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扇風機(3期)

ぶーん。
ぶーん。

首を左右に回していた扇風機が止まった。

「あれ?」

風が止まって、うちわを仰いでいたフェルトは扇風機の方に近寄ると、ボタンを何度も押したり、電源を引っこ抜いたりしていた。

「何をしている?」

「あ、刹那。扇風機壊れたの」

ここは刹那の部屋。空調が壊れ気味で、今急いでイアンが修理にとりかかっている。乾燥砂漠地帯に停泊していたせいもあって、暑さはたまらないものだ。
しのぎにと、扇風機が配られて、長袖のCBの制服もみんな脱いで半そでの私服でダラダラしているような状況だ。

ちなみに、暑さに弱いティエリアは冷蔵庫に頭をつっこんだまま寝ていた。
それを発見したのはニールだが、数分後にはニールも冷蔵庫に頭をつっこんでいた。

それを目撃した刹那は、五分後に隣に冷蔵庫を持ってきて、リジェネが頭をつっこんだのを確認して笑いをこらえて自分の部屋に戻ると、フェルトが刹那の部屋の冷蔵庫に頭をつっこんでいた。

「ぶ」

顔を手で覆ってごろごろと床を転がってから、扇風機を出してやった刹那。

アイスを二人でかじりながら、空調が直るのをひたすら待つ。外にいくなんで、ここよりさらに暑い45度以上はあるだろう空間になんて出たくない。
室温を測ると、37度だった。

エンジンがオーバーヒートして、廃熱がトレミー中を走り回っている。
だから、こんな乾燥砂漠地帯に用もないのに停泊したままなのだ。おまけに空調までいかれて、イアンは大忙しだ。

さっきまでイアンの仕事をみんなで手伝っていたけど、暑さのせいでまずティエリアが倒れて、次にリジェネが倒れて、イアンがしっしとみんなを追い払った。

「暑さで倒れるくらいなら手伝わんでいいわい」

そう追い払われて、扇風機をそれぞれの部屋に配っていた刹那は、冷蔵庫に頭をつっこんでいる仲間を見て笑って、そして自分の部屋に戻るとフェルトが冷蔵庫に頭をつっこんでいた。
笑いよりもその行動がかわいいと思えてゴロゴロ床でもだえる刹那も、暑さで頭が少しやられているのかもしれない。
刹那はきっちり制服姿のままだ。

「刹那~」

縋りつくようなフェルトの大きな目。風をおくってくれなくなった扇風機の前で、フェルトは私服で暑そうにだれている。

「叩けばなおる。こうだ」

イアンがそこにいたら、きっと刹那の頭をはたいただろう。

扇風機を持ち上げて、壁に叩きのめす刹那。メリっとか音を立てて少し扇風機がいがんだ。
そして、電源をいれてスイッチを押すと風が流れ始めた。

「すごい。直った」

「たまにしている」

そう、ほんとにたまに。どうしようもない時、刹那はガンダムを蹴ったりしてたまにそれで不具合が直ることがある。しちゃいけないことなんだけど。
一度イアンに見つかって、首根っこを捕まえられてくどくど1時間お説教をくらったものだ。

「アイスをアレルヤの部屋から盗んできた。食べるか?」

冷凍庫の方にいれておいたアイスをさしだすと、フェルトは嬉しそうにそれを受け取った。

ちなみに、アレルヤはアイスを楽しみにしていたのに、食べようとしたらなかったと嘆いていた。

「世界の悪意が見えるよハレルヤ」

と呟いて扇風機に抱きついていたとさ。

ちなみに空調が直ったのは明後日のこと。エンジンのほうが先になおったが、空調が直らないままで、ティエリア、ニール、リジェネのように冷蔵庫に体の一部をつっこんだり、冷やしたペットボトルを抱いて寝たりするトレミーのメンバーの姿がいたるところで見られたという。

ちなみに刹那は暑さに強いので平気だったが、フェルトは弱くて冷やしたペットボトルを抱いて、刹那の部屋に泊まった。刹那はペットボトルの冷たさにまけて、ベッドにフェルトを明け渡してソファーで眠ったらしい。

二人は恋人同士で、一緒に眠ることだってあるが、流石に冷たいペットボトルにはかなわなかったらしい。

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