凍り付いた時間
高校3年の冬。
一度だけ、体を重ねた。
一護とルキア。
二人は、別に付き合っているというわけでもなく。それでも、お互いが好きであるということは自覚していた。
「これで、お前への想いも最後だ」
そういうルキアを抱きしめた。
「俺は・・・多分、忘れられないと思う」
細く小さいルキアの体を抱き締めて、キスをした。
一度だけ、体を重ねた。
「ルキア、愛してる-----------------」
「一護、私も貴様を愛している-------------」
やがて、高校生活も終わり、ルキアは尸魂界へと帰っていった。
ルキアが去って、5年が経った。
一護は、大学を卒業し、ドイツ語の翻訳家として在宅で仕事をしていた。
「黒崎君、お茶いる?」
「ああ、織姫、ありがとう」
一護と織姫は、4年半の交際の末に結婚した。
今は家を出て行った遊子と夏梨の部屋を使っていた。
ふと、見知った霊圧を感じて、一護は自分の部屋にきた。
「一護」
窓から入ってくる、あの頃から髪が伸びたルキアがいた。その後ろには恋次もいた。
「この度はな・・・・私と恋次は、結婚することになったのだ!」
「わぁ、おめでとう!」
「おお、井上ではないか。一護と結婚したと聞いているが、どうだ?」
「うん、黒崎君すっごく優しいの。私、愛されてるなぁって思う」
一護は、照れた顔をするわけでもなく、真剣な表情でルキアを見る。
「ルキア、今幸せか?」
「ん?何を言っておるのだ一護・・・・・・・」
「そうか・・・恋次、ルキアを幸せにしろよ」
「おう、言われるまでもねぇ。どうしたんだ、一護?」
「今日は泊まってくだろ?」
「ああ、その予定だ」
「じゃあ、買いだしとかしてくるわ」
「あ、黒崎君、私も行く」
「来るな!」
「え・・・・・」
一護が、冷たく拒絶することは前にもあった。伝令神機でルキアと恋次が付き合いだしたと知った時だった。
でも、一時的なものだった。
「うん、じゃあ待ってる。メニューはカレーにしよっか」
「あと、白玉餡蜜な・・・・・・」
一護は、スーパーまで買い出しに出かけるのと、頭を冷やすために外に出た。
いつか、こうなると分かっていたことだ。だから、井上と結婚した。
ルキアを忘れるために。
でも、高校3年の冬、体を重ね合わせたあの感触が消えない。愛していると、熱っぽく囁かれ、囁いたことが消えない。
今は、黙して二人を祝福しよう。
そう思った。
スーパーでお菓子やジュースも買い込んでいると、1時間以上経ってしまった。
スーパーを出たところで、ルキアと出会った。
「どうしたんだよ、ルキア」
「貴様・・・よもや、5年前のあのことを引きずっているわけではあるまいな」
どう答えればいいのか、分からかったが、本心をぶつけた。
「俺は------------未だにお前のことが好きだ、ルキア」
「そうか。想いは同じか」
「え」
「私も、未だに貴様のことが好きなのだ。忘れられない。私たちの時間は、高校3年のあの時に止まってしまったのだ・・・・・・・・」
「ルキア!」
スーパーの袋をぶら下げたまま、細く小さなルキアの体を抱きしめた。
「一護・・・・」
唇が重なった。
そのまま、一度荷物を自宅に置くと、懐かしい街並みを散策してくといって、家を出た。
向かった先はラブホテル。
お互い、求めあった。
互いに伴侶がいると分かっていたが、一度燃え上がった熱は、どうしようもなかった。
体を何度も重ねた。
5年の空白を埋めるように。
「私は・・・恋次と、別れる。はっきり告げる。一護をまだ想っているのだと」
「俺も、井上と別れる」
「いいのか?結婚してしまっているのだろう?」
「井上が好きだと思ってた。でも違うんだ。井上をルキアの身代わりにしてただけなんだ」
体を重ねあう。
「好きだ、ルキア------------」
「私は恋次に何度も抱かれたのだぞ?それでも好きか?」
「それでも、どうしようもない位にお前が好きだ。俺だって、井上を何度も抱いた。流産しちまったけど、子供もできた」
「そうか・・・・ふふ、私たちはクズ女にクズ男だな。互いに伴侶がいながら、こうして密通している」
ラブホテルからかえってきて、夕食をとった後、それぞれ別れ話を切り出した。恋次のほう薄々気づいていたらしく、案外とあっさりと別れてくれた。
でも、井上はだめだった。どんなに別れるといっても、首を縦にふってくれなかった。
「朽木さんを愛してるなんて今さら!私、黒崎君の子供だって一度できたんだよ!?そんな私に別れろっていうの!?」
「井上、俺は出ていく」
「いやああああああああ、黒崎君!!!」
荷物をまとめて、通帳をかき集めて、金を降ろして一人暮らし用のアパートを借りた。井上には、離婚届を自分の名前を書いて、送った。
当座の生活資金を与えて、田舎に帰らせた。
でも、井上は頑なに離婚届にハンコを押さなかった。
そんな中、月日だけが経っていった。
ルキアと再会して、4か月が経とうとしていた。
ルキアは月に4回は現世の一護の家に来てくれてれた。体を重ねた。
爛れた関係というのは分かっていた。
一護は、井上が田舎に帰ったことで、アパートを引き払い元の黒崎家で生活をしていた。
やがて、観念したのか、井上が離婚届にハンコを押して郵送してきた。
「これで井上とも別れた・・・・止まっていた、高校3年の冬から、砂時計は時を刻みだした」
「本当に、これでよかったのであろうか」
「俺たちは、互いを大切にできなかった。もういいんだ。幸せになっても」
「一護・・・好きだ。愛している」
「ああ、ルキア、俺もだ・・・・・・」
それはまるで雪解け水。
ルキアと一護の関係は、そのまま数十年続いた。
ある日、一護が体調を崩した。末期ガンであることが分かり、病院で入院するよりもと、自宅で性格を送った。
すかっかり、髪に白いものが混ざってしまって老いた一護の傍らには、高校3年の時から時を止めたままのルキアがいた。
「ああ、俺は幸せだった・・・・。ルキア、幸せをありがとう」
一護は、静かに息を引き取った。
でも、ルキアは泣かなかった。
ゆらりと、魂魄が滲み出た。
それは、高校3年の頃の一護の姿をしていた。
「なんだ・・・・死んだら、またお前と会えるのか。なんか別れだって泣きそうになっていた俺がばかみたいだな」
「一護、ようこそ死神の世界へ。貴様は、死んだことで本物の死神になった」
「そうなのか?」
「行こう、尸魂界へ。兄様と恋次の元へ・・・・・」
道は、死んだ後も続いていた。
尸魂界ヘ行くと、変わらぬ姿の恋次と白哉に会った。
「黒崎一護・・・死神となったからには、我が義妹を攫っていったツケを返してもらう。13番隊の3席を用意した故、身を粉にして働け」
「おうおう、死神化するの何十年ぶりだからって、腕は鈍っていないだろうな!?」
始解された蛇尾丸の刀を、一護は斬月で受け止めた。
「よう恋次、鈍っていないみたいだぜ」
「お前には、ルキアをとられた怨みがあるからな。根性叩き直してやる!」
「やめぬか、恋次!一護は、死して尸魂界へ来たばかりなのだぞ!」
「うげ、ルキア・・・・・」
ルキアは、何も尸魂界を捨てたわけではなかった。ただ、一護がの死がはっきりした頃は、尸魂界に戻っていなかった。
「兄様、一護をいきなり護廷13隊に放りこむのはやめましょう。真央霊術院にしばらく預けて死神としての在り方を覚えさせてもいいでしょう」
「ふむ・・・それもそうだな」
白哉は、愛しい義妹が愛した男、黒崎一護を甘く見ていた。
僅か4が月で、真央霊術院ではもう学ぶものがないとして、卒業させられた。
一護とルキアは、籍を入れた。
一護が死ぬ5年前に、井上も死んで尸魂界にきて、真央霊術院に進んだ。4番隊に配属された。
ふと、4番隊にいってこいと、ルキアに言われた。
「え、黒崎君!?」
井上の姿を認めた一護は、顔を顰めた。
「あ、井上・・・・ごめん、お前には本当に酷いことをした」
「もういいよ。私も死んじゃったし・・・石田君と結婚したの。残してくるのには不安はあったけど、石田君も死ねばこっちにくるだろうし・・・うん、もういいの」
井上は、ふっきれた顔をしていた。
「朽木さんと、結婚したの?」
「ああ。籍だけ入れた」
「結婚式はしないんだ」
「ああ・・・・・」
「そっか」
重い空気の中、13番隊に戻ると、ルキアがいた。
「どうだ、井上とは少しは和解できたか」
「ああ、一応な」
細く小さなルキアの体を抱き締める。
「なんだ、一護」
「好きだ、ルキア・・・・・」
「ふあっ・・・・・」
「なぁ。籍もいれたし、子供作らねーか?」
「そればかりは、運を天に任すしかあるまい」
「そうだな。お前といつまでもいちゃいちゃしたいし・・・でも、子供も欲しいなぁ」
始まりは、高校3年の終わり。
それから、実に45年以上は経っていた。
時の歯車は廻る。
幸せの音を立てて。
一度だけ、体を重ねた。
一護とルキア。
二人は、別に付き合っているというわけでもなく。それでも、お互いが好きであるということは自覚していた。
「これで、お前への想いも最後だ」
そういうルキアを抱きしめた。
「俺は・・・多分、忘れられないと思う」
細く小さいルキアの体を抱き締めて、キスをした。
一度だけ、体を重ねた。
「ルキア、愛してる-----------------」
「一護、私も貴様を愛している-------------」
やがて、高校生活も終わり、ルキアは尸魂界へと帰っていった。
ルキアが去って、5年が経った。
一護は、大学を卒業し、ドイツ語の翻訳家として在宅で仕事をしていた。
「黒崎君、お茶いる?」
「ああ、織姫、ありがとう」
一護と織姫は、4年半の交際の末に結婚した。
今は家を出て行った遊子と夏梨の部屋を使っていた。
ふと、見知った霊圧を感じて、一護は自分の部屋にきた。
「一護」
窓から入ってくる、あの頃から髪が伸びたルキアがいた。その後ろには恋次もいた。
「この度はな・・・・私と恋次は、結婚することになったのだ!」
「わぁ、おめでとう!」
「おお、井上ではないか。一護と結婚したと聞いているが、どうだ?」
「うん、黒崎君すっごく優しいの。私、愛されてるなぁって思う」
一護は、照れた顔をするわけでもなく、真剣な表情でルキアを見る。
「ルキア、今幸せか?」
「ん?何を言っておるのだ一護・・・・・・・」
「そうか・・・恋次、ルキアを幸せにしろよ」
「おう、言われるまでもねぇ。どうしたんだ、一護?」
「今日は泊まってくだろ?」
「ああ、その予定だ」
「じゃあ、買いだしとかしてくるわ」
「あ、黒崎君、私も行く」
「来るな!」
「え・・・・・」
一護が、冷たく拒絶することは前にもあった。伝令神機でルキアと恋次が付き合いだしたと知った時だった。
でも、一時的なものだった。
「うん、じゃあ待ってる。メニューはカレーにしよっか」
「あと、白玉餡蜜な・・・・・・」
一護は、スーパーまで買い出しに出かけるのと、頭を冷やすために外に出た。
いつか、こうなると分かっていたことだ。だから、井上と結婚した。
ルキアを忘れるために。
でも、高校3年の冬、体を重ね合わせたあの感触が消えない。愛していると、熱っぽく囁かれ、囁いたことが消えない。
今は、黙して二人を祝福しよう。
そう思った。
スーパーでお菓子やジュースも買い込んでいると、1時間以上経ってしまった。
スーパーを出たところで、ルキアと出会った。
「どうしたんだよ、ルキア」
「貴様・・・よもや、5年前のあのことを引きずっているわけではあるまいな」
どう答えればいいのか、分からかったが、本心をぶつけた。
「俺は------------未だにお前のことが好きだ、ルキア」
「そうか。想いは同じか」
「え」
「私も、未だに貴様のことが好きなのだ。忘れられない。私たちの時間は、高校3年のあの時に止まってしまったのだ・・・・・・・・」
「ルキア!」
スーパーの袋をぶら下げたまま、細く小さなルキアの体を抱きしめた。
「一護・・・・」
唇が重なった。
そのまま、一度荷物を自宅に置くと、懐かしい街並みを散策してくといって、家を出た。
向かった先はラブホテル。
お互い、求めあった。
互いに伴侶がいると分かっていたが、一度燃え上がった熱は、どうしようもなかった。
体を何度も重ねた。
5年の空白を埋めるように。
「私は・・・恋次と、別れる。はっきり告げる。一護をまだ想っているのだと」
「俺も、井上と別れる」
「いいのか?結婚してしまっているのだろう?」
「井上が好きだと思ってた。でも違うんだ。井上をルキアの身代わりにしてただけなんだ」
体を重ねあう。
「好きだ、ルキア------------」
「私は恋次に何度も抱かれたのだぞ?それでも好きか?」
「それでも、どうしようもない位にお前が好きだ。俺だって、井上を何度も抱いた。流産しちまったけど、子供もできた」
「そうか・・・・ふふ、私たちはクズ女にクズ男だな。互いに伴侶がいながら、こうして密通している」
ラブホテルからかえってきて、夕食をとった後、それぞれ別れ話を切り出した。恋次のほう薄々気づいていたらしく、案外とあっさりと別れてくれた。
でも、井上はだめだった。どんなに別れるといっても、首を縦にふってくれなかった。
「朽木さんを愛してるなんて今さら!私、黒崎君の子供だって一度できたんだよ!?そんな私に別れろっていうの!?」
「井上、俺は出ていく」
「いやああああああああ、黒崎君!!!」
荷物をまとめて、通帳をかき集めて、金を降ろして一人暮らし用のアパートを借りた。井上には、離婚届を自分の名前を書いて、送った。
当座の生活資金を与えて、田舎に帰らせた。
でも、井上は頑なに離婚届にハンコを押さなかった。
そんな中、月日だけが経っていった。
ルキアと再会して、4か月が経とうとしていた。
ルキアは月に4回は現世の一護の家に来てくれてれた。体を重ねた。
爛れた関係というのは分かっていた。
一護は、井上が田舎に帰ったことで、アパートを引き払い元の黒崎家で生活をしていた。
やがて、観念したのか、井上が離婚届にハンコを押して郵送してきた。
「これで井上とも別れた・・・・止まっていた、高校3年の冬から、砂時計は時を刻みだした」
「本当に、これでよかったのであろうか」
「俺たちは、互いを大切にできなかった。もういいんだ。幸せになっても」
「一護・・・好きだ。愛している」
「ああ、ルキア、俺もだ・・・・・・」
それはまるで雪解け水。
ルキアと一護の関係は、そのまま数十年続いた。
ある日、一護が体調を崩した。末期ガンであることが分かり、病院で入院するよりもと、自宅で性格を送った。
すかっかり、髪に白いものが混ざってしまって老いた一護の傍らには、高校3年の時から時を止めたままのルキアがいた。
「ああ、俺は幸せだった・・・・。ルキア、幸せをありがとう」
一護は、静かに息を引き取った。
でも、ルキアは泣かなかった。
ゆらりと、魂魄が滲み出た。
それは、高校3年の頃の一護の姿をしていた。
「なんだ・・・・死んだら、またお前と会えるのか。なんか別れだって泣きそうになっていた俺がばかみたいだな」
「一護、ようこそ死神の世界へ。貴様は、死んだことで本物の死神になった」
「そうなのか?」
「行こう、尸魂界へ。兄様と恋次の元へ・・・・・」
道は、死んだ後も続いていた。
尸魂界ヘ行くと、変わらぬ姿の恋次と白哉に会った。
「黒崎一護・・・死神となったからには、我が義妹を攫っていったツケを返してもらう。13番隊の3席を用意した故、身を粉にして働け」
「おうおう、死神化するの何十年ぶりだからって、腕は鈍っていないだろうな!?」
始解された蛇尾丸の刀を、一護は斬月で受け止めた。
「よう恋次、鈍っていないみたいだぜ」
「お前には、ルキアをとられた怨みがあるからな。根性叩き直してやる!」
「やめぬか、恋次!一護は、死して尸魂界へ来たばかりなのだぞ!」
「うげ、ルキア・・・・・」
ルキアは、何も尸魂界を捨てたわけではなかった。ただ、一護がの死がはっきりした頃は、尸魂界に戻っていなかった。
「兄様、一護をいきなり護廷13隊に放りこむのはやめましょう。真央霊術院にしばらく預けて死神としての在り方を覚えさせてもいいでしょう」
「ふむ・・・それもそうだな」
白哉は、愛しい義妹が愛した男、黒崎一護を甘く見ていた。
僅か4が月で、真央霊術院ではもう学ぶものがないとして、卒業させられた。
一護とルキアは、籍を入れた。
一護が死ぬ5年前に、井上も死んで尸魂界にきて、真央霊術院に進んだ。4番隊に配属された。
ふと、4番隊にいってこいと、ルキアに言われた。
「え、黒崎君!?」
井上の姿を認めた一護は、顔を顰めた。
「あ、井上・・・・ごめん、お前には本当に酷いことをした」
「もういいよ。私も死んじゃったし・・・石田君と結婚したの。残してくるのには不安はあったけど、石田君も死ねばこっちにくるだろうし・・・うん、もういいの」
井上は、ふっきれた顔をしていた。
「朽木さんと、結婚したの?」
「ああ。籍だけ入れた」
「結婚式はしないんだ」
「ああ・・・・・」
「そっか」
重い空気の中、13番隊に戻ると、ルキアがいた。
「どうだ、井上とは少しは和解できたか」
「ああ、一応な」
細く小さなルキアの体を抱き締める。
「なんだ、一護」
「好きだ、ルキア・・・・・」
「ふあっ・・・・・」
「なぁ。籍もいれたし、子供作らねーか?」
「そればかりは、運を天に任すしかあるまい」
「そうだな。お前といつまでもいちゃいちゃしたいし・・・でも、子供も欲しいなぁ」
始まりは、高校3年の終わり。
それから、実に45年以上は経っていた。
時の歯車は廻る。
幸せの音を立てて。
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