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接吻(2期)

「ティエリア、よく似合っている」

刹那は、黒いドレスを身にまとったティエリアの耳に囁きかけた。ふっと息が吹きかけられて、ぞくりと背筋が泡立つ。

「そういう刹那こそ、似合っていると思うが」

黒いスーツ姿の刹那が眩しくて、ティエリアは目を細めた。
ティエリアの肩まである紫紺の髪は、上手く纏められて、いつもは見れない白いうなじに視線がついついいってしまう。

ティエリアは、今回も女装という出で立ちだが、手慣れたもので、ドレスに身を包む姿は可憐な少女以外の何者にも見えなかった。

アロウズの高官たちが集うパーティーに、ミッションのために潜入した二人は、人々の視線を釘付けにしていた。

「少し目立ちすぎだな」

ティエリアが、手に持っていた花束を握る手に力を入れる。

「大丈夫。偽の身分証も完璧なものだ。ティエリアがいるから、これだけ視線が集まるんだ」
「それを言うなら、刹那もだろう!」

ティエリアは、小さいため息をつく。

「ほら、百合の花だ。お前に似合っていると思う」
「僕は、花をもらいにこのパーティーに出席したわけではない」
「そう言うな。せっかく咲いているんだから」

刹那が、口元に百合の花をもってきて、接吻をした。それを、ティエリアに渡す。

「本当なら、ティエリアに口づけたい」
「そ、そういうことは、こ、ここで言うべきではない!」

少し紅くなって、ティエリアは刹那から貰った白い百合に接吻するのだった。そう、刹那が口づけた場所と同じ花弁に。

ミッション開始まで、あと僅かの出来事であった。

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