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ドラゴン族の子とミミック

浮竹と京楽は、ドラゴン族、つまりは竜人族の子だった。

竜人族は、人の姿からドラゴンになれる。そんな一族だった。だが、浮竹は世界でも珍しいホーリードラゴン、聖属性のドラゴンになれるはずだったのだが、大人になってもドラゴン化できなかった。

結果、いらない存在としてドラゴン族の里を追われた。

京楽は、ダークドラゴン、闇属性のドラゴンになれたが、ドラゴン化すると理性を失い、味方まで巻き込んで暴れるので、浮竹と同じくいらない子として里を追われることとなった。

二人は、身を寄せ合って野宿して人里に向かった。

一番近い村に着いた時、竜人族の血からできる貴重な宝石を少しだけ自分を傷つけて作り出し、現金を得ると、冒険者として必要なものを買いそろえて、二人は王都を目指した。

王都アルカンシェルで、二人はEランクの冒険者から始めた。

「京楽、お前までつきあうことなかったのに」

「何言ってるの。里を追われたのは一緒でしょ。一緒に仲良くやっていこうよ」

浮竹と京楽は、親友以上だった。子供の頃からいつも一緒にいた。

「でも、人間の社会で冒険者としてやっていくのは辛いぞ?」

「なぁに、すぐにAランクの冒険者になれるさ」

浮竹と京楽は、400年以上生きていたが、竜人族の中ではまだまだ若い。

3年をかけてAランク冒険者までのし上がり、浮竹と京楽は人の社会で生きていけた。



「さぁて、今回のお宝は?」

Aランクのダンジョンにもぐった二人の前に、宝箱が現れた。

「浮竹、これミミックだよ」

「ミミック!」

浮竹は目を輝かせて、ミミックにわざとかじられた。

ミミックを牧場で大量に養殖して、浮竹はダンジョンに放つという謎のバイトをしている経験もあり、ミミックに好かれた。

「きしきしきし」

ミミックは不思議な笑い声をあげて、浮竹を甘噛みする。

「ああ、麗しいミミック。この噛み心地、色のつや‥‥‥俺の育てたミミックだな」

「きしきし」

ミミックは、宝物をドロップして去っていく。

「魔法書か。古代文字の‥‥‥ファイアランスの魔法。もう習得してるから、魔法ショップに売るか」

浮竹は、古代の魔法書をアイテムポケットに入れる。

「さて、30階層だよ。ラスボスかな」

出てきたのは、ヘルケルベロスだった。

普通のケルベロスよりも2倍は大きく、強いモンスターだった。

「ボクが先にいくよ!フリーズショット!」

「がるるるるるう」

「アイシクルエッジ」

浮竹と京楽は、魔法剣士だ。魔法も剣も使える。

ケルベロスの弱点である氷の魔法を使って、ヘルケルベロスにダメージを蓄積していく。

京楽は、もっていた片手剣に氷のエンチャトして、ヘルケルベロスの3つある頭のうちの1つを切り落とす。

「ぐるるるる!」

ヘルケルベロスは、地獄の業火を吐いた。

「マジックシールド!」

それを浮竹が魔法の盾を作って防ぐ。

「おしまいだよ!エターナルアイシルクワールド!」

「エターナルアイシクルワールド!」

二人同時に氷の上位魔法を使い、ヘルケルベロスを完全に凍り付かせると、氷像を叩き壊すと魔石だけが残された。

ラスボスを倒したことで、財宝の間が開く。

「宝箱だ!」

「浮竹、待って。罠があるかもしれない」

「いや、この色ツヤはミミックだ!」

「きしきしきし」

ほんとにミミックだった。

浮竹はかじられて幸せそうな顔をしている。

「はぁ。浮竹、君のミミック好きには呆れるよ」

「この子も、ミミック牧場で育てた子だ」

「きしきしきし」

ミミックは頷いて、宝物をドロップする。ミスリル製のシールドだった。

「ミスリル製だ。売ればそこそこになるな」

「こっち、金貨と宝石がけっこうあるよ」

「これだけあれば、当分は暮らせるな。それにしてもミミックはかわいいなぁ」

「きしきしきし」

ミミックは、変ななき声を出して、ペロリと浮竹のほっぺを舐める。

「未だに、ボクはミミック牧場を作り出して、ミミックに愛情を注げる君の感情が理解できないよ」

「おいおい、ミミックはこんなにかわいいんだぞ?」

「そう?」

「ほら、京楽も触ってみろ」

「ぺっ」

ミミックは、舌打ちして京楽の手を思い切り噛んだ。

「いたたたた!」

「こら、だめだぞ、あんな手をかんだら。歯が欠けたらどうするんだ」

「心配するのそっち!?」

京楽は、にっくきミミックを剣の鞘で殴った。

「浮竹、撤収するよ。財宝はアイテムポケットに入れたから」

「じゃあ、このミミックは回収して家まで‥‥‥」

「だーめ。すでに野良ミミックを3匹も保護して家で飼ってるじゃない。これ以上増やせないよ」

「うー、残念だ。じゃあ、またな、ミミック45号」

「きしきしきし」

ミミックは不思議な鳴き声をあげて、財宝の間に戻っていく。

ダンジョンが踏破されると、ダンジョンマスターが一度ダンジョン内をリセットして、ボスや宝箱、ざこモンスターの配置を変えたりする。

「さて、このミミルのダンジョンを踏破するのは二度目だね。この後どうする?」

「違うダンジョンにいって、かわいいミミックがいないか探す」

京楽はがっくりとなる。

一応、恋人同士なのだが、浮竹は京楽とミミックと言われるとミミックをとる。

「はいはい。じゃあ、いいミミック見つけに、違うダンジョンに行きますか」

「ああ。野良ミミックがいたら保護してあげないとな」

「ミミック牧場に入れるなら、反対はしないけど」

「さぁ、野良ミミックを探しにいくか」

すでに、冒険の趣旨が変わっていた。



浮竹と京楽は、自分たちが竜人族であるということを隠していない。

その貴重な宝石となる血を目当てにする人間に襲われることもあるが、いつも撃退してきた。

王都の住民やギルド内の人間とは、うまくいっていた。

もう、竜人族の里を追い出されて、悲しんでいた浮竹と京楽はいない。

今はただ、がむしゃらに前を向いて生きていた。

王都から少し離れた町で、ミミック牧場を作って、そこで浮竹と京楽は暮らしていた。ミミックのえさは空気を凝縮したよくわからん緑色の玉だった。

ミミックは植物の一種という説があり、空気の緑の玉と水で生きていた。

ダンジョン内では、空気と水だけて生きている。

「ああ、この子は家で飼おう」

「だめだよ!牧場にしなさい!」

「飼ってくれと瞳が訴えかけている!」

「きしきしきし」

ミミックは、いつも通り不思議な笑い声をあげて、浮竹をかじる。

いつも甘噛みで、噛んだ後宝をドロップする。

「あ、これはまだ覚えていない魔法の魔法書だ!やっぱり、この子家で飼おう」

「だから、だめだってば!牧場にもいっぱいミミックいるし、家にもミミック3匹いるでしょ?」

「もう1匹くらい増やしてもいいだろう?今夜、俺を好きにしていいから」

「う‥‥‥」

色仕掛けでこられて、京楽は長らく浮竹を抱いていないので、結局4匹目のミミックを飼うことを了承してしまった。

浮竹と京楽の冒険は、まだはじまったばかりであった。ミミック色だけど。



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