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隻眼

白哉が、遠征で隊士を庇って負傷した。

そのニュースは、6番隊の中にすぐに広がった。

あの朽木白哉が。隊士を庇ったとはいえ、虚で傷を負うとは。

「隊長‥‥‥‥」

恋次は、いてもたってもいられずに、白哉が運び込まれた救護詰所に急いだ。

白哉は、右目に黒い眼帯をしていた。

「隊長!?」

「恋次か。目をやられたのだ。しばらく義眼で過ごす。新しい目の移植手術は、1週間後らしい」

「隊長の綺麗な顔に傷が!なんてことだ!」

「目ばかりは回道では治らぬ。移植手術ができるだけましであろう」

「その、隊長を傷つけた虚は退治されたんですか」

「私が退治した」

白哉は、隻眼に慣れぬのか、壁にあたりそうになって、恋次に後ろから抱きしめられる。

「恋次?」

「俺がどれだけ心配したと思ってるんすか」

「すまぬ。私も油断していた。いくら隊士を庇ったとはいえ、目をやられるなど」

白哉も今回の遠征は反省するべき点がおおいと、恋次の手に手を重ねる。

「朽木邸に帰る」

「あんた、その右目は移植手術でどうにかなるとして、もう片方の左目霞んでるんじゃないっすか?」

白哉は驚く。

救護詰所で、内緒にしてくれるように言っておいたのだ。

右目も左目も、同時に負傷した。

ただ、左目は軽かったので、回道でなんとか見えるようにはなっていたが、視力が落ちていた。

「なぜ、分かる?」

「あんた、さっき壁にぶつかりそうになってた。片方の目だけでもちゃんと見えてるなら、普通そんなことにならない」

「ふ‥‥兄はかなわぬな。恋次、しばし私の目となれ」

「はい」

その日、白哉を朽木邸まで送って、一緒に泊まり、視力の堕ちた片目の補佐をできる限りした。

一緒に風呂に入ったっり、恋次がむらむらすることはあったが、白哉の視力が回復するのが最優先だった。

処方してもらった目薬をさして、2日ほどで白哉の左目の視力は回復した。

恋次は、まだ右目が見えていないからと、朽木邸に泊まりこみ、白哉の世話をした。

「恋次、もうよいのだぞ。左目は視力を回復した。右目の移植手術にはあと3日かかるが」

「それまで、隊長の目になります。あんたの目になれっていったのは、あんただ」

「恋次」

恋次は、白哉の寝室で白哉を抱きしめる。

「右目の移植手術、成功しますよね?京楽総隊長のようにはなりませんよね?」

「京楽は、あれはわざと目の移植手術を受けておらぬのだ」

「はい」

「大戦の傷跡だと。私の場合は違う。虚になど受けた傷、なんとしても癒す」

目の移植手術は高いが、白哉になら簡単に払える額だった。

ただ、成功率は五分五分であった。

今度受ける移植手術でだめだったら、何度でも移植手術に挑むつもりだった。

「この目が治るまで、何度でも移植手術を受ける」

「はい」

「もう夜も遅い。兄は寝ろ」

恋次は、白哉と同じ部屋で寝ていた。

「隊長、また昨日みたいに夜の散歩に行くつもりでしょう」

白哉が驚く。

「気づいていたのか」

「そりゃ、傍から隊長の霊圧が遠くなれば。今夜の夜の散歩は、俺も付き合います」

その日、白哉は恋次と夜の散歩に出かけた。

月見の季節で、満月が綺麗に空に浮かんでいた。

手を伸ばせば、星さえつかめそうな。

そんな晴れた夜だった。

やがて、右目の移植手術の日がやってきた。

恋次は仕事を早めに終わらせて、手術室の前で祈る。

2時間ほどして、右目に包帯を巻いた眠っている白哉が運ばれていく。

「朽木隊長の、目の移植手術は成功です」

虎徹隊長の言葉に、恋次は心底安堵する。

包帯がとれる数日の間、入院することになった。

恋次は、毎日のように見舞いにいった。

白哉は救護詰所では暇だからと、他の隊士にもってこさせた書類仕事をしたりしていた。

とりあげると怒るので、恋次は白哉のやりたいようにさせていた。

「あんたが大好きすぎて、包帯がとれたら朽木邸から出なきゃいけない自分がもどかしいです」

「では、ずっと一緒にいるか?」

「え?」

「兄とは長い付き合いだ。婚姻していないだけで、夫婦のようなものであろう」

面と向かって言われて、恋次は赤くなる。

「いいんですか」

「何がだ」

「俺みたいな狼、自分の家において」

「それもそうであった。泊まりたい時にだけくるがよい。屋敷内での性的な行為は許さぬ。キスとハグまでは許す」

恋次は、大型犬のように見えない尻尾を大きく振って、白哉を抱きしめる。

「大好きです、隊長」

「苦しい。やめぬか」

そう言いつつも、白哉は柔らかい表情をしていた。

やがて傷も全て癒えて、元の日常が戻ってくる。

恋次は、週に2回ほど朽木邸にお泊りする。

そして、週に一度別邸で白哉を抱く。

「んっ」

執務室で、白哉に口づける恋次。

「やめよ、ここは執務室だ」

「あんたが欲しい」

「おとつい、交わったばかりであろう」

「足りねぇ」

盛る恋次の頭を拳で殴る白哉。

「いってえええ」

「兄は、することしか頭にないのか!」

白哉に怒られて、恋次は正座をさせられる。

「そもそも、兄は‥‥‥聞いているのか」

「移植した目の色、茶色なんすね。元の目の色が黒だから、オッドアイになってて綺麗だ」

じーと見つめてくる恋次の顔を見ていられずに、白哉は視線を一度伏せる。

「兄は、本当に私のことが好きだな?」

「あたりまえです!世界で一番好きです。あんたを好きな人はいっぱいいるでしょうけど、きっと俺が一番好きだ。この感情は、ルキアにだって負けねぇ」

「恋次‥‥‥」

白哉は、恋次を抱きしめる。

「隊長?」

「私も兄と同じだ。兄を思っている」

「隊長、俺!」

「盛るなよ。ここは執務室だ」

「うぐぐぐぐ」

恋次は、ひたすら我慢を強いられるのあった。最近一緒に何もなく生活していたせいで、白哉は恋次にあまり抱かれようとしない。

「隊長、今日は隊長を抱かせてください」

猛烈アピールを繰り返し、仕事にならぬので、仕方なく白哉は了承する。

なんだか、私はこの駄犬に流されているのではないだろうか。

そう思う白哉だった。

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