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教師と式10

浮竹は、たまに鬼の浮竹と鬼神の京楽が新しく住み始めた、自分の所有している高級マンションに顔を出すが、いつもは教師として多忙な毎日を送っていた。

その合間に祓い屋としての裏家業もするので、浮竹には休みという日があまりない。

その日は珍しく連休で、日ごろの疲れを癒そうと思っていたのだが、昔知り合った天狗が助けを求めてきた。

「助けてください、浮竹様。同じ天狗の子供が、風神様を怒らせてしまって、村が壊滅状態なのです」

「風神?」

「はい。もとはただの鎌鼬(かまいたち)でした。何百年も齢を重ねて、風神様になったのです」

「祓っていいのか?」

浮竹が、念のために聞いてみる。

「祓うというか封印するしかないでしょ。仮にも神になったのなら、封印だよ、浮竹」

京楽が、天狗の傷を見て生気を分けてやり傷を癒す。

「私も京楽の意見に賛成だ。神を祓うと災いが起こる」

白哉も京楽と同意見なようで、風神は封印するということで一致した。



「ここが村です」

「わぁ、派手にやられたねぇ」

煉瓦作りの家は、粉々になって倒れている。

幸い、死者はいないようで、風神を怒らせた天狗の子供も他の天狗たちと共に森に避難していた。

風神として祭られていた鎌鼬は、今も村を荒らしまくっていた。

「風神よ、聞こえるか。もう十分だろう。おとなしく自分の祠に帰れ!」

「天狗の子を探している。ずたずたに引き裂くまでは帰らぬ」

「このままでは、俺はお前を封印しないといけない。祠でおとなしく眠りについてくれないか」

「ふはははは、人間ごときの分際がこの風神様を封印するだと?」

風神は、狂ったように笑い、そのたびに竜巻が発生する。

「君が殺そうとしている相手は、ボクを式にしている術者だよ」

「なに、桜神の京楽か!ええい、忌々しい」

「私もいることを忘れないでほしいものだ」

「何、狂い咲きの冬の椿の王ではないか。なぜ、お前たちのような強く有名なあやかしが、人間風情の式に‥‥‥」

風神は、もしかして自分はすさまじい相手を敵に回したのだろうかと思うが、人間ごときを殺すなど容易いと、残っていた村の家をつぶしまくる。

「仕方ない、封印しよう。京楽、お前の血をもらえるか」

「もちろんだよ」

神の名をもつ者ほどの封印となると、浮竹一人の力ではかなわない。

京楽の血で陣を描き、その上に白哉が重ね書きをするように血を滴らせた。

浮竹も、自分の血を陣にまぜこむ。

あやかしと祓い屋の血でできた陣は、強力な鎖となった。

赤い鎖は風神を縛り付けて、大地に転がす。

「がああああ!我を風神と知っての狼藉かあああ!」

「浮竹、早く封印して帰ろう。最近休暇とれてないでしょ」

「ああ、そうだな。縛!」

「ぎゃあああああああああああ」

風神は、人の頭ほどの石に封じ込められた。

「この石を、風神の祠に入れておいてくれ。封印は200年はもつだろう。その頃には、風神も怒りを忘れているはずだ」

「すみません、浮竹様。式の方々。お礼をしたいのですが、今回禁を破って風神様の住処であられる祠を壊した天狗の子を、一緒に連れて行ってほしいのです。名前は、茉莉(まつり)。浮竹様の式にでもしてください」

浮竹と京楽と白哉は顔を見合わせる。

浮竹の屋敷はあやかしによって管理されているし、あやかしを居候させている。

プールには水虎、屋根裏部屋には座敷童、ペットして猫又。今更一人加わったところで、あまり大佐はない。

「式にするにはまだ力不足だ。屋敷に寝泊まりして修行してもらう。茉莉、それでいいか?」

「はい、浮竹様。助けられたこの命、いつか式となってお返しします」

「あーあ。浮竹ってば、天然のたらしなんだから」

「何か言ったか、京楽」

「殴ってから言わないでよ!」

浮竹は、京楽を殴った拳をさする。

「石頭だな?」

「ふふん、桜神のあだなは伊達じゃないよ」

「関係ない気もするが」

そこへ、白哉が椿の刀をだして、浮竹に見せる。

「流れた主の血を吸いたいといっている。よいか?」

「ああ、白哉の刀は妖刀だったな。いいぞ」

陣に混ぜられた浮竹の血だけを器用に妖刀は吸い取り、刃を赤くする。

「これで、私の力も増えた。礼をいう、主」

「ボクにも。ボクにも浮竹の生気ちょうだい?」

「疲れるからいやだ。おいで、茉莉。今後の家となる館に戻るから、車にのるんだ」

「はい、浮竹様!」

「天狗の子よ、主様と呼べ。名は軽々しく口にしていいものではない」

京楽はしょっちゅう浮竹の名を呼ぶが、名を呼ぶにはあやかしの場合は力がいる。

「主様、京楽様、白哉様、今日からお世話になります」

館に戻ると、茉莉の住処は座敷童と同じ屋根裏部屋となった。

食事などは自力でどうにかするらしいので、館を管理しているルキアや海燕の負担にはならない。

「しかし、あやかしが増えてきたな‥‥今度、何かを式jするために出かけるか」

「浮竹の式は、ボク一人で十分だから!」

「白哉もいる。あと、偵察用に鳥の式がほしい」

「じゃあそこら辺の雀でも」

「ああ、それもいいな。八咫烏でも捕まえようかと思っていたが、雀に霊力と妖力を注ぎ込んであやかしにしてしまって式にしてしまおう」

浮竹は、呪符で飛んでいた雀を一羽捕まえると、霊力を注ぎ、勝手に京楽の妖力も注ぎ込んだ。

「チュン、チュンチュン」

「お前は、今日から俺の式のチュン太だ」

浮竹にネーミングセンスはない。

「あはは、かわいい‥‥‥って、ボクの頭つつかないで!ボクは食べものじゃないよ!」

「お腹がすいているんだろう。米粒をやるからおいで」

「チュン!」

「ちっ、雀なら浮竹を取られることないと思ったのに。浮竹ってば、天然のたらしの上にあやかしに好かれるからなぁ。身を守ってあげるボクも、頑張らないと」

京楽は、そう言って浮竹の消えていったほうへ歩いていくのだった。




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