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教師と式5

「浮竹♪」

式である京楽は、その日も人型をとって町を歩いていると、浮竹を見つけたので抱きついた。

『わぁ、なんだ!?京楽‥‥にしては老けてるな』

「なんだ、似てるけど浮竹じゃないんだ」

刑事の浮竹と、桜の花鬼の京楽は出会う。

『お前は桜の花鬼だな』

「あら。正体ばれちゃってる。ボクの正体を一発で見抜くなんて、なかなかいい目と感をしているね」

『怪異には慣れているからな。俺は浮竹十四郎。お前は?』

「ああ、名前まで浮竹と一緒なのかい。ボクは京楽春水。君の近くにも同じ顔と名前のボクがいるだろうけど、その子とは別人だよ」

『2重存在か。ある意味怪異だな』

「まぁ、そうだね」


その後、桜の花鬼が人の生気を吸いつくして殺す事件が発生して、京楽は疑われるのだがそれはまた別のお話。



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「この辺りだな」

浮竹は、見事な桜の大樹を見つけた。

京楽と白哉と一緒に行動していたのだが、いつの間にか異界に入っていた。

京楽が、桜の花鬼として強大な妖力をふりまいているせいで、人間の浮竹を食おうとするあやかしは今のところ現れない。

「この木ではないようだ。あっちにも大樹がある。あちらだろうか」

「浮竹、気をつけて。あやかしは君の血と肉をほしがるから」

「そんなあやかしに主を近づけさせない、もしくは退治するために私と兄がいるのだ」

白哉が、椿の文様を施された刀を手にとる。

「この桜、いるね。人を食った花鬼だ」

「出てこい、桜の花鬼。食われた人の遺族からの依頼で、お前を祓いにきた」

「‥‥‥‥わらわを祓うと?たかが人間ごときが。100年も生きたわらわの血肉となれて、死んだあの男たちも喜んでいるであろう」

美しい桜の花鬼の女が現れた。

「お前を祓う」

「おや、うまそうな人間だ。とても甘い香りがする‥‥」

「浮竹、さがって」

「お前は‥‥‥わらわと同じ桜の花鬼ではないか。気高き存在が、なぜ人間などというただのエサの式となっておるのだ。わらわはカヤ。さぁ、そのエサの人間から自由になるといい」

カヤという名の桜の花鬼は、京楽に桜の術をかけるが、京楽は何も変わりなかった。

「なぜじゃ。100年も生きているこのわらわの術が効かぬとは」

「100歳なんて子供みたいなもんだよ。こちとら、400年以上生きてる、通称桜神」

「ひいいいい、桜神じゃと!?あの伝説の人を食いまくって神に近くなったという」

浮竹が、その話を聞いて京楽の顔を見る。

「ごめん、浮竹、今度話すから。とりあえず、この桜の花鬼を退治してしまおう」

「いやじゃいやじゃ。殺されるのはいやじゃ!人間、お前の生気を吸いつくしてくれる」

カヤの攻撃を、白哉が椿の刀を使って跳ね返す。

「なにぞ、そなたは椿の花鬼か!桜同等高貴な花鬼がなぜ、人という下等種の下につく!」

「私は、主に救われたのだ。主である浮竹の式となったからには、椿の花鬼である前に浮竹の式だ。カヤとやら、なぜ人の生気を殺すほど吸いつくすのだ。そんなことをすれば、祓い屋か怪異を扱う刑事が退治にくると分かっていたであろう」

「ふん、そんなやつらみんなわらわが生気を吸いつくしてくれる」

「言っても無駄みたいだよ、浮竹」

「京楽、白哉、逃げれないようにしてくれ」

「分かった」

「承知した」

京楽と白哉は、カヤを妖力で束縛する。

「う、動けぬ」

「調伏!」

「ぎゃあああああああ!まだだ、まだ、わらわは死なぬ!」

一瞬の隙をついて、カヤは浮竹に襲いかかり、生気を吸おうとする。

それを、京楽がカヤの生気を一瞬で吸いつくして防いだ。

「なぜじゃ。こんな、うまそうとはいえ人間ごときを庇うとは」

カヤは、干からびていきながら、京楽を見つめる。

「君には分からないよ。誰かを愛したことのない、君にはね」

「わらわとて、愛しい者はいた。わらわより先に逝ってしまった。藍染という男が、人間の生気を大量に集めたら、愛しい者を復活させてくれると約束してくれた。だから、わらわは‥‥…」

そのまま、カヤは塵となった。

「藍染が絡んでいるのか。祓い屋なのに、あやかしに生気を集めさせるとは何を企んでいるんだろう」

「ボクにも分からないよ」

「私が、一度藍染の式として潜り込んでこようか?」

白哉の言い出した言葉に、浮竹も京楽も白哉を止めまくる。

「だめだぞ、白哉!お前は強い上に美人なんだから、藍染なんかの変態の式にされでもしたらどうなるか」

「そうだよ!白哉くん。命は一つしかないんだから」

「ふむ。京楽だけでなく主までそう言うのであれば、止めておく」

浮竹と京楽は胸をなでおろす。

宿っていた花鬼を失った桜は、しばらくの間狂い咲きをおこしてから枯れてしまった。

「異界はあやかしの巣だよ。浮竹は他のあやかしには極上の獲物に見えるから、人界に戻ろう」

「ああ」

浮竹は、京楽と白哉に連れられて、異界から抜け出した。

「なぁ、京楽、桜神ってなんだ。お前は、人をくっていたのか?」

京楽は、渋い顔をしながら、自分の過去を語り始める。

「ボクは昔、沢山人の生気を吸いつくして殺した。そのせいで、恐れられて人や他のあやかしから桜神と言われて疎まれた」

「でも、もう人の生気は生きるためにたくさんの人から少しだけ分けてもらっているんだろう?」

「うん、そうだけど」

「なら、それでいい。俺は過去に何かあっても、お前を式のままにするし態度を変えたりしない」

京楽は、浮竹に抱きついてキスをする。

「んんっ」

「私の目の前で、主に手を出すことは許さぬ」

白哉が、刀の鞘で京楽の頭を思い切り殴った。

「白哉くん、さっさと呪符に戻りなよ」

「浮竹、兄はどうなのだ。私に呪符に戻ってほしいか?」

浮竹は、首を左右に振る。

「京楽とはこの前夜を共にしたから、いていいぞ。今日は白哉の好きな辛口のチャーハンでもつくってもらおう。ルキアに」

「ボクだって夕飯作るよ!?」

「お前のカレーには飽きた」

「酷い!」

「まぁ、毎日カレーだからな、兄は」

クスクスと京楽以外は笑いあって、浮竹の館に帰っていく。



怪異を扱う刑事の浮竹に、浮竹は手紙を書いて、男性たちを干からびさせて生気を吸っていた桜の怪異こと花鬼は退治したと報告するのであった。


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