オメガバース京浮読み切り短編12
京楽は、久しぶりに花街にきていた。
新しい廓が数件できており、少しのぞいては興味を失い次の廓へと興味を移す。
京楽は、アルファだ。オメガの花魁を探していた。別にベータでもよいのだが、オメガだと相性もよく快楽も得やすいからだ。
無論、うなじをかんで番にする気はないし、避妊具も使う。
その店は、金銀廓という新しくできた廓だった。
見世には、花魁もいた。
京楽は、そのうちの一人を見て、これは運命の番だと感じた。相手はまだこっちには気づいていないようで、結い上げられた白い長い髪をいじっていた。
「ねぇ、君」
「あら、あたし?」
「違う。髪の白い‥‥そう、君だよ」
髪の白い花魁は、名を翡翠といった。本名は浮竹十四郎という。
「俺か?」
「え、君花魁なのに男なのかい。色子か」
15歳くらいの、見た目は美少女だった。
「色子の花魁で悪いか。廓で身を売るのに色子も遊女も関係ない。花魁であることは、位が高くてもうけている証だ‥‥‥‥お前、アルファか」
「うん、そうだよ。君、ボクの運命の番だと思うんだ。君は?」
「ん‥‥‥そういえば、なんかすごく惹きつけられる。お前、俺の運命の番なのか」
「そうみたい。君を買うよ?」
「好きにしろ」
浮竹は、運命の番だろうがただ身を売るだけだと、さっぱりしていた。
浮竹を買って、廓の中に入る。
京楽は浮竹の隣にいると、今すぐうなじを噛んで自分だけの番にしたい衝動に駆られる。
「名前は?」
「翡翠」
「本名は?」
「浮竹十四郎。そういうお前は?」
「ボクは京楽春水」
「ああ‥‥…上流貴族の京楽家のぼんぼんか。俺の揚げ代は高いがまぁお前なら払えるだろうな」
京楽は、浮竹の耳元で囁く。
「君、ボクと運命の番だと思うんだ。君は?」
「俺も、そう感じる。でも、俺は色子の花魁。身を売るだけだ」
「じゃあ、君を身請けする」
「え?」
浮竹は驚いた。
まだ自分を買ったばかりで、身を売ってもいないというのに、身請けの話が出たからだ。
今までも数件身請けの話が出たが、色子のオメガの花魁は珍しすぎてとにかく身請け代も揚げ代も高かった。
皆、その値段の高さに諦めて去っていった。
廓の上客も、何度か買うと違う花魁に興味を移して、離れていく。
浮竹は、身を売るが心までは売らない。他の花魁より気まぐれで、花魁であるが故に買われても抱かせない時も多々あった。
一時は花魁であることを理由に身を売らなかったが、廓の主人にばれてちゃんと客をとるように仕置きされた。
そんなこんなで、浮竹は冷めていた。
身を売るのは嫌いだった。色子にされたのを、今でも後悔している。
だが、幼い弟や妹を売るくらいならと、自分から色子になると言い出したのも事実。
浮竹はやや病弱で、肺を患っており、見世に出れない時もよくあった。
廓の主人が、高い薬を用意してくれているお陰で、今は発作もなく落ち着いていた。
「身請けした後、どうせ飽きて放り出すんだろう?先に抱いて確かめたらどうだ。運命の番かどうか」
「うん、そうだね。でも、君を身請けするよ?運命の番なのは間違いない」
「好きにしろ」
浮竹は、まだ出会ったばかりの京楽を、警戒していた。
「君を買う。君を抱くよ?」
「好きにすればいい」
京楽は、廓の主人を呼び、浮竹の身請けの話を進めた。かなりの金額を要求されて、さしもの上流貴族でも無理かと思われたが、もっている屋敷をいくつか売ることで金の都合はついた。
「お前、ばかか。俺のためにそんなに金を‥‥‥」
「君は、もうボクのものだよ、翡翠」
「俺は俺のものだ。買われても、変わらない」
「君を抱くよ?」
「勝手にしろ」
「廓の主人から、番にしていい許可をもらったからね。君はボクの運命の番だ。大切にするよ?」
浮竹は、翡翠の名のもとになった緑の瞳を瞬かせる。
「あっ」
褥で軽く愛撫されて、浮竹は相手が運命の番のせいかいつもより感じていた。
「俺は、お前に媚びないからな」
「うん。君は君のままでいてくれていいよ」
「ああああっ」
浮竹は、自身を握りこまれてしごかれて、精液をはきだしていた。
「んっ」
「濡れてるね。これなら、潤滑油いらないかな。でも念のため、ね?」
京楽は潤滑油を取り出して、浮竹の蕾に指を入れてばらばらに動かす。
「んあっ」
いい場所に指が当たって、浮竹は甘い声をあげる。
「ここ、君のいいところ?」
「ひあああ!」
「挿入れるね?」
「あ、待て、まだ、やっ」
浮竹は、京楽を警戒していたのだが、与えられる快感に思考がぐずぐずに溶けていく。
「待てない。ボクのものにする」
「やあああああああ!!!」
熱いもので貫かれて、浮竹は挿入れられると同時に精液を吐き出していた。
「んあああ!」
「君の細い体には少し負担かな?ボクの、けっこうでかいって言われるから」
「じゃあ、少しは加減しろっ。んあっ」
「ああ、君の中は最高だね。今まで抱いてきたどの花魁より気持ちよくて、君も綺麗だ」
「んんんっ」
舌が絡まるキスをされて、浮竹も流されるままではしゃくだと、京楽を締め付けて射精に誘導する。
「ん、そんなに締め付けられたら」
「ふふ、俺は色子だぞ?何人もの客を相手にしてきたからな。身請けする気もなくなったか?」
「いいや、そんなことないよ。身を売るのも君はもう終わりだ。ボクの番になるんだから」
京楽は、浮竹を激しく貫いて揺さぶる。
「んああああ!」
廓の主人からもらった、番にさせないための首につけられた首輪の鍵で首輪を外して、京楽は浮竹のうなじにかみつく。
「ひあああああああ!!!」
ばちばちと、電流が流れる。
運命の番が、完成する。
「翡翠、君はボクのものだ」
京楽は、浮竹の胎の奥に子種をたっぷり注ぎこむ。
「あ、もっとおお」
浮竹は、運命の番にされたせいか乱れた。
「あ、もっと奥に」
「ここかい?」
「ひあう!」
浮竹が求めるまま、京楽は浮竹を抱く。
「あ、もっと子種ちょうだい?」
愛らしい顔で淫らになる浮竹に、京楽は夢中になった。
「もう、体は売らなくていいからね。君はボクに身請けされたんだから」
「あ、あっ」
美しい顔(かんばせ)で、乱れる浮竹は花魁の地位がふさわしいほどよく感じて、満足感を京楽に与えた。
その日、京楽は浮竹が意識を飛ばすまで抱いた。
「んんっ」
浮竹が起きると、昼だった。
見慣れない天井に、はっとなる。
眠っているうちに、荷物ごと馬車で移動させられて、浮竹は部屋の中を見渡す。
高級な調度品にあふれた部屋だった。
「起きた、翡翠?」
「あ‥‥‥十四郎と呼べ。俺の運命の番なんだろう?」
「十四郎、欲しいものはない?」
京楽が、にこにこして浮竹の長い白髪にキスを落とす。
「湯あみがしたい」
「じゃあ、風呂場に案内するね?新しい着物とかも用意させてあるから」
浮竹は、広い湯船に浸かって、自分は本当に京楽に身請けされて運命の番にされたのだと、なんとも言えない気持ちになる。
まずは、親兄弟に連絡をして、色子をやめれたことを報告しようと思った。
湯からあがると、京楽が待っていた。
「お昼ごはん。うなぎのかば焼き。一緒に食べよう?」
「ああ‥‥‥なぁ、父上や母上、弟や妹に、身請けされたことを知らせたいのだがいいか?」
「もちろんいいよ。でも、外出はまだだめだよ。君、今ヒート期間きてるから」
「え?」
まだ、ヒートが訪れていなかった浮竹は、身に残る熱い感覚に、ヒートがきたのかだと遅まき気づく。
「道理で、体が熱いわけだ。俺を抱け、京楽春水」
「夜になったらね?昨日抱いたばかりだし」
京楽は、浮竹のヒートを少しでも紛らわすために、薬も用意していた。それを飲むと、浮竹のヒートの熱も少し収まった。
夜になった。
「京楽」
「春水って呼んで?」
「春水。お前を、父上と母上、弟や妹たちに会わせたい」
「今日は遅いから、明日にしようね?」
「んあっ」
褥で覆いかぶさられて、浮竹は色子時代にもなかった快楽の波を知る。
ヒート期間に抱かれるのは、子を孕むためでもあるこを知っていたが、まだ子は欲しくないのでアフターピルを用意してもらった。
「んんんっ」
「十四郎、綺麗だよ」
「あ、春水」
番になった証の噛み痕を噛まれて、浮竹は目を閉じる。
「ひあっ」
快楽の波に飲み込まれながら。
寝る、食べる以外は、ほとんど睦み合ってヒート期間を過ごし終えると、京楽は仕事に出かけてしまった。
浮竹はすることもなく、ただ京楽の帰りを待つ。
そこへ、両親と弟や妹たちがやってきた。
「十四郎!」
「十四郎、身請けされたと聞いたが大事にされているかい?」
「母上、父上!」
浮竹は、懐かしくなって涙を零していた。
「京楽様が、十四郎の元にきてもいいと、屋敷を解放されたのだ」
「そうか。春水が‥‥」
「京楽様と運命の番なんですってね。幸せになるんですよ、十四郎」
「はい、母上」
その日は家族で過ごして、京楽は顔を見せるだけだった。
翌日には家族は帰ってしまい、また暇な時間ができる。
浮竹は、その次の日京楽の仕事を手伝うと言って、京楽についていった。
京楽は死神の隊長だった。
副官に追いかけられて、書類仕事をたくさん残していた。
本来なら入れないのだが、特別に執務室に入れてもらい、浮竹は京楽のためた書類を見て、片付けられるものは京楽の代わりに仕事をしてしまった。
それがあまりにも早く、的確なので、次の日からもぜひ来てほしいと副官と京楽から請われて、浮竹は京楽の仕事の補佐をするようになった。
そして、夜になると睦み合った。
「十四郎はすごいね。初めてなのにあんなに仕事ができて」
「簡単だったぞ?お前がしないだけで、やろうとすれば片付くんじゃないのか」
「ボク、書類仕事はからっきしでねぇ」
「また、明日も一緒に仕事に行ってやるから」
「うん。愛してるよ、十四郎」
「俺は‥‥‥まだ、分からない。運命の番であることは分かったし好きだろうけど、愛しているとは、まだはっきりと言えない」
「それでもいいよ。ボクは君を愛している。君はそれにこたえてくれている。それだけでも十分だよ」
京楽に身請けされて3カ月経った頃。
浮竹は、妊娠していた。
「春水、子ができたんだ」
京楽は、飛び上がって喜んだ。
「今なら言える。愛してる、春水」
「うん。ボクもだよ。子供、産みたくないならおろしてもいいんだよ?君はまだまだ若いんだ」
「産む。お前との子だ」
「十四郎、愛しているよ。二人で、子供を育てよう」
「ああ」
浮竹が産んだ子は女児で、その3年後には男児が生まれ、京楽家の跡取りができた。
京楽と浮竹は、運命の番としていつまでも寄り添い合って、暮らすのであった。
新しい廓が数件できており、少しのぞいては興味を失い次の廓へと興味を移す。
京楽は、アルファだ。オメガの花魁を探していた。別にベータでもよいのだが、オメガだと相性もよく快楽も得やすいからだ。
無論、うなじをかんで番にする気はないし、避妊具も使う。
その店は、金銀廓という新しくできた廓だった。
見世には、花魁もいた。
京楽は、そのうちの一人を見て、これは運命の番だと感じた。相手はまだこっちには気づいていないようで、結い上げられた白い長い髪をいじっていた。
「ねぇ、君」
「あら、あたし?」
「違う。髪の白い‥‥そう、君だよ」
髪の白い花魁は、名を翡翠といった。本名は浮竹十四郎という。
「俺か?」
「え、君花魁なのに男なのかい。色子か」
15歳くらいの、見た目は美少女だった。
「色子の花魁で悪いか。廓で身を売るのに色子も遊女も関係ない。花魁であることは、位が高くてもうけている証だ‥‥‥‥お前、アルファか」
「うん、そうだよ。君、ボクの運命の番だと思うんだ。君は?」
「ん‥‥‥そういえば、なんかすごく惹きつけられる。お前、俺の運命の番なのか」
「そうみたい。君を買うよ?」
「好きにしろ」
浮竹は、運命の番だろうがただ身を売るだけだと、さっぱりしていた。
浮竹を買って、廓の中に入る。
京楽は浮竹の隣にいると、今すぐうなじを噛んで自分だけの番にしたい衝動に駆られる。
「名前は?」
「翡翠」
「本名は?」
「浮竹十四郎。そういうお前は?」
「ボクは京楽春水」
「ああ‥‥…上流貴族の京楽家のぼんぼんか。俺の揚げ代は高いがまぁお前なら払えるだろうな」
京楽は、浮竹の耳元で囁く。
「君、ボクと運命の番だと思うんだ。君は?」
「俺も、そう感じる。でも、俺は色子の花魁。身を売るだけだ」
「じゃあ、君を身請けする」
「え?」
浮竹は驚いた。
まだ自分を買ったばかりで、身を売ってもいないというのに、身請けの話が出たからだ。
今までも数件身請けの話が出たが、色子のオメガの花魁は珍しすぎてとにかく身請け代も揚げ代も高かった。
皆、その値段の高さに諦めて去っていった。
廓の上客も、何度か買うと違う花魁に興味を移して、離れていく。
浮竹は、身を売るが心までは売らない。他の花魁より気まぐれで、花魁であるが故に買われても抱かせない時も多々あった。
一時は花魁であることを理由に身を売らなかったが、廓の主人にばれてちゃんと客をとるように仕置きされた。
そんなこんなで、浮竹は冷めていた。
身を売るのは嫌いだった。色子にされたのを、今でも後悔している。
だが、幼い弟や妹を売るくらいならと、自分から色子になると言い出したのも事実。
浮竹はやや病弱で、肺を患っており、見世に出れない時もよくあった。
廓の主人が、高い薬を用意してくれているお陰で、今は発作もなく落ち着いていた。
「身請けした後、どうせ飽きて放り出すんだろう?先に抱いて確かめたらどうだ。運命の番かどうか」
「うん、そうだね。でも、君を身請けするよ?運命の番なのは間違いない」
「好きにしろ」
浮竹は、まだ出会ったばかりの京楽を、警戒していた。
「君を買う。君を抱くよ?」
「好きにすればいい」
京楽は、廓の主人を呼び、浮竹の身請けの話を進めた。かなりの金額を要求されて、さしもの上流貴族でも無理かと思われたが、もっている屋敷をいくつか売ることで金の都合はついた。
「お前、ばかか。俺のためにそんなに金を‥‥‥」
「君は、もうボクのものだよ、翡翠」
「俺は俺のものだ。買われても、変わらない」
「君を抱くよ?」
「勝手にしろ」
「廓の主人から、番にしていい許可をもらったからね。君はボクの運命の番だ。大切にするよ?」
浮竹は、翡翠の名のもとになった緑の瞳を瞬かせる。
「あっ」
褥で軽く愛撫されて、浮竹は相手が運命の番のせいかいつもより感じていた。
「俺は、お前に媚びないからな」
「うん。君は君のままでいてくれていいよ」
「ああああっ」
浮竹は、自身を握りこまれてしごかれて、精液をはきだしていた。
「んっ」
「濡れてるね。これなら、潤滑油いらないかな。でも念のため、ね?」
京楽は潤滑油を取り出して、浮竹の蕾に指を入れてばらばらに動かす。
「んあっ」
いい場所に指が当たって、浮竹は甘い声をあげる。
「ここ、君のいいところ?」
「ひあああ!」
「挿入れるね?」
「あ、待て、まだ、やっ」
浮竹は、京楽を警戒していたのだが、与えられる快感に思考がぐずぐずに溶けていく。
「待てない。ボクのものにする」
「やあああああああ!!!」
熱いもので貫かれて、浮竹は挿入れられると同時に精液を吐き出していた。
「んあああ!」
「君の細い体には少し負担かな?ボクの、けっこうでかいって言われるから」
「じゃあ、少しは加減しろっ。んあっ」
「ああ、君の中は最高だね。今まで抱いてきたどの花魁より気持ちよくて、君も綺麗だ」
「んんんっ」
舌が絡まるキスをされて、浮竹も流されるままではしゃくだと、京楽を締め付けて射精に誘導する。
「ん、そんなに締め付けられたら」
「ふふ、俺は色子だぞ?何人もの客を相手にしてきたからな。身請けする気もなくなったか?」
「いいや、そんなことないよ。身を売るのも君はもう終わりだ。ボクの番になるんだから」
京楽は、浮竹を激しく貫いて揺さぶる。
「んああああ!」
廓の主人からもらった、番にさせないための首につけられた首輪の鍵で首輪を外して、京楽は浮竹のうなじにかみつく。
「ひあああああああ!!!」
ばちばちと、電流が流れる。
運命の番が、完成する。
「翡翠、君はボクのものだ」
京楽は、浮竹の胎の奥に子種をたっぷり注ぎこむ。
「あ、もっとおお」
浮竹は、運命の番にされたせいか乱れた。
「あ、もっと奥に」
「ここかい?」
「ひあう!」
浮竹が求めるまま、京楽は浮竹を抱く。
「あ、もっと子種ちょうだい?」
愛らしい顔で淫らになる浮竹に、京楽は夢中になった。
「もう、体は売らなくていいからね。君はボクに身請けされたんだから」
「あ、あっ」
美しい顔(かんばせ)で、乱れる浮竹は花魁の地位がふさわしいほどよく感じて、満足感を京楽に与えた。
その日、京楽は浮竹が意識を飛ばすまで抱いた。
「んんっ」
浮竹が起きると、昼だった。
見慣れない天井に、はっとなる。
眠っているうちに、荷物ごと馬車で移動させられて、浮竹は部屋の中を見渡す。
高級な調度品にあふれた部屋だった。
「起きた、翡翠?」
「あ‥‥‥十四郎と呼べ。俺の運命の番なんだろう?」
「十四郎、欲しいものはない?」
京楽が、にこにこして浮竹の長い白髪にキスを落とす。
「湯あみがしたい」
「じゃあ、風呂場に案内するね?新しい着物とかも用意させてあるから」
浮竹は、広い湯船に浸かって、自分は本当に京楽に身請けされて運命の番にされたのだと、なんとも言えない気持ちになる。
まずは、親兄弟に連絡をして、色子をやめれたことを報告しようと思った。
湯からあがると、京楽が待っていた。
「お昼ごはん。うなぎのかば焼き。一緒に食べよう?」
「ああ‥‥‥なぁ、父上や母上、弟や妹に、身請けされたことを知らせたいのだがいいか?」
「もちろんいいよ。でも、外出はまだだめだよ。君、今ヒート期間きてるから」
「え?」
まだ、ヒートが訪れていなかった浮竹は、身に残る熱い感覚に、ヒートがきたのかだと遅まき気づく。
「道理で、体が熱いわけだ。俺を抱け、京楽春水」
「夜になったらね?昨日抱いたばかりだし」
京楽は、浮竹のヒートを少しでも紛らわすために、薬も用意していた。それを飲むと、浮竹のヒートの熱も少し収まった。
夜になった。
「京楽」
「春水って呼んで?」
「春水。お前を、父上と母上、弟や妹たちに会わせたい」
「今日は遅いから、明日にしようね?」
「んあっ」
褥で覆いかぶさられて、浮竹は色子時代にもなかった快楽の波を知る。
ヒート期間に抱かれるのは、子を孕むためでもあるこを知っていたが、まだ子は欲しくないのでアフターピルを用意してもらった。
「んんんっ」
「十四郎、綺麗だよ」
「あ、春水」
番になった証の噛み痕を噛まれて、浮竹は目を閉じる。
「ひあっ」
快楽の波に飲み込まれながら。
寝る、食べる以外は、ほとんど睦み合ってヒート期間を過ごし終えると、京楽は仕事に出かけてしまった。
浮竹はすることもなく、ただ京楽の帰りを待つ。
そこへ、両親と弟や妹たちがやってきた。
「十四郎!」
「十四郎、身請けされたと聞いたが大事にされているかい?」
「母上、父上!」
浮竹は、懐かしくなって涙を零していた。
「京楽様が、十四郎の元にきてもいいと、屋敷を解放されたのだ」
「そうか。春水が‥‥」
「京楽様と運命の番なんですってね。幸せになるんですよ、十四郎」
「はい、母上」
その日は家族で過ごして、京楽は顔を見せるだけだった。
翌日には家族は帰ってしまい、また暇な時間ができる。
浮竹は、その次の日京楽の仕事を手伝うと言って、京楽についていった。
京楽は死神の隊長だった。
副官に追いかけられて、書類仕事をたくさん残していた。
本来なら入れないのだが、特別に執務室に入れてもらい、浮竹は京楽のためた書類を見て、片付けられるものは京楽の代わりに仕事をしてしまった。
それがあまりにも早く、的確なので、次の日からもぜひ来てほしいと副官と京楽から請われて、浮竹は京楽の仕事の補佐をするようになった。
そして、夜になると睦み合った。
「十四郎はすごいね。初めてなのにあんなに仕事ができて」
「簡単だったぞ?お前がしないだけで、やろうとすれば片付くんじゃないのか」
「ボク、書類仕事はからっきしでねぇ」
「また、明日も一緒に仕事に行ってやるから」
「うん。愛してるよ、十四郎」
「俺は‥‥‥まだ、分からない。運命の番であることは分かったし好きだろうけど、愛しているとは、まだはっきりと言えない」
「それでもいいよ。ボクは君を愛している。君はそれにこたえてくれている。それだけでも十分だよ」
京楽に身請けされて3カ月経った頃。
浮竹は、妊娠していた。
「春水、子ができたんだ」
京楽は、飛び上がって喜んだ。
「今なら言える。愛してる、春水」
「うん。ボクもだよ。子供、産みたくないならおろしてもいいんだよ?君はまだまだ若いんだ」
「産む。お前との子だ」
「十四郎、愛しているよ。二人で、子供を育てよう」
「ああ」
浮竹が産んだ子は女児で、その3年後には男児が生まれ、京楽家の跡取りができた。
京楽と浮竹は、運命の番としていつまでも寄り添い合って、暮らすのであった。
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