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奴隷竜とSランク冒険者4

浮竹が、京楽と過ごすようになって3カ月が経った。

京楽と浮竹の関係は良好で、お互い信頼しあい、背中を預けれる戦友でもあった。

誰かが漏らしたのか、浮竹がムーンホワイトドラゴンであるということが、冒険者ギルド内で囁かれるようになっていた。

浮竹もいつまでも騙せないと肯定し、京楽もまた浮竹の周囲に目を光らせつつ、外に出るときは必ず京楽と一緒に行動するようにさせていた。

そんな浮竹が、ある日攫われた。

冒険者ギルドを出たところで、京楽を短剣でさして、浮竹にスリープの魔法をかけて浮竹をさらっていった犯人は、完全にどこかの組織の者で、手練れで訓練されていた。

京楽は、短剣でさされた傷をまずは癒すと、犯人の魔力の名残を追跡していった。

辿り着いたのは、王国の王宮であった。

「くそ、またあの愚かな姫かい」

2カ月ほど前に、王国の姫君の護衛をしたことがあった。

その姫は、浮竹がムーンホワイトドラゴンであることを知って、自分のものにしたがっていた。

一度、王家の伝来の秘薬を使って自分のものにしようとしたが、京楽の怒りを買って、殺されかけたが、流石に王家の一員を殺すには問題が山積みなので、放置していたのだが。

姫の名は、マリーシュ・エル・メリアナ。

メリアナ王国の第2王女であった。



「マリーシュ様。お言いつけ通り、ムーンホワイトドラゴンを連れてきました」

「よくやったわね!報酬は弾むわ。あの京楽という冒険者は追ってこなかったのね?」

「はい。短剣で刺しました。今頃、ムーンホワイトドラゴンを奪われて、激怒しているでしょう。でも、プロの俺の手にかかれば、探知などできないはず」

大抵の人は知らない。

魔力には波長があり、個人個人で違うことを。

魔力探査できる者は数少ない。

一般人の、ほとんどない魔力を探知するなど、砂漠の砂から星の欠片を探すようなものだ。

しかし、京楽は魔法探知が得意だった。

「ん・・・・・」

「あら、目を覚ましたのね、浮竹」

「ここは!?京楽は!?」

「今日から、私があなたの主よ」

「嘘をつけ!俺を誘拐したんだな!」

「黙らせますか?」

マリーシュ姫に、闇ギルドの誘拐犯は、短剣で浮竹を脅そうとする。

「これをつけなさい」

「な・・・・・体が、勝手に動く・・・・・」

浮竹は、自分の手で奴隷の隷属の首輪を自分にはめていた。

「あはははは、これであなたは今日から私のものよ!姉君や兄君に自慢しにいきましょう」

「く、とれない・・・・・・」

隷属の首輪をつけさせられて、マリーシュ姫を殴ろうとして、電撃が体中をかけめぐる。

「ああああ!!」

「ふふ、反抗しようとすると、その隷属の首輪は電撃を流すわ。痛い思いをしたくなければ、大人しく私の言うことを聞くことね」

「いやだ!」

浮竹は、流れる電撃に顔を歪ませながら、マリーシュ姫から逃げようとする。

「あああ!!!」

身を引き裂くような電撃に、浮竹は床に倒れた。

「怪我をさせたくないのよ。大人しく言うことを聞いてちょうだい。ここは王宮。私の部屋。
あなたはマリーシュ姫である私のものになったのよ。王族が主だから、贅沢しほうだいよ」

「贅沢なんていらない。俺を解放しろ」

「いやよ。あなたは今日から私の奴隷で私のもの。私のものであるべきよ」

「俺は、京楽のものだ。京楽以外、いらない」

「私を認めなさい!」

マリーシュ姫は、頑な拒絶する浮竹にいらついて、マックスの電撃を浴びせた。

「うわああああ!!」

ぷすぷすと焦げた匂いがする。

浮竹は、身を焦がしながらも、マリーシュ姫を受け入れなかった。

「浮竹、助けにきたよ」

京楽が、冷酷な笑みを刻みながら、マリーシュ姫の部屋の窓ガラスと割って入ってきた。

「京楽!」

「だめよ、行ってはだめ!あなたは私のもの!」

「違う。俺は、京楽のものだ」

京楽は、焦げた姿の浮竹の体を受けとめる。

「大丈夫かい?」

「これくらいで、根を上げる俺じゃない」

「ハイ・ヒーリング」

ぱぁぁぁと光が満ちて、浮竹の傷が回復する。

京楽は、笑っていた。

「死ぬ覚悟は、できているだろうね?」

「何を言っているの。私はマリーシュ・エル・メリアナ。このメリアナ王国の第二王女よ!下賎な冒険者風情が!」

京楽は、風になっていた。

まず、浮竹を攫った実行犯であった闇の組織の人間の首をはねる。

「きゃあああああああ!!!」

迸る血に、マリーシュ姫が悲鳴をあげる。

そこで、はじめてこの冒険者は王族である自分を、本気で殺そうとしていることに気付いた。

でも、もう遅かった。

「返すから!ムーンホワイトドラゴンは返すから、だから」

「ねぇ、死んで?僕の浮竹を傷つけた。死をもって償いなよ」

京楽は、残酷に笑った。

ドラゴンスレイヤーの魔剣で、まずマリーシュ姫の右手を切り飛ばす。

「きゃあああああああああ!痛い、痛い!」

「浮竹も痛い思いをしたはずだよ」

「いやああああああ、助けてええええええ!!!」

なんとかドアから出ようとするマリーシュ姫の右足を切り飛ばす。

「京楽?」

「ん?もうすぐ終わるから、そこで待っててね」

「うん」

「じゃあね、マリーシュ姫とやら。永遠に、さようなら」

京楽は魔剣を煌めかせると、マリーシュ姫の首と胴を切り離した。

ころころと転がってきた、その頭部をぐしゃりと踏みつぶす。

「京楽、大丈夫なのか。仮にも王族だぞ」

「ん、大丈夫。犯人が分からないようにするから」

京楽は、マリーシュ姫の部屋に火を放った。マリーシュ姫の体は、ただの灰になっていく。

「浮竹、おいで」

「ん」

京楽は、浮竹に口づけながら、隷属の首輪を外した。

「ん・・・・・」

首輪が外れても、まだキスを続ける。

あたりは火の海に包まれていた。

「さぁ、帰ろうか」

「うん」

ドラゴン姿で出ていくとばれるので、窓から体を透明にする魔法をかけて、走って王宮を後にする。

「ありがとう、京楽。俺を助けにきてくれて」

「当たり前でしょ。君は僕のもので、僕のパートナーだ。僕から君を奪う存在は、たとえ神であっても許しはしない」

「大袈裟だな」

「ああ、無事で本当によかった。でも、あの姫の匂いが染みついているね。今着ている服は捨てて、お風呂に入ろう」

「今からか?」

「そう、今から」

浮竹と京楽は、一緒に湯浴みをした。

体からマリーシュ姫の香りがしないのを確認して、京楽は浮竹を抱きしめる。

「もう、攫われたりしちゃだめだよ」

「ああ、分かってる」

「これを君に」

京楽が出してきたのは、翡翠細工のブレスレットだった。

「君がどこにいるか、感知できる魔法がこめられてる。つけてくれる?」

「ああ、喜んで」

マリーシュ姫は、闇の組織に暗殺されたことになった。

そう根回ししたのは京楽だ。

愛する者のためなら、殺人もいとわない京楽を、浮竹は全てをひっくるめて受け入れる。

「愛してる」

「僕もだよ」

夜は更けていく。

浮竹と京楽は、同じベッドで眠りながら、二人でいられる幸せを享受するのだった。

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