ある花屋と組長
京楽は、やくざの組長だった。
最近勢力をましてきた違う組の者に命を狙われて、腕を拳銃で撃たれて、その傷を庇いながら裏道を歩くが、途中で力尽きた。
それを拾ったのが、浮竹という名の青年だった。
浮竹は花屋の店員で、帰り道に京楽を見つけて、銃で撃たれているのを見つけて、救急車や警察は呼ばず、自分で傷の手当てをして京楽を自分のマンションのベッドに寝かせていた。
浮竹は裏家業でもぐりの医者をしているので、京楽の怪我を手当することは簡単だった。弾は貫通していて、出血を止血して針と糸で傷口を塗って、ガーゼをあてて包帯を巻いた。
「ここは‥‥‥地獄にしては温かい部屋だねぇ。花が綺麗だ。ここは天国かい?」
「あ、気づいたか?」
浮竹は、京楽の顔を知っていた。
京楽も浮竹の顔を知っていた。
京楽がヤクザの組長であることは知らなかったが、何度か京楽は浮竹が開いている花屋に花を買いにきたことがあった。
「君が、手当してくれたのかい。君、確かあの小さな花屋の店員の‥‥」
「浮竹だ。浮竹十四郎。お前は、腕を撃たれて裏路地で気絶していたんだ。警察や救急車を呼んだらだめだろうから、俺が手当した。痛くないか?一応痛み止めを打とうか?」
「君、ボクの命の恩人だね。ボクは京楽春水。京楽組の組長をしている」
「やっぱり、やくざか」
浮竹は、白いカップにコーヒーを入れてもってきた。
「怖くないの?」
「別に。ここらをしきっているやくざの組長はお人よしで有名だ。どうせなにかのいざこざに巻き込まれてけがをしたんだろう?」
「そうだけど‥‥普通、やくざの組長って聞いたら、怖がって部屋からたたき出すのに」
「ああ‥‥‥‥その心配はない。花屋をしているが、裏家業で闇世界相手の医者をしている。たまに、拳銃で撃たれた者が運び込まれてくる」
「へぇ、じゃあボクの組の者がお世話になってる花屋の医者って君だったんだね」
京楽はベッドから半身を起き上がらせて、浮竹からコーヒーを受け取った。
「本業は花屋だ。医者はまぁ、道楽でやってる」
「それはまぁ‥‥‥‥なんというか、ありがとう」
「変な奴」
「それは君のほうでしょ。やくざの組長を相手に怖がらないなんて」
浮竹は、苦笑する。
「命の恩人をあだなすような男じゃないだろう?」
「うん、まぁそうなんだけど」
京楽は、財布ももっていないことに気づいた。
「治療費っている?」
「いや、俺が勝手に助けただけだからいらない」
「ねぇ、ボクをしばらくかくまってくれない?命を狙われているんだよ」
「こんな狭いマンションでよければいいが。だが、俺にも仕事がある。朝~昼は花屋で、3時から8時まで闇医者だ」
「うん。お礼に、花屋の仕事手伝うよ」
「ケガが治ったらな」
それから、2週間ばかり、京楽は浮竹のマンションで過ごして、怪我の具合が大分よくなってから、本当に浮竹の働く花屋で臨時のバイトとして花屋の仕事をしていた。
「この薔薇はどうすればいいの」
「こっちの花と一緒に花束にしてくれ」
花に囲まれる浮竹は、美しかった。
「ねぇ」
闇医者の時間も終わって、マンションに戻った二人は、食事をとりながら会話をしていた。
「君、ボクの愛人にならない?」
「は?」
浮竹は、マヌケな顔をして口をぽかんとあけていた。
「君を気に入ったんだよ。ボクは欲しいものはたいていなんでも手に入れてきた。君が欲しい」
「な、俺は男だぞ!?」
「関係ないね」
京楽は、食事をし終えてから浮竹を押し倒していた。
浮竹が嫌がらないのをいいことに、最後までやってしまった。
「お前、本気か?」
「君、嫌がらなかったじゃない。けっこうよさそうに、うぐ」
頭をグーで殴られた。
浮竹は顔を赤くして、京楽を睨む。
「せ、責任はとれよ!」
「うん。愛人になるけど。ああ、ちなみにボクは今のとこ他に愛人はいないから」
「京楽‥‥‥‥」
「春水って呼んで?ボクも十四郎って呼ぶから」
「春水」
「うん。十四郎、いいかい?ボクは組に復帰するけど、君は今まで通りの仕事を続けていればいいから。ボクがこのマンションに通うから」
京楽は、その日から本当に浮竹のマンションに出入りするようになった。
組には復帰して、ヤクザとして闇世界で蠢く。
だが、非道なことはなるべくせず、銃をもっている以外は法に触れることはあまりなかった。
「十四郎」
「ああ、春水か。今、仕事が終わる。一緒に帰ろう」
京楽の家は、浮竹のマンションになっていた。
浮竹を愛人としたが、囲うことはせず、自由にさせていた。
それがいけなかった。
抗争中の他の組の者に、浮竹は攫われた。
「十四郎!」
「春水‥‥‥」
長い白い髪を切られ、殴られたのか口を切って血を流している浮竹を見て、京楽は手下の者たちと一緒に暴れて浮竹を救い出す。
「ごめんね、十四郎。もう、こんなことが起きないようにするから」
「別れるって選択肢はないんだな」
「十四郎と別れるなんて無理。十四郎だって、ボクがいなくちゃ体が疼くでしょ?」
「春水!」
真っ赤になって、それでも京楽から手当てを受けた。
「あとは自分でできる。そこまで酷く殴られたわけじゃないから」
「うん。ああ、でも君の綺麗な髪が‥‥切り揃えないとね?」
京楽は、浮竹が自分の手当てを終わらすと、はさみをもってきた。
「ボク、昔は美容師めざしていたんだよ。腕はなまってないと思うから、ボクに揃えさせて?」
浮竹は、京楽に髪を切られていく。
肩より少し長いところで綺麗にそろえられた。
浮竹は、攫われた時少し怖い思いをしたが、闇医者をしていたので闇世界に参ることはなかった。
「今日、抗争相手と決着つけてきたから。ボクの組に吸収合併って形になった」
「そうか」
花屋で、京楽は浮竹が働いているのもかまわずに抱きしめるものだから、浮竹に殴られていた。
「ふふ、ボクを殴れるのはキミくらいだよ」
「もっと殴られたいか?」
「遠慮しとく。医者の仕事終わったら、迎えにいくから」
「分かった」
浮竹は花屋の仕事をしながら、京楽の言葉を聞く。
「あ、待って。この薔薇買うよ」
「誰かに贈るのか?」
「うん。君へ。メッセージカードもつける。愛してるって書いてね」
「は、恥ずかしいやつ!」
高い人工的に作られた青い薔薇を花束にして、京楽は愛しているというメッセージカードをつけて、浮竹に贈った。
「はぁ‥‥‥‥」
受け取った浮竹は、赤い顔をして花束を持つ。
「とっても似合ってるよ。今すぐ抱きたい」
「盛るな!」
浮竹は、京楽の頭をぐーで殴る。
「あはははは」
「笑いごとじゃない‥‥‥なんで、俺、お前の愛人なんてしてるんだろう」
「好きだからでしょ?」
「まぁ‥‥‥‥好きだが‥‥はぁ。今日は疲れた。闇医者稼業は休みにする」
「じゃあ、時間あくね。いい店知ってるんだ。夕飯食べにいかない?」
「ああ、もうお前の好きにしてくれ」
浮竹は長いため息をついて、青い薔薇の花束を大切そうに持つのだった。
最近勢力をましてきた違う組の者に命を狙われて、腕を拳銃で撃たれて、その傷を庇いながら裏道を歩くが、途中で力尽きた。
それを拾ったのが、浮竹という名の青年だった。
浮竹は花屋の店員で、帰り道に京楽を見つけて、銃で撃たれているのを見つけて、救急車や警察は呼ばず、自分で傷の手当てをして京楽を自分のマンションのベッドに寝かせていた。
浮竹は裏家業でもぐりの医者をしているので、京楽の怪我を手当することは簡単だった。弾は貫通していて、出血を止血して針と糸で傷口を塗って、ガーゼをあてて包帯を巻いた。
「ここは‥‥‥地獄にしては温かい部屋だねぇ。花が綺麗だ。ここは天国かい?」
「あ、気づいたか?」
浮竹は、京楽の顔を知っていた。
京楽も浮竹の顔を知っていた。
京楽がヤクザの組長であることは知らなかったが、何度か京楽は浮竹が開いている花屋に花を買いにきたことがあった。
「君が、手当してくれたのかい。君、確かあの小さな花屋の店員の‥‥」
「浮竹だ。浮竹十四郎。お前は、腕を撃たれて裏路地で気絶していたんだ。警察や救急車を呼んだらだめだろうから、俺が手当した。痛くないか?一応痛み止めを打とうか?」
「君、ボクの命の恩人だね。ボクは京楽春水。京楽組の組長をしている」
「やっぱり、やくざか」
浮竹は、白いカップにコーヒーを入れてもってきた。
「怖くないの?」
「別に。ここらをしきっているやくざの組長はお人よしで有名だ。どうせなにかのいざこざに巻き込まれてけがをしたんだろう?」
「そうだけど‥‥普通、やくざの組長って聞いたら、怖がって部屋からたたき出すのに」
「ああ‥‥‥‥その心配はない。花屋をしているが、裏家業で闇世界相手の医者をしている。たまに、拳銃で撃たれた者が運び込まれてくる」
「へぇ、じゃあボクの組の者がお世話になってる花屋の医者って君だったんだね」
京楽はベッドから半身を起き上がらせて、浮竹からコーヒーを受け取った。
「本業は花屋だ。医者はまぁ、道楽でやってる」
「それはまぁ‥‥‥‥なんというか、ありがとう」
「変な奴」
「それは君のほうでしょ。やくざの組長を相手に怖がらないなんて」
浮竹は、苦笑する。
「命の恩人をあだなすような男じゃないだろう?」
「うん、まぁそうなんだけど」
京楽は、財布ももっていないことに気づいた。
「治療費っている?」
「いや、俺が勝手に助けただけだからいらない」
「ねぇ、ボクをしばらくかくまってくれない?命を狙われているんだよ」
「こんな狭いマンションでよければいいが。だが、俺にも仕事がある。朝~昼は花屋で、3時から8時まで闇医者だ」
「うん。お礼に、花屋の仕事手伝うよ」
「ケガが治ったらな」
それから、2週間ばかり、京楽は浮竹のマンションで過ごして、怪我の具合が大分よくなってから、本当に浮竹の働く花屋で臨時のバイトとして花屋の仕事をしていた。
「この薔薇はどうすればいいの」
「こっちの花と一緒に花束にしてくれ」
花に囲まれる浮竹は、美しかった。
「ねぇ」
闇医者の時間も終わって、マンションに戻った二人は、食事をとりながら会話をしていた。
「君、ボクの愛人にならない?」
「は?」
浮竹は、マヌケな顔をして口をぽかんとあけていた。
「君を気に入ったんだよ。ボクは欲しいものはたいていなんでも手に入れてきた。君が欲しい」
「な、俺は男だぞ!?」
「関係ないね」
京楽は、食事をし終えてから浮竹を押し倒していた。
浮竹が嫌がらないのをいいことに、最後までやってしまった。
「お前、本気か?」
「君、嫌がらなかったじゃない。けっこうよさそうに、うぐ」
頭をグーで殴られた。
浮竹は顔を赤くして、京楽を睨む。
「せ、責任はとれよ!」
「うん。愛人になるけど。ああ、ちなみにボクは今のとこ他に愛人はいないから」
「京楽‥‥‥‥」
「春水って呼んで?ボクも十四郎って呼ぶから」
「春水」
「うん。十四郎、いいかい?ボクは組に復帰するけど、君は今まで通りの仕事を続けていればいいから。ボクがこのマンションに通うから」
京楽は、その日から本当に浮竹のマンションに出入りするようになった。
組には復帰して、ヤクザとして闇世界で蠢く。
だが、非道なことはなるべくせず、銃をもっている以外は法に触れることはあまりなかった。
「十四郎」
「ああ、春水か。今、仕事が終わる。一緒に帰ろう」
京楽の家は、浮竹のマンションになっていた。
浮竹を愛人としたが、囲うことはせず、自由にさせていた。
それがいけなかった。
抗争中の他の組の者に、浮竹は攫われた。
「十四郎!」
「春水‥‥‥」
長い白い髪を切られ、殴られたのか口を切って血を流している浮竹を見て、京楽は手下の者たちと一緒に暴れて浮竹を救い出す。
「ごめんね、十四郎。もう、こんなことが起きないようにするから」
「別れるって選択肢はないんだな」
「十四郎と別れるなんて無理。十四郎だって、ボクがいなくちゃ体が疼くでしょ?」
「春水!」
真っ赤になって、それでも京楽から手当てを受けた。
「あとは自分でできる。そこまで酷く殴られたわけじゃないから」
「うん。ああ、でも君の綺麗な髪が‥‥切り揃えないとね?」
京楽は、浮竹が自分の手当てを終わらすと、はさみをもってきた。
「ボク、昔は美容師めざしていたんだよ。腕はなまってないと思うから、ボクに揃えさせて?」
浮竹は、京楽に髪を切られていく。
肩より少し長いところで綺麗にそろえられた。
浮竹は、攫われた時少し怖い思いをしたが、闇医者をしていたので闇世界に参ることはなかった。
「今日、抗争相手と決着つけてきたから。ボクの組に吸収合併って形になった」
「そうか」
花屋で、京楽は浮竹が働いているのもかまわずに抱きしめるものだから、浮竹に殴られていた。
「ふふ、ボクを殴れるのはキミくらいだよ」
「もっと殴られたいか?」
「遠慮しとく。医者の仕事終わったら、迎えにいくから」
「分かった」
浮竹は花屋の仕事をしながら、京楽の言葉を聞く。
「あ、待って。この薔薇買うよ」
「誰かに贈るのか?」
「うん。君へ。メッセージカードもつける。愛してるって書いてね」
「は、恥ずかしいやつ!」
高い人工的に作られた青い薔薇を花束にして、京楽は愛しているというメッセージカードをつけて、浮竹に贈った。
「はぁ‥‥‥‥」
受け取った浮竹は、赤い顔をして花束を持つ。
「とっても似合ってるよ。今すぐ抱きたい」
「盛るな!」
浮竹は、京楽の頭をぐーで殴る。
「あはははは」
「笑いごとじゃない‥‥‥なんで、俺、お前の愛人なんてしてるんだろう」
「好きだからでしょ?」
「まぁ‥‥‥‥好きだが‥‥はぁ。今日は疲れた。闇医者稼業は休みにする」
「じゃあ、時間あくね。いい店知ってるんだ。夕飯食べにいかない?」
「ああ、もうお前の好きにしてくれ」
浮竹は長いため息をついて、青い薔薇の花束を大切そうに持つのだった。
PR
- トラックバックURLはこちら