散りゆくは
はらはらと散りゆくは。
「また来てたのかよ」
特殊な義骸に魂を入れ、また現世にやってきた。
ここは学校の屋上。
一護と共に通った高校だ。
もう、あの終わりから1年になる。
時折こうして会いにきては、その記憶を奪って去っていく。
虚しいが、もう一護は死神ではないのだ。
はらはらと散りゆくは。
きっと、私の心。
「霊力は回復しないのだな。やはり、もう普通に会うことは無理か」
「でもこうして会ってるじゃないか」
「そうだな。しかし、これは違反なのだ、一護。もうお前は普通の人間。私は死神。その行き先が混じることはない」
「なぁ、ルキア」
そっと、後ろから抱き込まれて、ルキアは沈黙する。
「好きだって気持ちは、何度消そうとしても消えるもんじゃねぇ」
「そうだな」
私も、そうなのだから。
「今宵の記憶を奪うのは止めておこう」
「もともと奪われても覚えてるけどな」
苦笑する一護の服をひっぱった。身長差がありすぎるから。そして自分は背伸びして、噛み付くようなキスをすると、そっと離れた。
黒装束、死神の衣装が風ではためいていた。
ルキアは、ホロウの気配を感じ取って、空を見上げる。そこには真昼なのに、月が浮かんでいた。
「また、いつか会おう」
「おう」
はらはらと、散りゆくは。
もう流さぬと決めたはずの、離別の涙。
一護は生きているのに。こうして。暖かく呼吸し鼓動し動いているのに。もう、側にいることはできない。だからこうして会いにいく。それが罪であろうとも。
愛しいと、心が涙を流すから。
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