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ある冒険者たち

京楽と浮竹は、同じ里に生まれた。

同い年だった。

ある日、里が襲撃を受けてまだ幼かった京楽と浮竹は奴隷として売られていってしまった。二人は互いに互いを必要として、なかなか離れなかったので、買い取るのも一緒ということにされた。

一度離れ離れにした時、浮竹は体が弱いのを悪化させて血を吐いた。

京楽を傍に置くと、血は吐かなくなった。

何かの魔法のような効果を京楽はもっているらしい。

「ねぇ、自由になったら何がしたい?」

「うーん、いろんな場所にいってみたい。旅人に、いや冒険者になるのが夢だ」

「じゃあ、一緒にいつか冒険者になろう」

「ああ」

二人は、買い手がつかないまま数年が過ぎた。

浮竹は美しい少年になっていた。京楽はかっこよい少年になっていた。

「喜べ、お前たちの買い手がついた。二人そろってだ。今まで世話してきた額も出してもらえた。ご主人様に尽くすんだぞ」

奴隷商人の言葉に、浮竹が涙を滲ませる。

「一緒に買われるのは嬉しいけど、自由がほしい」

「浮竹、それは言っちゃいけないよ」

奴隷商人は、浮竹の背中にむちを打つ。

「ほら、さっさと歩け!」

「いた‥‥‥」

そこへ、浮竹と京楽を買った富豪の男がやってくる。

「ふむ。身なりは汚いが磨けば綺麗になるだろう。浮竹だったか。お前は性奴隷だ。京楽は戦闘奴隷だ。コロシアムに出てもらう」

浮竹は、主人となった男の言葉に目を見開く。

「いやだ!俺も戦闘奴隷にしてくれ!」

「お前は体が弱いそうじゃないか。何より見た目がいい。性奴隷はお前一人じゃないし、従順になるように仕込まないとな」

「浮竹!!!」

主人となった男に連れ去られていく浮竹に、京楽が手を伸ばすが鎖でつながれているために止められない。

次に主人がやってきた時、京楽は浮竹と会うことを要求したが、却下されて食事を与えられて、身なりをそれなりにこぎれいにされて風呂にいれられ、戦闘奴隷としてコロシアムでデビューした。戦闘には全て勝った。

次の日には、浮竹と出会えた。

「浮竹!」

浮竹の瞳に光はなく、暗い目をしていた。

主である男に手籠めにされて、浮竹は京楽の胸の中で静かに泣いた。

「京楽‥‥‥俺は汚された。いっそ、死んでしまいたい」

「だめだよ浮竹!いつか、ボクらは自由になるんだ!」

京楽は、主を浮竹を汚したことで殴りかかったが、他の奴隷たちに取り押さえられて、3日間飯ぬきの刑にされた。

その間も、浮竹は性奴隷として主から寵愛を受けていた。

浮竹は長い白髪に白い肌、翡翠の瞳をもつ美少女と見間違う見た目をしていた。

京楽も浮竹も、14になったばかりだった。

まだやや幼い。

男性としての成長が遅れている浮竹は、中性的で、装い一つで美少女になれた。

京楽も見惚れたほどに、浮竹は美しかった。

だが、浮竹の顔からは笑顔が消えて、翡翠色の瞳が綺麗に輝くことはなかった。

京楽は、コロシアムで勝ちまくって、大金を得た。ほとんどを没収されたが、自分で自分を買うことができて、解放奴隷となった。

そのままコロシアムで金をためて、浮竹を買い取った。

主である男はなかなか浮竹を手放したくないらしくて、大金をふっかけてきたのが、コロシアムで大金を稼いでいるので、京楽は浮竹を買い戻せた。

「浮竹、これからはボクが一緒にずっといるから」

「本当に?もう、体を売らなくていい?」

「そんなことする必要はないよ」

「じゃあ、京楽が俺を抱いてくれ」

「浮竹?」

京楽は困った顔をした。

「お前に抱かれたい。あの男に汚されたままでいるのはいやだ」

「うん、分かった」

その日の夜、京楽は浮竹を抱いた。

浮竹が意識を飛ばしている間に、町に買い物に出かけて、冒険者になる用意をしておいた。

「ん‥‥‥‥‥京楽?」

「おはよう。傍にちゃんといるよ。今日はゆっくりしよう。お金ならあるから。明日、冒険者ギルドに登録しにいこう」

「うん‥‥‥‥」

浮竹は、やや赤くなって、頷いた。

浮竹は京楽のことが好きだった。主であった男に手籠めにされた時も、普通に抱かれる時も相手は京楽だと思い込むことで、自害を防いでいた。

「京楽‥‥‥俺、お前のことが好きだ」

「ボクも君のことが好きだよ。幼いころからずっと。好きじゃなきゃ、君を抱いたりしない」

「うん」

浮竹は、ぽろぽろと大粒の涙を零して、京楽に抱きしめられていた。

8歳の頃奴隷にされ、14で買いとられるまで奴隷としてこき使われて、17で自由になった。

浮竹の心の傷は大きいが、京楽は浮竹が壊れてしまうぎりぎりのところで、自分の手元に戻せた。

17歳の冬に、二人は冒険者ギルドに登録して、夢だった冒険者になった。

二人はペアを組んだ。

戦闘は京楽が担当で、浮竹は治癒魔法の素質があったので、治癒術師になっていた。

「いつもすまない。俺が戦えなくて‥‥‥‥」

「いいんだよ。守りたいし。それに、傷を癒してもらえるお陰で、ちょっとした無茶もできるしね」

「京楽、その‥‥‥」

「どうしたの?」

「今日、俺を抱いてくれないか。性奴隷だったせいで、誰かに抱かれないとうずうずするんだ」

「うん、分かったよ」

京楽は、その日の夜も浮竹を抱いた。

浮竹はまるで高級男娼のようだった。

「京楽、お前がいやなら、俺は」

「ううん。君が大切だし、君をもう他の男に抱かせたくない」

「京楽、ありがとう」

浮竹の翡翠の瞳に光が戻っていた。

二人は、世界中を旅してまわった。

20の時、Aランク冒険者になり、それなりに名が売れ始めると、元奴隷であったことがばらされて、ひそひそと噂されるようになった。

浮竹がAランク冒険者になったのは、試験官に抱かれたせいだとか、心にもない噂が出回って、浮竹はそれに酷く傷ついた。

京楽は、そんな噂をする相手を殴った。

21の頃、同性でも結婚できる国を知り、そこで二人は静かに式を挙げた。

また、世界中を旅した。

空島という、ほとんど誰も到達できなかった場所までたどりついた。

22の頃、Sランク冒険者になっていた。

京楽も浮竹も、自分のことをただの人間だと思っていたが、見た目が少年の頃からあまり変わらないので、調べてもらうとエルフの血を引いていることが分かった。

浮竹と京楽は、エルフの里に行ってみた。

エルフの里は静かなところだった。

探してみると、浮竹の曾祖父になるエルフが生きていて、二人は出会い、幾日かそのエルフの家に泊まった。

京楽の祖先はすでに死んでいて、見つけれたのは浮竹の曾祖父だけだった。

二人は、また旅に出た。

金をためて、昔の自分たちのように苦しんでいる奴隷を買いとって解放奴隷にして、独り立ちできるまで面倒をみたりしていた。

気づくと、27歳になっていた。

エルフの血のせいで、見た目は少年であったが、熟練の冒険者になっていた。

二人は違う異世界に行く方法を見つけて、世界から旅立った。

異世界でも、二人はいつも一緒に旅をしていた。

「なぁ、今幸せか?俺は幸せだ。お前の傍にいれて、毎日が旅で新鮮で。京楽がいるから、俺は俺でいられた」

「ボクも幸せだよ。君の傍にいれるから」

二人は笑い合って、旅を続けた。

やがて、世界の果てを見つけて、そこで二人はひっそりと自給自足の生活をはじめる。

京楽は伝説の剣士になっていて、浮竹はその名を知らぬ者がいない賢者になっていた。

世界の果てで暮らし、たまに元の世界に戻って冒険者として活動してみたり。自由きままに生きた。

100を過ぎる頃には、普通の人間なら死んでいるのだが、覚醒遺伝らしく、エルフの血が濃い二人は若い姿のまま、世界を冒険しつくて、隠居生活をしていた。

「京楽、いい魚が手に入ったぞ」

「お。ちょうど蒸し焼きにいい野菜が収穫時期なんだよ」

「じゃあ、今日は昼から畑の仕事をしようか」

「浮竹、書きかけの本はいいの?」

「ああ。時間はいくらでもあるからな」

200になる頃、若い姿のまま、浮竹が病を悪化させて死の床についた。

京楽はずっとそばにいて、浮竹が息を引き取るのを見守った。

「京楽‥‥‥‥幸せ、だった。俺を愛してくれて、ありが、とう」

「浮竹、ボクも幸せだったよ。先に逝ってね。ボクも近いうちにそっちにいくから」

京楽は、浮竹が死んだ3年後に、あとを追うように静かに死んだ。

異世界の住人に墓を建ててもらい、二人は一緒に埋葬されて、眠るのだった。



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