教師と式3
それは浮竹が誕生する前に遡る。
今から27年前、浮竹が生まれる前に京楽は大切な人を失った。
その名も浮竹十四郎。今の浮竹と同じ名前、容姿をした人物だった。京楽はその浮竹を愛していた。愛しすぎるあまり、桜の花鬼をやめて人間になりかけていた。
だが、病で前の浮竹十四郎は他界する。
京楽は嘆き悲しみ人を襲っては生気を吸いつくした。そして、退治にやってきた前の主であった藍染と知り合った。
藍染は、京楽に魂の輪廻を教えた。代わりに、藍染の式になることを了解した。
京楽は、金のありそうな大富豪の娘を見繕い、妊娠しているのを確認して、その腹に浮竹の魂をいれた。
生まれてくる子は浮竹十四郎という名にするようにも、準備した。
やがて生まれてきた赤子は、前の浮竹のように白い髪に緑の瞳をした、前の浮竹となんら変わらぬ人間の赤子だった。
その成長を見守り傍にいたかったが、藍染の式になる約束をしていたので、傍にはいれなかった。それでもどうしても会いたくなったら、藍染が京楽から浮竹の記憶を封印した。
それから25年の年月が経ち、京楽は浮竹と再び出会った。
術者の会合で、藍染の式として藍染に従っていた京楽は、前の浮竹のように祓い屋になってしまった浮竹を見て、藍染を裏切り浮竹の式となった。藍染によって京楽の封印されていた浮竹の記憶は鮮やかに蘇っていた。
藍染は怒らなかった。
ただ、浮竹と京楽を面白うそうに観察していた。
だが、藍染は京楽の力を認めていたので、幾度ももう一度自分の式になれと言ってきたが、無視していたし、力づくの時は追い返していた。
京楽は、藍染の式の中でも3本の指に入る強力な式だった。
京楽は再び浮竹と出会い、2年の月日が流れ、浮竹は教師をしながら祓い屋を続けていた。
浮竹の中には、前の浮竹の記憶がない。
魂の輪廻は、記憶も継承すると言われていたが、浮竹の中の京楽は、自分の式であった。
ただ、お互い恋に落ちた。
京楽は、前の浮竹の記憶が戻らなくてもいいと思っていた。
病で早世した前の浮竹とはとても仲睦まじく、幸せだったが今も十分に幸せだった。
魂の輪廻は成功し、性格まで前の浮竹と同じだった。
「藍染は嫌いだけど、彼には感謝かな。また浮竹と巡り会えた」
京楽と夜を共にした浮竹は、すうすうと静かな寝息をたてて眠っていた。
「浮竹‥‥‥今度は、死ぬときは一緒だよ。ボクは桜の花鬼として400年以上生きてるけど、寿命は君と一種にした」
京楽は、浮竹の長い白髪を撫でる。
「愛してるよ、浮竹」
-------------------------------------------
「座敷童?」
「はい。私の叔父の一族が束縛している座敷童を、解放してください」
その日は教師の仕事は休みで、依頼人がきていた。
「そんなことをすると、幸福は逃げていくがいいのか?」
「かまいません。十分に潤いました。結界で束縛された座敷童の様子が変なんです。日に日に弱っていく。このままでは、きっと死んでしまう」
「分かった。では、その座敷童は俺が責任をもって、解放しよう」
「ありがとうございます」
「なーんだ、てっきり依頼だから何かを祓うのだと思ったのに」
京楽は、話を聞いてつまならなさそうにしていた。
京楽は強い。牛鬼さえもすぐに干からびさせるほど生気を吸い取る力をもつ。力の使い方次第では、死にかけた者を癒すこともできるだろう。
前の浮竹十四郎は、どんなに生気を注いでも憔悴して死んでしまったが、今なら浮竹が病気になっても回復できる自信があった。
「住所は‥‥‥」
依頼人の叔父の家に、無断であがりこんだ浮竹と京楽は、止められることを無視して、座敷童のいる部屋にくると、猛烈な妖気に立ち眩みをおこしそうになっていた。
「これは‥‥‥座敷童が、憔悴しているのは邪神になりかけているせいか」
「長い間閉じ込められていたんだよ。無理もない」
「座敷童様に何をする気だべ”!?」
依頼人の叔父を結界に閉じ込めて、とりあえず邪魔者をいなくする。
「座敷童、意識はあるか」
「あ‥‥‥私は自由になりたい。なれないなら、死にたい。でもできなくて、邪神になりかけているのを自分で止めれない」
「座敷童‥‥‥」
「私を自由に。どうかどうか」
座敷童は、5歳くらいの女の子だった。
結界でがんじがらめにされていて、その部屋から外に出れなかった。
「君を自由にしてあげよう。この結界はボクが吸いとる」
京楽は、強固な結界を生気を吸い取る容量で吸い込んで消してしまう。座敷童は、目を瞬かせた。
「私は自由になれたのか?」
「そうだよ。さぁ、好きなところにおいき」
「では‥‥しばらくだけ、術者、あなたの元で厄介になる」
「え」
浮竹と京楽は目を合わせあった。
「自由になったんだぞ?何も俺についてこなくても」
「私は、存在して幸福を呼ぶことでしか礼をできない。だから、あなたの家にしばらく居つく」
「分かったよ。好きにして」
「京楽!」
浮竹が、京楽を見る。
京楽は、浮竹の手を握る。
「ボクは浮竹と幸せになりたい。かなえてくれる?」
「あなたはすでに幸せだ。これ以上、幸せを上げることは少ししかできない」
「やっぱそっかーーー。ボクは浮竹と両想いになれただけで幸せだからねぇ」
「おい、京楽、人がいるんだぞ!」
結界に閉じ込められた、依頼人の叔父がいたが、音は聞こえていないようだった。
「聞こえちゃいないよ。さぁ、帰ろうか、浮竹。それに座敷童の‥‥名前はなんていうの?」
「彼方(かなた)」
「そう。彼方ちゃんも浮竹も帰ろうか。依頼は座敷童に自由を与えること。ボクらについてくるのはこの子の意思。依頼は達成だよ」
「しかし‥‥」
「浮竹という人の子よ。私の力が欲しくないのか。私はさらに富をもたらすぞ」
浮竹は首を横に振る。
「金は、両親が残したものがたくさんある。富なんて、いらない。しいていえば、術者としての力が欲しいかな」
「むう、それは私にはかなえられぬ願いだ」
「彼方ちゃん、君はそんなことしなくていいんだよ。ルキアちゃんに頼んで、新しい衣服作ってもらおうと思うんだけど、どう思う、浮竹?」
「ああ、いいんじゃないか」
朽木白哉の義妹である朽木ルキアは、浮竹の屋敷のメイドだった。
執事もいて、志波海燕という。
浮竹の両親は早くに他界してしまい、一時期浮竹は全寮制の学校に放り込まれたが、無事卒業して財産を我が物顔でとっていたいた父の兄から財産を返してもらい、大きな洋館に住んでいた。
家事は主にルキアと海燕がしてくれる。
最近は京楽が料理にこっていて、まだ不慣れだが夕食の料理を作ってくれた。
「ただいま」
「おかえりなさいませ、浮竹様」
「おかえりさないませ、ご主人様」
海燕とルキアに出迎えられて、浮竹は二人に彼方を紹介する。
「しばらくこの屋敷に居つくことになった座敷童の彼方だ。ルキア、すまないが洋風のこの彼方にあいそうな服を作ってくれないか」
「分かりました、ご主人様」
「ルキア、前々からご主人様と呼ばなくていいと言ってるのに」
京楽の背後から、白哉が顔を出す。
「ルキア、何か不自由はないか」
「いいえ、兄様。何も不満はありません」
ルキアも海燕もあやかしだ。海燕は朝顔の花鬼で、ルキアは白哉と同じ椿の花鬼だ。
「ルキアちゃん、今晩も浮竹の夕食はボクが作るから。ルキアちゃんは、自分たちの分を用意しててね」
式である京楽と白哉も、人のように食事をする。
花鬼は、光合成だけで生きていけるが、京楽や白哉ほどのクラスになると人の食事も必要になる。
くわえて、京楽は花鬼の中でも最強と謡われる桜の花鬼である。人の生気を吸って生きている。普段は人ゴミに入って少量の生気を大量にもらうのが月に一度くらい。浮竹も、京楽に生気をあげているが、消耗しすぎると逆に京楽から生気を分け与えられた。それは怪我をしたときや風邪にかかった時などもだ。
「京楽、今日の飯はなんだ?」
「カレー」
「この前もカレーだっただろう」
「あれは甘口の牛肉のやつ。今日作るのはシーフードの辛口のやつ」
「ふむ。できあがるまで、読書でもしとく」
「浮竹、兄が欲しがっていた本を手に入れたぞ」
「お、本当か白哉!」
京楽に興味をなくして、白哉のほうに行く浮竹に、京楽は少し悲しくなる。
「すっごいおいしいカレー作るからね!」
京楽はそう言い切ったが、できあがったカレーは普通だった。
「普通だな」
「兄もそう感じるか。私も普通だと思う」
「ちょっと、白哉くんはルキアちゃんの料理食べときなよ」
「ルキアの料理はもう食した。たりないので、京楽、兄の作るものを食べている」
白哉は、見た目は華奢だがけっこう食べた。
「普通で悪かったね!ボクが作れるのは今はここまでだよ」
ふっと、浮竹が微笑んだ。
「普通だが、それなりにおいしかった。明日の夕飯も楽しみにしている」
「浮竹‥‥‥」
京楽は、浮竹に抱きつく。
ちなみに朝食はルキアが、昼食は普段は学校の給食で、休みの日もルキアが作る。
夕食だけ、京楽が作った。
「暑苦しい。ひっつくな」
「これはハグしてるんですう」
「もう十分だろう。離れろ」
心なしか、浮竹は赤くなる。
「浮竹、照れてるの?かわいいね」
「そ、そんなんじゃないんだからな!」
そんなやりとりを、白哉がため息をつきながら見ているのだった。
ルキアや海燕も、何気に見ていた。
浮竹十四郎27歳。職業小学校教師兼祓い屋。
好きなものは桜。
それから好きな人というかあやかしは、京楽春水。
今から27年前、浮竹が生まれる前に京楽は大切な人を失った。
その名も浮竹十四郎。今の浮竹と同じ名前、容姿をした人物だった。京楽はその浮竹を愛していた。愛しすぎるあまり、桜の花鬼をやめて人間になりかけていた。
だが、病で前の浮竹十四郎は他界する。
京楽は嘆き悲しみ人を襲っては生気を吸いつくした。そして、退治にやってきた前の主であった藍染と知り合った。
藍染は、京楽に魂の輪廻を教えた。代わりに、藍染の式になることを了解した。
京楽は、金のありそうな大富豪の娘を見繕い、妊娠しているのを確認して、その腹に浮竹の魂をいれた。
生まれてくる子は浮竹十四郎という名にするようにも、準備した。
やがて生まれてきた赤子は、前の浮竹のように白い髪に緑の瞳をした、前の浮竹となんら変わらぬ人間の赤子だった。
その成長を見守り傍にいたかったが、藍染の式になる約束をしていたので、傍にはいれなかった。それでもどうしても会いたくなったら、藍染が京楽から浮竹の記憶を封印した。
それから25年の年月が経ち、京楽は浮竹と再び出会った。
術者の会合で、藍染の式として藍染に従っていた京楽は、前の浮竹のように祓い屋になってしまった浮竹を見て、藍染を裏切り浮竹の式となった。藍染によって京楽の封印されていた浮竹の記憶は鮮やかに蘇っていた。
藍染は怒らなかった。
ただ、浮竹と京楽を面白うそうに観察していた。
だが、藍染は京楽の力を認めていたので、幾度ももう一度自分の式になれと言ってきたが、無視していたし、力づくの時は追い返していた。
京楽は、藍染の式の中でも3本の指に入る強力な式だった。
京楽は再び浮竹と出会い、2年の月日が流れ、浮竹は教師をしながら祓い屋を続けていた。
浮竹の中には、前の浮竹の記憶がない。
魂の輪廻は、記憶も継承すると言われていたが、浮竹の中の京楽は、自分の式であった。
ただ、お互い恋に落ちた。
京楽は、前の浮竹の記憶が戻らなくてもいいと思っていた。
病で早世した前の浮竹とはとても仲睦まじく、幸せだったが今も十分に幸せだった。
魂の輪廻は成功し、性格まで前の浮竹と同じだった。
「藍染は嫌いだけど、彼には感謝かな。また浮竹と巡り会えた」
京楽と夜を共にした浮竹は、すうすうと静かな寝息をたてて眠っていた。
「浮竹‥‥‥今度は、死ぬときは一緒だよ。ボクは桜の花鬼として400年以上生きてるけど、寿命は君と一種にした」
京楽は、浮竹の長い白髪を撫でる。
「愛してるよ、浮竹」
-------------------------------------------
「座敷童?」
「はい。私の叔父の一族が束縛している座敷童を、解放してください」
その日は教師の仕事は休みで、依頼人がきていた。
「そんなことをすると、幸福は逃げていくがいいのか?」
「かまいません。十分に潤いました。結界で束縛された座敷童の様子が変なんです。日に日に弱っていく。このままでは、きっと死んでしまう」
「分かった。では、その座敷童は俺が責任をもって、解放しよう」
「ありがとうございます」
「なーんだ、てっきり依頼だから何かを祓うのだと思ったのに」
京楽は、話を聞いてつまならなさそうにしていた。
京楽は強い。牛鬼さえもすぐに干からびさせるほど生気を吸い取る力をもつ。力の使い方次第では、死にかけた者を癒すこともできるだろう。
前の浮竹十四郎は、どんなに生気を注いでも憔悴して死んでしまったが、今なら浮竹が病気になっても回復できる自信があった。
「住所は‥‥‥」
依頼人の叔父の家に、無断であがりこんだ浮竹と京楽は、止められることを無視して、座敷童のいる部屋にくると、猛烈な妖気に立ち眩みをおこしそうになっていた。
「これは‥‥‥座敷童が、憔悴しているのは邪神になりかけているせいか」
「長い間閉じ込められていたんだよ。無理もない」
「座敷童様に何をする気だべ”!?」
依頼人の叔父を結界に閉じ込めて、とりあえず邪魔者をいなくする。
「座敷童、意識はあるか」
「あ‥‥‥私は自由になりたい。なれないなら、死にたい。でもできなくて、邪神になりかけているのを自分で止めれない」
「座敷童‥‥‥」
「私を自由に。どうかどうか」
座敷童は、5歳くらいの女の子だった。
結界でがんじがらめにされていて、その部屋から外に出れなかった。
「君を自由にしてあげよう。この結界はボクが吸いとる」
京楽は、強固な結界を生気を吸い取る容量で吸い込んで消してしまう。座敷童は、目を瞬かせた。
「私は自由になれたのか?」
「そうだよ。さぁ、好きなところにおいき」
「では‥‥しばらくだけ、術者、あなたの元で厄介になる」
「え」
浮竹と京楽は目を合わせあった。
「自由になったんだぞ?何も俺についてこなくても」
「私は、存在して幸福を呼ぶことでしか礼をできない。だから、あなたの家にしばらく居つく」
「分かったよ。好きにして」
「京楽!」
浮竹が、京楽を見る。
京楽は、浮竹の手を握る。
「ボクは浮竹と幸せになりたい。かなえてくれる?」
「あなたはすでに幸せだ。これ以上、幸せを上げることは少ししかできない」
「やっぱそっかーーー。ボクは浮竹と両想いになれただけで幸せだからねぇ」
「おい、京楽、人がいるんだぞ!」
結界に閉じ込められた、依頼人の叔父がいたが、音は聞こえていないようだった。
「聞こえちゃいないよ。さぁ、帰ろうか、浮竹。それに座敷童の‥‥名前はなんていうの?」
「彼方(かなた)」
「そう。彼方ちゃんも浮竹も帰ろうか。依頼は座敷童に自由を与えること。ボクらについてくるのはこの子の意思。依頼は達成だよ」
「しかし‥‥」
「浮竹という人の子よ。私の力が欲しくないのか。私はさらに富をもたらすぞ」
浮竹は首を横に振る。
「金は、両親が残したものがたくさんある。富なんて、いらない。しいていえば、術者としての力が欲しいかな」
「むう、それは私にはかなえられぬ願いだ」
「彼方ちゃん、君はそんなことしなくていいんだよ。ルキアちゃんに頼んで、新しい衣服作ってもらおうと思うんだけど、どう思う、浮竹?」
「ああ、いいんじゃないか」
朽木白哉の義妹である朽木ルキアは、浮竹の屋敷のメイドだった。
執事もいて、志波海燕という。
浮竹の両親は早くに他界してしまい、一時期浮竹は全寮制の学校に放り込まれたが、無事卒業して財産を我が物顔でとっていたいた父の兄から財産を返してもらい、大きな洋館に住んでいた。
家事は主にルキアと海燕がしてくれる。
最近は京楽が料理にこっていて、まだ不慣れだが夕食の料理を作ってくれた。
「ただいま」
「おかえりなさいませ、浮竹様」
「おかえりさないませ、ご主人様」
海燕とルキアに出迎えられて、浮竹は二人に彼方を紹介する。
「しばらくこの屋敷に居つくことになった座敷童の彼方だ。ルキア、すまないが洋風のこの彼方にあいそうな服を作ってくれないか」
「分かりました、ご主人様」
「ルキア、前々からご主人様と呼ばなくていいと言ってるのに」
京楽の背後から、白哉が顔を出す。
「ルキア、何か不自由はないか」
「いいえ、兄様。何も不満はありません」
ルキアも海燕もあやかしだ。海燕は朝顔の花鬼で、ルキアは白哉と同じ椿の花鬼だ。
「ルキアちゃん、今晩も浮竹の夕食はボクが作るから。ルキアちゃんは、自分たちの分を用意しててね」
式である京楽と白哉も、人のように食事をする。
花鬼は、光合成だけで生きていけるが、京楽や白哉ほどのクラスになると人の食事も必要になる。
くわえて、京楽は花鬼の中でも最強と謡われる桜の花鬼である。人の生気を吸って生きている。普段は人ゴミに入って少量の生気を大量にもらうのが月に一度くらい。浮竹も、京楽に生気をあげているが、消耗しすぎると逆に京楽から生気を分け与えられた。それは怪我をしたときや風邪にかかった時などもだ。
「京楽、今日の飯はなんだ?」
「カレー」
「この前もカレーだっただろう」
「あれは甘口の牛肉のやつ。今日作るのはシーフードの辛口のやつ」
「ふむ。できあがるまで、読書でもしとく」
「浮竹、兄が欲しがっていた本を手に入れたぞ」
「お、本当か白哉!」
京楽に興味をなくして、白哉のほうに行く浮竹に、京楽は少し悲しくなる。
「すっごいおいしいカレー作るからね!」
京楽はそう言い切ったが、できあがったカレーは普通だった。
「普通だな」
「兄もそう感じるか。私も普通だと思う」
「ちょっと、白哉くんはルキアちゃんの料理食べときなよ」
「ルキアの料理はもう食した。たりないので、京楽、兄の作るものを食べている」
白哉は、見た目は華奢だがけっこう食べた。
「普通で悪かったね!ボクが作れるのは今はここまでだよ」
ふっと、浮竹が微笑んだ。
「普通だが、それなりにおいしかった。明日の夕飯も楽しみにしている」
「浮竹‥‥‥」
京楽は、浮竹に抱きつく。
ちなみに朝食はルキアが、昼食は普段は学校の給食で、休みの日もルキアが作る。
夕食だけ、京楽が作った。
「暑苦しい。ひっつくな」
「これはハグしてるんですう」
「もう十分だろう。離れろ」
心なしか、浮竹は赤くなる。
「浮竹、照れてるの?かわいいね」
「そ、そんなんじゃないんだからな!」
そんなやりとりを、白哉がため息をつきながら見ているのだった。
ルキアや海燕も、何気に見ていた。
浮竹十四郎27歳。職業小学校教師兼祓い屋。
好きなものは桜。
それから好きな人というかあやかしは、京楽春水。
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