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プロローグ

斜陽に傾く空を彩る光に染まって、農作業を終えた労働者たちが、足に絡む雑草を手ではらって歩きだし、少し離れた広場に集まった。

「今日はここまでだ。麦の刈り取りも大変だが、今年は例年以上の豊作だ。明日もがんばろうぜ」

一人の年若い若者が、農具を地面において、水を飲み干す年配の者たちに励ましの声をかける。

「おお、今年は本当にいい麦が育ったものだ」

「これだけあれば、税の分を納めても大分ある。麦を金に換えて、少しばかりの贅沢もできそうだ」

「ははは、だが近隣の村の飢饉にも備えないとな。備蓄するにこしたことはない。10年前にこの村に飢饉が起こった時も、助け合ってなんとかしのいだんだ。領主の助けより、近隣の村の助けのほうが確実だ」

「そうだな。おい、帰ったら一杯飲もうぜ」

「それもいいな」

「ほどほどにな」

笑い声が、茜色の空の下に木霊した。

麦の刈り取り作業という重労働に、男だけでなく女子供も、朝からずっと働いていたが、流石に地平線に太陽が沈もうとしている時間だ。
家事もある女たちは引きあげ、子供も腹をすかせて先に村に戻ってしまった。

残った男たちは、農具を手に村へと帰路へついていく。

「レネ、お前も帰っていいぞ」

同じ村の青年が、レネという名の少年に冷たく言い放つ。

レネは全身に汗をかいて、呼吸するのも億劫そうだった。刈り取った麦を束ねて、牛が引く荷車に乗せていく重労働をたった一人で押し付けられた。
昼食の差し入れもなく、水を飲むことさえも許されなかった。無論、他の農夫たちのように休憩することもできない。

ただただ、身を粉にするように働き続ける。まるで、奴隷のように。

いや、レネはこのサトラ村では、唯一の保護者であるマーレシア以外からは、奴隷のような仕打ちを受けるのが当たり前で、むしろ村の者から優しく扱われたことなど一度もなかった。

同じ年頃の少年少女は、まだレネと同じ子供だ。農業や牛の放牧といった仕事をしながらも、決まった曜日は仕事を免除され、村にあるただ一つの教会に通い、そこで神父から勉学を学ぶ。そしてレネにはない、週に一度の休みを子供たちは与えられていた。

レネには、学ぶことさえ許されず、村を無断で出ることも許可されていなかった。

サトラ村の大人たちの冷徹な視線と、奴隷のように扱われるのが当たり前の境遇で育った。

同じ子供はレネと遊ぶことを禁じられ、レネに石を投げたりして彼をいじめる輩も多い。

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