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教師と式4

「君をずっと探していたんだ。ねぇ、ボクを君の式にしてよ」

「何を言っているんだ。お前はあの藍染の式だろう。俺を騙して危害を加えるつもりか」

「君に一目ぼれしたんだ。君が好きだよ。ねぇ、君をボクの式にして。役に立ってみせるから」

浮竹は、盛んに式になりたがる、藍染の式であった京楽を警戒していた。

相手は、半妖半人の祓い屋界隈では悪名高い藍染の、強力な式だ。

確か、桜の花鬼で対象者の生気を吸いつくして殺す。

「俺の生気を吸い取って、糧とするつもりか」

「そんなことしないよ。君が命令するなら、もう生気を吸うこともしない」

「桜の花鬼は生気を吸わなければ生きていけないんじゃないのか」

「生きる術なんて他にいろいろあるよ」

京楽は、数日かけて毎日のように浮竹の元に現れては、自分の式にしてくれと頼み込んできた。その熱意に負けて、何かしでかしたら式から除外するという条件で、浮竹は京楽を式にした。

それから2年の月日が経った。

京楽は浮竹を輪廻転生させたことは内緒にしていた。

恋人同士になり、京楽は浮竹にとっていなくてはいけない存在になっていた。

すでに式であった白哉にいろいろ反対されたりしたが、式にしてよかったと思っている。

藍染が自分の式に戻れと、けしかけてくること以外は。

「愛してるよ。浮竹。君をもう失いたくない」

「何を言っているんだ。俺は俺だ」

「うん、そうだね」

京楽は、一度浮竹を失っている。

前の浮竹は病弱で、肺の病で他界してしまった。どんなに京楽が生気を分け与えてやっても、前の浮竹は回復しなかった。

今の浮竹は、この前コロナになったが、京楽が生気を分け与えて1日で治してしまった。

京楽は安堵した。

今の浮竹を失いたくない。失うなら、いっそ一緒に死のうと思っていた。



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「朧車か」

「はい。妻を連れて行こうと毎夜現れるのです」

教師の仕事が終わったある日、生徒の父親からそう相談をもちかけられた。

「無論、依頼料は払います。どうか、妻を守ってやってください。朧車を退治してください」

「分かった。この件引きうけよう」

「本当ですか!」

「浮竹は嘘はつかないよ」

浮竹の隣で、勝手に屋敷のソファーに座り、浮竹と依頼人の様子を見ていた京楽が口を開く。

「こちらの方は?同じ祓い屋さんですか?」

「ううん、ボクは浮竹の恋人の‥‥あががががが」

背後から白哉が現れて、京楽を頬をつねった。

「ちょっと、痛いじゃないの、白哉くん!」

「兄が、いらぬことを言おうとするからだ」

「こちらも式の方ですか?」

「ああ。俺の一番古く一番信用のおける式の白哉だ」

浮竹がそう紹介すると、白哉は依頼人に言葉をかける。

「兄の依頼を受けたからには、私も全力で朧車を倒し、兄の妻を守ろう」

「ありがとうごいます!さっそく、今夜からお願いしてもいいですか」

「ああ、かまわない」

浮竹と京楽と白哉は、依頼人の家にいった。

丑の刻に、朧車が現れる。

「さぁ、かおり、一緒に冥府に行こう。我が連れて行ってあげる」

「こないで!」

「そう言わずに」

朧車は、牛の顔で依頼人の妻に近づく。

「そこまでだ!」

「誰だ!?」

「祓い屋の浮竹十四郎だ。こっちは椿の花鬼の俺の式の朽木白哉。そしてこっちが‥‥アホの京楽春水、俺の式だ」

「浮竹、扱いが酷い!」

「依頼された人様の家で盛るからだ!」

京楽は、丑の刻まで暇だと浮竹にキスをして、少し手を出した。白哉が止めに入ってくれなければ、流されていたかもしれない。まぁ、結界ははってあるので依頼人にはばれないが。

「我とかおりの仲を裂くものは容赦しない」

「私はあなたなんて知らないわ!朧車なんて知らない!」

「我が分からぬのか。我は元はミケという名のかおりの愛猫だ」

「え、ミケなの!?」

浮竹が、呪符を投げてかおりを結界で守る。

「前世がなんであれ、今はあなたを連れて亡き者にしようとしているあやかしだ」

「でも、ミケはあんなにかわいくて優しかったのに」

「愛情を受けすぎて、死後成仏できずあやかしになってしまったみたいだね」

京楽が、右手に桜の花びらを集める。

「お願い、殺さないで!」

「無理難題ってとこだけど、まぁ見ていてよ。浮竹とボクら式の力を」

浮竹は円陣を描いて朧車を結界に閉じ込める。

そこに、白哉が椿の刀で朧車を真っ二つにする。

「ミケ!」

「この程度の傷‥‥‥」

朧車は、すぐに傷口をくっつかせて浮竹のほうに向かってくる。

京楽が動いた。

朧車の生気を吸いつくす。干からびていく朧車に、依頼人の妻は安全な結界の中で悲鳴をあげる。

「いやああああ、ミケ!」

「大丈夫。元の本体は残してあるよ」

干からびていった朧車のあとに、一匹の子猫がいた。

「あやかしの力は全て吸い取ったから。今はただの子猫だよ」

「京楽、よくやった」

「じゃあキスして‥‥おぶ」

白哉に頭をはたかれて、京楽はしぶしぶ浮竹から離れる。

「もう、朧車にはならないだろう。ミケが生き返ったことになるが、気味が悪いならこちらで引き取るが‥‥‥‥」

「いいえ、いいえ。ああ、おかえりミケ。大好きよ」

「にゃああああ」

その後、依頼人に全てを話し、依頼料を受け取って、浮竹たちは帰路につく。

「白哉くん、今日は浮竹と夜を共にするから、邪魔しないでね」

「京楽!」

「たまにはいいでしょ?」

浮竹は赤くなりながらも、小さくこくんと頷いた。

「浮竹、大好きだよ!もうボクを置いていかないでね!」

「何を言っているんだ。俺は、お前という式を放置して去りはしない。危ないからな」

京楽の言っていることは、浮竹には伝わっていなかったが、それでいいと京楽は思う。

輪廻転生をしでかした時、きっと藍染は浮竹の魂に何か細工をしている。それがなんなのか、京楽にも分からない。

だが、突然死んでしまうとかそういうことはなさそうだった。

可能性があるとしたら、自分と同じ存在にすること。半妖半人に、浮竹はなってしまうかもしれない。

けれど、京楽にはそのほうがありがたい。人の生きる時間はほんの一瞬。

あやかしの寿命に比べて短すぎる。

「今日の夕飯はカツカレーだよ」

「またカレーか。たまには違うの作れないのか」

「まぁまぁ、いいじゃない。この前のシーフードカレーおいしいって、浮竹も言ってくれたじゃない」

「仕方ない。カツがある分、我慢するか」

「京楽、私の分も作れよ」

「白哉くんはルキアちゃんの作った夕飯だけで満足してよ」

「冬でない今、椿の花鬼である私はエネルギーが必要なのだ」

「はいはい。白哉くんの分も用意するよ」

また、何気ない日常が戻ってくる。



「浮竹十四郎‥‥‥私の式だった京楽春水が、愛して輪廻転生を授けた相手」

暗い部屋で、水鏡に浮竹の姿を映して、藍染は微笑む。

「さぁ、羽化しろ。だが、綺麗に羽化できるだろうか」

クスクスと、藍染は笑う。

「なんや、物騒でんな」

愛染の式である市丸ギンが、水鏡をのぞいて面白そうな顔になるのであった。


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