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02 2024/03 1 29 3031 04

幾度目かに、また友を裏切る(コード継承シリーズ)

日本。
超合衆国の一部となった国。
元はブリタニアが支配するエリア11と呼ばれる国だった。
皇帝直轄統治の国として、悪逆非道を欲しいままにした99代目の少年皇帝はこの国を愛した。
この国で少年期からずっと過ごしていた。
そしてC.C.に出会い、世界に反逆することを決めた。
父を殺すために。母の死の真相を知るために。ブリタニアに仕返しするために。
黒の騎士団を剥奪された末に得た、母の死の真相は、思い描いていたようなものではなかった。
どのみち、父も母もルルーシュとナナリーを捨てたことに変わりはない。

日本の、アッシュフォード学園という、ブリタニアの貴族も通う高校に通っていた。
成績はいいほうだったが、ルルーシュがその気になればTOPになることもできただろう。適当に、人生を投げやりに生きるように、副生徒会長もしながら、ふわふわと雲のように生きていた。
友人は生徒会メンバーとそしてスザク。
あの頃は楽しかった。
生徒会長のミレイがたくさんのイベントをして、ルルーシュはそれに付き合わされる羽目に何度も陥った。パーティーや文化祭などはまだよかったが、男女逆転祭りでは女装までさせられた。
あげくには女装喫茶なんてものを開いて、ルルーシュは踊り子の布地も心もとない格好をさせられて、男にも女にも似合っていると言われて、げんなりした記憶を覚えている。

生徒会メンバーの中で、好きだと思う子がいた。
失って気づいた。とても大切だったのだと。
でも、ブラックリベリオンでまたその笑顔を取り戻せたと思った。
でも、すぐに永久に失った。
弟役のロロが、シャーリーのギアスが解けたことに感づいて、銃で撃ち殺してしまったのだ。
遺体に縋って絶叫した。
でも、ロロが戻ってきたときは「助かったよ、よくやった」といつものような鉄の仮面を被って、振舞った。内心ではロロを自分の手で殺してやりたいとさえ思っていた。
そのロロも、ルルーシュを庇って、ギアスの使いすぎで自ら命を落とした。
最後まで、ロロはルルーシュの弟だった。弟でいたかったのだろう。ロロの死を無駄にしないために立ち上がったルルーシュが辿った最後の道は、ゼロレイクエム。
そして、シャルルのコードを強制的に継承して今もなお生きている。
死んだはずなのに、まだ生きている。

「久しぶりだな、シャーリー。会いたくなって、きてみた」
シャーリーの墓に花を添える。
墓に刻まれたシャーリーの名前を指でなぞっていると、C.C.がもう一つの花束を添えてくれた。
「ありがとう」
「すき、だったんだろう?」
「多分」
「はじめて墓参りしたときは、涙がでないって、絶叫したくせに」
「シャーリーのためには、涙を流しすぎて枯れたのかもしれない」
「なんて甲斐性のない男だ」
「シャーリーは俺のせいでしんだ。俺のせいで傷ついて、そしてそのまま死んでしまった」
「世界の誰しも、心に傷を持っている。傷をもっていない人間なんかいない」
「お前にも、心に傷があるのか?」
「さぁな」
C.C.は白のゴシックドレスのスカートの裾を翻して、ルルーシュから離れると、急に慌て出した。
「どうした?」
「おい、まずいぞ。お前、変装グッズどうした!」
「そんなもの、もう使っていない。俺は昔に死んだんだ。ただの瓜二つの人間でごまかせる」
「無理・・・だろう。あれは・・・・」

「ルルーシュ!?ルルーシュなのか!?」
手に花束をもって墓参りに来たのは、友人だったリヴァルだった。
「なぁ、お前ルルーシュなのか?皇帝だったり、死んだり・・・・でも、生きてるのか?なんで、昔の姿のままなんだ?なぁ、なんとかいってくれよ!!」
リヴァルも、もう40台半ばといった年齢だが、直に分かった。
愛嬌のある顔立ちは年を経ても変わっていない。
「俺な、ミレイと結婚したんだ。子供も二人いる、ブリタニア帝国が、コード継承者は不老不死であると、皇帝が世界中に発表したんだ。保護された人が三人いて、ほんとに年とってないんだよ。数年ごとに世界に状況を教えて・・・・なぁ、お前も、お前もそうなのか。その横にいる子、よくルルーシュの周りにいた子じゃないか。その子も年とってない・・・・」
「リヴァル・・・・・」
「ルルーシュ!生きてたんだな!生きてて、くれたんだな」
リヴァルは花束を地面に落として、泣き出した。
「人間違いです」
「今更おせーよ!他人が、俺の名前知ってるはずないだろ!俺の友人だったルルーシュ。ブリタニアの皇帝だったルルーシュ。本当はブリタニアの皇子だったルルーシュ・・・あってるだろ?」
C.C.は、自分で片付けろと目配せする。
「リヴァル。そうだ。俺は、ルルーシュ。ルルーシュ・ランペルージと昔は名乗っていた」
「やっぱり、やっぱりルルーシュだ!」
がばりと抱きつかれて、ルルーシュも懐かしい友に突然会えた嬉しさを噛み締める一方、悔恨した。
シャーリーの墓参りにこなければよかったと。
そしたら、リヴァルと会わなくてすんだのに、と。
肩まで伸びた漆黒の髪、アメジストの瞳、秀麗な顔立ち。髪型を除けば、全て少年時代のままだ。ルルーシュの瞳には、昔ゼロだった頃の野望に燃えていた炎のような色はなく、C.C.とあてもなく世界を彷徨う迷い子のような、哀しげな耀きがずっとあった。
リヴァルを見て、その耀きは一層濃くなった。
「なぁ。なんで、何もいってくれないんだ。・・・・・おかしいよ。お前ら、おかしいよ。コード継承者?不老不死?おかしいよ・・・・・」
泣きながら顔を歪める、年をとった友の顔に、ルルーシュは目を伏せた。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。俺はすでに死んでいると記憶しろ。俺は別人だ」
ルルーシュの、コンタクトがはずれ、右目がローズクォーツ色に変わって、オッドアイになった。ギアスの紋章が瞳に刻まれ、それを見たリヴァルは、ルルーシュから離れると、恥ずかしそうに笑った。
「す、すみません。昔の友人にあまりに似ていたもので。生きていたのかって、抱きついてしまいました。そんなはず、ないのに。ルルーシュは、もう20年以上も前に死んでいるのに」
「あなたの友人は、そんなに俺とそっくりなんですか?」
「ええ、それはもう。生き写しのようにそっくりです」
「そうですか。俺も、よく20年以上前に死んだブリタニアの皇帝ルルーシュにそっくりだって言われます。かなり迷惑なんですけどね。あんな悪人と同じにされたくない」
作り笑いを浮かべて、ルルーシュは笑顔で去っていくリヴァルに手を振った。
「数十年ごしに、幾度目かにまた友を裏切る気持ちはどうだ?」
「最悪だ。コードを継承したのに、俺のギアスは消えない。確かに、便利ではあるが、こんな形で友人を裏切るなんて。もう、あれから20年以上も経っているのに」
「いずれ、そんな必要もなくなるさ」
C.C.が、背後からルルーシュに腕を伸ばして、その細い肢体を手で抱きしめる。
「もう数十年もしたら、あのリヴァルというお前の友人も死ぬ」

「死・・・ぬ」

「そう。私たちが望んでもできないことを。お前は永遠に、全ての友、家族と別れるんだ。そう遠くない未来に」

「は、はははははは!!!」

ルルーシュは、狂ったように笑った。
オッドアイになったままの瞳から、涙が零れた。
友を裏切った果てに、死に別れるのだ。
そして、世界で一人になる。それが、王の力。

「安心しろ。私だけは、お前の側にいてやる」

「いてくれ。お前だけは。失いたくない」

いつか、この世界の全ての人間が死んでも、まだ生きているのだろうか。
考えたくもない。
ルルーシュは、笑った。
C.C.は無言。
狂ったように笑い続けるルルーシュは、心の中でリヴァルにごめんと謝った。
去っていく遠い背中が、笑い続けるこちらを何事かと何度か振り返ってくる。
多分、あうのはこれが最初で最後。
もう、会うこともないだろう。
さようなら、リヴァル。
もしも、会うときがあるとしたら、死に別れるその時に、会いにいくよ。そして、全て話すよ。
それが、俺にできるせめてもの、友を裏切ったことへの贖罪。

世界の揺り篭で、二人はまどろむように、終着点のない駅に向かって歩き続ける。
終焉はこない。
いつか、見つけよう。二人の世界の、終わりを。
この呪われた命が、眠れるときを。

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