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桜のあやかしと共に58

鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹が遊びにきた。

『わぁ、これは酷い。掃除してもいい?』

あやかし退治で、掃除担当の京楽が3日ほど家をあけている間に、白哉と浮竹は掃除などできずに、部屋はちらかりっぱなしだった。

丁度、京楽が帰還して、掃除をしようとするところだった。

鴆の京楽は、掃除の手伝いをしたいと言い出す。

『掃除を手伝ってもいいかい?』

「大歓迎。あの二人、料理はできるけど他の家事が全然だめでね」

京楽が苦笑する。

そんな浮竹と白哉は、なぜか彼岸花の精霊の浮竹と3人で人生ゲームをしだしていた。

ちなみに、チップの金はおもちゃでなく現金であった。

現金を用意したのは白哉だ。白哉は、あやかしのくせに京楽なみに金持ちだった。

『このチップのお金、ゲームでゲットすれば本当にもらっていいのか?』

彼岸花の浮竹が聞くと、白哉は頷いた。

「おもちゃの金でなど、面白くないであろう。そちらも、人間の世界の金があったほうが、何かと便利であるだろうし」

『勝って、大富豪になるぞ』

「勝つのは俺だ!負けないぞ!」

浮竹は、金が目当てではないが、勝負ごとなので本気を出すつもりであった。

「はぁ‥‥‥二人はあの調子でね。全然手伝ってくれないから、助かるよ」

『いや、こっちこそ浮竹があんな風に楽しそうに遊ぶの久しぶりに見るから、ありがとう』

京楽と鴆の京楽は、まずダイニングルームから掃除をはじめた。

次にキッチン、バスルーム、トイレ、ゲストルームと、白哉と浮竹の部屋。京楽の部屋を掃除した。

『ゴミ箱にティッシュが多いねぇ』

「あ、それはこっちで処理するから!」

京楽は慌てた。浮竹と睦みあったときに使用したティッシュが、まだゴミ箱に入ったままだったのだ。

『おさかんだねぇ』

「そっちもでしょ?首すじに、キスマークついてるよ」

『こ、これは虫に刺されたんだ』

「うん、そういうことにしておくよ」

掃除が終わると、二人の京楽は、洗濯をする。3日分の衣類がたまっていたので、けっこうな量になった。

一人が洗濯機をまわして、手洗いが必要な衣類は手洗いして、もう一人がベランダに干していく。

『おや、彼岸花だ。季節でもないのに、よく咲いているね』

「ああ、それは彼岸花の精霊の浮竹からもらった彼岸花だよ。ずっと咲いてるの。しおれないんだよね。不思議」

人の命を吸って咲いた彼岸花とは知らずに、京楽はベランダのプランターの花たちに水をやる。

『さて、洗濯ものは終わったし、後は食事の用意かな』

「昼ごはんは、浮竹が作ってくれると思う」

「きいいい、また負けた!もう一度、はじめからすろぞ!」

『ふふふ、また1位だ。大富豪で子供5人できてゴール』

「私が2位だと‥‥‥‥大富豪でもなく、サラリーマンで子供は二人‥‥そもそも、恋次がいるので子供などできぬのだがな」

3人は、人生ゲームに夢中になっていた。

「浮竹、昼ごはん‥‥‥」

「今いいところないいところなんだ。ピザでも注文してくれ」

「はいはい。リクエストはピザだって」

『冷蔵庫にある材料で作れそうだね、レシピはある?』

「待ってて、スマホで検索してみるから」

鴆の京楽は、器用にありあわせのものでピザを作った。あと、ジャガイモをむいてフライドポテトを作る。

「君、器用だねぇ。ボクは料理はできないから」

『簡単だよ?』

「いやいや」

そうこうしている間に2時になり、腹が減ったと浮竹、白哉、彼岸花の精霊の浮竹がキッチンにやってくる。

「お、出前じゃなくって手作りのピザか。なかなかうまそうだな」

『俺の京楽の作る料理はうまいぞ。家事全般をこなす、スーパー京楽だ』

白夜が、フライドポテトを口にして一言。

「うまい。浮竹のつくったものと同等なくらいにうまい」

そして、5人で遅めの昼食をとった。

「スーパーに買い物に行くんだけど、鴆のボクはどうするの?」

『あ、ボクは人がいるところはだめなんだ』

「対人恐怖症か何か?」

『似たようなものだな。京楽は、昔人間に酷い目に合わされたせいで、人間嫌いんだ』

「じゃあ、浮竹もくるとして、白哉くんもくる?」

「買い物など、スマホで買えばいい」

白哉は、衣類やら食べものやら、いろいろとスマホで買っていた。

「今日の夕飯の買い出しだから。5人分いるから、あと一人誰かこない?」

『じゃあ、俺が行こう。しゅわしゅわをたくさん買ってくれ』

「はいはい。コーラね」

京楽は、両手に花状態で買い物に出かけた。

白哉と鴆の京楽が残される。

「暇だな。トランプでもするか?それとも、テレビゲームで遊ぶか?」

『テレビゲームってのしてみたいね』

買い物にいった3人が戻ってくるまで、鴆の京楽と白哉は、格闘ゲームをして遊ぶ。

『人間ってすごいね。こんなリアルなゲーム作るんだから』

「まぁ、確かに人間はすごい。だが、あやかしを怖がる」

『うん、そうだね』

鴆の京楽は、白哉を見た。

『君、人減の伴侶がいるでしょ?』

「何故分かる?」

『人のオスの匂いがする』

白哉はやや頬を赤らめた。昨日、恋次と睦みあったばかりなのだ。

「悪い人間もいれば、いい人間もいる。人間というだけで、全てを嫌いになるのはもったいない」

『うん‥‥‥でも、ボクはやっぱり人間が苦手だね』

「帰ったぞー。夕飯は松阪牛のステーキだ」

「まったく、スーパーのくせに、松阪牛なんて売ってたから、つい買っちゃったよ」

『うまい肉なのだろう?今から楽しみだ』

5人は、わいわい言いながら夕飯のステーキを楽しむ。

『うわぁ、おいしい肉だね、これ』

「気に入ったのなら、冷凍保存しておいたやつをやるぞ?」

『え、いいの?』

「お前は俺の命の恩人だしな」

鴆の京楽は、肉といえば雉かいのしし肉しか食べたことがないので、大層喜んだ。

『京楽、よかったな』

『うん』

彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑んだ、

『肉を食べて、体力がついた今晩は‥‥』

「はいはい、そこまで。続きは、山に帰ってからにしろ」

浮竹がストップをかける。

そうでもしないと、今にも睦みあいそうだった。

夕飯をごちそうになり、冷凍保存された松阪牛を手に、鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹は帰っていった。

「じゃあ、ボクたちも体力ついたし、やる?」

スパーン。

久しぶりに浮竹にハリセンで叩かれて、京楽はあまりの痛さに涙ぐむ。

「めっちゃ痛いよ、十四郎」

「痛いように叩いたからな。あ、白哉、恋次くんのところに行ってはだめだぞ。もう9時だ。門限時間だ」

「浮竹、兄は私を子供と思っているのか?」

「俺の大切な弟にたかるハエは殺虫剤で殺す」

「恋次は、ハエではないのだが‥‥‥」

そんなやりとりをしながら、夜は更けていくのであった、




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