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稀人と皇太子2

ルキアが一護の元にきて、3カ月が経とうとしていた。

ルキアはすっかり、貴族の令嬢のようなマナーを獲得して、綺麗な所作で振る舞う。

有翼人の里に居た時は、自由でマナー講座もあったが人の皇族や貴族のようなマナーではなかった。

翼の手入れとか、歌声の出し方とかそんなものばかり学んだ。

「ルキア、今日も城下町に行こうと思う。一緒にくるか?」

「行く」

ルキアは、すぐに返事をした。

目立つ金銀細工の装飾品を外して、なるべく質素な衣服に身を包み、背中の翼は折りたたんでマントに隠す。

「今日は、年に一度の収穫祭だ」

「わぁ」

ルキアが感嘆の声をあげるほど、城下町は賑わっていた。

「そこの綺麗なお嬢さん」

「ん、私か?」

「そうそう、そこのお嬢さん、この髪留めと同じ瞳の色をしているね。どうだい、買っていかないかい?」

「見せてみろ」

一護が、商人が勧める髪飾りを見る。

ルキアだけだと、とんだ粗悪品をつかませられる可能性がある。

「アメジストか。割と上質だな。俺が買おう」

「お、お嬢さんのいい人ですかい?」

「ああ、まぁそんなとこだ」

「い、一護!」

ルキアは顔を真っ赤にする。

一護は、商人に金貨数枚を払って、ルキアの髪にアメジストの髪飾りをつけた。

「貴様から買ってもらうのは、これが初めてだな。大切にする」

一護はルキアに多くの装飾品を与えるが、ルキアはつけろと言われればつけるが、自分からはつけない。

ルキアには、女官の代わりに浮竹と京楽が付き人として世話係ということになっていた。

女性相手に、男性はどうなのかと問う声は大きかったが、ルキアは不貞をするような娘でないと言い聞かせて、家臣たちを納得させた。

ルキアは、皇宮で自由を許されていた。

浮竹と京楽もだ。

ただ、後宮の寵姫の身分の高い者も皇宮への出入りを認められているので、ルキアの安全を確保するためにも、一護はルキアの地位を確固たるものにすべく、模索していた。

婚姻を、家臣たちは大反対していた。

稀人の金の翼の有翼人とはいえ、しょせん亜人。

亜人を寵姫にすることは許されるが、娶ることはまだ一護の身分ではどうしようもできない。

一護はまだ17歳だ。

ルキアは16歳。

相手としてはちょうどいい年齢だが、やはり亜人という壁が重くのしかかる。

「私が、稀人の有翼人でなければ」

「でも、それだったら、俺と巡り合えなかった」

二人は、城下町を進んでいく。

たくさんの店が並んでいて、ルキアは昼時なので腹を鳴らせた。

「はは、体は正直だな?」

「う、うるさい!」

店の一つで、ミートパイを買って、一護はルキアに食べさせる。

「おいしい」

「だろう?このソウル帝国は豊かだからな。飢える者は少ない。父の皇帝の一心は、よりよい国にしたくて家臣や大臣を貴族から選ぶのではなく、平民からも選べるるように学校も作ったし、奴隷制度の廃止を訴えている。亜人の奴隷売買を禁止したのも父だ」

「一護の父上は、立派な方なのだな」

「妹たちに激甘のアホ皇帝だけどな」

「私にも、家族がいる。朽木白哉といって、私の義兄だ。有翼族で、人間社会におけるところの大貴族だ」

「会いたいか?」

「兄様には、会いたい。でも、今の全てを捨ててまで会いたいと聞かれると、答えに詰まる」

一護は、ルキアの頭をわしゃわしゃと撫でた。

「わ、何をする!」

「もっと貪欲になれよ。お前は、このソウル帝国の皇太子黒崎一護の一番の寵姫だ。兄である白哉を呼ぶことだってできる」

「本当か?」

ルキアの目が輝く。

「近いうちに、会わせてやるよ」

「約束だぞ?」

「ああ」

一護とルキアは、そのまま城下町をぐるりと巡り、いろいろ屋台で食事を買って食べて、浮竹と京楽におみやげを買ったりして皇宮に帰った。

「一護様!皇帝が!」

一護とルキアが戻ってくると、一護の父である一心が倒れたと知らせが入り、一護は急いで一心の寝室に駆け付ける。

ルキアとも一緒だった。

「親父!」

「よう、バカ息子!」

「なんだよ、倒れたと聞いてびっくりしちまったじゃねぇか。意外と元気そうだな」

「このバカ息子、父を敬え」

「やだね」

「あの、皇帝陛下」

ルキアが、おずおずと一心に声をかける。

「お、確かルキアちゃんだっけ。くそバカ息子の一番の寵姫の」

「病を癒すという効果のある歌を歌っていいですか?」

「お、そんなのあるのか?」

一護が身を乗り出す。

「このアホ皇帝に聞かせるのはもったいないけど、歌ってくれ」

「それでは‥‥‥‥」

ルキアは歌った。

その声は魔力を帯びており、一心が倒れた原因である心臓の病を、完治とまではいかないが、癒してくれた。

「すごいぞ、一護。この子は‥‥‥」

一心が、声を失う。

「この能力、戦争の火種になるな。ルキアも、ここにいた者たち全員に、箝口令をしく。このことは一切他言無用で」

「はい」

「分かりました」

「承知いたしました」

その場にいた、近衛騎士や医者が頷く。

ルキアも、声もなくコクンと頷いた。

「ルキア。くそ親父のために、週に一度、癒しの唄を歌ってくれないか」

「一護が望むであれば」

ルキアは、皇帝である一心にも信用されて、もはや一護のただの一番の寵姫という座をこえていた。

「ルキア、国母になれ」

「一護?」

「俺は、お前を娶る。正式に」

「一護‥‥‥」

ルキアと一護が出会って、半年が経とうとしていた。

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