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恋次がワン

白哉は、涅マユリが残していった、飲めば犬化するという薬をじっと見ていた。

以前、夜一に猫になる薬を酒に混ぜられて、恋次に盛られて大変な目に合ったのを覚えているので、さてどう処分しようかと困っていた。

とりあえず、お茶に入れてみた。

恋次が飲むかなと思って。

そう思っていると、恋次が部下たちの剣術の指導を終えて、執務室まで戻ってきた。

9月も終わりにさしかかっているとはいえ、まだ昼は暑く、動けば余計に暑い。

「お、お茶だ。もらいますいね」

「あ、恋次、それには」

「ん?」

恋次は、ボフンと音をたてて変身した。

「ぎゃああああ、なんじゃこりゃあああああああ」

「ぶっ」

恋次の頭に犬耳がつき、尻には犬の尻尾ができた。

犬種にすると、柴犬といったところだろうか。

白哉は、恋次のその姿がツボに入ったのか、一度吹き出した後、声もなく笑っていた。

「たいちょおおおおお」

犬の耳がピンと立ち、尻尾がぶんぶん揺れる。

「涅隊長の作った変な薬、お茶に混ぜましたね?」

「兄には犬がお似合いだと思ってな」

「なにおう?」

恋次は、少し怒ったようであったが、尻尾は嬉しそうにばっさばっさと振られっぱなしであった。

「ドッグフードでも食うか?」

「いりません」

犬耳がへにゃりとなる。

「ほら、とってこい」

「わんっ」

白哉が丸めた布を中庭に投げると、恋次は口でくわえてそれを取ってきた。

「‥‥‥くくくく」

白哉は、腹が痛いとばかりに笑い、空気を求めて口を開く。

「ひゃっ」

恋次が、ぺろぺろと舐めてきたのだ。

「れ、恋次?」

「ワン!」

恋次は、思考まで犬化したようで、白哉を押し倒して顔を舐める。

「んっ、やめよ」

「くぅ~ん」

ぼふんと音を立てて、恋次は完璧な柴犬になっていた。衣服ごと変身したらしく、死覇装はなかった。

白哉は、清家を呼んで、犬の服とリードを届けてもらった。

犬の服を恋次に着せて、リードを恋次に装着して、白哉は6番隊から外に出て、散歩をはじめた。

「わん、わん!」

「恋次」

「わん」

やがて時間が経ち、恋次が犬耳尻尾がある状態まで戻る。

「ぬおおお、苦しい!」

リードと服にしめつけられて、恋次はそれを逞しい体躯のせいでぶちぶちとちぎってしまった。

「ちょっと、隊長!」

「のほうが」

「え?」

「柴犬でいたほうが、かわいかったのに」

その声に、恋次がガーンとショックを受ける。

犬耳をペタンとして、尻尾もへにゃりとなる。

「犬になった兄は、嫌いではない」

「隊長!」

恋次が犬の尻尾をばっさばっさと振って、白哉を抱きしめる。

「言っておくが、させないからな」

恋次に釘をさす。

恋次犬耳と尻尾がへにゃりとなる。

「キスとハグまでなら、許す」

「ワン!」

恋次は、本当によく犬が似合っていると白哉は思った。

常日頃から、駄犬だと思っていた。

だが、柴犬だったとは。

駄犬にしては、かわいい犬種ではないかと思うのだった。



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