弁当だよ人生の危機
「はい、僕の愛のこもった弁当です」
ギギギギギギ・・・・ギギギ。
壊れかけた機械時計のような音を立てて、ロックオンは振り向いた。
「はははは・・・・・・あ、ありがとよ」
らんらんと鼻歌まで歌って、上機嫌でキッチンで何かしているとは知っていたけど、新聞紙を広げて見ないふり、聞こえないふりをしていた。
ティエリアが、キッチンに立つ。
それはロックオンにとって、愛を試される試練の時でもある。
なるべく自分がキッチンに立って、食事はロックオンがティエリアの分まで作っているのだけれど。
けれど、朝起きるとそこにはもう、エプロン姿のティエリアが立っていた。
自分が作ると言ったのだが、彼はどいてくれなくて。彼女といってもいいようなそんな容姿のティエリアは、エプロン姿でエビを・・・・・・エビフライにするつもりだったのだろう。なぜか油にではなく、そーめんのつゆを煮えたぎらせて、そこにマヨネーズとプリンと、大根をつっこんだ鍋にえびをいれていた。
水分は沸騰してぐつぐつと音を立てていた。
他に何を入れたのか分からないのだが、まるで魔女の鍋の中身のような煮えたぎる音と、匂い。そしてティエリアは夕飯に出すはずだったエビを、煮えたぎるマグマのような鍋にぼちゃぼちゃいれまくっていた。
それも全て見ないふりをした。
そうして2時間が経過した。
ドロドロの物体を弁当箱の一番下にいれて、その上にライスをいれてかきまぜ、生のえびをぶちこんでいた。
見ない、見ないと決めていたのに、気づけば新聞紙に穴をあけて、ティエリアの致命的な料理を、固まったままロックオンは見ていたのだ。
「できました。どうぞめしあがれ」
異臭。
ぱかりと弁当箱をあけられた瞬間、鼻がつんとして涙が出まくった。ティエリアはなぜか平気らしい。
緑のスライムのように蠢く、何か分からない物体が、一段目の弁当に入っている。
「これは、ジャボテンダー弁当です」
「へぇ。そうなんだ」
「ジャボテンダーさんの味がするように、葉緑体をたくさん混ぜておきました」
ど、どうやって?
つっこみたいけど、とりあえずここから逃げ出さないと。
でも、にこにこにこと微笑むティエリアの眩しいばかりの笑顔に、ロックオンはつられて笑み返し、弁当箱を受け取って、彼の目の前で食べる羽目になっていた。
「ちょっと、ごめん。刹那に電話してくる」
携帯を取り出し、ティエリアから離れてとなりの部屋にいき、刹那に電話を入れる。
「ああ、俺ロックオン。ああ、ニールのほうな。頼む・・・・・・2時間しても連絡が、もう一度そっちに行かない時は、救急車よろしく」
「またか」
先月もじゃなかったか?と嫌そうに聞いてくる刹那の声が遠い。
「ロックオン。さぁさぁ、食べてください」
携帯をとりあげられて、ずるずる引きずられてキッチンに戻った。こんな時のティエリアは、やけに力があって、本当にその細い体のどこにそんな力がと問いたくなる。
「ああ、弁当ありがとな。いただきます」
涙をだらだら流しながら、ロックオンは感涙したのではなく、煙に目をやられて泣いているだけなのだが、ティエリアから見れば泣かれるほどに嬉しいのだとしか見えなかった。
緑の蠢く物体をスプーンですくい、ロックオンは意を決して口の中に入れた。
そして。
いつものように、2時間後、刹那に連絡がいかずに救急車で病院に運ばれるロックオンの姿があったという。
「おかしいなぁ。今日こそ、葉緑体を活性化するエキスの開発に成功したはずなのに」
搬送されるロックオンに付き従いながら、首を傾げるティエリアの姿があった。
「う、うまれる!」
「ロックオン、元気な男の子生んでくださいね!」
「う、うまれ・・・・うまれる、がくっ」
いつも、搬送されるたびに「うまれる」とロックオンはうなされる。一体どんな味であったのか。何かがうまれそうな味なのは、多分、確実だ。
ギギギギギギ・・・・ギギギ。
壊れかけた機械時計のような音を立てて、ロックオンは振り向いた。
「はははは・・・・・・あ、ありがとよ」
らんらんと鼻歌まで歌って、上機嫌でキッチンで何かしているとは知っていたけど、新聞紙を広げて見ないふり、聞こえないふりをしていた。
ティエリアが、キッチンに立つ。
それはロックオンにとって、愛を試される試練の時でもある。
なるべく自分がキッチンに立って、食事はロックオンがティエリアの分まで作っているのだけれど。
けれど、朝起きるとそこにはもう、エプロン姿のティエリアが立っていた。
自分が作ると言ったのだが、彼はどいてくれなくて。彼女といってもいいようなそんな容姿のティエリアは、エプロン姿でエビを・・・・・・エビフライにするつもりだったのだろう。なぜか油にではなく、そーめんのつゆを煮えたぎらせて、そこにマヨネーズとプリンと、大根をつっこんだ鍋にえびをいれていた。
水分は沸騰してぐつぐつと音を立てていた。
他に何を入れたのか分からないのだが、まるで魔女の鍋の中身のような煮えたぎる音と、匂い。そしてティエリアは夕飯に出すはずだったエビを、煮えたぎるマグマのような鍋にぼちゃぼちゃいれまくっていた。
それも全て見ないふりをした。
そうして2時間が経過した。
ドロドロの物体を弁当箱の一番下にいれて、その上にライスをいれてかきまぜ、生のえびをぶちこんでいた。
見ない、見ないと決めていたのに、気づけば新聞紙に穴をあけて、ティエリアの致命的な料理を、固まったままロックオンは見ていたのだ。
「できました。どうぞめしあがれ」
異臭。
ぱかりと弁当箱をあけられた瞬間、鼻がつんとして涙が出まくった。ティエリアはなぜか平気らしい。
緑のスライムのように蠢く、何か分からない物体が、一段目の弁当に入っている。
「これは、ジャボテンダー弁当です」
「へぇ。そうなんだ」
「ジャボテンダーさんの味がするように、葉緑体をたくさん混ぜておきました」
ど、どうやって?
つっこみたいけど、とりあえずここから逃げ出さないと。
でも、にこにこにこと微笑むティエリアの眩しいばかりの笑顔に、ロックオンはつられて笑み返し、弁当箱を受け取って、彼の目の前で食べる羽目になっていた。
「ちょっと、ごめん。刹那に電話してくる」
携帯を取り出し、ティエリアから離れてとなりの部屋にいき、刹那に電話を入れる。
「ああ、俺ロックオン。ああ、ニールのほうな。頼む・・・・・・2時間しても連絡が、もう一度そっちに行かない時は、救急車よろしく」
「またか」
先月もじゃなかったか?と嫌そうに聞いてくる刹那の声が遠い。
「ロックオン。さぁさぁ、食べてください」
携帯をとりあげられて、ずるずる引きずられてキッチンに戻った。こんな時のティエリアは、やけに力があって、本当にその細い体のどこにそんな力がと問いたくなる。
「ああ、弁当ありがとな。いただきます」
涙をだらだら流しながら、ロックオンは感涙したのではなく、煙に目をやられて泣いているだけなのだが、ティエリアから見れば泣かれるほどに嬉しいのだとしか見えなかった。
緑の蠢く物体をスプーンですくい、ロックオンは意を決して口の中に入れた。
そして。
いつものように、2時間後、刹那に連絡がいかずに救急車で病院に運ばれるロックオンの姿があったという。
「おかしいなぁ。今日こそ、葉緑体を活性化するエキスの開発に成功したはずなのに」
搬送されるロックオンに付き従いながら、首を傾げるティエリアの姿があった。
「う、うまれる!」
「ロックオン、元気な男の子生んでくださいね!」
「う、うまれ・・・・うまれる、がくっ」
いつも、搬送されるたびに「うまれる」とロックオンはうなされる。一体どんな味であったのか。何かがうまれそうな味なのは、多分、確実だ。
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