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エンシェントエルフとダークエルフ37

それは、Aランクの依頼であった。

金の採掘場に、アクラネが住み着いたというのだ。

このままでは金の採掘ができないので、早めのを駆除をということで、Sランクの浮竹と京楽に回ってきた。

アクラネは上半身が人間の女性の、下半身が蜘蛛のモンスターだ。

これも人の知能を有していて、闇の渾沌の眷属でもあった。

闇の渾沌の眷属のTOPは、藍染である。

金の採掘場に住み着いたアクラネは、すでに採掘者を5人ほど食い殺していた。

イアラ帝国からみれば隣国の隣国になる、サウアー王国にそのアクラネは出た。

隣国までは転移魔法で、そこからは馬車で金の採掘場の近くまで運んでもらい、徒歩で採掘場に向かう。

いつもは人であふれかえっているのだが、今はしんとしていた。

「どうする?」

「坑道だからな。火と爆発の呪文はなしで」

ブルンもついてきていた。

坑道の中に入っていく。

段々、空気が濁ってきた。

「瘴気だ・・・・ブルン、なんとかできるか?」

「くくるー!」

ブルンは光ると、大気に向かってヒールを唱えて、瘴気を浄化してしまった。

「本当に、ブルンは偉いなぁ。食べ物はゴミだし、回復魔法は神クラスだし、状態異常の心配もないし、火と氷のブレスは吐けるし、酸弾もとばせるし、初歩なら魔法も使える」

「くくるーー」

ブルンは、照れて真っ白な体を輝かせていた。

まるで電球だ。

ブルンが明るいお陰で、照明はいらなかった。

かさかさかさ。

何か大きなものが動いた気配がして、振り返ると、一面蜘蛛の巣だらけになっていた。

「なんだこの蜘蛛の巣・・・粘着性があってとれない」

「アクラネの糸だな。仕方ない、炎で燃やす。フレイムロンド」

ぱちぱちと、アクラネの糸が燃えていき、浮竹と京楽は、蜘蛛の巣から無事脱出した。

「ちっ、エルフか。人間のほうがうまいのに」

現れたアクラネは巨大で、縦に2メートル横に3メートルはあった。

金の採掘場は広めにできており、大きなアクラネが住むにはちょうどいいサイズであった。

「ここで、獲物を待ち、食べていたのに、何故邪魔をする」

「お前も渾沌の闇の眷属か!」

「だから、どうしたというのだ」

「人間を食べると、冒険者が派遣されて殺されるのは、分かるだろう!」

アクラネは笑った。

「はっ、人間如きに何ができる。私は闇の渾沌の眷属。エルフ如きにも、遅れはとらぬ」

「エターナルアイシクルワールド」

「グラビティ・ゼロ」

氷の上位呪文で、アクラネの足から体が凍っていく。

そこに重力の魔法をかけた。

「ぐぐぐぐ、これしき!」

アクラネは、二人の魔法を耐えきった。

それには、浮竹も京楽も驚いた。

「私には、藍染様からいただいた血がある。この程度の攻撃で、倒れるわけにはいかぬ」

「ふーん。藍染の手下なんだ。じゃあ、禁忌放ってもいいよね?」

「京楽、坑道が崩壊しない程度にしろよ」

「わかってるよ。ブラックホール」

闇の禁忌の魔法に、アクラネが驚愕する。

「闇の禁忌だと。何故、ダークエルフであるお前が藍染様に逆らう!」

「僕はダークエルフといっても、闇の渾沌の眷属でもない。人間社会に溶け込んだ、ダークエルフのSランク冒険者だ」

ダークホールの魔法は、じわりじわりとアクラネを吸い込んでいく。

「く、糸を!」

糸を伸ばして、なんとか吸い込まれないようにしているその命綱である糸を、浮竹はミスリル銀の魔剣で切ってしまった。

「ばいばい。せいぜい、成仏することだ。あの世でな」

「おのれええ!藍染様あああああ!!」

ブラックホールの魔法は、アクラネを完全に吸い込み、閉じてしまった。

「じゃあ、戻ろうか?」

「待て。アクラネの巣が他にあるかもしれない。全部燃やしてしまおう」

「火の魔法はだめじゃなかったの?」

「一酸化炭素中毒を起こすかもしれないと考えたが、俺たちにはブルンがいるからな」

「くくーー」

空気の清浄化なら任せろと、ブルンは言っていた。

2時間ほど坑道を見て回り、蜘蛛の糸がはってある部分は焼いていった。

最後の巣で、大量の卵を見つけた。

「よかった、発見できて。発見しないまま帰っていたら、ミニアクラネが大量に生まれて、また依頼書がくるところだった」

卵を1つずつ完全に破壊しながら、浮竹と京楽は炎の魔法を放つ。

「フレイムロンド」

「ダークファイア」

こうして、アクラネは退治して、器用に京楽はブラックホールの小さい魔法を使い、アクラネの魔石だけを取り出した。

「器用だな。アクラネの体はどうなった?」

「ブラックホールに中で、消化されてしまったよ」

「京楽、ブラックホールの魔法は、なるべく人には向けるなよ」

「いや、今まで散々使ってきたしね。剣士の僕とかに」

「師匠は別格だ。それ以外で人に向けては使うなよ」

「分かってるよ」

二人は、空間転移の魔法で帝都アスランの冒険者ギルドに行き、アクラネの魔石を提出して、報酬金金貨350枚と、魔石は金貨50枚の買取りだった。

「ここ最近師匠のところに顔をだしてないな。ブルンもプルンに会えなくて寂しがっている。京楽、師匠の家まで頼めるか」

「仕方ないねぇ」

「手土産に、お稲荷さんを買ったので、それをもっていこう」

「お稲荷さんって」

京楽が苦笑しながら、転移魔法を使う。

師匠である剣士の京楽の家にきていた。

ジリリリリリン。

ベルを鳴らすと、剣士の京楽が出てきた。

『やぁ、君たちか。あがりなよ』

「ありがとうございます、師匠。これ、お土産のお稲荷さんです」

『丁寧に、どうも』

まるで近所の主婦のような会話だった。

『ああ、エルフの俺に京楽か。プルンは奥だぞ」

「くくるー」

ブルンが飛んでいくと、ゴッドスライムになったプルンが、体を黄色にさせて喜んでいた。

「ププウ!」

いつもは偉ぶっているのに、兄であるブルンの前ではかわいくなるのを、精霊の浮竹と剣士の京楽はなんとも言えない気持ちで見ていた。

「プルンにも、土産があるぞ。りんご20個だ」

「プププ」

もらってやらなくもない。

「くくるー?」

弟よ、どうしたんだい?

「ププウウウ」

あ、なんでもないよお兄ちゃん。

「最近、メデューサやアクラネといった、闇の渾沌の眷属の活動が激しくなってるんだが」

『ああ、うん、まぁねぇ。藍染の居場所が分かればいいんだけど』

「藍染か・・・。魔王とはまた違う、人間社会の脅威だな」

『藍染は魔族や魔王と繋がっていないからな』

「だから、余計に分かりくいんだね」

エルフの浮竹と京楽は、結局お土産にと持ってきたお稲荷さんを自分たちで食べてしまい、その上昼も食べさせてもらうのだった。


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藍染は、笑っていた。

ワイングラスの中の血に、さらに血を注いでいく。

神人になれなかった、不老不死の偽物なので、命の火を灯していくには人間の血が不可欠だった。

ちなみに、邪教徒に崇められている邪神オルテガとは、藍染のことであった。

ワイングラスの血を全部飲み干して、狂気じみた笑みをまた浮かべるのであった。



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