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稀人と皇太子

「名前、なんていうんだ?」

「朽木ルキア」

黒崎一護は、ソウル帝国の皇太子である。

朽木ルキアと呼ばれた少女は、世にも珍しい金色の翼をもつ有翼人だった。他に若い白ではない銀の翼の、こちらもまた珍しい有翼人の青年を二人、ルキアとまとめて三人で商人はソウル帝国の時期皇帝である一護に献上した。

「おいおっさん」

一護が、商人に声をかける。

「な、なんでございましょう」

「こいつらに虐待してたな?」

「と、とんでもございません!献上品を傷つけるわけなどありません!」

ルキアと、二人の銀色の有翼人の青年は、商人を怖がっている様子だった。

「この右肩‥‥‥奴隷の証である、焼き鏝を押したのか!」

「ひいいい。すみません、すみません。国内で売りさばくつもりだったのですが、この国では亜人の奴隷売買は禁止されていて‥‥‥他国に売ろうにも、抵抗が激しく」

「もういい。お前の面みたくねぇ。金貨5千枚やるから、それでどこにでもいけ」

「あ、ありがとうございます!」

商人は、金貨がたくさん入った袋に舌なめずりをして、それを手に去っていった。

「お前はルキア。こっちの二人は?」

「俺は浮竹十四郎」

「ボクは京楽春水だよ」

若い二人の銀色の翼をもつ有翼人は、王太子である一護を怖がることもなく、平然と受け入れる。それはルキアもだった。

「で、私は何をすればいいのだ?体を開いて、春を売ればよいのか?」

奴隷の身分に落とされたことを理解しているルキアは、せめて暴力を振るわれないようにと、主となった一護に聞く。

「奴隷の証の焼き鏝の痕は、癒しの魔法で消し去る。ルキア、お前は歌が歌えるそうだな」

「だからなんだ」

「んで、浮竹さんに京楽さんだっけ。ハープとフルートが得意だとか」

「その通りだ」

「音楽を奏でるのは、ボクら有翼人には当たり前のことだからね」

「三人合わせて、俺専属の楽団になれ」

一護が要求してきたのは、音楽の才能であった。

ルキアはてっきり、後宮にいられるものと思っていたのだが、奴隷の証を魔法で消されて、浮竹と京楽も同じ扱いを受けて、皇宮の二部屋を与えられた。

ルキアの部屋と、京楽と浮竹の部屋であった。

次の日から、一護がたまに顔を出して、浮竹と京楽にハープとフルートを奏でさせて、歌姫であるルキアの歌う美しい声に聞きほれる。

「いい歌声だ。俺だけが独占するのはもったいないな。帝国のコンサート会場がある。そこで歌って奏でてこい」

「いいのか?逃げるかもしれないぞ」

ルキアが問うと、一護は笑う。

「もう、この国の俺のものだっておふれを出しておいた。逃げ出すにも資金が必要だぞ?」

「まぁ、今の境遇に不満はないので逃げぬが」

浮竹と京楽も同じようであった。

「では、コンサート会場に行ってくる。得た賃金は‥‥‥‥」

「お前たちのものだ」

その言葉に、ルキアの目が大きく見開かれる。お金を稼げば、逃げるという選択肢も出てくるのだ。

だが、ルキアたちは逃げなかった。

コンサート会場で歌を披露し、浮竹と京楽はハープとフルートを奏でると、人々は目に涙をためて聞いてくれる。

悲恋の唄など、特に涙を誘った。

一日の興行収入は、金貨百枚に及んだ。

「浮竹殿、京楽殿。金がたまれば、あなたたちだけでも故郷へ」

「朽木、それはできない。お前をおいてはいけない」

「ルキアちゃんだけを皇太子の傍に置いておくなんてできないよ」

ルキアは、それからたまに閨に呼ばれるようになった。

ルキアは覚悟していたが、寝るまでの間歌を歌うことを求められた。性的な接触は一切なかった。

一護にはまだ正妃がおらず、後宮には近隣諸国の王族貴族の姫君から奴隷の娘まで、とにかく綺麗な美女美少女が集められていたが、一護と閨を共にした者など、一人もいなかった。

突然現れた歌姫が、一護の心を独占していると、後宮にいる寵姫たちは気が気でなかった。

ある日、ルキアは一護に呼び出された。けれど、一護はおらず、そこには後宮の寵姫たちがいた。

「お前、一護様の寵愛をもらっているなんて生意気なのよ!亜人の分際で!」

「そうだわ。その金色の翼をもいでしまいましょう」

「やめろ、よせ」

ルキアは抗うが、寵姫たちは剣を持ち出して、本当にルキアの翼を切ろうとするので、悲鳴をあげた。

「あああああああ!!!」

すると、寵姫たちはバタバタと倒れていく。

「ああ、またやってしまった」

ルキアの声には、普通の歌声と相手を数日間昏倒させる呪いの歌声との2種類の歌声をもっていた。

「ルキア、無事か!?」

騒ぎを聞きつけて、駆け付けた一護が見たものは、目を深紅に輝かせて金の翼で自分を包み込む、怯えたかんじのルキアと、剣を手に倒れている寵姫たち5名。

「呪いの歌声を悲鳴で出してしまった。この寵姫たちは、数日間目を覚まさない」

「そうか。無事ならそれでいい」

「一護、貴様は怖くないのか。呪いの歌声を私はもつのだぞ?」

「でも、俺に向けてはこないだろう?この寵姫たちは、生まれ故郷に返す。追放だ」

「一護‥‥‥」

「ルキア、俺はお前を守りたい。後宮には入れない。あそこは、毒蛇の住処だ」

他の寵姫たちを、毒蛇呼ばわりする一護に、ルキアはきょとんとなった。

「かわいいな、お前」

「な、何がだ!」

「今日もまた、歌ってくれ。俺のために」

浮竹と京楽も呼んで、ハープとフルートを奏でてもらい、ルキアは歌う。

あえて、悲恋の唄を歌った。

「やべ、泣けそう」

ルキアの歌声は、心を揺り動かす。この歌声のせいで、人攫いに捕まった。有翼人の中で、白と黒以外に翼の者は、稀人(まれびと)と呼ばれて大切にされる。

ルキアも、浮竹も京楽も、稀人として里で大切にされていた。

そんな里を襲い、ルキアと浮竹と京楽を奴隷にした奴隷商人は、ルキアが呪いの唄を歌わないように魔封じの首枷をさせていた。

一護は、ルキアの安全を確保した時、真っ先にルキアの魔封じの首枷を取った。

魔法で逃げられるとか、そんなこと一切考えていないようだった。

「ルキア、今日も歌ってくれ」

「浮竹殿と京楽殿は?」

「もう寝てるらしい。今日は、お前と二人きりでいたい」

ソウル帝国の、皇太子である一護には、婚約者がいた。

いずれお役御免になるかもしれないと知りつつも、ルキアは今日も一護のためだけに歌う。

ルキアが一護の元にきて1か月が過ぎようとしていた。

ルキアは、一護に淡い恋心を抱いてた。一護もまんざらではなさそうで、ルキアだけを呼んではお忍びで城下街に出たり、馬で遠乗りをしたりした。

「ルキア、好きだ。俺のいずれ正妃になってほしい」

「しかし、貴様には婚約者が」

「立場上娶らないわけにはいかない。でも、第2夫人にする」

「一護‥‥‥‥」

「ルキア、好きだ」

一護とルキアは、出会って初めてキスをした。

「んっ」

舌と舌を絡み合わせて、深い口づけを繰り返す。

「んあっ」

「ルキア、俺だけのものになってくれ」

「一護が、そう望むのであれば」

次の日から、ルキアは歌姫として必要されるだけでなく、皇族として生きるためのマナーレッスンを受けさせられることになった。

一護は、いずれルキアを娶るつもりであった。父の皇帝に許されればであるが。

それを、浮竹も京楽も喜んでくれた。

「一護と、幸せになりたい」

「朽木ならできる」

「ルキアちゃんなら、やっていけるよ」

二人は、ルキアを応援してくれた。

ルキアがマナーレッスンでコンサートに行けない時は、ハープを奏でながら浮竹が歌う。浮竹の唄も綺麗で澄んでいて、ルキアがいなくてもコンサートには出続けられた。

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