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血より濃いもの(コード継承シリーズ)

コードを継承して、ちょうど区切りがついた年、日にち。
444年と44日たった。
4とは死というとらえかたもある。

「なぁ」
「なんだ」

いつものように無意味に近い曖昧さでC.C.を視線に焼き付ける。
いつ見ても永遠の少女の姿のままの彼女。緑のロングストレートの髪だけが色彩に鮮やかに残る。
太陽のコロネのように黄金の瞳は、いつも感情を浮かばすことをせず、月日が流れていくたびにその黄金は鮮明になり、いつしか太陽が蒼穹の空から落ちてきたら、C.C.の瞳のように、色だけ鮮明になってそして明かりを失って落ちていくのだろうか。

太陽の瞳。
いつの頃からか、C.C.の瞳をそう呼ぶようになってた。
太陽よりも美しい耀きをもっているのに、そこに太陽のような再生の光はないに等しい。
暗くあいた眼窩に宿る二つの太陽。

仰ぎ見るよりも、凝視するほうがいいとルルーシュは思った。

「C.C.」
「だからなんだ」

「契約をまたしよう」
「いいだろう」

互いの親指を爪で噛み切って、滲み出た真紅を交じり合わす。

ピチョンと音をたてて、二人の血液は床に落ちて染みとなって世界から消える。
この隔絶された世界で、閉じられたままの世界で、永久に太陽など見えない世界で生きるために、二人は悪魔のようにお互いの血をまぜあわせたあと唇を重ねて言うのだ。

「お前の太陽はいつ壊れる?」
「もともと壊れている。お前の星空はいつ壊れる?」
「すでに星空などこの世界にはない」
互いの髪や瞳の色を揶揄する言葉は、赤い鮮血に混じって真紅となった。

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こっちもココアで(コード継承シリーズ)


「ルルーシュ。眠れないのか」
「ああ、少しな。昼に寝すぎた」
ルルーシュは眼鏡をかけてパソコンをいじっていた。株をやっているんだろう。それで二人は生計を立てている。働くこともせずに毎日ぶらぶらしている若い二人を不審に思うものはいない。
十代の少年少女で時を止めてしまった二人を、周囲の家の者は親の仕送りで養ってもらっているんだろうと考えていた。
まだ高校生くらいの年齢の二人。
二人はそこで時間を永遠に止めてしまった。

季節が移り変わっても、同じ姿のまま季節だけが移ろい変わりゆく。

「ココアでも飲むか?」
珍しくC.C.がココアを入れてくれた。
昔はよくナナリーが寝付けないときに入れてあげたものだ。一緒に飲んで、そしておやすみのキスをして眠った。

「懐かしいな。貰う」
ココアを一口飲む。
甘さと暖かさがじんわりと体中に広がる。その心地よさにルルーシュは目を閉じて、パコソンのデータを保存すると電源をきった。

「ルルーシュ?」
「C.C.、寝るぞ」
「眠くないのではなかったのか?」
「今なら寝れそうな気がする」

C.C.をベッドに押し倒して、ルルーシュはベッドに転がった。
本当に、色気も何もありゃしない。
二人は唇を重ねる。

C.C.の舌にほんのりとした甘さが混じった。
「お前は、変わらないな。このままのルルーシュでいてくれ」
「仰せのままに。俺だけの魔女」

C.C.を柔らかく抱きとめて、ルルーシュは毛布を被った。

お兄様。ナナリーが天国で微笑んでいる気がした。
ナナリー。
俺は、寂しいけど、でも幸せだよ。
多分、な。

魔女が隣にいてくれるから。

それは良かったです、お兄様。
ナナリーは薄い紫の瞳を和ませていつまでもルルーシュに語りかけているような夢を見た。

さぁ、明日になったら何をしようか。
また、移ろいゆく季節でも眺めようか。
C.C.と一緒に。

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移り変わる景色(コード継承シリーズ)

カタンコトンカタンコトン。
荷物の旅行かばんを上に乗せて、ただひたすら窓から移り変わっていく景色をみやる。
かつてはEUとして存在したヨーロッパ。
そこにを走る鉄道に、意味もなくルルーシュとC.C.は乗り込んだ。

地平線の向こう側まで広がる大地、中世の町並みを色濃くのこした名もない町、それから森、アルプスの山々が見える湖のほとり。
いろんな風に景色が移り変わっていく。

「終点までだろう、ルルーシュ」
「ああそうだな。終点まで、いこうか」

この鉄道の終点はなんという駅だったろうか。
数十年前、移動の時に利用した記憶があるけれど、駅の名前まで記憶していない。
記憶していても、ルルーシュのIQが高い頭でさえ風化してしまうほどの長い時間。
その長い時間を、二人は手を繋いで歩いていく。

生命という論理をはるかに超えた存在となった二人。
C.C.は、ただ黙して窓から見える景色を見る。ルルーシュは、僅かに開け放たれた窓から入る風に靡き、翻る
C.C.の鮮やかな翠の髪を見つめて、一筋だけ手にとる。
「なんだ」
「お前の髪は綺麗だな」
「お前のほうが綺麗だ」
C.C.は声もなく笑った。

閑散とした二人の世界。
それが、二人が生きる世界。暖かいわけでもなく、だからといって寒すぎるわけでもなく、寄り添うもとこもなくただお互いの手を繋いで前を歩いていく。

「今度、アルプス山でも登るか?」
「体力を使うのは嫌いだ」
「そうだったな。お前はいつも体育の成績が2だったか」
C.C.は面白そうに蒼い空を見上げて、ルルーシュをばかにする。
ルルーシュは、ふと右手に宿ったコードを見て、そして紫色の目を閉じた。

「俺たちに輪廻転生は必要ないな」
「むしろ輪廻転生したいくらいだ」
仏教徒の思想を、二人は永遠に理解できないだろう。

だって、二人は何があってもこの世界から消えない。死なないのだから。
それがコードを刻まれた者の永遠の呪い。
不老不死なんて。夢のように物語では素敵に語られるけど。
でも、実際なってみると、なんて鬱陶しいものなんだと思うくらいに邪魔だ。

今すぐ、この息の根を誰かに止めてもらいたい、そう望むむくらいに。

「ただ。私は満足している。お前を手に入れた。お前を失い、そのまま孤独で歩くはずだった世界に、紫水晶のお前が加わった。それだけで、こんなにも世界は変わる」
列車の窓を閉じる。
そして、ルルーシュは立ち上がると、C.C.の瞳を閉じさせて額に、コードが刻まれた場所にキスをする。

「どこまでも一緒に。魔女殿」
「どこまでも一緒に。魔王殿」

カタンコトン、カタンコトン。
二人を乗せた列車は、時間をかけて終点まで走っていく。

明日もまた、乗ろうか。
こうして移り変わっていく景色をみるのは、嫌いでは、ない。
そんな気がルルーシュにはした。
C.C.は、うとうとと眠り始めていた。
ジャケットを抜いで、肩にかけてやる。

カタンコトン、カタンコトン。

いつの間にか、ルルーシュも窓枠に手をついて、眠り始めるのであった。

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100年後(コード継承シリーズ)

吹きすさぶ風に、ルルーシュは髪をかき上げた。
隣を歩くC.C.は町を興味なさそうに見回している。今日泊まれそうな宿を確保してから、ルルーシュはC.C.を置き去りにして出かけた。

この町にくるのはもう、100年ぶり近くになるだろうか。
変わりすぎた町並み。
昔はもっと人口が少なかった。大分都市化が進んでしまった。

そのまま、町を過ぎ去って森の中を進む。
ここだ。

もう、そこにはルルーシュが作った木の十字架さえ朽ち果てて、何もなかった。
鬱蒼とした緑に生い茂られて、ただ少し土が盛り上がっただけの場所。何もない。草が生えて、隣には木が生えて。
崖に面した、ただそれだけの場所。
「なぁ、お前は寂しいか、ロロ?」
100年ぶりになる墓参りに、ルルーシュは哀しそうな瞳で、朽ちてしまった墓を見下ろした。
かつては綺麗にしてやったのだが、もう何年もC.C.と彷徨うように、コード継承者として世界中を旅した挙句、ふと思いついたようにこの町にやってきた。
「寂しいだろうな。こんな場所じゃあな」
ナナリーは、ブリタニア帝国の皇帝が代々眠る墓地に眠っている。
シャーリーも、きちんとした墓地で眠っている。他の友人も知り合いも、スザクさえもきちんとした墓地で眠りについている中、一番粗末なロロの墓を見下ろす。
「また、くるよ」
そこらへんに生えていた花を適当に摘み取って、盛り上がっただけの大地の上に置くと、風が吹きぬけた。

サラサラと零れていく花弁と、遠い町並みを見下ろして、ルルーシュは後ろにいたC.C.に微笑んだ。
「なぁ。お前は、眠る時どっちがいい?きちんとした墓か、それとも人に忘れ去られるような、朽ちた墓か」
「どちらもいらない」
「何故?」
「墓などいらない。そこにきっと、私は眠らないから」
「そうだな。俺たちに永遠の眠りなどこない」

夕焼けに沈んでいく町を見下ろして、二人は風に髪を靡かせながら口付けた。

「いつか、眠りたいと思うか?」
「お前と一緒なら、眠りたい」
「そうだな。一人は嫌だ」

真っ赤に染まっていく空。風のざわめきだけが、たえず耳を打つ。
この世界で再び目覚め、コード継承者として生きてもう何百年になるだろうか。

「次は、どこへ行く?」
「どこへでも・・・そうだな、桜が見たい」
「もうそんな季節か。日本は」
「日本だったか。そんな名前だったかな、あの国は」
「確かそうじゃなかったか。今はなんだった?」
かつてのエリア11の名前を、二人は口にする。
今は超合衆国の一部となった国の名前を。

二人は夕暮れに背を向けて、手を繋いで去っていく。
また、いつかここにくるよ。
ルルーシュは、少しだけ墓をふりかえり、心の中で黙祷した。
 

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