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教師と式6

その年は猛暑で、40度近くなる日が続いていた。

浮竹は5年生を受け持っているが、体育はプールの授業で何気に涼しい気分を味わう。

まぁ、私立の小学校だし、今時公立でも小学校にも中学校にもクーラーはある。

「はぁ。プールのあとのクーラーのきいた部屋で飲む冷たい麦茶がうまい」

「せんせー、じじくさーい」

「先生はな、暑さに弱いんだ」

「まだ夏始まったばっかだよー」

子供たちに遊んでくれと手を引っ張られて、浮竹はプールの近くにある遊具にまで行く。

「はて。何か妖気をかんじたか‥‥プールだしな。気のせいか」

子供たちと一緒になって遊んで、クラブ活動もしてその日の教師としての仕事を終わらせると、気になったのでまたプールのほうに行く。

「ああ、生き返る」

「誰かいるのか」

「ああ、すまんすまん。少しプールを借りているぞ」

「水虎じゃないか。おとなしいあやかしの水虎が、なぜ小学校のプールなんかに?」

水虎に近づこうとすると、京楽が現れて警戒する。

「ただの水虎じゃないかも」

「いや、堪忍してくれ。なんの力もないただの水虎さ。住んでいた川が猛暑で干上がって、水を求めてさまよっていたら小学校のプールを見つけたのだ」

「主、祓うか?」

白哉まででてきて、水虎をいつでも退治できそうだった。

「術者か。しかし、わしはなんもしとらんぞ」

「そうだな。水虎、俺の屋敷のプールでいいなら、移ってくれないか。このプールは普段小学生たちが使う。邪魔になるだろう?」

浮竹の提案に、水虎が顔を輝かせる。

「おお、そのプールにはあやかしは他におらんのか?」

「ああ、いない」

「では、そのプールに移住するとしよう」

人に見つかってはなんなので、水虎を呪符に一度封じ込めて、浮竹は自分の屋敷の広いプールに水虎を放つ。

「おお、これは水も綺麗だし住みやすそうだ」

「一応、1日に1回魚を飯としてやるから」

「いたれりつくせりだな」

水虎は、川が元に戻るまで浮竹の屋敷のプールに居候することになった。

現在、他にも座敷童もいる。

「なんだか、祓い屋なのにあやかしに情を与えすぎじゃない?」

「そうだぞ、主。祓はなければならなくなった時、辛いのは兄だぞ」

「それはそうだが、困っているあやかしを放置しておくのものな。人に害を与える前になんとかできるなら、それにこしたことはない」

京楽と白哉は、顔を見合わせてため息をつく。

「主、捨て犬や捨て猫のように、あやかしを拾うではないぞ」

「白哉くんの言う通りだよ」

「わかったわかった。反省する。もうできるだけあやかしは祓う以外の時や依頼があった時以外は近づかない」

「ほんとに、気をつけてよね」

「京楽の言う通りだ」

でも、そうは言っても浮竹は困ったあやかしを見ると救いの手を差し伸べる。

京楽も白哉も、それをため息をつきながら見守る。



「姑獲鳥が出て、児童を攫うそうだ。しばらくの間、集団下校することになったから、京楽と白哉は先に帰っていてくれ」

刑事の浮竹からの情報で、姑獲鳥が倒されるまで集団の登下校は続いた。

水虎は、変わらず浮竹の家のプールを我が物顔で泳いでいるし、座敷童の彼方は屋敷の屋上に住んでしまっている。


「すまん、拾ってきてしまった」

金烏(きんう)のひな鳥を見て、京楽と白哉は固まる。

太陽の化身とされているあやかしであった。

「いやな、猫に襲われていてな。まだひな鳥で力も弱いようだし」

「神の化身よりはましか‥‥‥」

「京楽、兄がちゃんと教育しないから主は‥‥」

「巣立つまで、面倒見てやってくれ」

やっぱそうなるかと、京楽も白哉も、金烏と浮竹を交互に見て、大きなため息をついてはたして普通の鳥のえさで育つのだろうかと悩むのであった。

ちなみに、金烏は普通に泡玉を与えたら成長し、無事に浮竹の屋敷から巣立ち、太陽へと帰っていくのであった。



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