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奴隷竜とSランク冒険者5

「京楽、これはなんだ?」

「ん、シュークリームだよ。おいしいから食べてごらん」

京楽がお茶菓子にと作ったシュークリームを、浮竹は食べた。

「うまい!」

満月の日なので、浮竹は半竜人姿だった。

ゆらゆらと揺れる尻尾で、感情が分かる。

「べ、別にお前が作ったから各段にうまいというわけじゃないからな!」

ツンデレだが、尻尾をぶんぶん振っているので、言葉だけだと分かる。

あまりにも尻尾を振るものだから、椅子にぶつかって、椅子が破壊される。

「う、浮竹の尻尾って、破壊力あるんだね」

京楽は、浮竹の尻尾を触りたいと思っていたが、あんな力で薙ぎ払われた日には、肋骨を骨折しそうだ。

「ああ、俺はドラゴンだからな。尻尾で敵をうちのめすためにも、尻尾は力が強いんだ」

「そうなんだ。ちなみに、僕が君の尻尾さわっても、粉砕しない?」

「う、尻尾を触わるのか。尻尾は敏感だから、優しくしてくれ」

薙ぎ払われないと知って、京楽は浮竹の尻尾を撫でた。

「ひゃん!」

「浮竹?」

「な、なんでもない」

また触り、今度は先っぽをにぎにぎとしてみると、浮竹は顔を真っ赤にさせた。

「そ、そんな風に触っちゃだめだ。ドラゴン同士の求愛の時にしっぽをからめたり、にぎににしたりするんだ。京楽、お前は俺を嫁にしたいのか?」

真顔で聞かれて、京楽は微笑んだ。

「君をお嫁さんにもらえるなら、もらうよ」

「奴隷でドラゴンのオスの嫁なんて、いらないだろう」

「僕は大歓迎だけどね」

京楽は、半竜人姿の浮竹を抱きしめる。

翼は普通のドラゴンは被膜翼なのだが、ムーンホワイトドラゴンは天使のような羽をもつ。

「君の翼、その姿でも飛べるの?」

「ん、ああ。飛ぼうと思ったら飛べるぞ」

ふわりと、浮竹の体が浮く。

翼をはためかせると、数枚の羽毛と共に風が吹いてきた。

「あ、飛ばなくていいから!そのままどこかへ行ったりしちゃだめだよ」

「京楽と一緒じゃないと、外には出ない。俺は珍しいから、また前の愚かな姫のような輩にさらわれてしまうかもしれない」

自分の身くらい自分で守りたいが、手練れの者にかかると、前のようにスリープで眠らされて連れ去れれるかもしれない。

「今日はせっかくの休日だし、ゆっくりしよう」

「ああ」

京楽と浮竹は、ごろごろしていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。

浮竹は夢を見ていた。

夢の中では、自分と同じ姿をした青年が、ムーンホワイトドラゴンの姿の浮竹をきらきらした瞳で見つめていた。

『何度見ても、綺麗でかっこいい』

「お前は?」

『俺は浮竹十四郎。異能力者の京楽の元にいる。異能力者の犯罪を取り締まっているんだ』

「イノウリョクシャ?」

浮竹にはちんぷんかんぷんで、説明してくる青年の言葉は頭に入ってこない。

「ああ、もう行かないと」

『また、夢でいいから会えるか?』

「さぁ、どうだろう。強く念じれば、会えるんじゃないか」

浮竹は、青年が見かけより幼いと分かり、優しく声をかけた。

「これをやる」

それは、浮竹の羽毛だった。

「魔力がこめられている。使えば、一度だけ身を守ってくれるだろう」

『そうなのか!いいのか、こんな価値のあるものをもらっても!」 

「俺には京楽がいる」

『じゃあ、またなドラゴンの俺!』

手を振って、青年は姿を消してしまった。

「ん・・・・夢、か・・・・・・」

浮竹は、寝ぼけ眼で隣で寝ていたはずの京楽の姿を探す。

どうやら買い物に出かけてしまったようで、一人での外出を禁じられている浮竹は、あくびをしながらもう一度眠った。

「浮竹、浮竹、起きて。もう夕方だよ?」

「え、もうそんな時間なのか。昼寝しすぎた!」

「ふふ、何かいい夢でも見ていたの?顔がにまにましていたよ」

「べ、別にお前のことを夢に見ていたわけじゃないからな!」

そう言いながら、尻尾をぶんぶんと振る浮竹に、京楽はその頭を撫でた。

「ごめんね、一人での外出禁じて。でも、安全のためだから」

「いい。一人で留守番もできる」

「今日は君が寝ていたから連れ出さなかったけど、なるべく一緒に外に出るようにするよ」

「本当か?約束だぞ」

「うん、約束」

指切りをして、京楽が作ってくれたカルボナーラを食べる。

「うまい。おかわり!」

「あーあー、浮竹、口にべっとついてるよ?」

京楽はナプキンで浮竹の口をぬぐってやり、その頭を撫でる。

「京楽は、なんで俺の頭を良く撫でるんだ?」

「愛情のスキンシップだよ。それより、キスのほうがいい?」

聞かれて、浮竹は真っ赤になる。

「頭を撫でるでいい・・・・」

「ふふ、かわいいね」

「京楽のバカ」

カルボナーラのおかわりを食べつつ、浮竹はそっぽをむく。

「浮竹、大好きだよ」

耳元で囁かれて、京楽はカルボナーラを食べ終わると、京楽から距離をとる。

「俺も大好きだ、ばか!」

尻尾をぶんぶん振って、浮竹は先にお風呂に行ってしまった。

「ふふ、浮竹は本当にかわいいなぁ」

京楽は、浮竹のあとを追って一緒にお風呂に入るのであった。

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