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教師と式8

浮竹は、刑事の浮竹と会っていた。

「お前、少しずつあやかしに近くなっているんじゃないのか」

『え』

「鬼神の京楽の血を与えられたんだろう。神の力は強い。お前は今、限りなくあやかしに近くなっている」

刑事の浮竹は、他者に言われて、ショックを受けたような顔をする。

『ちょっと、ボクの浮竹を惑わすようなこと言わないで』

「鬼神の京楽。お前はあやかしであると同時に神でもある。そんな強い者の血を与えたら、普通の人間がどうなるかくらい分かってたはずだ」

浮竹は、神鬼の京楽を見る。

『でも、血を与えなきゃ浮竹は死んでいたよ』

「きっと、鬼神のボクには他に選択肢がなかったんだよ。ボクも、浮竹の命が危うくてボクの血で助かるなら、たとえあやかしになると分かっていても、血を与えるよ?」

「京楽‥‥‥‥。刑事の俺、すまない。せっかく知り合ったのに、あやかしに落ちていくのが少しいやだっただけだ」

そう言って、浮竹は刑事の浮竹のマンションを式である京楽と一緒に去っていった。マンションの外で待機していた白哉と合流する。

「白哉」

「なんだ、主」

「あの京楽は、禍福司る鬼神にであっているよな?」

「主の言う通りだ。あれは幸福と同時に不幸を招く。兄も、あまり近寄らないほうがいいかもしれぬ」

「でも、知りあちゃったしなぁ。刑事の俺にはなくてはならない存在だろうし」

「それって、つまりはボクと浮竹みたいに?」

京楽が、浮竹を抱き寄せる。

それを、白哉は黙ってみていた。

「あれ、どうしたの白哉くん。いつもなら邪魔するのに」

「恋次に、愛する者同士の仲を裂くのは悪いことだからやめておけと言われた」

白哉はやや頬を赤くしながら、恋次の言葉を思い出していた。

「あらぁ、白哉くんにも春が?」

「う、うるさい」

白哉は京楽に雷を落とす。

「もぎゃあああああああああ」

「まったく、兄はデリカシーというものを知らぬ」

「はいはい、そこまで。今回の依頼の場所に行くよ」

雪の国で娶った雪女が、連日の猛暑で弱っているのでなんとかしてほしいという依頼だった。

依頼には、あやかし退治以外にも、あやかしを救ってくれとかいうものもある。

あやかしから依頼を受けることもあるし、浮竹が勝手にあやかしのことに手をかしてやることもあった。

「この猛暑だと、雪女だとさすがに溶けるでしょ」

「そうさせないのが今回の依頼であろうが」

言い合いをする京楽と白哉を連れて、依頼人の家にいくと、割と裕福なのか大きな家だった。

浮竹の屋敷と比較するとそれでも小さいほうだが。

「すみません、依頼を受けてきた浮竹です」

チャイムを鳴らしてそう伝えると、家の主が慌てて飛び出してきた。

「助けてください!雪花(せっか)が溶けそうなんです!」

家の中を案内されると、冷蔵庫の冷凍庫に半身をつっこんで、だらだらと溶けている雪花という雪女を発見する。

「これは‥‥‥熱中症だな」

「え、雪女にも熱中症はあるんですか」

「なるべく大きめの冷凍庫を買って、数日その中で過ごさせるといい。室内もクーラーをつけて25度以下に下げているといいだろう」

「今にも溶けて成仏しそうだから、仕方ないから生気を分けてあげる」

京楽が生気を雪花に与えると、雪花は意識を取り戻した。

「ああ、命の恩人のあやかし。素敵‥‥」

「へ?」

「雪花、君には俺がいるじゃないか!」

「私を溶けそうになるまで放置するあなたなんて知らないわ。桜の花鬼のお方、どうか私と夫婦の契りを」

「いや、ボクは浮竹のものだし」

「雪花とやら、京楽にちょっかいを出すなら、俺が祓うぞ」

浮竹は、眉間にしわを寄せて呪符を取り出す。

「ひいいいい、祓い屋あああ。あなたああああああ」

「雪花、大丈夫だ。大きな冷凍庫をすぐに買うから、それまで我慢してくれ」

雪花は京楽に生気を分け与えられて、とりあえず溶けて死ぬことはなさそうだった。

「一度契ったのであれば、他者を好きにならないことだ。京楽に手を出されると主が悲しむ。京楽に手を出したら、私が許さぬ」

白哉が珍しく京楽を庇ってくれるので、京楽は感動する。

「白哉くん、ボクのために‥‥」

「違う。主である浮竹のためだ。兄のためではない」

とりあえず、浮竹は雪花が家から出れないように結界をはった。

「妖力が戻れば、この結界も通り抜けれるだろう。だがこの猛暑だ。外にはなるべくでるな」

「冷凍庫、もうすぐ届くそうです!」

「ああ、あなた‥‥‥桜の花鬼の力があれば、外にも自由に出入りできるのに。残念だわ」

「雪女の嫁、しかも人妻なんてごめんだよ」

京楽は、雪花を軽蔑した瞳で見下す。

「依頼料はいらない。帰ろう、京楽、白哉」

「あ、依頼料のほうは郵送で送っておきますので!」

依頼人の声を無視して、浮竹は外に出る。

「気分が悪い。熱中症のようだ」

白哉がふらついて、浮竹にもたれかかる。

「白哉は冬の椿の花鬼だものな。寒さには強いが暑さには弱い。家に戻って、クーラーの効いた部屋で俺がかき氷を作ってやろう」

「ボクの分は?」

「仕方ないなぁ。ついでに作ってやる」

少し弱った白哉は、呪符に戻る。

今年の猛暑も、まだまだ続きそうであった。


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