竜人族
浮竹と京楽は竜人族であった。
浮竹は白いドラゴンになれて、京楽は黒いドラゴンになれた。
人のいない森で、ひっそり二人きりで住んでいた。
元々人里に住んでいたのだが、ドラゴンになった姿を目撃されて、白いドラゴンは縁起がよいので剥製にすると人に襲われかけて、二人は逃げた。
住む場所を転々としているうちに、この森を住処とした。
「浮竹、早いね」
「京楽こそ、どうしたんだ、こんな朝早くに」
「干し肉が切れちゃってね。もうすぐ冬になるし、保存食もっと作っておこうと思って」
人の姿で食事をしていれば、食事の量も足りて森の資源を無駄に浪費することはなかった。
「そうか。昨日、鹿を沢辺でみたんだ。今日もいるだろう。ドラゴンになって、追い立てるから、京楽が人の姿で弓で仕留めてくれ」
「うん、分かったよ」
そんな予定をたてていたのだが、白いドラゴンになった姿を、たまたま森に入ってきた侵入者の人間に見られてしまった。
「白いドラゴンだ!吉兆だ!これは村の人に伝えなくては!」
「あ、待て!」
京楽が追いかけようとするが、男は帰還のスクロールを使って森から村に帰ってしまった。
「ねぇ、浮竹。この森ももう無理かもしれない」
「大丈夫だ。人がきても幼い頃とは違う。追い払おう」
「大丈夫?浮竹、人を傷つけれないでしょ」
「大丈夫だ。自分の身くらい自分で守れる」
それが、浮竹と京楽が会話した最後の日だった。
浮竹は、白いドラゴンになったまま人に捕らえられて、生きたまま連れていかれた。モンスターテイマーがいて、浮竹はテイムされて人のいいなりとなってしまった。
京楽が人の姿で助けにいこうとしたが、すでに浮竹の姿はなく、かといって自分もドラゴンの姿になると人に捕まる可能性があるので、京楽は浮竹を探しながらさ迷う。
白いドラゴンがいるという噂を聞いては出向いて、10年ほど経った頃、その白いドラゴンと京楽は出会った。
「浮竹‥‥‥」
「誰?」
浮竹は、京楽のことも自分のことも、全て忘れていた。
大きな檻にいれられた白いドラゴンは、確かに浮竹だった。
「ボクだよ!同じ竜人族の京楽!」
「俺はただのドラゴンだ。竜人族なんて幻の種族じゃない。人にはなれない」
「そこにいるのは誰だ!」
町の住人が、白いドラゴンの浮竹に話しかける京楽を見つけて、捕まえようとする。
「確か、お前には黒いドラゴンの連れがいるんだったな」
「やめてくれ。その子はただの人間だ!」
「浮竹!」
「逃げろ、人の子!」
結局、京楽は逃げ出した。
浮竹が自分のことを忘れていることにショックを受けて、浮竹のことを諦めてしまい、長い長い休眠をとることにした。
真っ白なドラゴンは、世界に一匹しかいない。
京楽が目覚めた時、眠ってから100年以上は経過していた。
「浮竹‥‥‥まだ、人に捕まっているのかな?今度こそ、助けにいこう。ボクのこと、忘れていてもいいから」
浮竹の白いドラゴンの噂は、すぐに聞けた。
ある王国で、守護竜として存在しているらしい。
もう、捕まっているわけではなかったが、京楽は浮竹を助け出すために黒いドラゴンになった。100年も眠っている間に体だけは大きくなっていて、巨大なドラゴンになれた。
浮竹のいる王国までいくと、黒いドラゴンが出たと、討伐隊が組まれた。
「浮竹‥‥‥‥助けにいくよ」
ドラゴン討伐隊をなんとか倒して、傷ついた体で浮竹の元に向かう。
「浮竹‥‥‥」
「京楽?」
「浮竹、記憶戻っていたの?」
真っ白な美しい青年がいた。
京楽も、人の姿になる。
「京楽‥‥‥俺を助けにきてくれたのか?」
「そうだよ。さぁ、帰ろう、ボクらの故郷に」
「俺は‥‥‥‥この国の王に汚された。お前とは一緒に行けない」
「浮竹」
「俺はもう清らかじゃない。毎晩客をとらされるんだ。もう、お前の知っている浮竹はいない」
「こんな国‥‥‥滅ぼしてやる」
「京楽?」
浮竹は、不思議そうな瞳で京楽を見ていた。
「こんな汚れた俺のために、怒ってくれるのか?」
「決めた。この国を亡ぼす。君を汚した王から殺してやる!」
京楽は、黒いドラゴンとなってその国を滅ぼした。
「京楽」
焼け野原となった大地に、浮竹だけが無傷でいた。
「帰ろう?」
「でも俺は」
京楽は、浮竹に魔法を使い、この王国にいた時の記憶を奪った。
「帰ろう、浮竹」
「ああ、帰ろう、京楽」
浮竹は、微笑みながら、血を吐いた。
「浮竹!?」
「俺はこの国の守護竜だから‥‥‥‥この国がなくなったら、生きていけないんだ」
「そんな、浮竹!」
「最後にお前と出会えてよかった‥‥」
「浮竹ぇぇぇぇ!」
浮竹は、大量の吐血を繰り返して、弱弱しい手で京楽の手を握り返す。
「また、生まれてくるから‥‥‥俺を、探して?」
「浮竹!」
浮竹は、京楽の腕の中でひっそりと息絶えた。
京楽は浮竹の亡骸を手に、住んでいた森に戻った。
浮竹の遺体を埋葬した数日あと、浮竹の墓に竜人賊の卵があった。
京楽はその卵を住処の巨大な洞窟に持って帰り、生まれるのを待った。
「ぴい?」
「おはよう。君の名前は、浮竹十四郎だよ」
真っ白なドラゴンの幼生体を見て、京楽は優しく微笑む。
「京楽、待って」
「浮竹、人里には近づいちゃだめだよ」
「分かってる。京楽、俺はお前だけがいてくれたらそれでいい」
真っ白なドラゴンになれる少年の竜人族と、巨大な黒いドラゴンになれる若い竜人族は、もうドラゴンの姿になることなく、人のこない深い森の中でひっそりと暮らすのであった。
浮竹は白いドラゴンになれて、京楽は黒いドラゴンになれた。
人のいない森で、ひっそり二人きりで住んでいた。
元々人里に住んでいたのだが、ドラゴンになった姿を目撃されて、白いドラゴンは縁起がよいので剥製にすると人に襲われかけて、二人は逃げた。
住む場所を転々としているうちに、この森を住処とした。
「浮竹、早いね」
「京楽こそ、どうしたんだ、こんな朝早くに」
「干し肉が切れちゃってね。もうすぐ冬になるし、保存食もっと作っておこうと思って」
人の姿で食事をしていれば、食事の量も足りて森の資源を無駄に浪費することはなかった。
「そうか。昨日、鹿を沢辺でみたんだ。今日もいるだろう。ドラゴンになって、追い立てるから、京楽が人の姿で弓で仕留めてくれ」
「うん、分かったよ」
そんな予定をたてていたのだが、白いドラゴンになった姿を、たまたま森に入ってきた侵入者の人間に見られてしまった。
「白いドラゴンだ!吉兆だ!これは村の人に伝えなくては!」
「あ、待て!」
京楽が追いかけようとするが、男は帰還のスクロールを使って森から村に帰ってしまった。
「ねぇ、浮竹。この森ももう無理かもしれない」
「大丈夫だ。人がきても幼い頃とは違う。追い払おう」
「大丈夫?浮竹、人を傷つけれないでしょ」
「大丈夫だ。自分の身くらい自分で守れる」
それが、浮竹と京楽が会話した最後の日だった。
浮竹は、白いドラゴンになったまま人に捕らえられて、生きたまま連れていかれた。モンスターテイマーがいて、浮竹はテイムされて人のいいなりとなってしまった。
京楽が人の姿で助けにいこうとしたが、すでに浮竹の姿はなく、かといって自分もドラゴンの姿になると人に捕まる可能性があるので、京楽は浮竹を探しながらさ迷う。
白いドラゴンがいるという噂を聞いては出向いて、10年ほど経った頃、その白いドラゴンと京楽は出会った。
「浮竹‥‥‥」
「誰?」
浮竹は、京楽のことも自分のことも、全て忘れていた。
大きな檻にいれられた白いドラゴンは、確かに浮竹だった。
「ボクだよ!同じ竜人族の京楽!」
「俺はただのドラゴンだ。竜人族なんて幻の種族じゃない。人にはなれない」
「そこにいるのは誰だ!」
町の住人が、白いドラゴンの浮竹に話しかける京楽を見つけて、捕まえようとする。
「確か、お前には黒いドラゴンの連れがいるんだったな」
「やめてくれ。その子はただの人間だ!」
「浮竹!」
「逃げろ、人の子!」
結局、京楽は逃げ出した。
浮竹が自分のことを忘れていることにショックを受けて、浮竹のことを諦めてしまい、長い長い休眠をとることにした。
真っ白なドラゴンは、世界に一匹しかいない。
京楽が目覚めた時、眠ってから100年以上は経過していた。
「浮竹‥‥‥まだ、人に捕まっているのかな?今度こそ、助けにいこう。ボクのこと、忘れていてもいいから」
浮竹の白いドラゴンの噂は、すぐに聞けた。
ある王国で、守護竜として存在しているらしい。
もう、捕まっているわけではなかったが、京楽は浮竹を助け出すために黒いドラゴンになった。100年も眠っている間に体だけは大きくなっていて、巨大なドラゴンになれた。
浮竹のいる王国までいくと、黒いドラゴンが出たと、討伐隊が組まれた。
「浮竹‥‥‥‥助けにいくよ」
ドラゴン討伐隊をなんとか倒して、傷ついた体で浮竹の元に向かう。
「浮竹‥‥‥」
「京楽?」
「浮竹、記憶戻っていたの?」
真っ白な美しい青年がいた。
京楽も、人の姿になる。
「京楽‥‥‥俺を助けにきてくれたのか?」
「そうだよ。さぁ、帰ろう、ボクらの故郷に」
「俺は‥‥‥‥この国の王に汚された。お前とは一緒に行けない」
「浮竹」
「俺はもう清らかじゃない。毎晩客をとらされるんだ。もう、お前の知っている浮竹はいない」
「こんな国‥‥‥滅ぼしてやる」
「京楽?」
浮竹は、不思議そうな瞳で京楽を見ていた。
「こんな汚れた俺のために、怒ってくれるのか?」
「決めた。この国を亡ぼす。君を汚した王から殺してやる!」
京楽は、黒いドラゴンとなってその国を滅ぼした。
「京楽」
焼け野原となった大地に、浮竹だけが無傷でいた。
「帰ろう?」
「でも俺は」
京楽は、浮竹に魔法を使い、この王国にいた時の記憶を奪った。
「帰ろう、浮竹」
「ああ、帰ろう、京楽」
浮竹は、微笑みながら、血を吐いた。
「浮竹!?」
「俺はこの国の守護竜だから‥‥‥‥この国がなくなったら、生きていけないんだ」
「そんな、浮竹!」
「最後にお前と出会えてよかった‥‥」
「浮竹ぇぇぇぇ!」
浮竹は、大量の吐血を繰り返して、弱弱しい手で京楽の手を握り返す。
「また、生まれてくるから‥‥‥俺を、探して?」
「浮竹!」
浮竹は、京楽の腕の中でひっそりと息絶えた。
京楽は浮竹の亡骸を手に、住んでいた森に戻った。
浮竹の遺体を埋葬した数日あと、浮竹の墓に竜人賊の卵があった。
京楽はその卵を住処の巨大な洞窟に持って帰り、生まれるのを待った。
「ぴい?」
「おはよう。君の名前は、浮竹十四郎だよ」
真っ白なドラゴンの幼生体を見て、京楽は優しく微笑む。
「京楽、待って」
「浮竹、人里には近づいちゃだめだよ」
「分かってる。京楽、俺はお前だけがいてくれたらそれでいい」
真っ白なドラゴンになれる少年の竜人族と、巨大な黒いドラゴンになれる若い竜人族は、もうドラゴンの姿になることなく、人のこない深い森の中でひっそりと暮らすのであった。
PR
- トラックバックURLはこちら
