記憶というモノ
「隊長、愛してます」
「虚退治の遠征、がんばってこい。兄が、やられるわけはないと思うが、重々気をつけて」
「はい、隊長」
そう言って、白哉は恋次を送り出した。
「くそっ」
恋次は、虚の大軍に襲われていた。
5席の者を庇って、怪我をしていた。
「隊長‥‥すみません。約束、破っちまうかも」
大量の虚を前に、恋次は卍解をするが、全てを一掃できずに頭に傷を負った。深い傷で、それが元で記憶喪失になった。
「あ、俺は何を?」
戦うことだけは覚えていて、体は動くが、自分が誰なのか思い出せなかった。
「おい、そこのあんた」
虚を全て退治し終わって、恋次は近くにいた負傷している5席に声をかける。
「あんた、俺が誰か知ってるか?俺、記憶喪失になったみたいなんだ」
「阿散井副隊長‥‥‥‥」
「阿散井?それが、俺の名前なのか」
4番隊が呼ばれて、5席の者と一緒に、頭に怪我を負って、けっこう重症な恋次も救護詰所で診てもらうことになった。
幸い傷は命に関わるものではなく、ただ記憶喪失とだけ告げられた。
「恋次!」
恋次の元にきた白哉を、恋次は不思議な顔で見つめた。
「俺は阿散井恋次。6番隊の副隊長。で、あんたは誰ですか」
「私のことを、忘れたというのか」
白哉が、茫然とした目になるが、すぐに己を取り戻して、ゆっくり告げる。
「私は6番隊隊長、朽木白哉。兄の上司だ」
「あ、そうなんすか。今回は、へまをしてしまったようですみません」
「私のことは、思い出さぬのか?」
「それが、自分のことも分からなくて」
白哉は、恋次が一人暮らしをできるかも心配なので、記憶が戻るまで朽木家で面倒を見ることにした。
「兄様と私のことを忘れただと!このたわけめが!」
ルキアという、白哉の妹は、白哉と全然似ていなかった。
それを告げると、白哉は悲しそうな顔をして言う。
「ルキアは、私の義妹だ。私にはかつて緋真という妻がいた。亡くなったが、その緋真の実の妹がルキアだ。緋真の遺言で、ルキアを義妹として朽木家に迎え入れた」
「兄様。このような輩、放り出してしまいましょう」
「そう言うな、ルキア。恋次はそなたと同じ流魂街の出身。一緒にいれば、記憶を取り戻すかもしれぬ」
「でも、このたわけは兄様との仲も忘れてしまったのでしょう?」
「それについては、私から言う」
ルキアは悲しそうな顔をする。
「あの俺、ほんとにここにいていいんですか?」
「恋次。兄様をこれ以上悲しませたら、容赦せぬからな」
「はぁ?」
意味も分からず、恋次は頭に?マークを浮かべる。
「その、私と兄は特別だった。恋仲だったのだ」
「はぁ!?あんた、綺麗すぎるけど男っすよね。俺も男。ありえない」
最初から否定されて、白哉は悲し気に目を伏せる。
「そうだ。初めから、兄との仲は無理があったのだ」
白哉は、自分に言い聞かせるように、今までの恋仲でいられたことが奇跡だったのだと思うようになった。
恋次は、朽木家で暮らし始めた。
ルキアとはぎゃあぎゃあ言い合うまで、仲を深めていたが、恋次と白哉の距離は遠くなる一方だった。
「ルキア」
「はい、兄様」
「恋次を、6番隊の執務室に連れていこうと思うのだが、どう思う?」
「まだ、仕事ができないのでは?」
「うむ。ただ、記憶を取り戻すきっかけになればと思ってな」
「それなら、行ったほうがいいかと思います」
次の日、恋次は白哉と一緒に6番隊の隊舎に来ていた。
「阿散井副隊長、記憶がまだ戻らないって本当ですか?」
「阿散井副隊長!」
「なんだ、頭がいてぇ」
名を呼ばれて、恋次は頭を抱えてしゃがみこむ。
「恋次」
「何かを思い出しそうなんです‥‥‥ああ、俺は元11番隊だった。理由は分からないけど、6番隊の副隊長になったんだった」
少しだけ、恋次は記憶を取り戻していた。
「私のことは、分かるか?」
「すんません、まだ思い出せません」
「そうか。ルキアや自分のことは?」
「ルキア。ああそうだ、ルキアだ。流魂街の犬吊で出会った‥‥俺の、家族同然の仲間」
恋次は、ルキアのことを思い出したらしい。
それから、自分のことも少しだけ。
「俺は、犬吊から真央霊術院に入って、死神になって‥‥‥」
白哉は、その日は仕事をせずにルキアを呼んだ。
「お呼びですか、兄様!」
「恋次が、そなたのことを思い出したらしい。少し話をしてやってくれ」
「このたわけ!やっと、私のことを思い出したか」
「ああ、思い出した」
「兄様のことは?」
「まだ、思いだせねぇ」
ルキアは、恋次の頭を蹴った。
「いってええええ!!」
「このたわけがああ!私のことを思い出したのなら、兄様のことも思い出せ!」
「あー。そういや、お前の傍に、いつも誰かいなかったっけ。その、オレンジ頭の」
「一護のことか!今すぐ、連れてくる!」
ルキアは、風のように現世に向かってしまった。
「いずれ、記憶がある程度戻ったら、ここで仕事をしてもらう。執務室がこっちで、こっちが隊首室。恋次、兄がよく寝泊まりに使う部屋だ」
「はぁ」
隊首室にいくと、恋次の私物がいろいろあった。
「あ、これ懐かしい。俺が最初に買ったゴーグルだ」
「このゴーグルは、覚えておらぬか?」
「覚えてないっす。そんな高そうなの。ほんとに俺のものっすか?」
「私が、兄の誕生日に買ってやったものだ」
「あの、あんたのこと、もっと、知りたい」
恋次は、白哉の手を握りしめて、抱き寄せた。
「温かい。なんだか、安心する」
「兄は‥‥‥覚えておらぬのなら、このような真似はするな」
「あ、はい。気に障ったのなら、すんません」
しばらくして、ルキアが一護を連れてきた。
一護は大学生になっていて、講義があるのにルキアに拉致されて、ご立腹だった。
「おい、ルキア、なんだってんだよ!」
「恋次が、記憶喪失なのだ!だが、貴様のオレンジ頭を思いだしおった。貴様と直接顔を合わせれば、何か思い出すかもしれぬ」
「おい、恋次、お前記憶喪失ってって、いてぇ」
恋次が、一護の頭を殴る。
「ああああ、一護おおおお。俺から、ルキアを奪ったやつ!」
その言葉に、ルキアが真っ赤になる。
「おう、その通りだ。ルキアは、俺のもんだ」
「いいんだよ、俺には‥‥‥‥あれ?俺には、大切な人がいた。そんな、気がする」
ルキアと一護と恋次の3人でしばらくいさせた後、ルキアは一護を現世に返した。それに、恋次もついていった。
「私は、兄のことを諦めるべきなのであろうか」
白哉は、天を仰ぐ。
夜になり、朽木家で寝泊まりしている恋次は、ルキアと話しこんでいた。
「だから、貴様は兄様と」
「隊長‥‥‥でいいんだよな。呼び方」
「うむ、そうだ。その調子だそ、恋次!」
「俺は、隊長を目標に6番隊に入った。隊長に憧れて」
「その通りだ!」
ずきっと、頭が痛み、恋次が頭を抱え込む。
「だめだ、そっから先が思い出せねぇ」
恋次が朽木家で寝泊まりするようになって、1週間が過ぎようとしていた。
「ルキア、あまり無理はさせるな」
「あ、はい、兄様」
恋次は、大分自分のことや周りのことを思い出していた。
一護と出会ったことも、藍染との一件のことも、白哉の姿だけ欠けて思い出していた。
「ユーハバッハは、まだ思い出せぬか?」
「ユーハバッハ‥‥‥うろ覚えだけど、なんか思い出してきた」
恋次の中の記憶には、白哉の影がなかった。
白哉のことだけすっぽ抜けて、記憶を思い出していた。
「ユーハバッハの軍に襲われた貴様と兄様は、瀕死の重傷を負い、零番隊のところへ行ったのだ。私と一護も一緒だった」
「お前と一護ができてるってことは思いだした。でも、隊長のことだけが、何故か思い出せねぇ。憧れて、憧れて‥‥‥それから、どうなったんだ?」
「これ以上は、私の口からは言えぬ」
「大切なことを、俺は忘れてる?」
その日は、そのまま恋次は大人しく眠った。
次の日になり、白哉の出勤と一緒に、ほぼ記憶を取り戻した恋次も、仕事のために6番隊の執務室に出かけた。
「恋次、まだ完全に記憶が戻ったわけではあるまい。あまり、無理はするな」
「無理じゃないっすよ、隊長」
「恋次?」
「あ、俺‥‥隊長の、こと」
ズキリと頭が痛んで、恋次はしゃがみこむ。
「恋次、恋次、大丈夫か?」
「あんたが、大切だった。あんたの、太陽でいたかった。あんたを手に入れたかった」
「恋次?」
恋次は、白哉をソファーに押し倒す。
「あんたが、欲しかった」
「恋次!」
「あ、俺!なんてことを!すんません!」
恋次は、逃げ出そうとした。その死覇装の袖を、白哉が掴む。
「私たちは、恋仲であった。恋次、愛している」
「あ、隊長‥‥全部、思い出しました。俺も、隊長が好きで愛してます」
隊首室にいき、白哉は恋次に押し倒されていた。
「ああ、久しぶりの隊長だ」
「一緒の屋根の下で暮らしていたであろう」
「それとこれとは別です。隊長、あんたが欲しい」
熱い眼差しで見つめられて、白哉の瞳が潤む。
「好きだ、恋次。私を好きにして、かまわぬ」
「あんたを、抱きます」
はじめはそっと触れた。
口づけをしてみて、大丈夫と分かった後は、恋次は白哉を征服していく。
「あああ!」
貫かれて、白哉は恋次の下で乱れた。
大輪の椿の花が、ゆっくりと散っていくようだった。
「あ!」
真っ白な白哉の肌に、恋次は自分のものだとキスマークを残していく。
「んあっ」
奥を抉られて、白哉はオーガズムでいっていた。
「あ、もっと」
「隊長、エロい‥‥‥」
足を自分から開く白哉のものをしごいて、無理やり射精させると、白哉はビクンと体を反応させる。
「あ、熱い‥‥‥‥」
「隊長の中も熱いです。俺、とろとろに溶けちまいそうだ」
恋次は、白哉の奥を抉ると、締め付けが強くなって、白哉の中に恋次は欲望を吐き出していた。
「あ、あ!」
びくんびくんと体を痙攣させて、白哉はオーガズムでいきまくっている。
「隊長、俺のものだ」
「あ、恋次」
「好きです、隊長」
「もう、二度と記憶など失うな」
「はい。約束します」
恋次は白哉を後ろから犯した。
「んあ、あ、あ」
突き上げる度に、白哉は濡れた声をあげる。
「隊長、いいですか?」
「あ、いい。いいから、早く」
白哉のいいところをすりあげて、奥まで貫くと、白哉は精液を出しながら背をしならせる。
「いくの、止まらないぃぃ」
「はっ、隊長、エロい‥‥」
恋次は、また白哉の中で子種を弾けさせる。
「ああーーー」
白哉が、意識を失う。
「隊長?隊長?」
揺すぶっても返事はないが、気絶しているだけだと確認して、恋次は安心するも、やり過ぎたと反省する。
「あ、ここは?」
「目、覚めましたか?」
「恋次。本当に、恋次なのだな?私のことを忘れてはいまいな?」
「忘れてません。ここは、俺の家です。席官に与えられる、俺の家です。たまにしかこっちにこないけど、手入れはされてあるので。隊首室だと風呂が大浴場しか使えないんで、俺んちに、気を失った隊長を抱いて、瞬歩でここまで移動しました。あ、後始末とか隊首室でしたんで」
白哉は、濡れている自分の髪を見る。
「そうか。兄が、私を風呂にに入れたのだな?」
「はい。ふいただけじゃあ、気持ち悪いだろうと思って。いつも、行為の後は湯あみするから、隊長は」
白哉は、新しい死覇装を着ていた。恋次のものだった。
「隊長羽織は?」
「こっちにあります。一応、洗濯して干しておきました」
「私の死覇装は?」
「ああ、あの服はその」
「体液で汚れたのだな。処分して構わぬ」
「隊長、朝ごはん食べますか?」
「ああ、そうだな。もらおう」
恋次は、一人暮らしをできるくらいの能力と生活力はあった。
鮭を焼いたもの、味噌汁、白ごはんを出されて、白哉は何も文句を言わず、恋次と一緒に食べていく。
「一度、自宅に戻る。兄も、私の家でずっと過ごすわけにはいかぬから、荷物を持って帰れ」
「はい」
恋次と白哉は、朽木邸に帰宅して、恋次は一度自分の家に荷物を置いた。
「兄様、恋次が全ての記憶を取り戻したのですね!」
「何故、分かる?」
「兄様から、恋次の匂いがしますから!」
愛する義妹に、恋次と寝たことが筒抜けで、白哉は軽いめまいを覚える。
「では兄様、私は先に行ってきますね」
「ああ。私も、もうすぐ6番隊に行く」
時間になり、6番隊の執務室に行くと、恋次と会った。
お互い、赤くなる。
「あの!」
「な、なんだ」
「その、ルキアたちも呼んで、飲みに行きませんか。俺の快癒祝いだそうで、ルキアがメンバー揃えるって」
「まぁ、よいであろう」
「まじっすか。隊長が来てもいいような、けっこうお謝礼な店なんで。あと、面子は11番隊からも出るかもしれませんが」
「よい。一度承諾したのだ」
「あ、はい。その、昨日のせいで腰が痛いとかは?」
白哉が赤くなる。
「あ、すんません」
「腰は、少し痛む。少しだけだ」
「久しぶりなのに、激しくしちまってすみませんでした」
「かまわぬ」
白哉は、微笑んでいた。
その柔らかい笑みに、恋次が釘付けになる。
「隊長、今日はめいっぱい飲みましょう!」
白哉と恋次は、ほどほどにして、帰り道を歩いていく。
「隊長」
「なんだ?」
「その、また今度抱いてもいいっすか?」
ストレートに聞かれて、白哉は顔を赤くする。
「私がいいと言えば、許そう」
恋次は、大型犬のように見えない尻尾を振って、白哉に抱きつくのだった。
「虚退治の遠征、がんばってこい。兄が、やられるわけはないと思うが、重々気をつけて」
「はい、隊長」
そう言って、白哉は恋次を送り出した。
「くそっ」
恋次は、虚の大軍に襲われていた。
5席の者を庇って、怪我をしていた。
「隊長‥‥すみません。約束、破っちまうかも」
大量の虚を前に、恋次は卍解をするが、全てを一掃できずに頭に傷を負った。深い傷で、それが元で記憶喪失になった。
「あ、俺は何を?」
戦うことだけは覚えていて、体は動くが、自分が誰なのか思い出せなかった。
「おい、そこのあんた」
虚を全て退治し終わって、恋次は近くにいた負傷している5席に声をかける。
「あんた、俺が誰か知ってるか?俺、記憶喪失になったみたいなんだ」
「阿散井副隊長‥‥‥‥」
「阿散井?それが、俺の名前なのか」
4番隊が呼ばれて、5席の者と一緒に、頭に怪我を負って、けっこう重症な恋次も救護詰所で診てもらうことになった。
幸い傷は命に関わるものではなく、ただ記憶喪失とだけ告げられた。
「恋次!」
恋次の元にきた白哉を、恋次は不思議な顔で見つめた。
「俺は阿散井恋次。6番隊の副隊長。で、あんたは誰ですか」
「私のことを、忘れたというのか」
白哉が、茫然とした目になるが、すぐに己を取り戻して、ゆっくり告げる。
「私は6番隊隊長、朽木白哉。兄の上司だ」
「あ、そうなんすか。今回は、へまをしてしまったようですみません」
「私のことは、思い出さぬのか?」
「それが、自分のことも分からなくて」
白哉は、恋次が一人暮らしをできるかも心配なので、記憶が戻るまで朽木家で面倒を見ることにした。
「兄様と私のことを忘れただと!このたわけめが!」
ルキアという、白哉の妹は、白哉と全然似ていなかった。
それを告げると、白哉は悲しそうな顔をして言う。
「ルキアは、私の義妹だ。私にはかつて緋真という妻がいた。亡くなったが、その緋真の実の妹がルキアだ。緋真の遺言で、ルキアを義妹として朽木家に迎え入れた」
「兄様。このような輩、放り出してしまいましょう」
「そう言うな、ルキア。恋次はそなたと同じ流魂街の出身。一緒にいれば、記憶を取り戻すかもしれぬ」
「でも、このたわけは兄様との仲も忘れてしまったのでしょう?」
「それについては、私から言う」
ルキアは悲しそうな顔をする。
「あの俺、ほんとにここにいていいんですか?」
「恋次。兄様をこれ以上悲しませたら、容赦せぬからな」
「はぁ?」
意味も分からず、恋次は頭に?マークを浮かべる。
「その、私と兄は特別だった。恋仲だったのだ」
「はぁ!?あんた、綺麗すぎるけど男っすよね。俺も男。ありえない」
最初から否定されて、白哉は悲し気に目を伏せる。
「そうだ。初めから、兄との仲は無理があったのだ」
白哉は、自分に言い聞かせるように、今までの恋仲でいられたことが奇跡だったのだと思うようになった。
恋次は、朽木家で暮らし始めた。
ルキアとはぎゃあぎゃあ言い合うまで、仲を深めていたが、恋次と白哉の距離は遠くなる一方だった。
「ルキア」
「はい、兄様」
「恋次を、6番隊の執務室に連れていこうと思うのだが、どう思う?」
「まだ、仕事ができないのでは?」
「うむ。ただ、記憶を取り戻すきっかけになればと思ってな」
「それなら、行ったほうがいいかと思います」
次の日、恋次は白哉と一緒に6番隊の隊舎に来ていた。
「阿散井副隊長、記憶がまだ戻らないって本当ですか?」
「阿散井副隊長!」
「なんだ、頭がいてぇ」
名を呼ばれて、恋次は頭を抱えてしゃがみこむ。
「恋次」
「何かを思い出しそうなんです‥‥‥ああ、俺は元11番隊だった。理由は分からないけど、6番隊の副隊長になったんだった」
少しだけ、恋次は記憶を取り戻していた。
「私のことは、分かるか?」
「すんません、まだ思い出せません」
「そうか。ルキアや自分のことは?」
「ルキア。ああそうだ、ルキアだ。流魂街の犬吊で出会った‥‥俺の、家族同然の仲間」
恋次は、ルキアのことを思い出したらしい。
それから、自分のことも少しだけ。
「俺は、犬吊から真央霊術院に入って、死神になって‥‥‥」
白哉は、その日は仕事をせずにルキアを呼んだ。
「お呼びですか、兄様!」
「恋次が、そなたのことを思い出したらしい。少し話をしてやってくれ」
「このたわけ!やっと、私のことを思い出したか」
「ああ、思い出した」
「兄様のことは?」
「まだ、思いだせねぇ」
ルキアは、恋次の頭を蹴った。
「いってええええ!!」
「このたわけがああ!私のことを思い出したのなら、兄様のことも思い出せ!」
「あー。そういや、お前の傍に、いつも誰かいなかったっけ。その、オレンジ頭の」
「一護のことか!今すぐ、連れてくる!」
ルキアは、風のように現世に向かってしまった。
「いずれ、記憶がある程度戻ったら、ここで仕事をしてもらう。執務室がこっちで、こっちが隊首室。恋次、兄がよく寝泊まりに使う部屋だ」
「はぁ」
隊首室にいくと、恋次の私物がいろいろあった。
「あ、これ懐かしい。俺が最初に買ったゴーグルだ」
「このゴーグルは、覚えておらぬか?」
「覚えてないっす。そんな高そうなの。ほんとに俺のものっすか?」
「私が、兄の誕生日に買ってやったものだ」
「あの、あんたのこと、もっと、知りたい」
恋次は、白哉の手を握りしめて、抱き寄せた。
「温かい。なんだか、安心する」
「兄は‥‥‥覚えておらぬのなら、このような真似はするな」
「あ、はい。気に障ったのなら、すんません」
しばらくして、ルキアが一護を連れてきた。
一護は大学生になっていて、講義があるのにルキアに拉致されて、ご立腹だった。
「おい、ルキア、なんだってんだよ!」
「恋次が、記憶喪失なのだ!だが、貴様のオレンジ頭を思いだしおった。貴様と直接顔を合わせれば、何か思い出すかもしれぬ」
「おい、恋次、お前記憶喪失ってって、いてぇ」
恋次が、一護の頭を殴る。
「ああああ、一護おおおお。俺から、ルキアを奪ったやつ!」
その言葉に、ルキアが真っ赤になる。
「おう、その通りだ。ルキアは、俺のもんだ」
「いいんだよ、俺には‥‥‥‥あれ?俺には、大切な人がいた。そんな、気がする」
ルキアと一護と恋次の3人でしばらくいさせた後、ルキアは一護を現世に返した。それに、恋次もついていった。
「私は、兄のことを諦めるべきなのであろうか」
白哉は、天を仰ぐ。
夜になり、朽木家で寝泊まりしている恋次は、ルキアと話しこんでいた。
「だから、貴様は兄様と」
「隊長‥‥‥でいいんだよな。呼び方」
「うむ、そうだ。その調子だそ、恋次!」
「俺は、隊長を目標に6番隊に入った。隊長に憧れて」
「その通りだ!」
ずきっと、頭が痛み、恋次が頭を抱え込む。
「だめだ、そっから先が思い出せねぇ」
恋次が朽木家で寝泊まりするようになって、1週間が過ぎようとしていた。
「ルキア、あまり無理はさせるな」
「あ、はい、兄様」
恋次は、大分自分のことや周りのことを思い出していた。
一護と出会ったことも、藍染との一件のことも、白哉の姿だけ欠けて思い出していた。
「ユーハバッハは、まだ思い出せぬか?」
「ユーハバッハ‥‥‥うろ覚えだけど、なんか思い出してきた」
恋次の中の記憶には、白哉の影がなかった。
白哉のことだけすっぽ抜けて、記憶を思い出していた。
「ユーハバッハの軍に襲われた貴様と兄様は、瀕死の重傷を負い、零番隊のところへ行ったのだ。私と一護も一緒だった」
「お前と一護ができてるってことは思いだした。でも、隊長のことだけが、何故か思い出せねぇ。憧れて、憧れて‥‥‥それから、どうなったんだ?」
「これ以上は、私の口からは言えぬ」
「大切なことを、俺は忘れてる?」
その日は、そのまま恋次は大人しく眠った。
次の日になり、白哉の出勤と一緒に、ほぼ記憶を取り戻した恋次も、仕事のために6番隊の執務室に出かけた。
「恋次、まだ完全に記憶が戻ったわけではあるまい。あまり、無理はするな」
「無理じゃないっすよ、隊長」
「恋次?」
「あ、俺‥‥隊長の、こと」
ズキリと頭が痛んで、恋次はしゃがみこむ。
「恋次、恋次、大丈夫か?」
「あんたが、大切だった。あんたの、太陽でいたかった。あんたを手に入れたかった」
「恋次?」
恋次は、白哉をソファーに押し倒す。
「あんたが、欲しかった」
「恋次!」
「あ、俺!なんてことを!すんません!」
恋次は、逃げ出そうとした。その死覇装の袖を、白哉が掴む。
「私たちは、恋仲であった。恋次、愛している」
「あ、隊長‥‥全部、思い出しました。俺も、隊長が好きで愛してます」
隊首室にいき、白哉は恋次に押し倒されていた。
「ああ、久しぶりの隊長だ」
「一緒の屋根の下で暮らしていたであろう」
「それとこれとは別です。隊長、あんたが欲しい」
熱い眼差しで見つめられて、白哉の瞳が潤む。
「好きだ、恋次。私を好きにして、かまわぬ」
「あんたを、抱きます」
はじめはそっと触れた。
口づけをしてみて、大丈夫と分かった後は、恋次は白哉を征服していく。
「あああ!」
貫かれて、白哉は恋次の下で乱れた。
大輪の椿の花が、ゆっくりと散っていくようだった。
「あ!」
真っ白な白哉の肌に、恋次は自分のものだとキスマークを残していく。
「んあっ」
奥を抉られて、白哉はオーガズムでいっていた。
「あ、もっと」
「隊長、エロい‥‥‥」
足を自分から開く白哉のものをしごいて、無理やり射精させると、白哉はビクンと体を反応させる。
「あ、熱い‥‥‥‥」
「隊長の中も熱いです。俺、とろとろに溶けちまいそうだ」
恋次は、白哉の奥を抉ると、締め付けが強くなって、白哉の中に恋次は欲望を吐き出していた。
「あ、あ!」
びくんびくんと体を痙攣させて、白哉はオーガズムでいきまくっている。
「隊長、俺のものだ」
「あ、恋次」
「好きです、隊長」
「もう、二度と記憶など失うな」
「はい。約束します」
恋次は白哉を後ろから犯した。
「んあ、あ、あ」
突き上げる度に、白哉は濡れた声をあげる。
「隊長、いいですか?」
「あ、いい。いいから、早く」
白哉のいいところをすりあげて、奥まで貫くと、白哉は精液を出しながら背をしならせる。
「いくの、止まらないぃぃ」
「はっ、隊長、エロい‥‥」
恋次は、また白哉の中で子種を弾けさせる。
「ああーーー」
白哉が、意識を失う。
「隊長?隊長?」
揺すぶっても返事はないが、気絶しているだけだと確認して、恋次は安心するも、やり過ぎたと反省する。
「あ、ここは?」
「目、覚めましたか?」
「恋次。本当に、恋次なのだな?私のことを忘れてはいまいな?」
「忘れてません。ここは、俺の家です。席官に与えられる、俺の家です。たまにしかこっちにこないけど、手入れはされてあるので。隊首室だと風呂が大浴場しか使えないんで、俺んちに、気を失った隊長を抱いて、瞬歩でここまで移動しました。あ、後始末とか隊首室でしたんで」
白哉は、濡れている自分の髪を見る。
「そうか。兄が、私を風呂にに入れたのだな?」
「はい。ふいただけじゃあ、気持ち悪いだろうと思って。いつも、行為の後は湯あみするから、隊長は」
白哉は、新しい死覇装を着ていた。恋次のものだった。
「隊長羽織は?」
「こっちにあります。一応、洗濯して干しておきました」
「私の死覇装は?」
「ああ、あの服はその」
「体液で汚れたのだな。処分して構わぬ」
「隊長、朝ごはん食べますか?」
「ああ、そうだな。もらおう」
恋次は、一人暮らしをできるくらいの能力と生活力はあった。
鮭を焼いたもの、味噌汁、白ごはんを出されて、白哉は何も文句を言わず、恋次と一緒に食べていく。
「一度、自宅に戻る。兄も、私の家でずっと過ごすわけにはいかぬから、荷物を持って帰れ」
「はい」
恋次と白哉は、朽木邸に帰宅して、恋次は一度自分の家に荷物を置いた。
「兄様、恋次が全ての記憶を取り戻したのですね!」
「何故、分かる?」
「兄様から、恋次の匂いがしますから!」
愛する義妹に、恋次と寝たことが筒抜けで、白哉は軽いめまいを覚える。
「では兄様、私は先に行ってきますね」
「ああ。私も、もうすぐ6番隊に行く」
時間になり、6番隊の執務室に行くと、恋次と会った。
お互い、赤くなる。
「あの!」
「な、なんだ」
「その、ルキアたちも呼んで、飲みに行きませんか。俺の快癒祝いだそうで、ルキアがメンバー揃えるって」
「まぁ、よいであろう」
「まじっすか。隊長が来てもいいような、けっこうお謝礼な店なんで。あと、面子は11番隊からも出るかもしれませんが」
「よい。一度承諾したのだ」
「あ、はい。その、昨日のせいで腰が痛いとかは?」
白哉が赤くなる。
「あ、すんません」
「腰は、少し痛む。少しだけだ」
「久しぶりなのに、激しくしちまってすみませんでした」
「かまわぬ」
白哉は、微笑んでいた。
その柔らかい笑みに、恋次が釘付けになる。
「隊長、今日はめいっぱい飲みましょう!」
白哉と恋次は、ほどほどにして、帰り道を歩いていく。
「隊長」
「なんだ?」
「その、また今度抱いてもいいっすか?」
ストレートに聞かれて、白哉は顔を赤くする。
「私がいいと言えば、許そう」
恋次は、大型犬のように見えない尻尾を振って、白哉に抱きつくのだった。
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