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熱(京浮)

その日、浮竹は隊首会に出ていた。

1時間ほど山本総隊長の話を聞いて、突然京楽が浮竹を抱きかかえた。

「山じい、浮竹熱あるみたいだから、早引きさせてもらうよ」

「むう。十四郎、無理はするなとあれほどいったのじゃがな」

京楽に抱きかかえられた浮竹は、すまなさそうな声で謝る。

「先生、すみません。この程度の熱なら大丈夫と思っていたのですが、悪化してきたようです」

「春水、十四郎を頼んだぞ」

「任せてよ、山じい」

京楽は、瞬歩で浮竹を雨乾堂まで運ぶ。

「海燕くん、いるかい。浮竹が熱を出したんだ。薬と布団の用意頼めるかな」

「あ、隊長!微熱だって言ってたのにやっぱり悪化してますね!」

海燕は、手早く布団をしいて、解熱剤の用意をする。

「厨房に頼んで、粥用意してきてもらうね?」

京楽は、13番隊隊舎へと向かう。

「京楽のやつ、なんで俺の熱があがったって分かるんだろう」

「さぁ。愛の力ってやつじゃないですか」

海燕は、浮竹を布団に寝かせて、水でしぼったタオルを額に置く。

やがて、数分して京楽が戻ってきた。

「薬のむには、何か食べないとね。一口だけでもいいから、食べて?」

京楽が、匙で粥をすくって浮竹の口元にもってくる。

「じ、自分で食べれる」

「だーめ。ボクの愛がこもってるんだから」

「むう。分かった」

浮竹は、京楽から粥を食べる。

海燕は、そんな様子をため息をついてみていた。

「はい、あーん」

「あーん」

いちゃつく二人に、海燕がいい加減にしろと、粥を食べ終えさせた京楽の頭をハリセンで殴った。

「京楽隊長、隊長は熱があるんです。いちゃいちゃするのは今度にしてください」

「あいたたたた。海燕くんに怒られちゃった」

「海燕、め、だぞ」

浮竹は熱もかなりあがってきたようで、ふらふらしていた。

「いいから、隊長は寝てください。あ、薬」

京楽が、解熱剤を口にふくみ、水と一緒に口移しで浮竹に飲ませる。

「京楽隊長!」

「いいじゃない、これくらい」

「そうだぞ、海燕。目が回る~~~」

「浮竹、おとなしく寝て?」

「京楽、傍にいてくれ」

「困ったねぇ。隊首会まだ続いてるんだけど‥‥山じいに任されたし、傍にいるよ」

海燕が、京楽の頭をハリセンで殴る。

「ちょっと、何するの」

「それはこっちの台詞です。何、浮竹隊長の寝ている布団にもぐりこもうとしてるんですか」

「え、添い寝」

「必要ありません。戻って、隊首会に出てください」

「京楽、傍にいてくれ」

浮竹が、そういうものだから、海燕もそれ以上言えなかった。

「浮竹のご指名だからねえ。添い寝するから、海燕くんは気にせず仕事してていいよ」

海燕は、京楽を一度ぶちのめしたいと思うが、我慢する。

「いいですか、隊長は今熱があるんです。手を出したりしないでください」

「分かってるよ‥‥‥」

京楽は、浮竹を抱きしめて、浮竹が眠りにつくと一緒に寝た。

海燕は、そんな二人を見ながら仕事をする。

「あーもう」

布団を足元にぐしゃぐしゃにしている二人に、海燕は布団をかけなおす。

すると、二人はまた布団をぐしゃぐしゃにした。犯人は京楽だった。

浮竹が風邪をひいたらいけないので、浮竹だけに布団をかぶせる。

2時間ほどして、浮竹が覚醒する。

「ああ、俺は寝ていたのか‥‥‥熱、大分下がったな」

「ほんとに?」

浮竹が起きた気配で、京楽も起きる。

京楽が浮竹とこつんと額同士を合われると、京楽は首を左右に振った。

「まだ熱が高いよ。寝てなさいな」

「しかし、眠気がない」

「ボクが、昔話でもしてあげるから」

海燕は、京楽ってけっこういいところあるんじゃないかと思った。

「昔昔、綺麗な綺麗な浮竹がいました。毎日あはんあはんと、黒い髪の男と」

「あんたは何を言ってるんだ!」

海燕が京楽の頭をハリセンで殴る。

「あいたたたた」

「で、黒い髪の男とどうなったんだ?」

「隊長も空気よんでください!昔話じゃなくってただの猥談ですよ」

海燕が、ハリセンを手に京楽を睨む。

「そ、そうなのか京楽?」

「ううん、昔話だよ」

「だそうだぞ、海燕」

「はぁ。もう、猥談でもなんでもしてください。隊長に手を出さないんだったら、かまいません」

「‥‥‥‥で、浮竹はズキューンバキューン」

完全に猥談になっていた。

「これは、実は昔話ではなく明日訪れる未来だよ」

「そうはさせるかああああ!」

スパーーン。

海燕のハリセンが、京楽の頭に炸裂する。

「ちょっと、海燕くん、ボクは一応上官だよ。隊は違うけど」

「浮竹隊長を魔の手から救い出します。明日はそんなこと、させませんからね」

「えーけちー」

「そもそも隊長の熱が下がっているかも分からないじゃないですか!」

「下がってなかったら、後日に」

スパーン。

「いたい」

「このけだものめ」

そんな二人を見て、浮竹は笑っていた。

「はははは。漫才みたいだな、二人とも」

「隊長、熱は?」

「大分下がった。が、まだおとなしくしておく」

布団に横になり、浮竹は京楽と海燕の手をそれぞれ右手と左手で握る、

「二人とも、仲良くな?ケンカはだめだぞ」

「うん」

「はい」

浮竹がまた眠ると、京楽は雨乾堂に泊まると言い出した。

だめだといっても聞かないので、仕方なく海燕は二人分の夕飯を用意する。

雨乾堂に入ろうとして、京楽と浮竹の声が聞こえてきた。

「あ、京楽、そこいい」

「ここかい?」

「あ、あ、ああ、いい」

「浮竹はここが弱いね」

「何してんだあんたらーーーー!浮竹隊長は熱あるでしょう!!」

スパーンと入口を勢いよくあけたら、半身を起こした浮竹の肩を、京楽が揉んでいた。

「あれぇ?海燕くん、今なにかいかがわしいこと想像したぁ?」

京楽が、にまにまとからかってくる。

「夕餉、京楽隊長の分いりませんね」

「ああ、冗談だから!お腹すいてるんだよ、夕飯抜きはなしにしてえええ」

そんなやりとりを、浮竹は笑ってみていた。

「隊長、熱は?」

「もう下がった。大丈夫だ。京楽も、海燕も、迷惑をかけた」

「いえ、そんなことないです」

「そうだよ、浮竹。ボクは君の体が弱いことも愛しているんだから」

「さらっとのろけられた」

海燕は、夕餉を二人分用意して、退室していくのであった。



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