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夜の空

百の命を奪って、千の命を奪って、万の命を奪って

奪って奪いつくして壊して消して

それでもまだ理性が残るんだ

消して消して消してくれないか

私ごと、いっそ消してくれないか

自我などいらない

あなたの温もりを求めるから

自我などいらぬ

君の温もりを求めてしまうのだ


名はなんといった?

「ルシフェール」

彼はそう静かに呟いた。
私は顔をあげて、彼の顔をよく見た。真紅の血のような瞳だと思った。
真っ赤な綺麗な赤。
皮膚をはがしたら、きっとそこにも同じ色がある。
瞬きをすると、手を重ねられた。
「何をする」
「冷たい手をしているね」
「知るか」
振りほどこうとすると、黒い翼が広がった。私の嫌いな、黒い黒い一対の翼。
それを見て彼は真紅の瞳を細めて、背にあるヴァンパイア独特の皮膜翼を広げて私を抱きこんだ。

「綺麗だね。夜明け前の空の色だ」

私は何かを言おうとした。
その言葉は、彼の唇が重なったので言葉になることはなかった。

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