皆既月食(3期)
ロックオンとティエリアの二人は、久しぶりにトレミーを降りて、アイルランドのロックオンの生家にきていた。
「ロックオン。今日は皆既月食が見れるそうだ」
「へぇ。珍しいな」
ティエリアは、ニュース番組で皆既月食が今晩は見れると知って、デジタルカメラを用意していた。
何年に一度かの、今回は、月がほとんど欠ける、何十年かに一度の皆既月食らしい。どのテレビ番組のチャンネルを回しも、時間帯がニュース放送にあたっているせいか、皆既月食のことをリポーターが話している。
ティエリアはTVを消した。
もう少し月が高くなって、皆既月食が綺麗に見える時間帯に、撮影してみよう。ティエリアはそう思っていた。
TVを消したせいか、虫の鳴く声以外は、静寂に包まれる。
「ティエリア、笑って~」
ロックオンが、ティエリアがもっていたデジカメを彼から取り上げて、ティエリアを勝手に撮影しだした。
「ロックオン、僕なんかとっても楽しくない!」
「いやいや、俺は楽しいから!」
ほんとに楽しそうに、小さな笑みさえ浮かべているロックオン。
ロックオンからデジカメを取り返そうにも、身長差でどうにもならない。
「これでも、背は高いつもりなのに」
ふう、とため息をつく。
170センチは超えている。少なくとも低いという身長ではないが、180をこえるロックオンの背には届かない。
しばらくの間、ロックオンは楽しそうにティエリアを撮影していた。
「お、そろそろかなぁ。外行こうぜ」
「はい」
月が高く空に輝いているはずなのに、ぼやけた輪郭しかない。皆既月食だ。
「ティエリア、そこに立って。その台の上」
下からのアングルで、ティエリアと皆既月食が起こった月を同時にシャッターにおさめた。
ティエリアの、紫紺の髪が風にさらさらと揺れる。
「もう一枚とらせて」
パシャリ。ウィーン。機械的な音をデジカメが地面に落とす。
ティエリアは、半分拗ねた顔で白皙の美貌を曇らせる。
「自分でとるつもりだったのに」
「いやいや。俺はティエリアも一緒にとりたいの。だからもう一枚」
すでに2枚とったのに、もう一枚欲しいらしい。
「今度はティエリアだけ~」
ティエリアは、クスリと笑みを刻むと、シャッターを切ろうとしているロックオンの両頬を手ではさみ、そして唇に軽いキスを落とす。
「あ、もっかい」
「だめ。終わり」
ティエリアを撮影しそこねたけれど、それよりもいい思いができた。ロックオンの茶色のくせ毛が、風でふわりとティエリアの視界を奪う。
「ん、う」
ロックオンのほうからの口づけだった。巧みに角度を変えて、心がとろけてしまいそうな口づけに、ティエリアは茫然となる。それから、舌を絡み合わせてから、ティエリアのほうから離れていった。
「もっかい」
「だめ。今度こそ、終わり。部屋に戻りますよ」
ロックオンからデジカメを取り上げて、ティエリアは先に部屋に戻る。もうすぐ冬だ。アイルランドの冬は厳しい。
肌寒いから、青いカーディガンの上から上着を羽織っていた。
ロックオンとお揃いの。
今度こそ、ティエリアは扉をあけて室内に戻る。
「んー。まぁいいか」
ロックオンは、もっと皆既月食を楽しみたかったのだが、ティエリアのいない空間には飽きてしまう。だから、家の中に戻るのだ。
ティエリアといつでも、一緒。それが、二人が手に入れた未来であった。
「ロックオン。今日は皆既月食が見れるそうだ」
「へぇ。珍しいな」
ティエリアは、ニュース番組で皆既月食が今晩は見れると知って、デジタルカメラを用意していた。
何年に一度かの、今回は、月がほとんど欠ける、何十年かに一度の皆既月食らしい。どのテレビ番組のチャンネルを回しも、時間帯がニュース放送にあたっているせいか、皆既月食のことをリポーターが話している。
ティエリアはTVを消した。
もう少し月が高くなって、皆既月食が綺麗に見える時間帯に、撮影してみよう。ティエリアはそう思っていた。
TVを消したせいか、虫の鳴く声以外は、静寂に包まれる。
「ティエリア、笑って~」
ロックオンが、ティエリアがもっていたデジカメを彼から取り上げて、ティエリアを勝手に撮影しだした。
「ロックオン、僕なんかとっても楽しくない!」
「いやいや、俺は楽しいから!」
ほんとに楽しそうに、小さな笑みさえ浮かべているロックオン。
ロックオンからデジカメを取り返そうにも、身長差でどうにもならない。
「これでも、背は高いつもりなのに」
ふう、とため息をつく。
170センチは超えている。少なくとも低いという身長ではないが、180をこえるロックオンの背には届かない。
しばらくの間、ロックオンは楽しそうにティエリアを撮影していた。
「お、そろそろかなぁ。外行こうぜ」
「はい」
月が高く空に輝いているはずなのに、ぼやけた輪郭しかない。皆既月食だ。
「ティエリア、そこに立って。その台の上」
下からのアングルで、ティエリアと皆既月食が起こった月を同時にシャッターにおさめた。
ティエリアの、紫紺の髪が風にさらさらと揺れる。
「もう一枚とらせて」
パシャリ。ウィーン。機械的な音をデジカメが地面に落とす。
ティエリアは、半分拗ねた顔で白皙の美貌を曇らせる。
「自分でとるつもりだったのに」
「いやいや。俺はティエリアも一緒にとりたいの。だからもう一枚」
すでに2枚とったのに、もう一枚欲しいらしい。
「今度はティエリアだけ~」
ティエリアは、クスリと笑みを刻むと、シャッターを切ろうとしているロックオンの両頬を手ではさみ、そして唇に軽いキスを落とす。
「あ、もっかい」
「だめ。終わり」
ティエリアを撮影しそこねたけれど、それよりもいい思いができた。ロックオンの茶色のくせ毛が、風でふわりとティエリアの視界を奪う。
「ん、う」
ロックオンのほうからの口づけだった。巧みに角度を変えて、心がとろけてしまいそうな口づけに、ティエリアは茫然となる。それから、舌を絡み合わせてから、ティエリアのほうから離れていった。
「もっかい」
「だめ。今度こそ、終わり。部屋に戻りますよ」
ロックオンからデジカメを取り上げて、ティエリアは先に部屋に戻る。もうすぐ冬だ。アイルランドの冬は厳しい。
肌寒いから、青いカーディガンの上から上着を羽織っていた。
ロックオンとお揃いの。
今度こそ、ティエリアは扉をあけて室内に戻る。
「んー。まぁいいか」
ロックオンは、もっと皆既月食を楽しみたかったのだが、ティエリアのいない空間には飽きてしまう。だから、家の中に戻るのだ。
ティエリアといつでも、一緒。それが、二人が手に入れた未来であった。
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