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翡翠に溶ける 花街での出会い

花街で、好みの子を見つけた。

「ねぇ、君。そうそう、君、君」

京楽は、かわいい遊女を見つけた。

「何処の子?」

「夏姫・・・・・」

「夏姫?あんな格下の廓にいるの?」

こくりと、その少女は頷い。

「今から遊びにいったら、相手してくれる?」

こくりと、その少女はまた頷いた。

「よし、行こう!」

夏姫は、その花街の中でも下から数えた方が早い廓だった。花魁もいないし、こうぱっとする遊女がいるわけでもない。

「僕は京楽春水っていんだ。君の名前は?」

「・・・・・翡翠」

「そう。翡翠色の瞳をしているもんね。かわいい」

その少女は愛らしかった。白い肩までの髪に安物の簪をさしていた。

「そうだ、これあげる」

いつもの花魁にあげようと思っていた、瑪瑙の簪を、翡翠の髪に飾ってやった。

翡翠は、あどけない顔で笑った。

夏姫に、京楽をつれていくと、ちょっとした騒ぎになった。上流貴族がくるような廓でなく、食事も美味いといえるものではなかったが、翡翠が気に入ったのでそのまま居座った。

「お酒、飲みますか」

「ああ、いただこうかな」

酒を飲んでいると、急に眠くなってきた。

そのまま、京楽は寝てしまった。

気づくと翡翠の姿はなく、廓の女将に聞いても、翡翠は今日きたばかりの遊女の見習いでと言われた。

服はそのままだったが、金目のものがごっそりもっていかれていた。

「ああ、やられてしまった・・・まぁいいか。かわいかったし・・・」

また、いつか会えるといいなぁ。

そんなことを考えながら、それから2年後には死神統学院に入っていた。

首席であると思っていたが、もう一人首席がいた。

興味が沸いて、山じいのお説教を受けるの覚悟で、今日は休んでいるというその首席の子のいる寮の部屋の前にきて、そっと扉をあけて中にいる子を見た。

「え、翡翠!?」

「え・・・・・」

翡翠が、そこにいた。

「君、翡翠でしょ。僕からお金奪っていった悪い子・・・・」

「あ、あの時の・・・・・・」

翡翠は、少女ではなかった。少年だった。

遊女の服をきて、化粧をしているのだから、てっきり少女だと思い込んでいた。

「あの時はすまない・・・・妹が、売られそうで、まとまった金が必要で・・・いつ返すから、待ってくれないか」

「じゃ、君が僕のものになるならいいよ」

「え」

翡翠が、上ずった声をあげる。

「俺は男・・・・・・」

「うん、分かってる。名前は?」

「浮竹十四郎」

「じゃあさ、浮竹、君が僕のものになるなら、お金返さなくてもいいよ。けっこうな額のお金が入ってたんだ・・・・君が、死神になれたとして、返済までに時間かかるよ。君が僕のものになるなら、ちゃらだ」

「妹が、また売られそうになったら、金を貸してくれるか?」

「ああ、いいよ」

「なら、お前のものになる------------」

ぽろりと。

浮竹の瞳から涙が零れ落ちた。

「ちょっと!何も今すぐとって食おうなんて思ってないよ!そうだ、友達になろう!」

「友達?」

「うん。僕は京楽春水。改めて、よろしくね」

「こりゃあああああ、春水!どこじゃあああああ!」

「いっけね、山じいだ!入学式さぼちゃったから。またね」

京楽は、風のように去ってしまった。


「こりゃ、春水」

杖で、ぽかりと頭を叩かれた。

「首席で合格したお前が、入学生代表になるはずじゃったのに、抜け出しおってからに。どこにっておったのじゃ」

「ちょっと、同じ首席の子に興味があってね」

「十四郎のところにおったのか!十四郎は肺を病で欠席じゃった!無理をさせたのではあるまいな!」

「んー。昔、騙されて大金とられてねー。僕のものになるなら、返さなくていいっ言ったら、泣いてた」

「十四郎が、春水を騙したじゃと?何かの間違いではないのか?」

「でも、浮竹は僕のものになるって言ってくれたよ」

「こりゃ春水!もしや、金でなんとかしたのではあるまいな」

当たらず遠からずというところだった。

もしも、また妹が売られそうになった時には、金を貸してやると約束した。そして、とられていった金のかわりに京楽のものになれと、脅しに近い言葉で納得させた。

「でも、かわいかったなぁ・・・・・」

肩まである白い髪に、翡翠色の瞳。女の服を着せて化粧させれば、きっと今でも少女に見える。

「山じい、あの子のこと教えてよ----------------」

山じいに聞いたところ、下級貴族の8人兄弟の長兄だという。治らぬ肺の病を患っている上に病弱だが、類まれな霊圧を持っており、山じいが保護者ということで、学院の寮に入っているらしかった。

「ねぇ、山じい・・・あの子と、同じ部屋にしてよ」

「なんじゃ、春水、寮はあれほどいやだと言っておったじゃろう。近くに屋敷を建てるからと・・・・・」

「んー。浮竹と同じ部屋なら、寮に入っていい」

「寮に入ってもらったほうが儂の目も行き届く。よかろう、十四郎と同じ部屋になることを許可しよう」

「やった!」

次の日、休みだったので荷物を最小限にして2人部屋である浮竹のいる寮の部屋に入った。

「京楽・・・・・」

「今日から、一緒の部屋で住むことになったから。よろしくね」

「よ、よろしく・・・」

出会いが最悪だったため、浮竹は京楽にしばらくの間、心を開かないでいた。

でも、同じ1回生として、同じ特進クラスで学んでいくうちに、氷だった浮竹の心も雪解け水のように溶けていった。


「甘味屋へ行こう、浮竹」

デートというか、いつも一緒に行動した。

浮竹は甘いものに目がなく、甘味屋に誘うと100%OKをもらった。

「ほら、口についてる」

あんこをとって、食べると、浮竹は顔を朱くした。

「どうしたの?」

「その、お前は、俺を抱きたいのか?お前のものになれってことは・・・・・」

「うーんどうだろう。今は君を抱きたいとは思ってないね。ただ、親友として一緒に在りたいとは思っているよ。ただ、君のことが好きなのは本当だ。将来抱きたいというかもしれない。怖いかい?」

「怖くない-----------------でも、俺のどこがいいんだ?」

「全部だよ。君の声も姿形も性格も。全部、僕の好み」

「悪趣味な奴だな」

そう、浮竹は笑った。

甘味屋でその細い体の何処に入るのだというくらい食べて、寮の部屋に戻った。

「すまない、おごらせてばかりで。金がないせいで----------」

謝る浮竹を抱き締めると、吃驚したようで、硬くなった。

「緊張しすぎ。もっとリラックスして」

やっと体の力が抜けていく。

浮竹は、おずおずと、手を京楽の背中に回した。

そのまま、触れるだけのキスをすると、浮竹は赤くなって京楽を突き飛ばして、布団の中で丸くなてしまった。

「どうしたの」

「俺のファーストキスが・・・・・」

「ああ、君キス初めてだったの。僕なんて、童貞もとっくの昔に捨てたし・・・・・」

「ななななな」

「ああ、君やっぱ性格通り、童貞なんだ。綺麗だから、卒業してるかなと思ったけど」

「京楽!」

浮竹が怒った声を出す。

「はいはい、ごめんよ」

楽しいおもちゃを見つけた。そんな気分だった。




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