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浮竹と京楽と海燕と 雪だ遊ぼう

「わぁ、積もったなあ」

浮竹は、雨乾堂の外の銀世界を見つめていた。

「ちょっと隊長、その姿のまま外にでないでください!」

海燕は、雪の積もった外に出ようとする浮竹に、上着を羽織らせた。ついでに防水の手袋とマフラーもさせた。

どうせ浮竹のことだから、はしゃいで雪だるまでも作り出すのだろう。

それは半分あっていた。

雪だるまのようなものを作ろうと頑張っているが、一人では無理なようで。海燕も手伝って、雪だるまをなんとか完成させると、海燕の顔面に雪の玉がぶつかった。

「あんた、手伝ってあげたのに!」

お返しとばかりに、雪玉をつくって浮竹に投げた。

ぽいぽい投げ合っていると、そこへ、京楽がやってくる。

「雨乾堂にいないと思ったら、楽しそうなことしてるねぇ。ぶべ」

京楽の顔面に、雪玉は命中した。

「ちょっと、僕は、ぶべ」

海燕も、日頃の鬱憤を晴らすように京楽に雪玉を投げまくった。

「ええい、こなりゃやけだ!」

京楽も、雪玉を作って海燕や浮竹に投げ出した。

浮竹と海燕は、別に共同作業をしているわけではないのだが、京楽に向けてばかりに雪玉を投げた。

「ちょっと、君ら僕だけターゲットってずる・・・ぶべ」

ぽいぽいと、雪玉を投げてくる浮竹と海燕に、京楽も堪忍袋の緒が切れた。

凄い勢い雪玉をつくり、浮竹と海燕に投げていく。

3人とも、雪まみれになっていた。

「あはははは、面白いけど寒くて冷たいし、疲れるね」

「そうですね」

海燕が、浮竹を心配しだした。

「隊長、このあたりで切り上げて、雨乾堂に入りましょう。そんな雪まみれの恰好でいたら、熱をだしてしまいますよ」

「嫌だ、もっと遊ぶ」

浮竹は、雪玉をこしらえて、海燕に投げた。

それは海燕の顔面に命中した。

「ったく、あんたは!」

海燕も雪玉をつくり、浮竹の顔面に命中させる。

今まで、浮竹は顔面に命中するのを避けていたのだが、気が緩んだのだろう。

「やったな、海燕」

「なんの!」

「僕も忘れないでよ!」

3人で、雪玉をまた投げ出した。

やがて1時間程経って、浮竹がくしゃみをした。

「はっくしょん」

「ああ、隊長もうだめです。時間切れ。風邪ひく前に、雨乾堂に戻ってください

仕方なしに、浮竹は言われた通りにする。

「楽しかったなぁ。雪が積もるの、何十年ぶりだろう。京楽と院生時代でも一度積もって、雪だるまや雪うさぎを作った」

「ああ、あの時は楽しかったねぇ」

昔のことに想いを馳せる。

その頃、海燕はまだ生まれてもいない。

「寒くなってきた・・・・悪寒がする」

火鉢に当たっていた浮竹は、毛布を羽織りガタガタと震えていた。

「ほら、いわんこっちゃない。お風呂入って温まりますか?」

「ああ、そうする」

海燕は、風呂を沸かした。

ちょいどいい温度になって、浮竹を呼ぶ。

「隊長、風呂沸きましたよ」

「ああ、すまない」

浮竹は、風呂に入り体を温めた。でも、髪の毛が水分を重たく吸ってしまい、タオルで水気をできるだけふきとったが、ばさりと背中に流れた。

「だめだ・・・・熱が出てきたみたいだ」

「ああもう、だから雪遊びなんてするから」

海燕は、文句を言いながらも浮竹のために布団を敷いた。

「横になっててください。幸いなことに雪がつもってるんで、氷枕つくってきますから」

「浮竹、大丈夫?」

京楽が、心配そうな顔で浮竹を覗き込んでくる。

「ああ、いつもの熱よりはましだ。少し横になって、薬を飲めばなんとかりそうだ」

京楽は、浮竹に口移しで解熱剤を飲ませた。

「隊長、氷枕つくってきました」

「ああ、ありがとう海燕」

その上に頭を乗せて、外で冷やしたタオルを、浮竹の額に乗せる。

「すまない、少し眠くなってきた・・・寝る」

スースーと、静かな音をたてて浮竹は眠りだした。

「まったく、隊長はこうなることが分かっていながら、なんで雪遊びなんてするんでしょう」

「君がいるからさ、海燕君」

「え、俺が?」

「そう。君に任させれば全て大丈夫だろうと、浮竹は思っているんじゃないかな。海憑君も、浮竹の雪遊びに付き合ったんでしょう?」

「そうですけど」

「浮竹は、一人じゃああまり雪の中へ行かないからね。発作とか起こすと大変だって分かってるし。君がいるから、はしゃいで遊んでたんだよ」

「そういうものですか」

「うん」

「早く熱下がるといいですね」

「そうだね。まぁ、下がっても浮竹はまた懲りずに雪遊びしそうだけどね」

「俺が許しません」

「浮竹も、よくできたけど姑みたいな副官をもって、幸せなんだか気の毒なんだか」

「誰が姑ですか!」

海燕が怒りだす。

「おっと、口が滑っちゃった」

「京楽隊長、そもそもあんたは・・・・・」

がみがみとお小言をもらいながら、京楽は笑う。

海燕の存在は、浮竹にとってはかけがえのないものなのだ。

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