さようなら(1期終了後)
「あなたは・・・・ここにはいない」
もう何度目かになる呟きを、新しいトレミーで呟いた。
ティエリアの紅玉の目は、何も映していなかった。まるで、心が何処かにいってしまったように呆けている。
涙は、もう流れない。
泣きすぎて、もう涙を流すことも忘れてしまった。
それに、泣いたところで彼が帰ってくるわけでもない。
新しいガンダムを作る作戦は、黙々と進められている。このトレミーがある場所だって、人工衛星に見せかけて作られた、CBのあじとの一つである。
「ティエリア、あけて」
その声は、フェルトだった。
クリスティナとリヒテンダールは、最後の戦いで逝ってしまった。スメラギ・李・ノリエガはCBを去って行った。ドクターモレノも死んだ。残ったのは、フェルト、イアン、ラッセくらいのものだろうか。
「あけて。ロックを解除して。お願いだから、ティエリア」
宙を蹴って、ロックを解除すると、フェルトが部屋に飛び込んできた。
「どうした、いきなり」
「それはこっちの台詞!2日も部屋に閉じこもって・・・もしかしたら、死んでるんじゃないかって、心配で心配で」
「そんな愚かな真似はしない」
「でも!」
前にも、何も口にせず、3日ほど部屋に閉じこもりっぱなしだったことがある。だから、フェルトは過保護なまでにティエリアに歩み寄る。
他のクルーはティエリアをそっと静かに置いておくのに、フェルトだけは何かある度に、ティエリアと接触していた。
「もう、泣かないのね」
そう言ったフェルトの大きな瞳から、涙が零れて宙に舞う。
それはキラキラと輝いて、人工の光に反射してとても綺麗だった。
ロックオンだけでなく、ヴェーダとのアクセスまで失ってしまった今、ティエリアは生きる意味を探していた。
今のCBに、生きる意味は見つからない。
虚無。
ティエリアを支配したのは、魂の抜け殻のような虚無感だった。
「お願いだから!ちゃんと人と会って会話をして、そして食事をきちんととって、そして眠って!」
ドンと、胸を手で叩くフェルトの柔らかなピンクの髪に、顔を埋めると、ティエリアが使っているのと同じシャンプーの匂いがした。
「お願い!何度だっていうわ。ここで朽ちないで!残ったガンダムマイスターはあなただけなの!」
「ここで朽ちないで・・・・か・・・・」
いっそ、朽ちてしまえれば楽になるだろうか。
でも、置いていけない。
残った皆を。虚無感に包まれていようとも、最後に残ったガンダムマイスターとしての責任がある。皆を守り、次の来るべき戦いに向けて歩いていかなければならない。
「泣いていいの。だから、自分を押し殺したりしないで」
フェルトは泣き続けていた。
「ロックオンが、みんなが死んで、悲しいのはあなただけじゃないって知って欲しい」
「ああ、そうだな・・・・だが、もう泣かないと決めたんだ」
じわりと、胸が温かくなった。それは、フェルトの体温によるものだ。
以前より一段と細くなったフェルトを抱きしめて、ティエリアは目を瞑った。
「みんなが心配してるの。だから、部屋に閉じこもったりしないで」
ティエリアが部屋に閉じこもっている時、食事は決して口にせず、ろくに眠りもしない生活を送っていることを、フェルトは知っていた。
放っておけない。ティエリアに立ち直ってもらわなければならない。ガンダムマイスターとして。
「ちゃんと生きて!みんなの分まで・・・・」
「彼の分まで?」
「そう。ロックオンの分まで。ロックオンが庇ってくれた大事な命でしょう。捨てるような自暴自棄な真似はしないで」
「ああ・・・・そうだな」
涙は、もう零さないと決めた。
だから、泣くことはない。
彼のことを思い出しても。
「お腹すいてるでしょ?食事にいこ。ほら・・・・」
手をひっぱられて、自然とティエリアの体は部屋の外に出た。ピンク色のカーディガンが、宙に翻る。そして、フェルトはもう一度抱きついてきた。
「忘れないで。刹那もアレルヤも、絶対生きてるから。今リーダーシップをとれるのはティエリア、あなたしかいないの」
「リーダーシップか・・・」
この抜け殻のような中身で、果たしてそれができるのだろうか。
否、しなければならないだろう。
いつまでも、過去を悔やんでいても、彼のことばかりを考えていても仕方ないのだ。
「私、ロックオンにまた手紙を書いたの」
「そうか。新しい機体はセラヴィといったな。機体テストのために、宇宙に出ることが決まっている。一緒に、その手紙を彼に・・・・・ロックオンに、渡しにいこう」
「うん」
フェルトは、ようやく泣き止んで、ティエリアの絶対的な美貌にしがみついていたのが今更恥ずかしくなったのか、頬を染めてあらぬ方角を向いていた。
「僕も書く。手紙を」
きっと、それは想いの綴った長いものではなく、簡素なもの。
ありがとう。そして、さようなら。
ティエリアが、フェルトの頭を撫でる。フェルトがびっくりしていた。
「ティエリア、優しくなったね」
「そうだろうか。昔と変わらないと、僕は思うが」
「ううん。柔らかくなった」
纏う雰囲気が、随分と柔らかくなった。昔は同じガンダムマイスターにも適正がないと、銃を向けていたのに。もう、過去の話であるが。
手紙を、ロックオンに書こう。
ありがとう、さようならと。そして、あなたの意志は受け継ぐと。
手紙を、書こう。
ロックオン・ストラトス。
僕を人間にしてくれて、ありがとう。
ロックオン、ストラトス。
もう会えないけれど、あなたは僕の心の中で生き続けている。だから、あえて言おう。
さようなら、と。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ティエフェル?ありえないカップリングだけど1期終了直後ならありそう。
刹フェルがサイト傾向ですけど。そういや最近刹フェル打ってないな。今度アニメ見終わったら書こうかね。
もう何度目かになる呟きを、新しいトレミーで呟いた。
ティエリアの紅玉の目は、何も映していなかった。まるで、心が何処かにいってしまったように呆けている。
涙は、もう流れない。
泣きすぎて、もう涙を流すことも忘れてしまった。
それに、泣いたところで彼が帰ってくるわけでもない。
新しいガンダムを作る作戦は、黙々と進められている。このトレミーがある場所だって、人工衛星に見せかけて作られた、CBのあじとの一つである。
「ティエリア、あけて」
その声は、フェルトだった。
クリスティナとリヒテンダールは、最後の戦いで逝ってしまった。スメラギ・李・ノリエガはCBを去って行った。ドクターモレノも死んだ。残ったのは、フェルト、イアン、ラッセくらいのものだろうか。
「あけて。ロックを解除して。お願いだから、ティエリア」
宙を蹴って、ロックを解除すると、フェルトが部屋に飛び込んできた。
「どうした、いきなり」
「それはこっちの台詞!2日も部屋に閉じこもって・・・もしかしたら、死んでるんじゃないかって、心配で心配で」
「そんな愚かな真似はしない」
「でも!」
前にも、何も口にせず、3日ほど部屋に閉じこもりっぱなしだったことがある。だから、フェルトは過保護なまでにティエリアに歩み寄る。
他のクルーはティエリアをそっと静かに置いておくのに、フェルトだけは何かある度に、ティエリアと接触していた。
「もう、泣かないのね」
そう言ったフェルトの大きな瞳から、涙が零れて宙に舞う。
それはキラキラと輝いて、人工の光に反射してとても綺麗だった。
ロックオンだけでなく、ヴェーダとのアクセスまで失ってしまった今、ティエリアは生きる意味を探していた。
今のCBに、生きる意味は見つからない。
虚無。
ティエリアを支配したのは、魂の抜け殻のような虚無感だった。
「お願いだから!ちゃんと人と会って会話をして、そして食事をきちんととって、そして眠って!」
ドンと、胸を手で叩くフェルトの柔らかなピンクの髪に、顔を埋めると、ティエリアが使っているのと同じシャンプーの匂いがした。
「お願い!何度だっていうわ。ここで朽ちないで!残ったガンダムマイスターはあなただけなの!」
「ここで朽ちないで・・・・か・・・・」
いっそ、朽ちてしまえれば楽になるだろうか。
でも、置いていけない。
残った皆を。虚無感に包まれていようとも、最後に残ったガンダムマイスターとしての責任がある。皆を守り、次の来るべき戦いに向けて歩いていかなければならない。
「泣いていいの。だから、自分を押し殺したりしないで」
フェルトは泣き続けていた。
「ロックオンが、みんなが死んで、悲しいのはあなただけじゃないって知って欲しい」
「ああ、そうだな・・・・だが、もう泣かないと決めたんだ」
じわりと、胸が温かくなった。それは、フェルトの体温によるものだ。
以前より一段と細くなったフェルトを抱きしめて、ティエリアは目を瞑った。
「みんなが心配してるの。だから、部屋に閉じこもったりしないで」
ティエリアが部屋に閉じこもっている時、食事は決して口にせず、ろくに眠りもしない生活を送っていることを、フェルトは知っていた。
放っておけない。ティエリアに立ち直ってもらわなければならない。ガンダムマイスターとして。
「ちゃんと生きて!みんなの分まで・・・・」
「彼の分まで?」
「そう。ロックオンの分まで。ロックオンが庇ってくれた大事な命でしょう。捨てるような自暴自棄な真似はしないで」
「ああ・・・・そうだな」
涙は、もう零さないと決めた。
だから、泣くことはない。
彼のことを思い出しても。
「お腹すいてるでしょ?食事にいこ。ほら・・・・」
手をひっぱられて、自然とティエリアの体は部屋の外に出た。ピンク色のカーディガンが、宙に翻る。そして、フェルトはもう一度抱きついてきた。
「忘れないで。刹那もアレルヤも、絶対生きてるから。今リーダーシップをとれるのはティエリア、あなたしかいないの」
「リーダーシップか・・・」
この抜け殻のような中身で、果たしてそれができるのだろうか。
否、しなければならないだろう。
いつまでも、過去を悔やんでいても、彼のことばかりを考えていても仕方ないのだ。
「私、ロックオンにまた手紙を書いたの」
「そうか。新しい機体はセラヴィといったな。機体テストのために、宇宙に出ることが決まっている。一緒に、その手紙を彼に・・・・・ロックオンに、渡しにいこう」
「うん」
フェルトは、ようやく泣き止んで、ティエリアの絶対的な美貌にしがみついていたのが今更恥ずかしくなったのか、頬を染めてあらぬ方角を向いていた。
「僕も書く。手紙を」
きっと、それは想いの綴った長いものではなく、簡素なもの。
ありがとう。そして、さようなら。
ティエリアが、フェルトの頭を撫でる。フェルトがびっくりしていた。
「ティエリア、優しくなったね」
「そうだろうか。昔と変わらないと、僕は思うが」
「ううん。柔らかくなった」
纏う雰囲気が、随分と柔らかくなった。昔は同じガンダムマイスターにも適正がないと、銃を向けていたのに。もう、過去の話であるが。
手紙を、ロックオンに書こう。
ありがとう、さようならと。そして、あなたの意志は受け継ぐと。
手紙を、書こう。
ロックオン・ストラトス。
僕を人間にしてくれて、ありがとう。
ロックオン、ストラトス。
もう会えないけれど、あなたは僕の心の中で生き続けている。だから、あえて言おう。
さようなら、と。
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ティエフェル?ありえないカップリングだけど1期終了直後ならありそう。
刹フェルがサイト傾向ですけど。そういや最近刹フェル打ってないな。今度アニメ見終わったら書こうかね。
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