オメガバース恋白読み切り短編
その日、恋次はお忍びで城下にきていた。
恋次は、その国の第14代目の国王だった。政治は大臣に任せていて、恋次はお飾りの国王とばかにされるが、文武両道で、幼い頃から帝王学を学ばされており、自分で統治することもできたし、重要な場面ではちゃんと国王として責務を果たしていた。
ふと、目の前を奴隷商人が横切った。
「へぇ、奴隷商人か‥‥最近、後宮の寵姫にも飽きてきたしな。何か珍しい奴隷でもいないか見ていくか」
恋次は、奴隷市に顔を出した。
「さぁさぁ、今回の目玉はこの青年だぁ!見よ、この美貌!美しい歌声をしているし、何より純白を通りこした白銀の翼!絶滅しかかっている有翼族の中でも、こんな色の翼をもつ有翼人は他にいないよ!しかもオメガだ!子を産むよ!金貨千枚から!」
「金貨2000枚!」
「金貨5000枚!」
「金貨5500枚!」
「さぁさぁ、他にいないかね?」
恋次は、奴隷としてステージに立たせられた有翼人の青年に魅入っていた。
美しかった。今まで相手をしてきたどの寵姫よりも。
ふと、財布の中身を確かめる。
金貨では重いので、星金貨をもっていた。
星金貨1枚で、金貨100枚分に値する。
それを、300枚もっていた。
「星金貨200枚」
「おおーっと、ここで星金貨200枚が出た!金貨にすると2万枚だぁ!」
ざわっと、周囲が騒がしくなる。
「おっと、これは決まりか!」
目の前にいる有翼人の青年は、長い黒髪に黒い瞳、透き通るような白い肌に紅をさしたような唇をしていて、うすく化粧も施されていた。
着ている服も、よく似合っていた。
他の奴隷はボロの服のまま出されていたが、有翼人の青年は目玉商品なので少しでも高い値がつくように綺麗な身なりで出品されていた。
「決まりだ!星金貨200枚で赤い髪の青年が落札だぁ!」
奥で星金貨200枚を払い、恋次は有翼人の青年と出会い、手と首の鎖をもらった鍵で取り去って自由にさせた。
「私の名は、朽木白哉。有翼族の吟遊詩人だった。人に捕らえられ、奴隷に落ちたが、私は屈しない」
「あ‥‥‥」
「なんだ?」
「あんがすごい綺麗だから見惚れてた。白哉さんと呼んでいいっすか?」
「好きにするといい」
恋次は、白哉を連れて王宮に戻る。
「王族だったのか」
白哉が驚いていた。
「オメガってことなんで、歌姫として後宮に入れます。あんたは、今日から俺の、俺だけの寵姫だ」
「‥‥‥‥」
「あ、なんかほしいものありますか?」
「リュートを。弾いて歌いたい」
「分かりました。すぐ用意させます。とりあえず、湯あみして新しい服着てください。一緒に食事とりまよう」
白哉は、恋次の言われた通りにした。
中性的な衣服を着せられて現れた白哉は、やはり美しかった。
有翼族だが、翼は出し入れが可能だった。起きている時は出したままで、眠る時に消すらしい。
豪華な食事を与えれて、白哉は困った表情をしていた。
もっとひどい買い手に買われて、前の主人のように性的に暴行をくわえられると思っていたからだ。
「兄は‥‥私を、抱かぬのか?」
「ぶばっ」
飲みかけの紅茶を、白哉の顔に吹きかけた。
「す、すんません」
「兄はアルファなのであろう?私はオメガだ。前の主は、私をいつも犯していた」
「白哉さん。俺はそんな無理やりはしないっすから、安心してください」
「だが、寵姫にするということは、そういう気があるということであろう?」
「まぁ、そうなんすけど‥‥‥‥ぶっちゃけ、一目惚れっす。立場上、他の国の姫とかの寵姫も相手にしなきゃいけないんで、そのあたりは勘弁してください」
「国王だからな。仕方あるまい」
白哉は、恋次に呼ばれて寝る前にリュートを奏でて歌を歌った。
前の主が白哉を犯したというが、そんなことは微塵も感じさせない上品で気品のある立ち振るいと、歌声は素晴らしかった。
「もう遅いし、一緒に寝ましょう」
「するのか?」
「ただ、一緒に寝るだけです。何か欲しいものが他にあったら言ってくださいね?」
「分かった」
その日、白哉は久しぶりに深く眠れた。
次の日は慌ただしかった。
白哉が、秘所から血を大量に流したのだ。
「流産だそうです」
輸血と点滴を受けながら、憔悴した様子の白哉の頬を、恋次が撫でる。
「前の主は、避妊させてくれなかったから‥‥あの男との間にできた子であろう。流れてくれて、せいせいしている」
「じゃあ、なんでそんなに悲しそうな顔してるんすか」
「オメガに生まれたことのない兄にはわかるまい」
「そうっすけど‥‥‥‥俺は、子供がちゃんと生まれていても、俺の子として扱いましたよ?」
「戯言を‥‥‥眠いのだ。寝る。一人にしてくれ」
2週間ばかり安静にして、前の主に刻まれた番をとくために、大量の薬を投与されて、白哉は2週間ずっとベッドの上で眠っていた。
買った時から細かったが、さらに細くなってしまった腕を見て、恋次は心を痛めた。
「白哉さん‥‥‥目を、覚ましてください」
毎晩、恋次は白哉の部屋で眠った。白哉は体が弱いわけではないが、番を解消させる薬は副作用も大きいので、心配で心配で、恋次は食事をとるのも執務をするのも白哉の部屋でしていた。
「ん‥‥‥」
ゆっくりと、白哉は目を開けた。
飛び込んできたのは、看病し疲れて眠っている、この国の国王であるはずの恋次の姿だった。
「なぜ‥‥‥‥」
珍しいとはいえ、たかが一人の奴隷のために、国王である恋次がここまでしてくれるのか、理解できなかった。
「恋次‥‥‥」
眠っている恋次は、年より幼く見えて、燃え上がるような赤い髪はわりとさらさらしていた。
「白哉さん?」
「目を、覚ましたぞ」
「ああ、よかった。点滴ばっかりだったから、お腹すいてるでしょう。消化にいいもの、そうだな、スープかリゾットでも作ってきてもらいますね」
「兄は」
「ん?」
「兄は、私が珍しいから大事なのであろう?」
悲し気に目を伏せる白哉の手を引いて、恋次は白哉にキスをした。
「あんたが、好きです」
「私は、オメガだ。アルファである兄がそんな感情を抱くのは、私がオメガであるせいだ」
「そうだとしても、好きなんです。俺の番になってください」
「前の主に無理やり番にされて‥‥‥」
「今時、番は解消できるもんすよ。副作用が大きいから躊躇しましたけど、子が流れるのを見たら、もうあんたには誰も手を出してほしくないから、俺の番にするために番解消の薬を投与しました」
白哉が目を見開く。
「食事を毎日きちんととって、俺と一緒に軽く運動しましょう。少しでも元気になるために」
「運動とは、セックスか?」
「ち、違います!普通に走ったりです」
「有翼族は、翼があるせいであまり走らぬ。一人で走ってくれまいか」
「あああ、じゃあ、体操で!」
白哉は、恋次と一緒に体操したり散歩したりして、毎日きちんと3食食べていくうちに、元気になっていった。
白哉は、毎日恋次のためにリュートを奏でで歌を歌った。とても綺麗な声だった。
白哉が恋次に買われてから、1ヵ月が経とうとしていた。
恋次は、その間に後宮に囲っていた寵姫たちを故郷に戻した。
「なぜ、寵姫たちを故郷に戻す?子は、一人でも多いほうがいいのではないか?」
「あんたとの間にできた子を、男であれ女であれ、次の跡継ぎにします」
白哉は、赤くなる。
「わ、私と子など‥‥‥‥」
「今日、あんたを抱きます」
「私は‥‥その」
「俺はあんたがいい。白哉さん、あんたを愛してます。番になって、俺の子を産んでください」
白哉は、直球すぎる言葉にまた赤くなった。
「分かった」
白哉も覚悟を決める。買われた時から、前の時のように性奴隷にされると思っていたのだ。それが、他の男の手垢にまみれてしまっているというのに、恋次は番にして子が欲しいという。
子供が目的かとも思ったが、本当に白哉のことが大好きで愛してくれているんだと、接しているうちに分かった。
「では、今夜」
「ああ」
その日の夜になって、恋次は素面ではいられずに酒を少し飲んで、白哉にも飲ませた。
「んっ」
服の上から体全体を弄られて、白哉は甘い声を小さくあげる。
かりかりっと、服の上から胸の先端ばかりいじっていると、濡れた瞳で白哉が恋次を見上げる。
「‥‥‥もっと」
「はい」
衣服を脱がしていき、すでに勃っていた白哉のものを口に含んで優しく愛撫する。
男に抱かれ慣れてはいたが、こんなに優しくされたことはなくて、白哉は目を閉じた。
「ふあっ、んあ!」
精液を、恋次の口の中に吐き出してしまった。
「あ、ティシュを」
恋次は、かまわず飲み干した。
「あ‥‥‥」
「あんたの体液、なんでこんな甘いの?」
「それは、前の前の主がそうなるような薬を私に」
「そっか。つらいこと思い出させてしまってすんません」
「あ、恋次」
自分の声ではないような甘ったるい声で、白哉は恋次の名を呼ぶ。
恋次は、ゆっくりと潤滑油にまみれた指を白哉の蕾にいれる。
ゆっくり動かすと、いい場所に指があたって、白哉はビクンと反応した。
「うあっ」
「ここ、いい?」
「やあああ」
ごくりと、恋次が喉をならす。
「挿入れますよ?」
「んあっ」
熱で一気に引き裂くと、慣れているのか白哉は何も言わず、ただじっと耐えた。
「んっ‥‥‥大きい、やぁ」
「あんたの中すごい。なんて熱いんだ。溶けちまう」
「やああ」
ずっずっと音を立てて動かされる。
そのうち、ぐちゅぐちゅと濡れた音になってきた。
「ひあああああ!!!」
奥を抉られて、白哉は精液を出しながらオーガズムでもいっていた。
「奥に、出しますよ?俺の子、孕んでくださいね?」
「ああああ!」
どくんどくんと、大量の精液を注ぎこまれて、白哉は唇を舐めた。
艶めいた仕草に、恋次の熱がさらにこもる。
「あ、また大きく」
「今日は、寝かせませんからね?覚悟してください。まず、番にしますね?」
交わりながら、うなじを噛まれて、ぴりぴりと電撃が走ったような感覚を抱く。
「うあ」
「番に、なりましたね?あんたはもう、俺のもんだ」
「あっ」
「たっぷり、愛してあげますからね?」
白哉は、心を許した恋次に抱かれたことで初めてヒートを催した。
その次の日も、次の日も‥‥‥1週間くらい、抱かれて眠るを繰り返して、白哉ははじめてのヒートを無事過ごし終える。
恋次も白哉も若いので、ほぼ毎日のようにセックスをした。
「‥‥‥‥身籠った」
「マジっすか!」
医者に診せて、男児を懐妊しているいのが分かって、出産までの間、白哉を抱かなくなった恋次に、白哉は熱をもてあまし、恋次に交わるまでもしないが、ぬいてもらったり、ぬいたりしていた。
やがて臨月がきて、帝王切開で無事、王太子を産んだ。
生まれてきた子の背中には、小さいが翼があった。
白哉は有翼人だ。白哉の願いで、子の小さなあるだけの翼は切除された。
「私は、子に亜人の血を引いているからと差別を受けてほしくない」
「俺は反対だったんすけど、あんたにこれだけ懇願されるとなぁ」
白哉は、またヒートを起こしたが、それから2年ほどは避妊してないのに子はできなかった。
3年目に、今度は女児を懐妊し、無事生まれた。
「愛してます、白哉さん」
「んっ、恋次‥‥‥‥‥」
また懐妊して、口づけだけを交わしあう。
セックスは、子が流れる危険があるからとストップされていた。
「はぁ‥‥‥早く、兄に抱かれたい」
「俺も、白哉さんを抱きたい」
その日の夜は、子が胎にいるが、セックスしてしまった。
子が流れなかったので、たまに恋次は白哉を抱いた。
3人目の子を産んだ後は、避妊するようになった。
「白哉さん‥‥綺麗だ」
「あ、恋次」
求められて、白哉は自分から足を開く。
ヒート期間が終わると、白哉はすくすく育っていく恋次との間の子と恋次のために、リュートを奏でて美しい歌声を披露する。
「隣国から、王太子の婚約者として10歳の姫君の名があがってるんすけど」
「まだ王太子は5歳だぞ。早すぎる」
「そうなんすけどね。姫のほうも、もらいたいって国が多くて」
白哉と恋次は、子が亜人との間の子だからと忌み嫌われることを危惧していたが、有翼人はもう絶滅種に近く、優れた魔術を使えるというその血筋を欲した。
白哉は魔力は高かったが、魔術は使えなかった。
子供たちは、幼い頃から魔術が使える片鱗を見せていた。
この世界では、魔術を使える者は地位が高い場合が多く、珍しかった。
平民でも、魔術が使える子は名のある貴族の養子としてもらわれていく。
そんな子供たちに囲まれ、王国の正妃となった白哉は、恋次と長く長く幸せに生きていくのであった。
恋次は、その国の第14代目の国王だった。政治は大臣に任せていて、恋次はお飾りの国王とばかにされるが、文武両道で、幼い頃から帝王学を学ばされており、自分で統治することもできたし、重要な場面ではちゃんと国王として責務を果たしていた。
ふと、目の前を奴隷商人が横切った。
「へぇ、奴隷商人か‥‥最近、後宮の寵姫にも飽きてきたしな。何か珍しい奴隷でもいないか見ていくか」
恋次は、奴隷市に顔を出した。
「さぁさぁ、今回の目玉はこの青年だぁ!見よ、この美貌!美しい歌声をしているし、何より純白を通りこした白銀の翼!絶滅しかかっている有翼族の中でも、こんな色の翼をもつ有翼人は他にいないよ!しかもオメガだ!子を産むよ!金貨千枚から!」
「金貨2000枚!」
「金貨5000枚!」
「金貨5500枚!」
「さぁさぁ、他にいないかね?」
恋次は、奴隷としてステージに立たせられた有翼人の青年に魅入っていた。
美しかった。今まで相手をしてきたどの寵姫よりも。
ふと、財布の中身を確かめる。
金貨では重いので、星金貨をもっていた。
星金貨1枚で、金貨100枚分に値する。
それを、300枚もっていた。
「星金貨200枚」
「おおーっと、ここで星金貨200枚が出た!金貨にすると2万枚だぁ!」
ざわっと、周囲が騒がしくなる。
「おっと、これは決まりか!」
目の前にいる有翼人の青年は、長い黒髪に黒い瞳、透き通るような白い肌に紅をさしたような唇をしていて、うすく化粧も施されていた。
着ている服も、よく似合っていた。
他の奴隷はボロの服のまま出されていたが、有翼人の青年は目玉商品なので少しでも高い値がつくように綺麗な身なりで出品されていた。
「決まりだ!星金貨200枚で赤い髪の青年が落札だぁ!」
奥で星金貨200枚を払い、恋次は有翼人の青年と出会い、手と首の鎖をもらった鍵で取り去って自由にさせた。
「私の名は、朽木白哉。有翼族の吟遊詩人だった。人に捕らえられ、奴隷に落ちたが、私は屈しない」
「あ‥‥‥」
「なんだ?」
「あんがすごい綺麗だから見惚れてた。白哉さんと呼んでいいっすか?」
「好きにするといい」
恋次は、白哉を連れて王宮に戻る。
「王族だったのか」
白哉が驚いていた。
「オメガってことなんで、歌姫として後宮に入れます。あんたは、今日から俺の、俺だけの寵姫だ」
「‥‥‥‥」
「あ、なんかほしいものありますか?」
「リュートを。弾いて歌いたい」
「分かりました。すぐ用意させます。とりあえず、湯あみして新しい服着てください。一緒に食事とりまよう」
白哉は、恋次の言われた通りにした。
中性的な衣服を着せられて現れた白哉は、やはり美しかった。
有翼族だが、翼は出し入れが可能だった。起きている時は出したままで、眠る時に消すらしい。
豪華な食事を与えれて、白哉は困った表情をしていた。
もっとひどい買い手に買われて、前の主人のように性的に暴行をくわえられると思っていたからだ。
「兄は‥‥私を、抱かぬのか?」
「ぶばっ」
飲みかけの紅茶を、白哉の顔に吹きかけた。
「す、すんません」
「兄はアルファなのであろう?私はオメガだ。前の主は、私をいつも犯していた」
「白哉さん。俺はそんな無理やりはしないっすから、安心してください」
「だが、寵姫にするということは、そういう気があるということであろう?」
「まぁ、そうなんすけど‥‥‥‥ぶっちゃけ、一目惚れっす。立場上、他の国の姫とかの寵姫も相手にしなきゃいけないんで、そのあたりは勘弁してください」
「国王だからな。仕方あるまい」
白哉は、恋次に呼ばれて寝る前にリュートを奏でて歌を歌った。
前の主が白哉を犯したというが、そんなことは微塵も感じさせない上品で気品のある立ち振るいと、歌声は素晴らしかった。
「もう遅いし、一緒に寝ましょう」
「するのか?」
「ただ、一緒に寝るだけです。何か欲しいものが他にあったら言ってくださいね?」
「分かった」
その日、白哉は久しぶりに深く眠れた。
次の日は慌ただしかった。
白哉が、秘所から血を大量に流したのだ。
「流産だそうです」
輸血と点滴を受けながら、憔悴した様子の白哉の頬を、恋次が撫でる。
「前の主は、避妊させてくれなかったから‥‥あの男との間にできた子であろう。流れてくれて、せいせいしている」
「じゃあ、なんでそんなに悲しそうな顔してるんすか」
「オメガに生まれたことのない兄にはわかるまい」
「そうっすけど‥‥‥‥俺は、子供がちゃんと生まれていても、俺の子として扱いましたよ?」
「戯言を‥‥‥眠いのだ。寝る。一人にしてくれ」
2週間ばかり安静にして、前の主に刻まれた番をとくために、大量の薬を投与されて、白哉は2週間ずっとベッドの上で眠っていた。
買った時から細かったが、さらに細くなってしまった腕を見て、恋次は心を痛めた。
「白哉さん‥‥‥目を、覚ましてください」
毎晩、恋次は白哉の部屋で眠った。白哉は体が弱いわけではないが、番を解消させる薬は副作用も大きいので、心配で心配で、恋次は食事をとるのも執務をするのも白哉の部屋でしていた。
「ん‥‥‥」
ゆっくりと、白哉は目を開けた。
飛び込んできたのは、看病し疲れて眠っている、この国の国王であるはずの恋次の姿だった。
「なぜ‥‥‥‥」
珍しいとはいえ、たかが一人の奴隷のために、国王である恋次がここまでしてくれるのか、理解できなかった。
「恋次‥‥‥」
眠っている恋次は、年より幼く見えて、燃え上がるような赤い髪はわりとさらさらしていた。
「白哉さん?」
「目を、覚ましたぞ」
「ああ、よかった。点滴ばっかりだったから、お腹すいてるでしょう。消化にいいもの、そうだな、スープかリゾットでも作ってきてもらいますね」
「兄は」
「ん?」
「兄は、私が珍しいから大事なのであろう?」
悲し気に目を伏せる白哉の手を引いて、恋次は白哉にキスをした。
「あんたが、好きです」
「私は、オメガだ。アルファである兄がそんな感情を抱くのは、私がオメガであるせいだ」
「そうだとしても、好きなんです。俺の番になってください」
「前の主に無理やり番にされて‥‥‥」
「今時、番は解消できるもんすよ。副作用が大きいから躊躇しましたけど、子が流れるのを見たら、もうあんたには誰も手を出してほしくないから、俺の番にするために番解消の薬を投与しました」
白哉が目を見開く。
「食事を毎日きちんととって、俺と一緒に軽く運動しましょう。少しでも元気になるために」
「運動とは、セックスか?」
「ち、違います!普通に走ったりです」
「有翼族は、翼があるせいであまり走らぬ。一人で走ってくれまいか」
「あああ、じゃあ、体操で!」
白哉は、恋次と一緒に体操したり散歩したりして、毎日きちんと3食食べていくうちに、元気になっていった。
白哉は、毎日恋次のためにリュートを奏でで歌を歌った。とても綺麗な声だった。
白哉が恋次に買われてから、1ヵ月が経とうとしていた。
恋次は、その間に後宮に囲っていた寵姫たちを故郷に戻した。
「なぜ、寵姫たちを故郷に戻す?子は、一人でも多いほうがいいのではないか?」
「あんたとの間にできた子を、男であれ女であれ、次の跡継ぎにします」
白哉は、赤くなる。
「わ、私と子など‥‥‥‥」
「今日、あんたを抱きます」
「私は‥‥その」
「俺はあんたがいい。白哉さん、あんたを愛してます。番になって、俺の子を産んでください」
白哉は、直球すぎる言葉にまた赤くなった。
「分かった」
白哉も覚悟を決める。買われた時から、前の時のように性奴隷にされると思っていたのだ。それが、他の男の手垢にまみれてしまっているというのに、恋次は番にして子が欲しいという。
子供が目的かとも思ったが、本当に白哉のことが大好きで愛してくれているんだと、接しているうちに分かった。
「では、今夜」
「ああ」
その日の夜になって、恋次は素面ではいられずに酒を少し飲んで、白哉にも飲ませた。
「んっ」
服の上から体全体を弄られて、白哉は甘い声を小さくあげる。
かりかりっと、服の上から胸の先端ばかりいじっていると、濡れた瞳で白哉が恋次を見上げる。
「‥‥‥もっと」
「はい」
衣服を脱がしていき、すでに勃っていた白哉のものを口に含んで優しく愛撫する。
男に抱かれ慣れてはいたが、こんなに優しくされたことはなくて、白哉は目を閉じた。
「ふあっ、んあ!」
精液を、恋次の口の中に吐き出してしまった。
「あ、ティシュを」
恋次は、かまわず飲み干した。
「あ‥‥‥」
「あんたの体液、なんでこんな甘いの?」
「それは、前の前の主がそうなるような薬を私に」
「そっか。つらいこと思い出させてしまってすんません」
「あ、恋次」
自分の声ではないような甘ったるい声で、白哉は恋次の名を呼ぶ。
恋次は、ゆっくりと潤滑油にまみれた指を白哉の蕾にいれる。
ゆっくり動かすと、いい場所に指があたって、白哉はビクンと反応した。
「うあっ」
「ここ、いい?」
「やあああ」
ごくりと、恋次が喉をならす。
「挿入れますよ?」
「んあっ」
熱で一気に引き裂くと、慣れているのか白哉は何も言わず、ただじっと耐えた。
「んっ‥‥‥大きい、やぁ」
「あんたの中すごい。なんて熱いんだ。溶けちまう」
「やああ」
ずっずっと音を立てて動かされる。
そのうち、ぐちゅぐちゅと濡れた音になってきた。
「ひあああああ!!!」
奥を抉られて、白哉は精液を出しながらオーガズムでもいっていた。
「奥に、出しますよ?俺の子、孕んでくださいね?」
「ああああ!」
どくんどくんと、大量の精液を注ぎこまれて、白哉は唇を舐めた。
艶めいた仕草に、恋次の熱がさらにこもる。
「あ、また大きく」
「今日は、寝かせませんからね?覚悟してください。まず、番にしますね?」
交わりながら、うなじを噛まれて、ぴりぴりと電撃が走ったような感覚を抱く。
「うあ」
「番に、なりましたね?あんたはもう、俺のもんだ」
「あっ」
「たっぷり、愛してあげますからね?」
白哉は、心を許した恋次に抱かれたことで初めてヒートを催した。
その次の日も、次の日も‥‥‥1週間くらい、抱かれて眠るを繰り返して、白哉ははじめてのヒートを無事過ごし終える。
恋次も白哉も若いので、ほぼ毎日のようにセックスをした。
「‥‥‥‥身籠った」
「マジっすか!」
医者に診せて、男児を懐妊しているいのが分かって、出産までの間、白哉を抱かなくなった恋次に、白哉は熱をもてあまし、恋次に交わるまでもしないが、ぬいてもらったり、ぬいたりしていた。
やがて臨月がきて、帝王切開で無事、王太子を産んだ。
生まれてきた子の背中には、小さいが翼があった。
白哉は有翼人だ。白哉の願いで、子の小さなあるだけの翼は切除された。
「私は、子に亜人の血を引いているからと差別を受けてほしくない」
「俺は反対だったんすけど、あんたにこれだけ懇願されるとなぁ」
白哉は、またヒートを起こしたが、それから2年ほどは避妊してないのに子はできなかった。
3年目に、今度は女児を懐妊し、無事生まれた。
「愛してます、白哉さん」
「んっ、恋次‥‥‥‥‥」
また懐妊して、口づけだけを交わしあう。
セックスは、子が流れる危険があるからとストップされていた。
「はぁ‥‥‥早く、兄に抱かれたい」
「俺も、白哉さんを抱きたい」
その日の夜は、子が胎にいるが、セックスしてしまった。
子が流れなかったので、たまに恋次は白哉を抱いた。
3人目の子を産んだ後は、避妊するようになった。
「白哉さん‥‥綺麗だ」
「あ、恋次」
求められて、白哉は自分から足を開く。
ヒート期間が終わると、白哉はすくすく育っていく恋次との間の子と恋次のために、リュートを奏でて美しい歌声を披露する。
「隣国から、王太子の婚約者として10歳の姫君の名があがってるんすけど」
「まだ王太子は5歳だぞ。早すぎる」
「そうなんすけどね。姫のほうも、もらいたいって国が多くて」
白哉と恋次は、子が亜人との間の子だからと忌み嫌われることを危惧していたが、有翼人はもう絶滅種に近く、優れた魔術を使えるというその血筋を欲した。
白哉は魔力は高かったが、魔術は使えなかった。
子供たちは、幼い頃から魔術が使える片鱗を見せていた。
この世界では、魔術を使える者は地位が高い場合が多く、珍しかった。
平民でも、魔術が使える子は名のある貴族の養子としてもらわれていく。
そんな子供たちに囲まれ、王国の正妃となった白哉は、恋次と長く長く幸せに生きていくのであった。
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