥がデッキで首をかしげていた。
渡り鳥も混じっている。ティエリアはまた歌いだした。

IQ180を超える頭脳は、何か国もの言語を操る。巧みにロシア語のポールシュカポーレを歌い上げて、ロックオンをつないだ手をそのままに、ロックオンに捧げるように歌った。

「ポールシュカポーレ」

「正解」

にこりと、ティエリアは花が綻ぶような笑みをこぼす。
それにつられて、ロックオンも笑みを浮かべてティエリアを抱き寄せる。

「あの。みんな見てますが」

開いたままのデッキの扉の向こうでは、クルーたちがティエリアの歌声に聞きほれたようにまたは野次馬のように集まっていた。

「気にしなさんな」

抱き寄せられて、慣れているのでティエリアは拒絶もしない。素直なものだ。
機嫌の悪い時はパンチが飛ぶが。

二人は、しばし抱き合ったまま空を見上げていた。今日は快晴だ。ここ数日は嵐で、外に出たくても出れない天気が続いていた。

綺麗な空の色にティエリアが見いっていると、ロックオンはふとこんなことを言い出した。

「空を全部丸ごと、お前さんにプレゼントしてやりたい。この流れる風も」

「いりません」

拒絶されて、ロックオンは笑う。
そう言うと思っていたのだ。

空は空であるが故に美しいのだ。時刻によって色を変えていく。風は風であるが故に心地よいのだ。誰にも捕らわれない。自由だ。

そう、彼らはつかの間の自由を満喫していた。
敵との戦闘はここ数日の嵐でないのだが、いつまた戦闘がおこるか分からない。

だから、歌う。

自分たちが自由である証のように。
CBが世界を革命していく証のように。

何故そんな気持ちになるのか、ティエリアにもよく分からない。ただ、時折歌いたくなる。ちなみにいつものジャボテンダーさんは、デッキの上でロープに洗濯バサミでとめられて揺れていた。

洗濯したのだ。湿気ていたのがティエリアには不愉快だったらしい。

「らら~~~~」

ロックオンから離れ、ティエリアは風に揺られて歌いだす。

CBの未来が明るいことを祈るように。讃美歌のような歌に、クルーたちは二人の邪魔をしてはいけないと、少しずつ減っていく。

大切な時間を邪魔してはいけないと。彼らは、恋人同士なのだ。

ガンダムマイスターである以上、自由の時間は限られている。それを知っているクルーたちは、手を振って一人また一人と解散して、観客は0人になった。

ロックオンはそれを確認してから、ティエリアを再び抱き寄せ、その唇に重ねるだけのキスをした。ティエリアは少し微笑み、自分からもキスをする。

「少し唇がかさついていますね。リップクリーム使いますか?」

「お前さんが塗ってくれるなら」

ティエリアは少し困った顔をして、それから愛用している色のついていないリップクリームをポケットから取り出すと、ロックオンの唇に塗った。

「さんきゅ」

ティエリアは微笑む。風に揺られる忘れな草のように可憐に。

マイスターたちは限られた自由時間をこうして過ごしていく。二人は恋人同士。寝泊まりする部屋も一緒のほぼ同棲状態。
他のマイスターであるアレルヤと刹那は何も言わないが、きっとこの二人の関係を心の奥底では推奨していないだろう。

戦闘中に恋人を庇う行動を、この前ティエリアがとった。
それに何も言わないが、いつかこの関係が壊れてしまう時がくるのかもしれない。そんな時がこないように、ティエリアとロックオンは祈るしかない。

互いに生き残れるように。この戦争を、終わらせるために。

生きて生きて生きて、幸せをいつか掴み取るんだ。それが二人の願いであった。

風がまた流れる。ロックオンの柔らかな茶色の髪が、流れていく。ティエリアの紫紺の髪も流れていく。

風のように自由に生きれればいいのにと、ふと思う。

いつか、ティエリアはロックオンの生家のあるアイルランドの地を踏むことを、ロックオンと約束していた。
その約束が果たされる時がくるように、二人は祈るしかなかった。

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ナンバリング(3期)

「ほら」

チリン。
鈴が小さく鳴った。

「はい?」

可愛らしく首をかしげる。サラリと猫毛の濃い紫の青みがかった髪が、光に弾ける。サラサラと、肩から零れ落ちていく。

「いや、なんだ、あのさ」

「はっきりしてください」

言葉を濁すロックオンに、ティエリアは冷たく言い放った。カタカタと、顔はロックオンのほうを向いているが、今現在はコンピューターを使って、先日スメラギからもらった戦術の復習のようなものをしている。復習というか、変えるに値する場所があるかどうかの真価を、戦術を使う方の目から見てどうかというものだった。そういう点で、スメラギから頼られていることは誇りでもあった。

カタカタカタカタ。

無機質な音が部屋の中で、響いた。

「だから、さ。お返し」

「なんの」

ティエリアは、溜息をつくと、コンピューターの電源を落とした。きちんとセーブして、データをDVDに焼き付けている。

ティエリアにとって、仕事中にこうやって声をかけられるのはあまり好まないのだが、仕事のコンピューターを、自分の部屋でもなく、一緒に寝起きしているロックオンの部屋に置いている時点で、ロックオンと話すことになるとなるべく電源を切るようにしていた。

そうしないと、話が成り立たないからだ。

ミススメラギからもらった仕事も、急ぎではない。

「なんなんだ急に」

いつもは愛らしい天然も、仕事中だったということもあり、なりを潜めている。

「んー、そういうとこも好きだぜ」

後ろから抱き付かれて、ティエリアは目の前でなる鈴を受け取った。

「あなたはいつもそうですね。そうやってごまかす」

「いや、ごまかしてなんかない。ちゃんと仕事終わらせて、俺の相手してくれるティエリアのことが大好きだぜ?」

好きだと耳元で囁かれて、ティエリアは頬をかすかに薄く桃色に染めた。

「なんなんですか、これは?」

「こうすると、かわいいだろ?」

「あ・・・・」

ティエリアの手の中にあった鈴を、ロックオンは一房ティリアの髪を手ですくいとって、それにシャツの中から出してきた髪ゴムと一緒に、ティエリアの髪にくくりつけた。

チリン、チリン。

「もしかしてバレンタインのお返しのつもり?」

「そうだといったら?」

「お返しはすでにもらっていますが」

ティエリアの首には、純銀でできており、ティエリアの髪の紫色と同じアメジストがペンダントトップになっているペンダントをしていた。それが、ロックオンからもらったバレンタインのお返しだった。

たかがチョコレートをあげただけなのに、貴金属の類をもらうのは、相応ではないと辞退したのだが、ロックオンにせがまれて結局もらうような形になってしまった。

バレンタインのお返しは、3倍以上のものでもうもらってしまっている。それ以上の品物を受け取る気などさらさらなかったのだが、こうやって好きだと言われてこうやって、ロックオンの手でつけられてしまうと、自分ではとれなくなってしまう。

「このペンダントで十分なのに・・・・・」

「いいんだよ。あげるのは俺が好きでやってるんだから」

個人口座にかなりの額のお金があるが、こういった形で消耗するのはティエリアはあまり好まない。
それを知っていても、せっかくあるお金なんだしと、ロックオンは暇があればティエリアに花束や貴金属を買ってあげていた。

いつの間にか、ティエリア専用の宝石箱ができてしまったほどだ。

もらっても、それをいつも身に着けているわけでもなく、デートの時などにしか身に着けてくれないとロックオンも知っている。
デートの時に身に着けてもらえるだけで十分だと、ロックオンも思っているようだった。

「かわいいだろ?音がティエリアみたいだ」

チリンチリンとなる鈴は、明らかに金でできていた。

「またこんなものにお金をかけて・・・・・少しは、自分のために使ってはどうですか」

「いいんだよ、俺は。ティエリアに似合うんだから、買いたくなるのは仕方ないだろ?」

「僕に似合う?」

チリン。
鈴が鳴る。

こんな、小さくて可愛い存在じゃないと、ティエリアは知っている。自分というイノベーターがどんなに汚れているのかも。何故、自分なのだろうと問うた時もあった。
ティエリア・アーデは、一度好きなロックオン・ストラトスことニール・ディランディを失ってしまっている。いや、失ってしまっていたと認識すべきか。

そして、ここにいるティエリアは、ニールが愛したティエリアではなかった。本来のティエリアはすでに死亡しており、宇宙に棺が流された。見送ったのは刹那だ。
本来、ロックオンに好きだと抱きしめられる価値もない。しょせん、ナンバリングで選ばれただけの存在だ。
ティエリアの代わりは、ティエリアと同じ容姿、声をもったティエリアが他にも今も眠っているのだ。

「またそんな顔をする。お前さんは、ティエリアだ。それ以外の何者でもない」

チリン。鈴が鳴った。

「あ・・・・・」

唇が重なる。
少しかさついたロックオンの唇の感触に、ティエリアは目を閉じた。
自然と、涙が滲み出てきた。

ロックオンは、今のティエリアがかつて愛したティエリアでないと知っても、こうして同じに扱ってくれる。
それが愛しくて、そして哀しくもあった。

「ロックオン・・・・」

ニールと呼ぶよりも、ロックオンと呼ぶのに慣れすぎてしまっているティエリア。
記憶も意識も感情も、何もかも前のティエリアと同じものを刷り込まされているせいで、ティエリアはどのティエリアが本当の、ニール・ディランディに愛されているティエリアなのか分からなくなってくる。

「泣くなよ。離せなくなるだろ」

「僕は、あなたのティエリアになれているだろうか?」

「バーカ。お前はもう俺のティエリアだ。離すもんか、もう二度と」

先に、ティエリアを死という形で手放したのはロックオンである。結局は生き残り、こうしてまた抱き合ったり体温を共有することができるが。

ロックオンは今も後悔している。ティエリアを置いて、仇をとることを選んだ自分に。しかし、あの時はその選択肢しかなかったのだ。ティエリアよりも大切なことがあった。だから、ロックオンことニール・ディランディは死が先にあると知りながらもその未来を選んだ。

結局家族の仇は取れず、リジェネの手によって助けられ、再生された。

そして知った真実。

イノベイターという存在。

愛しくてたまらなかったティエリアの死。

葛藤しなかったといったら嘘になる。初めて、目覚めて間もないティエリアと対峙した時のことは今でも記憶に焼き付いている。
ティエリアは、ロックオンが愛したティエリアの声で、態度で、感情で、全てで包み込んできた。

このティエリアは、「代わり」なんかじゃないとロックオンは悟った。

「お前さんは、お前さんかもしれない。でも、もう俺にはお前さんしかいないんだよ」

ロックオンの腕に力がこもる。

ティエリアは、涙をぬぐって、ロックオンの手に手を重ねた。

チリン。

不安定な形で、髪に結われていた金の鈴が床に転がり落ちた。
その後を追うこともなく、二人の恋人は無言で抱きしめあい、体温を共有すると、ぎこちなく微笑んだ。

何度かキスを繰り返して、頬を染めたティエリアは、床に転がった金の鈴を手に取った。

「直しておきますね」

「ああ。それよりもっかいキスさせて」

ティエリアが宝石箱の中に金の鈴を入れたと同時に引き寄せられた。力強い、抗いがたい腕だった。

「ロックオン・・・・好きです。もうどこにも行かないで」

「ああ。約束する。ティエリア、好きだ。お前さんこそ、何処にも行くなよ」

二人の恋人は、音もなく抱きしめあいながら、口づけを交わし続けた。

もう、二度と失わないように。

離さないように。

最後の時、死が二人を分かつまで、と祈るように。




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おせちの予感

ふんふんふーん。
鼻歌まじりで、年明け早々ティエリアはキッチンに立っていた。
ぐつぐつぐつぐつ。鼻にツーンとくる刺激臭がするが、ティエリアは平気そうである。

平気でないのは、ソファーに腰掛けてガタガタと小刻みに震えているロックオンであろうか。

今年もきた。
新しい年がきた。

それは喜ばしいことである。
新年あけましておめでとう。お年玉を年少組みにもアレルヤにもあげた。年長者としての接触はばっちりだった・・・・・・・はずだ。たぶん。

ティエリアがおせち料理を作ると言い出すまでは、ロックオンは上機嫌だった。

「そろそろできますよ。いっぱい食べてくださいね」
「お、おう」

がたがたがた。武者震いのような体の震えがとまらなくなる。これは恐怖からくる震えであった。

今まで、ティエリアの料理で何度地獄をみてきたことか。

つんとくる刺激臭からして、おせち終わってる・・・・。ティエリアの愛はうれしいけれど、手料理は簡便してほしい。

でも、ロックオンは優しいのでそういうこともできない。


「できました」

でろーん。

緑のボコボコとしふきあげる物体を、おせちの箱にいれられてもってこられた。

「ジャボテンダー粉末を入れてあるので、緑です、色は」

ジャボテンダー、いつの間に粉末なんてできたんだ。いれていいのかそれ?

いろいろつっこみを入れたいところではあるが。


「ロックオン、目標を狙い打つ!」

いざスプーンをとって、ロックオンは緑の物体を喉に流し込む。


バタ。ぴくぴく。

かろうじで痙攣してはいるが、生きてはいるようだ。

「ふむ。ジャボテンダー粉末をいれたら成功すると思ったが。失敗のようだ」

味見、してないからね。ティエリアって味見せずにロックオンに食わすからね。

救急車呼ぶかなぁ。一応。

いつものオチだからね。

胃洗浄受けて、入院だからね。

それでもこりないティエリアは、愛のためにまた手料理をして、ロックオンを卒倒させるのであった。今回はちょっと作品が強すぎて、救急車を手配する必要がありそうだった。

「う、うまれる」

「ロックオン元気なジャボテンダーを生んでくださいね!」

ロックオンは腹を抱えてもだえている。とりあえず救急車を手配して、ティエリアはジャボテンダーをもって一緒に病院までついていくのであった。

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夏の空(1期)

夏の蒼い空がとても眩しかった。何処までも広がる空は、手を伸ばしても届かない。白い雲が広がり、太陽の光を少し遮っていた。

ザァン、ザァン。

海の波の音が聞こえた。
ここは王家のプライベートビーチである。そこで、短い休暇をマイスターズたちはとっていた。せっかくだからと、4人揃って同時に同じ場所で休暇に入るのはかなり、珍しいことだった。

ザァン、ザァン。

押しては引く波に音に、刹那は目を閉じる。その背後で、ロックオンが刹那の髪を器用に、鋏で切り落としていく。
残ったアレルヤとティエリアは、アレルヤはりんごの皮をむいていたし、ティエリアは計測器やらフラスコやらを利用して何かと睨めっこしている。
二人して、カレーとやらを作ることになったのだが、そんなものを作ったことのないティエリアにとっては未知との戦いであるし、料理の腕が壊滅的なので、ルーを選ぶだけの作業のはずが何故かフラスコやら試験管やらを用意して使っている。

「切りすぎるなよ」

刹那が、ロックオンに念を押す。ロックオンは承知したとばかりに、刹那の頭を撫でる。櫛を通して、くせ毛の長さを調節していた。

ボン!

ティエリアのほうでは、何かが爆発する音がして、彼がむせていた。

「何故だ!何故爆発する!カレーのルーだろうが!」

爆発した物体に悪態をついている。
アレルヤはため息をついて、じゃがいもやら人参の皮をむき、軽く炒めるとそれを鍋の中に放り込んでいった。とても慣れた手つきだった。

料理の腕はロックオンが一番かもしれないが、アレルヤもなかなかのものらしい。

「ティエリア、もういいから。あとは僕が作るから」
「いいや、ここは僕に任せてもらおうか」

ティエリアは、カレーのルーをぼちゃぼちゃと鍋にいれていく。全て激辛のルーを。

「ああ、そんなにいれちゃだめだよ!しかも辛いのばっかり!」
「カレーとはもともと辛い料理だ」

だからどうしたのだと、ティエリアは氷の美貌でアレルヤ何を言われても表情を変えることがない。ふんぞり返っている。

「あー。仕上げはお兄さんに任せろっとな」

刹那の髪を切り終えずに途中放棄して、ロックオンが、鍋の煮込み具合をみて、その辛さに対抗するために少しばかりの蜂蜜を加えたりしていた。
切りそろえられたりんごも少し入れられて、とろみが出るまで煮込んだ。

「いつまで俺はこのままなんだ」

椅子に座らされ、シートをかぶせられて刹那は動くこともできずにザァンザァンと波打つ海を見ていた。はるか地平線が見える。地球は丸いのだとぼーっと考える。

「ああわり、刹那。最後の仕上げすっか」

鍋をアレルヤに任せ、うなっているティエリアを慰め、それから刹那の髪を軽くすいていく。

それは夏のある日の光景。
夏の空は、どこまでも澄んで、そして遠く蒼かった。



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色とりどり(3期)

殺風景だと思って、ブリーフィングルームに観葉植物を少し多めに置いてみた。
いつの日にか咲いていた忘れな草の花は、花を散らしてまだ置いてある。私を忘れないで。まるで彼そのもののように咲く花は、可憐な淡い水色だった。
如雨露で数少ない植物に水をやるのが、ティエリアの日課になっていた。

私を忘れないで。

彼はそう言葉もなく、ロックオンに対して思っているのだろう。

一度別たれた道は、今は一つの線となって融合した。

死したはずのロックオンはリジェネの再生により生き返り、ティエリアはヴェーダの中で意識体として存在していたものを、再び新しい肉体に意識を宿らせて産声をあげた。

「なんだ、植物の世話でもしてたのか?」
「はい」

如雨露を片手に、ティエリアは微笑む。優しい笑みを浮かべるようになったと思う。数年前はそれこそ冷たい氷のような存在だったのに。ロックオンと邂逅することで、ティエリアはイノベイターから人間になり、イノベイドとなった。それはよいことなのか悪いことなのか、イオリア・シュヘンベルグの計画の中にはなく、人間であろうとするティエリアを仲間は受け入れている。

「ここもえらい緑が増えたもんだ」
「何もないよりはましだ」

花を咲かせた蘭が空調の風で少し揺れた。

「忘れな草、まだ生きてるんだなあ」
「あなたがくれたものだから」

かつて、ロックオンが死する前にくれた、水色の鉢植えは、ティエリアが大切に大切に世話をして、枯れることなくもう何年も花を咲かせている。
忘れな草は、ロックオンの生家にも咲いていた。
忘れな草をあしらった髪飾りなんかも、昔は買ってもらった。ティエリアが、多分一番好きな花だろう。ロックオンも一番好きな花なのかもしれない。

私を忘れないで

それはお互いの想いになる。

どちらが欠けても、忘れないでいれば、心の中に生きている。

今はもう、武力介入することがほとんどなくなり、平和そのもののトレミー。

それでも忘れな草は、また咲く。二人の想いを受けて、互いに忘れないでと。

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午睡(3期)

柔らかな日差しが、窓辺から差し込んでくる。
ふわりとカーテンが風に揺れて、まるで生きているみたいだと、ロックオンは思った。
午睡していたティエリアは、隣にあるはずの温度がなくなっているのに気付いて、目を開けて、こすっている。

「ロックオン?」
「心配しなさんな。ちゃんと側にいるよ」

日差しが差し込むソファーの上で、ゆったりと、本を読んでいるらしかった。

「まだ眠い」

眠そうに大きく伸びをしてから、欠伸を一つする。

「寝ればいいさ。部屋にはちゃんといるから」
「そうする」

何を思ったのか、ティエリアは、寝台から降りるとロックオンの座っているソファーまでやってくると、彼の肩に体重を預けてまた目を閉じた。

「あなたの体温がないと寂しい」

ロックオンは、ティエリアの頭を撫でて、それから紫紺の髪を手ですいた。
サラサラと指の間からすり抜けていく、綺麗な髪はシャンプーのいい匂いがして、ロックオンからはお日様の匂いがする。

「ロックオン、お日様の匂いがする」

肩に摺り寄せた顔を、ロックオンの胸に埋める。

「ティエリアからはいい匂いがする」

二人して、いつの間にかまた午睡に入るのであった。

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ティアドロップ2(3期)

ティアドロップ。
それは天使の涙。雨は、天使が零した涙でできているんだ。
ティアドロップ。甘そうな名前だけど、食べられない。だって雨だから。

「あ、ティアドロップだ」

天が泣き出した。ティエリアは空を見上げて、両手を広げてぽつぽつと降り出した雨を、その掌に受け止める。
ポツポツと、泣き出した天はお日様を背に笑うことなく、泣き続けている。
もっていた傘を開いて、くるくると回す。先を歩むロックオンの傘の模様が、雪のようで綺麗だとそんなことを考える。
まだ本格的には降り出していないので、傘をささない人もまばらに見受けられた。だが、半分の人は傘をさすか建物の下にもぐりこんで、雨をやり過ごそうとしている。

「どうした、ティエリア」
「いいえ。ティアドロップだなと思って」
「ああ、雨のことな。そんな呼び方するのティエリアくらいじゃないか」
「そうだろうか」

真剣な表情で、ロックオンの隣に並ぶ。
すでに午前中も雨だったため、地面はぬかるんでいて、水たまりができていた。
それをわざとパシャンと踏んで、音を楽しむ。コンクリートの上にできた水たまりだから、泥がずぼんの裾を汚すようなことはなく、皮でできたブーツの先を少し濡らしただけだった。

「ロックオン、レインコート着てきて正解でしたね」

明るい色のペアのレインコートを二人は着ていた。
天気予報で、今日は一日中雨で、たまに天気になるといっていた。

天がぐずついてきた。大泣きだ。

本格的に降り出した雨の中、二人は傘をくるくる回しながら歩いていく。
目的地なんてない。
ただの散歩だ。地上が嫌いなティエリアだが、ロックオンといるとそれも忘れられた。それに、今は水の匂いがする。雨は、嫌いではない。雪のほうが好きだけれど。

「ティアドロップは、天使の涙。天(そら)が泣いている」

まるで、何かの詩のような言葉だった。

「ま、どしゃ降りになる前に、刹那の家に帰るか」

今滞在している区域は、日本の経済特区東京だ。そこの刹那の家で厄介になっている。刹那自身は宇宙にいるので、貸し切りなのだが。
隣の家にいた沙慈・クロスロードという人物は、CBと大きく関わった後、宇宙技師として普通の会社で働いている。
まさか、まだ隣の家がCBのメンバーが使っているとは想像もしないだろう。
刹那は家を借りたのではなく購入していた。勿体ないからと、ティエリアとロックオンがたまに借りて、東京に滞在する。

「今度は、刹那やアレルヤやライルも連れて、山登りでもしようか。ピクニックってやつだ」

今のCBには、武力で戦闘介入を世界にしなくなった分、余裕があった。ガンダムマイスターたちも、平和を持て余している。

「山は好きです。緑の匂いがするから。でも、登るのは大変なので嫌いです。でもピクニックにいくのはいい考えです。なんならガンダムで山に降りたてば・・・・・」
「それは外道だろう。ピクニックになりゃしねぇ」
ロックオンが、面白そうに笑った。

くるくると、傘が回る。
くるくると、つられてティエリアの傘も回る。

「いっそのこと、みんな誘うのはどうだろう」
「それだとCBのトレミーが空になっちまう。ガンダムマイスターだけのピクニックもありだろう」
「じゃあ、リジェネも一緒でもいい?」
「ああ、いいさ」

リジェネは、ティエリアと同じように意識をヴェーダの中に置き、新しい肉体に意志を宿して今はCBの中の、ガンダムマイスターとして存在する。
ティエリアがを巡って、よくロックオンとケンカをしていた。
本当に、今はなんて幸せなのだろうか。

ヴェーダを掌握しきり、新しい肉体を手に入れた。
ロックオンは一度、本当に死んだ。それをリジェネが肉体を再構築させ、意志を復活させることに成功し、彼はフェニックスとなって生き返った。
ロックオンが隣にいる。それだけでも幸せなのに、みんな生き残ってくれた。
新しい意志との遭遇もあったが、今のところ何も問題はない。

幸せすぎて、瞳からティアドロップが零れてしまいそうだ。

空を、GN粒子の光が横ぎった。

「あれは刹那のクオンタか。ああ・・・メールが入ってた。迎えにきたらしい」
「そうか。では戻ろう。宇宙(そら)へ」

あくまで、地上へは休暇で降りるだけだ。
彼らCBの拠点は宇宙にある。
トレミーは、今も地球を見守りながら運行を続けて、いつでも武力介入できるようにしている。だから、とりあえず今週の休暇は終わりらしい。

「戻ろうか」
「戻るか。やはり地上は重力が鬱陶しいからな。宇宙のほうが気が楽でいい」

ティエリアの地上嫌いは、まだ治っていないようだった。




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料理(3期)

らんらんらん。

そんな陽気な歌声が聞こえてきそうな、キッチン。
ここは、ロックオン・ストラトスことニール・ディランディのアイルランドにある生家である。
そこで、ティエリアと一緒に暮らし始めて、もう一年以上になる。
時には武力介入のためにトレミーに帰還し、ガンダムに乗るが、今は平和そのもので、ちょっとしたテロ行為をしている武装組織を潰したり、アロウズの残り部隊を駆除したりとそんな程度の武力介入であった。

らんらんらん。
つけ加えていおう。
あくまで、そういう雰囲気なのだ。
決して、歌を歌っているわけではない。ティエリアの歌声は、天使の歌声と評判で、真面目に歌えば歌姫になれるかもしれない。

「ロックオン、もうすぐできますからね」

「あ、ああ・・・・」

胃薬を、棚からどっさり取り出してどれを飲もうと、今から思案する。
いや、この際全部飲んだほうがいいかな。

いつも家事のうち、料理を担当しているのはロックオンだ。絶望的な腕前のティエリアに料理をさせないように気を配っている毎日だ。
それでも、時折ティエリアの機嫌がいい時とか、ティエリアが自分で料理するといって聞かないときいがある。そう、今日みたいに。

キッチンを覗けば、背中にジャボテンダー抱き枕を背負い、見るからにアホに見えるティエリアが(頭はいいんだけど)、キッチンに立っていた。

「えい!そりゃ!」

掛け声と一緒に、鍋の中に、エビをぶちこみ、そして刻んだりんごをぶちこみ、蜂蜜をたっぷりいれて、その中にチョコレートをぶちこんで、七味唐辛子をあるだけいれていた。
ドロドロドロ。
液体がドロドロしている。
紫の液体だ。

キッチンには試験管が置かれており、それで何かの液体を作ってそれをベースに調理している模様だった。

ぐつぐつぐつ。

匂いだけで、もうお腹いっぱいです。
悪臭ではないが、鼻を刺激する匂いがした。甘ったるいようで、からそうなキムチの匂いもする。

「てい!」

あけたばかりのキムチの瓶を、全部鍋に入れるティエリア。
何を作っているのか、ロックオンには分からない。たとえ愛があっても、理解できないものは理解できない。理解できていることといえば、ティエリアの料理の腕は壊滅的であるということぐらいだろうか。

「できました。カレーです」

「カレー?」

ポコッ、ボコッっと煮えた液体を、ライスの上にぶちまけて、それを自分の分はなしに、ロックオンの分だけ盛る。

「さぁ、いざ食べてください」

食べる前に、救急車を手配しておいた。

ぱく。

一口食べただけで、ロックオンは昏倒しそうになる。それでも愛だ。全部食べた。その後胃薬を大量に飲んだけど、やっぱりだめだった。

「おかしいなぁ。カレーのルーは紫色のをちゃんといれたんだが」

ティエリアが、首を傾げている。

いや、紫色のルーなんてありえないから。きっとそれ、カレーじゃないから。未知の物体Xに違いない。

鍋に残った液体は、温度がさめたにも関わらずまだボコッ、ボコッと音を立てている。
胃薬が効いたのか、腹痛があったが少しおさまる。

「う、うまれる・・・・・!」

ロックオンは、ティエリアの手料理を食べた後の定番の台詞を放っていた。
そこへ救急車が到着して、ロックオンが運ばれていく。ティエリアも一緒に乗って、こう言うのだ。

「今度こそ、ちゃんと生んでくださいね!僕とロックオンの子供を!」

いや、無理だから。
ロックオン、男だから。

突っ込みを入れたいロックオンは、意識が混濁してそのまま病院に運ばれるのであった。ティエリアは、少し悲しそうにしていた。

「また失敗した」

どう頑張っても、料理の腕が上がらない。どうすればいいんだろうと、思いながらもロックオンのために、またいつか手料理するだろう。それが、ロックオンにとって試練になるとは知らずに。








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ヴェーダ(3期)

ヴェーダの中でティエリアは微睡んでいた。
アクセスされる音でゆっくりと瞼をあげ、目覚める。大量の情報いう波に押し寄せられるように、ヴェーダの河岸でゆっくりと起き上がる。

「また君か、刹那」

トレミーのパソコンを使って、刹那がヴェーダに直接リンクをしかけてきたのだ。

「元気にしているか。ティエリア・アーデ」

ティエリアは、パソコン上に画像として現れて、悪態をつく。

「いつも通りだといっているだろう」

そして、パソコンの中からティエリアの画像が消える。

イノベイターとして、裸身のまま透けた体で刹那の眼前に現れたティエリア。

「ティエリア・・・・服を」

「ああ。忘れていた」

半分透明な姿で、まるで幽霊のようだけれど、イノベイターでもヴェーダの中に完全に取り入れられたティエリアは、時折そうやって姿を現すが、いつも裸身だった。

絶対的な美貌はそのまま。
性別のない中性の体は、性別を現すものをもたない。
裸身でも、まったく構わないのだがと、ティエリアはいつも思う。だが、いつも服を着てくれと言われる。

ヴェーダーの情報を少しいじり、ティエリアはいつもの制服姿で刹那の前に立った。

「前のように、肉体をもって現れないのか」
「少し時間がかかる。しばらく映像だけで我慢してくれ」
「そうか」

ヴェーダの中で意識だけを宿らせたティエリアは、別の肉体を纏ってトレミーに時折現れる。イオリア計画のために、いくつものスペアの肉体を持っているティエリアだからこそ、なせることだろう。

刹那は、透けるティエリアの体に寄り添うように立って、触れることもできないキスをする。

「やはり、肉体があったほうが便利だ」
「なるべく早く、肉体という器に宿って現れよう。刹那のアクセス数が多すぎて、おちおち眠ることもままならない」
「すまない。だが、身近にいてくれないと本当に失ったような気がして」
「分かっている。ヴァーチェでまた帰ってくるさ」

今、ガンダムゼラヴィは地球にある。
ティエリアが、いつでもトレミーに帰還できるようにと。

「しばらくまた眠る。次に起きた時は、肉体を持っているだろう。それまで僕は静かに微睡む。アクセスの拒否はしないが、1日に何度もアクセスしないでくれ。では」

ふわりと、ティエリアの半分透けた体が、刹那の頬を愛しそうに撫でてトレミーから消えていった。

「約束だから、ティエリア・・・・」

刹那は、またヴェーダーにアクセスしたい気分をおさえて、パソコンを閉じるのであった。

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21話補完小説「ペイン」

「このは間は悪かったな。感情的になりすぎた」

ライルは、ガンダムOOライザーのコックピットに向かう途中の刹那にそう詫びた。

「マイスター失格だ」

「ライル、俺は!」

「戦うぜ。俺は、戦う」

「分かった」

刹那は、その言葉を残して宙を蹴り、コックピットに向かう。その背後で、ライルが自分に向けて銃の標準を合わせているとも知らずに。

(ああ、そうさ。イノベイターの野郎をぶっつぶす。カタロンでもなく、CBでもなく、俺は俺の意志で奴らを叩く。だがな・・・・)

「だがな・・・今は刹那、お前を俺は」

許せない。
愛していたアニューを殺した刹那が。
刹那が間違った行動をとっていないことは知っていた。でもこれは倫理的な問題でもなんでもない。単純に、愛する人を殺した刹那が憎かった。

その引き金を引きさえすれば、簡単にアニューの仇を打てるだろう。
カタカタ。
銃を手にした手が震えていた。

「撃たないのか」

「ティエリア!いつからそこに」

「あなたが銃を刹那に向けた時から。その通路の角にずっといた」

ティエリアは、落ち着いた態度で銃を下ろしたライルから、その銃を受け取った。

「はっきり言っておく。もしも、あなたが刹那を撃てば、その時は僕があなたを撃つ」

「はは・・・・教官殿は相変わらずだな。刹那にベタ惚れか?」

「そういう問題ではない」

きっぱりと否定して、ティエリアは紫紺の髪をかき上げた。

「あの時のアニューは別のイノベイターに支配されていた。この前もいっただろう。あの時の彼女は、アニューではなかった。そして、刹那が引き金を引かなければ、ライル、あなたが死んでいた」

「分かってる!そんなこと、分かってるさ・・・・だがな、感情まで押し殺せねぇんだよ!」

ドンと壁を右手で叩くライル。
その手に手を重ねて、ティエリアは呟く。

「泣けばいい。泣きたい気持ちまで、押し殺す必要はない」

「・・・・・うわあああ」

ずっと、アニューが死んでから泣くことがなかったライルは、子供のように泣いた。
大きな声をあげて。
涙がぽつぽつと、トレミーの廊下に滴ることなく、宙を漂いそれは光に輝いてとても綺麗に見えた。

「アニュー!」

ティエリアの体を強く抱きしめて、いなくなってしまったアニューを探すように、ライルは目を瞑った。どれくらいそうしていただろうか。ふと、腕の中のティエリアが身動ぎをした。
 
「少しは落ち着いたか?いつ出撃許可が出るとも分からない。感情を乱したままでは、戦況に響く」

「ああ。お蔭で、少しすっきりした」

一番年長のガンダムマイスターなのに、一番年下と思われるティエリアに慰められ、ライルは涙を袖で拭いながら落ち着いた声を出した。

「もう刹那を撃つような真似はしねえよ。安心するといい」

少し気恥ずかしい。
ライルは、ティエリアをそっと離すと、宙を蹴って去って行った。

ティエリアの手に残された銃は、ライルの涙の分まで重くなっている気がした。

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ピアス

ロックオンに、ピアスを新しく買ってもらった。
肩まである髪のせいでいつもは見えないけれど、小ぶりのガーネットのピアスをいつもは身に着けていた。

今度のピアスは高い。ピジョンブラッドのルビーのピアスだ。
石はそれほど大きくはないが、最高級の品だから値段もそれなりにする。
鏡で、髪をかきわけて見てみるが、まるで自分の瞳の色みたいだった。

「思った通り、似合ってるな」

ロックオンが、屈託のない笑みを零す。

「こんな高いもの・・・どこで手に入れたのです」
「それは秘密だ」

ロックオンが意地悪く笑う。

「てっきり受け取ってくれないかと思った」
「僕がロックオンからの贈り物を一度でも拒否したことがありますか?」
「そういやないな」

身につけてくれてありがとう。
優しく耳元で囁かれる。
そして、耳朶を甘く噛まれて、ティエリアは少し紅くなってロックオンから身を離した。

「お返しに、何か考えておきます」
「いやそんなことする必要ないぜ。お前さんが側にいてくれるだけで十分さ」
「そうですか?」

ロックオンの言葉にまた頬が紅くなる。この人は、照れるようなキザな台詞を平気で言う。
そのたびに、ティエリアは胸が高鳴り、体温が上昇するのが分かる。

本当に、優しすぎて眩暈がしそうだ。

ティエリアは、鏡を机の上に置いて、ロックオンに抱き付いて、触れるだけのキスをするのだった。

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グリーンティー(1期)

「口に合うか分からないが」
グリーンティーと呼ばれる、日本のお茶を淹れてみた。独特の渋味があって、甘さが感じられる紅茶とは全く違った味だ。
とぽとぽとぽ。

ティーカップに並々と注がれグリーンティー。
見ているだけなら、薄い緑色をしていて綺麗だった。紅茶を好むティエリアにしては珍しいなと、ロックオンはカップを傾けながら思う。

「苦い・・・」
「そういうお茶ですから。特にこれは茶道で使う本物の抹茶です」

グリーンティーとは少し違うのかもしれない。でも、ティエリアにもロックオンにも日本のお茶の違いなんて分からない。

「茶道かあ。着物きてやるんだよなぁ。ティエリアなら似合いそう」
「変な想像をしないでいただきたい!」

着物なんて、着付けをしてもらえなければ着れない複雑な民族衣装だ。
それよりも、ロックオンの脳内の自分の着物姿を消さなけばと、ロックオンのティーカップにグリーンティーをもう一度注ぐ。

「今度、日本の屋台が並ぶ祭りがあるんだ。浴衣でいいから、一緒に行かないか?」

「あなたと一緒なら、どこにでも行こう」

宇宙の果てにだっていついていこう。

「その時、浴衣でいいから着物きてくれないか?」
思いがけない言葉だった。
「いやさぁ。記念に」
「なんの記念ですか」
「さぁ?見たいから記念?」

ロックオンが首をかしげる。茶色のはねた少し長めの髪が、音もたてずにその動きで揺れる。
その仕草が、24歳にしては子供っぽすぎて、ティエリは微笑ましく思った。

「あなたが・・・・そう望むなら」
「やっほい!約束な?」
「はい」

こうして、着物を着ることになったのだが、それはまた別のお話であった。

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ダージリン(3期)


トレミーは今も地球の周囲を回ってその存続を、平和が続くことを見守るように運行している。
今日も食堂で、ティエリアはジャボ子さんと名付けたジャボテンダーの抱き枕を指定の位置に座らせて、そのまえにはただの水を置いた。

「今日は水で我慢してください」

相変わらず、その行動をみている刹那とアレルヤ、それに他のクルーたちは笑うのを必死でこらえている。隣にいるロックオンは、もう慣れたのでその言動と行動を奇妙に思うことはなく、当たり前のこととしてとらえていた。

ああ、賢いのかただの阿保なのか分からないティエリア。

そうして食事を終えて、ロックオンの部屋に戻ると、勝手にリジェネがソファーに座っていた。

「お前なんで!ちゃんとロックかけておいたのに!」

「はん、僕をのけものにしようったってそうはいかないよ。ティエリアの独り占めは関心できないな」

ロックを確かにかけて食堂にいったのに。
でも、リジェネにはロックを解除するハックなど当たり前にできることだった。

「まぁ座りなよ」
椅子をすすめられて、ここは俺の部屋なのにとか呟きつつもロックオンが座る。
ティエリアも、ジャボテンダーをベッドの上に投げ置いて(そんな扱いでいいのか)、椅子に座った。

「紅茶いれますね」
座っていたティエリアは、すぐに立ち上がって、地上で買ったアッサムではなくダージリンの紅茶をいれると、それを3つのカップに注いだ。
自分とロックオンと、リジェネの分だ。

椅子は2脚しかなかったため、リジェネはソファーに座りながらティエリアが入れてくれたお茶を飲む。

「いい味だね。ダージリンよりアッサムのほうが好きだけど、ティエリアは紅茶の入れ方がうまいから」

カットしたレモンまで、紅茶のカップに添えてある。

「そうだろうか?」

ティエリアの口調が変わる。

「いつも普通にお茶を淹れているだけなのだがな」
「でも美味しいよ。自分で淹れるよりも、他の人に淹れもらうより、一番美味しい」
「そう言ってもらえると嬉しい」

自分の分の紅茶を一口口に含む。優雅な味が舌の上で踊った。

「ティエリア!おかわり!」
「はい」
「負けるものか。僕ももういっぱいもらうよ!」

バチバチとティエリアをめぐって火花を散らす二人に気づかない鈍感さで、ティエリアはダージリンの紅茶を二人分ついで、ついでにでがらしでジャボテンダーさんの分まで注ぐのであった。

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