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教師と式2

「浮竹先生~」

「浮竹先生!」

「浮竹せんせー」

浮竹は、5年のクラスの担任教諭をしていて、今日も朝から子供たちは元気で、浮竹になついていた。

「浮竹せんせ‥‥‥相談したいことがあるんです」

「どうしたんだい?」

「私のお父さんの管理している池に河童が出るんです。お友達になったんだけど、開発工事がもちあがって、河童さんが怒って工事の人を襲ちゃって‥‥‥」

浮竹は、裏の稼業の祓い屋を隠していなかったので、生徒や親からも時折あやかし絡みのことを相談された。

「どこの池か分かるかな?」

「立田池です」

「分かったよ。河童さんは俺がなんとかしてみせよう」

「ほんとですかせんせ!殺したりしないでね?私の友達なの!」

「ああ。話して説得させてみせるよ」

授業が終わり、子供たちが帰っていく。

河童のことを相談してきた女子児童も、ちらちらと浮竹の顔を見ながら帰っていった。

「河童なんて、祓っちゃえばいいのに」

京楽が人型をとって現れる。

「殺さないと約束してしまったからな」

「甘いねぇ、浮竹は。河童でも、人を溺れさせて殺すことだってできる。中には人を食うやつもいる」

「分かっている。立田池にいくぞ」

「はいはい」

浮竹はその日の教師としての仕事を終えて、立田池にやってきた。

「ここは俺の縄張りだ!」

さっそく河童が出てきた。

「お前も、工事関係のやつか。怪我したくなかったら、出ていけ」

「君の友達の女の子に頼まれてね。君を説得にきた」

「はるかのことか?」

河童は、池からあがって浮竹に近づく。

「それ以上、近づかないでね。浮竹に触れたら、塵になるよ?」

「京楽、たかが河童に」

「河童でも、あやかしには変わりない」

「これ、やる」

「ん?」

河童は、何かを浮竹にさしだした。

それはキュウリだった。

「はるかの知り合いなら、悪いやつじゃないはずだ」

「うん。この池はもう開発で埋められてしまうから、違う池に移動しないか?他に河童も他のあやかしもいない綺麗な池を知っているんだ」

それは、浮竹の住む屋敷の近くの池だった。

土地は浮竹のものなので、河童を移住させるには安全だろう。

「ここから移動しても、はるかに会えるか?」

「ああ。俺が、はるかちゃんを呼んできてあげよう。何度でも会えるだろう」

「なら、移住する」

浮竹は胸をなでおろす。

「浮竹、甘いよ。そいつ、人を食ってる」

「う、くそっ」

「まさか。食ったのか。河童なのに、人を」

「工事のやつらが悪いんだ!見せしめに一人食った」

「はるかちゃんとの誓いは守れそうにないな」

浮竹は、残念そうな顔になる。

「人を食ったと知って、退治する気だな!お前も食ってやる!」

「浮竹、下がって」

「京楽、でも」

「もう、こいつはただのあやかしじゃない。人を食った悪いあやかしだ」

「ああ、分かっている。祓おう」

浮竹は、京楽の手を握る。

「ボクに生気を吸われて干からびるといい」

「お前は、桜の花鬼!?超上級妖怪じゃないか!そんなやつが、なぜ人間ごときの式に!」

河童は、京楽から離れようとするが、浮竹がいつの間にか描いていた円陣のせいで動けない。

「あああああ、ぎゃあああああ」

河童の体がみるみるしぼんでいく。

「まぁ、浮竹の教え子の友達みたいだし、命の全てまでは奪わないでいてあげる」

河童は、蛙の大きさにまで縮んでいた。

「けろけろっ。おのれ、桜の花鬼、覚えていろだけろっ」

浮竹は蛙になった河童を捕まえて、自分の屋敷の近くにある池に離した。

「力が戻るまではこの姿だ。はるかにもそう伝えておいてくれ」

「分かった。もう、人を食うんじゃないぞ。今度人に害をなしたら、京楽が塵にするからな」

「分かったけろ」

「ボクも甘くなったかなぁ。塵にするつもりだったのに、君の教え子と友達だって聞いて手加減しちゃった」

京楽は、浮竹を抱きしめる。

「おい、京楽」

「いいじゃない。ここは浮竹の敷地。誰もこない」

「誰もこずとも、同じ式である私が見ているのだが」

「やあ、白哉くん。元気?」

「兄は、主を自分のものにしすぎだ」

白哉は、浮竹と京楽を引き離す。

「あ、白哉ありがとう」

「主、兄は京楽に甘すぎだ。人を食らいつくす桜の花鬼だと、ちゃんと理解しているのか」

「いやまぁ、理解はしているぞ。俺には危害はくわえてこないし」

「ボクは、浮竹に惚れて藍染の式から浮竹の式になったからね」

「藍染か‥‥‥強いが、酷い術者だ。冷酷で残忍で」

浮竹は、嫌そうな顔をし。

「浮竹、兄も気をつけるといい。式に裏切られて、きっと藍染は兄にいい感情を抱いていない」

「ああ。でも、俺には白哉や京楽がいるからな」

「そうだよ。藍染を裏切る時、ちょっと老化の術かけておいたから、少しは老けて力も弱くなってるんじゃないの」

「藍染一門の当主でもあるし、その程度の術ではなんにもならんだろう」

浮竹は、京楽に抱きしめられていた。

「藍染は、自分の式でも役に立たなかったら殺す。それが怖かったわけじゃないけど、君を見つけた。ボクは、ずっと君を探していたよ」

「?京楽、なんのことだ」

「ううん、浮竹はまだ知らなくていいことだよ」

京楽は、浮竹に口づける。

白夜が渋い顔になる。

「白哉、呪符に戻れ」

「しかたあるまい‥‥」

白夜が消えて、京楽は浮竹と手を繋いで、浮竹の屋敷へと帰っていくのだった。

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