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黒猫と白猫の亜人25

京楽は、目を金色にしていた。

満月だった。

「鎮まれ、サタナシア・オルタナティブ」

いつものように、京楽の中のサタナシア・オルタナティブ、通称サタン、別名ナニカが動き出す。

「今日は、満月、か」

金色の瞳のまま、浮竹を抱きしめる。

「ん、京楽?」

浮竹は眠っていたのだが、気づいて起き出す。

「まだ、深夜だから。寝ていていいよ?」

「京楽、目が金色だ。サタナシア・オルタナティブ。お前も京楽の一部だ。愛してる」

浮竹が金色の瞳の京楽に口づけると、京楽の中のサタナシア・オルタナティブは泣いた。

誰かに、ずっと愛してもらいたかった。京楽でないのに、愛された。それは嬉しかった。

「ウレシイ‥‥‥‥ウキタケ、アイシテル」

サタナシア・オルタナティブが、手を伸ばす。

その手を、もう片方の手で京楽が止めた。

「お眠り、サタン。浮竹は、ボクのものだ」

「ソレデモウレシイ‥‥‥」

最近のサタナシア・オルタナティブは、京楽を介してしゃべることができた。

京楽の中で、遺物でしかなかったサタナシア・オルタナティブは京楽の意識に同調し、浮竹を愛していた。

その愛は、純粋なものでなく歪(いびつ)であったが。



「サタン様!」

「サタン様、どうか我らに救済を!」

「永遠の命を!」

それは、サタナシア・オルタナティブを介してみる、サタンそのもの。サタンから見た、世界。

場は血であふれていた。たくさんの人間の肉と臓物があった。

「我はサタン。黒猫の亜人の臓物を捧げよ!もっと、もっとだ!」

「ああ、サタン様!」

「我は、いつか我の一部を誰かに与える。時が経ち、熟成すれば我が宿る。さぁ、贄の黒猫の亜人の臓物をよこせ!」

「生まれたばかりですが・・・・・・」

捧げられたのは、京楽であった。

「赤子か。我が宿るにはちょうどいい。サタナシア・オルタナティブを、我の一部として宿らせよう。いつか、我が芽吹くように」

サタナシア・オルタナティブが現れる。美しい少女だった。サタンから生まれ落ちた存在だった。贄にされて命を失った赤子の京楽の中に宿る。

「おぎゃあおぎゃああ」

赤子は、息を吹き返した。

そこで、サタンの意識が途切れる。

京楽は、はっと目を覚ました。

「サタナシア・オルタナティブ‥‥‥‥君は、サタンの‥‥愛娘、なのかい?」

それに答える者は、誰もいなかった。

「ボクは、いずれサタンになるのだろうか」

ふとした疑問に、京楽の中のサタナシア・オルタナティブが答える。

(それはない。我の力で、サタンを拒絶している。サタンが宿る時は、我が死んだ時)

「つまり、ボクが死んだ時、か」

死は怖くない。でも、死んだらサタンになってしまうと思うと、怖かった。

(我らが死した時、浄化の炎が宿る。神子によって。今は、神子ではなくなったが、猫神を降ろした白猫の亜人、我らの愛しい浮竹の手によって)

「ボクは、浮竹と一緒に死ぬから、無理じゃない?」

(でも、浄化の炎は宿る)

「じゃあ、サタンのことは心配する必要はないんだね?」

’(我はサタナシア・オルタナティブ。サタンを継ぐ者)

「あれ?」

京楽は、おかしそうに笑う。

「君は、サタンの愛娘。サタンを継いでも、サタンにはなりえないよ」

(我はいつかサタンになりたい)

「なんか、矛盾してるよ。サタンを拒絶してるのに、サタンになりたいなんて」

「京楽?起きたのか?」

いつの間にか、朝になっていた。

「ああ、眠りそこねた。まぁ、昼寝で補おう。おはよう、浮竹」

「おはよう、京楽」

二人は、朝食を食べると市場に猫の姿で散歩に出かけた。

「我はサタン!」

そんなことを言っている、白銀の猫を見かけた。

「あ、お前は我が愛娘のサタナシア・オルタナティブを宿した、あの時の赤子か」

「え?」

「へ?」

「我はサタンなり!」

人の言葉をしゃべる猫であったが、猫の亜人ではないようだった。

ぎゅるるるる。

腹をすかせているようで、浮竹が人の姿になり、肩に猫の姿の京楽を乗せて、自称サタンという猫を白哉の家に連れ帰る。

自称サタンは、本当にサタンらしかった。

悪魔の証である小さな黒い翼があり、サタンの紋章を額に宿していた。

「うぬう、腹が減った」

「キャットフードだよ。食べなよ」

京楽がすすめると、サタンはがつがつと食った。

「人の臓物よりうまい。おかわり」

「はいはい‥‥‥」

「なぁ、サタン」

「なんだ、ひ弱な白猫の亜人が」

サタンは、人の姿をした浮竹に猫パンチをかます。

「サタンなのに、猫なのか?」

「うむ。転生先を間違えたのだ」

「じゃあ、白哉の猫になれ!悪さはするなよ!」

「我はサタン!誰のものにもならぬ」

えっへんと威張るサタンに、京楽が甘い誘惑をする。

「白哉君ちの猫になると、さっきのおいしいキャットフードが食べ放題だよ。あとチュールっていうおいしいのもくれるし。何より、雨風がしのげるし、衣食住は保証してくれるよ。半野良で外に出るのも許されるし」

「う、そこまで言うなら、その白哉とやらの猫になってやろう」

京楽は、白哉を呼んできた。白哉は事情を聞いてびっくりするが、純金の首輪をサタンにした。

「うむ。我ほどjの大物になると、純金でも安い」

こうして、白哉の家にはサタンが居つくようになるのであった。

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